東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 立退料の提供をしても借地更新拒絶の正当事由の充足はないとした事例

2008年06月27日 | 土地明渡(借地)

 判例紹介

 6000万円の立退料の提供をもっても、借地の更新拒絶の正当事由の充足はないとした事例 (東京地裁平成元年3月24日判決

 (事実)
 Yらの先々代は、大正10年頃から本件土地を訴外Aから建物所有の目的で賃借した。その後、先代は死亡し、その子であるYの先代が相続していたが、これまた死亡し、昭和27年5月にYらが本件土地の賃借権を共同相続していた。

 訴外Aも昭和45年10月に本件土地を訴外Bに譲渡したが、その翌年より同人とYらの間で地代増額をめぐって折合がつかず、Yらはそれ以降弁済供託を始めた。

 その後、訴外Bも昭和52年7月に本件土地をXに譲渡した。Xも地代の受領を拒絶し、Yらは弁済供託し、Yらの供託は通算して約16年もの長期に及んだ。

 Xの関係する訴外会社は、本件土地周辺の土地を次々と買収し、マンションを建て、本件周辺の土地上の建物はYらの木造平屋建建物を除き高層化するに至った。昭和62年11月、Xは自らの居住用も含めて訴外会社の経営の建直しを考えて、本件土地及び周辺地を利用してのマンションの建築を計画し、これらを正当事由として本件土地賃貸借契約の更新拒絶をなすに至った。

 Yらは本件土地35坪の上に大正10年頃築造(その後、一部修繕)した木造平屋建建物13坪を所有し、姉妹2人(いずれも無職、1人は病気で就労不能)で居住している。XはYらに訴訟中に本件土地上に新築するマンションの1階部分の一部と5000万円の提供を申出たが、Yらは拒否した。

 そこで、Xは正当事由の補充として6000万円の提供を申立、本件土地の明渡しを求めた事案である。

 (判旨)
 「正当事由が十分でない場合には立退き料の提供という負担付土地明渡す請求をすることによって更新拒絶に際しての正当事由の充足を保つことが可能となる場合があることは否定できないが、本件においては前判決の通り、本件土地使用の必要性について、原告と被告らの間にその度合において著しい格差があり、立退料の提供という事情のみをもってしては、右必要性の格差を到底埋めるものではないから、原告の右立退料の提供によって、本件更新拒絶の正当事由の充足がなされたものとは考えることができない」

 (寸評)
 本件は典型的な土地の有効利用を正面に掲げての正当事由をめぐる争いであった。現行法からすれば判決は当然の結論といえる。

 なお、Yらは東借連に結集する組合員である。

(1989.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 地主が土地の有効利用を問題にして起した明渡請求が棄却された事例

2008年06月26日 | 土地明渡(借地)

 判例紹介 

 地主が自己使用を理由に、土地の有効利用を問題にしつつ、5500万円の立退料を堤供してなした土地明渡請求が棄却された事例 (東京高裁昭和60年12月24日判決

 (事案)
 借地人は先代地主より杉並区に90坪の土地を借り受け、そこに建坪17坪の家屋を建てて昭和10年以来住み、現在は妻と2人で暮らしている明治36年生まれの老人(当時83歳)である。左脚骨髄炎による歩行困難に加え、酢年前に肺炎・胃潰瘍等を患い、現在も体調は一進一退であり、近くのアパートに住む四女の世話を受けている。

 地主は大正4年生まれの女性(当時71歳)であり、現在息子所有の神田錦町の7階ビルの7階2室に居住して、階下の二男夫婦の世話を受けている。視力が著しく衰えたうえ、騒音・悪臭等環境が悪いので、夫が昭和56年に死亡したのを契機に、本件借地の明渡を受け、そこに長男一家と自分のために住宅を2棟建て移転したいと考えた。

 そこで立退料5500万円若しくは近隣の土地40坪の所有権譲渡と引き換えに本件借地の明渡を求めてきた。

 (判旨)
 高等裁判所は、(事案)で紹介した事実をすべて認めたうえで借地人につき「年齢、健康状態及び日常生活を考えると、今にわかに右居住を移動することは、単なる経済的あるいは感情的理由からばかりでなく、社会的、客観的にみても著しく困難なことと認めざるを得ない。

  本件土地が老夫婦だけで居住するにはかなり広い土地であり、現況での利用効率が高くなく、また、地代が低額に抑えられているからと言って、右の状態にある借地人において本件土地の使用の継続を望むことが社会的、公益的に不合理であり、権利の濫用になるというのは相当ではない」とし、借地人の必要度が地主のそれを上回ると認定し「立退料又は代替土地の提供を申出ていることを考慮しても、正当事由があると認めることはできない」と判断して、地主の土地明渡請求を退けた。

 (短評)
 本件は東借連常任弁護団の2人の弁護士が担当した当組合員の事案である。

 地主(71歳)借地人(83歳)とも老齢であり、5500万円の立退料等やや思い切った条件を提示した地主の言い分は裁判所をそれなりに動かす恐れがあった。加えて90坪の借地に17坪の家屋を建ててそこに夫婦2人で住むという使用形態につき、地主側は土地の有効利用問題を前面に立てて裁判所を動かそうとした。

 このような事案につき、借地人の言い分を認め、地主の請求を退けた本判決の意義は大きいと考え、紹介する次第である。

(1986.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 土地有効利用のための建替えが明渡の正当事由とならなかった事例

2008年06月25日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 賃貸建物を建替えてより有効な土地活用をすることは、立退正料の提供があっても正当事由とはならないとされた事例 東京地方裁判所平成元年7月28日判決

 (事案)
 賃借人は、昭和55年12月、本件建物の1階を賃借して鍼灸接骨院を営んでいたが、家主は、昭和62年12月、建物は終戦直後に建てられたもので老朽化しているので、日本橋茅場町の中心街に近く交通至便の地域に位置する本件場所においては、木造2階建て建物よりビルを建築した方が土地利用効果からみればはるかに有用であるので、立退料1000万円を提供するので明渡して欲しいと請求した。

 (判決要旨)
 原告と被告は、昭和57年12月、期間を2年とする更新契約をしたが、その契約書で、4年後以降に建物の建替えの必要性があることを被告が認諾したこと建替えに関する具体的条件については、その時点で改めて双方で打合わせることが特約された。

 原告(貸主)は借家住まいをし、自らの電気設備設計の事務所も賃借しており、被告から本件建物の明渡を受けた場合には、その後に新たにビルを建築して、これを居住及び仕事の事務所として利用したいとの希望を有している。もっとも、原告は、横浜市金沢区にも居宅を所有しており、現在は空家となっている。

 被告(借主)は、昭和55年10月、20年余の会社勤めを辞めて新たに鍼灸院を開業することを決断し、以後8年余の年月を経てようやく順調な経営が実現する段階に至っている。従って、この時点で右営業の場を他に移転し、改めて零からの出直しをするということは、経済的にも精神的にも被告にとっては極めて困難を伴う事柄である。

 昭和57年の本件賃貸借契約の更新の時から、被告は原告に対して、患者を離したくないので本件建物の建替えを行うのであれば新築建物へ再入居させて欲しいことを申入れている。

 以上のような原被告双方の事情を対比して考えると原告側における本件建物の明渡を求める必要性というのは、自らが使用する緊急の必要性があるあるというより、その敷地等のより有効な活用を図りたいという点にとどまるものと考えられるのに対し、被告側では、本件建物をその営業のための場として使用する極めて切実な必要性を有しているものと認めらる。この点からすれば、原告が被告に対して相当の金額の立退料を支払う意思を有していることを考慮に入れても、正当事由が備わっているとすることはできない。

 (説明)
 本件は当組合員さんの事案で東借連常任弁護団の2人の弁護士が担当した。
 土地の有効利用のための建替えを理由とする明渡請求訴訟が多い中で、有効利用のための建替えよりも、借家人の建物を必要とする事情の方が優先するとした判決である。家主は控訴しなかった。

(1989.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借家人が老齢、病身等の事情を重くみて明渡しの正当事由がないとした事例

2008年06月24日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 自己経営会社の従業員寮として自己使用の必要があるとしても、長年居住し強い愛着を抱いている老齢、病身の賃借人の犠牲において実現すべき強度の必要性は認められないとして、解約申入の正当事由がないとされた事例 東京高裁昭和60年12月12日判決、判例タイムズ603号)

 (事案)
 賃借人は昭和11年から建物の1階を借り、夫死後三男と同居している。年齢は77歳、厚生年金を受領して生活し、長年心臓病で時折発作もある。通院する病院は、借家から徒歩10分近くにあり、転居を嫌い、今後も長年住み慣れた本件借家で生活するのを強く望んでいる。

 本件建物は、昭和8年頃建築され、36年頃2階が増築された。

 現在の家主は、もともとの家主から、借家人がいるのを承知して、昭和40年7月、本件建物を買取って、その2階を自分が経営する水産物卸会社の従業員寮として使ってきた。

 その2年後、家主は本件建物を取壊して、4世帯用のアパートを新築し、自分の会社の従業員寮として使いたいと、明渡しの要求をしてきた。

 家主は、それに加えて、建物の古さを強調し、床、壁は下がり、敷居は水平でなく建具は閉まらず、人が乗れば音をたててへこむ部分があり、鴨居も下がっている部分がある。雨漏りも激しく、1階部分裏側の土台、柱も腐蝕してもろくなっていて、建物は全体的に歪んで危険な状態である、と主張した。

 さらに、60万円の立退料を支払うので正当事由を認めてくれと、裁判所に申立てたが、家主の、以上の請求は認められなかった。

 (判決要旨)
 「本件建物は、昭和36年2階にした際土台を入れ替えるなどの修理をしたのでしっかりしており、柱に傾斜、損傷はなく、床、敷居等が下がっていることもなく、居住としての使用にも支障がない。

 賃貸人は、借家人がいることを知りながら、自ら経営する会社の従業員寮として使用するために本件建物を買受けたのであり、賃借人は、老齢、病身であるが、長年本件建物に居住しこれに強い愛着を抱いており、本件賃貸部分以外は現在人が住んでおらず、一部損傷している部分があるとはいえ、本件建物はなお現状のまま居住の用に耐えるのであり、賃貸人が本件建物の明渡を受けて従業員寮として使用し得ないことにより不利益があるとしても、それはある程度予想されたことであって、賃借人の犠牲において従業員寮の新築計画を早期に実現すべき強度の必要性がある事情は認められないので、本件解約申入には正当事由がないものというべきである。

 また正当事由の補充として60万円又は裁判所の適当と認める立退料を支払う用意がある旨の申出をしたことが認められるが、右立退料の提供によって本件解約申入について正当事由が具備するに至るものと解することはできない。」

 (短評)
 裁判所のする正当事由の判断は微妙なところもあるが、本件の判断では借家人が老齢、病身で長く居住してきたことを重くみて、弱者保護の借家法の精神に沿っての判断をしている。家主が借家を途中から買取った者であったことも、借家人に有利な事情とされている。
 なお、この事件について、横浜地方裁判所も、借家人勝訴の判決をしている。

(1986.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 立退料の提供の申出があっても、正当事由が認められなかった事例

2008年06月23日 | 土地明渡(借地)

 判例紹介

 建物所有を目的とする土地賃貸借に関し、土地の経済的資本的利用の目的で更新拒絶し、合わせて立退料を提供する申出をしたにもかかわらず、正当事由が認められないとされた事例 東京地裁昭和61年12月26日判決、判例時報1252号73頁)

 (事案)
 地主は、土地賃貸借契約が昭和61年3月31日期限が満了するのに先立ち、昭和58年1月10日頃更新拒絶の意思表示をした。
 地主は、次のとおり正当事由を主張した。
一、地主の事情
1、地主の所有する土地のうち、商業地域内にあるのは本件土地を含む1筆の土地だけである。
2、地主は、右1筆の土地全体に高層ビルを建築する計画を有している。
3、地主は、立退料として、1500万円を支払う用意がある。

二、借地人の事情
1、本件土地上に建物を所有し、居宅として利用している。
2、本件建物は、木造で、築後60年を経過して、現在では既に老朽化している。
3、借地人は、昭和43年6月頃、昭和54年10月頃、本件建物につき地主に無断で改築・大修繕を行い、信頼関係を破壊した。

 これに対し、借地人は、右地主の土地所有の現況、右土地の利用計画は知らない。本件建物を居宅として利用していることは認め、建物の老朽化を争い、建物の修繕をしたこと認めるが改築・大修繕を行ったことは争った。

 さらに、地主は、本件土地を含む1筆の土地のほかに近隣に数百坪の土地を有し、地宅の敷地のほか、4ヶ所を駐車場等として使用していること、地主の子供たちが、既に全員成人しており、生活に窮するような事情にないこと、他方借地人は、本件建物以外に所有建物がなく、住む場所がないことを主張した。

 (判示)
 本件土地賃貸借契約の更新拒絶に正当事由があるか判断するに、本件建物は、築後60年以上経過した木造建物であって相当程度老朽化しており、他方本件土地が青梅街道に面した商業地域に位置しているので、土地の有効利用、地域開発の見地からすると、高層ビルを建築した方が望ましいが、地主は、近隣に数百坪に及ぶ土地を有し、単に経済的資本的利用の目的で本件建物の明渡しを求めているのである。他方借地人は、本件建物に50年以上居住し、80歳にもなる高齢者で、子供達の援助によって生活を維持している状態からすると、立退料の申出を考慮しても正当事由は充足されるものでない。

 (短評)
 土地の経済的資本的利用と居住目的との質的差を正しく評価した判決といえる。

(1988.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 立退料の提供があっても正当事由を補充し得ないとした事例 

2008年06月20日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 営業用建物の賃貸借の更新拒絶につき、立退料の提供があってもその正当事由を補充し得ないとして賃貸人からの明渡請求を棄却した事例 東京地裁昭和61年7月22日判決、判例タイムズ641号151頁)

 (事案)
 Xは整形外科医であって、昭和47年から大田区内で開業していたが、医院が手狭になったため、昭和50年、訴外A社から、Yを含む10数名の賃借人のいる本件建物(4階建店舗・事務所・居宅)を買受け、賃貸人の地位を承継した。

 Yとの賃貸借契約は昭和54年6月、1階160㎡、期間を昭和57年12月までと改定した。ところが、Xは期間満了6ヶ月前、外来患者が増加するため本件建物を改築し病院として使用する必要があるとして契約の更新を拒絶した上、Yに対し明渡しを求める本訴を提起し、正当事由を補強するため、600万円を支払うとした。

 これに対し、Yは、昭和37年以来、本件建物で医薬品等の販売業を営んでおり、年商2億円、顧客数5000名余、従業員10名であり、地域に深く根差した活動が好評を得て、顧客数も増加している現状にあって、廃業することはできず、他に転出する建物もないから、Xの更新拒絶には正当事由がないと反論した。

 (判示)
 「Xの診療所の患者が年々増加するとしても、診療所の存続ないし経営に支障があるとは認められず、Yに賃貸している建物部分を診療室に使用しなければ、その存在に重大な支障が生ずるとも認められない。Xは3年前にYとの間で賃貸借契約を改定した際、将来多数の入院患者を収容しうる病院に改装することが必要となる事情も当然予想しえた筈であったにもかかわらず、あえてYとの間で現状のように賃貸借契約を改定したのであるから、2年余にして右を理由に更新を拒絶するのは相当でないこと、身体の不事由な高齢者や車椅子使用者が2階の診療室に昇り降りするのは不便だが、階段をスロープにするとか、エレベーターを設置すること右不便の解消も不可能ではない」。

 「一方、Yは本件賃借店舗の他に4店舗を有するに至っているが右賃借店舗は医薬品の販売で主たる地位を占める本店であり収益率も最も高いこと、Yが20年以上も継続してきた右店舗を立退いても他に適当な店舗がなく、廃業となれば莫大な損害を受けること」などを総合考慮し正当事由をを認めず「立退料の提供をもってしても右正当事由を補完しうるものではない」とし、Xの請求を棄却した。

 (寸評)
 正当事由の判断に当り、安昜に金銭による補完を認めず、双方の事情を総合考慮した判決として評価し得る。

(1987.10.)

(東借連常任弁護団)

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原状回復費用の支払いで強制執行承諾条項付の公正証書を作成を要求された (東京・八王子市)

2008年06月18日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 八王子市打越町のアパートを今年の5月に退去したAさんは、2週間後に管理会社から19万円の原状回復費用を請求された。

 猫を飼っていたため壁に多少の引っかき疵があったのとタバコをすっていたこともあったが、こんなに請求されるとはビックリ。

 Aさんがお金がないというと管理会社は、分割払いでいいから強制執行承諾条項付の公正証書を作成するといってきた。秋山さんは組合に相談し、請求を全面的に拒否した。 

 

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借地人の土地に地主が7年間も無料駐車 (東京・荒川区)

2008年06月17日 | 借地の諸問題

 荒川区南千住*丁目で昭和45年から11・5坪の借地をしている。Aさんは平成12年頃、地主から一時借地内に車を置かせてくれと頼まれて一時使用料として5万円を受け取り承諾した。

 しかし、その後、1年が経過しても地主は車を移動せずに時々使用するのみであった。Aさんは車が駐車している所は以前から洗濯物を干していた場所である。地主は、Aさんが80近い高齢者であり、すでにご主人を亡くしている事もあって勝手に鉄骨を立てその上に簡単な物干場を作りそこを利用するようにと言ってきた。

 Aさんは、最初に5万円を受け取ったため、しばらく我慢をしていたが、坪1086円の地代も払っているのにその上に7年間も無料で駐車を認める訳にはいかないと地主に申し出た。

 地主は、今年9月が更新だからその時は更新料を安くしてあげる等々といって全く話し合いにならなかった。Aさんは組合に相談して入会し、車を地主が撤去するまで更新料は支払う意思のないことを申し出る決意である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 *ヤミ金訴訟 (2008年6月10日最高裁判決 全文)

2008年06月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

 著しく高金利で貸し付けた金融業者(ヤミ金業者)からは、利息だけではなく元金も含めて借手が支払った全額を損害金として取戻せるという最高裁の初判断があった。
 例えば、ヤミ金から10万円を借り、金利(年率数100~数1000%)を含めて200万円を返済した場合、一般的には借手は190万円の損害賠償請求が出来るという結論になる。しかし、今回の最高裁判決は損害賠償として200万円請求出来るという判断である。


事件番号
       (受)569平成19
事件名        損害賠償請求事件 (旧五菱会系ヤミ金訴訟)
裁判所        最高裁判所第三小法廷
裁判年月日     平成20年06月10日
裁判種別
        判決
結果           破棄差戻し
原審裁判所     高松高等裁判所
原審事件番号    平成18(ネ)231
原審裁判年月日  平成18年12月21日

 (裁判概要) 
  いわゆるヤミ金融の組織に属する業者から,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)に違反する著しく高率の利息を取り立てられて被害を受けたと主張する上告人らが,上記組織の統括者であった被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案。

 (裁判要旨)
 1 反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合に,被害者からの損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として被害者の損害額から控除することは民法708条の趣旨に反するものとして許されない

 2 ヤミ金融業者が著しく高利の貸付けにより元利金等の名目で借主から金員を取得し,これにより借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは民法708条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

 


主    文

     原判決のうち上告人らの敗訴部分を破棄する。
     前項の部分につき,本件を高松高等裁判所に差し戻す。


理     由

 上告代理人五葉明徳ほかの上告受理申立て理由について

 1 本件は,いわゆるヤミ金融の組織に属する業者から,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「出資法」という。)に違反する著しく高率の利息を取り立てられて被害を受けたと主張する上告人らが,上記組織の統括者であった被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。


 2 原審が確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 被上告人は,著しく高利の貸付けにより多大の利益を得ることを企図して,Aの名称でヤミ金融の組織を構築し,その統括者として,自らの支配下にある第1審判決別紙2「被害明細表」の「店舗名」欄記載の各店舗(以下「本件各店舗」という。)の店長又は店員をしてヤミ金融業に従事させていた。

 (2) 上告人らは,平成12年11月から平成15年5月までの間,それぞれ,第1審判決別紙2「被害明細表」記載の各年月日に同表記載の金銭を本件各店舗から借入れとして受領し,又は本件各店舗に対し弁済として交付した。そして,上記金銭の授受にかかわる利率は,同表の「利率」欄記載のとおり,年利数百%~数千%であった。

 (3) 本件各店舗が上告人らに貸付けとして金員を交付したのは,上告人らから元利金等の弁済の名目で違法に金員の交付を受けるための手段にすぎず,上告人らは,上記各店舗に弁済として交付した金員に相当する財産的損害を被った。


 3 原審は,次のとおり判示して,被上告人について不法行為責任を認める一方,上告人らが貸付けとして交付を受けた金員相当額について損益相殺を認め,その額を各上告人の財産的損害の額から控除した上,原判決別紙認容額一覧表の「当審認容額」欄記載のとおり,上告人らの各請求を一部認容すべきものとした。

 (1) 出資法5条2項が規定する利率を著しく上回る利率による利息の契約をし,これに基づいて利息を受領し又はその支払を要求することは,それ自体が強度の違法性を帯びるものというべきところ,本件各店舗の店長又は店員が上告人らに対して行った貸付けや,元利金等の弁済の名目により上告人らから金員を受領した行為は,上告人らに対する関係において民法709条の不法行為を構成し,被上告人は,Aの統括者として,本件各店舗と上告人らとの間で行われた一連の貸借取引について民法715条1項の使用者責任を負う。

 (2) 本件各店舗が上告人らに対し貸付けとして行った金員の交付は,各貸借取引そのものが公序良俗に反する違法なものであって,法的には不法原因給付に当たるから,各店舗は,上告人らに対し,交付した金員を不当利得として返還請求することはできない。その反射的効果として,上告人らは,交付を受けた金員を確定的に取得するものであり,その限度で利益を得たものと評価せざるを得ない。

 (3) 不法行為による損害賠償制度は,損害の公平妥当な分配という観点から設けられたものであり,現実に被った損害を補てんすることを目的としていると解される(最高裁昭和63年(オ)第1749号平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照)ことからすると,加害者の不法行為を原因として被害者が利益を得た場合には,当該利益を損益相殺として損害額から控除するのが,現実に被った損害を補てんし,損害の公平妥当な分配を図るという不法行為制度の上記目的にもかなうというべきである。


 4  しかしながら,原審の上記3(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 民法708条は,不法原因給付,すなわち,社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為(以下「反倫理的行為」という。)に係る給付については不当利得返還請求を許さない旨を定め,これによって,反倫理的行為については,同条ただし書に定める場合を除き,法律上保護されないことを明らかにしたものと解すべきである。したがって,反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,上記のような民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである。なお,原判決の引用する前記大法廷判決は,不法行為の被害者の受けた利益が不法原因給付によって生じたものではない場合について判示したものであり,本件とは事案を異にする。

 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から上告人らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として上告人らの損害額から控除することは許されない。これと異なる原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。


 5  以上によれば,論旨は理由があり,原判決のうち上告人らの敗訴部分は破棄を免れない。そして,上告人らが請求し得る損害(弁護士費用相当額を含む。)の額等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫の意見がある。

 

 裁判官田原睦夫の意見は,次のとおりである。
 私は,本件において,被上告人の支配下にある各店舗から上告人らに対して,著しく高利の約定による貸付金名下で交付された金員は,不法原因給付として,本件各店舗から上告人らに対して返還を請求することができないものであり,また,上告人らが上記貸付金名下で交付を受けたことによる利得は,損益相殺ないし損益相殺的な調整として上告人らが被った損害額から差し引くべきではないとする点では,多数意見と結論を同じくする。しかし,多数意見のように「反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除すること」も許されない,と一義的に言い切ることには,なお躊躇を覚える。不法行為の被害者が加害者から受けた給付が,不法原因給付としてその返還を要しない場合であっても,被害の性質や内容,程度,被害者の対応,加害行為の態様等から,その給付をもって損益相殺的処理をなすことが衡平に適う場面があり得ると考えられるからである。

 ところで,本件では,上告人らの被った財産上の損害は,上告人らが本件各店舗に対して支払った元利金等と解されるところ,それに関連して,本件における損害の捉え方及び損益相殺との関係,並びに不法原因給付の給付物を被害者が加害者に交付した場合の関係について,以下に若干の補足的な意見を述べる。

 加害者による不法行為により被害者が金銭等の財産上の損害を被った場合に,被害者が当該不法行為自体によって財産上の利益を得ているときには,その差額をもって財産上の損害額と評価すべきものである。例えば,加害者が投資名下の詐欺で被害者から100万円の交付を受け,その際に利益配当の前払であるとして被害者に5万円を交付した場合には,95万円が損害額である。そして,被害者が当該不法行為に起因して,別途,何らかの利得を得ている場合に,当該利得を既に評価されている損害額から差し引くべきか否かという点において,損益相殺の可否が問題となると考える。

 本件では,上告人らは本件各店舗から著しく高い利率で貸付けを受け,その後に本件各店舗に対して元金部分と利息部分とを明確に区別することなくその元利金名下で支払っているところ,上告人らには,その支払の都度その支払った金額相当額の損害が発生していると評価されるのであり,その損害額の算定において,上告人らが当初に貸付金名下に給付を受けた金額との差額が問題になる余地はない。

 このように,本件では当初の貸付金名下の金員の交付とは別途に損害の発生が認められるところから,その損害と貸付金名下で交付を受けた金員相当額との損益相殺の可否が問題となり得るが,本件では,それが認められるべきでないことは,多数意見の述べるとおりである。

 ところで,上告人らは,貸付金の元利金の支払名下で本件各店舗に支払をなしているところから,利息制限法を超える利息を支払った場合に,その超過部分は,当然に元本に充当されるとする判例法理との関係が一応問題となり得る。しかし,同判例法理は,金銭消費貸借契約の約定で定められた利率が利息制限法で定める利率を超えてはいるものの,当該金銭消費貸借契約それ自体は有効である場合にかかるものであって,本件のごとく貸付行為自体が公序良俗に反し無効である場合には,その貸付けに対する利息の支払を観念する余地はないから,上記判例法理の適用の可否は問題となり得ない。

 また,給付が不法原因給付であって,給付者から利得者に対して不当利得返還請求をすることができない場合に,利得者が給付者に対し,当該給付にかかる物を引き渡し,あるいは給付にかかる利得額の一部又は全部を支払った時は,利得者は,それを返還し又は支払うべき義務が存しなかったことを理由として,給付者に対して,再度の給付を求めることができないと解されているところ,上告人らの本件各店舗に対する支払が,本件貸付金名下で交付を受けた金員の弁済としてなされている場合には,その弁済は,不法原因給付にかかる給付の返還と評価され,その弁済額相当額は損害として評価することができない余地がある。しかし,本件においては,上告人らの本件各店舗に対する支払は,元利金等としてなされてはいても,上記のとおり明確に元金部分として区分して弁済された事実は認められず,また,元利金名下の弁済であっても,上記のとおり判例法理を適用して制限利息超過部分が元本の弁済に充当される余地もないから,上告人らから本件各店舗に対して,貸付金名下の元金に対する弁済としてなされた給付は存しないものというべきである。


 したがって,上告人らが被った財産上の損害は,上告人らが本件各店舗に元利金名下で支払った金員の総額というべきである(なお,上告人らが,本件各店舗に対して元利金名下で支払った金額につき,一審判決は,上告人らの陳述書記載の金額は,銀行に対する調査嘱託の結果と明らかに異なっている部分があり,その記載を直ちに信用することができない,として,上告人らが本件各店舗に対して支払った元利金につき一審判決別紙4取引一覧表の弁済額欄の金額を認定しているのに対して,原判決は,その陳述書の信用性について判決理由中に何ら触れることなく,同陳述書を証拠として引用した上で,上告人らの主張するとおりの元利金名下での金員の支払がなされたものと認定している。この点は,証拠の評価の問題ではあるが,同一の証拠関係に基づいて原審の認定を変更する場合には,当事者に対する説明の観点からも,判決理由中に何らかの説示がなされることが望まれる。)。


 (裁判長裁判官  那須弘平  裁判官  藤田宙靖  裁判官 堀籠幸男  裁判官 田原睦夫  裁判官  近藤崇晴)




 

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【Q&A】 坪10万円の更新料の支払い請求を受けているが支払わないとどうなるのか

2008年06月13日 | 更新料(借地)

 (問) 今年の7月12日で20年間の借地契約期間が満了します。地主は近所の不動産屋を通じて更新料を坪10万円、34坪で総額340万円請求してきた。更新料を支払わない場合、借地契約はどうなるのか。


  (答) 「借地借家法」は1992(平成4)年8月1日から施行されているが、「借地契約の更新に関する経過措置」によって「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」(借地借家法附則6条)。従って、借地契約を今後何度更新しても、旧「借地法」が引き続き適用される。

 借地契約の更新は、
①地主と借地人が更新契約条件に合意して、新しい契約書に署名捺印する「合意更新」(借地法5条)がある。
②これに対して地主と借地人との間で契約条件の合意が得られない場合でも、借地人が土地の使用を継続する場合、契約期間が満了すると法律の定めで、新しい契約書を作らなくても従前の借地の契約条件で自動的に更新してしまう「継続使用による更新」(借地法6条)がある。
③期間満了に際して地主に契約更新を拒否する正当な理由がない場合、借地人の一方的な更新請求だけで借地更新が認められる「請求による更新」(借地法4条1項)との3通りの更新がある。

 

 ②の「継続使用による更新」と③の「請求による更新」の場合の更新は、借地上の建物が鉄筋コンクリート建・鉄骨建物等の堅固建物ならば契約期間は30年、それ以外の建物ならば20年に存続期間が法定されている。その他の契約条件は従前の契約と同一で自動に法定更新更新される(借地法4条1項、6条1項)。

 「法定更新の場合、賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができる」(東京高裁昭和56年7月15日判決)。
 借地の更新契約は、地主との間で契約条件・契約内容の合意が出来ず、契約書の作成がなされなくても、また更新料を支払わなくても法律の規定で自動的に継続される。

 ①「更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には、適用の余地がない」(東京高裁昭和56年7月15日判決)。

 ②「更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら賃貸契約が合意更新された場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(最高裁昭和57年4月15日判決)。

 従って、借地人が借地契約を法定更新した場合、「判例」及び「借地法」からも、地主が更新料を請求する法的根拠更はない。更新料を支払わないという理由で借地の更新を地主は法律的に拒むことは出来ない。日本の法律では、借地人に更新料支払を義務務付けた法律の規定・条文は存在しない。

 また、地主は法文上の更新料請求権が存在しないので、更新料を請求する根拠として「更新料の授受は世間の慣習だ」と主張した。しかし、最高裁判所で慣習説は否定され、借地更新料は支払義務なしとされた(最高裁昭和51年10月1日及び同昭和53年1月24日判決)。

 上記の「判例」及び「借地法」から、借地更新料支払いの法律的根拠はない。更新料を支払わなくても借地人が後に不利益を蒙ることはない。既に更新料不払の借地人は大勢おり、今も従前どおり借地を続けている。

 実践する場合は組合に相談し、内容証明郵便で借地の更新請求と更新料の支払い請求を拒否する旨の文章を地主に送る。以上を組合の仲介で行えば一層効果的な結果が期待できる。

 

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地代未払いを理由に借地契約を解除通告される (東京・板橋区)

2008年06月12日 | 契約・更新・特約

 板橋区仲宿で借地していたNさんは、高齢で老人ホームに入居することにした。息子さんがこの借地を代わりに管理することにした。息子さんは、実の母親と嫁の実家の母親の入院騒ぎで、地代を今年の1月から支払っていなかった。

 地主本人も体調不良で入院となり、その息子が管理者となった。その息子が5月になっていきなり5ヵ月分の地代が未納で契約書第5条1項に記載されている3か月分以上の賃料の支払いを怠ったときに抵触するので契約を解除すると電話で通知してきた。

 あわてて地主のところに6か月分の地代を支払いにいったが、地主は強行に未払いを主張し、契約を解除し明け渡しを求め、地代の受領を拒否してきた。

 インターネットで検索し、組合事務所に尋ねてきた。組合事務所での相談で、とりあえず供託し様子を見ることにしようというアドバイスをした。

 翌日、土地の登記簿などを持参し相談していたところ、地代の納入帳を調べたところ地主の母親との借地人との間で、半年に一度地代を支払うことで合意していたことが判明した。当事者双方の母親の具合が悪くなり、そのような事実について知らなく、契約書通りの支払い方法だと錯覚していたものと考えられた。

 地主宛に「支払い方法の合意に貸主の錯誤があり、地代の未払いはないこと。受領を拒否したので供託する」と言う通知と供託を同時に行うことにした。

 Nさんは、借地上の建物の処分も含め、組合に入会して相談していくことにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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水道管の水漏修理に対して地主が承諾料を要求 (東京・大田区)

2008年06月11日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 世の中には、とんでもない世間離れした、地主がいるものだ。「物干し台を直したら承諾料を請求された。ガラス窓を直したら、風呂釜を取り替えたら承諾料を求められた」という相談が多い。

 また、相続による借地権の継承にも、権利譲渡の如く承諾料を求められたという。地主の名を尋ねると同一人物だった。

 大田区西六郷*丁目に約62坪賃借しているAさんは、水道管が壊れて水が漏れているので、都の水道局に申し入れたら地主の承諾を取るようにといわれて、地主に相談したら承諾料を請求されて組合に相談に来た。

 再度、水道局に申しいれるが、地主とのトラブルを避けたいと、水道局は補修工事の拒否を内容証明郵便で通告して来た。

 破損箇所は水道メーターの外側なので料金には影響はないことを確認して、Aさんと相談のうえ都議会議員を介して、水道局に申し入れると、水道法の規定により水道局が行う工事であることが明らかとなり、工事は無事完了した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 1

2008年06月09日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

事件番号      平成17(ワ)11364
事件名    損害賠償請求事件
         賃貸マンションへの入居拒否

裁判所    大阪地方裁判所 第20民事部
裁判年月日
 平成19年12月18日

裁判概要   日本で生まれ育った在日韓国人2世である原告が,賃貸住宅の入居に関して原告の国籍又は民族性を理由とする差別を受け,精神的苦痛を被ったことについて,これは被告が人種差別を禁止する条例を制定していないことによるものであり,同不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して,被告に対し,上記精神的苦痛に係る慰謝料等450万円及び遅延損害金の支払を求める事案。

判示事項  あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約2条1項柱書き及び同項(d)の規定は,私人間の人種差別を禁止させるための立法措置を執ることについて,個別の国民に対する締約国の具体的作為義務を定めたものではない。

                   主        文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

                     事 実 及 び 理 由

第1 請求
1 被告は,原告に対し,450万円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言

第2 事案の概要及び前提事実
1 本件は,日本で生まれ育った在日韓国人2世である原告が,賃貸住宅の入居に関して原告の国籍又は民族性を理由とする差別を受け,精神的苦痛を被ったことについて,これは被告が人種差別を禁止する条例を制定していないことによるものであり,同不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して,被告に対し,上記精神的苦痛に係る慰謝料等450万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠[甲1~3,6,8,15,46,51,原告本人]により容易に認定できる事実及び当裁判所に顕著な事実)

(1) 原告は,日本で生まれ育った在日韓国人2世である。

(2) 原告は,平成17年1月9日,株式会社エイブル梅田新道店(以下「エイブル」という。 )に賃貸住宅の紹介及び賃貸借契約の仲介を依頼した。

(3) エイブルは,同月11日から同月14日までの間,原告に対し,複数の物件情報を紹介した。その中には,大阪市a区b町c丁目d番地所在の建物(以下「本件建物」という。 )が含まれていた。

(4) 原告は,同月15日,本件建物に入居したいと考えて,エイブルの店長に対し,その旨伝えた。同店長は,本件建物の共有者の1人(以下「本件家主」という。 )に対し,電話で,原告が本件建物への入居を希望していることなどを伝えた。
同店長は,上記電話の後,原告に対し,本件家主が原告の入居を拒否した旨伝えた。
同店長は,本件家主に対し,再度電話をして説得したが,本件家主の意思は変わらず,原告は,本件建物への入居を申し込むことができなかった(以下,上記の出来事を「本件入居拒否」という 。)。

(5) 原告は,同年11月17日,大阪地方裁判所に対し,本件家主を被告として,本件入居拒否は原告の国籍又は民族性を理由とする差別であり,本件入居拒否により精神的苦痛を受けたと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。原告及び本件家主は,平成19年3月13日,同訴訟事件において裁判上の和解をし,本件家主は,原告に対し,同和解に基づき,解決金として100万円を支払った。

   「国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 2」へ続く


【判例】 国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 2 原告の主張

2008年06月09日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

第3 争点及び当事者の主張
 本件の争点は,1 本件入居拒否が生じた時点までに被告が人種差別を禁止する条例を制定しなかった不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか,2 原告の損害(本件入居拒否が人種差別に当たるかどうかを含む。 )の有無及びその額以上の2点であり,これらに関する当事者の主張は,以下のとおりである。

 1 本件入居拒否が生じた時点までに被告が人種差別を禁止する条例を制定しなかった不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか(争点①)について

(1) 原告の主張
 ア 人種差別に関して国及び地方公共団体が憲法及び条約上負う義務の内容
 (ア) 憲法上の義務
 憲法14条1項が定める平等原則は,国籍又は民族性を理由とする差別(以下「生まれによる差別」という。 )である封建的身分を否定し,人は皆その価値において等しく尊重されるべきとする人間平等の思想を前提とするものであり,近代社会の基本的な秩序として近代的平等原則の核心を成すものである。憲法14条1項後段は 「人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない」と規定し,生まれによって決定される具体的な先天的事項を列挙してそれらに基づく差別を特に禁止している。このことは,生まれによる差別の禁止という平等原則の核心部分の確認であり,この核心部分は近代社会の公序を形成する。したがって,生まれによる差別は,公権力によるものだけではなく,私人によるものであっても公序に反するものとして,当然に違法となる。

 また,住居は,人間生活の基盤であり,人格的生存のための最も基本的かつ不可欠な要素であることからすれば,住居を確保することは,憲法13条,25条1項,22条1項により保障される基本的人権であり,適切な住居を得る自由権的性格及び生活の基礎として適切な住居を確保することを求める社会権的性格を有する複合的権利である。この住居を確保する権利は,憲法14条1項によって平等に保障されなければならない。

 本件入居拒否のような生まれによる差別は,社会の中に構造的に組み込まれている偏見に根ざすものであり,今日においても,単発的,偶発的な例外事象ではなく,多発している状況である。このような状況の下では,国は,憲法14条1項に定める差別の禁止を実効的なものにするために,民事上の損害賠償請求等による解決にゆだねるだけでなく,生まれによる差別を禁止し,終了させるためのあらゆる施策を積極的に展開しなければならず,このことは憲法14条1項に基づく国の義務である。そして,被告は,公権力の一翼を担う地方公共団体であり,その行為は国際的には国家行為とみなされ,条例制定権,地方公共団体の自治行政権を有する主体であるから,国と同様の義務を負うというべきである。

(イ) 国際条約上の義務
 a 条約の国内法的効力
 日本が平成7年12月20日に加入したあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(以下「本件条約」という )は,締約国(地方公共団体を含むと解する。 )自身による人種差別行為を禁ずるとともに,その2条1項柱書きで 「締約国は,人種差別を非難し,また,あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため 」と規定した上,同項(d)で 「締約国は,すべての適当な方法(状況により必要とされるときは,立法を含む。 )により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させる 」と規定し,締約国(地方公共団体を含むと解する。 )に対し,国内における「人種差別を非難し,また,あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとる」義務及び「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは,立法を含む )により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させる」義務を定めている。

 日本が批准,加入した国際条約は,一般に法律に優越する国内法的効力が認められている。また,本件条約は,その内容に照らし,締約国内の差別事象のみを対象としており,日本は,上記各義務を遵守するために,本件条約の趣旨に合致するよう国内の差別事象を防止,禁止,終了又は救済するほかない。したがって,本件条約は,その締約国である日本において憲法に次ぐ国内法規範となるものであり,上記規定は,これらの義務違反を判断する上で裁判規範となるものである。

b 本件条約に定める人種差別撤廃義務について
 本件条約2条1項(d)の規定内容及び同項が定める義務のうちの人種差別を禁止する義務(以下「差別禁止義務」という )は,条文構造上,同差別を終了させる義務(以下「差別終了義務」という。 )とは異なり,条約の批准,加入の時点で直ちに実施されるべき即時的なものと解するべきであることからすると,国及び地方公共団体が本件条約上負う差別禁止義務は,それぞれの法域で適当とされる方法を通じて人種差別撤廃のための措置を執るべきことを具体的に義務づけたものである。

 そして,本件条約5条柱書き及び同条(e)(iii)によれば 「第2条に定める基本的義務に従い,締約国は,特に次の権利の享有に当たり,あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種,皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに,すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する 」と規定して 「住居についての権利」を挙げている。したがって,本件条約2条1項柱書き及び同項(d)に定める上記各義務は,締約国(地方公共団体を含むと解する )に対して単なる政治的責務を定めたにすぎないものではなく,具体的な作為義務を定めたものであり,本件入居拒否のような住居についての権利を侵害する差別を禁止することは,本件条約の下で法的義務とされていることは明らかである。

c 国及び地方公共団体の裁量について
 本件条約における国及び地方公共団体が実現すべき目的は,人種差別を禁止し,終了させるという明確なものである。このように目的が明確である場合には,国及び地方公共団体は,当該目的達成のためにいかなる手段を執るかという点に裁量権を有するにとどまり,何もしないという選択肢を有しているものではない。そして,人種差別を禁止し,終了させるためにある適当な方法を執った場合において,それにより人種差別を禁止し,終了させることができないときは,更に別の適当な方法を執らなければならず,その方法の選択に関して裁量の逸脱があれば違法となる。

d 国及び地方公共団体の立法義務
 本件条約に基づいて国及び地方公共団体が執るべき施策,措置は,いかなる人種差別も禁止し,終了させるものでなければならない。憲法14条は私人によるものも含む人種差別を禁止しており,国及び地方公共団体による教育,啓発活動が行われ,個別の事案においては損害賠償請求等による救済もされているが,それにもかかわらず,本件入居拒否のような人種差別事象が多発している。また,本件条約2条1項(d)及び6条によれば,本件条約は,締約国に対し,私人間の人種差別事象に関して立法(条例を含む。 ),行政(地方自治行政を含む 。)及び司法を総動員して人種差別の防止,禁止,終了及び救済措置を講ずることを義務づけているところ,散発的に人種差別事象が発生しているにすぎない場合においては,民事上の損害賠償請求によって本件条約上の差別禁止義務を尽くしたと評価されることもあり得るが,相当の規模の人種差別事象が発生している場合には,民事上の損害賠償請求では人種差別を防止するには不十分であり,その場合に司法のみに差別禁止義務を負わせるという対応は,本件条約の趣旨に沿うものではない。したがって,国及び地方公共団体が立法によらないで人種差別禁止のための措置,施策を執ったものの,それによって人種差別を禁止し,終了させることができない場合には,法律上人種差別を禁ずる義務を課す以外に有効で適当な方法はなく,この場合には,国及び地方公共団体はその旨の立法措置を執らなければならないというべきである。

 民族差別,外国人差別の度合いは,全国一律のものではなく,当該地域の歴史的,社会的条件によって現れ方が一様でない。これらの差別を禁止し,終了させるためには,それぞれの地域の実情に応じた対応を可能にする立法措置が執られるべきである。また,本件入居拒否のような差別を無くすためには,個々の具体的な人種差別事象を把握し,それぞれの事案に応じた適切な措置を講ずることが必要である。このような措置は,地方自治法が「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本」としているように(同法1条の2第2項) ,国よりも地方公共団体,それも市町村レベルの方がよりよく行うことができる。

 地方公共団体が人種差別を禁ずる法的義務を課するためには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない(同法14条2項)ところ,日本政府は,本件条約上の義務の国内的履行に関して,現行法の運用によってその履行が可能であり,その履行のために新たな立法を必要とするものではないとの立場に立っていたから,地方公共団体が上記法的義務を課する条例を定めることに支障はない。

 以上によれば,事案に応じて人種差別を禁止し,終了させる適切な措置を具体的に実施する義務は,地方公共団体である市町村がこれを負うものというべきであり,市町村は,国による新たな立法措置を待たずに,本件条約への加入及びその発効により,本件条約上の義務を履行するための措置として住居についての権利に係る差別を含む生まれによる差別を禁止する条例(以下「差別禁止条例」という )を制定しなければならない法的義務が課せられた。なお,同条例には,賃貸人又は宅地建物取引業者(以下「宅建業者」という )が入居拒否を行った場合に強制力のある中止命令や罰則を伴うことは必ずしも必要ではないが,これらを伴う方が望ましい。この場合,それらが他の法律と抵触する内容のものとなるとしても,人種差別を禁止し,終了させるために必要不可欠である限り,法律より上位の憲法及び条約上の義務の履行として行われるものであるから,無効なものではないというべきである。

イ 被告の条例制定義務違反
 (ア) 被告が差別禁止条例を制定する必要性及び相当性a 大阪市内における外国人に対する入居差別の実態
 (a) 昭和7年版「社会運動の状況」において「近似家主ハ朝鮮人ニ対シ貸家ヲ嫌忌スルノ傾向アリ」と報告されているところ,その当時,このような状況が全国共通のものであった。大阪市内には,歴史的な経緯から在日韓国・朝鮮人が多く居住しており,第2次世界大戦以前の朝鮮人蔑視の態度が同大戦以後も続き,民間賃貸住宅の家主がこれらの者に対して外国人であることを理由にその入居を拒否するという入居差別問題が継続して頻発していた。被告は,遅くとも昭和52年ころには,このような入居差別の問題が存在していることを認識していた。

 (b) 平成5年6月18日,大阪地方裁判所において,マンションの賃貸借に関して借入申込者が外国人(在日韓国人)であることを理由に家主が入居を拒否したことが,契約準備段階における信義則上の義務に違反し,家主は損害賠償義務を免れないとした判決が言い渡された。

 (c) 被告は,昭和57年に市民生活局内に人権啓発課を設置したが,同年以降も,大阪市内における外国人に対する入居差別を防止することができなかった。

 b 以上のような状況及びこれらの入居差別について個別救済としての民事上の損害賠償が命じられてもなお入居差別事象が発生していたことからすると,本件条約が日本において発効した平成8年1月14日ころの時点には,賃貸人及び宅建業者に対して何らかの法的な義務を課することなく外国人に対する入居差別を禁止し,終了させることができないことは明らかであったし,被告はそのことを認識していたということができる。したがって,上記時点において,被告が大阪市内における外国人に対する入居差別を禁止し,終了させるためには,賃貸人及び宅建業者に対して外国人に対する入居差別を禁止する法的義務を課す内容の条例を制定する以外に執り得る適当な方法がなかったことは,一義的に明らかな状況であり,上記時点のころには,被告において,憲法及び本件条約に基づき,差別禁止条例を制定すべきことが状況により必要とされる事態に至っており,被告は同条例を制定する法的義務を負っていた。

 c 被告は,上記時点以降も,人種差別撤廃への取組に関して,① 平成11年4月に大阪市人権行政基本方針を策定し,② 平成12年に大阪市人権尊重の社会づくり条例を制定し,③ 平成6年11月に設置した大阪市外国籍住民施策有識者会議が平成9年7月に出した提言を踏まえ,平成10年3月に「大阪市外国籍住民施策基本指針-共生社会の実現を目指して- (甲34の1。以下「住民施策基本」指針」という )を策定し,平成16年3月に同指針を改定し,④ 相談事業,関係機関と連携した差別事象への対応,賃貸人,宅建業者に対する啓発事業を行っているという。しかし,①の大阪市人権行政基本方針は,一般的な人権尊重の指針にすぎず,被告が具体的にどのような施策を行うかは,同方針からは明らかではない。②の大阪市人権尊重の社会づくり条例は,被告に対する抽象的な義務を規定するにとどまるものであり,賃貸人又は宅建業者に対して直接に行政指導,勧告をすることができるというものではなく,被告が具体的にどのような施策によって差別を解消するのかについては明らかでない。3の住民施策基本指針は,その目標達成のための取組として人権啓発や行政サービスを多言語で提供するなどというものであり,実際に差別が生じたときにどう対処し,救済するかという問題に応えるものではなく,入居差別を防止し,救済するには効果的でない。4は,相談者の自主的解決を支援したり,専門家相談を実施するという内容のものであり,被告が主体的に差別事象の禁止及び救済措置を執る内容のものではない。このように,以上の施策等は,いずれも外国人に対する入居差別を解消させ得るものではなく,大阪市内ではこの間も外国人に対する入居差別が頻繁に発生しており,被告の調査においても,以下のとおり,差別状態が明らかになっている。

 平成13年3月末日当時,大阪市内の外国人登録者は11万8926人であり,そのうち80.7%が韓国・朝鮮籍であったところ,被告は,同月末日現在大阪市内に居住している20歳以上の外国人登録者を母集団とする大阪市外国籍住民の生活意識についての調査(標本調査)を行い,平成14年3月,同調査の結果をまとめた報告書(甲35の1)を発表した。同報告書によれば 「住宅・入居において,差別や不愉快な経験,偏見を感じたこと」とする質問に対する回答(重複回答方式)は,全回答者数のうち56.6%が「とくにない」であり, 「回答なし」が11.3%であったから,住宅・入居において差別等を感じた者は32.1%となる。受けた差別の内容に関しては 「家主から日本国籍が必要と言われて,入居を断ら,れた」者が17.3%(差別等を感じた者に対する割合は53.9%。以下,括弧内の数値は同じ割合を表す 「マンション・アパートの入口に『外国人お断り』)と書かれているのを見た」者が13.9%(43.2%), 「家主から入居の際,日本人の保証人が必要と言われて,入居できなかった」者が12.2%(38.0%), 「不動産業者に外国人を理由として,あっせんしてもらえなかった」者が11.8%(36.9%)であった。また,被告は,上記調査と同時に,大阪市内に居住している有権者を母集団として大阪市における外国籍住民との共生社会実現のための意識調査を行い,その報告書(甲35の2)を発表した。同報告書によれば,基本的人権にかかわる問題として有権者が関心を持っているものとして,障害者やその家族に対する差別の問題(39.8%)の次に在日外国人に対する差別の問題(37.3%)が挙がっており,外国籍住民が受けている不利益として,就職時の不利益(34.3%) ,労働条件(25.% ),結婚時における文化,習慣の違いからくるいやな思い(19.5%)に次いで,住宅への入居拒否(15.2%)が挙げられている。以上のことは,上記各調査が行われた当時,大阪市内に入居拒否を受けた経験を有する外国人登録者が多数いたこと,換言すれば,一定数の家主が外国人に対する入居拒否をしていたことを示している。また,本件入居拒否が行われた時点においても,大阪市内において,外国人に対する入居差別は公然又は隠然として存続していた。

 d 差別禁止条例は,人権保障に資するものであって容易に制定できるものであり,被告が指摘する人種差別撤廃への取組より有効なものである。具体的には,条例という法規範により差別の禁止を宣言することによって,被告の市民に対する教育的効果があり,仲介業者は賃貸人に対して差別禁止条例を根拠に積極的に入居差別を防止するよう働きかけることができ,入居差別による被害を受けた当事者は差別禁止条例を根拠に救済を受けることができる。そして,被告は,差別した者と差別された者との間の自主的解決を支援するという対応にとどまらず,積極的に差別事象に介入することや,賃貸人及び宅建業者に対する入居差別是正のための行政指導をすることが可能となる。

 川崎市は,平成12年に川崎市住宅基本条例を制定した(甲23) 。同条例14条1項は 「何人も,正当な理由なく,高齢者,障害者,外国人等(以下「高齢者等」という。)であることをもって市内の民間賃貸住宅への入居の機会が制約され,又は高齢者等であることをもって入居している民間賃貸住宅の居住の安定が損なわれることがあってはならない 」と規定し,民間賃貸住宅における外国人の入居差別を禁止している。また,同条2項は 「高齢者等の入居の機会の制約又は居住の安定が損なわれることがあったときは,関係者から事情を聴き,必要な協力又は改善を求めるものとする 」と規定し,さらに,同条3項(3)は,高齢者等の民間賃貸住宅への入居の機会の確保及び民間賃貸住宅における居住の安定を図るために民間賃貸住宅への入居に際して必要な保証制度の整備をするなどの施策を実施することを明記している。そして,同市においては,同条例の制定を皮切りに入居差別を禁止するための具体的な施策が施され,同条例の制定後,入居者の限定を行っている家主の割合が減少し,入居者の限定の対象として外国人を挙げる割合も減少している旨の報告がある。

(イ) 被告の義務違反について
 上記(ア)のとおり,被告は,平成8年1月より前に行っていた立法措置以外の方法による施策等では入居差別を解消できない状況にあったところ,同月14日に本件条約が発効して,差別禁止条例を制定する法的義務を負ったにもかかわらず,同条例制定のための措置を何ら執ることなく,その後10年を経過しても,入居差別事象が多数存在していたことを認識しながら同条例を制定せず,大阪市内の賃貸人や宅建業者の入居差別行為を放置し続けた。そして,その結果,国籍又は民族性を理由とする本件入居拒否を招いた。

ウ 被告の義務違反が国家賠償法1条1項の適用上違法であること
 上記ア及びイのとおり,憲法及び本件条約に基づく被告の差別禁止条例制定義務は具体的な義務であり,遅くとも本件条約が発効した時点で同条例の制定が必要とされる状況にあった。そして,上記イ(イ)によれば,被告が同条例を制定するのに不可避的に要する期間を考慮に入れても,本件入居拒否までに同条例を制定するのに必要な相当期間は経過しているということができる。したがって,被告の同条例制定義務の懈怠(公権力の不行使)は,国家賠償法1条1項の適用上,違法というべきである。

   「国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 3」へ続く


【判例】 国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 3 被告の主張

2008年06月09日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

(2) 被告の主張
被告が人種差別を禁止する内容の条例を制定していないことは認める。この点に関して被告が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うことは争う。

ア 被告が差別禁止条例制定義務を負わないことについて
 (ア) 本件条約2条1項(d)が定める差別禁止義務については,少なくとも損害賠償や謝罪広告等の命令を伴い得る民事上の制裁が確保されることが必要であり,かつ,それらが確保される場合には,同義務は満たされると解する考え方があるように,同規定は,必ずしも,締約国に対し,直接的に人種差別を禁止することを定める法制度を設けることを義務づけているものではない。また,同義務の具体的内容は,締約国により異なることが当然予定されているものであり,それが一義的に明らかなものということはできない。わが国においては,国籍を理由とする差別を行った者に対し,民事上,損害賠償の支払が命じられており,すでに差別禁止義務は満たされている。

 (イ) 本件条約2条1項(d)は,締約国は「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは,立法を含む )により」人種差別を禁止し,終了させる旨規定している。この文言から明らかなように,人種差別を禁止し,終了させるためにどのような施策,措置を執るかは,締約国の裁量判断にゆだねられており,客観的に不可能とはいえないすべての施策,措置という意味での可能なあらゆる施策,措置を執るべきことを締約国に求めているものではない。また,私人による人種差別を完全にすべてなくすということは現実的には不可能であるから,私人による人種差別事象の発生それ自体によって,差別終了義務の違反となるものではないというべきである。差別禁止義務及び差別終了義務は,人種差別の撤廃に向けた必要なあらゆる施策,措置(客観的に不可能とはいえないすべての施策,措置ではない。)を執ること,すなわち,教育,啓発等の措置を含む必要なあらゆる施策,措置を執ることによって人種差別の撤廃に努めるべきことを内容とする一般的な義務であると解されるものである。

 (ウ) 本件条約2条1項(d)は 「立法を含む 」としているが,この立法措置は,「状況により必要とされるとき」に執るものとされている。したがって,被告が,差別禁止のための立法をする義務を負う立場にあるとしても,同義務を負うには① 当該立法措置により人種差別を禁止することができること及び② 当該立法措置以外の方法によっては人種差別を禁止する効果がないという状況が存することが必要である。

 ①の点に関して,原告は,差別禁止条例は,賃貸人又は宅建業者が入居拒否を行った場合に強制力のある中止命令や罰則を伴うものであることは必要でないが,中止命令や罰則を伴うものであることが望ましいと主張する。しかし,中止命令については,それを定めない条例及び単なる中止を命ずることができるという規定を定めた条例の場合には,入居拒否を禁止する効果は期待できず,賃貸人に対して入居を拒否された者を入居させるよう命じることができる中止命令を定める条例である場合には,当該中止命令により賃貸人と入居を拒否された者との間で強制的に賃貸借契約を締結させることとなるところ,このような契約締結の強制は民法601条に違反するものであり,当該中止命令を定めた条例は,憲法94条,地方自治法14条1項の規定に照らし,法律に反する条例として効力を有しないというべきである。また,罰則については,仮に入居差別を禁止する旨及びそれに違反した者に罰則を科する規定を定めた条例を制定したとしても,実際に罰則を適用することができる事例は限られるものと考えられ,また,差別の陰湿化,巧妙化を招く虞がある。以上によれば,差別禁止条例の制定によっても,人種差別を禁止する効果は期待できない。

 ②の点に関して,被告は,差別禁止条例を制定することよりも,人種差別に関する啓発,情報の提供及び差別事象が発生した場合の相談を通じて関係機関との協力,連携を図るなどの施策(手段)によって人種差別の撤廃を図る方が効果的であると判断して,下記a~hの取組を実施しており,それぞれについて人種差別禁止の効果が得られている。

 a 被告は,本件条約に加入するより前の昭和57年,市民生活局内に人権啓発課を設置し,人権施策の推進に取り組んできた。

 b 被告は,平成3年6月,在日外国人問題に関する研究会を設置した。

 c 被告は,平成4年6月,在日外国人問題に関する調査研究会議を設置した。

 d 被告は,平成6年11月,在日外国人問題に関する調査研究会議の報告を受け,外国籍住民の生活にかかわる諸問題及び施策のあり方等について幅広い観点から検討を行うことを目的として,大阪市外国籍住民施策有識者会議を設置した。

 e 被告は,平成10年3月,大阪市外国籍住民施策有識者会議がまとめた提言の趣旨を踏まえて,大阪市外国籍住民施策基本指針を策定し 「外国籍住民の人権の尊重」, 「他文化共生社会の実現」, 「地域社会への参加」を目標として掲げ,各部局の連携,協力の下に同基本指針に係る施策を推進してきた。そして,被告は,平成16年3月,新たな社会情勢の変化等に的確に対応するため,同基本指針を改定した。

 f 被告は,平成11年4月,大阪市人権行政基本方針を策定した。同方針は,だれもが個人として等しく尊重され,共生していく差別のない社会を実現し,自らの人生を自分で切り拓き,自己の能力を発揮でき,いきがいのある人生を創造できる社会を実現していくことを基本理念とし 「人間の尊厳の尊重 」,「平等の保障」及び「自己決定権の尊重」の達成を基本目標としたものである。

 g 被告は,平成12年,人権尊重の社会づくりの推進についての被告及び市民の責務を明らかにするとともに,被告が施策を推進するために必要な事項を定めることにより,すべての人の人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的として,大阪市人権尊重の社会づくり条例(平成12年大阪市条例第25号。丙5)を制定した。

 h 被告は,宅建業者への指導権限を有する大阪府等の関係機関と連携を図り,相談事業において相談の内容に応じて適切な機関を迅速に紹介すること,賃貸人並びに宅建業者に対する啓発及び外国人への情報提供を行うことなどが差別を禁止する条例を制定することより実効性があることから,平成14年9月から,各区役所において人権相談を常時開設している。また,被告は,市民から差別事象の申出があった際には,必要に応じて人権相談ネットワークを活用するなど適切な機関を迅速に紹介することで対応したり,啓発ポスター,チラシの作成,配布,冊子への啓発記事の掲載,各区の広報誌への啓発記事の掲載依頼を行っているほか,大阪府が行う宅建業者を対象とする人権推進指導員養成講座の受講要件としての人権研修を行っている。

 (エ) 以上のとおり,被告については,上記①及び②のいずれの要件も充足していない。原告は,これらの要件が充足していることについて何ら主張せずに,単に賃貸住宅の入居に関して生まれによる差別事象が現在でも存在することのみを理由として,差別禁止条例の制定が必要不可欠であると主張しているにすぎない。

 イ 人種差別禁止のために差別禁止条例を制定する以外に適当な方法がない状態にはないこと
(ア) 原告は,差別禁止条例を制定することにより,賃貸人や宅建業者に対して生まれによる入居差別をしてはならないとの法的義務を課すことができると主張する。

 しかし,原告が上記(1)イ(ア)a(b)において指摘する大阪地裁判決から明らかなとおり,賃貸人及び宅建業者を含むすべての者は,民法上の信義則に基づき,生まれによる入居差別をしてはならないとの法的義務を負い,同義務に違反すれば,それによって生じた損害を賠償する義務を負うのであるから,差別禁止条例によって賃貸人や宅建業者に対して生まれによる入居差別をしてはならないとの義務を課したとしても,上記信義則上の法的義務を確認することとなるにすぎない。

 (イ) また,原告は,被告が,差別禁止条例上の義務を根拠に賃貸人及び宅建業者に対して差別を是正するための行政指導をすることができると主張する。

 しかし,行政指導は,事実行為であり,相手方に対する直接の強制力を有するものではないので,侵害留保の原則からすると,行政指導を行うについて法律の根拠は必要とされない。したがって,被告は,差別禁止条例を制定しなくとも,賃貸人及び宅建業者に対し,差別を是正するための行政指導をすることができる。

 (ウ) 原告は,平成12年に川崎市において川崎市住宅基本条例が制定されたこと,同市においては,同条例の制定を皮切りに入居差別を禁止するための具体的な施策が施されていることをそれぞれ指摘する。しかし,原告が指摘する上記施策は,条例を制定することなく実施することができるものである。

 また,原告は,川崎市において,同条例の制定後,入居者の限定を行っている家主の割合が減少し,入居者の限定の対象として外国人を挙げる割合も減少している旨の報告があると主張する。しかし,同報告は,全国の賃貸人等を対象として実施された調査に関するものであり,川崎市に限定した調査に関するものではない上,平成14年6月に実施した調査結果と平成18年4月に実施したものとを比較したものであって,同条例の制定前後の変化を示すものでもない。

 なお,上記報告は,全国的に外国人に対する入居差別事象が減少していることを示すものであり,差別禁止条例を制定していない市町村において行われている啓発活動,相談事業等の施策,措置に実効性があることを裏づけるものである。

 ウ 以上によれば,被告において差別禁止条例を制定しなければならない必要性を根拠づける事由,状況はなく,被告は同条例を制定する義務を負っているとはいえないから,被告が本件入居拒否までに同条例を制定しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法ということはできない。

2 原告の損害の有無(争点②)について
(1) 原告の主張
 本件入居拒否は,原告の国籍又は民族性を理由とするものであり,生まれによる差別に当たる。

 原告は,本件入居拒否により,人としての尊厳をおとしめられ,人格を否定されて,計り知れない衝撃を受け,これによって精神的苦痛を被った。被告が差別禁止条例を制定していれば,本件入居拒否は起こり得なかったものであり,原告に当該精神的苦痛も生じなかった。これに対する慰謝料の額は,500万円を下らない。

 また,本件訴訟を遂行するのに必要な弁護士費用の額は50万円を下らない。

 原告は,被告に対し,以上合計550万円から本件入居拒否に関して本件家主が原告に対して支払った100万円を控除した450万円について損害賠償を求める。

(2) 被告の主張
 争う。

 「国籍又は民族性を理由とする差別による賃貸マンションへの入居拒否 4」へ続く