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都市再生機構(UR)、賃貸5万戸削減 (読売)

2007年12月29日 | 住宅・不動産ニュース

  都市再生機構、賃貸5万戸削減

    18年度までに 住民、自治体に説明へ


 独立行政法人・都市再生機構(UR)は26日、所有・管理する団地などの賃貸住宅の戸数を現在の約77万戸から2018年度までに72万戸に削減する計画を発表した。団地の老朽化や将来の人口減少を見込んだ措置で、48年ごろには現在の7割程度まで減らす。1955年に日本住宅公団として発足し、住宅難を解消するため全国で団地の建設・運営を担ってきたURが戸数の削減に踏み切るのは初めてだ。

 計画では約77万戸について周辺の人口、立地条件などを考慮し、約20万戸を対象に、建て替えや地方自治体、土地所有者への譲渡などの再編を行う。このうち約8万戸を削減する一方、建て替えで引っ越す人向けに3万戸を新設する予定で、削減数は差し引き5万戸となる。

 再編対象は、1960年前後に建てられて老朽化した団地や、交通の便が悪かったり、人口減で空室率が上昇し採算がとれなくなったりした団地で、URは年明けから住人や関係自治体などへの説明を始める。

 現在、入居世帯の半数が年収450万円未満で、65歳以上の高齢者がいる世帯は35%に上る。募集時の優遇策によって、高齢者や子育て世帯が重点的に入居できるようにするほか、転居を強いられる住民には、転居先の確保や引っ越し代の支払い、家賃減額などを行う。

 URの所有・管理から切り離される5万戸に、そのまま居住できるかどうかは微妙だ。地元自治体に受け入れてもらう団地は、1戸当たりの年間赤字額が平均16万円に上り、財政が厳しい地方自治体との交渉は難航が予想される。土地所有者へ返還する団地も、所有者が団地運営を引き継ぐかどうかは不透明だ。

 全面建て替えが計画されている大規模団地(1000戸超)は次の通り。

 ▽赤羽台(東京都北区)▽多摩平(同日野市)▽ひばりが丘(同東久留米市)▽東久留米(同市)▽豊四季台(千葉県柏市)▽浜見平(神奈川県茅ヶ崎市)▽草加松原(埼玉県草加市)▽上野台(同ふじみ野市)▽浜甲子園(兵庫県西宮市)▽鶴舞(奈良市)▽若久(福岡市)

(2007年12月27日 読売新聞)

 

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地主が更新料を要求 (東京・台東区)

2007年12月28日 | 更新料(借地)

 台東区千束で永年雑貨商を営む野口さんは16坪を借地している。先月末に3軒先に住む地主に地代を持参した折り、突然地主から「来月10日に契約が満了になる。契約を更新するのであれば更新料として500万円支払って頂きたい」と言われ、慌ててしまった。家に帰り、家族と更新料について話し合った。だが昨今の景気動向では、とても高額な更新料を支払うことは出来ない。

 困り果て、近所の人から借地借家人組合があることを知り早速組合に相談し、加入した。組合の説明では、野口さんの借地契約書には「更新料支払特約」が書き込まれていない。このように更新料の支払い約束の無い場合は、更新料の支払義務がないことは判例上確定している。従って更新料を支払わなくても借地の更新は問題なく出来る。また建替えも組合の指導に随えば問題なく行えるという説明であった。

 後日組合が準備した「借地法」4条に基づく「借地契約の更新請求」を地主に配達証明付内容証明郵便で通知した。

  借地法4条は借地権が消滅した場合でも借地人からの請求によって一方的に更新を認め、地主は原則としてこれを拒めない。借地契約は地主と合意しなくても前の契約と同一条件の借地権が設定されたものとみなされ、木造建物の場合は借地期間20年と法定される。契約書が無くても借地契約は自動更新される。

 「次回、地主宅に地代を持参する時は地主に更新料は法定されていないし、判例上も支払義務がないことは確定していることを説明し、更新料支払い拒否の意思を明確に伝える積りである。今ままでは地主の要求に言われるままに応じて来た。これからは借地法を勉強して根拠の無い要求には一切応じない決心を固めた。これからは組合とともに頑張りたい」と語った。

 

 

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【Q&A】 抵当権設定後の建物を賃借しているが競落人から明渡請求を受けている

2007年12月27日 | 建物明渡(借家)・立退料

 (問) 平成15年に2年契約で店舗を借りた。2年後の更新は家賃値上げで揉め、期間満了後の継続使用による法定更新となった。平成19年4月に競売になり、11月に競落した買受人から店舗の明渡請求をされている。貸主と不動産業者は契約時に抵当権が設定されていることを一切説明していない。そのことを知っていれば設備費に300万円を投入していなかった。この300万円の損害を貸主と不動産業者に損害賠償請求が出来ないか。また、200万円の保証金返還請求は誰にすればいいのか。



 (答) 「短期賃貸借の保護」抵当権の登記後に抵当不動産上に設定された利用権は、抵当権が実行されると覆滅するのが原則である(民法177条)。しかし、利用関係が抵当権者に損害を及ぼすものでない限り、これを覆滅させないことが望ましい。

 そこで利用権が602条の短期賃貸借(建物賃貸借の場合は3年以内の契約である場合は抵当権の登記後に設定された賃貸借でも、抵当権者や買受人に対抗出来る民法395条)として、抵当権と利用権の調和を図った。だが、平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」により次の条件を満たしていると「短期賃貸借の保護」が継続される。
 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律・平成15年8月1日法律第134条、「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。

 この附則第5条により抵当権設定後の建物賃貸借であっても法律施行前(平成16年3月31日まで)に契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は従来通りの「短期賃貸借の保護」規定が適用される。

 また、その賃借権が法律施行(平成16年4月1日)後に3年以内の契約期間で更新された場合(法定更新された契約の場合)も「短期賃貸借の保護」規定が適用される。

 その後、更新が何度も繰り返されても同様である。即ち、将来的に競売が実行されるまでは、何度でも契約更新が出来るということであり、「短期賃貸借の保護」規定も継続されるということである。

 但し、抵当権実行による差押さえの効力が発生した時以降に期間満了した場合にはもはや更新できないものとされている(最高裁昭和38年8月27日判決)。

 なお、借地借家法26条の規定によって法定更新されてた契約の「期間の定めのない建物賃貸借契約」は、「正当事由」があればいつでも解約できるのであるから民法395条にいう短期賃貸借に当たるという最高裁昭和39年6月19日判決がある。

 相談者の賃貸借契約は「短期賃貸借に関する経過措置」より民法旧395条の短期賃貸借の保護がある契約であるから買受人(新所有者)に対して対抗力がある。

 従って、賃借人の預託した敷金(保証金)200万円は原則として新所有者から返還される。また、賃借人の賃借権は新所有者に対抗出来るので無条件で解約されることはない。新所有者の明渡請求裁判が確定するまでは建物を明渡す必要はない。

 登記簿の調査義務に関して、裁判所は「宅建業者は賃貸人に確認するのはもとより、疑問のある場合は登記簿を閲覧するなどして差押登記等の有無を確認し、賃借人に不測の損害を被らせないように配慮すべき義務がある」(東京地裁平成4年4月16日判決)として損害賠償請求を認めている。

 また、熊本地裁平成8年9月4日判決では、宅建業者の重要事項説明(宅建業法35条1項1号)に差押登記の有無も含まれるとして不動産業者の差押登記の調査説明義務違反を理由損害賠償責任を認めている。貸主に対しては、建物が差押えられている事実を借主に伝える告知義務違反があったとして不動産業者と連帯して損害賠償の支払を命じている。

 結論、損害賠償責任は貸主と不動産業者にある。また保証金は新所有者から返還される。

 


旧民法
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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借家の明渡調停中に家主が駐車場の解約を突然申入れ (東京・府中市)

2007年12月26日 | 建物明渡(借家)・立退料

 府中市若松町*丁目で、木造スレート葺の居宅1棟約13.5坪を借りているNさんとOさんは、8月に家主の依頼を受けた不動産業者から突然10月末までに明渡すよう通告されて以降、組合から明渡しを拒否する文書を出し、その後の話合いで業者は手を引いてしまった。

 その後、組合立会で家主との話合いの席を設けようとしたが、家主は拒否し、弁護士を代理人に立て10月に建物明渡しの調停を立川簡易裁判所に申立ててきた。

 調停での話合いをすすめているさ中、家主はNさん達を訪ね「甲州街道沿いの道路は閉鎖するので、駐車場契約は解約する。11月1杯までに車を移動せよ」と言ってきた。Nさん達は、車1台分は借家の契約条件に含まれている(別途駐車場料金は支払っている)ので、車の移動はできないと拒否。

 甲州街道側にお茶の伊藤園に建物を建てて貸すことになっているため、家主は自分の屋敷を一部壊して、旧甲州街道に通路を設けた。Nさん達に、その後屋敷の玄関の側に車を移動せよと言ってきたが、それでは車の出入りに不自由と2人とも頑張り、結局家主は「従来通り駐車場を使っていい」と言い出した。

 家主はその日の内に態度がくるくる変わり、2人とも困惑ぎみだが、家屋明渡しの調停についても最後まで頑張る決意でいる。

 

東京借地借家人新聞より

 

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借地は一代限り (東京・府中市)

2007年12月25日 | 借地の諸問題

 府中市紅葉丘に住むYさんは、父親が昨年の11月に他界した。父親は西多摩郡瑞穂町に66坪の土地を借地していて、母親も数年前に亡くなり、Yさん達兄弟3人が借地権を相続することになった。

 Yんを含め兄弟は全員実家を出ていて、現在は空家となっている。瑞穂町の土地の地主はお寺で、借地は9軒あるが皆んなお寺の檀家でお墓もある。借地人9軒は交代で地代を集金し、お寺に納めている。

 ところが、Yさんの父親が亡くなった直後から、地代の集金に来なくなった。Yさん達兄弟は、不審に思いお寺の坊さんに会って尋ねたところ、「借地は一代限りに決まっている。このことは檀家総代との話し合いで決められている」と一方的な返事。

 Yさんは檀家総代にも問い合わせてみると、「(一代限りについて)聞いたことはないし、よく知らない」との話で、どうも坊さんの勝手な作り話であることがはっきりした。坊さんは、Yさん達が実家を出ていることを幸いに、借地の土地を取り上げて駐車場にでもする魂胆のようだ。

 Yさんは、兄弟3人で相談し、親が残した借地権を引継いで守るため、3人の内一番下の弟が実家に入ることを決めている。檀家の借地の土地を取り上げてまで金もうけをしようとする坊さんは許せないと、他の8件の借地人にも団結するよう働きかけをする予定でいる。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 競売で取得した新家主の明渡し請求に従前からの借家人は対抗できるか

2007年12月20日 | 建物明渡(借家)・立退料

 (問) 平成15年から3DKのマンションを借りています。先日、この建物を競売で取得した新家主から「あなたには対抗力がないので法律上強制的に追い出すことができる」と言って、立退きを要求されました。こういう状態でこの先、ずっと借りつづけることができるでしょうか。



 (答)  あなたが平成15年に借りた時に、この建物に既に今回競売の原因になった抵当権が設定されていたのかどうかによって借家人の対抗力の有無が決まります。賃借権の設定と抵当権の設定のどちらが先かによって分かれるのです。

 あなたが賃借した後に抵当権が設定されたのであれば競落した新家主に対抗できるので、従前どおり借り続けられます。

 抵当権の設定の方が先の場合は残念ですが原則として対抗力はありません。
 ただし、民法395条の規定で3年以下の短期契約については、残存期間だけ保護されます(注)。賃貸借契約期間の決め方によって以下の3通りになります。

 (1)契約期間が3年以上の場合
 例えば5年契約の場合は対抗力はありません。5年のうち3年だけ保護されるということでもありません。この場合は新家主と明渡しの猶予期間などで折り合いを付けるほかありません。

 (2)契約期間が3年以下の場合
 この場合は残存期間だけは保護されます。例えば2年契約で契約期間満了まで後1年残っているときは1年だけは借りられますが、それを過ぎると対抗力は無くなります。

 (3)契約期間の定めがない場合
 期間の定めのない契約をした場合や当初は期間を定めたけれども途中で法定更新になり以後期間の定めのない状態になった場合は、競落した新家主の契約解除の請求は、6ヶ月前の通知とか、その建物を自ら使う必要性などの正当事由がなければなりません。

 もっとも、この場合の正当事由の判断は、普通の場合と違いゆるやかにされ、家主有利に判断されます。
 上記(2)と(3)いずれの場合も新家主と、立退料や明渡しまでの猶予期間など相当な明渡し条件で折り合いを付け、和解する事例が多いようです。

 

東京借地借家人新聞より


 

(注)平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。従って、平成16年3月31日までに締結された契約に関しては、現在も短期賃貸借の保護制度は適用されている

 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。
  なお、短期賃貸借の保護を受けている契約の場合、原則的には預託した敷金は新家主から返還されることになっている。 

旧民法
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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【判例紹介】 抵当権設定後にされた長期賃貸借契約が法定更新された場合は短期賃貸借になる

2007年12月19日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 抵当権設定後にされた長期賃貸借契約が法定更新されて期間の定めがなくなったとき短期賃貸借契約となるとされた事例 (東京高裁平成13年6月22日判決、判例タイムズ1077号)


 (事案の概要)
 賃借人は、既に抵当権設定登記がされていた建物を期間5年の賃貸借契約で賃借した。期間5年が過ぎて合意更新もなく法定更新となり、賃借期間は期間の定めのないものになった。その後、抵当権者が競売申立をして、差押さえ登記がされた。競売手続は進み競落されて、建物の買受人が賃借人に対して引渡命令の申立をした。

 東京地裁は、建物賃借権は短期賃借権ではないから買受人に対抗できないとして、引渡命令を発令した。賃借人は、これを不服として、執行抗告をした。


 (判決要旨)
 「抗告人(賃借人)の賃借権は、最先順位の抵当権に遅れるものである。これは、抵当権設定登記時と賃借権設定対抗要件具備時との先後によって判断される。

 抗告人の賃借権が短期賃借権であるかどうかの判断基準時は差押登記時であり、この時点において、短期賃借権であったか、長期賃借権であったか、期間の定めのない賃借権であったかを確定し、この確定された賃借期間に基づいて民法395条該当性の有無を判断すべきである。

 この解釈によれば、設定当時長期賃借権であったものが競売手続き開始前の法定更新により既に期間の定めのない賃借権となっている場合には、競売手続においてはこれを期間の定めのない賃借権として取扱うことになる。

 抵当権者は抵当権設定登記後競売開始直前に期間の定めのない賃借権が初めて設定されたときも民法395条の短期賃借権を負担するのであるから、それだけの担保価値しか把握していないわけである。

 抗告人の賃借権は、設定当時は賃借期間を5年とする長期賃借権であったものの、平成8年9月30日に法定更新された後、期間の定めのない賃借権となり、平成12年*月4日付の差押登記により基本事件の競売手続が開始された時点においては、期間の定めのない賃借権であったのであるから、民法395条によって保護される賃借権であったと認められる。」


 (説明)
 抵当権設定登記後の長期賃借権が更新されて短期賃借権となった場合、短期賃貸借として保護されるかどうかについては、見解が分かれている。

 本件では、東京地裁の判断を覆して、東京高裁は保護されると判断した。短期賃借権として保護される場合、買受人は、執行手続きの中で明渡を求められず、別に、明渡しの本裁判を起さなければならない。

(2002.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。従って、平成16年3月31日までに締結された契約に関しては、現在も短期賃貸借の保護制度は適用されている

 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。

旧民法
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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値上げ請求額で支払うと値上げを認めることに (静岡・三島市)

2007年12月18日 | 地代の減額(増額)

 三島借地借家人組合傘下の心経寺借地組合の組合員宅へ「地代督促の件」という地代値上げ請求の葉書が届きました。

 寺領地心経寺から借地をしている会員へ「平成15年に地代を改定し5年が経過し未だに旧料金で支払われています。(略)下記金額を納めてくださるよう、お願い致します。平成20年分から下記の改定金額を納めていただいた場合、5年間の差額は請求しません」との葉書が10月16日付けで送られてきました。

 心経寺借地組合では、対策会議を開いた中で、会員から土地の値段が下がっているのに納得できないなどの意見が出されました。

 三島借地借家人組合は、早急に心経寺借地組合と合同で打合せ会議をもつことになりました。心経寺借地組合は、今回の心経寺からの地代値上げ通知に、法的には応じる必要がないことを明らかにし、会員へ「値上げ地代で払い込むと値上げを認めたことになるので注意することが必要です」と呼びかけています。

 

全国借地借家人新聞より 

 

賃料の増額請求の時効は5年という判例はこちら

 

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事業用定期借地権の存続期間延長 (2)

2007年12月16日 | 定期借家・定期借地契約

 2007年12月14日、事業用定期借地権の存続期間延長法案が参院本会議で賛成多数で可決、成立した。

 現行の「事業用借地権」(借地借家法24条)は借地存続期間が「10年以上20年以下」と規定されている。その存続期間を「10年以上30年未満」(改正借地借家法23条2項)に変更して存続期間を10延長した。また、「30年以上50年未満」(改正借地借家法23条1項)を新設した。更に名称も「事業用借地権」から「事業用定期借地権」に変更された。

 今回新設された23条1項は、公正証書で契約すれば、特約によって①更新を認めない、②再築による期間延長がない、③建物買取請求権を認めない、ことが出来る。

 換言すれば、「事業用定期借地権」であるから、契約の更新は認められないが、当事者の合意があれば、再契約は勿論認められる。また、特約によって、建物再築による存続期間延長も可能であるが、その場合は50年未満の要件に合致していなければならない。更に「建物買取請求権」を認める「事業用定期借地権」も許容されるということである。

 しかし、23条2項は、従前と同じで公正証書で契約すれば、条文で上記の①~③は禁止措置が採られているので、①~③の特約をしなくても、正当事由による更新制度(借地借家法5条・6条)、建物再築による存続期間延長制度(借地借家法7条)及び建物買取請求権(借地借家法13条)認められない。

 なお、この存続期間延長の改正借地借家法23条は2008(平成20)年1月1日から施行される。


 以下の青字部分が改正されたところ。主な改正点は、現行の23条→24条、24条→23条に入れ替え、青字部分を追加した。


 (定期借地権)
 第22条 存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含。次条第1項において同じ)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。

 (事業用定期借地権等)
 第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定よる買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

 2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。

 3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。


 (建物譲渡特約付借地権)
 第24条 借地権を設定する場合(前条2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第9条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。

2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。

3 第1項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

 

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抵当権付物件を借りるときは注意しないと大変なことになる (大阪・住吉区)

2007年12月14日 | 契約・更新・特約

 大阪市住吉区東粉浜3丁目の賃貸マンションの1階部分を期間2年の契約で平成14年5月にスケルトンで賃借した森田義雄さんは、貸主の了解で「ふぐ料理店」を開業するために2000万円を費やし改装しました。

 その後、賃貸借契約は平成16年5月に法定更新され、期間の定めのない建物賃貸借になっていました。

 平成18年8月、突然大阪地裁から「債権差押命令申立事件」の「通知書」が送られ、平成18年9月「債権差押命」が届けられてきました。同時に、大阪地裁は、森田さんへ「事情届」用紙も送ってきました。

 森田さんは、当時はその「通知書」が何を意味しているのか理解できず、その後も月額20万円の家賃を振込み続けていました。

 さらに、平成19年1月、大阪地裁から債権者の変更の「通知書」が送られてきました。
 そして、同時にこれまで聞いたことのない株式会社虎ノ門債権回収という企業から、家賃の支払先を明示した通知書が送られ、さらに、平成19年8月にニッシン債権回収株式会社と名乗る企業からも家賃の振込先を通知してきました。

 その上に、平成19年10月大阪地裁から「債権申立事件」の「取下書」が森田さんへ送られ、新所有者の代理人と称する株式会社リブ・マックスから「賃借権が抵当権設定後であるため、不動産の速やかな引渡しを求める」旨の連絡書が送られてきました。

 森田さんは、これまで家賃の滞納もなく、改装費の返済もできる見通しができ、何とか事業も軌道に乗ったと思っていた矢先の出来事でした。

 <抵当権付と聞いたが、よくわからなかった>
 11月22日、民主商工会の紹介で住吉借地借家人組合の千葉事務局長に相談し、深刻な事態になっていることを初めて知りました。

 森田さんは、平成14年5月30日付けの賃貸借契約書を確認すると、仲介業者を通じて貸主代理人(管理会社)との間で契約しており、建物所有者とは契約していないことが解りました。

 建物所有者は、平成2年7月に抵当権を設定して金融機関から融資を受けており、森田さんが賃貸借契約を締結する際、仲介業者から抵当権が設定されていることを知らされいましたが、抵当権の意味が理解できず競売後の新所有者に対抗力もなく、200万円の敷金も返還されないことも知りませんでした。

 森田さんは、「賃貸借契約時に仲介業者から競売になった場合、新所有者から明渡を求められと無条件で解約されることを事前に詳しく説明を受けておれば、契約しなかっただろうし、父親に連帯保証人になってもらってまで改装費用を工面をしなくて済んでいたのに」と悔やんでいます。

 森田さんは、弁護士に相談し、今後の対策を検討することになりました。 

 <短期賃貸借まではほとんど説明しない>
 
仲介業者を指導している大阪府建築振興課は「重要事項説明書に抵当権設定を記載していても、短期賃貸借制度についてまで仲介業者は詳しく説明していないと思われる。本来仲介業者は、説明するべきであろうが、ほとんどの物件に抵当権が設定されている中で、そこまで説明すると成約できないのではないだろうか。今後機会ある毎に業界を指導していく」と語っています。

 

全国借地借家人新聞より  


  平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。従って、平成16年3月31日までに締結された契約に関しては、現在も短期賃貸借の保護制度は適用されている

 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。

旧民法
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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地主が土地の有効利用を理由に明渡し訴訟 (東京・大田区)

2007年12月12日 | 土地明渡(借地)

 大田区蒲田本町に居住するAさんは約9坪、Bさんは約12坪の土地を賃借。今年の7月の契約更新に当り更新拒絶を通告され昨年6月組合に入会。

 通知書を見て驚く、借地権を現在の地代の約54年分(Aさん)、約42年分(Bさん)に消費税を加えて買い取るとの内容だった。

 直ちに借地人らは、所有する建物が現存するので借地法第4条による契約の契約更新を請求した。

 しばらくして地主の代理人という、六本木ヒルズに事務所を構える弁護士から内容証明郵便にて、土地の有効利用を理由に更新拒否して地主が提示した金額で買い取るので協議したいと申し込まれた。

 借地人らは、借地権を売却して他に移転する考えはないこと。よって、地主に協議には応じられないと通告した。

 地主は同地に居住時に、マンション業者に土地売却し残地を賃貸駐車場にしている。借地権を低額で買い取って土地を売却して高額な利息を得ようという、有効活用を正当事由にするとは恐れ入る。

 こんな地主の勝手な主張を認めることはできないと、借地人は断固地主と対決する決意を固めている。
 もともと立ち退く考えはないが、こんなに安い金額を提示するとはそもそも借地人らの権利を無視したもので、人を押し退け犠牲にしても「金儲け」しようとする姿勢は、ますます社会的格差を拡大するものでゆるせない気持ちを強くした。

 それから約半年経過した11月に建物収去土地明渡請求の訴状が届いた。すでに裁判も想定されて弁護士に相談していた両名は、組合の顧問弁護士に依頼した。土地の有効利用を理由に借地人の生活基盤を脅かす理不尽な請求には絶対に負けられないと、裁判にのぞんで決意を新たにしている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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新所有者の不動産業者が建物の明渡を言って来た (東京・豊島区)

2007年12月11日 | 建物明渡(借家)・立退料

 豊島区池袋で古い木造の平屋建ての建物で、クリーニング屋を営んでいた川上さん夫妻は、今から20年位前に家主から家賃の大幅な値上げを請求された。

 困っている時に友人から、借地借家人組合を紹介され、入会した。組合から家賃の増額には応じられない旨通知すると、家主は、賃料の受領を拒否してきた。そのため、賃料を法務局に供託し、頑張ってきた。

 その後、供託中の5年前に道路の拡幅のために立退き問題が起こり、家主とその代理人との交渉が行われ、最終的には今までより奥に、新しい2階建ての家を建ててもらいそこに住むことになった。

 川上さんの夫は新しい家に引越しと同時に死亡し、現在は一人住まいである。やっと終の住処を得たと思っていた今年になって、不動産業者が新しい家主と名乗り、立退きを求めてきた。

 何度も起こる借家のトラブルに、川上さんは「組合だけが頼りです」と語り娘さんとも相談しながら、今後の対策を進めていくことにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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家主の明渡し請求を撤回させる (東京・荒川区)

2007年12月10日 | 建物明渡(借家)・立退料

 荒川区西尾久で4階建マンションの1階店舗(約12坪)を借り電気店を営むQさんは、4年前の秋に漏水事故が発生し家主からマンションを建て直すから明渡してほしいと通告された。

 このマンションは2階から上は居室で20数世帯以上の入居者がいたが、水道の設備が悪く時々漏水事故が数箇所で発生していた。

 店舗を借りている人は6店舗だが、気がついてみると居住者も減り店舗も3店舗となった。更新時が来る人から徐々に立退いたようだ。Qさんは最後まで残って営業を続けていた他の2人に声をかけ3人で組合に相談し入会した。

 「水漏れ程度なら修繕で直せるのにどうしても追い出すなら、それなりの補償をするか、近くに代替の店舗を確保し再築時には現行の賃料で再入居させよ」と何度か家主と交渉を続けた。

 この間に家主は代替の店舗を探してきたが店舗としては狭すぎるため、建て直し期間中に品物の展示ができないために他の倉庫を借りて保管しなければならず、Qさんたちは倉庫の賃料も補償してほしいと主張した。

 考えると回答したものの何ら誠意も見せず時間が経過し、最近になってついに建て替えをあきらめ建物を部分的に補修し、入居者の募集を始めた。徐々に入居者が増え、空き店舗にも新しい入店者が入ってきた。

 Qさんたち3人は最後まで営業を守り頑張りぬいた結果、家主の明渡し請求を撤回させる大きな成果を上げた。この経験を生かして今後は商売繁盛に力を入れると張り切っている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 1年毎に更新されてきた土地賃貸借が一時使用目的とされた事例

2007年12月08日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 20年以上にわたり1年毎に更新されてきた建物所有を目的とする土地賃貸借が一時使用目的とされた事例 東京地裁平成6年7月6日判決、判例時報1534号)


 (事案)
 1、Xは昭和46年12月にアルミサッシ等を製造販売することを目的として設立された株式会社で、当時作業場等を建てる土地探していた。Yは本件土地はいずれは自宅を建てるつもりでいたので他に賃貸することは考えていなかった。X会社をYに紹介した者が明渡請求があればいつでも明渡すことを保証すると言明、またXの社長も最近独立したばかりで用地の確保に困っており一時貸しでも良いから是非貸してほしいと懇願した。そこでYは一時貸しを条件にXの申入れに応じることにした。

 2、このような経緯でYはXに対し、昭和47年4月1日、一時的建物所有の目的、期間1年、賃料1か月10万円で本件土地を賃貸する旨の契約書を取交して賃貸した。その際一時使用のための賃貸借とすることを明確にする趣旨でXはYに対し、Yから明渡請求があったら速やかに原状回復して明渡す旨の誓約書を差入れ、紹介者も保証人として署名捺印した。なお、権利金や敷金の類の金銭の授受は一切なかった。

 3、X(賃借人)は早速本件土地に組立てハウス(軽量鉄骨カラー鉄板葺き)平屋建倉庫作業場約190㎡を建築し、以後これをXの倉庫、事務所作業所として使用してきた。

 4、その後本件賃貸借契約は「土地一時使用賃貸借契約書」を毎年取交して更新され、結果的には平成5年3月31日まで20年以上にわたって継続してきた。

 5、Y(賃貸人)が右期間満了後の本件土地明渡を求めたため、Xが昭和47年4月1日から30年の借地権の確認を求めて提訴、Yは反訴として建物収去土地明渡を求めた。


 (判旨)
 「以上認定の事実によれば、本件賃貸借契約は当初から、暫定的にXが倉庫作業所を建築使用するために、一時使用の目的で締結されたものであることが明らかであり、Yが借地法の規定を潜脱する意図に出たものとは到底認められないから、本件賃貸借関係が結果的には20年余の長きにわたって継続してきたものであるが、借地法9条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合ニ該当スル」としてYの主張を容れ、Xに建物収去土地明渡を命じる判決をした。


 (寸評)
 本件の特徴は、1年後とに一時使用契約を締結してきたが、それが20年以上経ったのだから、実質的には一時使用のためではなく、借地法が適用になる普通の借地契約なのではないかという点にある。本件事案の全体を読むと(例えばXは既に代替地を取得してあまり必要がなくなった)判決の結論はやむを得ない感じがする。

(1995.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 店舗の無断で改装工事が背信的かつ重大な義務違反に当らないとされた事例 

2007年12月07日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 店舗賃貸借契約の特約条項に違反して無断で改装工事をしたことが、背信的かつ重大な義務違反に当らず、解除が無効とされた事例 東京地裁平成5年9月27日判決


 (事案)
 Y(賃借人)はX(賃貸人)から地下ショッピングセンター街の1部を賃借し(①)(②)(③)の3店舗を経営していたが、右賃貸借契約の特約条項(ショッピングセンター街の多数の賃借人を集団的に規律するための手続条項)に違反して無断で改装工事をしたため、Xは特約条項違反を理由に賃貸借契約を解除し店舗の明渡を求めた。

 裁判所は、無断改装工事が特約条項に違反することは認めたが、右義務違反の内容・程度は背信的かつ重大なものとは言えないとしてX(賃貸人)の請求を棄却した。


 (判決)
 本判決は、
 先ず、①賃借人が特約条項に違反したとして契約の解除を認めるためには、当該業務違反が背信的かつ重大なもので、地下ショッピングセンターの店舗という特殊性を正当に考慮したうえで賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するものでなければならず、単なる集団的規律のための手続条項違反では直ちに契約を解除することはできないとし、
 さらに、②本件の賃料及び諸経費が高額で、解除に伴って生じる経済的効果も大きいから、解除原因となりうる義務違反の程度もそれに相応した重大なものでなければならないとしたうえで、本件について次のように判断した。

 ①(①)の店舗の内装工事はラーメン店を同一系列の飲食店である中華料理店としての内装にふさわしいものに変更したにすぎないこと、

 ②右内装工事の着工後とはいえ、YはXの求めに応じて(1)(2)の店舗につき改装工事の承認申請書を提出し、Xも条件付ながら一旦は承認しており、内装工事自体に承認を拒否する合理的な理由はなかったと考えられること、

 ③Yは右条件を履行していないが、条件を迫るXの態度は性急で強引であること、

 ④(3)の店舗の改装工事は美観その他の点で格別の問題は生ぜず、予め承認申請していればXが拒絶すべき合理的理由はないこと、

 ⑤その他の無届休業・「防火管理確認標」の提出懈怠・店長会議への欠席などは賃貸借契約にとっては必ずしも重大な義務違反とはいえないこと等に照らすと、

 Y(賃借人)の義務違反の内容・程度は、賃貸借契約の解除原因を構成するする程度には背信的かつ重大なものとは言えない。


 (寸評)
 建物賃貸借契約において無断改装などの契約違反があっても、それが背信行為に当らない場合には契約解除は認められないとするのが確定した判例である

 本判決はショッピングセンターの賃貸借についても2つの法理が適用されることを確認するとともに、その背任性の存否についての詳細な認定は、通常の建物賃貸借における背信性の程度を判断するにあたって参考になるものである。

(1994.09.)

(東借連常任弁護団)

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