東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

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不動産業者から明渡しを強要される (東京・台東区)

2005年07月31日 | 建物明渡(借家)・立退料

  契約は借地借家法に
        違反明渡に応じる必要は無い

 台東区浅草橋の原口さんは万策尽き、どうしたらいいのか悩んでいた。マンションを管理している不動産業者から再三に亘って執拗な明渡請求を受けていた。

 今年の3月に契約更新をした。その際、不動産業者に期間6箇月で期間満了後は更新しない旨の賃貸契約を一方的に押付けられた。期間満了後は速やかに退去し、立退料等の金員を請求しない旨の契約内容であった。

 そして6箇月後、契約を盾に業者は強硬に立退きを迫っている。何度か業者と話合おうと思い連絡をしてみたが、契約書の内容を履行しろの一点張りである。 部屋に押掛けて来ては明渡確約書に署名・捺印を強要するのみで、交渉は一切受付けない。

 困り果てて「区民相談センター」に相談すると借地借家人組合を紹介された。 組合は原口さんの契約書を検討した。問題点が浮かび上がった。それが6箇月の契約期間だ。借地借家法29条は、借家人の居住の安定を図るために1年未満の短期の借家契約を禁止している。1年以下の約束で借家契約を結んでも、その期間についての約束は無効とされる。

 契約期間は最短でも1年以上でなければならないと規定する。従って、業者の明渡要求は違法なもので、明渡に応じる必要がないと説明した。

 原口さんは「立退かなくてよいという明確な法律的根拠があることを知りやっと安心することが出来た」と述べ、組合へ加入して頑張ることを誓った。

 借地借家法
 (建物賃貸借の期間)
 第29条 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

 (強行規定)
 第30条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

 

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地代を値下げ(固定資産税台帳の閲覧で地代を計算してみた) (東京・台東区) 

2005年07月30日 | 地代の算出方法

  固定資産課税台帳の公開で
   地代減額請求の調停の申立

 台東区東上野3丁目の下谷神社の裏手に居住する木村さんは、約29坪を借地している。悩みは地代が高いことだ。前回の2002年の調停では1ヵ月4万8800円(坪1688円)の地代が4万1000円(坪1414円)に減額された。

 都税事務所で2003年4月1日から借地借家人に固定資産税課税台帳の閲覧及び評価証明書の交付が受けられるようになった。そこで都税事務所に行き固定資産税の評価証明書を交付してもらった。

 東京23区の場合、借地の固定資産税(A)は証明書の「課税標準の特例額」に1.4%を掛ければ、年間の税額が計算出来る。同様に都市計画税(B)は同じく特例額(東京23区の場合、1/2の減税措置が採られている)に0.3%を掛ければ求められる。

 計算すると1坪当りそれぞれ222円(A)と48円(B)となる。調査統計から地代は(A)+(B)の2~3倍なので540~810円。29坪の借地の1ヵ月の地代は1万5660~2万3490円が妥当な金額となる。減額後の坪1414円の地代は(A)+(B)の5.2倍ということでまだかなり高額である。

  そこで再度、簡易裁判所に地代の減額請求を申立てた。今回も地主は調停に一度も出席しなかった。総て弁護士任せという姿勢は前回と同様であった。立て続けの調停策に地主は困惑したのか、弁護士費用に閉口したのか、今後3年間減額請求を中止するという条件を呑むのであれば、地代の減額に応じる姿勢を見せた。

 今回の調停は1ヵ月の地代を3万3500円(坪1155円)に減額するという結果であった。(A)+(B)の約4.3倍でまだまだ高い。固定資産税は毎年下がっているので3年後に再度地代減額請求の調停を計画している。

 

 (参考) 最高裁判所事務総局から1991(平成3)年12月付で「民事裁判資料第198号」として「民事調停の適正かつ効率的な運用に関する執務資料」が出されている。それは「各庁の民事調停事件処理要領(案)」(裁判官・書記官用)と「民事調停事件処理要領案」(裁判官・書記官用)の2つである。

 その1つに「民事調停事件処理要領案 (裁判官・書記官用)(東京地方裁判所 管内簡易裁判所」がある。

 そこには「最終合意賃料の公租公課との倍率(地代について)」として「最終合意賃料が公租公課の2~3倍に収まっているときは、加減要素として考慮しない。」(23頁)と記載されている。

 言い換えれば、地代は固定資産税と都市計画税との合算の2~3倍の範囲内であれば適正地代と言える。

 

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唐突な明渡し (東京・台東区)

2005年07月29日 | 建物明渡(借家)・立退料

  家主の地代不払いが原因で
            借家の立退きを要求される

 台東区橋場の武田さんは、15年間借りている店舗併用住宅の明渡要求を通告する唐突な配達証明付き内容証明郵便を受け取った。

 判明したことは、
①賃借している建物が借地上に建てられていること
②家主が借地人であったこと
③明渡要求の通告人が地主であること
④家主が一年も地代を滞納し、地主に債務不履行を理由に借地契約を解除されたこと
⑤借家している建物を取壊すので通知の6ヶ月後に退去しろということであった。

 この時点で武田さんから組合に、地主の明渡要求に応じなければならないのか、何か対応策はあるのかという相談があった。組合は武田さんに判例上は地代の不払い等の債務不履行に基づく解約の場合、借家人は地主に対して賃借権を主張できないので、最終的には明渡さなければならないであろうと説明した。

 確かに、判例では借家人が借地権の消滅を防止するために借地人に代わって直接地主に地代を支払うことが出来るというのがある。希望的には、地主が家主の滞納地代と今後の地代を借家人が代払いすることを認めるということであれば、明渡問題は総て氷解してしまうのだが、建物を取壊す目論見があるので地主との交渉は困難が付纏う。

  借地契約が解除される場合でも、借家契約は直ちに終了する訳ではない。
 地主と借家人との間で建物・敷地の明渡義務が確定され、地主が建物収去土地明渡の強制執行をして建物の使用収益が現実に出来なくなる等、借家人が現実に建物を使用出来なくなるまで借家契約は終了しないので、それまでは明渡請求に応じる必要はない。

 但し、借家人は建物取壊しまでの間の家賃を支払う義務がある。また地主から地代相当額の損害金の請求を受ける場合もある。

 

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【Q&A】 借地上の建物を建替えたいが建築資金の借入は借地でも可能か 

2005年07月28日 | 増改築・改修・修繕(借地)

(問) 借地の場合でも、金融機関から建築資金の融資は受けられるのでしょうか。手持ち資金は殆どありません。また、契約書には、増改築禁止の特約があり、地主は建替えに反対しています。


(答) 地主が増改築禁止特約を盾に建替えを認めない場合でも、借地人が裁判所から地主の承諾に代わる許可の決定を得れば適法に建替えが行える。

 しかし、建築資金の調達に、銀行・信用金庫等の民間金融機関による住宅ローンの利用を考えている場合は、先程の、裁判所の代諾許可の決定だけでは、建替えは殆ど不可能である。

 民間金融機関は、融資の条件として例外なく建物に抵当権を設定する。銀行は借地人を通じて、借地人が建築する建物を金融機関の抵当権(担保)設定することについて地主の承諾書―ー署名・捺印・印鑑証明書を要求する。

 更に、借地人の地代の不払いが発生した場合に、債務不履行という理由よる地主の借地契約の解除を防止するために、地主に対して地代の延滞が発生したら直ちに銀行に通知することを義務付ける確約書面への署名押印を要求する。これは地代延滞が発生した場合、金融機関が借地人に代わって地代の代払いをして、担保である借地権を守るためである。地主に対して、「代払いの権利」を義務付け、借地契約の解除を制限する確約書面というものである。

 借地人の建替えに反対している地主が、そう簡単に承諾書や確約書に署名押印する訳がない。仮に承諾するとしても借地人の弱みに付け込むことは当然で高額な「判子代」という不当な対価を要求する。

 では、自己資金のない借地人は建替えが本当に出来ないのか。

 金融公庫等の公的融資を受ければ建築は可能だ。公的融資の場合は借地上の建物に対する抵当権の設定を免除してくれるので先程から問題になっている地主の承諾書はいらない。裁判所の代諾許可の決定があれば、それだけで融資が受けられる。

 宅金融公庫の融資だけでは資金不足の場合は、厚生年金・国民年金加入者なら、年金融資から「併せ貸し」が利用出来る。また、建物の一部を店舗や賃貸住宅にすれば、その部分は、事業資金として、国民生活金融公庫から融資を受けることが出来、賃貸部分の収入を融資の返済に充てるという方法もある。

 結論、契約書に増改築禁止の特約があり、地主が建築に反対の場合でも、借地人が建築資金不足の場合でも、住宅金融公庫当の公的融資で住宅ローンを組めば建替えは可能である。

 住宅金融公庫は2007年4月1日で廃止されることが決定された。従って金融公庫が行っていた個人向け住宅融資は2007年4月1日で原則的に廃止された。

 

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【Q&A】 賃貸物件の不動産仲介手数料は

2005年07月27日 | 仲介手数料・不動産業者とのトラブル

不動産業者の仲介手数料は
  家賃の半月分プラス消費税(5%)が原則だ

(問) マンション・アパート等の仲介手数料は町の不動産屋では家賃の1か月分(+消費税=1.05倍)というのが殆どである。しかし、最近テレビCM等で大手不動産会社の仲介手数料は家賃の0.5か月分(+消費税=0.525倍)と宣伝している。仲介手数料に関して法改正でもあったのだろうか。


(答) 不動産業者が貸借の媒介(仲介)・代理に関して受取ることの出来る報酬額(仲介手数料)は、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条1項の規定に基づき、昭和45年10月23日の建設省告示第1552号で定められている。     

貸借の媒介に関する報酬の額
 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者双方から受取ることのできる報酬額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の1月分に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の2分の1に相当する金額以内とする。」     

 このように不動産業者が受取れる仲介手数料は、賃料の1か月分が最高限度であり、宅建業法46条2項では、これ以上の金額を報酬として受取ることを禁じている。
 殊に、居住用建物に関しては、貸主・借主双方から受取れる仲介手数料は家賃の0.5か月分以内とすることを原則としている。     

 そのことを説明しないで当然の如く仲介手数料として家賃の1か月分を要求し、受領するのが不動産業界の習慣と化している。悪質な業者は貸主と借主の両者からそれぞれ家賃の1か月分相当の仲介手数料を受領する。貸主に対しては広告費という名目で仲介手数料を受領する。     

 これなどは明白に宅建業法46条2項に違反する。同法82条で30万円以下の罰金に処せられる行為である。又同法65条2項で1年以内の期間で業務の全部又は一部の停止の行政処分を受けることに繋がる重大な違法行為である。     

 賃貸住宅の仲介業界で1位のエイブルと2位のミニミニが家賃の1か月以上の仲介手数料を受領していたとして、この46条2項違反として業界で初めて東京都から2000年3月29日付で「業務の全部停止10日間」の行政処分を受けた。     

 尚、消費税の総額表示の実施に伴い、国土交通省告示第100号で前記「1月分」が「1月分の1.05倍」に、「1月分の2分の1」が「1月分の0・525倍」に改正され、2004年4月1日より施行されている。下記参照      

   貸借の媒介に関する報酬の額
 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の1月分の1.05倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.525倍に相当する金額以内とする。(最終改正 平成16年2月18日国土交通省告示第100号)

参考法令宅地建物取引業法
(報酬)
第46条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。

2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

3 国土交通大臣は、第1項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。

4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第1項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

 

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【Q&A】 賃料を内金として受領すると言われた場合どうするか 

2005年07月26日 | 借地・借家に共通の問題

  内金として受け取ると言われたが、
          賃料を持ち帰って供託してもよいか

 (問) 賃料の増額を請求され、貸主のところに従来の賃料を持参したが「賃料の一部(内金)として受け取る」と言われた。賃料を持ち帰って供託してもよいか。


 (答) 賃料の増額請求をされた場合、借主が相当賃料として従前の額を提供し、貸主がこれを賃料の内金(一部)として受領するという事例は多い。

  このように貸主が内金として受領する旨を申出たことが民法494条の受領拒否に当るかということが問題になる。

 民法494条の受領拒否に当るかということが争われた事例では、「賃貸人が賃料を弁済の提供を受けた際内金(賃料の一部)として受領する旨述べることは、特段の事情のない以上、賃料の全額として提供されるのであればその受領を拒絶する趣旨を含むものと解すべきである」(東京高裁1986年1月29日判決 /同趣旨の判例は名古屋高裁1983年9月28日判決及び東京地裁1993年5月20日判決がある)として貸主が受領拒絶をしたと認定し、借主の弁済供託を有効とした。

 従って貸主が「内金(賃料の一部)として受け取る」という趣旨の申出は、賃料の受領拒絶の意思表示と認定され、借主が賃料を持ち帰って供託したことは適法な供託であるとした。

 しかし最高裁(1975年4月8日判決)は、内金として受領する旨の申出は民法494条の受領拒否に当たらないとする。また従前額の供託金については、一部弁済として受領する旨留保して供託金の還付を受けることも認められている。

 東京借地借家人組合連合会(東借連)弁護団会議では、この東京高裁1986年1月29日判決=貸主の内金受領が受領拒絶にあたるかが検討された。弁護団会議の最終結論は、貸主の内金受領が受領拒絶の意思表示であると一般化するのは問題があり、これを実行することには「債務不履行」で契約解除される危険が伴うので、従来通りの見解でいくというものであった。

 <東京借地借家人組合連合会の見解
「内金として受け取る。」といわれたとき

5、賃料の増額請求をされ、貸主のところに、従来の賃料を持参したところ、「内金として受け取る。」といわれた。持ち帰って供託してもよいか。

 「貸主が、内金であれ、賃料として受け取ると言った場合は、受領を拒否したものではないので支払わなければならない。それを、賃料全額としては受領を拒否したのだからと考えて供託するのは、供託理由がなくて供託することになるので、その供託は無効となり、賃料未払いとして、契約解除の危険がある。

 したがって、借主としては、従来賃料を支払い、念の為貸主に対して、その賃料額が全額であることを意思表示すればよいのである。(この意思表示は、内容証明郵便で出すのがのぞましい。)

 なお、受領証に、「内金として」と記載されても、それだけでは、賃料を増額されたことにはならない。」(3頁)

(「地代・家賃の供託」(研究借地借家第5号) 東京借地借家人組合連合会 より)

 

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【Q&A】 法定更新制度(借家) 契約書を作成しなくても自動的に前の契約と同じ内容で更新される制度

2005年07月25日 | 契約・更新・特約

 契約の更新に際し、契約条件の改悪を
      要求されたら法定更新を選択する

 (問) 3年契約で店舗を借りています。5月末日で契約期間が満了になります。2月に不動産会社が「6月の契約から3年の定期借家契約で」と言ってきました。どうしたらいいでしょうか。


 (答) 営業用店舗は2000年3月1日以降の契約更新の場合、合意があれば定期借家契約への切り替えは出来る。定期借家契約を拒否するには賃借人としては法定更新に持込み今まで通りの普通借家契約を続けるのが営業権を守る安全策であろう。

 以下の①②は借地借家法の法定更新規定の要旨である。
①期間の定めのある借家契約で期間満了の1年前から6ヶ月前(法定通知期間)までに賃貸人が賃借人に対して、更新拒絶の通知または条件変更の通知をしていなかった場合は、従前の契約と同一の条件で自動的に借家契約が更新され、借家関係は継続される。尚、更新拒絶の通知をするには、正当事由が必要である(借地借家法28条)。

 ②またその通知をした場合でも、期間満了後、賃借人が継続して建物を利用していることに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べないと①と同様に従前の契約と同一の条件で自動的に更新される(借地借家法法26条)。

  ①と②は当事者の意思の如何に拘らず、法律上当然に借家契約が更新されるので、これを「法定更新」という。

 相談者の場合は、不動産会社が「法定通知期間」内に適法な更新拒絶の通知を何ら行なっていないので、借家契約は既に従前の契約と同一条件で「普通借家契約」として法定更新されることが確定される。

 このように期間満了の6ヶ月前までに通知をしていないと、その時点で既に契約更新がなされることが法的に決定される。この更新を賃貸人が覆すことは出来ない。

 相談者は不動産会社から繰り返し定期借家契約への切替を執拗に要求されるであろうが、「法定更新は法律上自動的に更新するもので賃借人の回答を必要としない」(東京高裁1955年1月21日判決のであるから、期間満了の5月末日に法定更新が確定するまで、ただ沈黙していればいい。

 法定更新後の借家契約は期間の定めのないものとして扱われるので原則的に更新問題は起こりえず、定期借家への切替や更新料で揉めることもなくなる。

 

 参考条文
 借地借家法
 第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

  建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

  第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 

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【Q&A】 借地契約が終了した場合、借地人は地主に借地上建物を強制的に売りつけることが出来る

2005年07月23日 | 借地の諸問題

 更新拒絶で借地契約が終了した場合
      借地人に何か対抗する方法があるか

(問) 地主が土地の明渡しを求めてきた。借地人は地主に対して借地上の建物を買取らせることが出来るというが、どんな場合に出来るのか。


(答) 借地契約が終了した場合、本来ならば借地人は建物を取壊し、更地にして返却しなければならない。しかし、使用に耐えられる建物を壊すことは社会経済的利益の保護及び借地人が建物のために投下した資本の回収が出来ない。

 そこで借地人に「建物買取請求権」(借地借家法13条1項(*))を設けて借地に投下した資本の回収を可能にした。また間接的に地主に経済的負担をかけることによって更新拒絶を遣難いものにする効果をもっている。

(*)「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる」(借地借家法13条1項


 それでは、どんな場合に「建物買取請求権」を行使出来るのか。
 権利行使の要件
 ①借地期間が満了したこと
 ②契約の更新がないこと
 ③借地上に建物があることである。
 即ち、建物が存在し、借地契約の更新が出来なかった場合に建物買取請求権を活用することができる

 借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主が買取を承諾しなくても、借地人の一方的な買取請求の意思が地主に通知されれば、それだけで強制的・自動的に建物の売買契約が成立する。このような単独の一方的な意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利を<形成権>と呼ぶ。賃料の増減請求権も同様である。
 通知は口頭、手紙、FAX等でも有効であるが、後日通知の有無で争いになることも考えられるので、内容証明郵便で通知するのが好ましい。

 その結果、地主は買取を拒否できず、建物を時価で買取ることになる。換言すれば、借地人の建物を合法的に地主に押し売りすることができる。地主は買取りを拒否する自由がないので、借地人は建物を時価(買取を求めた時点での価格)で強制的に売りつけることが出来る。

  その結果、どんなに古い建物であっても、建物に借家人が居住していても、建物に抵当権が付いていても地主は建物を買取ることになり、地主の所有物となる。 これによって、借地人は建物を解体し、更地にして返還する必要がなくなる。建物の解体費用も勿論、借地人が負担する必要がなくなる。


 残る問題は、建物請求権を行使した時点での建物の買取価格である。

 建物の時価は、
①「建物が現存するままの状態における価格であって敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきものである」(最高裁1960年12月20日判決)。

②「建物自体の価格のほか、建物およびその敷地、その所在位置、周辺土地の関する諸般の事情を総合考察することにより、建物が現存する状態における買取価格を定めなければならない」(最高裁1972年5月23日判決)。

即 ち、最高裁判決では、<建物の時価は建物自体の価格等に場所的環境(場所的利益)が加算されたもので、借地権価格は加算すべきでない>としている。借地権 価格自体を建物の時価に算入することは否定している。しかし、実際は場所的環境(場所的利益)として土地価格や借地権価格を考慮に入れて建物の買取価格を 算定している。 

 地主と借地人の間で買取価格について協議が纏まらなかった場合は、調停や裁判で適正な買取価格を決定してもらうことも出来る。
 なお、場所的環境(場所的利益)は、鑑定実務では概ね更地価格の10~30%と考えられている。


 地主と借地人が合意の上で解約した場合はどうであろうか。
 判例は「土地の賃貸借を合意解除した借地権者は買取請求権を有しない」(最高裁1954年6月11日判決)としている。借地人が買取請求権を放棄したものと解されている。

 また地代不払い等の債務不履行や契約違反で契約解除された場合も判例は一貫して建物買取請求権を否定している(最高裁1960年2月9日判決)。

解体費用 全国坪単価  参考1参考2参考3

 

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【Q&A】 地代を誰に払えばいいのか判らない場合 

2005年07月22日 | 登記

本当の地主が誰なのか判然としないときは
        地代を誰に払ったらよいのか

 (問) 地主が経営するスーパーが経営不振で閉店した。その後、土地の売買契約書のコピーを持って、地主から土地を買ったという人間が現れた。来月から自分の方に地代を支払うようにと言って来た。
 土地の登記簿謄本で調べると、土地の所有者は元の地主のままである。新所有者名義の所有権移転登記はされていない。
 新所有者を名乗る者は既に土地は買取ったのだから、「土地の所有権はこちらにある。地代は当然こちらに払ってもらいます」と言っている。このまま、所有権移転登記が済んでいない者に地代の支払いをしてもいいのか。問題の起きない地代の支払いをどうしたらいいのか、教えてください。


 (答) 賃貸不動産が譲渡された場合、その譲受人は、どのような要件を具備したら賃借人に賃料を請求できるのか。民法 177 条(不動産に関する物件の変動は、不動産登記法に定められた登記がなされて初めて第三者に対抗することができる)は不動産の物件変動を登記によって公示するという考え方を採用し、登記は対抗要件であるとしている。

   判例は賃貸不動産の譲受人は所有権移転登記をしない限り賃借人に対して所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を主張することが出来ない。賃借人は民法177条の第三者に該当し、譲受人の移転登記がない場合には賃料請求をすることが出来ない最高裁1974年3月 19日判決)。

   これは所有権移転の事実を確実にして、賃借人の二重払いの危険を回避するために登記を保護要件としている。これによって賃借人の保護をしている。即ち、「登記簿上の所有名義人は反証のない限り当該不動産を所有するものと推定される」(最高裁1959年1月8日判決)。登記されていない物件の変動は無視しうるという形で取引の安全が保障され、取引の迅速化が促進される。

   借地人の取りうる態度として第1の方法は登記簿を調べて登記上の権利者に支払うということになる。即ち、譲受人が移転登記を完了していれば新所有者に支払う。移転登記がなされていなければ、元地主に支払えば、債権の準占有者(民法 478 条)へ有効な弁済をしたことになる。

 

   尚、前記1974年最高裁の判例では、新所有者が賃借人の明渡を要求する場合にも、登記を具備する必要があるとしている。

 例えば、地上げ屋が地主との底地売買を証明する書面を見せて地主から土地を買ったと主張しても、登記簿等謄本を調べたら所有権の移転登記が完了していない場合(或いは所有権移転登記が完了していない期間)は、借地人に明渡請求を強要したり、地代の受取り・地代の大幅値上げ請求などは当然できない。


  第2の方法は、民法494条供託原因による「債権者の確知不能」として供託する。今回のように債権譲渡の通知を受けたが、借地人が賃料の支払の相手が誰なのか断定出来ない場合、「債権者が確知できない」との供託事由により供託することが出来る。

 

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【Q&A】 不動産管理会社に更新手数料を請求されたが 

2005年07月20日 | 仲介手数料・不動産業者とのトラブル

  不動産管理会社から不当な更新手数料を
         請求されても支払う必要はない

(問) 家主に支払う更新料以外に管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をみると確かに特約として更新の際には更新料と更新手数料が必要であるという記載があった。更新手数料の支払を拒否することが出来るのか。


(答) 元来は契約の更新は家主と借主の間で行うものであった。しかし、家主が自ら更新手続きを行うことを煩わしく思い、家主の代理人として管理会社に業務を委託することがある。

 その場合、家主は管理会社に契約更新の手数料を支払うことになる。管理会社は更新手数料を家主から受け取れば業務終了ということになる。

 だが、中には家主から手数料以外に借主からも何の合理的理由も無く更新手数料を請求してくる業者もある。家主から受け取るべき手数料を総て借主に転嫁して徴収する悪質な業者もある。

  一般的には更新に関与する業者は、家主から委託を受けて更新事務を行うものであるからその労務報酬は家主が負うべきものである。

 借主から支払うべき理由が無い更新手数料を徴収することは不当利得に当る。、もし既に支払っているのであれば、支払った手数料の返還請求をすべきである。裁判所に提訴して過去に支払った手数料を全額返還させた例もある。

 ところが常識的に支払う必要が無い費用を「特約」として入れた場合、判例では、
 ①特約の必要性に加えて暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
 ②通常の義務を超え義務を負うことについて認識していること
 ③借主が特約による義務負担の意思表示をしていること
 以上3つの要件を充たしている場合でなければ特約として認められないのが裁判例である。

  先ず借主が管理会社に更新手続きを依頼していないので、更新手数料を支払う必要性や支払う合理的な理由があるとは考えられない。 従って契約書に更新手数料の記載があるとしても「特約」として認められないということになる。

 2001年4月以降に結ばれた契約及び、更新した契約書の中にそのような特約があれば消費者契約法10条の「消費者の利益を一方的に害する条項」に該当し、そのような特約は無効ということになるので、借地借家人組合に相談してみるべきである。

 

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【Q&A】 法定更新した場合の約定更新料は

2005年07月19日 | 更新料(借家)

     更新料支払特約は法定更新の場合には
        適用が無く更新料支払義務は無い


 (問) 京都地裁(2004年5月8日判決)で更新料支払特約があっても契約を法定更新した場合には、借主に更新料支払義務は無いという借家での判決があった。他に約定更新料の支払義務無しという借家に関する高裁又は最高裁の判例はあるのか。


 (答) 東京では更新料特約がある場合、契約を法定更新した時に更新料の支払義務の有無が裁判で幾度となく争われている。 
 具体的な判例で検討してみる。借主Aは、賃貸マンションを期間2年、更新の際は新家賃の2ヵ月分の更新料を支払うという更新特約が有る契約を結んだ。2年後の更新時に家賃の増額で紛糾し、合意更新ができなかった。Aは更新料を拒否し、相当と思われる家賃を供託し、法定更新の途を選択した。貸主は増額家賃・更新料の不払を理由に契約解除を通告し、未払家賃・更新料の支払と建物明渡を求めて提訴した。

 地裁は、約定更新料は法定更新には適用されず、支払義務は無いとしてAの主張を全面的に認め、貸主の請求を棄却した。

 控訴を受けて東京高裁は「法定更新の場合、賃借人は何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がない」(東京高裁1981(昭和56)年7月15日判決)とした〈注1〉。

 この判決を不服として貸主が上告したが、最高裁は上告を棄却した。
 最高裁は「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982(昭和57)年4月15日判決)と明快な判断を下している〈注2〉。

   このように更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。これは当然の結論である。借地借家法は経済的負担の無い法定更新を定めている。更新料特約は法の趣旨に反して借主に不利益な経済的負担を課している。特約が法定更新の場合にも適用されるとすれば、それは実質的に経済負担を強制する合意更新を義務付け、無償の法定更新を排除するに等しい。換言すれば法定更新制度の否定である。

     

 〈注1〉「借地・借家 更新料について」(東京借地借家人組合連合会500円)の資料4に判決が掲載されている。

 〈注2〉「借地・借家 更新料について」の資料3に判決全文が掲載されている。

 

 

             更新料支払特約は法定更新には適用されない。
                参照 (1) (2) (3) (4) (5)  

 

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【Q&A】 原状回復費の負担割合は使用年数を考慮する 

2005年07月17日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 借主に過失がある場合は減価償却分を
               差引いた残りが費用負担分である

 (問) 不注意で壁のクロスに傷をつけ、30㎝位破れてしまった。入居してほぼ4年になるが、退去する場合部屋全体のクロスを張替え、その費用を全額負担しなければならないのか。


 (答) この質問に関しては、東大阪簡易裁判所の判決が参考になる。

 裁判は子供が描いた落書の壁クロスの張替え費用負担をめぐって争われた。壁クロスには落書(1㎡未満)が11箇所に亘って描かれていた。

判決は「国土交通省(旧建設省)発行のガイドラインによればクロスは過失による部分の補修で足り、経過年数により賃借人と賃貸人の負担割合を算出するべきとある。反訴原告(賃借人)の居住期間は4年9ヶ月(57ヶ月)であり、入居時において新品であったとしても、6年(72ヶ月)で賃借人負担(残存価値)割合は10%となるような直線で考えると、賃借人即ち反訴原告の負担割合は28・75%になる。本件について試算すると下記の試算式となる。1050円(単価)×11㎡(負担範囲)×28・75%(負担割合)=3320円すなわち、反訴原告(賃借人)の負担すべき原状回復費用は金3320円という事になる」(東大阪簡裁2003年1月14日判決)と判断した。

 国交省のガイドラインは6年(72ヶ月)で減価償却を90%としている。以後、何年経過しようとも残存価値は10%で一定としている。従って、1年で15%ずつ償却されることになる。
 判決は国交省のガイドラインに随ってクロスの減価償却は1年で15%ずつ償却されるのであるから、1ヶ月当り1・25%としている。
 従って判決文にある57ヶ月の減価償却は71・25%(1・25%×57ヶ月)ということになり、その残存価値は28・75%になる。

 今回の質問に対しては4年(48ヶ月)で退去し、入居時のクロスが新品であったという前提で回答する。

 入居時クロスの価値を100%とすると48ヶ月の減価償却は60%になり、残存価値は40%になる。
 国交省のガイドラインに随えば、クロスの補修に必要な最小単位は1㎡である。クロスの単価を例えば1000円で計算すると借主の負担割合は40%で、400円がクロスの原状回復費用ということになる。

 ガイドラインでは、仮に色や模様合せが必要な場合は最大で毀損させた箇所を含む一面分までは借主の費用負担とされている。その場合も当然、減価償却分は差引かれる。例えば壁一面(9㎡)であれば9000円の40%である3600円の原状回復費用を負担すればよい。

 

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【Q&A】 原状回復費用の負担は借主の義務なのか 

2005年07月16日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 原状回復費用は借主が支払うものか
    それとも全く支払う必要はないのか

 (問) 4年間生活した部屋を綺麗に掃除して明け渡した。しかし、家主は敷金を返還しないどころか契約書の原状回復条項を楯にして、追加27万円を原状回復費用として請求してきた。この費用を総て借家人の負担で支払わなければならないのか。


 (答) 原状回復の規定は民法598条/616条を根拠にしている。借主は、賃借物に設置物を取り付けた場合はそれを取り除き、運び込んだ物は撤去する。民法では、原状回復義務は、賃借人の収去義務のことであって、「借りた当時のまっさらの状態へ戻す」という意味での賃借人に「原状回復義務」が課されている訳ではない。

 判例は「一般的に、建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって賃借人は建物賃借当時の状態に回復すべき義務はない。賃貸人は、賃借人が建物を通常の状態で使用した場合に時間の経過にともなって生じる自然の損耗、汚れによる損失は賃料として回収しているのであって賃借人に負担させるべきではなく、原状回復条項は賃借人が故意、過失によって又は通常でない使用をしたために建物の棄損等を発生させた場合の損害の回復について規定したものと解するのが相当である。」(東京簡判平成7年8月8日)。

 相談者は、賃貸借契約に基づいて建物を通常の使い方によって使用するとともに、善良な管理者の注意義務をもって賃借物件を保持、管理した。4年の使用中には多少の汚れ、損耗は認められるかもしれないが、いずれも時間の経過による自然汚損・損耗である。通常使用に従った使用に必然的に伴う自然汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない。

 因って、「賃貸目的の返還にあたって自然の損耗や汚損についての改修の費用を負担して賃貸当初の原状に復する義務を負っているとは認められない。したがって、仮に賃貸人が賃貸当初の原状回復のためにこれらの費用を支出したとしても、それを賃借人に請求し、あるいはそれを敷金から差し引くことは許されない。」(京都地判平成7年10月5日)とあるように、退去時の原状回復費用を相談者が負担すべき理由ない。それを、賃借人である相談者に請求することは許されない。又、勝手に敷金から差し引くことも許されない。

 通常損耗を借主に負担させる原状回復特約に関して最高裁(平成17年12月16日判決)は、次のように判示している。即ち、「建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の 賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要である

 ①補修費用(通常損耗)の借主負担分が契約書に具体的に明記されているか、または②口頭の説明で特約の補修費用負担の範囲を具体的・明確に認識し、その上で合意したことが明確であることが特約の成立条件である。これらの条件を満たしていない場合は、特約は無効とされ、借主の通常損耗の支払い義務がないことが確定した。

 

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【Q&A】 地主が承諾しない場合は建替えが出来ないのか 

2005年07月15日 | 増改築・改修・修繕(借地)

  借地契約書に建物の増改築を
  制限する条項があるが建替えはできるのか

  (問) 木造2階建ての建物を建替えたいのですが、契約書に増改築することを制限する特約条項があります。地主の承諾が無いと建替えは出来ないのでしょうか。


  (答) 借地条件に合致していれば、既存の建物を増築したり、取壊して改築することは借地人の自由である。この自由を制限する特約の典型的なものが『増改築禁止特約』だ。しかし常に借地人がこれらの契約条件に拘束されていては借地の利用が制約されてしまう。

 そこで「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは裁判所が借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる」(借地借家法17条2項)として、地主が増改築禁止特約を盾に建替えを認めない場合でも、借地人が裁判所から地主の承諾に代わる許可の裁判を得れば適法に建物の建替えが行える。

 また木造などの非堅固建物から鉄骨造等の堅固建物へ改築する『借地条件の変更』の場合も、地主の反対があっても、裁判所に地主の承諾に代わる許可の手続を採れば、改築は行える(借地借家法17条1項)。

 裁判所は許可する場合、地代の増額、承諾料等の付随措置を併用して当事者間の利益の調整を図っている(借地借家法17条3項)。

 なお、借地借家法17条は1992(平成4)年8月1日以前の借地契約にも適用される(借地借家法附則第4条)。

 改築の承諾料は、更地価格の3%を基準に土地利用効率の増大を考慮して5%程度までの範囲で決定されている。

 東京地方裁判所の裁判例(50件)を調べると更地価格の2~5%が全体の84%を占めている。中でも更地価格の3~4%が28件でその中心をなしている。東京の承諾料は更地価格の3~4%が一応の目安といえる。なお、借地法7条では再築による借地期間の延長を認めている。しかし、東京地裁では存続期間の延長の随意処分はしていない。

 増築の場合は、更地価格の1%~3%までの間で決定されている。この場合、建物全面積に対する増築面積比の割合に更地価格の3%を乗じて計算することが多い。

 『借地条件の変更』の場合の承諾料は、借地の更地価格の10%を基準としている。この場合、更新料の支払いの有無は考慮されていない。また現行地代が高額であっても地代の減額はしないのが現在の実務である。

 非堅固建物から堅固建物に変更する場合には存続期間を延長する。その場合、借地の期間は認容裁判確定の日から30年間とする裁判例が多い。東京地裁では、借地借家法(平成4年8月1日)施行後に設定された借地権については存続期間の延長をしないという。

 東京地裁の裁判例では52件中、更地価格の10%が44件で約85%を占め、東京地裁の『借地条件の変更』は更地価格の10%の承諾料で殆ど定着していると言える。

 結論としては、建替え承諾料として更地価格の3~4% (『借地条件の変更』の場合は10%)の金額を支払えば、仮に地主の反対があっても建替えは出来る。

 

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【Q&A】 借地権は建物の朽廃で消滅するか

2005年07月14日 | 契約・更新・特約

    建物の朽廃で借地権は消滅するので
      契約の更新を拒絶するといわれたが

 (問) 過去に2回借地の更新をしている。18年前に合意更新した借地契約の更新が迫っている。地主は建物が老朽化して朽廃状態なので契約の更新はしないから明渡しの準備をするよう言って来た。


 (答)  「借地借家法」 (1992年8月1日施行)には「朽廃」に関する規定は置かれなかった。そのため建物が朽廃しても借地権は消滅しない(同法3条)。朽廃は「滅失」の場合として処理され、借地権の消滅原因ではなくなった。

 しかし、「借地借家法」施行以前に設定された借地権に関しては、、「借地上の建物の朽廃に関する経過措置」(借地借家法附則5条)によって「借地法」の「朽廃」規定が適用され、法定の存続期間の満了前に建物が自然に老朽化して建物としての効用を喪失した状態になった時点で借地権は消滅する(借地法2条1項但書)。

 朽廃というのは、一般的にいう建物に生じた自然的腐蝕状態によって建物の社会的・経済的効用を失った場合をいう。火災・地震・台風・水害等外部からの力で倒壊した場合の「滅失」とは異なる概念である。改築するために建物を取壊す場合も滅失になる。建物が「滅失」しても勿論借地権は消滅しない。

 更新後に「朽廃」の規定が問題になるのは、借地権の存続期間が当事者の合意よるものではなく法律の定めによって確定したものの場合である。
 例えば、
 (1)継続使用による法定更新の場合(借地法6条1項)、
 (2)更新請求による更新の場合(同法4条1項)、
 (3)合意更新で期間を定めなかった場合(同法5条1項)、
 (4)期間を取決めたが法定期間(堅固建物は30年、その他の建物は20年)よりも短い期間を定めた場合
 以上(1)~(4)の法定存続期間中に建物が「朽廃」すると借地権は消滅する。

 しかし、「存続期間の約定のある借地権は、本条(借地法2条)1項により存続期間を法定された借地権とは違って、その存続中に借地上の建物が朽廃しても消滅しないのであり、約定の残存期間があれば、その間は存続する」(最高裁1962年7月19日判決、最高裁判所民事判例集10巻8号1566頁)。

 即ち、借地契約で鉄骨建物等の堅固建物の存続期間を30年以上、木造建物等の非堅固建物の場合は20年以上と定めた場合は、その期間満了前に建物が朽廃しても残存期間があれば、借地権は消滅しないということである。 

 借地法2条2項では、「契約で存続期間を定めた借地権は、2条1項の朽廃規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する」と規定されている。

  法定存続期間以上の借地の存続期間を契約で定めている場合、相談者の借地契約は存続期間を20年と定めているので、借地上建物の朽廃があっても契約期間内であれば、借地権の消滅はありえない。従って、建物が朽廃しても再築は可能であり、地主は朽廃を理由に更新を拒絶することは出来ない。

 

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