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【Q&A】 備付けのエアコンの修理代金は家主の費用負担

2015年05月27日 | 修理・改修(借家)

    備付けのエアコンの修理代金は
      修繕特約がある場合でも家主の費用負担

 (問) 賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼 するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修 理代金を負担するのが道理だと思うのですが。


 (答) 民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来 る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。

 (1)「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁 平成2年10月19日判決)。

 (2)「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所 平成8年11月28日判決)。

 (3)横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本 件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替 費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴 人(賃借人)が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(横浜地方裁判所 平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)

  即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合で も、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効 というのが裁判例である。
 上記、横浜地裁判決では、通常使用で発生した破損・損耗等の損害は賃借人に修繕義務がないと判示している。

  結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えないし、通常使用による損害に対しては賃借人は修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理 費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、修理代金と家賃を相殺することが出来る。

 

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【Q&A】 南側窓の網入りガラスの自然破損 交換費用を支払う必要があるのか (再)

2015年02月23日 | 修理・改修(借家)

  南側窓の網入りガラスの自然破損
    その交換費用を支払う義務があるのか

  (問) ベランダの網入りガラス2面の破損代金を請求されています。自然にヒビが入ったものでも、弁償しなければならないのでしょうか。


 (答) 網入りガラスに何もしていないのにヒビが入ったという経験をした人、現在ヒビが入っているという人は結構多い筈である。普通、ガラスに物が当って割れる場合はぶつかったところから放射状に亀裂が入る。

 ところが、自然にヒビが入ったと考えられる網入りガラスは、陽当りのよい部屋の南側に位置している筈である。そして、ヒビはガラスの下部に集中している。このヒビ割れはガラスの端から始まり、次に90度の方向に曲線を描いて割れるという特徴がある。このような状態にヒビ割れていたら、それは金属とガラスの熱膨張率の差から自然にヒビ割れが生じたものである。「熱割れ」と言われるものである。

 また最近、結露や雨水が下方のパッキンの中に溜まり、鉄製の網の錆による体積の膨張も原因の一つと考えられている。いわゆる「錆割れ」である。ヒビ割れ情況がガラスの下部に集中していることからも錆が原因していると考えるのが自然である。近頃業者は、網入りガラス交換に際し底面と下方側面に防水テープを貼っている。これは切口の網部分からの水の滲入を防ぐためである。熱と錆二つの理由が競合していると考えるのが合理的であろう。

 質問者と同様の問題で争われた保土ヶ谷簡裁の判例(1995(平成7)年1月17日判決。平成6年(ハ)第819号 敷金返還請求事件)(註1)がある。
網入りガラスは切断する際に網も切らなければならないために切り口に傷がつきやすく、そのため端部の強度が網のないガラスの半分程度に落ち、より小さな温度差で割れが起こり易いこと、熱割れの特徴は必ず端部から生じ、しかも端部に直角に生じること、本件建物の窓ガラスの破損は右熱割れの特徴に符号するものである」。
 網入りガラスは熱膨張により破損し易いと認定し、賃借人がガラスを破損したということを認めるに足りる証拠がないから、賃借人が窓ガラス破損の責任を負う理由がないと判示している。ガラスの破損は貸主の負担すべきものとして、借家人の金銭的負担を免除している。


 この裁判の控訴審の横浜地方裁判所(平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)(註2)では、「窓ガラスの破損につき、前記認定のとおり、網入りガラスは熱膨張により破損し易いところ、被控訴人(賃借人)が右破損に何らかの寄与をしたことを認めるに足りる証拠がない(被控訴人が窓ガラスの破損の責任を認めていたことを認めるべき証拠もない。)から、被控訴人が窓ガラスの破損につき責任を負う謂れはない。」と判示している。

 上記横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(註3)という重要な指摘をしている。

  ヒビ割れの根本原因は、網入りガラスの構造的欠陥と切口の錆止め対策の不備に因るものであるり、相談者の故意・過失よる損傷ではない。

 結論、判例などからも相談者は網入りガラスの破損代金を払う必要はない。

  
(註1)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年3月)197頁
「改訂版 賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 2004年9月)には、上記保土ヶ谷簡易裁判所判決は掲載されていない。

(註2)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)195頁

(註3)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)193頁

関連記事 『自然に割れた網入りガラスの交換代金を請求される

 

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内容証明で修繕請求、 家主が雨漏りを修繕 (東京・足立区)

2013年05月17日 | 修理・改修(借家)

 足立区内で借家をして10数年になるAさん(仮名)は更新料問題で組合に入会し、その後法定更新になった。

 今回は不動産屋に雨漏りの修繕要請をしても、一向に履行してくれないので組合事務所に夫婦で相談に行った。

 組合では建物賃貸借契約書を吟味し、Aさんからも話を聞き、民法606条1項の「賃貸人は賃借物の使用及び収益に必要な修繕をなす義務を負う」と定めていることを説明した。その上で、家主は借家人が契約通りに建物を使用できるよう修繕する義務があると付け加え、まずは直接家主宛てに期日を区切り雨漏りの修繕を要求し、修繕が行われなければ借家人が業者に依頼し、家主に修繕費用を請求し、支払がない場合賃料から修繕費用を相殺する旨を内容証明郵便にして送った。

 しばらくすると家主が業者に依頼したのか修繕の下見に来た。2週間後には工事が終了し、Aさんからお礼の電話が組合に寄せられた。今回は不動産屋に無視されてもあきらめず、家主に内容証明郵便で修繕請求を申し入れたことが好結果につながった。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 家主に雨漏りの修繕を頼んだがやってくれない場合の対応は

2013年04月19日 | 修理・改修(借家)

 【問】 私は木造瓦葺平屋建て床面積82.6平方メートルを賃借して8年経過しました。先月の暴風で屋根の瓦に異常が生じたのか雨漏りがするようになり、家主に修繕工事を要請しましたが、いまだに工事は行われていません。どのように対応すれば良いのでしょうか。


  【答】 家主は家屋を賃貸するにあたり、借主が使用・収益できる状態で賃貸する義務があります。雨漏りにより借主への使用・収益に支障を来たす状態に至ったのであるから、家主に家屋の修繕する義務があります(民法606条1項)。家屋を賃貸させて家賃収入を得ている立場を自覚せずに、家屋の修繕を怠っている家主に問題があります。

 借主が自ら修繕工事を行い、その代金を家主に支払わせることができます。家主に対し、改めて工務店の修繕工事費見積と修繕工事着工期日を決め、その期日までに家主側の工事が行われない場合は、借主が修繕工事を工務店に依頼し、その代金を家主に請求する旨を書面にて通告する。後日の証として内容証明郵便の活用が望ましい。

 工事終了後、家主が代金を支払ってくれない場合は、家賃と相殺する権利が借主にはあります(民法608条1項)。暴風によって生じた雨漏りの修繕工事であり、家屋の維持保全に必要な経費を負担するのは、家主の当然の義務です。借主は家屋を安全安心して使用できることで収益があるのです。家屋が著しく老朽化による朽廃状態でない限り修繕は家主の義務です。

 

全国借地借家人新聞より


 <民法>

(賃貸物の修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

 (賃借人による費用の償還請求)
第608条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

 

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雨漏りの修繕は家主の責任 (兵庫県・尼崎市)

2013年04月17日 | 修理・改修(借家)

 Aさんは築50年になる建物を昭和59年に文化住宅2階建ての2戸を店舗と工場として賃借しました。現在、3棟あわせ6戸が入居しています。
 家主は、本年2月に老朽化と雨漏りを理由に借家を明渡せと電話で請求してきました。老朽化や雨漏りの修繕は家主の責任であり、明渡しの理由に当たらないと書面で通知しました。

 これに対し、家主は「①居住者は2階に1戸だけ、その人が退去すれば空家になり、放火されると近隣に延焼の危険性がある」との理由と、「②雨漏りは今年2月に初めて電話で知った。借主が長い間放置していたことが建物の老朽化を進行させた」として善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)違反であることを理由に本年7月末をもって明渡しの通告をしてきました。

 改めて建物の財産管理はあくまで家主にあり、借主に責任転嫁は筋違いであり明渡しを拒否しました。借主は修繕を一貫して要求し、建築業者に修繕見積もりを依頼、家主に修繕見積内容を知らせ、家主が修繕しなければ借主が修繕し、その費用は家賃から差引く旨の書面を送り回答を求めました。 

 家主は借主に電話で修繕を約束しました。家主は明渡しをあきらめわけではなく、賃料値上げも考えられ、全入居者に組合ビラを配布しました。

 Aさんは組合とともに頑張りますと述べています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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家主が雨漏りを修繕 (東京・足立区)

2013年01月25日 | 修理・改修(借家)

 足立区千住東で建物を賃借している組合員のAさんは台風等で大雨が降ると押入れとトイレが雨漏りして困っていた。どのような形で家主に伝えたらよいものかと組合事務所に相談に行った。

 無断で修繕とも考えたが、相談もなく勝手に工事をしたと家主からいわれるのも嫌なので、組合役員と相談して「家主の修繕義務」を主張しないで「大雨時雨漏りが酷いのでビニールシートで屋根を覆う応急処置を施そうと考えており許可をいただきたい」と通知書を送ることにした。

 数日後、千葉県市川市から家主が訪ねてきて、現場を見るなりビニールシート掛けで雨漏りを防ぐのは無理と判断し、知り合いの工務店を呼んでセメント瓦をと根太板を撤去しトタン屋根にする工事の見積もりをさせ、家主側で工事をすることを約束してくれた。

 Aさんはまさか家主の全額負担で修繕してくれるとは思ってみなかったので、組合に入会していたことが今回の短期間での問題解決に至ったと喜んでいる。

 

東京借地借家人新聞より

 

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水漏れで1か月以上も貸主が修理しなかったので部屋中に大量のカビが発生 (千葉県)

2012年10月04日 | 修理・改修(借家)

 私が借りている1階の部屋で水漏れがありそれ以来、部屋は常に水溜り状態になり家具・洋服・パソコンなど全てにカビが発生し、使用できなくなりました。不動産業者に修繕を依頼しましたが、一向に工事をしてくれません。

 1か月以上も経って修繕しましたが、引き続きカビは生え、高湿度のため衛生的にも良くなく体に変調をきたしました。この間、色々なものにカビが生え、これ以上この部屋に住みたくないので、引越しの費用と洋服のクリーニング代他を補償してほしいと言ったが、不動産業者から何の補償もしないと言われました。

 このままでは納得がいかず弁護士さんと相談しましたが、「補償の請求は厳しい」と言われ困っておりました。市の広報で組合の無料相談会を知り、話を聞いてもらい、組合に入り不動産業者と交渉しています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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入居直後から修理トラブル続発 (東京・足立区)

2012年09月27日 | 修理・改修(借家)

 足立区内で建物を賃借していたAさんは10数年前就職のために、職場に近い池袋の不動産屋で1kの物件を斡旋され、合計30数万円を支払って入居した。 

 入居直後からトラブルの連続で、とくに水洗トイレの問題では不動産屋、系列管理会社に連絡しても、自分で対処するように言われ、何もわからず電話帳で業者を探し修理した。

 その頃は家主も知らされず、家賃との相殺も知らず、途中から現在の管理会社になって家主名も分かったが、TVアンテナ・感知誤動作・階上の騒音問題に悩まされた。その後組合に入会し、組合役員の助言で賃料改定、更新では一定の成果が出て、以後法定更新になり、家賃は据え置かれた。

 本年7月末の退去時に室内クリーニング代3万円を請求され、組合が窓口になり修理代・敷金の返還等で管理会社と交渉を続けている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 家主が修繕義務を果たさないときは?

2011年11月17日 | 修理・改修(借家)

 【問】 私は戦前からの借家住まいです。建物が古くなって雨漏りなどで困っています。ところが家主は一向に修繕してくれません。どうすればよいでしょうか。


 【答】 民法606条は、賃貸人の修繕義務を定めています。しかし、賃料の額や家主の経済事情などを理由に、修繕を渋るケースがあります。

 そんな時は、借家人は文書=内容証明郵便が有効=で、修繕が必要なこと、破損箇所・状況を知らせて、可能ならば見積りは幾らかも記載した上で修繕を請求することです。

 その際、指定日の希望も書き、その日まで修繕をしてもらえないときは、借家人が修繕費を出して修繕すること、またその費用は、家主に請求することを催告しておくとよいでしょう。

 それでも家主が修繕しない場合は、借家人が自ら業者に依頼して修繕をすることができますし、その費用も家主に請求できます。

 ただ、いつもスンナリ行くわけではありません。そんな時は、裁判所に調停などを申し立てても修繕してもらうのだ、との強い意思を示すことが大切です。ただ、一人では心細いものです。最寄の組合に相談してもらうことが一番です。

 

全国借地借家人新聞より


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【Q&A】 備え付けのガス給湯器が故障したが家主が修理をしないときの対処法は

 

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雨漏りの修繕工事費を家賃で相殺 (東京・葛飾区)

2011年08月29日 | 修理・改修(借家)

 葛飾区金町に住むBさんは、賃借中の家屋の雨漏りの修繕を組合を通じて家主に要求した。家主の代理人弁護士より組合に「修繕の実行については回答を保留する」との回答があった。

 雨漏りの修繕を拒否されたBさんは、やむなく工務店に修繕を依頼し、工事を完了させた。当然その工事見積書は家主に送付した。修繕費の支払を家主に拒否されたので、毎月支払う家賃の半額を家賃から相殺し、修繕費が回収されるまで家賃からの相殺を続ける予定だ。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 賃貸人の修繕義務不履行によって賃借人が被った営業利益相当の損害の範囲

2009年09月28日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 店舗賃借人が賃貸人の修繕義務不履行によって被った営業利益相当の損害の範囲 最高裁平成21年1月19日判決、判例時報2023号)


 (事案の概要) 
 1 賃借人Xは平成4年3月、賃貸人Yからビルの地下1階をカラオケ営業のために月額20万円で賃借した。

 2 平成4年9月頃から本件店舗に浸水が頻繁に発生したが、平成9年2月には床上30~50cmまで浸水した(本件事故)。そのためXはカラオケ店の営業ができなくなった。

 3 Yは本件事故直後より、Xからえオ業再開できるよう修繕を求められていたが、これに応じず、逆に賃貸契約の解除を主張してXに退去を要求し、、電源を遮断するなどした。

 4 Xは営業再開の目途も立たないため、平成10年9月、Yの修繕義務不履行により営業利益喪失等による損害賠償を求める本訴を起こした。これに対し、Yは修繕義務の存在を否定し、さらに、賃料不払等を理由として賃貸借契約の解除を主張し本件店舗の明渡を求めた。

 5 名古屋高裁金沢支部は、「Yは本件事故後も引続き賃貸人として本件店舗部分を使用収益させるために必要な修繕義務を負担していたにもかかわらず、その義務を尽くさなかった。Xは本件事故の日からカラオケ店営業ができなかったから、Yに対し、本件事故の1か月後である平成9年3月12日からXの求める損害賠償の終期である平成13年8月11日までの4年5か月間の得べ借りし営業利益3104万円を喪失したことによる損害賠償を請求する権利がある」と判決した。これに対し、Yが上告した。


 (判決要旨) 
 ① Yが修繕義務を履行したとしても老朽化(築後約30年)して大規模な改修を必要としていた本件ビルにおいてXが賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
 ② 営業再開は一実現できるか分からない実現可能性が乏しいものとなっていた。
 ③ カラオケ店営業は本件店舗以外の場所で行うことができないものとは考えられない。
 ④ Xはカラオケセット等の損傷に対し約3700万円の保険金が支払われていたのであるから再びカラオケセットを整備するのに必要な資金を得ていた。

 そうすると、Xがカラオケ営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく、本件店舗における営業利益相当の損害が発生するにまかせて、その損害のすべてについての賠償をYに請求することは、条理上認められない。よって、右損害の回避又は現象の措置を執ることができた時期以降の損害のすべてをYに請求することはできない、として原判決を破棄して損害の範囲について更に審理を尽くすよう原審に差し戻した。


 (寸評)
 家主の修繕義務不履行による賃借人の損害にはいろいろあるが、店舗の営業利益を失ったことによる損害の賠償を求める際には、この判決の趣旨を念頭におく必要がある重要な判決。

(2009.09.)

(東借連常任弁護団) 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 *借家人の家主に対する営業損害の賠償は通常生ずべき損害の範囲の限度

2009年07月13日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 借家人から家主に対する修繕義務不履行による営業損害の賠償請求について、借家人が損害を避けることができたと考えられる時期以後の損害については認められないとされた事例 (最高裁平成21年1月19日判決 判例時報2032号45頁)

(事案)
 家主は借家人に対し、平成4年3月5日、賃料月額金20万円、使用目的を店舗として、建物を賃貸した。
 平成9年2月12日、本件店舗の床上30センチメートルから50センチメートルまで浸水(本件事故という。)したため、カラオケ店の営業ができなくなった。借家人は家主に対し、修繕を求めたが、家主はこれに応じなかった。

(請求)
 借家人は家主に対し、カラオケ営業ができなくなったとして、営業利益相当額の損害賠償の請求をした。
他方、家主は、修繕義務を否定し、賃料不払い等を理由として、建物賃貸借契約を解除し、建物明渡しの請求をした。

(原審名古屋高裁金沢支部判決)
 家主の本件建物賃貸借契約解除は無効として、建物明渡請求を棄却するとともに、家主が修繕義務をつくさなかったためカラオケ店の営業ができなかったとして、本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から平成13年8月11日まで4年5か月間の得べかりし営業利益3104万2607円の損害賠償の請求を認めた。家主から上告申立て。

(最高裁判決)
 これに対し、最高裁は、
①本件店舗は老朽化して大規模な改修を必要としていたので、賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続しえたとは考えられないこと、

②家主から賃貸借契約解除の意思表示がされて、本件事故から1年7ヶ月経過後に本件損害賠償請求訴訟を起こした時点では営業再開の実現可能性が乏しいものとなっていたこと、

③借家人が本件建物以外の場所でカラオケ営業を行うことができないとは考えられないことを理由に、

カラオケ店の営業を別の場所で再開させる措置を執ることなく発生した損害の全てを家主に請求することは条理上認められないとし、借家人が別の場所でカラオケ店を再開できたと解される時期以降における損害は通常生ずべき損害に当たらないと判示して、原判決を破棄し、名古屋高等裁判所に差し戻した。

(短評)
 本判決は、営業損害の範囲について、民法第416条1項に定める通常生ずべき損害の限度で認めるとしたものであり、借家人に対し厳しいものがあるが、実務上、意義をもつものである。 

(2009.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

最高裁平成21年1月19日判決 全文

 <参考>
  民法
(損害賠償の範囲)
第416条
 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

 2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

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【判例】 *家主に対する修繕義務不履行による賠償請求は通常生ずべき損害が限度 (最高裁判決 全文)

2009年07月09日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

(裁判概要)
 本件本訴請求は、賃貸借契約に基づき上告人Y1(賃貸人=事業協同組合)から建物の引渡しを受けてカラオケ店を営業していた被上告人(賃借人=カラオケ店)が、同建物に発生した浸水事故により同建物で営業することができなかったことによる営業利益喪失の損害を受けたなどと主張して、Y1(賃貸人)に対して債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めた。また、Y1(賃貸人=事業協同組合)の代表者として同建物の管理に当たっていた上告人Y2(事業協同組合の代表者)に対して民法709条又は中小企業等協同組合法38条の2第2項に基づく損害賠償を求めるものである。

 本件反訴請求は、Y1(賃貸人=事業協同組合)が、上記賃貸借契約は解除により終了したなどと主張して、被上告人(賃借人=カラオケ店)に対して同建物の明渡し等を求めるものである。

(裁判要旨)
 店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について、賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降は被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例 最高裁平成21年1月19日判決  事件番号/平成19(受)102 )

 

 

主     文

 

     1 原判決のうち,被上告人の本訴請求に関する部分を破棄する。
     2 前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
     3 上告人Y1 の反訴請求に関する上告を棄却する。
     4 前項に関する上告費用は同上告人の負担とする。

 

理     由

 

上告代理人三宅弘,同牧田潤一朗の上告受理申立て理由第4の2及び3について
 1 本件本訴請求は,賃貸借契約に基づき上告人Y1 (以下「Y1 」という。)から建物の引渡しを受けてカラオケ店を営業していた被上告人が,同建物に発生した浸水事故により同建物で営業することができなかったことによる営業利益喪失の損害を受けたなどと主張して,Y1 に対して債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めるとともに,Y1 の代表者として同建物の管理に当たっていた上告人Y2 に対して民法709条又は中小企業等協同組合法38条の2第2項(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)に基づく損害賠償を求めるものであり,本件反訴請求は,Y1 が,上記賃貸借契約は解除により終了したなどと主張して,被上告人に対して同建物の明渡し等を求めるものである。

 2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 被上告人は,カラオケ店などの経営を業とする株式会社である。
Y1は,中小企業等協同組合法に基づいて設立された事業協同組合であり,昭和42年10月1日,原判決別紙物件目録1記載の建物(以下「本件ビル」という。)を建築し,その所有権を取得した。なお,Y1 は,平成8年8月31日,総会の決議により解散し,その代表理事であった上告人Y2 がY1 の清算人に就任した。

 (2)  Y1 は,被上告人に対し,平成4年3月5日,期間を平成5年3月4日まで,賃料を月額20万円,使用目的を店舗として,本件ビルの地下1階にある原判決別紙物件目録2記載の建物部分(以下「本件店舗部分」という。)を貸し渡した(以下,この契約を「本件賃貸借契約」という。)。本件賃貸借契約は,その後,平成5年3月5日に期間を平成6年3月4日まで,平成6年3月5日に期間を平成7年3月4日までとしてそれぞれ更新され,同日に賃貸借期間が満了したが,その継続に関する協議が成立しないまま,被上告人は本件店舗部分でのカラオケ店営業を継続した。

 (3) 本件ビルにおいては,平成4年9月ころから,本件店舗部分に浸水が頻繁に発生し,本件ビル3階のトイレの水が止まらなかったことがその原因であったこともあるが,本件店舗部分7号室横からの浸水のように浸水の原因が判明しない場合も多かった。

 (4) 平成9年2月12日,本件ビル地下1階に設置された浄化槽室排水ピット内の排水用ポンプの制御系統の不良又は一時的な故障が原因となって,本件店舗部分8号室脇の洗面台の排水管の床面との継ぎ目部分等から汚水が噴き出し,また,7号室からも出水し,本件店舗部分が床上30~50cmまで浸水した(以下「本件事故」という。)。本件ビルの地下1階では,同月17日にも同様の場所から汚水が出水し,同程度に本件店舗部分が浸水した。被上告人は,本件事故以降,本件店舗部分でのカラオケ店の営業ができなくなった。

 (5) Y1 は,平成9年2月18日付け書面をもって,被上告人に対し,本件ビルの老朽化等を理由として,本件賃貸借契約を解除し,明渡しを求める旨の意思表示をし,同書面は,そのころ被上告人に到達した。上告人Y 2は,本件事故直後より,被上告人からカラオケ店の営業を再開できるように本件ビルを修繕するよう求められていたが,これに応じず,上記解除により本件賃貸借契約は即時解除されたと主張して,被上告人に対して本件店舗部分からの退去を要求し,本件ビル地下1階部分の電源を遮断するなどした。

 (6) 本件ビルについては,平成9年1月,調査会社により,大規模改装に向けての設備及び建物状態の調査が実施されたが,そのビル診断報告書には,①電気設備については,今後思わぬ事故等の発生が懸念され,改装後の電力需要に合わせて全体的に更新する必要がある,②給水設備は,全体的にさびによる腐食が進行しており,このまま使用すると漏水の懸念があり,周辺機器も含めて継続使用が難しい状態と判断される,③排水設備については,排水配管は全体的に更新する必要があると判断され,その他汚水配管,排水槽等は改装時に調査の上,その仕様に合わせた改修及び清掃等が必要と思われるなどと記載されていた。

 このように,本件ビルは,本件事故前,老朽化により大規模な改装とその際の設備の更新の必要があったが,直ちに大規模な改装及び設備の更新をしなければ当面の利用に支障が生じるものではなく,本件店舗部分を含めて朽廃等の事由による使用不能の状態にはなっていなかった。

 (7) 被上告人は,本件店舗部分における営業再開のめども立たないため,平成10年9月14日,Y1は被上告人の営業が再開できるように本件ビルを修繕すべき義務(以下「本件修繕義務」という。)があるのに履行しないなどと主張して,営業利益喪失等による損害賠償を求める本件本訴を提起した。これに対し,Y1は,本件修繕義務の存在を否定し,さらに,被上告人に対し,平成11年9月13日,賃料不払等を理由として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし,本件店舗部分の明渡しを求めた。

 (8) 被上告人は,平成9年5月27日,本件事故によるカラオケセット等の損傷に対し,Aとの間で設備什器を目的として締結していた保険契約に基づき,損害保険金として3109万6946円,臨時費用保険金として500万円,取片付費用保険金として101万9700円の支払を受けたが,これらの保険金の中には営業利益損失に対するものは含まれていなかった。

 3 原審は,Y1 により行われた本件賃貸借契約解除の意思表示はいずれも無効であるとして,Y1の被上告人に対する建物明渡等反訴請求を棄却するとともに,次のとおり判示して,被上告人の上告人らに対する損害賠償請求を一部認容すべきものとした。

 (1) Y1 は,被上告人に対し,本件事故後も引き続き賃貸人として本件店舗部分を使用収益させるために必要な修繕義務を負担しているにもかかわらず,その義務を尽くさなかった。また,上告人Y2には,本件修繕義務の不履行について,Y1の代表者としての職務を行うにつき中小企業等協同組合法38条の2第2項所定の重大な過失があったというべきである。

 (2) 被上告人は,本件事故の日から本件店舗部分でのカラオケ店営業ができなかったから,上告人らに対し,本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から被上告人の求める損害賠償の終期である平成13年8月11日までの4年5か月間の得べかりし営業利益3104万2607円(1年間702万8515円)を喪失したことによる損害賠償を請求する権利を有する。

 4  しかしながら,本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から平成13年8月11日までの間の営業利益の喪失による損害につきそのすべての賠償を請求する権利があるとする原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 事業用店舗の賃借人が,賃貸人の債務不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には,これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は,債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。

 (2) しかしながら,前記事実関係によれば,本件においては,①平成4年9月ころから本件店舗部分に浸水が頻繁に発生し,浸水の原因が判明しない場合も多かったこと,②本件ビルは,本件事故時において建築から約30年が経過しており,本件事故前において朽廃等による使用不能の状態にまでなっていたわけではないが,老朽化による大規模な改装とその際の設備の更新が必要とされていたこと,③Y 1は,本件事故の直後である平成9年2月18日付け書面により,被上告人に対し,本件ビルの老朽化等を理由に本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をして本件店舗部分からの退去を要求し,被上告人は,本件店舗部分における営業再開のめどが立たないため,本件事故から約1年7か月が経過した平成10年9月14日,営業利益の喪失等について損害の賠償を求める本件本訴を提起したこと,以上の事実が認められるというのである。これらの事実によれば,Y1 が本件修繕義務を履行したとしても,老朽化して大規模な改修を必要としていた本件ビルにおいて,被上告人が本件賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。また,本件事故から約1年7か月を経過して本件本訴が提起された時点では,本件店舗部分における営業の再開は,いつ実現できるか分からない実現可能性の乏しいものとなっていたと解される。他方,被上告人が本件店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,本件店舗部分以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,前記事実関係によれば,被上告人は,平成9年5月27日に,本件事故によるカラオケセット等の損傷に対し,合計3711万6646円の保険金の支払を受けているというのであるから,これによって,被上告人は,再びカラオケセット等を整備するのに必要な資金の少なくとも相当部分を取得したものと解される。

 そうすると,遅くとも,本件本訴が提起された時点においては,被上告人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく,本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて,その損害のすべてについての賠償を上告人らに請求することは,条理上認められないというべきであり,民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上,本件において,被上告人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償を上告人らに請求することはできないというべきである。

 (3) 原審は,上記措置を執ることができたと解される時期やその時期以降に生じた賠償すべき損害の範囲等について検討することなく,被上告人は,本件修繕義務違反による損害として,本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から本件本訴の提起後3年近く経過した平成13年8月11日までの4年5か月間の営業利益喪失の損害のすべてについて上告人らに賠償請求することができると判断したのであるから,この判断には民法416条1項の解釈を誤った違法があり,その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

 5 以上によれば,上記と同旨をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そこで,上告人らが賠償すべき損害の範囲について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 なお,Y1 の反訴請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 

裁判長裁判官 中川 了滋   裁判官 今井  功   裁判官  古田 佑紀)

 

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店のシャッターを新品に交換させる (東京・荒川区)

2009年05月25日 | 修理・改修(借家)

 東京荒川区で昭和50年から店舗を借り、家電製品販売業を自営しているⅠさんは、入居時から設置されていたシャッターが今年2月頃から開閉の具合が悪くなったので家主に修繕を申し出ました。

 家主はIさんに対し「4年前の更新時に更新料を払わずに法定更新をしたからとんでもない」と修繕を拒否しました。

 Iさんは組合と相談しました。借りているものだが丁寧に使用し、耐用年数はとっくに経過し、借家人には何ら過失はありません。店内には商品が一杯で防犯上も心配なので再度修繕を申し入れても断られたので、業者に調べてもらったところ修繕では無理といわれました。

 そこで、見積書の交換代金を一時Iさんが立替え払いし、後日賃料から相殺する旨を家主に内容証明で送りました。

 その後、家主の代理人の弁護士から家主の責任で交換すると言ってきましたが、1週間以上も工事に来ないのでIさんは家主宅に行き、「一体いつ交換するんだ。もっと誠意を見せろ」と一喝すると、驚いた家主は2日後に新品と取り換えました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 木造瓦葺き一戸建て借家の雨漏りを家主の負担で修繕させる方法はないか

2009年02月04日 | 修理・改修(借家)

(問) 私は古い一戸建ての平屋を借りています。
 先日来の長雨で建物の一部に雨漏りしました。屋根は瓦葺きです。家主に修繕を頼んだところ「うちでは修繕はみんな借りている人にやってもらっています」と言われてしまいました。
 私は、貸家の修繕は家主がやるものとばかり思っていましたが、家主の考え方次第で借家人に押付けられるものなのでしょうか。
 なんとか家主に修繕させる方法はないものでしょうか。


(答) 貸家の修繕についての法律の定めは、民法606条1項に「賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要なる修繕をなす義務を負う」と規定しています。貸家の修繕義務は家主にあることが明確に規定されているのです。

  家主がこの法律に規定する義務を免れるためには、あらかじめ契約で「雨漏りの修繕は借家人の負担とする」との特約(特約とは法律の定めに反する約定)を交わしておかなければなりません。

 あなたの場合は右の特約はないので、言うまでもなく修繕義務は家主にあります。以下は家主の負担で修繕をする方法です。

 まず内容証明郵便(配達証明付)で家主に対して通知をします。
 その内容は「雨漏りしているので本書到達後10日以内に修繕してください。もし期日までに直していただけない場合は、私が業者に依頼して修繕し、その修繕費用は後日請求しますのでお支払いください。万一お支払いくださらない場合は、やむを得ず月々の家賃から差し引きます」。

 この通知を出した上で、その内容のとおり実行すればいいのです。修繕費用が月額家賃の半分以上になる場合は2ヵ月に分けて差し引きます。

 ここで、内容証明郵便を出す段取りを省略して、修繕費を家賃から差し引くと家賃の一部不払いとして契約解除の原因にされる恐れがあります。

 借家の修繕問題の解決法には別の方法もあります。それは、家主は完全な物を貸す義務がありますから、雨漏りするという不完全な度合いに応じて家賃を減額し、直ったら元に戻す方法です。しかし、これではいつ直るか分からず、前の方が現実的です。

 

東京借地借家人新聞より

 

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