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【Q&A】 地代・家賃の供託とは何か

2012年11月22日 | 弁済供託

(問) 地代や家賃を供託するとはどういうことですか。方法について教えて下さい。


(答) 明渡しや更新料等を要求されて借主(借地人・借家人)が応じないと、貸主(地主・家主)は賃料(地代・家賃)の受領を拒否する場合があります。賃料を供託することは借主としては契約の継続の意思表示になる大切な行為になります。

 貸主の受領拒否により賃料支払義務が果たせなくなるので、東京都の23区は東京法務局供託課(区内以外は所管の法務局主張所)に賃料を供託することで不払いは免れます(民法494条)。また、貸主が受領できない場合とか、貸主を知ることが出来ない場合も供託はできます。注意点は、借主が貸主は賃料を受け取らないだろうと勝手に供託しても無効となることです。

 供託は、賃料を貸主宅へ持参払いの場合、貸主の所在地を所管する法務局か、または、その主張所で行い、貸主が借主宅を訪ね、集金している場合は借主の所在地を所管する法務局か、その出帳所に供託します。

 供託する金額は、明渡しや更新料請求等の場合は支払っている現行額で供託します。賃料増額を請求された場合に、いくらか値上げするときはその増額分を加算することもできます。増額請求そのものに不承知ならば現行額で供託します(借地借家法11条・32条)。

 和解により、供託金を払戻す場合、貸主(被供託者)が手続きをする場合は還付と言い、借主(供託者)は取戻しと言います。いずれのの場合もその手続きには当事者の実印と印鑑証明(註1)に住民票が必要です。日本銀行発行の小切手が交付されます。供託書は借主が取戻す場合に添付(註2)が必要であり、賃料支払の証にもなりますので大切に保管して下さい。賃料の持参払いの場合、土地建物売買や相続により貸主が変更されると、新たな貸主の所在地を管轄する法務局か出張所が供託先となります。

 

東京借地借家人新聞より


 (註)は東京・台東借地借家人組合

 (註1) 請求者が個人であって、請求者本人が直接窓口で請求する場合は、提示した運転免許証(または、顔写真入りで官公署が発行した身分証明書)等で本人確認ができる場合には印鑑証明の添付は不要。ただし、実印である必要はないが、印鑑は必要である。住民票も不用。ただし、供託書記載欄の(被)供託者の住所・氏名が変更しているときには、住民票や戸籍抄本等が必要。

 (註2) 供託金払渡請求書に供託書の右上の供託番号を記載するだけで、供託書の添付は不要である。

 

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【Q&A】 供託者は5年の短期消滅時効した供託金を取戻することが出来るのか

2012年11月09日 | 弁済供託

(問) 建物の明渡請求をされ、供託所(法務局)に賃料15万円を20年間弁済供託をしています。ところで、供託金は民法169条の「定期給付債権の短期消滅時効」で5年間経過すれば消滅するということになっています。なので、貸主(被供託者)が20年間供託金の還付請求をしていなければ、時効消滅した供託金は供託者からの取戻請求で供託所から払渡しを受けられるのですか。


 (答) 「債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす」(民法496条1項)。

 被供託者が供託金の還付請求をしていなければ、供託者は取戻請求権を行使して払渡しを受けることが出来る。しかし、その場合は「供託をしなかったものとみなす」ということになり、賃料不払い状態になる。被供託者(賃貸人)と和解が成立し、取戻請求の了解が得られている場合でなければ、債務不履行を理由にした契約解除明渡請求の危険があるので、供託事由が消滅するまでは賃借人が取戻請求権を行使して供託金の払渡しを受けないのが通常である。

 この相談者への回答の参考になる判例がある。現在、長期間に亘って弁済供託している供託者には朗報で画期的な最高裁平成13年11月27日判決があるので、検討してみる。

 賃貸人が死亡し、その相続人等複数の人間から賃料請求を受けた賃借人は、過失なくして債権者を確知することができないとして賃料の供託をし、後にその取戻しを請求したところ、法務局から供託金取戻請求権は供託の時から10年の時効期間の経過により消滅したとして却下された。その処分を不服として法務局を相手に却下処分の取消を求めた事案である。この裁判では、「債権者不確知を理由にした弁済供託」における供託金取戻請求の消滅時効の起算点が問題になった。

事件の概要
 ① 賃借人は賃貸人A所有の建物を家賃1か月14万円で借りていた。家賃は前払いであった。
 ② Aは昭和52年10月に死亡した。
 ③ Aの相続人であると主張するBら3名と、Aから建物を贈与されたと主張するCから家賃の支払請求を受けた賃借人は、昭和52年12月以降、債権者不確知を理由に法務局へ弁済供託をした。
 ④ Bら3名とCとの紛争は昭和62年12月に裁判上の和解が成立した。その後、賃借人はBから平成7年1月、建物明渡請求を提起された。
 ⑤ 賃借人は平成7年8月に法務局に対して供託金の取戻請求をした。だが、法務局は昭和52年12月分から昭和60年8月分までの供託金については供託後10年が経過しおり、取戻請求権の消滅時効は完成しているとして、賃借人の請求を却下した。
 ⑥賃借人は却下処分を不服とし、法務局を相手に、その処分の取消を求めて提訴した。

裁判での賃借人の主張
 賃借人は「供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点は、供託の基礎となった債務について紛争解決などによってその不存在が確定するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時である」とした最高裁昭和45年7月15日判決を引用して、次のように主張した。

 Bが賃借人に建物明渡を提起した時(平成7年1月)が消滅時効の起算点になる。すなわち、賃借人が初めて賃料債務の消滅時効を援用することが可能となった時点が供託による免責の効果を受ける必要がなくなった時ということになり、供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点となる。

裁判での法務局の主張】 
 賃借人が引用した最高裁判決は、債権について争いのある事案を前提としたものである。債権者不確知を理由とした弁済供託の場合は、供託者が取戻請求権を行使したとしても、自己の主張を撤回したものと解されるおそれがないのであるから、本件には妥当しない。また、供託物の取戻請求権は供託者の自発的意思に基づき行使できるのであるから、その消滅時効は供託の時から進行する。

最高裁の判決の要旨
 弁済供託は、債務者の便宜を図り、これを保護するため、弁済の目的物を供託所に寄託することによりその債務を免れることができるようにする制度である。供託者が供託物取戻請求権を行使した場合には、供託をしなかったものとみなされるのであるから、供託の基礎となった債務につき免責の効果を受ける必要がある間は、供託者に供託物取戻請求権の行使を期待することはできない。「供託物取戻請求権の消滅時効が供託の時から進行すると解することは、上記供託制度の趣旨に反する結果となる。そうすると、弁済供託における供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点は、過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め、供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時と解するのが相当である」(最高裁昭和40年(行ツ)第100号 昭和45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁)。

 本件においては、各供託金取戻請求権の消滅時効の起算点は、その基礎となった賃料債務の各弁済期の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過した時と解すべきであるから、これと同旨の見解に基づき、その時から10年が経過する前にされた供託に係る供託金取戻請求を却下した処分が違法である」(平成13年11月27日 最高裁判所第三小法廷判決)。

 

 この判決は「債権者不確知」に対するものであるが、最高裁の論旨は「受領拒絶」、「受領不能」等、弁済供託全般に当て嵌まるものであり、供託物の取戻請求権の消滅時効の統一判断を示している。供託実務への影響が大であり、重要な判例である。

 従来の実務では供託時から10年で時効消滅と解されていたものが、本来の賃料債務の5年間での時効消滅後さらに10年間は取戻請求権を行使できるということになる。即ち、供託者は、弁済供託時から、民法169条の定期給付債権の短期消滅時効の5年が経過すれば、供託金の時効消滅が完成する。消滅時効を援用して債務の消滅を主張することは必要である。これを行っていれば、取戻請求権を行使することに何の不都合はない。供託金を取戻しても「供託をしなかったものとみなす」(民法496条)ということにならない。債務不履行(賃料不払い)にならないということである。

 上記の裁判例で具体的に検討すれば、賃借人は平成7(1995)年8月に法務局へ取戻請求権を行使した。5年の短期消滅時効は平成2(1990)年8月に完成しているから、その時から10年遡る昭和55(1980)年8月までの供託金(昭和55年8月分~平成2年8月分の10年間分)は払渡しを受けられる。

 相談者の貸主が20年間供託金の還付請求をしていなければ、民法169条の「定期給付債権の短期消滅時効」によって借主は5年が経過すれば、供託金を法務局から問題なく取り戻すことが出来る。5年間の短期消滅時効後、10年以内に取戻請求権を行使して時効消滅した分の供託金を供託所(法務局)の窓口で払渡しを受けられるということである。

 結論、例えば、相談者が平成24(2012)年11月に法務局に取戻請求を行使すれば、民法169条の「5年の短期消滅時効」が平成19(2007)年11月で完成する。そこから10年間は取戻請求が行使することが出来るので、平成9(1997)年11月~平成19(2007)年11月の10年間分の供託金(15万円×12か月×10年=1800万円)が取戻せる。しかし、平成9(1997)年11月以前の供託金は時効消滅しているので取戻請求は出来ない。

 5年を経過した供託金は、次々と民法169条の「5年の短期消滅時効」によって毎月順繰りに時効消滅してゆくことになる。平成24年12月になれば、5年前の平成19年12月分の供託分が取戻請求ができる。このように毎月、5年の短期消滅時効で時効消滅した供託金が取戻せることになる。

 従って、平成24年12月分の供託をする場合、時効消滅した供託金(平成19年12月分)の取戻請求をして戻された供託金(日本銀行発行の小切手で払渡される)を平成24年12月分に充当するという奇策も可能である。貸主が還付請求をしてこなければ、このようなことを毎月繰り返すことが出来る。取戻す手続きの手間と時間を考えると余り薦められる方法ではないが、こんな遣り方もあるということで紹介した。

 

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【Q&A】 供託をした場合の消滅時効の起算点は

2012年10月24日 | 弁済供託

(問) 10年以上も同額の地代で供託を続けているが大丈夫でしょうか


(答) 地主や家主から、明渡しや賃料の値上げを請求され、それに応じないことで賃料の受領を拒否されたようなとき、そのままでは賃料不払いになり、契約の解除の理由になります。

 そのため、供託制度があり、供託所に賃料を預けることで、賃料を支払ったと同等の効果が得られます(弁済供託)・(註1)。供託金は、双方とも払い渡しを請求できます。相手が受け取る(還付)までは、こちらから請求(取戻)できますが、その場合、「供託はなかったもの」になりますから、通常はありません(註2)。

 さて、債権の消滅時効は民法で10年(註3)となっており、時効の場合双方とも払い渡し請求権を失い、供託金は国家に没収されます。それを心配されていると思いますが、適正に供託しておれば、その時点で債務は消滅しているので心配はありません。

 また、時効は紛争が解決して(免責の効果を受ける必要が消滅した時)から起算されます(註4)ので、通常何年経っても時効はありません。

 10年以上同額の賃料ということですが、賃料が受領拒否の理由ならば、地価・固定資産税は大幅に下落し、地代・家賃の相場は下がっています。こちらから減額請求をして解決をすることもできます。

 なお、賃料の受取人が明確でない場合にも供託できますが、この場合、債権者は5年で賃料の請求権を失うので、そこから10年経てば時効が成立します(註5)。

 

全国借地借家人新聞より


以下の註と文章は、東京・台東借地借家人組合。

(註1) 民法494条 債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

(註2) 民法496条 債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。

(註3) 民法167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。

(註4) 最高裁昭和45年7月15日大法廷判決・(民集24巻7号771頁)は、供託の時から消滅時効が進行するという供託官の主張を退け、「取戻し請求権の消滅時効は、供託の基礎となった債務について紛争の解決等によってその不存在が確定する等、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行し、10年を持って完成する」と判示した。

 即ち、最高裁は、貸主と借主との間で和解が成立した時点から起算すべきであるとという供託者の主張を認めた。この判決は供託者からの取戻請求権に関するものであるが、実務上は被供託者からの還付請求権も同様に解釈されている。

(註5) 最高裁平成13年11月27日判決。この裁判では、「債権者不確知を理由にした弁済供託」における供託金取戻請求の消滅時効の起算点が問題になった。

 判決の趣旨は、「弁済供託における供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点は、供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時であり、その基礎となった賃料債務の弁済期の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過した時と解すべきである。その時から、さらに10年経過すると、供託金取戻請求権は時効消滅する。」

 

東京・台東借地借家人組合

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【借地借家 豆知識】 供託ができる原因とは

2012年03月19日 | 弁済供託

 供託とは、借地借家人に支払い義務のある地代・家賃を貸主が受領しない場合に、法務局に地代・家賃(賃料)を供託して債務を免れる(賃料支払義務履行)制度をいいます。

 どういう場合に供託すると有効になるのかというと、①借主が貸主に賃料を提供しても受領を拒否された場合、②貸主が賃料を受領することができない場合(貸主が行方不明になった等)、③借主に責任がなく貸主が誰か知ることができない場合(貸主側に相続が発生したが相続人が誰か確定していない等)の原因によって供託することができます。

 したがって問題が発生し、未解決のまま多分受け取らないだろうとか、貸主も督促に来ないから自分から支払に行くのが面倒だからといって勝手に供託しても、供託の要件を満たしたことになりませんので、このような供託は無効となり、債務が履行されていないことになり、賃料不払いとなってしまいます。

 また、よく問題となるのは賃料が高すぎるからといって、貸主が値下げ額に合意しないのに借主が勝手に値下げした金額を供託しても、供託は無効になります。賃料値下げについては、貸主に賃料の値下げを請求し、貸主が値下げに応じない場合には賃料減額の調停を申立、値下げが調停で確定されて始めて賃料を減額することができます。賃料値下げが確定するまでは従前の賃料を支払い続けるしかありません。

 供託書は現在OCR用紙になり、供託カードで一度登録すると2度目の供託からは5箇所の記載だけでOKとなります。法務局に持参できない方は郵送による供託も可能で、法務局指定の銀行に振込みます。

 供託は貸主が東京23区にいる場合は千代田区九段の東京法務局が管轄となります。賃料の支払場所が多摩地域ですと、府中八王子西多摩の3箇所の法務局に供託します。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地主が大阪の地上げ屋に土地を売却 (東京・大田区) 

2012年03月16日 | 弁済供託

 大田区南馬込地域に約30坪を借地しているAさんの地主は契約期間満了を2年後に控えた一昨年3月に、底地を大阪市の建設業者に売却した。

 新たな賃貸人の建設業者は想定通り代理人を介して、借地権を売却を求めてきたが、Aさんは住み慣れた居住地であり、他に移転する意思はないと拒否する。今度は例の如く土地の買取を求められたが、Aさんはいずれの請求にも毅然とした態度で丁寧に断った。

 さらに、Aさんは地代の支払いについて、前賃貸人同様に銀行口座を開設し振込みによる支払い方法を求めたが回答はなく、改めて建設業者に書面にて回答がない場合は、やむを得ず地代を供託すると通告するが、回答はなかった。

 東京法務局での供託を考えて、地代の支払い方法に関して誠意ある回答ない状況なので、前賃貸人は地方に居住のために、賃借人の居住地の銀行口座に振り込みをしていたことを説明して相談。法務局の見解は、民法の規定により債権者の現在の住所において供託せよとのことだった(註)。

 大阪法務局への供託手続きは用紙の送付に供託金の送金と手間と経費がかかるが、Aさんは頑張って手続きをしている。

 

東京借地借家人新聞より


 ここからは、東京・台東借地借家人組合。 

 弁済供託することができる法律要件(民法494条)は、
①債権者が弁済の受領を拒絶、
②債権者が受領不能(不在、住所不明、行方不明等)、
③過失なくして誰が債権者か確知することができないとき(相続があって誰が相続したか不明の場合、または、相続人は判明しているが、相続の分割割合が判らない場合等)、
以上の3つの場合である。これらに該当しない場合は無効の供託になる。

 弁済供託が出来る場合の典型は、賃借人が口頭で賃料を現実に提供したのに、賃貸人がその受領を実際に拒絶した場合である。賃料の提供は原則として、現実の提供をなすべきであるが、債権者が予め受領を拒むときは、債務者は現実の提供を必要とせず、口頭の提供(弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告すること)をするだけでもよい(民法493条)。

 底地を買った建設業者の所有権移転登記が完了していなければ、最高裁の判例では登記簿上の土地所有者(従前の地主)に賃料を提供するのが正解とされている。即ち、「所有権移転登記をしない限り賃借人に対して所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を主張することが出来ない。譲受人の移転登記がない場合には賃料請求をすることが出来ない最高裁1974(昭和49)年3月 19日判決)とされている。また、「登記簿上の所有名義人は反証のない限り当該不動産を所有するものと推定される」(最高裁1959(昭和34)年1月8日判決)。

 供託要件の②であれば勿論それを理由に弁済供託している筈である。以後、この記事に書かれていることが、当然、登記簿謄本で、建設業者の所有権移転登記が完了し、建設業者が土地所有者であることを確認していることを前提として論ずる。

 上記のAさんの場合、口座振込の依頼に対する回答がなかった場合は弁済供託すると建設業者に通告した。それに対する建設業者からの回答がなかったことを理由に賃料を弁済供託するというのは無謀である。

 口座振込依頼請求に回答しないことが賃料の受領拒否という理由にはならない。また、賃料支払の現実の提供をしていないから、Aさんの弁済供託は供託要件を満たしていないので、無効の弁済供託になる(大審院明治45年7月3日判決)。このままでは、賃料不払(債務不履行)で契約解除される恐れがあり、危険である。

 Aさんは先ず、現実に賃料の提供をしなければならない。大阪の建設業者(債権者)に賃料を現金書留で送る。そのまま受取れば、次回も同様にして提供する。建設業者(債権者)が提供賃料を送り返してきたら、それは受領拒否ということになるので、そのときは大阪法務局へ弁済供託の手続きを採ればいい。

 【地代・家賃を弁済供託する場合の供託書の記載例】はこちらを参照

 なお、賃料の提供は、現金のほか、銀行振出小切手(個人振り出しの小切手は不可)、郵便為替でも可(最高裁昭和37年9月21日判決) 。


(註)民法495条1項 「供託は債務の履行地の供託所にしなければならない」

 

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【借地借家 豆知識】 地代・家賃の供託について

2012年02月06日 | 弁済供託

 借地・借家の場合、賃料を払いたいけれど、相手が受け取ってくれないというこということは珍しくありません。

 例えば、家主が賃料を6万円から5000円値上げしたとします。借主が「高すぎる」といって認めなければ問題となります。借主としては2000円加算した6万2000円の賃料で支払に行くと、家主は「話が決まってからでいい」といって受け取ってくれません。

 このような場合には、借主は賃料を供託すると賃料不払になりません。供託しておけば、家主との話合いはいくら長引いても心配はありません。供託とというのは、借地・借家に限らず、相手がお金など弁済の目的物を受け取ってくれない場合に、法務局にその目的物を預ける手続きです。

 実際供託する額は、家主に従来の額に2000円を加算した6万2000円を供託しておきましょう。供託の原因欄には、「賃料の増額請求があり、あらかじめ賃料の受領を拒否され目下係争中」と記載します。

 しかし、家主が6万2000円を内金で受け取るといった場合は判例では「特段事情のない以上、賃料の全額の弁済として提供されるのであればその受領を拒絶する趣旨を含むものと解することができる」として、受領拒否と認めています(註)。供託することも可能ですが、6万2000そ円で支払っておくこともできます。その際は、念のため家主に対して、支払った賃料は賃料全額であることを意思表示しておきましょう。この意思表示は内容証明郵便で出しておきましょう。

 なお受領書に「内金として」と記載されても、それだけでは賃料増額を認めたことにはなりません。

 

東京借地借家人新聞より


 ここからの文章は東京・台東借地借家人組合。

 借地借家法第32条2項は、「建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない」と規定している。

 借家人が相当と思う賃料を支払えば、債務不履行として取り扱わないと規定している。賃料が著しく低額で税金以下ということを本人が知っていたという事例は判例上、債務不履行になる(最高裁 平成8年7月12日判決)が、そうでなければ通常は現行賃料を支払っていれば充分である。値上げを言われたからといって、迎合して何も自分の方から賃料を増額して支払う必要はない。

 例えば、月額数1000万円という高額の家賃の場合であれば、万が一、裁判で増額が認められた場合は年10%の支払利息は可なり大変であるが、そうでなければ、裁判が確定してから支払っても遅くないし、それで充分である。また、賃料の増額請求権は5年で消滅時効になるので、5年間の差額を考慮すれば足りるのであるから、先走って現行賃料に自ら加算して支払う必要などない。

(註) 「家主が、家賃の弁済の提供を受けた際、内金としての受領する旨述べたことは、特段の事情のない以上、家賃の全額の弁済として提供されるのであればその受理を拒絶する趣旨を含むものと解すべきである。したがって、家主は、借家人が債務の本旨に従った弁済の提供に対し、その受領を拒絶し、その後も受領しない意思を示したものいわなければならない」(東京高裁昭和61(1986)年1月29日判決、判例時報1183号88頁)。

 この東京高裁昭和61(1986)年1月29日判決に対し、東借連常任弁護団の見解は、「賃料の増額請求がされた場合、賃借人が相当賃料として従前額を提供し、賃貸人がこれを賃料の内金として受領しようとする事例が多い。この場合の賃貸人の態度が受領拒絶に当たるかが問題となる。最高裁昭和50年4月8日判決は、受領拒否に当たらないとする。本件判決は、右最高裁判決と相反するものであるが本件では家主の増額請求に相当無理な点があるという特殊なケースであり、われわれとしては、安易に本判決の理屈付けを利用せず、従来どおり支払った上、賃料全額であることを通告する方式を堅持していきたい。」ということで、供託を認める判例があることに寄り縋り、安易に供託することを諌める。

 賃料の一部として受取る・内金として受取る・と賃貸人が言っているにも拘らず、賃料を持ち帰って、供託をすると賃料不払(債務不履行)で契約を解除される恐れがある。賃料の一部としての内金の受取りを民法494条の受領拒否に当たらないという最高裁判決が変更されない限り、供託は危険である。

 殊に、借地の場合、組合の誤った指導から、無効の供託による債務不履行を理由とする契約解除による建物収去・土地明渡請求訴訟で、敗訴した場合の借地人の財産的損害は莫大である。取返しがつかないことになるので、注意しなければならない。 

  
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【Q&A】 賃料を内金として受領すると言われた場合どうするか 

 

 

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大阪の地上げ屋相手に地代を供託 (東京・大田区)

2011年11月28日 | 弁済供託

 大田区南馬込地域は、大正から昭和初期に尾崎士郎・宇野千代や山本周五郎等の文士や芸術家が住み、馬込文士村として、桜並木とともに散策コースになっている。

 この地域に宅地約97・45㎡を賃借しているAさんのところに何の前触れもなく突然新所有者の代理人が現れ、土地の所有権を買うか借地権を売るかとの横暴な請求をしてきた。Aさんはこれを拒否すると、地代の支払いの問いかけには耳も貸さずに退去してしまった。そこで今後の対応の相談に組合事務所を訪ねる。

 土地の登記簿謄本を調べ、大阪の建築業者が取得したことを確認。内容証明郵便で地代の支払いを問い合わせるが回答がなく、供託する旨を通告するも返事がないので、地代を現金書留で送金すると受領した。

 しかし、2度目の送金では受領拒否となり供託することとなった。地元の東京法務局に供託の手続きをと無理を承知で協議するが、持参払いの原則で賃貸人の所在地の大阪法務局宛に行うことが望ましいとの結論となった。

 供託書(OCR用紙)に記載、供託金とともに大阪法務局に送付する。供託済の用紙が返信されてAさんはようやく一安心した。

 今後、裁判になった場合には大阪ではなく、東京の裁判所で行われるように手立てをとることが必要になっている。

 

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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【判例紹介】 家賃の一部(内金)として受領する旨の回答が受領拒絶に当たるとされた事例

2011年10月17日 | 弁済供託

 判例紹介

 家賃増額請求され、従前の賃料を提供したところ、家主が賃料に一部として受領する旨回答したことが受領拒絶に当たるとされた事例 (東京高裁昭和61(1986)年1月29日判決、判例時報1183号88頁)

(事案)
 家主が借家人に対し、昭和57年4月家賃1ヶ月1万2500円に値上げした後、同年7月再度1ヶ月1万5000円に値上げ請求した。

 借家人は、同年9月上旬、同年8月分の家賃として、従前額を持参した。ところが、家主は、借家人に対し、さらに同年10月から1ヶ月2万5000円に値上げ要求する旨通告した上、「持参した家賃は、値上げされた家賃の一部として受け取る」と述べた。

 借家人は、提供した家賃の受取を拒否されたものと考え、従前の家賃額で供託した。

 家主は供託は無効であると主張して、家賃不払を理由として借家契約を解除し、建物の明け渡しを求めた。

 借家人は、家主が持参された家賃をその一部としてなら受領する旨述べたことは、、借家人が家賃の値上げを争い、従前額による家賃を相当と認めて提供したものであり、借家法7条2項の趣旨からすれば、家主は不足分があることを借家人の押し付けるような趣旨で受け取ることは許されないというべであるから、家主の申出は受領拒絶の態度を示したというべきであると反論した。

(判旨)
 「家主が、家賃の弁済の提供を受けた際、内金としての受領する旨述べたことは、特段の事情のない以上、家賃の全額の弁済として提供されるのであればその受理を拒絶する趣旨を含むものと解すべきである。したがって、家主は、借家人が債務の本旨に従った弁済の提供に対し、その受領を拒絶し、その後も受領しない意思を示したものいわなければならない。そうすると、本供託は、家主の受領拒否によりなされた適法な供託であり、これによって右家賃債務が消滅したことになるから、家主がなした家賃の催告および条件付解除の意思表示は、効力を生ずる理由がない」

(短評)
 賃料の増額請求がされた場合、賃借人が相当賃料として従前額を提供し、賃貸人がこれを賃料の内金として受領しようとする事例が多い。この場合の賃貸人の態度が受領拒絶に当たるかが問題となる。最高裁昭和50年4月8日判決は、受領拒否に当たらないとする。また従前額の供託金について、一部弁済として受領する旨留保して供託金の還付を受けることも認められている。本件判決は、右最高裁判決と相反するものであるが本件では家主の増額請求に相当無理な点があるという特殊なケースであり、われわれとしては、安易に本判決の理屈付けを利用せず、従来どおり支払った上、賃料全額であることを通告する方式を堅持していきたい。

 

(1986.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


【Q&A】 賃料を内金として受領すると言われた場合どうするか 

 

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【Q&A】 家賃の値下げと供託

2011年09月23日 | 弁済供託

 (問) 私はテナントビルの13坪の店舗を月額家賃18万円で賃貸し、商売をおこなっています。最近の不況で家賃の負担が重く、月額家賃を13万円に値下げして欲しいと、家主に交渉していますが、納得してもらえずに13万円で供託しようと法務局へ相談しましたが、供託できないと伺いました。ちなみに周辺の家賃相場は、坪当たり月額1万円ですので、家賃の値下げ要求は合理性があると思いますが、いかがなものでしょう。


 (答) 家賃の減額は、家主の合意又は、裁判所の判決や和解で確定しなければできません。家賃の供託手続きは、確定家賃を家主が受取を拒否した場合にしか出来ず、供託額は確定家賃で行います。

 ご相談の方は、月額18万円が合意家賃であり確定家賃です。したがって、18万円の家賃でしか供託することは出来ません。その場合でも供託手続きは、家主が現行家賃の受取を拒否した場合に限られます。

 仮に、法務局が月額13万円で供託を認めた場合であっても、家主から家賃の一部不払いとして訴えられますと、契約解除の理由とされます。

 家賃が、周辺相場より高く、月額13万円が相当額であったとしても、家主との間で合意するか、裁判所で調停し和解するか、家賃減額訴訟を行い、裁判所で確定する以外には、減額できません。

 したがって、家賃を減額して供託することは、賃借権を守るためにも出来ません。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 「値上げ請求で家賃の受取りを拒否された場合」

2011年03月11日 | 弁済供託

【問】 家主に今までの家賃の2倍の値上げを通告され、「とても払いきれない」と言ったところ家賃を受取ってもらえず、4か月も溜まってしまいました。どうしたらよいでしょうか。


【答】 借家人が家賃をもって行っても家主が受取らないことがよくあります。あなたの場合のように、家賃値上げを要求して要求額どおりでなければ受取らないこともありますし、明渡を要求して受け取らなかったり、特別に理由も言わないで受取らないことさえあります。

 家賃を支払うことは借家人の最も基本的な義務ですから、家主の方では受取るのに借家人が支払わなければ、借家人は家賃の支払い義務を果たしたことにならず、借家契約を解除されても仕方がありません。

 反対に、借家人が家賃を払おうとするのに家主がこれを受取らなければ、借家人は家賃の支払い義務を怠ったとはいえず、家賃滞納を理由に借家契約が解除されることはありません。家賃の値上げを請求された場合でも、借家人としてはその値上げの額を争い、値上げの額が裁判で決定されるまでは、自分が相当と考える家賃(今までの額でも構いません)を支払っていればよいのですから(借地借家法第32条2項)、借家人がその家賃を支払おうとするのに家主が受取らなかった場合、借家人が責められることはありません。

 そうすると、家賃を受取らなかった場合には、そのまま放っておいても構わないものでしょうか。確かに、理屈の上では前で述べたように構わないのです。しかし、現実にはそこに種々の問題が生じ、家主に不当な口実を与えることにもなりかねません。そこで、こういう場合には家賃を供託すれば家賃を支払ったと同じように取扱うという制度があります(民法494条)。

 供託の方法は簡単です。これまで家賃を家主に持って行ったり送金していた場合(持参債務)は家主の現住所を管轄する法務局又はその出張所に供託します。また、家主が家賃を取りに来ていた場合(取立債務)は借家人の現住所を管轄する法務局又は出張所に供託します(民法484条)。

 法務局には、供託用紙が備えてありますから、それに必要事項を記載し、供託金と80円切手を添えて窓口へ提出すればよいのです。

 ところで、どんな場合でも供託をしておけば安心だというわけではありません。供託が有効であるためには、借家人が家賃を現実に提供したのに家主がこれを拒絶したという前提事実が必要です。

 よく、どうせ受取ってもらえそうもないからすぐ供託しましたということを聞きますが、このような供託は無効で何の意味もありません。この提供とは、持参債務の場合は家主に家賃を持参することであり、取立債務の場合は支払いの準備をし、その旨を家主に通知することです(民法493条)。そのうえで家主が受取らなかったり、取りに来ないかった場合に、初めて供託することになります。1度この手順を踏んでおけば、次の月からは、家主の態度が変わらない限りいちいち家主に家賃を持参したり、家主に通知したりする必要はありません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


 

借地借家法
借賃増減請求権
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

民法
第494条 
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

 

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【判例紹介】 本来と異なる地主への地代供託が違法な債務不履行とならなかった事例

2010年12月16日 | 弁済供託

 判例紹介

 先例性は乏しいかもしれませんが、所属事務所の高畑拓弁護士と共同受任し、2009年12月、東京高裁(平成21年12月21日判決・平成21(ネ)第4767)で逆転勝訴、2010年9月、最高裁で相手方の上告が不受理とされ、勝訴が確定した建物収去土地明渡請求事件について紹介させていただきます。
 
 【事案の概要】
 この事件は、土地の地主が1992年の段階で現在の地主(原告は法人)に移転していたにもかかわらず、借地人である依頼者らが1959年の借地契約締結当時の地主を名宛人として地代を供託し続けていたため、現在の地主(原告)から地代不払を理由として借地契約を解除され、建物収去土地明渡を請求されたというものです。
 
 1審(東京地裁)は、借地人らが「供託の継続中に本件土地の登記内容を確認するなどして、原告(現在の地主)が本件土地の所有者であると知る機会を十分有した」として供託の有効性を否定し、地主側の請求を認めました。
 
 供託といえども、地代を支払い続けていたことに変わりないことから、借地人らは1審判決を不服として東京高裁に控訴しました。
 
 控訴審から受任した我々は、借地人が供託し続けていたこと、供託が借地人らのやむをえない事情に起因するものであったこと、高齢である借地人らに地主が十分な説明をつくしていなかったことを主張しました。また、借地人らを裁判所に同行し、借地人らの生の声を裁判官に伝えるよう努めました。借地人らは約50年近く本件土地に居を構え、1階部分で食堂を営んでおり(訴訟時は休業状態)、また高齢であったことから、今さら本件土地を明け渡すわけにはいきませんでした。
 
【裁判所の判断】
 控訴審(東京高裁)は、新たに土地の所有権を得て賃貸人となった者が、土地所有権について登記を具備したときには借地人に対し賃借権を有する、すなわち賃貸人たる地位を主張できるとしても、そのことから当然に借地人らに登記を確認する義務は措定できないとしました。そして、借地人らが長年に渡り供託を継続していたこと、他方で地主が長年放置し十分な説明を尽くさなかったこと等から、「借地契約の解除を容認するほどの違法な債務不履行があるとまでいうのは困難」として解除を無効とし1審判決を取り消しました。

 その後、最高裁は地主の上告を不受理として本件は終了しました。

【寸評】
 法形式上、本来の地主と異なる地主を名宛人として供託をしても、それが地代として有効にならないことは当然のことです。したがって、地代不払という事実だけみれば控訴審でも借地契約の解除が認められる可能性がある事件でした。その意味で先例性の乏しい事件といえます。しかし借地人らが供託をせざるをえなかった事情を法律上の主張に引き直し、あきらめずに裁判所に主張した結果、東京高裁は解除を認めるほどの違法性はないとしました。
 
 単純に考えれば難しい事案でも、その事案の背景を丹念に紐解き、粘り強く主張したことが結果に結実したのだと思われます。借地人らは現在も本件土地に居住しつづけています。

 

 (2010.12)

(東借連常任弁護団・枝川充志弁護士)

東京借地借家人新聞より

 


 

(*)今回の裁判事例は、1審で敗訴後東京・台東借地借家人組合へ入会した組合員の事例です。入会後東京高裁へ控訴し、組合の2名の顧問弁護士の努力の結果、2審で逆転勝訴 したものです。(その後地主側は上告し、最高裁の不受理で、借地人の勝訴が確定しました。)

 

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【Q&A】 賃料をの支払をしているのに貸主は領収証をくれない、どうしたらいいのか。

2009年07月30日 | 弁済供託

(問) 毎月賃料の支払をしているのに貸主は領収証をくれない。何か問題が起きるのではないかと心配で、何度も領収証の発行を請求したが、この状態が長期間続いている。どうすればいいのか。


(答) 貸主と借主の関係が円滑の場合は、賃料支払を証明する受取証書を貸主から貰っていなくても何も問題は発生しないであろうが、些細なことが原因でトラブルに発展するケースがある。支払の証拠がないことから、貸主から、得てして賃料不払いという言掛りをつけられる虞がある。

 仮に悪意が無くても、賃料支払に対する受取証書の交付を長期間受けていないと賃料の支払いの継続性が不明確になり、その支払の証明が出来ずに賃料の2重払いのトラブルに巻き込まれる危険がある。

 受取証書は賃料支払の事実を証明するものである。従って、「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。」(民法486条)。
 即ち、借主は賃料を支払った時には、貸主に対して、受領した旨の記載された受取証書を請求する権利がある。

 受取証書というのは、弁済したことの証拠となる文書のことで、その形式はどのようなものでもよい。通常は領収証が用いられる。

 民法486条は、支払の有無についてトラブルが生じた場合に備えて、立証を容易にして、賃料の2重払いの危険を避けるために弁済者に認められた権利である。

  また、民法533条は「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる」と同時履行の抗弁権を規定している。

 では、賃料の支払いと受取証書交付は同時履行の関係に立つのか。
 判例上は、弁済と受取証書の交付は同時履行の関係にあり、借主は賃料の支払いと引換えに受取証書の交付を請求出来ると解されている(大審院昭和16年3月1日判決)。

 即ち、受取証書の交付と同時引換えでなければ債務の履行を拒むことが出来るのであるから、貸主が受取証書を交付しない場合は、借主は賃料支払を拒否することが出来る。

 「受領拒絶の態度を改め、以後賃料を提供されればこれを受領する旨を表示する等の受領拒絶を解消する措置を何らとっていない場合のように、受領拒絶の意思が明確と認められる場合には、口頭の提供さえしなくても、債務不履行の責任を負うこともない」【最高裁昭和32年6月5日判決(民集11巻6号915頁)及び最高裁昭和45年8月20日判決(民集24巻9号1243頁)】。

 従って、貸主が以後賃料を提供されれば、受取証書を交付して受領すると明確に表明している場合は別にして、交付しないという意思を撤回する措置を何らとっていない場合は、貸主が受取証書を交付しないという意思が明確であると認められる(民法494条の「受領拒否」に該当する)ので、以後の賃料を提供しなくても、借主が支払わないことに対して、何ら債務不履行の責任を問われることはない。

 だが、借主の安全を考慮すると不払のままにしないで、法務局へ賃料の弁済供託をする方が無難である。

 

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【判例紹介】 値上げ請求に対する地代供託が著しく低額のため背信行為ありとされた事例 

2009年03月30日 | 弁済供託

 判例紹介

 値上げ請求に対する地代供託が著しく低額である場合、背信行為ありとして、契約解除を認めた事例 (千葉地裁昭和61年10月27日判決、判例時報1238号)

 (事案)
 賃借人は昭和37年10月木造建物所有を目的として借地した。昭和43年4月の地代は坪当り月額90円であったが、昭和45年3月頃、120円に上げるよう請求を受けた。賃借人が断ると地主は、90円の地代受取を拒否したため、90円で供託を始めた。その後もずっと、90円で供託していたところ、地主は、昭和59年12月19日、無断増改築と、地代供託が低額すぎることを理由に、契約解除の通知をしてきた。


 (判決)
 借地法12条2項は、賃料の増額請求がなされても、当事者間に協議が整わないときは、借地人は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、「相当と認める地代」を支払えばよい旨規定している。「相当と認める地代」とは、客観的適正額ではなく、原則として、「借地人が相当と認める地代」出よいと解される。しかし、「借地人が相当と認める地代」でよいといっても、その額がいくらでもよい、というわけではなく、その額が特段の事情もないのに従前の地代額よりも低い額であったり、適正地代額との差があまりに大きいとき等には、債務の本旨に従った履行という評価をすることができず、背信行為ありとして契約解除の効力を認めるべき場合もあり得る。

 本件についてみると、賃借人は昭和45年より15年間に亘って坪90円で供託を続けているが、昭和48年の時点で右供託金額は、地代家賃統制額坪当り349円の4分の1という著しい低額であることが認められる。非常に長い期間に亘って一見して「著しい低額」であると認識しうべき金額を漫然と供託しつづける賃借人の態度は、、常識を欠いたものである。地主においても、昭和46年8月に市川簡易裁判所に対し賃料増額調停を申立たものの、何等の成果も見られないまま取下げ、以後増額請求裁判を提起する等の行為に出ていないのは、落度として非難に値しようが、そのことを考慮に入れても、尚、賃貸借関係に要求される信頼関係が破壊されたものというほかない。


 (短評)
 紛争が長引いていると、供託額が据え置かれることになりやすい。
 著しい低額で供託をすると、本件のような問題が発生する。公租公課を調べながら、供託額の見直しを適宜行う必要がある。

 判決の一般論はやむ得ないとしても、「著しい低額」の判定基準に地代家賃統制令による地代額をもってきている点は、問題である。適正地代が統制地代額以下であることは、珍しいことでも何でもない。

(1987.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 参考法令
 借地法
第12条
 地代又ハ借賃カ土地ニ対スル租税其ノ他ノ公課ノ増減若ハ土地ノ価格ノ昂低ニ因リ又ハ比隣ノ土地ノ地代若ハ借賃ニ比較シテ不相当ナルニ至リタルトキハ契約ノ条件ニ拘ラス当事者ハ将来ニ向テ地代又ハ借賃ノ増減ヲ請求スルコトヲ得
 但シ一定ノ期間地代又ハ借賃ヲ増加セサルヘキ特約アルトキハ其ノ定ニ従フ

2 地代又ハ借賃ノ増額ニ付当事者間ニ協議調ハサルトキハ其ノ請求ヲ受ケタル者ハ増額ヲ正当トスル裁判ガ確定スルニ至ルマテハ相当ト認ムル地代又ハ借賃ヲ支払フヲ以テ足ル
 但シ其ノ裁判ガ確定シタル場合ニ於テ既ニ支払ヒタル額ニ附則アルトキハ不足額ニ年1割ノ割合ニ依ル支払期後ノ利息ヲ附シテ之ヲ支払フコトヲ要ス

 地代又ハ借賃ノ減額ニ付当事者間ニ協議調ハサルトキハ其ノ請求ヲ受ケタル者ハ減額ヲ正当トスル裁判ガ確定スルニ至ルマデハ相当ト認ムル地代又ハ借賃ノ支払ヲ請求スルコトヲ得
 但シ其ノ裁判ガ確定シタル場合ニ於テ既ニ支払ヲ受ケタル額ガ正当トセラレタル地代又ハ借賃ヲ超ユルトキハ超過額ニ年1割ノ割合ニ依ル受領ノ時ヨリノ利息ヲ附シテ之ヲ返還スルコトヲ要ス

 

東京・台東借地借家人組合

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【判例紹介】 20年に亘り著しく低額な地代の供託によって契約解除された事例

2009年03月27日 | 弁済供託

 判例紹介

 地主から地代増額請求に対し20年に亘り著しく低廉の供託をしていたことなどが、地主・借地人の信頼関係を破壊したとして契約解除が認められた事例 横浜地裁昭和62年12月11日判決、判例時報1289号)


 (事案)
 判決の認定事実は次のとおり。
 ①地主Xと借地人Yとの借地契約は昭和25年に開始。41年に1坪当り月額10円、42年以降は公租公課の増減・近隣状況を勘案して協議の上定めるとの調停が成立、しかしこの協議がうまくいかずYは43年から供託。

 ②この借地の適正賃料は、55年が224円、56年が254円、57年が284円、58年が302円、59年が308円、60年が314円である。

 ③Yの供託額は、右の期間公租公課の1・1倍以内にとどまり、しかし56年、57年度は公租公課にもみたず、②の適正賃料額の28~36%程度にしかすぎない。収益は1坪当り1か月3円にも満たない。
 ④Yは公租公課の額を知っていたと推認されるし、借地上建物に抵当権を設定しているところからからするとこの土地の価格も知っていた。
 ⑤Yは供託後49年まで協議の申入れはしていない。49年、57年に協議の申入れをしたが、それは従前の差額地代の免除、土地所有権と借地権の交換を内容とするものであり、それまでの供託状況に照らすと必ずしも協議可能とはいえない。長期供託の原因はYの側は少なからず存在する。


 (理由)
 (1)「一般的に相当額の供託とは主観的なそれで足り、右主観的な相当額とは従前賃料の供託で足りると解されているが、右供託額は適正賃料額に比して著しく低額であるときにはその供託は借地法12条2項にいう「相当額の供託」とはいえないものと解するのが相当である」。前記③の供託額は②の適正賃料額に比し著しく低く、「右供託は不当なものである」。
 (2)このことを前記①、④、⑤の事実に見られるように「借地人Yは20年間に亘り不相当に低額の供託を漫然と続けていること、さらにYにおいてかかる定額の供託であることについて認識があったこと、ないし認識の可能性のあったことなどからすると、XとYとの借地契約における信頼関係は破壊されてたものと言わざるを得ない」。よって、契約解除は正当な権利行使である。


 (感想)
 判決文を一読した限りでは、地主・借地人とも供託解消に向けてそれほど積極的だったとは思われない。⑤の事実認定はやや地主側の肩を持ってたという印象。地代に関してはその支払義務者である借地人どうしても厳しい目が注がれる。借地人としては「(イ)20年間(つまり長期間)に亘り、(ロ)不相当に低額の供託を、(ハ)漫然と続けている」といわれないように、とくに(ロ)と(ハ)については組合などの専門家の助言を受けることが大切。

(1989.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 参考法令
 借地法
第12条
 地代又ハ借賃カ土地ニ対スル租税其ノ他ノ公課ノ増減若ハ土地ノ価格ノ昂低ニ因リ又ハ比隣ノ土地ノ地代若ハ借賃ニ比較シテ不相当ナルニ至リタルトキハ契約ノ条件ニ拘ラス当事者ハ将来ニ向テ地代又ハ借賃ノ増減ヲ請求スルコトヲ得
 但シ一定ノ期間地代又ハ借賃ヲ増加セサルヘキ特約アルトキハ其ノ定ニ従フ

2 地代又ハ借賃ノ増額ニ付当事者間ニ協議調ハサルトキハ其ノ請求ヲ受ケタル者ハ増額ヲ正当トスル裁判ガ確定スルニ至ルマテハ相当ト認ムル地代又ハ借賃ヲ支払フヲ以テ足ル
 但シ其ノ裁判ガ確定シタル場合ニ於テ既ニ支払ヒタル額ニ附則アルトキハ不足額ニ年1割ノ割合ニ依ル支払期後ノ利息ヲ附シテ之ヲ支払フコトヲ要ス

 地代又ハ借賃ノ減額ニ付当事者間ニ協議調ハサルトキハ其ノ請求ヲ受ケタル者ハ減額ヲ正当トスル裁判ガ確定スルニ至ルマデハ相当ト認ムル地代又ハ借賃ノ支払ヲ請求スルコトヲ得
 但シ其ノ裁判ガ確定シタル場合ニ於テ既ニ支払ヲ受ケタル額ガ正当トセラレタル地代又ハ借賃ヲ超ユルトキハ超過額ニ年1割ノ割合ニ依ル受領ノ時ヨリノ利息ヲ附シテ之ヲ返還スルコトヲ要ス

 

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【判例紹介】 賃料を賃貸人に直接請求され、債権者不確知を理由とした供託の効力

2008年09月22日 | 弁済供託

 判例紹介

 
 賃貸用建物の管理委託会社に賃料を支払っていた賃借人が賃貸人から直接賃料の支払いを求められた場合に債権者不確知を理由として行った弁済供託の効力 (東京地裁平成15年2月19日判決、判例タイムズ1136号)

 (事案の概要)
 ①Xは平成10年2月、本件建物(賃貸用)を競売により取得し、従前からの賃借人Yに対する賃貸人の地位を継承した。

 ②同時にXはZに対し全面的に本件建物の管理を委託した。ZはYとの間で賃料を月額21万円に増額する旨合意した。

 ③XとZは管理をめぐって争いになり、Yは平成14年1月Zから、XがZを差し置いて賃料を請求してもXには支払わないでもらいたい旨要請され、他方、Xから直接Xに支払うよう要請されたため、債権者を確知できないとしてXZ両者を被供託者として同年2月3月分を供託した。

 ④これに対しXは、右は債権者を確知し得ない場合に当たらないから供託は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料の支払いを求めた。

 (判決要旨)
 ①Zは本件建物の管理を全面的に委託され、その管理権限に基づいてYに明渡を求める調停を申立てたことがあること。

 ②調停を申立てる権限があることについてはXも了解済みであったと窺われること。

 ③Yが前賃貸人と取交わしていた賃貸借契約がXを賃貸人、Yを賃借人とする契約書に差し替えられていること。

 ④ZはYとの間賃料改定を行っている等をあわせ考えると、Yにおいて、Zを本件建物の賃貸人であるか、賃貸人でないとしても、自ら固有の権限で、訴訟上でも、その取り立てが可能な権限を有する立場にあると判断してしまうことは無理からないところというべきである。

 Zの立場が現に賃料の固有の取立権者であったとすれば、債権者不確知を理由とする弁済供託にいう「債権者」と同視して差支えなく、実際に固有の取立権限がなかったとしても、YがZを取立権者であると判断したことに過失はないといわなければならないから、本件供託は、少なくとも債権者であるYにおいて過失なく債権者である本件建物賃料の賃貸人ないしその取立権者を確知することができない場合であったとして、有効なものであったと認めるのが相当である。本訴請求は理由がない。

 (寸感)
 マンション・アパートや貸地を何件も持っている地主の管理人がどこまで権限を持っているのか、賃借人には分かりにくい。本件の事実関係のもとでは判決は妥当である。

 一般的には、どちらに賃料を支払ってよいか分からないとき、管理会社が賃貸人の代理である場合には、債権者不確知を理由とする供託は無効とされている。だれを相手に供託すべきか迷ったらちょっと慎重になった方がよい。

(2004.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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