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【判例紹介】 *賃料差押え後明渡した場合敷金を賃料に充当できるとした事例

2006年01月31日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

  判例紹介

   抵当権者が物上代位に基づき賃料を差押え後、賃貸借契約が終了し目的物を明け渡した場合、賃借人が敷金を賃料に充当することができるとされた事例 最高裁平成14年3月28日判決、判例時報1783号42頁)

   (事案の概要)
  X(信託銀行=抵当権者)は、A(建物所有者)との間で、A所有建物について根抵当権を設定した。AはB(賃借人)に対して建物を賃貸し、BはY(転借人)に対しさらに建物を賃貸した。
 転貸借契約において、YはBに対し敷金1000万円を預託した。
  XはAが借入金の返済をしないため、根抵当権の物上代位権に基づき、BがYに対して有する賃料債権を差押えた。
 その後、YはBとの間の建物賃貸借契約を解除し、建物を明け渡した。 そして、YはXに対して、敷金により賃料支払債務は消滅したと主張した。

   (裁判)
  1審は、「敷金返還請求権は、物上代位による差押え後に発生したものであるからYはXに対抗できない。」として、Xの請求を認めた。

  2審は、「賃貸借契約が終了し目的物が明渡されたときは、賃料は当然敷金が充当される結果、差押えにかかる賃料債権は消滅すると解さざるを得ない。」として、Xの請求を棄却した。

  最高裁は、「敷金の充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないから当然消滅の効果が妨げられないこと、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差押える前は、原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから、抵当不動産の所有者等は敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができることから、敷金が授受された賃貸借契約にかかる賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差押えた場合においても、当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当によりその限度で消滅する」と判示した。

   (短評)
  賃貸人の資力が悪化した際に、賃借人が賃貸借契約を終了させて賃借物件を明け渡せば敷金を賃料債権に充当することによって回収する方策を認めたものである。なお、抵当権者が物上代位権を行使して転貸賃料債権を差押えることは原則として否定されている。(最高裁平成12年4月14日判決)

(2002.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 上記最高裁判決に関してはこちらを参照して下さい。最高裁判決が全文掲載されている。

 

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【判例紹介】 *借地人が建物買取請求権を行使すると明渡の強制執行の阻止理由になる

2006年01月29日 | 土地明渡(借地)

 判例紹介

 建物収去土地明渡判決と建物買取請求権 最高裁平成7年12月15日判決、判例タイムズ897号)

 (事案)
  借地人は、期間満了に際して更新を拒絶され、正当事由有りということで、借地上の建物を収去して借地を明け渡せという判決を受けた。借地人は、建物収去土地明渡の強制執行を実行されてしまう立場になったが、借地法に基づき建物買取請求権を行使して、それを理由にして、強制執行を許さないと争った。1審、2審とも借地人の請求を認め、最高裁も同様の判決をした。

  (判決要旨)
  「借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時まで(高裁が結審するまでという意味)に借地法4条2項の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がなされ、同判決が確定した場合であっても、賃貸人は、その後に建物買取請求権を行使した上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができる。

  なぜなら、建物買取請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃貸人の建物収去義務が消滅するに至るのである。

  したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当るものではなく訴訟法上も、同訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはない。

  そうすると、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時以降に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法35条2項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当する。」

   (説明)
  借地期間到来に際して、更新を拒絶されたときは、借地人は借地上の建物を地主に買い取ってもらう権利建物買取請求権がある。この建物買取請求権は、地主から起こされた土地明渡請求訴訟の最中に行使する義務はなく、いつ行使してもよい。建物買取請求権を行使すると、建物の所有権は地主に移転し、借地人は、建物代金の請求権を取得する。その結果、借地人は、建物を収去する義務がなくなり、また、建物代金が支払われるまでは、建物からの退去を拒否することができる。

  この判決は建物買取請求権行使の効果が請求異議事由(明渡の強制執行を阻止する理由)になることを初めて認めた最高裁判決である。

(1996.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 地主は借地人に下水道敷設につき承諾義務を負うとされた事例

2006年01月28日 | 借地の諸問題

 判例紹介

  土地賃貸人が賃借人に対し下水道敷設につき承諾義務を負うとされた事例 東京高裁 平成9年8月30日 第10民事部判決、判例タイムズ1998年10月25日号134頁以 下)

  【事案】
 ①賃貸人Xら2名が賃借人Yに対し、借地契約期間満了を理由に建物収去土地明渡を求めた事件と
 ②賃借人Yから賃貸人Xらに対し下水道敷設についての承諾及び妨害差し止めを求めた事件。
 原審は①については賃貸人Xらの請求を棄却、②については賃借人Y下水道敷設承諾及び妨害差し止めの請求を容認。
 控訴審(東京高裁)は①に対して賃貸人Xらの建物収去土地明渡の控訴を棄却、②に対してYの請求の趣旨の訂正に基づき承諾請求の主文を変更。

    【判旨】 
 「右のような下水道法による規制(前記認定の事実によると、本件土地は、右公共下水道の処理区域内の土地であると認められる。)付近の土地の排水設備の設置状況及び本件土地の所在する場所の環境にかんがみると、本件土地につき排水設備を設置することは、本件土地の利用に特別の便益を与えるというものではなく、むしろ、建物の所有を目的とする本件借地契約に基づく土地の通常の利用上相当なものというべきであるから、賃貸人である控訴人らにおいて、本件土地につき排水設備等を設置することにより回復し難い損害を被るなど特段の事情がない限り、その設置に協力すべきものであると解するのが相当である。

 そして、前記認定の事実関係のもとにおいては、控訴人(賃貸人)において、本件土地につき排水設備等を設置することによって回復し難い著しい損害を被るなどの特段の事情があることは認められないから、そうであれば、控訴人(賃貸人)らは被控訴人(賃借人)が本件土地につき排水工事及び水洗化設備の新設工事をするに当り、これを承諾し、かつ、右工事の施行を妨害してはならないといわなければならない。

 寸評】
 本判決の主文は、「控訴人(賃貸人)らは、被控訴人(賃借人)が茅ヶ崎市に対し別紙物件目録1及び2記載の各土地につき公共下水道事業による排水設備水洗化設備の新設工事を申請するに当り、控訴人(賃貸人)Xは同目録1記載の土地につき、控訴人Xは同目録2記載の土地につき、それぞれ別紙公共下水道敷設承諾書記載の事項を承認せよ」となっている。

 従来の同種事件の保全処分での主文例より具体的な承諾事項を示し、行政の要求する地主の承諾事項を六項目にわたり承諾させている点は、参考になる。
 

(2000.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 家主が修繕義務を履行しなかった場合その分家賃が減額できるとした事例

2006年01月27日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介  

  賃貸人の修繕義務不履行により建物の一部が使用できなくなった場合、賃借人は家賃の減額請求権を有する (名古屋地裁昭和62年1月30日判決。判例時報1251号)

   (事案の概要)
  1 Yは昭和55年6月1日、Xから2階部分を居宅、1階部分をお好み焼屋店舗として使用する目的で本件建物を賃料月額10万円で賃借した。

  2 2階部分には3つの居室があったが、56年9月前からいずれの部屋にも雨漏りがし、特に南側と真中の部屋の雨漏りは、雨天の場合バケツで受けきれず、畳を上げて洗面器等の容器を並べ、Yらが椅子の上に立って、シーツやタオルで天井の雨漏り部分を押さえざるを得ない程であり、押入に入れたふとんが使用不能になったこともあり、本件建物2階部分は、同年9月以前からその少なくとも3分の2以上が使用不能となった。

   YはXに対し、しばしば雨漏りの修繕を求めたが、Xはこれに応じず、右の使用不能状態は、Yが本件建物を明渡した昭和58年7月31日まで続いた。なお、1階店舗部分は、右の雨漏りにより使用不能となることはなかった。

  4 これに対し、Yは56年9月分から賃料の支払を拒絶し、Xに対し、右使用不能部分の割合に応じて賃料を減額する旨意思表示した。

  5 しかし、Xは減額に応じず、Yに対し、56年9月分から明渡し済みの58年7月分までの賃料230万円の支払を求めた。

   (判決)
  本件建物の2階部分の少なくとも3分の2が56年9月1日以降58年7月末日までXの修繕義務の不履行により使用できない状態にあつたことが認められるところ、修繕義務の不履行が賃借人の使用収益に及ぼす障害の程度が一部にとどまる場合には、賃借人は当然には賃料支払義務を免れないものの、民法611条1項を類推して、賃借人は賃料減額請求権を有すると解すべきである。

  本件の場合、右減額されるべき賃料額は、右使用できない状態の部分の面積の本件建物全面積に対する割合、本件賃貸借契約は1階店舗部分とその余の居宅の使用収益を目的としていたところ、Yの右店舗部分自体の使用収益にはさしたる障害は生じなかったこと及び雨漏りの状況等の諸般の事情に鑑み、本件賃料額全体の25%をもつて相当とする。

   (寸評)
  判決はもとより妥当である。家主が修繕義務を履行しなかった場合、2つの対応がある。1つは賃借人側で修繕しその費用を家賃と相殺する方法で、組合がよく利用する。もう1つは本件のように民法611条1項を類推適用する方法である。いずれの方法が良いかは事案によって異なってくる。

(2003.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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更新料を断ると明渡請求 (東京・大田区)

2006年01月26日 | 更新料(借地)

     地主の車の出入の邪魔という理由

 大田区南蒲田2丁目に居住する借地人の飯田さんは、高額な更新料を請求されて知人の紹介で組合に加入した。

 知人も借地人で今年2月に地上げされたことから組合に加入し、地上げ業者と対応して希望する価格で底地を購入することができたことを説明して、組合への加入を勧めた。

 飯田さんは18坪の借地権付の建物を40年前に購入し、クリーニング業を営んできた。前回の更新時は坪当たり5万円の更新料だったが、今回は坪15万円の請求で、あらかじめ考えていた金額を大幅に上回っていた。

 しかも円満に更新ができればと思い、近隣よりも高額な地代に応じてきたのに、地主は周辺の更新料請求額の2倍強の高額な請求をしてきた。

 飯田さんは、坪15万円の更新料の支払を断り、月々の地代を提供したが受領を拒否された。地主は「立退料を出すから明渡せ」と言ううので、それも断り、地代は供託すると伝えた。

 地主は、道路の角地にある飯田さんの建物が車の出入りの邪魔だと言う。飯田さんは、こんな無謀な話しには絶対に妥協しないと決意している。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 賃料増額請求権は5年で消滅時効により消滅したとされた事例

2006年01月25日 | 家賃の減額(増額)

 判例紹介  

 賃料増額請求権が5年の消滅時効により消滅したとされた事例 (名古屋地裁昭和59年5月15日判決、判例タイムス535号274頁以下。)


(事案)
 本件土地の賃料は昭和45年4月1日当時1ヶ月当たり1万2000円であった。
 賃貸人Xは右の賃料が不相当になったとして、昭和48年12月13日到達の内容証明郵便をもって、翌年1月1日以降の地代を3.3平方メートル当り500円に増額するとの増額請求をしたが、賃借人Yがこれに応じなかった。

 そこで、Xは昭和52年5月に賃料増額の調停を申立てた。その後、調停は不調となり、本訴を提起し、昭和56年8月1日以降の賃料を3.3平方メートル当り1200円に増額する意思表示をした。この訴訟で、Xは昭和49年1月1日以降の賃料が3.3平方メートル当り月額500円であることの確認をも求めていた。

 これに対しYは、昭和49年1月1日以降の増額請求のうち、訴状送達の日である昭和56年7月31日までに5年を経過した分については民法169条により時効で消滅したと主張して争った事案。Xの請求を一部却下。


(判旨)
 Xが最初に本件土地の賃料増額の意思表示をしたのは昭和48年12月13日である。月単位の賃料債権は5年間行使しないことによって時効消滅するから、Yの右時効援用によって本訴提起(昭和56年7月14日)に5年以上隔たる賃料債権差額分は消滅したことになる。したがって、Xはこれをもはや請求し得ないのであるから、その金額を確定する利益がなく、則ちこの部分は訴えの利益を欠いて却下を免れないこととなる。

 Xが主張する、賃料額が判決によって確定されるまで消滅時効は進行しないとの立論は、一旦賃貸人が増額請求をすればその後どれ程放置しても訴提起に至るまで時効期間は進行しないという結果を招くに等しく、採用できない。

 Xは、X申立の賃料増額調停中にYが多少の増額には応じる旨の債務の承認をしたから時効は中断したとも主張するが、右調停はXの主張によれば不調に終わったというのであるから、民事調停法第19条の趣旨に則り、その後に訴の提起がなかった本件にあってはこれに時効中断の効果を認めることはできない。


(寸評)
 判旨は当然のことである。この判決の後に、平成10年8月31日東京地裁の判決で、本判決と全く逆のものがあったことは、本紙で既に紹介した。

 長期間にわたり供託している組合員が結構多いことを見ると、本件と同様に、相当以前の地代の増額請求を受けることがあると思われるので、参考のために紹介した。  

 

(1999.11)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 



 参考判例  

 地代の増額請求に対して5年の短期消滅時効を認めた事例(東京地裁1985年10月15日判決

 

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消費者契約法

2006年01月24日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

(1)費者契約法の消費者とは借家人で
建物を住居として利用する個人

 2001年4月1日から消費者契約法が施行されています。

 「消費者」と「事業者」
 この法律で最も特徴がある点は、「事業者」と「消費者」の定義です。「事業者」とは、①「法人その他の団体」、②「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」です。それ以外の個人はすべて「消費者」です。「事業」とは、一定の目的をもった同種の行為がくり返し行われるものであり、営利目的の有無は問いません。この定義は非常に広いもので、国も「事業者」になりえます。
 消費者と事業者の間でなされる契約を「消費者契約」といいます。この「消費者契約」というのは、個別の売買契約、工事請負契約とは別の次元になり、個別の契約の上に消費者契約という網をかぶせるものです。

 借地借家人は「消費者」
 借地借家契約と消費者契約の関係は次ぎのようになります。
 (例1)個人の家主と個人の借家人が住居目的で借家契約をした場合、家主は事業として貸家契約をするので「事業者」になります。借家人は、個人で、しかも事業のための借家契約ではないので、「消費者」になります。この借家契約は「消費者契約」です。

 (例2)個人の家主と個人の借家人が店舗目的で借家契約をした場合、借家人は、個人ですが店舗営業という事業のために借家契約をするので「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

 (例3)個人の家主と会社名義で住居として借家契約をした借家人は、たとえ住居目的であっても、契約の当事者が個人でなく会社名義なので、「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

 では、借地借家契約が「消費者契約」である場合、借地借家人はどんな権利行使ができるのか?

 

  (2)事実と異なることを告げられた賃料
                 値上げや更新料の支払約束は取消せる

 消費者の取消権
 消費者契約をする場合、事業者は、①重要事項について事実と異なることを告げたり(不実告知)、②将来の価額、金額、価値の変動が不確実な事項について、断定的な言い方をして(断定的判断の提供)契約をすることができません。また、事業者は、③ある重要事項やそれに関連する事項について、消費者の利益となることだけを強調し不利益になることを隠して(不利益事実の不告知)契約することができません。 取引社会ではあの手この手の方便を使って、事業者は契約を勧誘します。事業者は、消費者に比べれば、売りつける物品、サービスあるいは契約内容について、圧倒的な情報を握っています。情報量の格差をこれ幸いに消費者をだますような契約は不公正です。消費者契約法は、前記の3点のようなことがあった場合、消費者にあとから契約を取り消す権利を与えました。

 借地借家契約の場合
 消費者契約法は、平成13年4月1日からの施行ですから、この法律が適用されるのは、4月1日以降の契約に限られます。しかし、それ以前からの借地人、借家人は、この法律を使えないのかといえば、そうではありません。当初の借地借家契約が平成13年4月1日以前であっても、その借地借家契約に付随して、例えば、地代家賃の値上に関する契約、更新料支払に関する契約、一時立退再入居に関する契約、立退に関する契約、借地建物増改築に関する契約、更新に関する契約など、当事者間で取り交わす合意事項があります。これらの付随的合意は、その一つ一つが消費者契約となり得る別個の契約であり、既存の借地借家であっても、平成13年4月1日以降になされるこれらの契約(合意)には適用されます。

 (例1)賃料値上問題
 地主・家主が今年は税金が上がったので賃料を上げてくれといってきた。借地借家人は止むを得ないと思って値上に応じたが、実は税金は上がっていなかった。賃料増額契約について公租公課額の増減は重要事項なので、この点で事実と異なることを告げられて増額を承諾した借地借家人は、増額合意を取消すことができる。

 (例2)借地更新料支払問題
 更新料支払約束のない借地契約なのに地主は更新料を要求した。その理由として、法律でも支払うことになっているし、自分の貸地の借地人は全員が払っていると説明した。借地人は、しぶしぶ更新料を払うと約束してしまったが、地主の借地人の中には払っていない人も数人いたことがわかった。この場合、支払約束のない更新料について支払義務があるという法律はないし、他の借地人全員が支払っているということも事実と異なっており、いずれも重要事項と言えるので、この借地人は、更新料支払約束を取消すことができる。 借地借家人が取り消せる契約のあり方は、もう一つあります。

 

  (3)解約後賃料の5倍の損害金を払うなど
                   借家人に不利益になる約定は無

 不退去・監禁
 消費者契約法は、自宅を訪れた事業者に対し退去を求めたのに退去しないで契約をさせられた場合(不退去型契約)や事業者の事務所などに呼ばれた消費者が帰りたがっているのに帰してもらえないまま契約をさせられた場合(監禁型契約)、その契約を取消すことができると定めています。借地借家のケースを想定すると、

 (例3)明渡し約束
 借家契約の更新期に家主が自宅にやってきて、今回は更新するが次回には更新しないのでそのことを契約書に書き入れてくれ、書かないのであれば更新しないと要求。借家人は、よく考えて返事するから帰ってくれと答えるが、家主は、今了解しないのなら更新はしないと迫り、困り果てて家主の言とおりに契約書に印を押してしまった。これは、不退去型の困惑契約になるので、借家人は取消すことができる。
 以上ですが、消費者契約で取消せる契約をまとめると、不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知により消費者が誤認した場合、不退去、監禁により消費者が困惑した場合ということになります。

 事業者の代理人
 消費者に誤認をさせる、困惑させることは事業者本人でなくともできます。事業者から契約の委託を受けた者あるいは代理人となった者が同じことをすれば、消費者は、事業者が行ったのと同様に契約を取消すことができます。借地借家の場合は、不動産仲介業者が地主、家主の代理人となることが多いですが、事業者と同じと扱われることになります。

 取消権行使の期限
 消費者に契約の取消権がある場合、権利行使には時間の制限があります。不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知の場合は消費者が誤認したことに気付いたときから、不退去、監禁の場合は不退去、監禁が終わったときから、6か月以内に取消さなければなりません。また、契約してから5年経つと無条件に取消すことができなくなります。

 契約条項無効
 消費者契約法は、消費者に不当な不利益を与える契約条項は無効である旨定めています。たとえば、借家契約書に、賃貸借契約解除後立ち退くまでの間、契約家賃の5倍の損害金を支払うことが明記されていたとします。このような損害金条項については、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものは、超える部分については無効」とされます。何が平均的な損害の額かは明白ではありませんが、新規に賃貸すれば得られるであろう賃料額と考えればいいと思います。また、賃料滞納した場合、滞納賃料に年20%の遅延利息を付すという条項があったとすると、消費者契約法では上限を4.6%としていますので、これを超える部分は無効となります。


(2001.4~2001.6.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借地法定更新で更新料支払いの慣習は認められないとした事例

2006年01月23日 | 更新料(借地)判例

 判例紹介

 土地賃貸借契約の法定更新の場合でも更新料の支払義務があるとする慣習は認められないとした事例 平成14年1月24日、東京地方裁判所民事第45部判決。未掲載)


  (事案)
 地主Xは、東京都墨田区内に土地428.08平方メートルを所有し、これを借地人Yに建物所有の目的で賃貸していた。

 この契約が平成12年10月31日の経過により満了するため、地主Xはその10ヶ月前に期間満了の通知をした。

 借地人Yは地主Xに対し、契約更新の希望と更新の際の条件の提示を要請した。

  地主Xは堅固建物の存在を前提として、契約期間を30年とする場合の更新料を2040万9963円(1平方メートル当たり4万9125円)と提示。

 合意に達しないまま、平成12年11月1日、法定更新となり、地主Xは借地人Yに対し、賃貸借契約の更新に当たっては、合意更新であると法定更新であるとを問わず、更新料の支払いが条件になることは、現在では社会的な慣習となっていると主張して、更新料2040万9963円等の支払を求めた事案。

 結果は地主Xの請求棄却。地主の更新料支払請求の主張は認められなかった。

  (判旨)
 「YがXに対して本件賃貸借契約更新の条件の提示を要請したのは、YがXの条件の提示を見て、これに応じるかどうかを検討しようとしたものであって、更新料の支払義務を認めたものということはできない。……また、賃貸借契約の法定更新の場合でも更新料の支払義務があるとする慣習は認められない」

  (寸評)
 法定更新の場合に、更新料支払の義務があるとする慣習はないとするのが判例の立場であることは、周知のこと。それにもかかわらず、依然として、更新料請求の訴訟が提起されるのは、更新料の支払拒絶を明言せずに、条件交渉をする賃借人が多いことをあらわしている。更新料交渉について注意を喚起するために紹介した。

(2002.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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借地の更新料の支払い拒否 (東京・大田区)

2006年01月22日 | 更新料(借地)

   地主に更新料の支払いを断り、
          拒否された地代の供託を通知

 大田区新蒲田3丁目所在の宅地39坪を賃借中の中本さんの契約期間満了は平成14年の6月。また、同一地主から賃借人の荒井さんも宅地50坪の期限は同年10月であった。

 地主より不動産業者を差し向けるとの連絡があり、やっと平成17年になって業者と話し合いとなった。業者は地主より伝えられていた、坪5万円の更新料に固守し交渉は決裂した。

 しかし、地主は請求額の更新料を3月末日までに、持参せよとの書面により催促してきた。

 組合と相談し、中本・荒井の両氏は、平成16年12月分までの持参した地代が受領されていることから、既に借地契約が法定更新されていると説明された。更新料の支払い義務は法律上の規定にはなく、更新料支払いの商習慣も最高裁が否定していることも説明された。

 そこで、組合は、地主に対して借地人らは更新料の支払いに応じないことと、拒否された地代を供託する旨を内容証明郵便にて通告した。

 中本さんと荒井さんは、今後も自信を持って対応すると決意している。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 借主に敷金が全額返還された(東京簡易裁判所判決 )

2006年01月20日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介


H17. 8.26 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行) 敷金返還請求


事件番号  :平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行)
事件名   :敷金返還請求
裁判年月日 :H17. 8.26
裁判所名  :東京簡易裁判所
部     :民事第8室(少額訴訟係)
結果    :請求認容


平成17年8月26日東京簡易裁判所判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 
平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行)敷金返還請求事件
口頭弁論終結日 平成17年7月15日
司法委員

判      決 

主      文

1 被告は原告に対し,金25万7200円及びこれに対する平成17年1月10日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由


第1 請求
被告は原告に対し,金25万7200円及びこれに対する平成17年1月10日から支払済みまで年20パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
原告は,平成8年5月27日,被告から東京都中央区A町b丁目c番d号所在の○○マンションB号室を,期間2年の約束で借り受け,敷金25万7200円を支払い,4回の更新を重ねた後,平成16年11月19日,被告に対し,上記賃貸借契約を解除する旨を通知し,平成17年1月10日,建物を明け渡したと主張して,敷金25万7200円の支払を求める。

2 被告の主張
本件賃貸借契約は,対象物件を事務所用として賃貸したものであるから,居住用賃貸借契約とは異なり,本件賃貸借契約書20条1項の「この契約が終了したとき,乙は,契約終了までに甲の指定する業者により,乙が本物件内に設置した造作その他の設備を乙の費用に於いて撤去し,本物件を現状に復し,且つ,本物件の内装及び付属諸設備,諸造作等の破損,汚損箇所を甲の指定する業者に於いて修復し,甲に明渡しをする。」という原状回復条項,つまり,造作その他を賃借人の負担において契約締結時の原状に回復させるという条項は,そのまま適用されるべきである(東京高等裁判所平成12年12月27日判決,判例タイムズ1095号176頁)。したがって,本件における原状回復費用は40万9500円であるから,これに敷金を充当すると,原告に返還すべき敷金は存在しない。

3 争点
本件原状回復特約の適用の可否

第3 当裁判所の判断
1 オフィスビルの原状回復特約とその必要性
被告が,参考として挙げる前記判例は,本件と同様の原状回復特約「本契約が終了するときは,賃借人は賃貸借期間が終了するまでに,造作その他を本契約締結時の原状に回復しなければならない。」の必要性について,一般に,オフィスビルの賃貸借においては,次の賃借人に賃貸する必要から契約終了に際し,賃借人に賃貸物件のクロスや床板,照明器具などを取り替え,場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が多いということを認定したうえ,賃借人の保護を必要とする民間居住用賃貸住宅とは異なり,市場性原理と経済的合理性の支配するオフィスビルの賃貸借では,このように,賃借人の建物の使用方法によっても異なり得る原状回復費用を,あらかじめ賃料に含めて徴収する方法をとらずに賃借人が退去する際に賃借人に負担させる旨の特約を定めることは,経済的にも合理性があると説明する。当裁判所もオフィスビルの賃貸借契約においては,このような原状回復特約の必要性についてはそれを肯定するものである。

2 本件はオフィスビルの賃貸借契約といえるか。
前記判例における賃貸物件は保証金1200万円という典型的オフィスビルであり,しかも新築物件である。それに比して,本件物件は,仕様は居住用の小規模マンション(賃貸面積34.64㎡,)であり,築年数も20年弱という中古物件である。また,賃料は12万8600円,敷金は25万7200円であって,事務所として利用するために本件物件に設置した物は,コピー機及びパソコンであり,事務員も二人ということである。このように本件賃貸借契約はその実態において居住用の賃貸借契約と変わらず,これをオフィスビルの賃貸借契約と見ることは相当ではない。

3 結語
本件賃貸借契約は,その実態において居住用の賃貸借契約と変わらないのであるから,オフィスビルの賃貸借契約を前提にした前記特約をそのまま適用することは相当ではないというべきである。すなわち,本件賃貸借契約はそれを居住用マンションの賃貸借契約と捉えて,原状回復費用は,いわゆるガイドラインにそって算定し,敷金は,その算定された金額と相殺されるべきである。 しかしながら,被告は物件明渡時,絨毯下の床まで傷がついた状態であるなど,経年劣化を超える汚れや傷が認められたと主張するが,それについて,何らの立証もなく,また,その他の原状回復についても,何らの主張,立証もない。
なお,原告が遅延損害金として,年20パーセントの請求をする根拠はない。

よって,主文のとおり判決する。


東京簡易裁判所少額訴訟6係

 

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今回も借地更新料を拒否 (東京・大田区)

2006年01月19日 | 更新料(借地)

   大田区羽田3丁目に居住する石井・小島・佐藤・須山(正)・須山(新)・田村(アイウエオ順)ら借地人6名が借地人組合に加入して20年余を経過する。

   前回の更新の時は、父から相続した息子より依頼された小田原の弁護士との交渉であった。当時周辺で更新料を支払う事例を見聞きする中、石井さんら6名の借地人は借地法や判例を学習の上、更新料不払いで意志を統一し団結を強めて交渉に臨んだのです。

   その結果、地主代理人弁護士は法律上更新料を諦めざるをえないが、地主を説得するので地代を増額してほしいと提案する。交渉は長引き小田原への通いは1ヶ月余に及んだが遂に、更新料請求は撤回され、地代も納得出来る増額内容で合意した。

  早いものです。あれから20年も経ちました。その間の数回の地代値上げは地主との直接交渉であったので、今回の更新についても地主との交渉と想定したが、組合を嫌がったのでしょう。地主は地元の不動産業者に依頼されたのです。業者は借地人らにではなく、組合に書面にて契約更新を打診してきた。

   直ちに、借地法第4条に基づき更新を請求することを通告すると、業者は更新料は頂けないだろうと請求せずに地代の増額を提示してきたのです。その内容は坪当たり60円の値上げであった。

   借地人らは更新契約書を手にすることが出来ればと了承するつもりであったが交渉で坪当たり50円で合意し12月に締結。嬉しい新年を迎えられました。
           

 

東京借地借家人新聞より

 

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業者との交渉で底地を取得 (東京・大田区)

2006年01月18日 | 地上げ・借地権(底地)売買

    価格も想定以内で面積も10%増しで合意

  今年3月、組合事務所を訪ねて即刻入会したのは、羽田5丁目に居住する田中さんです。相談内容は、地主が土地開発を主要な生業とする会社に替わり、委任状持参の代理人の挨拶は驚きであった。

  借地20坪を買い上げると価格提示するばかりで、田中さんの主張を受け入れようとはしない。つまり、借地人を立ち退かせて更地に仕上げることを目的とする不動産業者の登場であった。

  悩む田中さんは以前知人に紹介された組合を思い出したという。 聞くと組合を良く知っている業者だった。直ちに、今後一切組合の承諾なく、田中さんに接触しないことを確約して交渉に入った。

  底地を購入したいという田中さんの希望を4カ月に渡る交渉で業者を説得、価格も想定以内で面積が以前より1割増しで合意。

  隣接する同一地主の借地人も田中さんの紹介で入会し、希望通りの条件で同時合意となった。 測量分筆の作業に着手したので、近々に決済を迎える。
        

 

東京借地借家人新聞より

 

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更新料を断わる (東京・豊島区)

2006年01月17日 | 更新料(借地)

  豊島区JR大塚駅より歩いて数分のところに親の代より借地している仲村さんの所に地主から借地の更新の話があったのは昨年のことであった。

   20年前の更新時に支払った更新料より高い300万円を請求され、しかも、地代の値上げを請求された。知合いの組合員さんから紹介されて組合に入会した。

   組合から更新料の支払いについてその法的根拠、及び算出根拠を求める手紙を出したところ、回答に窮して、私道の駐車問題などで財産権の侵害だなどと称して話合いがつかないならば裁判だと主張してきた。また、前回更新料を支払ったのだから、暗黙の了解があったと解すべきだ主張してきた。

   組合では、仲村さんに、先の東京借地借家人新聞に載った更新料支払いの了解についての判例紹介(*)などをもとに貸主に反論することを提案した。この間、数度にわたる通知書のやり取りをしてきた仲村さんは「組合に入って、このような問題でも安心して相談できる。本当に助かります」と話していた。

 

東京借地借家人新聞 より

 


  (*)判例紹介〔東京借地借家人新聞 2005年4月15日号かつて更新料を支払った事実があるというだけで更新料支払の合意があったことの根拠とすることはできない」(東京地裁2004年5月21日判決)。そして、更新料の支払いの慣習があるとする地主の主張も認められなかった。

 

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【判例】 *原状回復特約に対する最高裁判決(2005年12月16日)

2006年01月16日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

                    最高裁判決

 判例 平成17年12月16日 第二小法廷判決 平成16年(受)第1573号 敷金返還請求事件

 要旨
 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例

  内容
  件名   敷金返還請求事件 (最高裁判所 平成16年(受)第1573号 平成17年12月16日 第二小法廷判決 破棄差戻し)
  原審   大阪高等裁判所 (平成15年(ネ)第2559号)

                           主       文
 原判決を破棄する。
 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

                           理       由

 上告代理人岡本英子ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
  原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

 (1) 被上告人は,地方住宅供給公社法に基づき設立された法人である。

 (2) 第1審判決別紙物件目録記載の物件(以下「本件住宅」という。)が属する共同住宅旭エルフ団地1棟(以下「本件共同住宅」という。)は,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(以下「法」という。)2条の認定を受けた供給計画に基づき建設された特定優良賃貸住宅であり,被上告人がこれを一括して借り上げ,各住宅部分を賃貸している。

 (3) 被上告人は,平成9年12月8日,本件共同住宅の入居説明会を開催した。同説明会においては,参加者に対し,本件共同住宅の各住宅部分についての賃貸借契約書,補修費用の負担基準等についての説明が記載された「すまいのしおり」と題する書面等が配布され,約1時間半の時間をかけて,被上告人の担当者から,特定優良賃貸住宅や賃貸借契約書の条項のうち重要なものについての説明等がされたほか,退去時の補修費用について,賃貸借契約書の別紙「大阪府特定優良賃貸住宅and・youシステム住宅修繕費負担区分表(一)」の「5.退去跡補修費等負担基準」(以下「本件負担区分表」という。)に基づいて負担することになる旨の説明がされたが,本件負担区分表の個々の項目についての説明はされなかった。 上告人は,自分の代わりに妻の母親を上記説明会に出席させた。同人は,被上告人の担当者の説明等を最後まで聞き,配布された書類を全部持ち帰り,上告人に交付した。

 (4) 上告人は,平成10年2月1日,被上告人との間で,本件住宅を賃料月額11万7900円で賃借する旨の賃貸借契約を締結し(以下,この契約を「本件契約」,これに係る契約書を「本件契約書」という。),その引渡しを受ける一方,同日,被上告人に対し,本件契約における敷金約定に基づき,敷金35万3700円(以下「本件敷金」という。)を交付した。 なお,上告人は,本件契約を締結した際,本件負担区分表の内容を理解している旨を記載した書面を提出している。

 (5) 本件契約書22条2項は,賃借人が住宅を明け渡すときは,住宅内外に存する賃借人又は同居者の所有するすべての物件を撤去してこれを原状に復するものとし,本件負担区分表に基づき補修費用を被上告人の指示により負担しなければならない旨を定めている(以下,この約定を「本件補修約定」という。)。

 (6) 本件負担区分表は,補修の対象物を記載する「項目」欄,当該対象物についての補修を要する状況等(以下「要補修状況」という。)を記載する「基準になる状況」欄,補修方法等を記載する「施工方法」欄及び補修費用の負担者を記載する「負担基準」欄から成る一覧表によって補修費用の負担基準を定めている。このうち,「襖紙・障子紙」の項目についての要補修状況は「汚損(手垢の汚れ,タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ」,「各種床仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損と認められるもの」,「各種壁・天井等仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損」というものであり,いずれも退去者が補修費用を負担するものとしている。また,本件負担区分表には,「破損」とは「こわれていたむこと。また,こわしていためること。」,「汚損」とは「よごれていること。または,よごして傷つけること。」であるとの説明がされている。

 (7) 上告人は,平成13年4月30日,本件契約を解約し,被上告人に対し,本件住宅を明け渡した。被上告人は,上告人に対し,本件敷金から本件住宅の補修費用として通常の使用に伴う損耗(以下「通常損耗」という。)についての補修費用を含む30万2547円を差し引いた残額5万1153円を返還した。

  本件は,上告人が,被上告人に対し,被上告人に差し入れていた本件敷金のうち未返還分30万2547円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案であり,争点となったのは, 本件契約における本件補修約定は,上告人が本件住宅の通常損耗に係る補修費用を負担する内容のものか, ①が肯定される場合,本件補修約定のうち通常損耗に係る補修費用を上告人が負担することを定める部分は,法3条6号,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則13条等の趣旨に反して賃借人に不当な負担となる賃貸条件を定めるものとして公序良俗に反する無効なものか, 本件補修約定に基づき上告人が負担すべき本件住宅の補修箇所及びその補修費用の額の諸点である。

  原審は,前記事実関係の下において,上記の点については,これを肯定し,同の点については,これを否定し,同の点については,上告人が負担すべきものとして本件敷金から控除された補修費用に係る補修箇所は本件負担区分表に定める基準に合致し,その補修費用の額も相当であるとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。以上の原審の判断のうち,同の点に関する判断の概要は,次のとおりである。

 (1) 賃借人が賃貸借契約終了により負担する賃借物件の原状回復義務には,特約のない限り,通常損耗に係るものは含まれず,その補修費用は,賃貸人が負担すべきであるが,これと異なる特約を設けることは,契約自由の原則から認められる。

 (2) 本件負担区分表は,本件契約書の一部を成すものであり,その内容は明確であること,本件負担区分表は,上記(6)記載の補修の対象物について,通常損耗ということができる損耗に係る補修費用も退去者が負担するものとしていること,上告人は,本件負担区分表の内容を理解した旨の書面を提出して本件契約を締結していることなどからすると,本件補修約定は,本件住宅の通常損耗に係る補修費用の一部について,本件負担区分表に従って上告人が負担することを定めたものであり,上告人と被上告人との間には,これを内容とする本件契約が成立している。

  しかしながら,上記の点に関する原審の上記判断のうち(2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。

 (2) これを本件についてみると,本件契約における原状回復に関する約定を定めているのは本件契約書22条2項であるが,その内容は上記(5)に記載のとおりであるというのであり,同項自体において通常損耗補修特約の内容が具体的に明記されているということはできない。また,同項において引用されている本件負担区分表についても,その内容は上記(6)に記載のとおりであるというのであり,要補修状況を記載した「基準になる状況」欄の文言自体からは,通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえない。したがって,本件契約書には,通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。被上告人は,本件契約を締結する前に,本件共同住宅の入居説明会を行っているが,その際の原状回復に関する説明内容は上記(3)に記載のとおりであったというのであるから,上記説明会においても,通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったといわざるを得ない。そうすると,上告人は,本件契約を締結するに当たり,通常損耗補修特約を認識し,これを合意の内容としたものということはできないから,本件契約において通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできないというべきである

 (3) 以上によれば,原審の上記(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,通常損耗に係るものを除く本件補修約定に基づく補修費用の額について更に審理をさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 中川了滋 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 古田佑紀)

 

 

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【判例紹介】 敷引特約は消費者契約法10条に反して無効 神戸地裁が判決

2006年01月15日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介


 神戸地方裁判所は、平成17年7月14日の判決で、敷引特約は消費者契約法10条により、無効であるとし、敷金30万円から差し引いた25万円を、賃借人に全額返還するよう命じた。

 ●050714 神戸地裁 エイブル
 ●神戸地裁 平成16年(レ)第109号 保証金返還控訴事件(平成17年7月14日言渡)
 ●裁判官 村岡泰行、三井教匡、山下隼人(第5民事部)  ●代理人 松丸 他
 ●原審 神戸簡裁 平成16年(ハ)第17056号

  ●要旨
   事案の概要
  賃借人(控訴人)は、平成15年8月、家賃月5万6000円(共益費月6000円)、賃借期間2年との内容で建物の賃貸借契約をし、約7カ月間居住していたが、平成16年2月に同契約を解約した。

  この賃貸借契約には、保証金(敷金)として30万円を差し入れることになっていたが、契約終了時に敷引金として25万円を控除して、残余の5万円を返還するとの特約(敷引特約)が付けられていた。

  賃借人は、このような敷引特約は消費者契約法10条に違反し無効であるとして、保証金返還請求権に基づき、敷引金に対応する保証金25万円の返還を求めた。  

  裁判所は敷引金の性質について検討した。、
  (1) 契約成立の謝礼、
  (2) 自然損耗の修繕費用、
  (3) 契約更新料免除の対価、
  (4) 契約終了後の空室賃料、
  (5) 賃料を低額にすることの代償などのさまざまな要素を有するものが渾然一体となったもの、

 (1) の要素については、賃借人に一方的に負担を負わせるものであり、正当な理由を見いだすことはできない。

  (2) の要素については、賃料に加えて二重の負担を強いることになる。

  (3) の要素については、賃借人のみが更新料を負担しなければならない正当な理由を見いだすことはできず、しかも、賃借人としては、契約が更新されるか否かにかかわらず、更新料免除の対価として敷引の負担を強いられるのであるから、不合理である。

  (4) の要素については、賃借人が使用収益しない期間の空室の賃料を支払わなければならない理由はなく、賃貸人が自らの努力で新たな賃借人を見つけることによって回避すべき問題である。

  (5) の要素については、賃料の減額の程度が敷引金に相応するものであるかはどうかは判然とせず、また、賃貸期間の長短にかかわらず、敷引金として一定額を負担することに合理性があるとは思えないとした。

  「以上で検討したとおり、本件敷引金の(1)ないし(5)の性質から見ると、賃借人に本件敷引金を負担させることに正当な理由を見いだすことはでず一方的で不合理な負担を強いているものといわざるを得ない。
 そして、本件敷引金に上記(1)ないし(5)で検討した以外に、賃借人に賃料に加えて本件敷引金の負担を強いることに正当な理由があることを裏付けるような要素があるとも考え難い。

 さらに、敷引特約は、賃貸目的物件について予め付されているものであり、賃借人が敷引金の減額交渉をする余地はあるとしても、賃貸事業者(又はその仲介業者)と消費者である賃借人の交渉カの差からすれば、賃借人の交渉によって敷引特約自体を排除させることは困難であると考えられる。

 これに加え、上記のとおり、関西地区における不動産賃貸借において敷引特約が付されることが慣行となっていることからしても、賃借人の交渉努力によって敷引特約を排除することは困難であり、賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。

 以上で検討したところを総合考慮すると、本件敷引特約は、信義則に違反して賃借人の利益を一方的に害するものと認められる。

  したがって、本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である。

 

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