東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

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借地の明渡し訴訟 (東京・台東区)

2005年08月31日 | 建物明渡(借家)・立退料

      占有移転禁止仮処分をされて貸倉庫の収入がストップ 

 竹内さんは、台東区谷中で17坪を借地している。地代は月額28300円。何十年も、3~6ヶ月分纏めて、地主に払っていた。それが一昨年9月に地代の受領を拒否され、そのまま地代を支払うことなく放置していた。

 2003年6月に地主は、建物占有移転禁止の仮処分を東京地裁に申請し、竹内さんの住宅と賃貸している倉庫部分が仮処分の執行を受けた。竹内さんはこの時点で組合に加入し、放置していた地代15ヶ月分を一括して供託した。 7月地代の不払いを理由に無催告注)で契約解除を通告され、土地の明渡し訴訟を提起された。裁判は組合の二人の弁護士が担当した。

 今一番の痛手は、仮処分を受けたことで倉庫を貸していた会社がトラブルを恐れて倉庫の契約を解除して退去した。そのため倉庫の賃料収入が途切れてしまったことだ。仮処分は裁判の結果を見るまで殆ど継続され、取消は認められないのが通例だ。そのため仮処分の取消があるまでは、二度と倉庫を貸すことが出来ない。この不景気の時世に地主の仮処分による損害は多大だ。

 裁判では、地主側のミスで債務不履行とされたが、借地人の債務不履行は存在しないことが確認され、地代は間違いなく支払われていたことが証明された。

 だが、半年分後払いが履行滞納なのか、慣習化して地主も暗黙の了承していた支払い方法であったのかが問題になった。半年分後払いが10年以上に亘って長期間行なわれ、その間地主から何らかの異議もなかったという事実がある場合には、支払い方法の変更の黙示の合意があたとみなされる。

 それが証明されれば、履行滞納を理由にした契約解除は否定される。だが、竹内さんは銀行振込の控えを殆ど保存していなかったので、半年分後払いが証明できなかった。

 長期間の領収書等の支払いを証明するものがあれば問題がなかったのだが、残念な結果であった。裁判所の結論は4年半後に建物はそのままで借地を明渡すというものであった。

 これに付随して、毎月約15万円支払い続けていた父親の遺した銀行の借金(約450万円)が清算されたことには驚いている。組合に言われ、抵当権を設定している銀行に、今回の判決文を持参して担当者に読んで貰った。その結果が借金0ということである。

 組合は、借地期間が5年に満たないので銀行が竹内さんの建物を競売に掛けても買い手がいないのと競売をやっても経費倒れになるので債権放棄をして、仕方なく自ら不良債権処理をしたのだと説明してくれた。

 (注)契約の解除をするときは、予め相当の期間を定めて履行を催告しなければならない(民法541条)。又、借家の事例であるが、11ヶ月分の家賃を遅滞し契約を無催告で解除された事案で、原判決を破棄し催告は必要であるとしている (最高裁1960年6月28日判決

 借地の場合、借地権及び建物は経済的価値を有し解除に伴う借地人の損失は甚大である。信頼関係を損なわない軽微な義務違反で解除を認めることは権利の濫用である。

 

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新家主から借家の明渡請求 (東京・台東区)

2005年08月30日 | 建物明渡(借家)・立退料

    新家主から建物の明渡しを通告された

 5月26日、台東借組に電話が入った。組合員の平田さんからだ。平田さんは台東区下谷で平屋(6坪)を倉庫として家賃7,500円で借りている。倉庫として借りている建物の引き戸に南京錠を掛けられ、閉め出されたという内容だ。

 平田さんの家主は、地主から借地の返還を執拗に要求され続けていた。遂に根負けし、本年4月に東京地裁で土地明渡しに合意し、借地権と建物を地主に譲渡した。その旨を家主から連絡を受け、家主が地主に代わったことを識った。地主は新たに家主になっているにも拘らず、態度表明せず、音無しの構えなのだ。

 平田さんが倉庫として借りている借家の隣りが地主の住まいである。平田さんは、この地主と地代の値上げ問題、更新料で揉めている。地代は現在、供託中である。こんな嫌がらせをするのは地主以外には考えられない。

 組合のアドバイスは
①家主の不当行為に対しては、緊急の自力救済措置として錠を破壊してでも居住を確保する。
②家賃を誰に払うのかを判断するため、建物の所有権が家主から地主へ移転登記されているかを調べる。

 「新所有者の移転登記が無い場合には賃料請求をすることができない」というのが判例である。登記簿謄本で建物の所有者を調べてみると,既に5月11日に所有権の移転登記は完了していた。

 そこで5月30日、新家主の地主に家賃を支払うが、受領を拒否された。已む無く法務局に家賃を弁済供託した。

 6月28日新家主の代理人である弁護士から『建物明渡督促』が内容証明郵便で送られて来た。「貴殿と旧家主との間の法律関係は賃貸借ではなく,単なる使用貸借関係であったものと思料されます」とさ平田んと旧家主の建物賃貸借契約を事実に基づかない独断で借家法の保護を受けない使用貸借と決め付け「貴殿と旧家主の間の使用貸借関係を継承する理由はありませんので本年7月15日頃までに、建物の明渡しを…」という独善的論旨のものであった 。

 

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大幅な原状回復費を請求される (東京・台東区)

2005年08月27日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

          自然損耗の負担義務は無い

 台東借組の組合員山田さんは今年4月、台東区のマンション(家賃12万・管理費1万・敷金36万・礼金24万)から引越すことになり、家主に敷金の返還を要求したところ、不動産屋は連帯保証人である弟宛に内容証明郵便で原状回復費48万円を要求してきた。兄弟関係が拗れて悩んだ挙句組合に相談した。

 原状回復に対する裁判所の考えは次のようなものだ。
通常の建物の賃貸借において、賃借人が賃借建物を返還するに際して負担する「原状回復」とは、賃借人の故意、過失による建物の毀損や、通常の使用を超える使用方法による損耗について、その回復を約定したものと解するのが相当であって、賃借人の居住、使用によって通常生ずる建物の損耗についてまで、それがなっかた状態に回復すべきことまで求めているものではないというべきである」(東京簡易裁判所2002年9月27日判決)。通常の使い方をしていれば、原状回復費用を借家人が払う必要はないという結論になる。

 組合は、家主に次のような趣旨の内容証明郵便を出した。「①連帯保証人への請求中止。②原状回復費用負担の拒否。③敷金の即時返還」というす趣旨の通告をした。

 

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下水の修繕工事 (東京・台東区) 

2005年08月26日 | 修理・改修(借家)

       家主に下水の詰り工事を依頼するが拒否される

 台東区下谷の福沢さんは、築40年になる借家で暮らして20年になる。

 数年前から家屋の各所に不具合が生じてきていたが、軽微な工事だったので自費で修繕していた。

しかし、今年になってからの下水の詰りは、業者の見積もりによると高額な工事代金が必要と解り、家主に修繕して欲しい旨を伝えたが修理工事を拒否された。

 下水の詰りは、炊事・洗濯・トイレ等日常生活にも支障をきたす状態となり組合に相談した

 組合の指導で以下の趣旨を記した内容証明郵便を家主に送った。
 ①下水が詰まり困っている事(故障している事実或は状態)
 ②水道工事業者の復旧工事の見積では**円になる事
 ③いつまでに復旧工事をするのか、(着手する期日(*月*日までに)を確定する)
 ④期日までに復旧工事が行われない場合には取敢えず当方にて工事する事。
 ⑤しかし、その工事代金は家主の負担であり、支払い家賃と相殺する事
 ⑥満足に使えなかった期間分の家賃も差し引く事

 結果は直に現れた。家主は、内容証明郵便に驚き、直ちに下水工事に着手した。

 

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少額訴訟で敷金返還請求 (東京・台東区)

2005年08月25日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

      敷金返還の少額訴訟で取り戻す

 有村さんは、台東区三ノ輪のマンションに7年4か月暮らしていた。家賃は1か月11万円、管理費8000円であった。日本提に新築のマンションを見つけ、引っ越すことになった。

 4月28日の退室当日、不動産会社の人の立会いで、部屋を点検した。指摘されたのは、洋室の壁の陥没3箇所と、破れた障子2面。それらについては、修繕費を負担する覚悟でいた。その他は、補修・交換の必要なしとのことだった。

 ところが不動産会社から届いた5月22日の敷金精算書には、原状回復費用20万円とあり、敷金22万円から差し引いて残金2万円を返金すると書かれていた。費用の内訳には、指摘個所の補修費用約3万円の他に、台所と洋室のクロスの全面張替費用と、クリーニング費が追加されていた。

 賃貸契約書の第21条に原状回復特約があり、賃借人の費用負担で入居時の状態まで回復させる義務があるとされている。台所と洋室のクロスの全面張替費用を賃借人が全額負担しなければならないことには納得がいかない。

 そのことに関して、不動産会社に文句を言ったが原状回復特約を結んでいるのだから仕方が無いの一点張りで埒があかない。敷金返還要求の内容証明郵便も送り付けたが不動産会社に無視された。

 手詰まり状態を打開するために組合に相談した。組合は「通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない」(東京地裁1994年7月1日判決)というのが判例の確定した考え方であると説明した。

 東京簡易裁判所の判決に次のようなものだある。即ち「建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって賃借人は建物賃借当時の状態に回復すべき義務はない。賃貸人は賃借人が建物を通常の状態で使用した場合に時間の経過にともなって生じる自然の損耗・汚れによる損失は賃料として回収しているのであって賃借人に負担させるべきでなく、原状回復条項は賃借人が故意・過失によて又は通常ではない使用をしたために建物の棄損等を発生させた場合の損害の回復について規定したものと解するのが相当である」(東京簡易裁判所1995年8月8日判)。

 以上、判例の考え方から言えば洋室壁穴補修工事と障子2面の修繕は賃借人が負担しなけばならない。この28560円は控除されるのは仕方が無いが、それ以外は家主が負担すべきである。

 不動産会社と交渉するのは時間の無駄というのが組合の結論であり、家主を相手に組合が薦める少額訴訟に踏み切った。訴状は組合作成の少額訴訟のサンプルと組合の説明を基にして自分で書き、必要書類を添付して東京簡易裁判所に提出した。

 後日、少額訴訟の決着は約2時間でついた。納得できない所もあたが、敷金の80%が戻ることになり、やってよかったと思っている。

 

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更新料・名義書換料・20年間の差額地代を請求 (東京・台東区)

2005年08月23日 | 更新料(借地)

       地主が不当請求を撤回

 台東借組の組合員である田中さんは地代の供託を既に20年に亘って続けている。これまで地主との揉め事は組合との二人三脚で何とか切り抜けて来た。

 今回の借地の更新に際して地主は①更新料の支払いと②名義書換料を請求している。加えて③20年間の差額地代+利息を請求している。更に④前回不支払の更新料も再度要求している。

 田中さんは組合に対応を相談し、組合役員の立会いの下で地主と折衝することになった。地主側も不動産業者を加えてガードを固めている。交渉は約4時間に亘って行われた。

 更新料に関しては更新料支払の合意が無いので請求の根拠が無い。仮に支払の約定が前の契約書にあったとしても最高裁の判例は「更新料支払の約定は、合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨まで含むものではない」(1982年4月15日)と明言している。

 従って①と④に関しては前回・今回とも法定更新され、最高裁の判例から更新料支払義務が無いことは明らかである。勿論④は既に時効であり、支払義務は無い。更新料債権が他の債権と同様に一般には10年、商事については5年で時効消滅する。

 ②に関しては母親の死亡に伴う借地権の相続であるから名義書換の問題は発生しない。名義書換料の要求は不当なものである。

 ③は地主の一方的な主張であり、借地借家法11条2項の規定に従った取扱いをしてもらいたい。
 地代等は民法169条規定から5年で消滅時効となり、既に15年分が消滅時効となっている。
 地主は説明が間違いでないことを不動産業者に確認して渋々ながら不当請求を全面的に撤回した。

 

 借地借家法
第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

民法 (定期給付債権の短期消滅時効)
第169条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。

 

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敷金が戻る (東京・台東区)

2005年08月22日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

    組合指導の文面で敷金返還請求

 今年の4月に山田さんは自然環境と静謐な生活を求めて谷中霊園に程近いワンルームマンションに入居した。しかし、予想もしない車の騒音に耐えられずに、そこを3か月で退去せざるを得なかった。

 8万円の敷金を返して貰おうと不動産屋を訪れた。業者から明細書を渡され、3万円の追加を言われた。何で復旧費用に11万円も必要なのか。余りの理不尽さに驚き、区の消費者センターに相談し、巡って台東借組へ相談することになった。

 先ず家主に対し、組合指導の文面で敷金8万円の返還請求を内容証明で行った。

 後日、こちらの振込指定日に家主から電話があり、敷金を全額返金すると返事があった。銀行の口座を確認すると確かに敷金の全額が振り込まれていた。

 

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裁判所に借地権譲渡許可を申立てて借地権を売却 (東京・台東区)

2005年08月21日 | 借地の諸問題

   借地権譲渡許可申立をして解決する

 桑田さんは借地(65・2坪)を地代1か月6万1300円で借りている。平成13年3月の更新の際に、建物を担保にして更新料615万円を支払った。

 借金までして更新料を払ったことに疑問を感じ、組合員の紹介で台東借組に加入した。
 負債を整理するため、借地権を売却するにしても建物の抵当権を抹消しなければならずその資金の目途も無い。それに加えて借地に対しては地主の債務に関する抵当権が設定されているので、第三者への譲渡は難しい。

 当事者間の協議で桑田さんは地主に対して借地権と建物の買取を要請し、6285万円を買取要求額として希望したが、地主は4300万円の買取額を提示して来た。結局当事者双方の妥協点が見出せなかった。

 そこで組合の顧問弁護士と相談して債務整理のために、台東借組組合員の「(株)R」の協力を得て、借地借家法19条1項による借地権譲渡許可申立書を2005年1月26日東京地裁に提出した。

 すると地主側は3月25日の答弁書で借地借家法19条3項の「介入権」行使の申立をして来た。 これは地主の先買権と呼ばれるもので地主が第三者に優先して借地上建物と借地権との譲受を認めるものである。地主の土地所有権回復の手段とされている。借地人は投下資本の回収を図ることが出来るのであるから買受人が地主であっても特に不利益はない。

 裁判所の調停で地主側は、買取価格として6200万円((株)Rの買取価格)から借地権譲渡承諾料10%(注)を差引いた5580万円を提示して来た。

 借地人側は借地権の相続に際し、支払い義務が無い名義書換料353万円を支払い済みであり、その点を充分考慮するように取敢えず訴えてみた。駄目元ということで言ってみたのだが、裁判所は5580万円に考慮分の110万円を上乗せした5690万円を提示した。

 結局、この価格で借地権を地主に売却することで2005年5月24日和解が成立した。借地と建物に抵当権が設定されているという悪条件にも拘らず、(株)Rの協力があって、桑田さんは、ほぼ希望の価格で借地を売却すること出来、満足している。

 (注)借地人は、借地権を第三者に譲渡すれば、地主に対して譲渡承諾料を支払う。譲渡承諾料は東京地裁では借地権価格の10%を基準としている。従って地主自身が譲り受ける場合は、その譲渡承諾料相当額を対価の額から控除すべきであると解されている。裁判例では、譲渡承諾料相当分として借地権価格の10%を控除するのがほぼ確立した基準となっている。



  借地借家法(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第19条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

 2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

 3 第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

 4 前項の申立ては、第1項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

 5 第3項の裁判があった後は、第1項又は第3項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

 6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項又は第3項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

 7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

 

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敷金・礼金を全額取戻す(住宅金融公庫の融資物件 ) (東京・台東区)

2005年08月20日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

               住宅金融公庫の融資物件

 宮本さんは、引越しに際し不動産会社にマンション(台東区谷中)の敷金返還を要求したところ、「原状回復費に50万円掛るので敷金45万円を充当します。不足金5万円をお支払下さい」と驚くべき言葉が返ってきた。

 困っていたところ台東借地借家人組合を紹介された。原状回復に対する組合の説明は、賃借人の故意・過失による損耗以外は原状回復義務の対象でない。従って、修復費用の負担責任がないということだ。交渉は不動産業者を相手にするのではなく、直接家主とすることにした。

 数日後、組合の調査で、そのマンションは、住宅金融公庫から資金の貸付を受けて建設したものであり、登記簿謄本を調べると、融資金の返済中ということが確認出来た。

 住宅金融公庫法第35条、同法施行規則10条1項で家賃及び敷金(家賃の3月分を超えない額)を受領することを除く外、賃借人から権利金、謝金等の金品の受領を禁止されている。

 即ち、家賃と敷金以外の金銭の受領は原則禁止されている。従って、公庫融資を受けた家主は借入金と利息を完済するまでは、礼金・更新料等の受領及び退去時の敷金(保証金)の一定額の償却(敷引特約)も禁止されている。

 組合は住宅金融公庫へ電話を入れ、公庫法違反の家主に対し厳重指導(同法46条による刑事罰適用又は融資の繰り上げ返済請求等)を申し入れた。加えて、組合は家主に対し、次のような趣旨の配達証明付内容証明郵便を送った。 
①故意・過失による損耗がないので、原状回復費用負担は拒否する
②住宅金融公庫法違反の礼金30万円と
③敷金45万円の返還要求するというものである。

 住宅金融公庫への電話談判の効果が現われ、後日、相談者の銀行口座に要求の礼金と敷金の合計75万円全額が振込まれた。

住宅金融公庫による融資物件の場合、住宅金融公庫法施行規則第10条においても,下記のような賃貸条件の制限が規定されている。

 第10条 賃貸人は、毎月その月又は翌月分の家賃を受領すること及び家賃の三月分を超えない額の敷金を受領することを除くほか、賃借人から権利金、謝金等の金品を受領し、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。

 罰則:  賃貸条件の違反について30万円以下の罰金(公庫法46条1項1号)


追記> 平成19年4月、住宅金融公庫は廃止され、独立行政法人住宅金融支援機構へ移行した。住宅金融支援機構法附則第5条により、旧住宅金融公庫法に基づいて行われた賃貸住宅貸付けに係る賃貸条件の制限は従前通りとされている。

 

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修理特約があっても大修繕は家主の費用負担 (東京・台東区)

2005年08月19日 | 契約・更新・特約

  修理特約があろうとも小修理以外は家主負担

 台東借組の組合員である松岡さんは、水道局の検査で借家の水道管が漏水していることが判明した。

 漏水箇所は床下。水道工事店に見積をしてもらった。自己負担で修繕するには費用が過重である。

 契約書に「修繕は借主の費用負担で行う」と書かれている。加えて現在家主から家屋の明渡請求を通告され、家賃は供託している。こんな状況で、家主に修繕を要求しても無視されるのは自明である。

 どうすればよいか借地借家人組合に相談した。組合の回答は「修理特約があっても、その範囲は小修理に限られる。当然修理義務は家主にあり、その修理費用は勿論家主が負担する」というものであった。

  工事代金の回収方法も教えてもらい、業者の見積もり金額を書き期限を切って、家主に修繕依頼の配達証明付き内容証明を送付した。

  その内容は、指定した日までに着工されない場合は自費で修繕し、その費用は供託家賃と相殺することを通告するものである。

 指定日に家主から工事費を全額支払うと連絡があり、銀行の口座に工事代金が振り込まれていた。家主に領収書を郵送して、今回の水道工事は無事に決着した。

 

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3か月前に解約予告をすれば中途解約ができる (東京・台東区) 

2005年08月18日 | 契約・更新・特約

      台東借地借家人組合への電話相談

 8月の或る日。台東借組へ相談の電話があった。

 相談者がマンションの賃貸借契約の解除をするために家主に電話を入れた。すると、家主は大声で「中途解約は認められない、解約は駄目だ。もしも、それでも解約するというのなら、2年契約の残りの契約期間(約1年)分の家賃を全額払え。それなら解約を了承する」と言ったという。こんな理不尽なことが通用するのかという相談であった。

 契約書に中途解約の条項が無ければ家主の主張は肯定される。だが契約書には「期間途中の解約は相当の予告期間をおいて申し出ること」と書かれていて、期間途中での解約が出来ることになっている。けれど、契約書には解約の申入れの予告期間が定められていない。いわゆる「期間の定めのある契約で解約を留保する特約」があるという事例だ。

 この場合は、民法618条の規定で解約の申入れをすれば、3ヶ月の予告期間(民法617条準用)が過ぎると契約は終了する。これが法律の規定である。従って家主の主張に従う必要はない。当然、家主の要求する家賃を支払う必要は無い。

 相談者の場合は、既に家主に解約の申入れを伝えている。だが後日トラブルにならないためにも、解約申入の通知書を配達証明付内容証明郵便で出して措くように説明した。

 

参考法令 民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1.土地の賃貸借 1年
2.建物の賃貸借 3箇月
3.動産及び貸席の賃貸借 1日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

 

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固定資産税台帳の閲覧・証明書の発行 (東京・台東)

2005年08月17日 | 借地・借家に共通の問題

  借地借家人に課税標準額

(1)固定資産税台帳公開に関する地方税法の改正(2002年3月28日)により、固定資産課税台帳の縦覧制度の改正が行われた。従来の納税義務者本人に係る固定資産の縦覧制度は衣替えし、2003年4月1日から「固定資産課税台帳閲覧制度」として法定化された。

(2)従来の「固定資産税台帳の縦覧制度」は、昭和30年代までは一般に自由に公開されていた。しかし、法律的根拠に基づかない理由に因って昭和40年代以降、納税義務者本人以外は原則として台帳を公開しない扱いになった。

(3)今回の閲覧制度の法定化によって今まで縦覧制度の埒外にあった借地・借家人を固定資産税の実質的負担者として認め、その使用又は収益の対象となる部分について固定資産の課税標準額等の情報を開示することになった。それに伴って借地・借家人に対しての固定資産税台帳に記載されている事項の証明制度も法定化された。

   過去に遡って閲覧証明も可能
(1)借地・借家人は東京都の場合、都税事務所で固定資産税及び都市計画税の課税標準額の閲覧或は台帳記載事項の証明を受けることが出来る。

(2)その範囲は 
 ①借地人の場合、固定資産税台帳に記載されている「当該権利の目的である土地」、即ち、借地部の固定資産税の課税標準額及びその課税標準額の証明等である。 
 ②借家人の場合は「当該権利の目的である家屋及びその敷地である土地」即ち、建物と敷地に係る固定資産税の課税標準額とその課税標準額の証明等である。

(3)その場合、借地・借家人は、都税事務所に資格を証明する賃貸借契約書や賃料支払の領収書・供託書等を提示すれば閲覧・証明を受けられる。

(4)課税台帳の閲覧や証明については、請求出来る期間に制限が付いていないので常時行える。

(5)また対象年度は、固定資産税台帳に記載がある限り、過去に遡っての閲覧や証明は可能である。だが、固定資産税の賦課決定の期間制限5年があるので、遡れる上限は5年になるものと考えられる。

(6)閲覧・証明に際しての手数料に関して総務省は「徴収することは適切でない」との見解を発表している。だが、東京都は閲覧(300円)・証明(400円)を手数料とし徴収ている。

 

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マンションの所有者が交替・新規敷金請求 (東京・台東区)

2005年08月16日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 新家主が不当な敷金の新規請求

 台東区根岸の賃貸マンションに住む室田さんは、本年2月に譲渡通知書を受取った。それは建物の所有者が交替しという通知であり、賃貸契約を結び直し、家賃の改定をしたいという内容のものだ。

 問題は、その際新たに家賃の2ヶ月分の敷金が必要であることだ。経済的に破綻した旧家主から敷金が返還される見込みは無い。敷金の二重払いは幾ら何でも理不尽な話である。そんな憤懣を他の居住者にぶつけている中で組合の存在を知り、相談した。

 組合は次の様に説明した。「借地借家法」31条及び判例(※)から、賃貸建物が新しい所有者に譲渡されると貸主の地位は当然に譲受人に承継される。家主が交替した場合、従来の賃貸借契約の条件・内容は、そのまま新家主に承継されるから契約を結び直す必要はない。旧家主から敷金が現実に引継がれたかどうかに拘らず敷金は旧家主から新家主に当然に承継される。従って新たに敷金を新家主に預託する必要はない。勿論家賃の改定に応ずる必要もない。

 組合の説明を受け、マンション居住者は協力して新家主の新たな敷金要求に対してその不当性を追及し、撤回させることを確認した。

 借地借家法
第31条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

 借地借家法31条1項では、民法605条の例外として「建物の引渡しによる借家権の対抗力」を定めている。即ち借家人は、借家権の登記をしなくても、建物の引渡しを受けていれば、家主以外の者に対しても、借家権を主張して、その建物を使い続けることが出来る。借家人は、それまでの借家権の内容をそのまま新家主に主張することが出来る。

(※)最高裁昭和46年2月19日判決 (判例時報622号)

 

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消費者契約法で取消に (東京・台東区) 

2005年08月14日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

      業者に騙されて不当な借家契約を結んでしまった

 マンション入居時の家主は不動産管理会社であった。不動産管理会社は建物のオーナーと家賃保証を条件にサブリース契約でビル一棟を一括賃借し、第三者に個別に転貸していた。

 転貸借契約では期間2年、家賃1ヶ月7万6000円、保証金は38万円(5ヶ月分)、更新料は1ヶ月、特約で退去時に家賃の2ヶ月分を償却するという内容が書かれていた。

 ところが6年後、何かトラブルが有ったのか不動産管理会社は撤退。別の不動産会社が訪ねて来た。貸主が管理会社からマンションのオーナーへ交代したので新規に契約を交わしたい。契約の内容は、従前の契約と同一という説明であった。

 急かされて契約書へ署名押印した。社員が帰ってから契約書を読むと家賃は8万1200円、保証金は2ヶ月分差引かれて敷金22万8000円になっていた。

 納得がいかないので、不動産会社と家主に不当であると抗議した。家主は、不動産会社が勝手にやったもので文句があるなら会社に言ってくれと責任回避の態度。

 一方、不動産会社は訳の判らない弁解と説明を繰返し、挙句には態度を豹変させ「自己責任で契約書にサインをしたんだろう。だったら文句を言う筋合は無い。話合うことは何も無い。帰れ」と怒鳴り散らし、全く誠意が無い。

 そんな折、知人から台東借地借家人組合へ相談に行くことを奨められた。組合は、消費者契約法4条及び5条で解決出来そうなので対処法を検討してみると返答し、再度相談を約束した。

 

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新手の詐欺 (東京・台東区) 

2005年08月12日 | 借家の諸問題

  不動産管理会社変更のニセ情報で
                家賃を騙し取る

 滝沢さんは6月24日(金)の夕方、マンションの集合ポストに不動産管理会社の通知をみつけた。
ご入居者各位へという書出しの「家賃振込口座変更のお知らせ」であった。

 「この度、当マンションを管理する会社が下記の新管理会社に変更になりました。つきましては6月27日以降の家賃の振込口が変更になります。皆々様にはご迷惑をおかけ致しますが、ご了承下さいますようお願い申し上げます」という内容の文面で新管理会社名とその所在地、振込銀行の新口座が書かれていた。「ご質問がありましたら下記まで連絡下さい」と電話番号も書かれていた。

  滝沢さんは、この根岸のマンションに引越して来て3年になる。家賃は直接家主の銀行口座に振込んでいたので文面にあるような管理会社が家賃に関係していたかのような文面に不審を抱いた。書かれた電話番号に電話すると留守番電話になっていて連絡出来ない。

 6月27日(月)昼頃マンションの掲示板に「詐欺に注意」という掲示があった。
「銀行口座変更というニセ情報で家賃を騙し取る詐欺事件が発生しているので注意して下さい」と書かれていた。

  結局「振込口座変更のお知らせ」は詐欺の手口であったことが判明した。
後日、事情通の人から2軒だまされて振込んだと聞かされた。手口の特徴は、25日前後の金曜日、お知らせがポストに投函されることである。今回は管理会社変更であったが、所有者変更という手口が一番多いとのことである。

 

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