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【Q&A】 南側窓の網入りガラスの自然破損 交換費用を支払う必要があるのか (再)

2015年02月23日 | 修理・改修(借家)

  南側窓の網入りガラスの自然破損
    その交換費用を支払う義務があるのか

  (問) ベランダの網入りガラス2面の破損代金を請求されています。自然にヒビが入ったものでも、弁償しなければならないのでしょうか。


 (答) 網入りガラスに何もしていないのにヒビが入ったという経験をした人、現在ヒビが入っているという人は結構多い筈である。普通、ガラスに物が当って割れる場合はぶつかったところから放射状に亀裂が入る。

 ところが、自然にヒビが入ったと考えられる網入りガラスは、陽当りのよい部屋の南側に位置している筈である。そして、ヒビはガラスの下部に集中している。このヒビ割れはガラスの端から始まり、次に90度の方向に曲線を描いて割れるという特徴がある。このような状態にヒビ割れていたら、それは金属とガラスの熱膨張率の差から自然にヒビ割れが生じたものである。「熱割れ」と言われるものである。

 また最近、結露や雨水が下方のパッキンの中に溜まり、鉄製の網の錆による体積の膨張も原因の一つと考えられている。いわゆる「錆割れ」である。ヒビ割れ情況がガラスの下部に集中していることからも錆が原因していると考えるのが自然である。近頃業者は、網入りガラス交換に際し底面と下方側面に防水テープを貼っている。これは切口の網部分からの水の滲入を防ぐためである。熱と錆二つの理由が競合していると考えるのが合理的であろう。

 質問者と同様の問題で争われた保土ヶ谷簡裁の判例(1995(平成7)年1月17日判決。平成6年(ハ)第819号 敷金返還請求事件)(註1)がある。
網入りガラスは切断する際に網も切らなければならないために切り口に傷がつきやすく、そのため端部の強度が網のないガラスの半分程度に落ち、より小さな温度差で割れが起こり易いこと、熱割れの特徴は必ず端部から生じ、しかも端部に直角に生じること、本件建物の窓ガラスの破損は右熱割れの特徴に符号するものである」。
 網入りガラスは熱膨張により破損し易いと認定し、賃借人がガラスを破損したということを認めるに足りる証拠がないから、賃借人が窓ガラス破損の責任を負う理由がないと判示している。ガラスの破損は貸主の負担すべきものとして、借家人の金銭的負担を免除している。


 この裁判の控訴審の横浜地方裁判所(平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)(註2)では、「窓ガラスの破損につき、前記認定のとおり、網入りガラスは熱膨張により破損し易いところ、被控訴人(賃借人)が右破損に何らかの寄与をしたことを認めるに足りる証拠がない(被控訴人が窓ガラスの破損の責任を認めていたことを認めるべき証拠もない。)から、被控訴人が窓ガラスの破損につき責任を負う謂れはない。」と判示している。

 上記横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(註3)という重要な指摘をしている。

  ヒビ割れの根本原因は、網入りガラスの構造的欠陥と切口の錆止め対策の不備に因るものであるり、相談者の故意・過失よる損傷ではない。

 結論、判例などからも相談者は網入りガラスの破損代金を払う必要はない。

  
(註1)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年3月)197頁
「改訂版 賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 2004年9月)には、上記保土ヶ谷簡易裁判所判決は掲載されていない。

(註2)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)195頁

(註3)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)193頁

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