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土地の無断転貸を理由に明渡請求
契約解除権は10年で滅時効になる
(問) 15年前に借地の一部を地主の承諾を得て隣の食品会社に転貸した。会社はそこに軽量鉄骨造りの倉庫を建てて現在も使用している。
ところが今回地主が死亡して相続人から地代の大幅値上げを請求された。その請求を断ると、無断転貸を理由に契約解除・土地明渡請求が内容証明郵便で送られて来た。どうしたらいいのか。
相続人に承諾の証拠を示せない。こんなことになるのであれば、文書での承諾を得ておけばよかったと悔やまれる。
(答) 相談者の場合は先代の地主から承諾を得て食品会社に転貸していた。だから過去に地主との間に転貸でのトラブルがなかった訳である。相続人の無断転貸の主張は言掛かりに過ぎない。しかし、賃借人は転貸承諾を文書化していなかったので、言掛かりに対する立証が難しい。
民法では、「賃借人は賃貸人の承諾が無ければ賃借権を他人に譲渡したり、賃借物を転貸することが出来ない。賃借人がこれに反し転貸した時は、賃貸人は契約を解除することが出来ると定めている(民法612条)。
長期間契約を解除しないで放置していた場合、解除権は消滅時効にかかるのかという問題である。
消滅時効は、一定期間権利が行使されなかったことによってその権利が消滅するものである。
最高裁は「賃貸土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は、賃借人の無断転貸という契約義務違反事由の発生を原因として、賃借人を相手方とする賃貸人の一方的な意 思表示により賃貸借契約関係を終止させることができる形成権であるから、その消滅時効については、債権に準ずるものとして、民法167条1項が適用され、その権利を行使することができる時から10年を経過したときは時効によって消滅する」(1987(昭和62)年10月8日判決)としている。
消滅時効の起算点については、転貸借契約が結ばれて転借人が土地について使用収益を開始した時から消滅時効は進行するとしている(1987(昭和62)年10月8日判決)。
「時効による権利消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるもの」(最高裁1986(昭和61)年3月17日判決)として援用を停止条件としている。
これは時効によって利益を受ける者が時効の成立したことを主張しなければならない。この主張を援用と いう。時効期間が経過することによって権利の得喪は生じるが、未だ確定的ではなく、援用によって初めて権利が確定する。換言すると、10年が経過しても借 地人は消滅時効を、転借人は取得時効を援用しない限り、地主は無断転貸を理由とした明渡請求が出来ることを意味している。
難癖であろうと降り懸かる災難は取除かなければならない。承諾の有無を相続人と争うよりも、消滅時効で片を付けた方が解決が速い。
結論、談者の場合は既に10年の時効期間を満たしている。消滅時効の起算点は、食品会社との賃貸借契約で15年経過していることは証明できる。従って地主に対して配達証明付き内容証明郵便で「解除権は既に時効である」と《時効の援用》をすれば、消滅時効は完成する。
(*) 民法612条(賃借権の譲渡および転貸の制限)「①賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物転貸することができない。② 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除することができる。」
(*)民法167条1項(債権等の消滅時効)「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」
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調停で支払い約束をした更新料は
法定更新した後も支払い義務があるのか
(問) 借家をずっと契約書を取交わして3年契約で借り続けていたが、3年前に、更新料を支払って、借地借家法26条に基づく法定更新を選択した。条文上では、期限の定めのない契約になっているのであるから、契約の更新は法文上ありえない。
それにも拘らず、家主は弁護士を使って更新料の支払を要 求する。6年前の簡易裁判所の調停で、家賃の1か月分の更新料を支払うという調停条項があり、それを根拠に支払えというのだ。
(答) 法定更新は、「適法な更新拒絶の通知、条件変更の通知、および正当事由の立証は賃貸人がしなければならず、この立証がないかぎり賃貸借は法律上当然に更新される」(東京高裁1956年1月30日判決)ということである。
家主は法定通知期間(契約満了の1年前から6か月前)に適法な更新拒絶・条件変更の通知を行っていない。相談者の借家契約は、借地借家法26条1項の規定に基づいて適法に、従前の契約と同一の条件で3年前に法定更新されている。
法定更新後の借家契約の契約期間は26条の但し書により「定めがないものとする」ということになる。従前の3年契約のように契約に期間を区切って更新を繰返す契約ではないので、法定更新すれば以後契約の更新という事態は生じない。更新は法的に発生しないから更新料の支払い問題は発生する余地はない。
関係する判例を挙げると、
①「賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習は、存在しない」(最高裁第2小法廷 1976(昭和51)年10月1日判決 昭和51年(オ)657号)
②「賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求に基づき当然に賃借人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない」(最高裁第3小法廷 1978(昭和53)年1月24日判決 昭和52年(オ)第1010号)
③「法定更新の場合、賃借人は何らかの金銭的負担なくして更新の効果を享受することが出来るとするのが借家法 の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払い約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がないと解するのが相当である」(東京高裁1981年7月1日判決)
④「建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではないと認めるべきであるとするものと解される」(最高裁第1小法廷 1982年4月15日判決 昭和56年(オ)第1118号)
⑤更新前の調停・和解の効力は、「更新された賃貸借は旧契約とは別個のものだから更新前の調停・和解の執行力は新賃貸借には及ばない。」(広島地裁1966年6月6日判決、大阪地裁1971年6月26日判決)。
相談者が簡裁で合意した調停条項の「更新料として新賃料の1か月分を支払う」という調停の効力は、法定更新された契約には及ばないことは勿論のことである。
以上のことから、家主の更新料支払い請求は理由がない。相談者は家主の不当な更新料支払請求を拒否することが出来る。
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