保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人
自主的に組織された借地借家人のための組合です。
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(問) 18坪の土地を賃借していた一人暮らしの80歳の母が亡くなりました。子供は2人ですが、2人とも他に家を所有し、実家に住む予定はありません。現在、地代は供託中で建物も30年以上経っていて、これからの管理も難しい状況で、できたら借地権を処分して、金銭に換えて弟と分けたいと考えています。
借地権を譲渡することができると聞いていますが、どのような方法があるのか教えてもらえませんか。
(答) 借地権を譲渡することは可能です。借地権はその土地の借地権割合(借地権価格と地主の持っている権利である底地権価格の割合、例えば6対4)による価格で第三者に譲渡できます。
借地権を譲渡する場合は地主の承諾を受けます(民法612条)。地主の承諾が得られない場合や承諾料の額が合意できない時には、地主の承諾に代わる裁判所の許可を受ける方法(借地非訟手続)があります(借地借家法19条)。借地権を譲渡する場合は買主を特定した上で裁判所の譲渡許可承諾を受けます。その場合の裁判所の許可条件は承諾料として概ね借地権価格の10%で認められています。
現状では借地権の買主を見つけるのは難しく、知り合いがいれば別ですが、借地権の譲渡は困難がともないます。
借地権の譲渡以外では、次の方法があります。
①地主から底地を買い取りを所有権にしてから第三者に売却する。
②借地権と底地権を等価交換し、取得した土地を第三者に売却する。
①の場合は、借地権ではなく所有権なので買主が見つかる可能性は高い。
②の場合は、土地を分割するので、狭小な土地では難しいですが、分割後の土地が利用可能な広さがあればよい方法です。交換なので金銭の動きがなく地主側にも税制上の利点があります。
①②の場合も地主との取引は、前述の借地権割合に沿って行うのが原則で、取引内容について地主との合意ができないと成立しません。組合や顧問の弁護士さんと相談して慎重に事に当たることが大切です。
東京借地借家人新聞より
借地権割合は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられる。路線価は1㎡当たりで表示されている。借地権割合は路線価に続いてA~Gで区分され、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%と評価されている。
東京23区の場合A~D評価で、C評価の場合が多い。Cの場合は借地権が70%で、底地権が30%とい割合になる。
例えば、路線価が700Cと表示されていれば、1㎡=70万円で1坪当たり231万円になる。路線価は公示価格の80%に想定されている。従って、1坪当たりの推定公示価格は231万円÷0.8=288万7500円(①)。1坪当たりの借地権価格は①×70%(借地権割合)=202万1250円(②)、1坪当たりの底地価格は①×30%(底地権割合)=86万6250円(③)と評価できる。
30坪の借地であれば、底地価格は③×30坪=2,598万7500円であり、地主から底地を買う場合の交渉のベースになる。借地権を売る場合は②×30坪=6,063万7500円がベースになる。
なお、借地借家法19条による裁判所の譲渡許可の決定は、原則として6か月以内に譲渡を完了しないと失効する(借地借家法51条)。
東京・台東借地借家人組合
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判例紹介
そもそも借地権とはなにかー東京地方裁判所平成22年3月25日判決
借地権は、「建物の所有を目的とする」地上権又は土地の賃借権といいます(借地借家法第2条1項)。「建物の所有の目的」でなければ、借地借家法の適用がなく、民法の賃貸借になるので、借地借家法の法定更新等の保護は受けられません。
<事案>は、契約書には「鋼材及び駐車場」と書かれていましたが、「プレハブ構造の仮設建物」がありました。
<判決>は「借地権ではない」として次のように判断をしました。「被告が設置した仮設建物も、いわゆるプレハブ構造のものであり、撤去も容易である上、建物の登記を経由しておらず、本件土地の所有権を取得した者に対して対抗要件を備えていなかったこと、本件土地の主たる目的は「鋼材置場及び駐車場」であり、仮設建物の敷地の広さも約1190坪の本件土地に比して僅少であり、本件土地が建物所有目的であるとは認めるに足りない。したがって、本件賃貸借契約につき、借地借家法の適用がないことが明らかである。」
借地の一部を駐車場して第三者に貸すのは転貸か(地主の承諾がいるか)―東京地方裁判所平成5年3月29日判決
<事案>は、駐車場部分の面積は約15ないし18平方メートル程度で、土地全体の面積125.48平方メートルの12ないし15パーセント程度でした。駐車場の契約内容は、自動車1台の駐車場として賃料を月額2万5000円ないし2万6000円と定めるほか、敷金、第三者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期間については1年間で合意による更新可能としています。
<判決>は「地主の承諾は必要」と判断をしました。
「民法612条(賃貸人の承諾なく賃借人が賃借権を譲渡し目的物を転貸することを禁じ、これに反したときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができるものと規定)の趣旨に照らせぱ、第三者に使用収益をさせた対象が賃貸借の目的物である借地の一部であるからといって民法612条にいう「転貸」に該当しないということはできない。
本件においては、契約内容及び利用形態であることに照らせば、本件駐車場部分を駐車場として使用させたことは転貸に該当する。たしかに、借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合において、自動車を利用する顧客の来訪を容易ならしめるために、右建物に付属して不特定多数の顧客を対象とするいわゆる時間貸しの駐車場を設置するような場合には、第三者を対象とする駐車場として借地の一部を使用することが、社会通念上右建物所有ないし管理の目的の範囲内の利用行為と認められ、転貸に該当しないものと認められることもあり得るものといえる。
しかし、特定の賃借人を対象として賃貸期間1年間しかも更新を前提とする駐車場契約を締結しているのであって、本件駐車場部分を第三者に駐車場として使用させたことについては、社会通念上本件建物所有の目的の範囲内の使用と認めることは到底できないものであり、転貸に当たることは明らかである。」
(2012.08.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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(問) 30年以上も前から土地を借り、住んでいましたが今回、他に住宅を建て借地を地主に返還したいと思いますが、借地権はどうなるのでしょうか。建物はまだ使用できますが、買い取ってもらえるのでしょうか。
(答) 地主から正当事由がなく、土地の返還や明渡がある場合は当然、借地権の買い取り請求も建物の買い取り請求も要求することができます。今回のように、借地人自らが借地契約を解消する場合は、借地権そのものの買い取り請求はできません。
また、借地権を第三者へ譲渡する場合も地主の承諾が必要となります。建物が使用できれば、貸家として第三者に貸家にする方法もあります。その場合は当然借地契約は継続しています。
地主が借地権の買い取りを拒否した場合には、借地人の方で借地権を買い取る人を見つけ、借地権譲渡の許可を求める借地非訟手続きをとる以外に方法はありません。
裁判所で譲渡の許可が下りて初めて借地権の売却が可能となります。不明な点は、お近くの借地借家人組合へ相談してください。
全国借地借家人新聞より
<建物買取請求権>
「契約の更新が行われなかった場合、借地権者は、それまでに自分の権原に基づいて借地上に付属させた建物などを、時価で買い取るよう地主に請求することができる」(借地法4条2項)。
< 建物買取請求権の法的要件>
建物買取請求権の成立には、借地権が消滅したが、①更新のないこと、②借地上に建物等が存在することの2つの要件が必要である(借地法4条2項)。
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(問)私は、祖父の時代から借地上の建物に住んでいますが、家屋も古くなり、息子の所へ同居することになりました。そこで、地主へ土地を返すので借地権を買い取ってほしいと申し出ました。しかし、地主は「これまで通りの地代を支払ってくれ、土地は返還しなくてもよい」と言われて困っています。
どうしたらよいのか悩んでいます。
(答)借地上の建物は古くなり、居住者も高齢者が多くなりました。
建物を改修するにも多額な費用もかかり、年金暮らしの高齢者にとっては、その費用を負担することは出来ません。ところが、地主へ借地権を買い取ってほしいと要求してもほとんどの場合、拒否されてしまいます。
借地借家法第13条1項(同趣旨・旧借地法第4条2項)では、建物買取請求権(注)の規定があり、借地人が建物を地主に買取を請求すると、地主はこれを拒否することはできないことになっています。
しかし、建物の買取価格については、相当に古い建物であると、古材同然の価格になり、借地権価格は考慮されません。それでも、地主が買取を認める場合は、建物の解体費用は地主負担となりますので、更地にして返すよりもまだ救われることになります。借地上の建物は、第三者へ借家として貸すことも出来ます。
詳しくは、借地借家人組合へお問合せください。
全国借地借家人新聞より
建物買取請求権・・・借地権の存続期間の満了に際して、①借地契約が更新されなかった場合の借地権者(借地借家法13条1項)又は②土地賃借権の譲渡・転貸につき、賃貸人の承諾が得られなかった場合の借地上建物の第三者取得者(借地借家法14条)が賃貸人に対して、借地上建物を時価で買取るよう請求出来る権利である。建物所有者から賃貸人に対する一方的意思表示により、建物の売買契約が成立したのと同様の効果が発生する。
参考記事
建物買取請求権 借地契約が終了した場合、借地人は地主に借地上建物を強制的に売りつけることが出来る
借地借家法
(建物買取請求権)
第13条 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
(第三者の建物買取請求権)
第14条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
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(問) 自動車の車庫にすることを約束して、5年間の契約期間で土地を借りていましたが、5年目の今年地主から期間満了を理由に解約の通知をうけました。
借地権があるので、解約の申し出に応じる必要がないとも聞きますが、本当に返さなくてもよいのでしょうか。
(答) 建物を建てる目的で土地を借りた場合、借地借家法が適用されますが、建物が建てられていない車庫の場合は、民法上の賃貸借となりますので、借地借家法が適用されず解約に応じなければなりません。
ご相談の事例では5年間の約束で車庫として更地を借りてていたのですから借地借家法が適用されず、地主の解約申し出に無条件で応じなければならなくなります。
ただし、地主から期間満了しても解約の通知がなかった場合には、従来の契約が継承されることになります(*)。この場合でも、地主から1年間の猶予期間をもって解約の申し出があった場合には解約に応じなければなりません。
全国借地借家人新聞より
(*)参考法令
民法
(賃貸借の更新の推定等)
第619条 ①賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 ①当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 1年
二 建物の賃貸借 3箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 1日
② 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
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(問) 知人の話によると「借地の上に建物が無い状態だと借地権は消滅する」とのことで、大変心配しています。また、建物がない状態で、地主が土地の所有権を誰かに売却すると、その買主から借地人は追出されるとも聴きましたが本当でしょうか。
借地権を守る手段があったら教えてください。
(答) 建物が火災で消失しても、地震で崩壊しても、建替えのために取壊しても、原因は何であれ、建物が無くなることを「滅失」といいます。
借地借家法第10条1項に「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と規定しています。このため、登記した建物がない場合は、原則として第三者に対抗できません。
しかし、同条2項には「前項の場合(*)において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。」と規定しています。
このため、借地上の建物が火災で焼失(滅失)した場合に借地権を守るためには、滅失した日から2年以内に新たに建物を建てて登記すればいいのです。
東京借地借家人新聞より
(*)滅失前に借地上の建物が登記済みであることが必須条件である。
滅失した「建物を特定するために必要な事項」とは、建物登記簿の表題部にある所在、家屋番号、種類、構造、床面積等のことである。
掲示物に記載するのは前記の登記事項であるから、建物が登記されていなかった場合は、掲示物を設置しても、条文上からも第三者に借地権の対抗力を維持することは出来ない。
「掲示が一旦なされた後に撤去された場合には、その後にその土地について借地権の負担のない所有権を取得した第三者に対しては、借地権を対抗することができなくなる。第三者に対して借地権の対抗力を主張するためには、掲示を一旦施したというだけでは不十分であり、その第三者が権利を取得する当時にも掲示が存在する必要がある。」(東京地裁平成12年4月14日判決、金融商事判例1107号)
掲示の保全につき、注意を喚起させる事例である。
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大田区久が原*丁目に宅地33・45坪を賃借していたYさんは、更新料支払いを拒否したところ、昭和63年10月分地代が受領拒否されて供託することになった。
年末に地主の友人という弁護士から「世間並みの更新料」を支払わないとは何事かと、法的手続き取る旨の書面が届き組合に相談のうえ入会した。
直ちに、借地法に基づき法定更新になっていることを指摘し、重ねて更新料の支払いを拒否した。さらに受領拒否により地代を供託していることを地主代理人弁護士に通告した。
それから15年Yさんが死去し奥さんが相続して地代の供託を継続した。奥さんも2年前から体調を崩し入退院を繰り返すようになり、昨年には養老の老人ホームに入ることになった。その経費捻出のために借地権を処分したいと組合に相談された。
約20年及ぶ地代供託の状況で地主の承諾は困難と考えつつ、組合知り合いの不動産業者を介しての地主交渉は不調。同業者を介して借地権の購入者を得て、借地非訟手続を行った結果、地主が借地権を買い取ることになり、裁判所の鑑定のための現地調査が行われて、今年5月和解が成立した。
和解まで約7カ月経過したがこれまでの経費を差し引き手にした金額に、Yさんの奥さんは「安堵しています」と老人ホームから丁寧な挨拶があった。
東京借地借家人新聞より
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判例紹介
借地人BがCとの間に借地上の建物につき借地権付売買の予約をし、CがさらにDとの間に賃貸借契約を締結したことにつき、これを仮装として、借地権の譲渡に該当するとされた事例 (東京地裁平成8年6月2日判決、判例時報1600号115頁)
(事実)
(1)借地人Bが借地権を譲渡したい旨地主Aに申出たところ、Aは本件土地が自宅敷地に接しているいることから承諾を拒否した。
(2)その後BはCとの間に借地権付建物の売買予約を締結し、CはBに7200万円を支払って建物の利用権を取得し、かつ、所有権移転請求権仮登記を経由した。
(3)その後建物の周囲に足場が組まれて改装工事がなされ、Cから建物を賃借したDが医院として利用し始めた。
(4)Aは、右一連の事実からすると、BはAに無断で借地権を譲渡したものであるから、借地契約を解除し、Bに対し建物収去土地明渡を求めた。
(5)これに対しBは、BはCに対し借地権付で本件建物を売渡す予約したのみで、Cには本件建物を賃借しているだけであると主張し、Aの請求を争った。
(争点)
BとCとの契約は借地権の譲渡に当たるか否かである。
(判旨)
(1)Aの譲渡不承諾の意向を承知しているにもかかわらず、あえて、CがBに7200万円という高額の金員を支払い、本件建物の占有を取得し、これをDに転貸し、改修等自由にこれを利用していること、その代わりBは本件建物から転居し利用について全く関与しなくなっていることからすると、BはAの承諾を得ないまま借地権と建物の譲渡を強行したというべきである。
(2)BとCは、Aの不承諾意思にもかかわらず本件借地権の譲渡を断念するつもりがなく、かつ、譲渡した場合と同様の経済的効果(引渡、金銭授受、利用、仮登記)を先取り的に実現しているのであり、譲渡予約を仮装しながら、実は譲渡を強行していることに他ならない。
(3)Aの不承諾の意向に不当な点はなく、BとCはAの承諾を得ずに、かつ、警告を無視して本件借地権を譲渡したものであるから、Aの解除は理由がある。
(寸評)
本件借地人BとCはやり過ぎである。地主Aの解除を認めた本判決は正当であると思う。
借地権譲渡を地主が承諾しなかった場合には、借地人は借地権譲渡許可の申立を裁判所に起こせる。本件のBもそれを起こしたが、それはDが医院を開業した後であった。やはり譲渡許可の裁判所の決定を取り、しかる後に事を始めるべきであった。
(1997.10.)
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借地権売却悩み抜く? 父、弁護士に相談 足立無理心中
2008年03月01日 朝日新聞
東京都足立区の機械修理・販売業佐々木亨さん(52)の一家4人が死傷した無理心中事件で、佐々木さんが不動産会社と借地権の売却契約を結んだ直後、地主から異議を唱えられ、相談した弁護士からも「地主の承諾をもらうべきだ」と指摘されていたことがわかった。警視庁は、借地権売却に行き詰まったと思い込んだことが家族殺傷につながったとみて、佐々木さんを被疑者死亡のまま殺人などの疑いで書類送検する方針だ。
捜査1課などの調べでは、佐々木さんは2月5日、自宅と倉庫の土地の借地権を約4800万円で都内の不動産会社に売る契約を結んだ。同社が翌6日、倉庫の土地の地主に契約内容を通知したら、地主が佐々木さん方を訪れ、「無断での契約は認められない」などと指摘したという。
佐々木さんは同8日、借地権関係を専門とする弁護士に電話で相談。この弁護士によると、佐々木さんは「契約内容は変えられるのか」と尋ねてきた。契約をすでに終えたことは明かさなかったため、弁護士は「地主に断らずに契約しないほうがいい」と伝えたという。その3日後の同11日に事件は起きた。
佐々木さんが9日に発送していた不動産会社との契約書面は、事件後の12日に弁護士に届いた。弁護士は「書面内容に問題はなかった。電話の際は焦った様子で、契約がだめになると思い込んでしまったのではないか」と話している。
不動産会社は警視庁に「地主の承諾がなくても裁判所の許可を得れば売却は可能と伝えたが、佐々木さんは納得しなかった」と話しているという。
両手首切断などで一時重体だった次男(15)は意識が戻ったという。
「地主と借地権を巡るトラブルが引き金か 東京足立一家4人死傷事件」も覗いて見て下さい
借地権の譲渡、借地の処分等の相談は台東借地借家人組合へ電話してみてくださ。
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2008年2月11日、東京都足立区梅田2丁目の機械修理・販売業佐々木亨さん(52)が自宅で妻和子さんら家族3人を死傷させ、自殺したとされる事件(佐々木さんのほか妻和子さん(49)と母得子さん(85)が遺体で発見され、次男(15)も両手首を切断するなどの重体であったが、意識は戻ったという)で、佐々木さんが書いたとみられる手紙が日本テレビ(東京都港区)とテレビ朝日(同)に届いていたことが14日分かった。無理心中をにおわせているが、不動産トラブルに巻き込まれたことを示唆する内容があった。
日本テレビによると、手紙は宅配便で2月14日の日付指定で届いた。この手紙などが宅配便業者に持ち込まれたのは、佐々木さん方から血が流れ出ているのが発見される1時間弱前の2月11日午後2時45分頃だった。送り主の欄には佐々木さんの名前が記され、 佐々木さん方の土地の借地権売買に関する書類も同封されていたという。
手紙には「欲に目が眩んだ自分の責任です」「母親には車イスで生活できる家を、(妻の)和子には好きな洋裁をする家を、子供達には自分の部屋をプレゼントしたかった。全部無くしてしまいました。死んでお詫びします」などと手書きされ、「佐々木亨」と署名があった。
また、。「宅建業者に騙されたという思いもあります」、「二度と私のようなバカを出さない為にも調べて頂けないでしょうか」などと取材を求める内容だった。
事業不振であえぐ中、佐々木家に降って湧いたのが、自宅などの借地権の売却話だった。
マンション建設計画で周辺の土地を買い進めていた都内の不動産会社が去年10月頃、亨さんに借地権の売却を打診。相場は2500万円程度だったが、亨さんは「4500万円ほしい」。その希望に沿うために、不動産会社は日光街道を挟んだ自宅向かいの倉庫の借地権も購入することにして、2月5日、約4800万円で売買する契約を結んだ。
地主への借地権譲渡承諾料に必要な約300万円を除く、約4500万円が手に入ることになり、2月5日には約400万円の手付金も支払われていた。立ち退きをしたときに残金が支払われることになっていた。
佐々木さんは担当者に「これで仕事を辞める踏ん切りがついた」とすっきりした様子で語ったといい、「和子さんも得子さんも手をたたかんばかりに喜んでいた」と会社関係者は言う。
しかし、借地権の売却は暗転する。
地主が佐々木さんを訪ねたとされる2月8日頃には、近所の人が佐々木さん方から「分かってるんだろう」という男性の怒鳴り声を聞いている。
佐々木さんは事件3日前の2月8日、不動産会社に電話し、悲痛な声で訴えた。
「倉庫の地主が売買を認めてくれない」、「借地契約を解除されてしまう」と怯えた様子で相談したという。
関係者によると、2月6日、不動産会社が倉庫の地主に契約成立を手紙で通知すると、8日朝に地主が、佐々木さん方を訪れ、「借地の更新料の問題も解決していないのに、そんな(借地権売買)契約は認めない」」と怒鳴り込み、「借地権譲渡の承諾をしない」と告げたという。
佐々木家と地主には確執があった。佐々木亨さんの父親が生前、借地の更新料を巡り、この地主とトラブルになった。その後、地代の値上げ問題で再びトラブルになり、地主は佐々木さんからの地代の受領を拒否したので、平成8年から継続して法務局に地代を供託している。
佐々木さんは不動産会社に電話で相談し、契約の有効性を確認した。電話を受けた不動産会社の担当者は、仮に地主の承諾が得られなくても、裁判所の許可で借地権を売却できることを説明し、「大丈夫ですよ」と励ました。
佐々木さんは怯えきった様子で、このときの電話が亨さんと不動産会社側の最後のやり取りになったという。
警視庁の調べでは、亨さんには約2000万円の預貯金があり、犯行前にその一部を預けた口座の通帳を姉に渡していた。事業は行き詰まっていたものの、金銭的な余裕はあったとみられ、借地権の売買をめぐる悩みが動機となった可能性もあるとみられている。また、使われたナタは事件数日前に佐々木さんが購入していたもので、覚悟を決めたうえで計画的に事件に及んだとみている。
上が報道されている内容を纏めてみたものである。
報道されている内容(不動産会社に「借地契約を解除されてしまう」と怯えた様子で相談したいていること及び「全部無くしてしまいました」と書いていること)から佐々木さんが借地権売買契約をしたこに対して、地主が不動産会社への借地権売買契約は「無断譲渡だから借地契約を解除する。建物を取壊して即刻、土地を明渡せ」と脅したものと推察される。
地主の主張する法律的根拠は以下のようになる。
借地権を第三者に譲渡するときは、借地契約書に「借地権の譲渡には必ず地主の事前承諾を要する」との条項が記載されていなくても地主の承諾は必要である(民法612条1項)。
地主の承諾を得ないで借地権を第三者に譲渡した場合、地主は借地契約を解除することができる(民法612条2項)。
だが、報道されている内容では、借地権の売買契約を締結し、手付金400万円の支払いを受けたという状態では借地権の無断譲渡には該当しない(下記の(*)を参照)。従って、民法612条を根拠に地主がいくら強硬に主張しようと借地の契約解除・土地明渡の問題は発生しない。
直ぐに裁判所に「借地借家法19条」に基づく「譲渡承諾の非訟手続」をしていれば、何ら問題が起こらないで済んでしまった筈である。
どういうことかというと、借地権が第三者に譲渡されても地主に不利益がないのに地主が飽くまで承諾しないときは「借地借家法19条」の規定により裁判所に対して「地主の承諾に代わる譲渡許可」の申立をすれば、地主が承諾を拒み続けても裁判所の認定した譲渡承諾料(殆どの場合、借地権価格の10%)を支払えば適法に借地権の譲渡をすることが出来る。
勿論、借地借家法19条3項の規定から地主が「先買権」を行使し、不動産会社が提示した買取金額から地主本人が買うので譲渡承諾料を差引いた金額で、不産会社を出抜いて地主が借地権を買取ることもありえる。
従って、不動産会社は、借地人と借地権の売買契約を締結しても借地権を買取れるという保証はない。もし不動産会社が買うのであれば、借地人は借地権価格の10%の譲渡承諾料を地主に支払う。地主が買うのであれば、譲渡承諾料は不要である。借地人としては、どちらが買おうとも、手にする金額に違いはないので、特段の不利益はない。
参考法令
民法(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
借地借家法(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第19条 借地権者(借地人)が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者(地主)に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者(地主)がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者(借地人)の申立てにより、借地権設定者(地主)の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付(譲渡承諾料)に係らしめることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
(*)詳しいことは、以前に書いた「Q&A借地権を売却したいのだが、地主が借地譲渡の承諾をしない 」を覗いてみてください。
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判例紹介
借地上の建物について譲渡担保を設定することが賃借権の譲渡にあたるとされた事例 (東京地裁平成4年7月20日判決、判例タイムズ825号185頁以下)
(事実)
AはXから、借地上の建物を第三者に譲渡、転貸あるいは賃借権を担保に供し地上建物を第三者に譲渡するときは、事前に書面による承諾を得るとの特約で借地をしてきた。
Aの相続人Y(1)が借地権を相続により承継した。Y(1)は借地上の建物についてY(2)に対して譲渡担保を設定し、これを原因とする所有権移転登記を了した。Y(2)は、譲渡担保設定後、借地を占有して、借地上建物を第三者に賃貸して家賃収入を得ていた。
Xは、建物の無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除し、建物収去土地明渡請求の訴をした。本判決はXの勝訴。
(判旨)
Y(2)はY(1)から本件建物の所有権移転登記を了した後、当時の賃借人から賃料を受領し、次いで**不動産を介し自らこれを他に賃貸して賃料収入を得ているのに対し、Y(1)放置するなどしており、またY(1)及びその夫は右債務を弁済するだけの資力を有さず、従って本件建物の所有権を回復することは極めて困難な状況にあるが、かかる事実に鑑みると、Y(1)において、その夫のY(2)に対する債務の弁済等により容易にY(1)とY(2)間の本件建物にかかる譲渡担保契約を終了せしめ得ること等特段の事由を主張立証しない以上、Y(1)のY(2)に対する本件建物の譲渡は、XとY(1)間の本件賃貸借契約の特約にいう本件建物の第三者への譲渡または土地賃貸借権の譲渡に該当するものといわざるを得ない。」
(寸評)
譲渡担保を賃借権の譲渡にあたると判断した例として紹介した。従来の判例は、譲渡そのものにあたらないとか、背信性がないとの理由で解除を否定したものが多かった。本判決は、譲渡担保設定後の賃借人らの実態が、実質上の賃借権譲渡にあたると判断したもので、当然の結論といえよう。
占有移転を伴う譲渡担保は、その期間が相当のものであると、本判決と同様の結果になるので注意を要する。
(1994.02.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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判例紹介
土地賃貸借権の時効取得が認められるとされた事例 (最高裁昭和62年6月5日判決 判例時報 1260号7頁)
(事実)
賃借人は昭和25年5月に平野善徳から建物を買い所有権移転登記受け、土地は地代年1600円の約束で賃借して地代を平野善徳に支払っていたが、昭和55年になると、磯野吉太郎という人から、土地の所有者は自分であるから建物を収去して土地を明渡して貰いたいと要求された。
登記簿上の所有名義は磯野吉太郎になっていた。賃借人は、所有者でない人から借地したわけであるが、土地所有者からの土地明渡請求に対して賃借権を時効取得したので明渡す義務はないと争った。
1・2審とも賃借人の時効取得の主張が認められ、最高裁判所も賃借人の主張を認めた。
(判決要旨)
他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときには、民法163条により、土地の賃借権を時効取得するものと解すべきことは、当裁判所の判例(*)とする所であり、他人の土地の所有者と称する者の間で締結された賃貸借契約に基づいて、賃借人が平穏公然に土地の継続的な用益をし、かつ、賃料の支払いを継続しているときは、前記の要件を満たすものとして、賃借人は、民法163条所定の時効期間の経過により、土地の所有者に対する関係において右土地の賃借権を時効取得するに至ると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件土地は、磯野泉蔵の所有であったが磯野吉太郎が相続したこと、昭和3年に磯野泉蔵から土地の提供を受けて平野定次が建物を建てて居住していたところ平野善徳が建物を相続したこと、賃借人は昭和25年5月12日平野善徳から建物を買受け、土地については賃貸借契約を結び、平野善徳に賃料を支払って居住してきたこと、昭和55年まで磯野吉太郎から土地の明渡しを求められたことがなかったこと、以上の事実関係のもとにおいては、賃借人の本件土地の継続的な用益が賃借に基づくものであることが客観的に表現されているものと認めるのが相当であるから、20年を経過した昭和45年5月12日に土地賃貸借権を時効取得したものということができる。
(解説)
賃借権も時効取得できるということが最高裁判所の判例になっている。時効というのは、既成事実が長期間続くと無権利者も権利者に変えてしまう効力がある。それだけに、裁判の実際では、時効を認めてもらうのは簡単ではない。
(1988.04.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
(*)最高裁昭和43(1968)年10月8日判決(最高裁判所民事判例集22巻10号2145頁)がある。
(所有権の取得時効)
第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(所有権以外の財産権の取得時効)
第163条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。
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判例紹介
土地賃借人である有限会社の持分及び営業一切を新たな経営者に譲渡したことが、土地賃借権の譲渡に当たるとされた事例 (東京高裁平成5年12月15日判決。判例タイムズ874号210頁以下)
(事案)
土地3筆をAから賃借しその土地上に建物を所有する有限会社Yは、その会社の持分全部を営業一切が旧代表者から新代表者Cに譲渡された後、この土地所有権の譲渡を受けたXから建物収去土地明渡の訴えを起された。
Xらは持分権全部譲渡は賃借権の無断譲渡であると主張し、右行為は信頼関係を破壊するとして契約解除を主張した。
Yは、無断譲渡を否認し、Aの相続人A'から承諾をえていたから、Xらの本訴請求は権利の濫用であるとして争った。
1審は、持分権の譲渡は法人格の変更ではないから、賃借権の譲渡にならないが、YはB個人の会社からC個人の会社になり、信頼関係が失われたと認め、Xの請求を認めていた。
(判旨)
「本件は、単に控訴人会社の代表者の地位がBからCに変更されたというものではなく、控訴人会社という個人的有限会社の経営者であるBが、その持分全部を含め控訴人会社の営業の一切を新たな経営者であるCに譲渡して控訴人会社から手を引いたというものであり、右譲渡の前後を通じて、控訴人会社の法人格は形式的には同一性を保持しているとはいえ、控訴人会社ごとき小規模な個人会社においては、賃借人経営者と地主との個人的な信頼関係に基づいて不動産賃貸契約が締結されるのが通常であり、経営者が経営から完全に撤退して新経営者が経営を担当し、不動産を使用するに至ることは、その実質に着目すれば、旧経営者から新経営者に対し賃借権の譲渡がなされたものというべきである」
(寸評)
以前にも紹介したが、本件判決と同旨の判例が、この種の事案の主流のように思われる。
賃借権の譲渡という実態を、法人格の同一性という形式にかかわらず評価していくという見方が定着しつつある。いわゆる法人成りの場合の判例の傾向とは異なっているのでご紹介した。
(1995.07.)
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