東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を自ら守るために、
自主的に組織された借地借家人のための組合です。

東京・台東借地借家人組合

借地借家人組合に加入して、
居住と営業する権利を守ろう。

無料電話相談は050-3656-8224(IP電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝日は休止 )

 尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。
 

借地借家と消費者契約法 目次

2008年05月29日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 2001年4月11日
 東借連理論学習会
借地借家と「消費者契約法」

 

借地借家と「消費者契約法」 1
【 目 次 】
はじめに
消費者契約法第2条 消費者・事業者の定義
「民法」だけで消費者の権利は守られるのか
「消費者契約法」の登場
「消費者契約法」の成立
「消費者契約法」の観点
「消費者契約法」は消費者の武器になりうるのか
「消費者契約法」は事業者間には適用されない

 

借地借家と「消費者契約法」 2
 誤認による取消し (消費者契約法第4条1項・2項

不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例1
不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例2
重要事項の不実告知で誤認した契約の取消し 事例
断定的判断の提供で誤認した契約の取消し 事例1
断定的判断の提供で誤認した契約の取消し 事例2
不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例3
不適切な勧誘で誤認した契約―「取消し」類型
「取消し」の意思表示―配達証明付き内容証明郵便

 

借地借家と「消費者契約法」 3
 善意の第三者に対抗できない 消費者契約法第4条5項

「民法」の債務不履行による解除
事例
「クーリング・オフ」

 

借地借家と「消費者契約法」 4
 困惑による取消し (消費者契約法第4条3項)/ 媒介・代理人業者の行為 (同法第5条

不退去で困惑した契約の取消し 事例
監禁で困惑した契約の取消し 事例
消費者の代理人による契約の取消し 事例

 

借地借家と「消費者契約法」 5
 取消し権の行使期間 消費者契約法第7条

 

借地借家と「消費者契約法」 6
 事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効 (消費者契約法第8条

損害賠償責任を免除する負責条項の無効
不法行為責任の全部及び一部免除条項の無効 事例
全部免除条項の無効 事例

 

借地借家と「消費者契約法」 7
 違約金条項の無効 消費者契約法第9条

解除の場合 事例1 明渡しの遅延損害金
解除の場合 事例2 原状回復費用の負担
《参考》修繕・原状回復特約がある場合
履行が遅れた場合 事例 滞納賃料の遅延損害金

 

借地借家と「消費者契約法」 8
 消費者の利益を一方的に害する条項の無効 消費者契約法第10条

《参考》原状回復特約の有効性
「消費者契約法」は借地・借家人のための強力な武器になる

 

借地借家と「消費者契約法」 9
参考資料》「消費者契約法


借地借家と消費者契約法 1

2008年05月28日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法


    はじめに
 東借連の理論学習会において「消費者契約法」を取り上げるのは、私がこれから言うように、非常に重要な問題を含んでいると思うからです。私たち東借連は、これまで住宅運動団体ということで他の諸団体と共に公共住宅の大量供給等を政策課題として提起してきました。勿論、この立場は、これからも中心的な課題ではあります。

 このたび「消費者契約法」というのができて、我々の借地契約或は借家契約の殆どのものについては、消費者契約というものに当たるということであります。そうすると私たちの借地借家人組合の位置付けは、住宅運動団体であると同時に、消費者運動の団体にもならざるを得ないということなのです。

 ですから、多分、今後東借連は、いろんな消費者団体と共にその一翼を担って、そうした運動課題を取り上げていかなければならない責任を生ずると考えます。そのためにも、「消費者契約法」の中で借地契約・借家契約というものがどう位置付けられるのか、これからどう「消費者契約法」を我々が活用していくのかが非常に重要なことであります。その辺の事をしっかり踏まえておかないと、東借連の日常の活動というものは、大きな落とし穴に嵌ってしまう可能性があるだろうと思います。

 「消費者契約法」は、2001年4月1日から施行になりました。4月1日以降の借地契約・借家契約の中で、借主側が消費者に当たる契約については全面適用ということです。ですから―借地の新しい契約というのは殆ど無いでしょうから、借家契約の場面においてです。借家の契約については、いつも消費者契約の観点から条文・契約内容を見ていくことが必要になります。

 この「消費者契約法」というのは、経済企画庁国民生活局が担当して立法したものです。現在経済企画庁は、産業経済省になっているのですが、その中の消費者行政を担当する課がこの問題について引き続きやっています。ですから、住宅問題は国土交通省(旧建設省)の関係で、それ以外に、産業経済省の消費者行政課がこれから皆さんのお付き合いしていく場所になっていくというわけです。


  消費者契約法 消費者・事業者の定義 (第2条)
 この消費者契約というのは、聞きなれない契約だろうと思います。これについては、こう言われています。貸主、これが殆ど事業者になります。つまり、不動産を賃貸するのは事業です。ですから地主・家主は事業者ということです。借主、即ち借地人・借家人は基本的には消費者です。そういう消費者と事業者の間の契約を消費者契約と言います(消費者契約法第2条)。

 
  「民法」だけで消費者の権利は守られるのか

  「消費者契約法」の登場
 今まで、この分野―消費者契約についてどういうルールが定められているかと言えば、はっきり言って余り無いのです。今までは、例えば、「訪問販売法」(2001年6月1日から「特定商取引に関する法律」に名称変更)・「割賦販売法」という個別な法律がありました。

 けれども、一般的な形で消費者契約全部に網を被せて、しかもその契約の内容にまで立ち入って取消しだとか、或は無効だとかいう内容を盛込んだ法律はなかった。つまり法律的に非常に絶大な効果を発揮するこのような立法というのは非常に画期的なものであります。それだけに、「消費者契約法」は我々にとっても、より注目して活用すべき法律ということになります。

 今まで我々は、変な契約書を見ますと、こういうものについて、「民法」上或は「商法」上一見しただけでも酷いな、許せないな、そういう契約条項がそのまま罷り通ったら酷いな、これは「公序良俗」(民法90条)に反するのではないか、「信義誠実の原則」(民法1条2項)に反するのではないかと、一般的に程度問題にしてきていた。そういうものについて効力の及ぶ範囲を狭めたり、或はそういう形で対応できない場合については、その契約自体全部、これは無理なのだ、無効なのだという形で争うべきだというのが通例だったのです。

 そういうやり方は、言ってみると大上段に振り被って主張するわけですから、はっきり言うと余り通りがよくない。何でもかんでも無闇に「無効だ」「無効だ」と言っていいかというと、そんなことをやっては世の中、何の為に契約書を交わしたのかという話になってしまいます。そういう一か八かということは世間では通らないし、裁判所でも通らないわけです。だから、もう少し具体的な内容・具体的な基準で「取消し」だとか「無効」だとかが定められる必要がある。それが、今回の「消費者契約法」ということになります。

 そうすると、具体的なことは決められているわけですから、それに当て嵌めて、この借地契約・借家契約がどの部分について有効、どの部分は無効なのかを具体的に個別的に判断することが必要です。ですから、我々として、「消費者契約法」の第何条でこれは取消します。或は、「消費者契約法」第何条でこれは無効ですと、具体的に法律上の根拠をしっかり示すことができるということなのです。

 我々は借地借家契約に関して、今までずっとこの法律―「民法」・「借地借家法」との関係で考えてきております。この「民法」と、それの特別法の「借地借家法」という中で、「借地借家法」では意思表示、このように言うと言葉は難しいのですが、この契約は「詐欺」(民法第96条)によって結ばされた、或は無理矢理「強迫」(民法第96条)されて結ばされた、或は「錯誤」(民法第95条)で結んでしまった、そういうものについては全て「民法」に規定されている。

 「借地借家法」には書いてなくて、物事によっては、これは「無効」です―例えば「更新」の関係については「正当事由」が無いのに「更新出来ない」と一方的に非更新の契約をするというのは「借地借家法」の正当事由の更新の規定(借地借家法第9条・第30条、旧借地法第11条、旧借家法第6条の「強行規定」―「賃借人に不利な内容の特約は無効とする」)に反するから「無効」です、ここまで書いてある。個別的に書いてある。

 だけど、そういう形ばかりではないわけです。もっと今の世の中複雑になってきていますから、細かい色々な契約内容が書かれる。それをひとつひとつ検討する必要がある。「借地借家法」でも、触れられてないという問題が沢山あります。そういう問題について、この「消費者契約法」の観点から考えていきたい。或は検討していきたいと思います。

 
   「消費者契約法」の成立
 何故、「民法」に全部任せておけなかったのかというと、「民法」というのは、対等な者同士の契約を想定して定めてあるからです。例えば会社と会社、或は個人と会社、会社と個人、個人と個人、色々ありますが、それぞれ大きくても小さくても1対1、一本独鈷の対等な当事者の関係だと、そういうことを想定しているのです。

 ですから、「民法」は、その対等な当事者間で結んだ契約について、原則有効なのです。無闇に取消しされたり、無効にされたりすると、世の中廻っていかない。こういう自主的な意思決定に基づく契約を前提にしている考え方なのです。

 ですから「詐欺の…」と騒いでも詐欺として認められない。或は「強迫だ」と言っても「そんなことですぐ脅かされたりするのは可笑しい」と言われる。「錯誤」というと、「そんなの錯誤に陥った方に重大な過失がある」とか、「当然その位は解っていて欲しい」というようなことで、悉く難しい。

 ところが実際の契約の中では、そういうことばかりではないわけです。色々な形があるわけです。その辺をもう少し、きめ細かくしていかなくてはというのが「消費者契約法」なのです。

 それと「民法」では、先程言ったように怪しからん、これは無茶だ、それは酷すぎるというような、「公序良俗違反」や「信義則に反する」こと、これは言ってみると大上段に振り被った理由なのです。余程のことが無い限りこういうのに当たらない。

 無闇にそういうのに当たるのでは、世の中無茶苦茶になってしまうので、そういう「一般的な状況に違反しているから無効です」と言うのでは通らない。そういうことで、先程の「消費者契約法」が成立したのです。
 
   「消費者契約法」の観点
 考えてみますと、圧倒的に事業者の方が情報を独占しています。当然、貸す方は色々なことを知っている。例えば、森ビルと我々とで考えてみると、森ビルの方が色々なことを研究した上で「定期借家契約」(借地借家法第38条)を押付けてくる。新しい物件については、森ビルは全て「定期借家契約」を押付けるようになってきています。後、テナントの関係で消費者に当たるというと、そこまでいけば、知識の量、或は経験の量、色々なことで力関係は圧倒的に強者より弱者が不利です。

 「消費者契約法」は、弱者を色々な形で守らなくてはいけないというのが根底にあるわけです。「消費者契約法」は、消費者を保護しよう、契約内容の観点で保護しようという観点でできています。

 少し外れますけど、「消費者保護基本法」というのがあります。昭和43年にできておりますが、そこで取り上げている消費者保護というのは、消費者が商品だとかによって被害を受けるのを防止しよう、つまり物によって被害を受けるのを防止しようという考え方です。

 今回の「消費者契約法」は、契約によって被害を受ける者を保護し、防止しようという観点です。物によってというのは、物を買ったりするということで、それを契約するという観点で捉え、そういう次元での問題と考えていきます。

 事業者というのは、今言ったように力が強いということで、消費者の赤児の腕を捻るようなことをする。色々騙したりすかしたりして契約を結ばせる。よくあるのですが、ひとつの会場に人を集め、初めは物を配るような振りをして、段々催眠状態にさせて、そこで高い着物だとか宝石類を売りつける。例えば、着物だとすると、高々2~3万円の着物を、20万だとか30万円だとかで売りつける。そういう不当な勧誘、今までそういうものについて、「いやそれは錯誤だ」とか、「誤認だ」とか、余程価格差がないと難しいです。

 「消費者契約法」は、そういうものについて、できるだけ広く「取消し」ができるようにしていくということなのです。これによって被害を受ける消費者の保護をする、救済を図っていくということを主にしています。

 
   「消費者契約法」は消費者の武器になりうるのか
 事業者というのは、情報が質・量共に大きく、交渉力が強い。他方消費者は、情報から遠ざけられている。交渉力というのは全く無いという感じです。そこで、消費者は間違い易いわけです、契約する上で間違い易い。或は困った上で、押付けられた上で、契約を結ぶ。そういうものは取消す。

 それから消費者契約は、事業者が契約の中で自分に損害賠償が請求され、損害賠償責任を負うようなケースについて、契約書の中で「損害賠償責任を免れる」或は「責任を軽減する」というような条文の入っているものについて、これは酷いよという場合については、それを「無効」にする(消費者契約法第8条)。凄いです、当事者間で契約を結んだものについて一方的に「無効」にする。これを「無効」にしてしまうというのは、効果抜群なのです。法律がそういう役割を果さないと、被害が広がる一方なのです。

 我々は、いつも借地契約・借家契約ということを前提に契約の話をしていますが、こういうので最も被害の大きいのは金融取引です。例えば、多額の老後の資金等を合法的に騙し取る。そういうものも頭に入れて、それもこの「消費者契約法」に基づいて、これから一方的に「無効」にしていくということです。多分、そういう金融取引関係の契約内容については、事業者側は相当に研究してくることでしょう。今までのような契約では「無効」になるか、或は「取消し」になるものが非常に多い。今後は、相当見直しした新しい契約内容になるでしょう。

 借地契約・借家契約の関係についても、事業者側が今までの契約書では「無効」になりそうなものについては見直ししている。ただ、中小のところは、そういう見直しはしないで今まで通りの契約内容のものが多いでしょう。ましてや、もっと小さい不動産業者の絡んでいる弱者の事業者の関係は、全然こういう「消費者契約法」という問題意識が無くて、家主或は地主にとって有利なものであれば、何でも取り込んでいくでしょうし、そういう契約内容をこれからも引き続き盛り込んでいくでしょう。

 我々は、そういうのをきちんと指摘して、どんどん削除させていく。道義的に削除を要求できる。今までは、「そういうのだと契約結べないのですが…」・「結ぶ気持ちにならないのですが…」と言うと、「そういうことなら結ばなくていいよ」と言われていたわけです。けれど、そうではなくて、「消費者契約法からするとこれは、無効なのです。当然削除すべきであり、仮に残っていてもこれは無効ですよ」と言えるのです。それで、「では、お前とは契約結ばないよ」という話にはならないわけです。だって誰としても同じことになるので、好き嫌いでそういう契約するとか、しないとかとは全然違っているのです。そういうことで、「消費者契約法」を武器にして、色々やっていけばいいのです。

 
   「消費者契約法」は事業者間には適用されない
 ただし消費者契約ですから、先程から言っている中で外れるものを少し言っておきます。まず、請負契約だとか医療契約・会員サービスとかも含めて、ありとあらゆるものが消費者契約になります。

 ただ消費者でない場合、借主側が消費者ではない場合、例えば借地契約の場合を言いますと、大きな所から借地をしてその上に貸家を建てて、それを人に貸して家賃収入を上げている貸家業の借地人の場合は、事業のためですから借地契約について消費者の立場にはなりません。

 それから借家の場合でも、例えば店舗・工場・事務所・倉庫これは借家人が事業のために契約しているわけです。だから事業用・営業用の借家の借家人は、「消費者契約法」では消費者として認めていない。

 これはもう対等平等に事業をしているわけだから、そのような保護をする必要はないという立場です。我々にすると、事業らしいものではないと思っても、それを借りて、そこから収益を上げている場合については、消費者と言わないということです。だから無闇に「消費者契約法」で、「無効」だと言ってもこれは拙いわけです。

 ということは、貸主側は大体事業者ほぼ問題なく事業者ですからいいのですが、借主側―例えば借地の場合殆どは個人の契約ですから消費者です。借家の場合について、住まいで借りる人これは消費者です。ですから借家契約で居住用というのは消費者契約です。

 店舗併用住宅の場合、「定期借家契約」では居住用扱いでしたが、「消費者契約法」では事業扱いになります。従って「消費者契約法」の対象にはなりません。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 2

2008年05月27日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

   誤認による取消し  (消費者契約法第4条1項・2項)


 さて次は、消費者契約で、どういう場合に取消しになるのかというのを調べて行きたい。

  不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例1
 よくあることですけれど、契約するに当たって、解り易く言えば借家契約を頭において、極端な例を言うと、アパートの一室で、前に住んでいた人が自殺した。それを家主が自殺した場所だと言うと、借りる人がいないだろうということで黙って次の人に貸してしまう。これについて、今まで、そういうのは、確かに怪しからんことですけれど、間違いなく物自体を貸して、そこで寝泊りできる。そのことが誰でも気になるかというと、平気で生活できる人もいる。「部屋の中は新しくなっているので気にしないよ」と言う人もいるので、一律に無効だというのは少し無理がある。

 そういうことについての告知は、今度は大事な事項です。それを告げなかったり、「これは、曰くのあるこういう物件なんですよ」・「これまで、こういう人達が借りていたんですよ」と、そういう経過についてきちんと話をしないで、消費者が誤認したまま契約を結んだ場合、これは取消しができるのです。その消費者の不利益になる事実を事業者が知っていて、故意に告げないこと、即ち「不利益事実の不告知」により事実を誤認して契約した場合は、契約を取消せる(消費者契約法第4条2項)。


  不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例2
 今、極端な例を言いましたけれども、借家契約の場合について、例えば、お二階さんがドスンドスンとうるさくして、騒音に耐えられず下の人が居なくなった。それなのにその部屋が空いた理由を黙って、お二階さんがうるさいことを知らせないで次の人に貸してしまう。夜中なのにガタガタと騒々しくて寝られないわけです。これも、「不利益な事実の不告知」です。そういうのは気にしないから寧ろ取消さなくていいという人もいる。それはそれで別に構わないのですが、取消すこともできるので、取消したいと思えば取消せばいい(消費者契約法第4条2項)。
 取消した場合は、敷金も契約手数料も全額きちんと返してもらうということは当然にできる。取消しによって契約前の状態に戻すというのと、自分が勝手に「厭になったから出て行く」と言って出て行ってしまうのとでは、えらい違いがあります。


  重要事項の不実告知で誤認した契約の取消し 事例
 自分の方が一方的な都合で出て行く。極端な例ですが、契約期間中に家賃が払えなくて、家を出る人がいる。契約書には、2年契約で解約は期間の満了前1ヶ月前に、或は3ヶ月前にと書いてある。そういうことになれば、どうしても契約期間中の家賃は払わなくてはいけない。これは法律的にそうなるのです。

 たまたま今までは、部屋が空いても後すぐ入る人が居るから、期間中の解約でも1ヶ月前に言えばいいということだったのです。

 でも中々次の入り手が居ないとなれば、話は違ってきます。当然に家主は、契約期間中は家賃が間違いなく入ってくると期待しているわけです。だから契約途中で、「1ヶ月前に出て行くと告げたのだから」と言って出ていくのでは、家主としては、そう簡単に「いいですよ」にはならない。「残りの契約期間の家賃も全額払って出て行って下さい」或は、保証金を取っていれば「家賃を、それから差っ引きますよ」という形になります。

 そういう重要な事項について、明確に言っていない場合、即ち「重要事項の不実告知」の場合は、全部取消しの対象になります(消費者契約法第4条1項)。


  断定的判断の提供で誤認した契約の取消し 事例1
 それから、貸主側が言葉の上では不確実な事柄について、「間違いない」等と断定的な判断を提供した場合取消せます。この事例として、解り易いのが投資信託です。「この投資信託で、これを買えば間違いなく絶対儲かりますよ」と言われてそれを買った。けれども、某大手証券会社のその投資信託を始めてすぐに3割方も価格が落ちてしまった。契約するにあたって「間違いなく上がります」と断定的なことを言われて契約した場合に、それは取消せる(消費者契約法第4条1項2号)。


  断定的判断の提供で誤認した契約の取消し 事例2
 借地とか借家の契約の場合、どういうことかと言えば、「すぐ近くに地下鉄が伸びてきていて、2~3年の内に必ずここは駅ができますから便利になります。借り時ですよ」という事例です。「断定的な判断の提供」です。こういうのは、今までは中々難しかったのです。つまり今までは、そういう話をしたからといって、借地契約・借家契約で、その土地なり建物なりを提供しておけば、余程のことが無い限り、そんなことでは取消しにならない。だけど実際借主は、便利になるということで借りたわけで、そのまま期待していることが実現しないということになると、矢張りまずい。実際借りたはいいけど全然便利にならないという場合、即ち本当は確実でないものを確実であるかのように決め付けた場合、それはもうはっきり「取消す」と言っていいのです。断定的判断によって「誤認」して契約を結んだ場合は、取消すことができます(消費者契約法第4条1項2号)。


  不利益事実の不告知で誤認した契約の取消し 事例3
 それから、借主側に対して良いことばかり言い、都合の悪いことは言わない。これも取消せます。例えば、「このアパートは有名小学校の学区域なのですと」言う。よくある話しで、それを売り物にして貸しているマンションとかアパートがある。ところが今、都心部では、どこでもそうですが、子供の数が少ないので廃校になってしまうのです。家主の方は、良いことばかり言うわけです。「ここへ行けば次は何とか有名中学へ、そして某有名高校が次のルートになっていますよ」と。その気になって、では、そこで決定しようということになる。ところが家主側とすると永年住んでいるわけですから多分2年ぐらいで廃校になるだろうという情報を掴んでいる。それを言わない。これは先程言ったように事実を告知しない。良いことばかり言って悪いことを告知しないということで、矢張り駄目です。「不利益事実の不告知」で契約の取消しができます(消費者契約法第4条2項)。

 
  不適切な勧誘で誤認した契約―「取消し」類型
 事業者が不正な方法で勧誘し、消費者が誤認した場合の、「取消し」の根拠になる類型を挙げます。
 1番目は、嘘を言う。嘘をつくのは、契約を結ぶに当たって結ばせようとする為に契約締結時に言うわけです。重要な事項について間違ったことを言う―「不実告知」。
 2番目が、将来解らないようなことについてあたかもそれが間違い無いかのように断定的に言う―「断定的判断の提供」。
 3番目には、不利益になることは故意に言わない。良いことばかり言って悪いことは言わない―「不利益事実の不告知」。
 こういう3つの類型があるのです。

 だから、契約を結ぶに当たってどういうことを言われて契約を結ぶのかというのをしっかり押さえておけば、その3つの中のどれかに当て嵌まるわけです。言われたことで自分が納得して、実際によかったというのは、これは何も問題ないわけです。それを無理矢理取消すことはない。

 貸主側は色々なことを言って、借主はいいなと思って入居する。ところが住んでみると期待した程ではない。期待した程でないということを色々考えてみると、どうも言われた中で、将来の不確実なことについて「断定的な判断が提供」されたりしているので、これは取消す(消費者契約法第4条1項2号)。

 或はこういう嘘を言われたから自分は借りてしまった。これは「重要事項の不実告知」だから取消す(消費者契約法第4条1項1号)。

 良いようなことばかり言って故意に不利なことを全く言われなかったが、実際不利益なこと、不利なことは出てきてしまうことがある。これは「不利益事実の不告知」だから取消しができる(消費者契約法第4条2項)。

 ですから皆さんは例えば、借家契約を結んだのだが、どうも納得できない、そういう相談事がきた時には、どんなことを言われて、或はどんな説明を受けて、その契約を結ぶ気になったのかということをきちんと聞き出す必要があるわけです。

 
  「取消し」の意思表示―配達証明付き内容証明郵便
 以上3つのうちのいずれかの事実がある場合、「取消し」をするためには、通知を出す必要があります。「消費者契約法」に基づいて取消すという内容証明を書けばいいわけです。内容証明で出すというのは、内容証明配達証明付きにしておけば後々まで証拠が残る。言った、言わなかったという問題を避けるためです。「取消し」の意思表示をするには、必ず内容証明郵便で行って下さい。勿論、消費者の取消し通知に対する反証責任は事業者にあります。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 3

2008年05月26日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

   善意の第三者に対抗できない (消費者契約法第4条5項)

 前述のように、「取消し」の意思表示をする場合について、善意の第三者に対抗できない。これは中々面倒臭いことです。これは即ち、相対の間では契約は無効になりますよということなのです。つまり事業者である貸主AとBは借家契約を結びます。Bの引越が遅れている間に、契約を結んだ借家物件をAが「俺は、売る」と言ってCに売ってしまった。Bの入居前にCに権利は移転していた。その時、当事者AB間では取消しができる。勿論できますが、それの効果は第三者Cの方には及びません。このAの不正をCが知っている場合は取消せますが、Cが知らないで引継いだという場合にはCの方には効力は及びませんということです。Bは善意の第三者Cに対抗(借家権を主張)できません。これは民法の詐欺(民法第96条3項)の場合と同じです。

 もう少し具体的に言いますと、AがB所有の土地を購入したいと言ってBと土地売買契約を結んだ。AはBを騙して、その土地をCに転売し、C名義の所有権移転登記も完了していた。Bは土地売買が詐欺であることを理由にA・B間の売買契約を取消した。Cが善意の第三者の場合は、Bが折角その売買契約を取消しをしてもCに影響を及ぼすことにはならない。BはCに対して所有権を主張できない。即ち、Bは善意の第三者Cに対抗できないということです。

 消費者契約法は、誤認・困惑による意思表示の取消しの場合、善意の第三者を保護すると規定して、民法の詐欺の場合と同じ法的処理をすることにしました。

 でも、殆どの借地契約・借家契約の場合にはこういうのは問題ないです。ですけど、相対の関係は少なくともその契約を結ぶ直後に変わるということはありません。「取消し」ということでいいです。

 
  「民法」の債務不履行による解除 
 これと別の問題で、「消費者契約法」が介入不能な場合で救済できることがあります。つまり契約を結んで、その後、事業者の方が契約違反に当たる行為をしたという場合について、それは契約違反・債務不履行ということで、それを「解除」することができます。

 契約の解除とは,契約が締結されたのちに,その一方の当事者の意思表示によって,その契約がはじめから存在しなかったのと同様の状態に戻す効果を生じさせる制度のことをいいます。

 これは「取消し」とは少し違うのです。「解除」することで現状に戻すということです。というのは、インチキなケースの場合、最初から相手は約束を守るつもりが無いわけです、だからすぐ違反してしまうのです。

  事例
 例えば、借家契約の場合でいうと、契約の前に貸す時点ではまだ取り付けてないのだけれども、後で風呂の設備を付けますと書いてある。いくら催促しても付けない。「とにかくその契約書に付けると書いてあるのだから、少なくとも2週間以内に付けて下さい」と催促しても、それでも付けない。それは契約違反だから、「債務不履行」だからと契約を「解除」する(民法第541条)。これは当然です。それは、先程の「取消し」ということとは別次元の問題です。

 ですけれども、この「債務不履行」の問題・契約違反の問題は、皆さん今までも扱ってきていることですから、今まで通りに対処すればいいわけです。

 「取消し」と「解除」は、効果は同じです。一旦契約を有効とした上で、違反した時には「解除」、契約自体を無効にして、初めから成立効果を生じさせないようにすることが「取消し」です。結果は同じです。

 
   「クーリング・オフ」
 それから、日本の契約の中に「クーリング・オフ」という制度があります。これは、仮にしっかり納得した上で結んだ契約であっても無効にするのに、「詐欺」だとか「強迫」だとかの事由が何も無くてもいい。或は先程の①事実・重要な事実を告げなかったり、或は②勧誘行為について断定的な判断を提供したり、或は③良いことばかり言って悪いことは言わなかったり、そういう事由が全く無くても一定期間中(8日間)であれば、無条件で「契約を止めた」と言うことができる契約の内容になるのです。これが「クーリング・オフ」です。

 「消費者契約法」で「取消し」ができるというのは、「クーリング・オフ」とは一寸違い、事由が要るのです。事由が無くて契約を解消してしまう「クーリング・オフ」とはかなり違います。借地契約・借家契約の中で、「クーリング・オフ」というのはありませんから、結局、我々にはさほど問題は無いのですが、同じように「取消し」できるケースの類型として、比較してみるとそういう違いがあります。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 4

2008年05月24日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

消費者契約法第4条3項 困惑による取消し (消費者契約法第4条3項)/ 媒介・代理人業者の行為 (同法第5条)

 

 それから取消しができる事由というのは、先程述べた3つのこと以外に、事業者の方の態度、行動によっても取消すことができます。これは、本当はもっと広く規定したかったのですが実際には狭められてしまった。

   不退去で困惑した契約の取消し 事例
 貸主は、特に更新を巡ってのトラブルが多いのですが、媒介の委託を受けた不動産業者が押しかけて行って、真夜中の3時か4時いつでもいいですけれど、
 「こういう契約内容で更新するので、この契約内容でお願いします」と言う。
 「それは明日にして下さい。明日早くから仕事があるのだから帰って下さい」と言っても退去しないで、執拗に居座る。
 「今日、何としても契約書を取り交わして、家主さんに届けないと、不動産業者として飯の食い上げになってしまう」と玄関先で粘るわけです。
 「いい加減にして下さい」と言っても、中々帰ってくれない。
 仕方がないので、厭々契約してしまう。これは女の人一人だけで不動産業者に紹介してもらって借家している場合によくあるケースで、とにかく、困惑させられて、契約を結ばされてしまう。

 消費者が退去するよう不動産業者に意思表示しているにも拘らず、不動産業者の不退去により困惑して契約を結んだ場合は契約を取消せる(消費者契約法第5条1項・4条3項1号準用)。

 そういうのでも、今までは中々「取消し」は難しかったのです。
 「だって厭だったら判子を押さなければいいではないですか」ということになってしまう。それで向こうも嘘をつく。
「いや快く判子を押して貰いました」というようなことを業者は平気で言うわけです。

 これは後でお話しますが、貸主自身がやらなくてもいいのです。貸主の手先になった媒介の委託を受けた不動産業者なり、代理した業者なりがやっても同じ効果なのです。ここが大事なところです。

 だから貸主が「いやそんなことは業者に言われたこともないし、業者がそんなことをやったとは聞いてもいない」と言ってもこれは駄目です。業者がやったことは全部貸主本人の責任です(消費者契約法第5条1項)。

 これはまた事業者を無茶苦茶に「消費者契約法」で縛ってしまうのです。今までは、貸主がそういう事情を知っていたのであれば、それは取消しができた。

 これからは、貸主が知っていようと知っていまいと関係無しに取消しができる(消費者契約法第5条1項)。

 「消費者契約法」は、貸し手には厳しい法律なのです。またそうしないと貸主と業者と組んで、聞かなかった、そういう話は聞かなかったことにするという話で、内々で誤魔化されてしまう。借主が「いや家主さんが本当は知っていたのではないですか」と言っても、「いや俺は知らなかった」と惚けられてしまう。でも、これかれは、貸主の責任逃れは許さないということです。

 家主自身或は、家主に頼まれた業者が粘って居座り、借主が、「帰って下さい」と言っても帰らないで、業者の不退去で契約結んだという場合について、これはもう困惑に乗じたということで取消せます(消費者契約法第5条1項・第4条3項1号準用)。

 我々は、「更新の契約は取消しましたので今までの契約通り法定更新です」と相談者(借主)を指導すればいいわけです。

 無理矢理、更新の契約を結ばされた場合、更新料或は敷金の増額或は家賃の増額というのは取消す。ただ、借家契約は「このままだよ」「今まで通りだよ」という話にしてしまう。そういう意味で、この場合についても借主が「私が『帰ってくれ』と言ったのにその業者は帰らなくって、2時間も粘ったのです」或は「3時間も粘ったのです」という事実を詳しく書いて内容証明郵便で送りつける。

 その内容証明郵便の中で、「消費者契約法に基づいて取消す」と書いて措かないと、家主から「更新の契約を結んで家賃を増額をしたのに、一方的に減額して払うなんて」と言われて、それこそ契約違反で脅かされるケースもある。

 だから「消費者契約法第5条1項・第4条3項1号準用に基づいて、不退去により結ばされたから取消します」と書いて措く必要がある。これを否定する立証責任は、当然事業者にあります。


   監禁で困惑した契約の取消し 事例
 もうひとつ同じような類型ですが、不動産業者の事務所に呼び付けられて契約書に判子を押さないと帰してもらえない。結構乱暴な業者がいるのです、ただ「判子を持って来い」とだけ言うような。どういう契約内容だか解らないので訊くのですが、「ここに判子を押せ」とだけ言います。「契約書を一応読ませて下さい」と借主が言っても読ませない。「少し考えさせてもらえますか」とも言うのです。でも、帰してもらえない。それでやむを得ず契約を結んでしまう。

 これは今までだと中々「強迫に基づくものだ」と言っても通らなかったのです。
 「だって、これはあなたの字でしょう」と言われてしまう。
 「判子を業者さんが勝手に押したのですか」と言われて、
 「いや私の判子です」とばれてしまう。
質問をしている人間からは、「仕様がないではないか」と叱られてお終になってしまう。

 これからは、そうではないのです。不動産屋の事務所に呼び出されて行ってはみたが帰りたい。
 「今日は契約を結びたくない」と言ったのだけれど中々帰してくれない。
 形態とすると監禁―などというと仰々しいですが、そんなに仰々しくなくていいのです。
 「今日は契約を結びたくない」と言ったのに、
 「いやいや、まあまあ、まあまあ」と言って閉じ込められてしまった。

 これも監禁なのです。手足を縛ってというような監禁ではなくていいのです。「帰りたい」と言っても、或は帰りたい素振りを見せて、業者はそれを解っているのに帰さない。これも全部監禁に当たるということなのです。難しく、厳密に取り囲んでどうのこうのということは必要ないわけです。

 このように事業者が消費者契約の勧誘をしている場所から消費者の退去を妨害した結果、つまり事業者の監禁という事実が存在し、消費者がこれにより自由な意思決定ができずに困惑して意思表示した場合には、その契約を取消すことができます(消費者契約法第5条1項・第4条3項2号準用)。


   消費者の代理人による契約の取消し 事例
 例えば、子供が大学に受かったのでマンションを借りることにした。本人は未成年なので、親権者である親が法定代理人ということで事業者(不動産屋)と賃貸契約を結んだ。その時に法定代理人である親が、不動産屋の不適切な勧誘行為で騙されてしまった。この場合に、未成年者である本人は、不動産屋との間で結ばれた契約を取消すことができます。契約を結ぶ時に、間に何人もの人が介在していても、まともに結ばれた契約の場合、本人が借主の立場から契約を取消せるということです。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 5

2008年05月23日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 取消し権の行使期間 (消費者契約法第7条)

 では、取消せる、取消せると言うけれども、いつ取消せるのか、いつまで取消せるのかが問題です。一旦契約が結ばれてしまうと、それを基にして色々なところが動いてしまいますから、余り後になって「取消します」では困るのです。

 それで、あれは拙かったと普通の人だと判る範囲、例えば、解り易いのは、旨いことを言われて契約を結んで、帰ってからよく考えてみた。そういう「考えてみた」時から半年間

 先程言った不退去の場合の「帰ってください」と言っても帰らなくて仕方なく契約を結んでしまった。だけど契約内容に納得できない。「納得できない」と思ってから矢張り半年間なのです。これは6ヶ月間でなるたけ対応しなくてはいけない。

 ただ、そういうのを思い付く、何となく思い付くのが遅い人がいるのです。仕様がないわけです、いろんな事情があって、そんなものかなと思って契約を結んでしまった。「そんな筈ないけど、そんなものかな」と友達に言うわけです。それで、よくその友達に話して相談した結果、「それは可笑しいよ」と言われる。可笑しい個所を教わって、やっと気が付く人がいるのです。これは可笑しいなと思った時点から6ヶ月、結んだ時から6ヶ月以上過ぎていてもいいのです。だけれど、結んだ時から5年半位経って「あれは可笑しかった」と言う。これは駄目です。だから、思い付いてから6ヶ月、最大で契約を結んでから5年の間にとなっています(消費者契約法第7条1項)。

 これは「民法」(第126条)で定めている期間と比べると、非常に短い取消し期間です。「民法」では思い付いた時から5年です。それから、その契約を結んでから20年。つまり、消費者契約の関係については迅速に処理して下さい。「民法」上の5年から20年というのは、そういう契約を取消す場合の事例が少ないのです。逆に消費者契約の場合については、多数事例もあり、また「消費者契約法」で100%保障されている。「消費者契約法」では「取消し事由」が簡単なのですからどんどん早く敢えてやってくれということです。

 そういうことで、「取消し」の行使期間は6ヶ月間。大事なことは、気が付いてから半年以内に契約事項の「取消し」をしなければいけないということです。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 6

2008年05月22日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効 (消費者契約法第8条)

 

 それはどういうことなのかというと、契約書の中に消費者に不利益なことが書いてある場合について、その条項毎に「無効」にする。凄いなという話なのです。お互い納得して書いたのに、納得して判子を押して契約を結んでいるのに法律の方で、こういうのは「無効」だ、この部分は「無効」だと、バサバサ切っていってしまう。これは先程言いましたように、「取消し」をする場合には内容証明を出さなくてはいけない。そうしないと、「取消し」の気持ちが相手に伝わらない。だけれど契約書の中身の内容、中身の条項について「無効」という場合については、それが適用されるその時に、これは「無効」だという異議の主張です。気が付いてから6ヶ月の間に「あれは無効だ」「この契約は無効だ」と言うのとは少し違うわけです。

 
    損害賠償責任を免除する負責条項の無効
 では、中身の「無効」とはどういうことか、これは非常に大事なことです。貸主がわざと故意に、或は貸主に重大な過失があり、借主に迷惑を掛けた場合、それでも一部しか責任を負いません。そういう故意とか重大な過失がある場合について、僅かしか責任を負いませんでは非道過ぎる。それに関して、貸主は全部責任を負わなければならない義務がある(消費者契約法第8条2項・4項)。

     
    不法行為責任の全部及び一部免除条項の無効 事例
 それから、次に不法行為(民法の場合は709条)についてです。契約違反の事例は沢山ありますが、不法行為については余り事例が見付かりません。例としては、家主が、自分の家の屋根を修理するために、貸しているアパートの屋根に乗り屋根が壊れて、雨漏りがする。それを、知らん顔している。これを不法行為と言います。そういうものについて責任を負いません。これはさすがに駄目です。そういうことをして、事業者に何らかの過失があるのに、責任を負いませんというのは駄目なのです。不法行為の時に、一切責任を負いませんというのは「無効」です(消費者契約法第8条3項)。

 それから、故意とか重大な過失がある場合について、少ししか責任を負いません。これも駄目です。全部責任をとらなければなりません(消費者契約法第8条4項)。

    全部免除条項の無効 事例
 それから貸した物件に少し問題がある。例えば、台所のガスレンジが壊れていて、借主がガス中毒を起こした。そういうことでは困るのですが、そういうことについては、本来損害賠償で責任を負わなくてはいけない。ところが、何かあってはいけないと家主は、そういう何かあった時のことについて「責任を負いません」と書いて措く。そういうのも「無効」です。

 少し判りにくい事例ばかりやってまいりましたけれど、契約書の中には細かくこのような条項が盛込まれています。「消費者契約法」の観点で見ますと家主が責任を免れようとしている条項は、殆ど消費者契約法第8条違反に当たり「無効」にできます。

 家主というのは、家賃収入・地代収入が丸々懐に入って、自らは出来る限りお金を支出したくないというのが原則ですから修繕義務を果さない。何らかの名目で、責任を負わなくてはいけないものについて、責任を負わないようにしようと裁判で頑張ります。しかし、それは、この「消費者契約法」の観点からみて「無効」です。

 ですから、そういう責任逃れの条項があっても、損害を受けた借主側の方としては大威張りで請求する。家主の方は「契約書の中に家主は責任を負わないと書いてある」と言うでしょうが、借主は「消費者契約法の第8条に拠って、その契約は『無効』なのです」と言えるのです。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 7

2008年05月21日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

    違約金条項の無効 (消費者契約法第9条)

 


 今迄は、事業者即ち貸主側の方が責任を負わないようにするという話なのですけれど、今度は、貸主が借主から沢山のものを取り上げてしまおうというものに関して、それは無効だとする事案です。
 こっちの方の情報は、結構事例とすると沢山あります。平均的な損害の賠償、これだとこれ位が妥当だという額を超えたものを契約書に並べて、請求しようと書いてある条項。


    解除の場合 事例1 明渡しの遅延損害金
 一番簡単なのは、契約が終了して、何らかの契約を合意解除して、契約書などに書いてなくていいですが、契約の終了から明渡し完了までの間、従来家賃額の倍額を違約金として払わなければいけない。このような特約条項の例は、世間では非常に多い。つまり借主の方に損害違約金を定めて、それを取り上げようという条項なのです。

 これは今までは、有効だったのです。前に劣悪な判例がありまして、「契約書の上で今までの家賃の倍額を払わなくてはいけないと定めた時に、判子を押している。お互いにそれを納得しているのだから、それは仕様がない」となっています。

 だけど、これからは違うのです。つまり、今までの家賃、これは平均的な使用料という意味だとすれば、倍額というのは平均的な使用料を超えてしまうのです。そうすると、従前の家賃の額を超える部分の差額は「無効」になる(消費者契約法第9条1項)。

 ですから契約書に書いてあっても、同じ月額家賃額を払えばいいのです。これは脅かしのためによく書いてある事例なのです。それは、これからは脅かしにならないということなのです。

 ただ、その今までの家賃の額があまりにも異常に低くて、普通ここを貸せばもう少し高いという場合は仕様がない。必ず、従前の家賃でいいのだというのではなく、それ相応の額以上を超えてはいけない。ですから今までの家賃でいい。借主はそれ以上のものは払わない。敷金から、それを引いてしまわれた場合は、返して貰えばいい。それは返して貰って当然です。


    解除の場合 事例2 原状回復費用の負担
 それからもうひとつ、原状回復でハウスクリーニングというのは畳の総取り替えとか、壁紙の全面張替とか色々あります。それは「退去時の原状回復費用は借主の負担とする」とか、「ハウスクリーニングは借主の費用負担で行う」と特約で定めてあることが多い。

 それは「消費者契約法」で考えていくと引っ掛かるのです。つまり契約期間が終了した時、「それについて取り決めがあるので、原状回復費用を払え」と貸主が言ってきた。その請求金額が本来の平均的には損害額を遥かに超えている。「通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損・損耗は勿論、原状回復義務の対象にならない」(東京地裁判決平成6年)。仮にそうではなくても、ちょっと焦がしてしまった、焦がした程度の損害はいいのではないか。家主が自分から新しくするリフォーム費用、そういうものまで原状回復費用として取られてしまう。これは「消費者契約法」に拠り大威張りで「支払わない」と言える。

 今までは、建設省の基準(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」国土交通省)があってどうのこうのという話で、今まで判例が有れば認められる。例が有るの無いのという七面倒臭いことだったわけなのです。特約条項に絡む敷金返還問題・原状回復義務問題が、消費者契約の観点では「消費者契約法」のこの条項(消費者契約法第9条1項)で済んでしまう。実にすっきりしている。


 
   《参考》修繕・原状回復特約がある場合
 賃貸借契約においては、賃貸目的物の通常の使用収益に伴う自然の損耗や汚損について賃借人が積極的にその修繕や取替えの義務を負担し、あるいは、賃貸目的の返還にあたって、自然の損耗や汚損についての改修の費用を負担して賃貸当初の原状に復する義務を負っていたとは認められない。したがって、仮に賃貸人が賃貸当初の原状回復のためにこれらの費用を支出したとしても、それを賃借人に請求し、あるいはそれを敷金から差し引くことは許されない。(京都地判 平成7年10月5日判決

 
   履行が遅れた場合 事例 滞納賃料の遅延損害金
 先程も言いましたが事業者、事業でやっている借家の場合については、従前の条項で金銭的損害・違約金を約束した場合、「消費者契約法」の関係で条件によっては「無効」ということになります。

 それから、契約の中で家賃を払わない時に年3割の利息を付ける、遅延損害金を付けて返せと書いてあることがあります。でもこれについてどうなのかというと、お金の支払を定めるようなものについて年14.6%を超えるものについては、この超える部分は「無効」なのです。当事者間で年3割超えることをお互いが納得しているのだからいいのではないかというのは通らない。一方的にそういう数字がある場合についていうと、それは一部超過部分が無効となります。これは結構大事なことです。14.6%という数字をしっかり覚えておい下さい。

 何故14.6%なのかということですが、「利息制限法」と関係があるのです。他の法律との絡みもあって、14.6%という数字が決められたのです。

 借地契約・借家契約のお金の絡む契約関係の中で、これは非常に大きな影響があります。経済企画庁の説明事例(経済企画庁国民生活局消費者行政第一課編「逐条解説 消費者契約法」)の中の、[事例9-6]に「毎月の家賃が70,000円、当月20日までに支払うものとする。前記期限を過ぎた場合には1ヶ月の料金に対して年30%の遅延損害金を支払うものとする。」と、先程の契約内容を含んだ事例があります。これは年14.6%を超える部分について、「無効」となる(消費者契約法第9条2項)。しっかりと『365分の何日か×14.6%』を計算してその分については減算する。

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


借地借家と消費者契約法 8

2008年05月20日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 消費者の利益を一方的に害する条項の無効 (消費者契約法第10条)

 そのようにして契約条項の中で事業者の方の責任を軽減するもの、消費者の方の責任を重くするもの、これについては「無効」にします。それを一寸、この後の話しの中に出てきますので言っておきますが、全部免除しますというのではなく、事業者が「一部を負担します」と言って逃れる。これは、直接は「無効」に結びつかない。これは先程の条項(消費者契約法第8条1項・3項)に当たらないのです。だけど、そのままにすれば、例えば全ての責任を免れるというのは先程も出てきましたが問題があります。

 しかし、100の内の99免れて1だけ責任を負いますという場合については形式的には可能になってしまう。けれども、そういう酷いのを見逃してしまうのは可笑しいのです。そういう意味で、別の形でそういうのを問題にしています。別の形の方式で、消費者の利益を一方的に害する条項は「無効」にします(消費者契約法第10条)。

 ここが非常に大事なところです。先程の「99は逃げます1だけ責任を負います」というのは矢張り消費者の利益を一方的に害している。これは、普通は民法の1条の2項「信義則」の基本原則に反すると言われているものです。だから、直接的に無効の条項(民法第1条2項「信義則」)に当たるもの、それは勿論当然ですが、直接的に無効の条項に当たらなくても、それはどうも可笑しいというものについては、消費者の利益を一方的に害する条項に当たるのだということで「無効」になります(消費者契約法第10条)。

 では、消費者の利益を一方的に害する基準は何かということで、基準というか標準というものを制定しなければいけない。その基準になるものというのは、民法上で「普通であればこういうことになります」と書いてあるわけです。例えば「損害が発生すると、それと因果関係のある範囲の損害については、損害賠償をしなくてはいけない。それ以上のものは損害賠償する必要が無い」と普通書いてあるのです(民法第416条1項)。

 それで、それだけでは面白くないから、事業主・貸主側とするともっと厳しい要求をしたり、それを排除したりする。文章に定めているものを排除して、もっと自分の利益を上げることができるものに作り直す。それは、お互い同士納得していればいいと今まではなっていた。

 だけど、今度の「消費者契約法」では違います。それは事業主の方に一方的に有利な、消費者が誤解するような言い方をすると「無効」になりますよと推定してしまう。

 民法上の定めでは任意規定と今まで言われていて、それは特約があれば排除できるということなのです。けれども、排除するのはその内の何をするのかといったら、元の民法上に定めている任意規定です。このように任意規定といったものが強行法規化する。強行法規化して、事業主に有利な特約条項で消費者契約法第10条に違反するものに対して、それは全部駄目、「無効」になります。

 ですから、特約条項は一方的、強制的に削られて、その結果法律本来の条項だけになってしまう。つまり「借地借家法」の中で強行規定―「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効にする」(第30条)と書いてある。「消費者契約法」第10条は「借地借家法」の「強行規定」と同様に、消費者に不利益な条項を、一方的に「無効」にしてしまうのです。


 
    《参考》原状回復特約の有効性
 自然損耗の回復費用を負担させる条項(原状回復特約)は賃貸借契約の本質に反し、借主に不当な負担をさせるものであること、借主が負担すべき額を予測することが困難になるおそれがあること等から、このような条項は、法10条の信義則に反し消費者の利益を一方的に害するものとして無効と解されるべきです。したがって家主が自然損耗の回復費用の名目で敷金を返還しないとすることは許されず、消費者である借主は、家主に対し、敷金を返還するよう請求できますし、家主に追加金を払う必要はないと解されます。(「Q&A消費者契約法」ぎょうせい142頁より)

 
    「消費者契約法」は借地・借家人のための強力な武器になる
 以上述べましたように、「消費者契約法」の施行によって、これまで営々と貸主側がなんとか儲けよう、更に利益を上げようと張り切ってきたものについて全面的に見直さなければならなくなっている。

 全国の賃貸住宅の家主、或は地主家主協会、その機関紙とかが、いつも新聞の下の欄に広告を打っています。「こうやると利益が上がり、こうやっていると責任を免れる」とか、はっきりとそういうことばかり書いてあります。

 あれは要するに、こんな特約を使って上手くいっていると書いてあるのです。だから逆に我々は、そういうのを読むと、こんなことをして儲けているのだなと、相手の情報が解ってくる。それを「消費者契約法」に反していることなのですと、追求していくわけです。

 このように、「消費者契約法」というのは、我々が色々な運動をやる上でも武器になりますので、具体的に今後契約を結ぶ過程において、或は契約の中身の問題について、充分吟味して「消費者契約法」の観点に立ち、今まで以上に注意して、対応しなければいけないということです。
 
 

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


消費者契約法 9

2008年05月19日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

参考資料》「消費者契約法」
 
         消費者契約法
               (平成12年法律第61号)
目次
第1章            総則(第1条~第3条)
第2章            消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第4条~第7条)
第3章            消費者契約の条項の無効(第8条~第10条)
第4章            雑則(第11条・第12条)
附則
 
第1章 総則
 
 (目的)
第1条
 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 
  (定義)  
第2条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。

 2  この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。

 3  この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
 
  (事業者及び消費者の努力) 
第3条 事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。

 2  消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。

 
第2章 消費者契約の申込み又はその 承諾の意思表示の取消し 
 
 (消費者契約の申込み又はその承諾の 意思表示の取消し)  
第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結のついての勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 (1)重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認

 (2)物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

 2  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

 3  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 (1)当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行なっている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から退去しないこと。

 (2)当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

 4  第1項第1号及び第2項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。

 (1)物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

 (2)物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

 5  第1項から第3項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
 
 (媒介の委託を受けた第三者及び代理人)
第5条
 前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)をし、当該委託を受けた第三者(その第三者から委託を受けた者(2以上の段階に委託を受けた者を含む。)を含む。次項において「受託者等」という。)が消費者に対して同条第1項から第3項までに規定する行為をした場合について準用する。この場合において、同条第2項ただし書中「当該事業者」とあるのは、「当該事業者又は次条第1項に規定する受託者等」と読み替えるものとする。

 2  消費者契約の締結に係る消費者の代理人、事業者の代理人及び受託者等の代理人は、前条第1項から第3項まで(前項において準用する場合を含む。次条及び第7条において同じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者及び受託者等とみなす。
 
 (解釈規定)
第6条
 第4条第1項から第3項までの規定は、これらの項に規定する消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治29年法律第89号)第96条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
 
 (取消権の行使期間等)
第7条 第4条第1項から第3項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行なわないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。

 2  商法(明治32年法律第48号)第191条及び第280条ノ12の規定(これらの規定を他の法律において準用する場合を含む。)は、第4条第1項から第3項までの規定による消費者契約としての株式又は新株の引受けの取消しについて準用する。この場合において、同法第191条中「錯誤若ハ株式申込証ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシテ其ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由トシテ」とあり、及び同法第280条ノ12中「錯誤若ハ株式申込証若ハ新株引受権証書ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシテ其ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由トシテ」とあるのは、「消費者契約法第4条第1項乃至第3項(同法第5条第1項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ因リ」と読み替えるものとする。

 
第3章 消費者契約の条項の無効
 
 (事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第8条
 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

 (1)事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

 (2)事業者の債務不履行((当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

 (3)消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項

 (4)消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項

 (5)消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項

 2  前項第5条に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。

 (1)当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

 (2)当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

 
 (消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

 (1)当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を越えるもの 当該超える部分

 (2)当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

 
 (消費者の利益を一方的に害する条項の 無効)
第10条 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。


第4章 雑則
 
 (他の法律の適用)
第11条 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。

 2  消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 (適用除外)
第12条 この法律の規定は、労働契約については、適用しない。
 
 
 
 
附 則 
 
この法律は、平成13年4月1日から施行し、この法律の施行後に締結された消費者契約について適用する。
 
 
 

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


定期借家制度で国交省と懇談

2008年05月16日 | 定期借家・定期借地契約

 借地借家法改悪反対全国連絡会は、定期借家制度導入後の現状と課題や住宅政策について国土交通省と4月21日午前10時30分から1時間半ほど懇談した。国土交通省から住宅局住宅総合整備課の三浦賃貸住宅対策官が応対した。

 規制改革会議の「借家制度の改善」の答申については、「借地借家法の所管は法務省であり、国土交通省は住宅政策として活用しやすいようにPRし普及させる」と述べ、「議員立法なので国会の動きをホローしていく」と国交省の役割について語った。

 全国連絡会の代表は、定期借家制度が借家人の追い出しに利用されたり、「再契約可」と契約書に書いてあっても期間満了で借家人が追い出されている実態など指摘し、同制度について借主側の実態を調査すべきであると訴えた。

 また、定期借家推進協議会が平成12年3月1日以後に契約した居住用の普通借家契約については、当事者が合意により定期借家契約への切替は可能であるとの解釈をしている問題については「グレーゾーンの問題で法務省の見解を聞いてみたい。当時の国会の審議を重く受け止める必要がある」と回答した。定期借家制度は、特別措置法の附則3条で法施行前にされた建物賃貸借の契約当事者が合意の上でも普通借家から定期借家の切替は禁止されている。

 

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


少額訴訟で敷金返還を (東京・荒川区)

2008年05月15日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 事務所の敷金返還で荒川借組へ相談にきた渡邊さんの裁判結果の続報を取材した。

 前回の記事を要約すると、昨年12月に14年間いた港区赤坂のデザイン会社を移転。その時借室していた敷金返還にともないビルオーナーから原状回復費として28万円を敷金から差し引くという敷金預かり金精算書を受取り、この金額に納得できない渡邊さんは荒川借組のアドバイスで少額訴訟をおこし、その裁判が1月29日に決定した時点までの内容だった。

 では、訴訟の経緯を聞くと『長く借室してたのでご祝儀のつもりで先方の主張する原状回復費内の床パンチカーペット張り替え代だけ認めて後は認めないと言う内容証明を出しました。ところが、先方の代理人の弁護士から「多少上乗せでどうか」と連絡があり、次に「4万円上乗せ」の提案を断り交渉は決別』。

 裁判はどうか、『相手が弁護士なので心配でしたが借組から「心配いらない‥」といわれました。結果は賃借契約内容にある原状回復、家賃の1ヵ月分をのんだが調停不調』。『2月29日に証拠人調べでさらに2万円程の値引きをのんで和解成立』。

 感想は、『裁判官は専門用語が多く面喰らいました。原告に「パンチカーペットって何?」を聞いてきたのにはビックリ、相手が弁護士だとその顔を立てることも解りました。』と、12月から4ヵ月の経験談を語った。

 

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


更新料として土地価格の5%を要求 (東京・豊島区)

2008年05月14日 | 更新料(借地)

 豊島区西池袋に住む大川さんは親の代から借地し、30年前に堅固な建物に建替え、契約更新を行った。

 今回の更新に際して、地主は不動産業者を代理人として更新料(坪あたり12万円)と賃料の値上げ請求を行い、併せて契約内容に「①増改築に際しては地主の承諾が必要。②更新に際しては合意更新、法定更新にかかわらず相当金額の更新料を支払う。」との提案をしてきた。契約書には更新料を支払うとの約定もないので、まず更新料を支払うとの法的根拠とその算出根拠を示すように通知した。


 代理人の不動産会社は「更新料支払いの根拠はない。慣習として存在している。支払わないと建替えとか借地権の譲渡のときに困りますよ。算出根拠は、土地の価格の5%が弁護士と不動産業者の見解である」と強弁した。

 5月末の期間満了前に決着をつけないといけないと考えていた大川さんに、組合では「期限満了までに合意更新が出来ない場合は、法定更新し、じっくり話合うことできること。またこの契約は、増改築については地主の承諾を必要とするという記載がない契約であること。借地権の譲渡も地主の承諾しなければ、裁判所の承諾があれば出来ること」などを説明した。組合の説明を聞いた大川さんは「じっくり交渉していくことにしました。借地権も大事な財産ですので」と話した。

 

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


【判例】 損害賠償請求(借家の明渡) 東京簡裁 平成18年3月24日判決

2008年05月09日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介


 原告が本件貸室を明け渡したのは被告の強制・強要によるものか,原告の意思に基づくものかが争われた事案

平成18年03月24日東京簡易裁判所
東京簡易裁判所平成17年(ハ)第12242号損害賠償請求事件


判     決
主     文

原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

 第1請求
 被告は,原告に対し,140万円を支払え。

 第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨

 (1)  原告は,平成16年12月30日,被告から,東京都中野区ab-c-de号室(以下「本件貸室」という。)を,賃料月額5万2500円,管理費月額2500円,毎月末日限り翌月分を支払うとの約定で賃借(以下「本件賃貸借契約」という。)し,居住していた。

 (2)  原告は,平成17年5月迄の賃料等はきちんと納めていたが,平成17年6月に入り賃料の支払いが1週間遅れていたものの,その理由については5月20日ころには被告に話し,理解してくれていたと思っていたところ,同年6月7日の早朝,突然,被告が本件貸室に来て,鍵と契約書を渡せ,直ちに荷物を整理して出て行けと怒鳴り散らした。

 (3)  原告は,被告の余りにも激しい態度に抵抗ができず,夜の10時ころまで荷物の整理にあたったが,今後の生活に不安を抱き,被告方を訪ね,部屋を貸して欲しいと申し出たが,被告の妻から,被告は寝てしまった旨言われ,会わせてもらえないまま,本件貸室から追い出された。

 (4)  原告は,前記強制的に被告から追い出されたことによる債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として,下記アからオまでの合計140万円の支払を被告に求める。

  ア 精神的苦痛に対する慰謝料として5万円

  イ 路上生活を余儀なくされ,夜の寒さによる風邪と疲れらから内臓疾患となったことの治療費として5万円

  ウ 路上生活において,深夜両足を極度に冷やしたため末梢神経を痛めたための治療費として10万円
  エ 追い出しにより,テレビ,冷蔵庫,電子レンジ,衣類などの生活用物品を失った被害弁償として10万円,パソコン,製図用具,専門書籍などの仕事用物品を失ったことによる被害弁償として10万円

  オ 路上生活に陥り,体調をくずし,予定していた仕事にも赴くことができなかったことによる生活保障として25万円の4ヶ月分100万円


 2 被告の主張の要旨

 平成17年4月30日,原告から,本件賃貸借契約を解約し,5月10日に明渡すとの解約通知を受け,5月分の賃料と敷金を相殺し,残りの管理費2500円だけを支払うとの合意に基づき管理費2500円を支払ってもらった。

 本件賃貸借契約は,前記合意に基づき平成17年5月末日をもって合意解約により終了したが,原告がその後も立ち退かないので,6月7日に被告に対し明け渡すよう言いに行ったが,強制的なことは何もしていない。解約及び移転は,原告の意思に基づきなされたものである。なお,被告は現在88歳の病気持ちで怒鳴り散らすといったようなことができる状態にない。


 3 争点
 原告が本件貸室を明け渡したのは被告の強制・強要によるものか,原告の意思に基づくものか。

 第3 当裁判所の判断

 1 証拠(乙第1号証ないし乙第3号証,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実を認めることができる。

 (1)  原告は,平成16年12月,被告との間で賃貸借契約を締結し,本件貸室に居住していたが,勤めていた会社からAでの現場監督の仕事を指示されたことから,本件貸室から引っ越すこととし,平成17年4月30日,本件賃貸借契約を解約し,翌月5月10日には明け渡す旨の解約通知書を自ら作成し,被告に提出した。

 (2)  これを受けて被告は,同年5月2日ころ,5月分の賃料5万2500円については預入敷金5万2500円と相殺するので,5月分の管理費2500円だけは支払ってくれと原告に申し出たところ,原告は,これを承諾し5月分管理費2500円を支払った。

 (3)  その後,原告は,明渡予定日の5月10日を前にして,勤め先から,現場監督の仕事が延期になるとの連絡を受けたことから,連絡を受ける都度,移転が5日延びる,10日延びるということを被告に伝え,被告の了解を受けたが,5月20日ころになって勤め先から,さらに仕事が延びそうだと言われたことから,5月24日ころ,さらに明け渡しが延びることを被告に伝えた。

 (4)  その後同年6月7日,朝7時過ぎころ,被告が原告方を訪ね,原告に対し,鍵と契約書を返還して直ぐに出て行くようにと求めた。これに対し,原告は,その後も住んでいていいと被告は言ったではないかとか,6月分家賃は6月10日には払うと言ったではないか等と言ったのに対し,被告は,お金を払わずに居座ろうとしているのではないか等とのやり取りが30分程あった後,被告は,原告から鍵の返還を受け,片付けが済んだら連絡するよう原告に告げて帰ったが,その間互いに手をあげるようなことは全くなく,また,被告が荷物の搬出に着手する態度を示したこともなかった。
  なお,前記6月7日当時,原告は、○○歳,被告は××歳であった。

 (5)  その後,原告は,すぐ出ることになったことについて悩んでいたが,お昼頃から明け渡しのための片付けを始めたが,荷物の処分等で時間がかかったことから,夕方6時ころ,被告方を訪れ,片付けにもう少しかかる旨告げた後,部屋に戻り片付けを続け,夜10時頃にはこれを終えた。

 (6)  その後,原告は,片付けが済んだことを伝えるために被告方を訪れ,応対した被告の妻に,片付けが済んだことを伝えるともに,もう一度貸してもらうことをお願いしようと考え,被告との面会を求めたが,被告の妻から被告はもう寝ていると言われ応じる態度を示さなかったことから,被告に出てくるよう大きな声をあげたところ,被告の妻は,どうしよう,どうしようと言ってこれに動揺し,被告も恐怖心を覚え出て行かなかった。

 2 以上の認定したところによれば,被告は,平成17年4月30日,原告から明渡し日を5月10日とする旨の解約通知を受けた後,5月2日ころには,原告との間で,5月分の賃料を敷金をもって充当することで本件賃貸借契約を5月末をもって終了することで当事者間において合意していたものと認められるところ,原告は,その後,仕事が延びることになったとの連絡を受ける都度,被告に対し明渡日が延びることを伝えていたことが認められる。

  この点原告は,明け渡しの時期が2,3ヶ月延びることを伝え被告も了解していた旨供述するが,前記認定したところと弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,原告から仕事の都合で明け渡し日が5日延びる,10日延びるということを聞かされ,さらに5月24日ころにも延びるという話を聞かされたことから,5月末を若干過ぎることになることについては,やむを得ないものと考えていたことがうかがえるものの,原告が主張するような2,3か月の猶予期間を与えたとか,6月以後の賃料の支払いを合意し,新ためて原告との間で賃貸借契約を締結したことを示す証拠はなく,この点の原告の主張は採用しえない。

 3 原告は,6月7日早朝,突然,被告が原告方を訪れ,直ぐに出るよう怒鳴り散らし,原告の言い分に一切耳を貸さず無理矢理追い出された旨供述する。確かに,被告が同日早朝,原告方を訪れ,直ぐに荷物を片付けて出るよう強い口調で述べたことはうかがえるが,前記認定した事実のほか,弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,原告からの解約通知を受け,5月分賃料は既に敷金をもって充当精算していたところ,原告から仕事の都合で明渡日が延びるとの連絡を何回か受け,5月末日を過ぎることについてはやむを得ないものと考えていたものの,その後約1週間たっても明け渡しがなかったことから6月7日に至り原告方を訪れ,原告に対し,強い口調で荷物を片付けて出るよう求めたことが認められるが,原告は,その後鍵を被告に渡した後,昼ころから片付けを始め,夕方6時ころには,片付けはもう少しかかることを被告方を訪れ告げていること,その後,片付けを終え,夜10時頃には,片付けが終わったことを告げるために被告方を訪れていることからしても,結局,原告は,6月7日においてその後の居住継続の猶予を願い出たものの,被告に応じてもらえなかったことから,自ら荷物を片付け明け渡したもので,被告において原告の占有を侵害したとか,それに値する程の強要行為があったとまでは認められない。

 4 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく原告の請求は理由がないので,主文のとおり判決する。


    東京簡易裁判所民事第2室

             裁判官  福本 智公

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


【判例】 配水管の修繕費立替金等請求事件 (東京簡裁平成19年12月10日判決)

2008年05月07日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介


 東京簡易裁判所 平成19年12月10日判決言渡

 東京簡易裁判所平成19年(少コ)第2729号 立替金等請求事件

 

少 額 訴 訟 判 決

主             文

1 被告は,原告に対し,19万8500円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

 第1 請 求

  主文同旨

 第2 事案の概要

 原告は,Aマンション1002号室の所有者であったところ(甲2,3,乙2,3 ,平成16年9月14日に同マンション8階の802号室及び9階の)902号室に水漏れが発生した。同水漏れの原因は,同マンション1002号室の床下配水管(以下「本件配水管」という。 )からの水漏れが原因であることが判明した(甲3)本件配水管は,同マンションの共用部分に存在するので,被告に修繕義務があるにもかかわらず ,(甲1) 被告は修繕を行わないため,原告が被告のために本件配水管の修繕を行い,平成16年11月15日に修繕業者にその費用として金15万7000円(甲4)を,平成17年7月7日にその費用として金4万1500円(甲5)の合計19万8500円を支払った。よって,原告は,被告に対し,同費用合計19万8500円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。


 第3  主たる争点

 本件配水管の亀裂が存した部分は,原告の専有部分であったか。共用部分であったか。

 第4  理由の要旨

 1  本件マンションの管理規約 使用細則( 甲1) 第7条2項(1) によれば 「天井, 床及び壁は, 躯体部分を除く部分を専有部分とする。」 と定められている。

 2  本件配水管は,本件マンションの902号室の天井と1002号室の床下との間の空間に存在する配水管で,床下から約5cmのところに亀裂が入っていたことが原因とする水漏れであったものと認められる(甲6 )。

 3  そこで判断するに,本件マンションの管理規約,使用細則第7条2項(1)では天井までが専有部分とされるが,天井裏は専有部分とは解されないこと,床は専有部分とされるが,床下は専有部分とは解されないところ,本件配水管の亀裂があった部分は,902号室の天井裏であり,かつ,1002号室の床下の空間であると認められることから,902号室及び1002号室のいずれの専有部分でもなかったと解される。本件マンションの管理規約,使用細則第8条によれば 「対象物件のうち共用部分の範囲は,専有部分を除く部分とする。 」と定められ,また,同第18条によれば「敷地及び共用部分等の管理については,管理組合が責任と負担においてこれを行うものとする。 」と定められていることからすると,本件配水管の亀裂した箇所は共用部分であり,その修繕義務は被告がこれを負担するものと認められる(なお,天井裏の排水管についてはその共同性から共用部分とした裁判例として,東京地判平成8年11月26日判例タイムズ954号151頁。天井裏の排水管の枝管について,これを上の階の部屋から点検,修理することが不可能であることなどを理由に,区分所有者全員の共有部分に当たるとした判例として,最高裁判平成12年3月21日判例タイムズ臨時増刊1065号56頁 参照)。

 4  原告主張の請求原因事実は 関係各証拠及び弁論の全趣旨により認められる。

 5  よって,原告の請求は理由があるので,主文のとおり判決する。


               東京簡易裁判所民事第9室

                      裁 判 官   古 木   俊 秀

 

東京・台東借地借家人組合

無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
土曜日日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。