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【Q&A】 南側窓の網入りガラスの自然破損 交換費用を支払う必要があるのか 

2005年06月30日 | 修理・改修(借家)

  南側窓の網入りガラスの自然破損
    その交換費用を支払う義務があるのか

  (問) ベランダの網入りガラス2面の破損代金を請求されています。自然にヒビが入ったものでも、弁償しなければならないのでしょうか。


 (答) 網入りガラスに何もしていないのにヒビが入ったという経験をした人、現在ヒビが入っているという人は結構多い筈である。普通、ガラスに物が当って割れる場合はぶつかったところから放射状に亀裂が入る。

 ところが、自然にヒビが入ったと考えられる網入りガラスは、陽当りのよい部屋の南側に位置している筈である。そして、ヒビはガラスの下部に集中している。このヒビ割れはガラスの端から始まり、次に90度の方向に曲線を描いて割れるという特徴がある。このような状態にヒビ割れていたら、それは金属とガラスの熱膨張率の差から自然にヒビ割れが生じたものである。「熱割れ」と言われるものである。

 また最近、結露や雨水が下方のパッキンの中に溜まり、鉄製の網の錆による体積の膨張も原因の一つと考えられている。いわゆる「錆割れ」である。ヒビ割れ情況がガラスの下部に集中していることからも錆が原因していると考えるのが自然である。近頃業者は、網入りガラス交換に際し底面と下方側面に防水テープを貼っている。これは切口の網部分からの水の滲入を防ぐためである。熱と錆二つの理由が競合していると考えるのが合理的であろう。

 質問者と同様の問題で争われた保土ヶ谷簡裁の判例(1995(平成7)年1月17日判決。平成6年(ハ)第819号 敷金返還請求事件)(註1)がある。
網入りガラスは切断する際に網も切らなければならないために切り口に傷がつきやすく、そのため端部の強度が網のないガラスの半分程度に落ち、より小さな温度差で割れが起こり易いこと、熱割れの特徴は必ず端部から生じ、しかも端部に直角に生じること、本件建物の窓ガラスの破損は右熱割れの特徴に符号するものである」。
 網入りガラスは熱膨張により破損し易いと認定し、賃借人がガラスを破損したということを認めるに足りる証拠がないから、賃借人が窓ガラス破損の責任を負う理由がないと判示している。ガラスの破損は貸主の負担すべきものとして、借家人の金銭的負担を免除している。


 この裁判の控訴審の横浜地方裁判所(平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)(註2)では、「窓ガラスの破損につき、前記認定のとおり、網入りガラスは熱膨張により破損し易いところ、被控訴人(賃借人)が右破損に何らかの寄与をしたことを認めるに足りる証拠がない(被控訴人が窓ガラスの破損の責任を認めていたことを認めるべき証拠もない。)から、被控訴人が窓ガラスの破損につき責任を負う謂れはない。」と判示している。

 上記横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(註3)という重要な指摘をしている。

  ヒビ割れの根本原因は、網入りガラスの構造的欠陥と切口の錆止め対策の不備に因るものであるり、相談者の故意・過失よる損傷ではない。

 結論、判例などからも相談者は網入りガラスの破損代金を払う必要はない。

  
(註1)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年3月)197頁
「改訂版 賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 2004年9月)には、上記保土ヶ谷簡易裁判所判決は掲載されていない。

(註2)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)195頁

(註3)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)193頁

関連記事 『自然に割れた網入りガラスの交換代金を請求される

 

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【Q&A】 地代の増額請求に時効はあるのか 

2005年06月29日 | 地代の減額(増額)

  13年前に地代の値上げを請求されたが
     地代の増額請求に時効はないのか

 (問) 平成2年4月地主から大幅な地代(5月分から)の値上げを要求され、以来、地代を供託している。ところが、平成13年10月、地代の再値上げを通告され、加えて、平成2年5月分からの差額地代についても請求された。地代の増額請求に時効はないのでしょうか。


 (答) 増額請求権は形成権であるから貸主の増額する旨の一方的意思表示(増額の申入れ)が借主に到達した時に以後相当額に増額されたことになる(最高裁判昭36年2月24日判決

 地代家賃の増減請求権(借地借家法11条・32条)は、建物買取請求権、取消権、解除権等と同じく、請求権者が相手方に対して地代等を増減する旨の意思表示をすれば、相手方が承諾しなくても、値上げ値下げの効果が発生する権利である。

 形成権は権利者の一方的な意思表示によって法律関係の変動(発生・変更・消滅)を生じさせる権利であるという。形成権は一旦権利が行使されれば法律関係の変動生じ、それ自体消滅してしまう権利である。従って、権利の行使による中断ということは有り得ない。

 ところが、民法126条は、「取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する」と書かれている。学説の多数は、形成権の期間制限の規定は時効期間ではなく除斥期間を定めているものとしている。

 除斥期間といのは、法律上、権利の行使や存続のために定められた一定期間をいう。権利行使期間という意味では、消滅時効期間と似ている。異なる点は、除斥期間の場合には当事者の援用を必要としない。もう1点は除斥期間には中断という制度がないことである。

 従って、裁判所は、除斥期間を過ぎていれば、当事者の援用がなくても、その権利は消滅したものとして裁判が出来る。

 地代・家賃の増減請求権は、条文上期間の制限がない。期間の定めのない形成権については、それぞれの権利の性質に応じた除斥期間に服するとされている。地代家賃等の賃借料は民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)(註1)により5年で消滅時効になるので、増減請求権の除斥期間は5年となる。 即ち、貸主の値上げ請求の増加額分の請求権は5年で消滅する。

 (註1) 民法169条「年またはこれより短い時期によって定めた金銭その他のもの物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。」

 このように賃料増減請求権の行使に時間的な制限を加えて期間の限定を設ける。これによって、権利を有しながら長期間無為に行使しない「権利の上に眠る」貸主に、請求権行使に5年という枠を嵌め、裁判制度を使って短期に問題解決の決断を促すという点ではメリットがある。

 しかし、最高裁の判例は形成権にも消滅時効は成立するとしている。形成権に関して、裁判例は期間5年を除斥期間ではなく、消滅時効期間という取扱いをしている。ここでは裁判例に従って消滅時効という見解で回答する。

 月払いの地代は民法169条にいう5年の短期消滅時効にかかりかつ、地代値上げ請求にかかる増加額についても所定の弁済期から消滅時効は進行を始める東京地裁昭和60年10月15日判決、判例時報1210号61頁以下)。 

 弁済期が定められた債権の消滅時効は弁済期が起算点になる(註2)。平成17年1月時点を例にすれば、賃料の支払いが後払いの毎月末日払いの場合、弁済期はその月の末日である。例えば、1月であれば、1月31日である。この場合の起算点は平成17年1月31日である。

 但し、民法上の期間を算定するとき(日、週、月又は年によって期間を定めた場合)は初日を算入しない(民法140条)ということであるから、平成17年2月1日(起算日)から時効は進行する。このように請求されている地代の増額分は、毎月、毎月5年前の分が次々と時効で消滅していく。

 (註2) 民法144条「時効の効力は、その起算日にさかのぼる。」、民法166条「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」 

  結論、判例によれば、質問者の増額地代の差額分は平成13年10月の時点では、平成8年10月以前の分に関しては既に消滅時効が完成している。賃料債権は消滅したことになり、支払う必要はない。

 なお、時効の利益を受ける者は、消滅時効が成立したと主張する必要がある(註3)。これを時効の援用という。勿論、黙っていたのでは時効の利益を受けられない。そこで、証拠に残すためにも、内容証明郵便で時効の援用をする。内容は、「増額請求権は民法169条の短期消滅時効により平成8年10月以前の分に関しては既に消滅時効が完成し、賃料債権は消滅している。従って、消滅時効部分の支払請求には応じられない」という趣旨のことを書き、配達証明付きにして地主に送り届けておく。これで時効の援用と増額請求の支払拒否の通知は終了である。

 (註3) 民法145条「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」

 援用の時期は何時までにしなければ、援用権が無くなるということはないが、要は債権者から請求があったときに援用すればいい訳である。勿論、裁判との関係で最終期限はある。第2審の口頭弁論終結までに時効を援用しなければならない(大審院大正7年7月6日判決)。


 (*)賃料増減請求権は5年で消滅時効が成立する大阪地裁平成12年9月20日判決東京地裁昭和60年10月15日判決名古屋地裁昭和59年5月15日判決)と各々の地裁が判決している。

 

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短期賃貸借廃止 (東京・台東)

2005年06月27日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

       2004年4月1日で短期賃貸借は廃止された。
                     居住と営業は大丈夫か

 民法395条の短期賃貸借保護制度は、抵当権付不動産が競売で落札され、所有者が代っても短期の賃貸借契約であれば、そのまま契約の期間内は使用し続けることが出来るという制度である。賃借人の不安定な居住権を最低限保障するものである。

 政府与党は不良債権処理を急ぐ金融機関支援のために短期賃貸借保護制度を廃止した。民法395条は次のような趣旨に改定された。(註)

 ①抵当権に後れる賃貸借はその期間の長短に拘らず抵当権者(買受人)に対抗することが出来ないものとする。これによって買受人は敷金の返還義務を負わないことになった。

 ②建物の明渡猶予期間は買受人の買受時より6か月間とする。

 ③1か月以上の家賃を滞納し催告がなされても支払が無い場合は②を適用しない。

 ①は不動産に関する権利の優劣を対抗要件の具備の先後で決する民法の原則に従うものである。

 だが、フランス・ベルギー・ドイツ等の法律では、抵当権の設定の有無に拘らず、賃借権は買受人に引継がれ保護される。賃借権は買受人に対抗出来るのが原則である。「抵当権は賃借権を破らない」というのがヨーロッパ法の原則である。

 日本の民法は原則と例外規定が逆転している。借家人の居住と営業を守るためにも正常な賃借権は抵当権の有無に拘らず保護されなければならない。

 (註)(抵当建物使用者の引渡しの猶予
  第395条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
 一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者  
 二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

(註)平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。従って、平成16年3月31日までに締結された契約に関しては、現在も短期賃貸借の保護制度は適用されている

 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。
  なお、短期賃貸借の保護を受けている契約の場合、原則的には預託した敷金は新家主から返還されることになっている。 

旧民法(短期賃貸借の保護)
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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【Q&A】 大震災で借家が全壊したが救済措置があるか

2005年06月25日 | 借家の諸問題

     大震災で借家が全焼・全壊した場合
      借家人にはどんな救済措置があるか

 (問) 福岡西方沖地震、新潟県中越地震と大災害が続いている。もしこのような大災害に遭遇した場合、借家人にはどのような救済措置があるのか。


 (答) 2004年10月23日の震度6強の新潟県中越地震に対して2005年4月15日政令で長岡市、小千谷市等の7市3町村に「罹災都市借地借家臨時処理法」(以下処理法)が適用された。

 一般的には借家している建物が火災、地震、台風等によって「全焼・全壊」(滅失)してしまうと借家権は消滅する(最高裁昭和32年12月3日判決 民集11巻13号2016頁)。しかし大災害に対して「処理法」が政令で適用されると震災で建物が滅失しても借家権は消滅しない。

    再築後の建物の優先賃借権
 罹災借家人は土地所有者或は借地人が罹災跡地又は換地に建物を再築した場合、その完成前に借家契約の申し出をすると他の者に優先して賃借することが出来る。建物所有者は自己使用その他正当事由があり、且つ申し出日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないと承諾したものとみなされる(14条)。

   土地賃借権の優先的取得
 罹災建物に居住していた借家人は、建物を自力で復興させる場合、政令施行の日から2年以内でそのたてものの敷地・換地に借地権が無い場合に土地所有者に借地の申出をすれば他の者に優先して相当な借地条件で賃借することが出来る。

 土地所有者は、先記の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないと承諾したものとみなされる。土地所有者は自己使用などの正当事由が無いと申出を拒絶出来ない(2条)。

    借地権の優先的譲受け
 罹災建物の敷地またはその換地に借地権が存在する場合は、罹災借家人はその借地人に対し政令施行日から2年以内に借地権の譲渡の申出をすると、他の者に優先して相当な対価でその借地権を譲り受けることが出来る。

 借地人は自ら使用する場合その他正当事由があり、且つ譲渡申出の通知を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないとその申出を承譲したものとみなされる(3条)。

この場合にはその譲渡について土地所有者の承譲があったものとみなされる(4条)。

 処理法適用下の借地期間は借地借家法の規定に拘らず10年に法定される。10年未満は期間を定めないものとみなす(5条)。当然更新(法定更新)が出来る。

 

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【Q&A】 火災の損害賠償を請求されたが支払う必要があるのか 

2005年06月24日 | 借家の諸問題

  (問) アパート2階の一室を賃借していた。台所で食事の準備中に鍋の油に火が入り、部屋の一部が焼けてしまった。その時の消火の放水で1階が水浸しになり、家財道具に被害が発生した。家主・アパート居住者から損害賠償を請求されているが、支払う必要はあるのか。


  (答) 一般的には故意・過失によって他人の権利を侵害した場合には、不法行為による損害賠償の責任を負う(民法709条)。しかし、失火の場合は、重過失がない限り民法709条の規定は適用されず、民事上の損害賠償の責任を負わない(失火ノ責任ニ関スル法律(註))。

(註) 「民法709条ノ規定ハ失火ノ場合ニ適用セス但シ失火者ニ重大ナ過失アリタルトキハ此ノ限リニアラス」(「失火ノ責任ニ関スル法律」)。

 最高裁昭和32年7月9日判決重過失を次のように定義している。「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するを相当とする」

(1) どのような事例が重過失になるのか。

重過失とされた裁判事例としては、
① 炊事場で夕食の支度をしていた主婦が、点火中のガスコンロに油の入った鍋をかけたまま、来客の応対をするために、その場を離れた間に、ガスコンロの火が鍋の中の油に引火し、火災が発生した事例 (東京地裁 昭和57年3月29日判決)。

② 石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火して火災が発生した事例 (東京高裁 平成15年8月27日判決)。

③ 寝たばこの火災の危険性を十分認識しながら、何ら対応策を講じないまま、喫煙を続けて火災を起こした事例 (東京地裁 平成2年10月29日判決)。

 民法では、賃借人は賃借している建物をその建物の用方に従って、また善良なる管理者の注意をもって使用する義務を負っている(民法616条・400条)。これを借家人の「用方遵守義務」といい、建物を失火によって焼損させることも用方遵守義務違反で債務不履行になる(最高裁 昭和47年2月18日判決、民集26巻1号63頁)。 (*)平成16年の民法改正、用語の現代語化で「用方」→「用法」

 失火責任法は民法709条の適用を排除しているだけで、契約関係に基づく債務不履行には適用がない。賃借人は失火の場合、重過失がなくても過失があれば、賃貸人に対して用方遵守義務違反として債務不履行による損害賠償責任を負う(最高裁 昭和30年3月25日判決、民集9巻3号385頁)。

 (2) 家主(賃貸人)が蒙った火災の損害どの程度、賠償しなければならないか。

 下級審の判例の多数に従うと、アパート等の「共同住宅の部屋の賃貸借において、当該賃借部屋、廊下等の部分、その他の階下の部分に対する損害についても賠償をなすべき義務がある」(東京高裁 昭和40年2月18日判決)として延焼部分の損害についても賠償責任を負うとされている。また賃貸人は損害賠償の請求に消火活動によって蒙った損害も含めることが出来るとされている。

 家主賃貸人)の損害賠償請求を拒絶するには質問者の無過失の立証責任が必要である。
質問者は食事の準備中に火を消さずに現場を離れ、油が加熱され、油に引火して火災が発生した場合は上記①の判例から重大過失になる。この場合はアパートの居住者に対する損害賠償は発生する。

 火を使っている最中に台所から離れていなければ、食事の準備中に鍋の油に火が入り、火災になった場合は重過失にはならない。しかし、無過失の立証が出来ない場合は家主に対する損害賠償責任は免れられない

 過失で火災になった場合は、火元の賃借人とアパートの居住者とは契約関係のない第三者であるから、そこでは不法行為による損害賠償の責任(民法709条)は「失火ノ責任ニ関スル法律」の規定が適用される。アパートの居住者に対しては損害賠償の責任を負わない。

 結論、賃借人の失火が重大な過失でなければ隣近所に対して賠償責任は負わないが、過失で火災になった場合は債務不履行行為があるので、家主(賃貸人)に対しては賠償責任が発生する。

 

 なお、火災等で莫大な損害賠償請求に泣かないためにも、借家や賃貸アパート・マンションに住むときには火災保険・借家人賠償責任担保(特約)を付けた火災保険に入ることを推奨する。

 借家人賠償責任担保(特約)は借家や賃貸アパートに入居している人のための火災保険の特約である。借家人賠償責任担保特約は、火災、破裂・爆発、漏水等によって借家や賃貸アパートが損壊し、賃借人が賃貸人に対して法律上の賠償責任を負った場合、その損害を補償する特約である。また、隣家の失火により借家が類焼した場合にも、原状回復が出来ない状態(債務不履行)なので、それをカバーする特約でもある。

 賃借人の故意・重過失による損害の場合は、賃貸人が加入している保険会社が保険金を既に賃貸人に支払っている場合、保険会社から賃借人は保険代位による損害賠償請求を受ける可能性がある。但し、軽過失による損害の場合は「代位求償権不行使条項」により保険会社は賃借人に対する求償権を行使しないことになっている。

 お勧めの火災保険・借家人賠償責任担保(特約)は、例えば、火災共済・借家人賠償責任特約である。

 

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【Q&A】 自然損耗を含む借家の原状回復特約 

2005年06月23日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

    自然損耗回復費用は
      借主の負担という特約は
         消費者契約法で無効になる

 (問) 契約書に「賃借人は故意・過失を問わず、本物件に毀損・汚損・その他の損害を与えた場合は、賃貸人に対して損害賠償をしなければならない」旨の特約条項がある場合、自然損耗の回復費用も借主が負担しなければならないのか。


 (答) 判例によっては特約を結んだ場合、自然損耗分も借主負担とされるものがある。それは、次の要件を満たしている場合である。
 ①特約の必要性があり、且つ暴利的でないなどの客観的合理性が存在すること
 ②借主が修繕等の義務を負担することを認識していること
 ③借主が義務負担の意思表示をしていること、
 以上の条件が満たされない場合は貸主負担となる。

 例えば、賠償特約に対して借主の「帰責事由の有無を問わずに賠償責任を負うべき旨を定めたものであるならば、その限度で賠償特約の効力は否定されるべきである」(名古屋地方裁判所1990年10月19日判決)として特約自体が無効であるとしている。 

 判例の多くは、通常使用によって生ずる損耗や経年変化による損耗等の自然損耗を損害賠償の範囲から除外し、特約があっても自然損耗の回復費用は貸主が負担する義務があるとされている。

 2003年6月30日大阪地裁では、自然損耗の回復費用を借主に負担させる特約を公序良俗違反で無効であるという画期的な判決があった。

 更に2003年11月21日大阪高裁で兵庫県住宅供給公社に対して自然損耗費用を借主負担させる特約は無効として回復費用の全額返還を命ずる判決があった。

 相談者の契約が2001年4月1日以降のものであれば、消費者契約法10条で賠償特約は無効になり貸主の全額負担になる。消費者契約法10条では次のように書かれている。「民法第1条第2条に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」

  民法606条1項は貸主の修繕義務を定め、通常の使用による自然損耗は貸主の負担とするのが民法上の基本原則である。特約で自然損耗を借主の費用負担にすることは民法の原則に反して消費者である借主の義務を加重する条項である。

 借主に一方的に不利益な特約で、明らかに消費者契約法10条に違反し無効である。従って貸主が自然損耗の回復費用の名目で敷金から差引くことは許されない。

 

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【Q&A】 契約解除権は10年で消滅時効になる

2005年06月22日 | 土地明渡(借地)

土地の無断転貸を理由に明渡請求
    契約解除権は10年で消滅時効になる

  (問) 15年前に借地の一部を地主の承諾を得て隣の食品会社に転貸した。会社はそこに軽量鉄骨造りの倉庫を建てて現在も使用している。
 ところが今回地主が死亡して相続人から地代の大幅値上げを請求された。その請求を断ると、無断転貸を理由に契約解除・土地明渡請求が内容証明郵便で送られて来た。どうしたらいいのか。
 相続人に承諾の証拠を示せない。こんなことになるのであれば、文書での承諾を得ておけばよかったと悔やまれる。


  (答) 相談者の場合は先代の地主から承諾を得て食品会社に転貸していた。だから過去に地主との間に転貸でのトラブルがなかった訳である。相続人の無断転貸の主張は言掛かりに過ぎない。しかし、賃借人は転貸承諾を文書化していなかったので、言掛かりにに対する立証が難しい。

 民法では、「借人は賃貸人の承諾が無ければ賃借権を他人に譲渡したり、賃借物を転貸することが出来ない。賃借人がこれに反し転貸した時は、賃貸人は契約を解除することが出来ると定めている(民法612条)。

 問題は長期間契約を解除しないで放置していた場合、解除権は消滅時効にかかるのかということである。消滅時効は、一定期間権利が行使されなかったことによってその権利が消滅するものである。

 最高裁は「賃貸土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は賃借人の無断転貸という契約義務違反事由の発生を原因として、賃借人を相手方とする賃貸人の一方的な意思表示により賃貸借契約関係を終止させることができる形成権であるから、その消滅時効については債権に準ずるものとして、民法167条1項が適用され、その権利を行使することができる時から10年を経過したときは時効によって消滅する(1987年10月8日判決)としている。

 消滅時効の起算点については転貸借契約が結ばれて転借人が土地について使用収益を開始した時から消滅時効は進行するとしている。

 「時効による権利消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるもの」(最高裁1986年3月17日判決)として援用を停止条件としている。

 これは時効によって利益を受ける者が時効の成立したことを主張しなければならない。この主張を援用という。時効期間が経過することによって権利の得喪は生じるが、未だ確定的ではなく、援用によって初めて権利が確定する。換言すると、10年が経過しても借地人は消滅時効を、転借人は取得時効を援用しない限り、地主は無断転貸を理由とした明渡請求が出来ることを意味している。

 難癖であろうと降り懸かる災難は取除かなければならない。承諾の有無を相続人と争うよりも、消滅時効で片を付けた方が解決が速い。

 結論、談者の場合は既に10年の時効期間を満たしている。食品会社との賃貸借契約で15年経過していることは証明できる。従って地主に対して配達証明付き内容証明郵便で「解除権は既に時効である」と《時効の援用》をすれば、消滅時効は完成する。


(*)民法612条(賃借権の譲渡および転貸の制限)「①賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物転貸することができない。②賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除することができる。」

(*)民法167条1項(債権等の消滅時効)「権、10年間行使しないときは、消滅する。」

 

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【Q&A】 増改築特約がある場合の建物の修繕・リフォームは 

2005年06月21日 | 増改築・改修・修繕(借地)

  増改築禁止特約があっても、リフォームや修繕に地主の承諾や承諾料を支払う必要はない

 (問) 借地上の建物の修復工事とリフォームを考えている。内訳は外壁の亀裂の修理、及びベランダ・風呂場・台所のリフォーム。なお、契約書には増改築特約がある。地主の承諾や承諾料を支払わないと工事は出来ないのか。


  (答) 市販の借地契約書や不動産仲介業者が使用している契約書には「建物の増改築をする場合には事前に賃貸人の承諾を受けなければならない」という条項が挿入されている。これに「違反した場合、地主は催告を要しないで借地契約を解除する」という旨の特約を無断増改築禁止特約と言う。しかし、常に借地人がこの契約条項に拘束されていては借地の利用が制約されてしまう。

 そこで改築の承諾を巡る当事者の協議が調わない場合は裁判所が借地人の申立てにより、その増改築についての地主の承諾に代わる許可を与えることが出来る借地借家法17条)。これにより地主が増改築禁止特約を盾に増築や改築を認めない場合でも裁判所の代諾許可を得れば適法に増改築が行える。

 裁判所の許可の手続きをしないで無断増改築を行った場合、直ちに契約解除が認められるのか。

 判例は「建物所有を目的とす る土地の賃貸借契約中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで賃借地内の建物を増改築するときは、賃貸人は催告を要しないで、賃貸借契約を解除することができる旨の特約(建物増改築禁止の特約)があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合においても、この増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないとき は、賃貸人が前記特約に基づき解除権を行使することは、信義誠実の原則上、許されない。」(最高裁1966(昭和41)年4月21日判決 民集21巻4号720頁)としている。

 つまり、無断増改築であっても、地主に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認められない場合は契約の解除は出来ない。総ての増改築について地主の承諾が必要という訳ではない。

 それでは地主の承諾なしに増改築出来る範囲はどの程度なのか。

   前記最高裁は、家族が居住していた2階建建物の「一部の根太および2本の柱を取りかえて本件建物の2階部分(6坪)を拡張して総2階造り(14坪)にし、2階居宅をいずれも壁で仕切った独立室とし、各室 ごとに入口および押入を設置し、電気計量器を取り付けたうえ、新たに2階に炊事場、便所を設け、かつ、2階より 直接外部への出入口としての階段を附設し、結局2階の居室全部をアパートとして他人に賃貸するように改造した」という無断増改築の事例(最高裁1966(昭和41)年4月21日判決)において、無断増改築禁止の特約違反を理由とする地主の解除権を認めなかった。

「改築とは、建築物の全部若しくは一部を除却し、又はこれらの部分が災害等によつて滅失した後引続きこれと用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てることをいう。従前のものと著しく異なるときは、新築又は増築となる。なお、使用材料の新旧を問わない」(昭和28年住指発第1400号 改築の定義 昭和28年11月17日  建設省住宅局建築指導課長から国家消防本部総務課長宛)

 以上が建設省住宅局建築指導課が示した「改築」の定義である。
改築定義の「一部を除却」とは、建物の一部を完全に除去してしまうことを指し、例えば、柱や屋根がなくなってしまう状態である。なお内部の間仕切を変更すること自体については、上記の通り「改築」の定義から、「改築」とは言わない。例えば建物内部の間仕切り壁を解体し、間取りを変更する等の建物の外形線が残るような状態は「修繕」または「模様替」(「リフォーム」)に該当する。

 既存建物の維持・保存に必要な通常の修繕修復工事や建物のリフォームが増改築禁止特約に触れないと言うことは勿論のことである。

 

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借地借家人へ固定資産課税台帳公開 (東京・台東)

2005年06月19日 | 借地・借家に共通の問題

     地代家賃の値下げに強い味方
  固定資産課税台帳を借地借家人へ公開

 地方税法の一部を改正する法律(平成14年法律第17条)、地方税法施行令の一部を改正する政令(平成14年政令117号)、地方税法施行規則の一部を改正する省令(平成14年総務省令第44号)これらの改正により、「固定資産税台帳の閲覧制度」と「固定資産課税台帳記載事項の証明制度」の法定化がなされた。

 2003(平成15)年4月1日から借地人・借家人等は、東京の場合、都税事務所で固定資産課税台帳の①「閲覧」及び②「評価証明書」の交付が受けられるようになった。

 交付を受ける場合、借地・借家人等であることを確認出来るものを持参する必要がある(註)。例えば、賃貸契約書や賃借料の領収書等である。念のため身分証明書(運転免許証・健康保険証等)も持参した方がよい。

 代理人の場合は他に委任状が必要である。電話による委任確認に備えて委任者の電話番号も控えていった方がよい。

 閲覧・証明の申請書には、土地の場合登記簿の地番、家屋の場合は家屋番号を書くようになっているが、住居表示と納税義務者(地主・家主)の住所と氏名を書込めば検索してくれる。

 ①閲覧と②評価証明も固定資産課税台帳の記載事項をプリントしただけのものであり、内容的には同一だが、②評価証明には公印が表示される。東京都の場合申請手数料は、①閲覧は300円、②評価証明書は400円である。

 固定資産課税台帳に記載が法定されているのは、課税標準額である。相当税額を記載するか否かは市町村の判断に任せられているで、自治体によって対応に差異がある。

 東京都内23区の場合は、税額は記載されていない。ただし、固定資産税と都市計画税の課税標準額は記載してあるので、記載されている「固定資産税課税標準額」に固定資産税は1.4%、「課税標準の特例額」に都市計画税は0.3%を掛算すれば年間の相当税額になる。

  具体的な地代の算定方法は、当ブログ内の「適正な地代算出方法は」を参照して下さい。


 (註)「固定資産税における情報開示関係資料」(平成14年9月18日 総務省自治税務局固定資産税課資料3)の「固定資産税の情報開示に係る質疑応答について」によると次のように説明されている。

 (問)
 固定資産課税台帳の閲覧や固定資産課税台帳記載事項の証明を求めることができる者はどのような方法で確認すればよいのか。

 (答)
 
 地方税法においては、閲覧や証明を求める者の確認方法について規定していない。したがって、窓口において市町村の税務職員が、閲覧や証明を求める権利を有するものであることを確認できれば、どのような方法によっても差し支えないが、確認するための書類の例を掲げると次のとおりである。


 (1) 納税者
    当該年度の納税通知書、課税明細書等の納税者が保有すべき書類等による確認

 (2) 法に定められた固定資産課税台帳の閲覧や同台帳記載事項の証明を求めることができる者
     当該資格を証する書類等による確認(借地人・借家人の場合は、賃貸借契約書、地上権その他の権利の成立及び有効性を証する契約書等、契約書等に基づいて賃借料等を払い込んだことの領収書等の証明書等)

 (3) (1)及び(2)の掲げる書類等の提示がない場合でも、(1)及び(2)に準ずる書類等の提示があり、かつ、次に掲げる身分を確認できる書類等提示がある場合は、閲覧や証明に応じても差し支えない。
  ① 申請者が個人の場合
    身分証明書、パスポート、運転免許証、年金手帳、身体障害者手帳、健康保険証、国税・地方税の納税通知書、社会保険料の領収証等

  ② 申請者が法人の場合
    当該法人が作成した記名押印申請書(法人の代表者印が押捺されたもの)


 2 本人から閲覧又は証明申請に関する代理権を授与された者についても、閲覧又は証明を求めることができるが、閲覧又は証明の対象となる固定資産を特定し、かつ、閲覧又は証明申請に関する代理権を授与されたことを証する書類等及び代理人本人であることを確認できる前記1の書面を提出を求めることにより確認する。

 

参考記事
 課税台帳閲覧問題で総務省と懇談

 

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【Q&A】 不動産業者の杜撰なテナント契約で店舗閉鎖に追込まれた

2005年06月17日 | 建物明渡(借家)・立退料

    不動産業者の杜撰なテナント契約で
 店舗閉鎖に追込まれ損害賠償を請求出来るか

(問) 不動産業者の媒介でビル1階部分の店舗を契約期間5年、保証金500万円、家賃20万円で賃貸借契約を締結した。店舗改装費に800万円をかけてラーメン屋を開業した。
 ところがこのビルは既に裁判所の競売開始決定に基づき差押の登記がなされていた。不動産業者からはこの事に関して何の説明も受けなかった。
 その後、買受人から明渡請求をされ、店舗は閉鎖し、杜撰な媒介で大損を蒙った。不動産業者の損害賠償責任を追及したい。


 (答) 問題は不動産業者が賃貸借に係る土地建物の媒介に際して登記簿を閲覧する義務があるのか。

 宅建業法35条は不動産業者の重要事項説明義務の内容として、「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記載された所有者の氏名(法人については名称)」( 宅建業法35条1項1号)、これらを記載した書面を交付して契約前に宅建主任者が説明しなければならないとしている。

 「登記された権利の種類及び内容」の中には、当然に当該宅地又は建物に対する「差押登記」の有無も含まれる(熊本地裁1996(平成8)年9月4日判決)と指摘している。

 これらは不動産を巡る権利関係の基本であり、取引に係わる媒介業者が登記簿を閲覧するなどして権利関係を調査する義務を負うことは明らかである。

 不動産業者は媒介に当っては、善良な管理者の注意をもって媒介する義務を負う。契約前に既に差押の登記がある場合は、当然相談者の賃借権は競売による買受人に対抗出来ないのは自明である。

 従って相談者が明渡請求を受ける可能性は極めて高いと言える。このようなリスクの多い賃貸借契約を防ぐ手段は登記簿を調査することである。差押の登記の有無は登記簿によって簡単に知ることが出来る。差押登記簿の有無の調査は不動産業者の基本的義務である。この初歩的義務を尽くしていない。

 業者は、重要事項を記載した書面を交付して、宅建業法35条1項1号の説明義務を果たしていないことは明白であり、注意義務違反がある。

 登記簿の調査義務に関して、裁判所は「宅建業者は賃貸人に確認するのはもとより、疑問のある場合は登記簿を閲覧するなどして差押登記等の有無を確認し、賃借人に不測の損害を被らせないように配慮すべき義務がある」(東京地判1992(平成4)年4月16日判決)として損害賠償請求を認めている。

 上記、熊本地裁判決では、貸主と不動産業者に対して、借主の損害賠償請求(132万1800円)の全額を支払うよう命じた認めた。不動産業者に対しては、敷金・礼金・引越し費用として58万円の損害賠償の支払いを命じた。   

 

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【Q&A】 不動産業者から更新手数料を請求されたが支払義務があるのか

2005年06月16日 | 仲介手数料・不動産業者とのトラブル

  貸主が依頼した宅建業者の
    更新手続に対して報酬支払義務があるのか


 (問) 借家の賃貸借契約を更新する際、貸主に委託された不動産業者の仲介で契約の更新手続が行われた。その際の更新手数料(家賃の半月分)を不動産業者から請求された。支払わなければならないのか。


 (答) 借家の賃貸借契約が期間満了した場合、合意で契約を更新する。その際に不動産業者(宅建業者)が賃貸人と賃借人の間に入って契約の更新手続を行うことが日常的になっている。この場合、宅建業者は更新手続の依頼者に報酬を請求出来るのは勿論であるが、直接依頼していない者に対しても報酬の請求が出来るのか。

 「宅地建物取引業者は商法543条にいう他人間の商行為の媒介を業とする者ではないから、商事仲立人ではなく、民事仲立人である」(最高裁1969年6月26日判決)と言われている。

 民事仲立人とは、他人間の商行為以外の法律行為の成立に向けて尽力する事実行為であり、他人間の商行為の成立を目的とする商事仲立と区別される。民事仲立については明文の規定がなく学説・判例は一般に民事仲立を準委任と解している。

 従って宅建業者の行う媒介行為は民法上の準委任関係になる。宅建業者が当事者に報酬を請求出来るのは媒介に際して委任を受けた当事者に限られる。

 しかし宅建業者は営業として媒介を行うので商法上の商人に該当する。商人がその営業の範囲内において他人のために一定の行為をしたときは相当の報酬を請求することが出来る(商法512条商人の報酬請求権)。

  だが宅建業者が委任を受けない相手に対して商法512条に基づく報酬請求権を取得するためには「客観的にみて、該当業者が相手方当事者のためにする意思をもって媒介行為をしたものと認められることが必要である。単に委託者のためにする意思を持ってした媒介行為によって契約が成立し、その媒介行為の反射的利益が相手方当事者にも及ぶというだけでは足りない」(最高裁1975年12月26日判決)としている。

 従って宅建業者が契約更新に際して媒介報酬の請求が出来るのは原則として委託を受けた当事者に限られ、依頼していない当事者には報酬を請求出来ない。宅建業者が依頼していない相談者に更新手数料を請求するのは不当である。宅建業者が依頼者である貸主に対して報酬請求出来る上限は賃料の1ヶ月相当額+消費税である。

 

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【Q&A】 敷引き特約は消費者契約法10条により無効の判決 

2005年06月15日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

   敷引特約は消費者契約法10条により
      無効であるから敷金を全額返還せよ

 (問)  消費者契約法が初めて敷引特約に適用されて保証金(敷金)が全額借家人に返金されたという注目すべき判決が出たということですが、どんな内容だったのですか。


  (答)  大阪簡易裁判所の保証金返還請求に対する判決で保証金の75%の敷引を行うことは、消費者契約法第10条に違反し無効であるという刮目に値する判決(2003年10月16日)があった。

 敷引特約は阪神地域で家賃の6~10か月分に相当する金額を保証金として預け、明渡時に保証金の3~8割程度を差引き、未払家賃等があれば更にそこから差引いて残額を賃借人に返還するということを予め契約時に特約して措くものである。
 敷引は通常使用によって生じた汚れや破損等の自然損耗料、次の借主が入居するまでの空室分の補償(空室損料)、または家主にたいする礼金的要素が渾然一体となったものと言われている。

 裁判所も従来は原則として敷引特約を認めていた。だが消費者契約法(2001年4月1日)が施行されてからは、敷引特約は消費者契約法10条に違反し無効という判決が連続している。

 (事案の概要)
 借家人BはA株式会社と平成14年10月23日から10年の定期借家契約マンションを借りた。家賃は共益費込みで約8万円、保証金40万円であった。契約書には敷引特約があった。平成15年4月22日Bは転勤のため約6か月で物件を明渡した。しかし敷金は10万円返金があっただけだった。

 (争点)
 ①A株式会社は「契約終了時に保証金40万円から30万円を差引いて返還する敷引特約がある」と主張した。
 ②借家人Bは「敷引特約は民法その他の法律の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるから、消費者契約法10条に違反し、無効である」と主張した。
  これに対して裁判所は「入居期間の長短にかかわらず一律に保証金40万円のうち30万円を差引くこととなる前記敷引特約は、この限度で、民法及び借地借家法等の関連法規(判例、学説などにより一般的に承認された解釈を含む)の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるといえるから、消費者契約法10条により無効である」として借家人Bの主張を全面的に認める判決を下した。

  この後、敷引条項は消費者契約法10条に違反し無効とする判決が 
  2005年2月17日堺簡易裁判所   
  2005年4月20日大阪地方裁判所   
          と連続して出されている。

  消費者契約法全文

 

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【Q&A】 増改築を制限する特約がある場合、火災後の再築に地主の建替承諾は必要か

2005年06月14日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 増改築を制限する特約付の場合、
    火災後の再築には地主の建替承諾は必要か

  (問) 火災で借地上の建物が焼失してしまった。20年間の借地契約の残存期間は4年であるが、再築することは出来るのか。又、地主の承諾がいるのか。


 (答)  借地借家法施行(1992(平成4)年8月1日)前に設定された借地権については建物滅失後の建物築造に関しては、なお従前の例によるとされている(借地借家法附則7条)。

 最高裁は建物の《滅失》を次のように定義している。建物の滅失の原因が自然的であると人工的であると借地権者自身の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含むとしている最高裁1963(昭和38)年5月21日判決)。

 借地上の建物が火災で焼失した場合も建物滅失に該当するので、相談者の事例は借地法7条が適用される。

 7条には次の趣旨のことが書かれている(註1)。
 ①借地権の存続期間が終了する前に借地上の建物が滅失しても借地権自体は消滅しない。
 ②従って借地人は新たに建物を築造することが出来る。
 ③その再築建物の耐用年数は、借地権の残存期間を超えることが多いので、地主が滅失建物の再築に「遅滞ない異議」がなければ借地権の存続期間の延長を認める。借地権の存続期間延長の起算点は、旧建物が滅失した時(事例では火災で建物が焼失した日)である。
 ④借地権は建物滅失の日から起算して堅固建物については30年間、その他の建物は20年間存続する。
 ⑤但し、残存期間の方が長い時は、その期間による。
 以上が借地法7条の趣旨である。

 従って、地主が借地人の再築に反対する旨の異議を遅滞なく述べた場合、その異議の効果は、従来の借地権の存続期間が延長されないだけである。勿論借地人は、期間満了時に地主側に正当事由がない限り、更新請求による更新(借地法4条)や借地契約の期間満了後に「借地法6条」による法定更新を主張することが出来る最高裁1972(昭和47)年2月22日判決)。

 異議は遅滞なく述べなければならない。再築に着手しているにも拘らず、その完成間際になって異議を述べてもその異議は有効ではない高松高裁1972(昭和47)年10月31日判決)。

  <増改築を制限する特約がある場合はどうであろうか
 実際の借地契約では、「増改築をする場合は地主の承諾が必要である」とい条項が書かれているのが一般的であり、承諾なしに増改築をすると地主は契約を解除出来るという特約条項がある。

 このような特約は建物が火災で焼失した場合にまで適用されるのか。
  判例は、①「建物を新築する時は、地主の承諾を得る旨の特約があるとしても、この特約は、焼失した建物を再築する際にも地主の承諾が必要である趣旨ではない」(東京高裁1958(昭和33)年2月12日判決)としている。

 火災で建物を焼失し、住むところもない状態を1日でも早く解消する必要から、②「火災により建物が滅失した場合には再築を禁じる旨の特約は火災により建物が滅失した場合には特別の事情のない限り無効である」(横浜地裁1973(昭和48)年12月7日判決)としている。これは至極当然の結果である。

 最高裁は再築を制限する特約に対して明確に判断を下している。すなわち、借地法7条は、建物が滅失しても建物を再築することが出来ると規定している。7条の規定に反して再築を禁止する特約は、借地法11条の規定によって借地権者に不利なものとして無効とされる最高裁1958(昭和33)年1月23日判決)。

 従って、増改築を制限する特約は火災・地震・風水害が原因で滅失した建物の再築までを制限したり禁止する趣旨ではないことは明らかである。

 このように増改築に制限のある特約がある場合でも火災によって建物が滅失し、それを再築する場合は地主の承諾は不要という結論になる。

 次の問題は、建物が焼失した場合、再築までの間は、借地上に建物のない更地の状態が発生するが、その間に地主が第三者に敷地を売却した場合、借地権の対抗力はどうなるのか。借地人は買主に対抗出来るのかが問題になる。

 借地借家法は、借地人が借地上に以下のこと記載した掲示物を設置すれば、建物が滅失(焼失)日から2年間は借地権の対抗力を認めている。
 借地人が①建物を特定するために必要な事項(登記事項)、②建物が滅失(焼失)した日、③建物を再築する旨、以上を借地上の見やすい場所に掲示すれば借地権の対抗力を認める(借地借家法10条2項)(註2)としている。

 但し、「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」(借地借家法10条1項)とされている。借地借家法10条2項は「前項の場合において、」(註2)ということで、建物が登記されていることが前提になっている。従って、借地借家法10条2項の要件は、借地人が建物の滅失(焼失)前に、既に自己建物の登記を完了していることが必要である。建物を登記していない場合は、借地借家法10条2項は適用されないので、注意が必要である。

 


 

(註1) 借地法
第7条 借地権の消滅前に建物が滅失した場合に於て残存期間を超えて存続すべき建物の築造に対し土地所有者が遅滞なく異議を述べないときは、借地権は建物滅失の日より起算し、堅固の建物については30年間、その他の建物については20年間存続する。但し残存期間がこれより長きときはその期間に依る。

(註2) 借地借家法
第10条  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

2  前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

 

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【Q&A】 備付けのエアコンの修理代金は家主の費用負担

2005年06月13日 | 修理・改修(借家)

    備付けのエアコンの修理代金は
      修繕特約がある場合でも家主の費用負担

 (問) 賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修理代金を負担するのが道理だと思うのですが。


 (答) 民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。

 (1)「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁 平成2年10月19日判決)。

 (2)「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所 平成8年11月28日判決)。

 (3)横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本 件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替 費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人(賃借人)が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(横浜地方裁判所 平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)

 即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合でも、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効というのが裁判例である。
 上記、横浜地裁判決では、通常使用で発生した破損・損耗等の損害は賃借人に修繕義務がないと判示している。

 結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えない。従って、修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、家賃と相殺することが出来る。

 

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【Q&A】 旧借地法適用の借地契約を新法での借地契約に切替えられるか

2005年06月11日 | 契約・更新・特約

    更新を重ねた借地契約を合意解約し
     新法(平成4年8月1日施行)適用の契約へ切替えられるのか

 (問) 借地借家法施行(平成4年8月1日)前に締結した借地契約が更新を迎える。地主に借地契約を期間満了により合意で一旦終了させ、改めて借地借家法(新法)に基づく契約にして欲しいと言われた。


  (答) 期間満了により一旦、契約を合意解約し、改めてその時点から新法(平成4年8月1日施行の「借地借家法」)による存続期間30年の借地契約を新規に締結することにより、新法が適用される契約内容にすることは可能である。

 借地人が新法施行前に締結した借地契約を捨てて新法に基づく契約に切替えることに合理的な理由があり、借地人の真意に基づいて行われたという客観的な事実があれば切替えは可能である。

 普通借地権は新法では堅固・非堅固建物という区別をせずに一律に借地権の存続期間を原則30年としているものの、最初の更新は20年で2回目以降は10年である。借地人は将来的には期間を短縮され、更新拒絶の主張、更新料請求の機会が増える。増改築の制限も強化され借地人にとって何の利点もない。

 このように新法は旧法に比較すると全体として貸主側に有利に、借主側に不利なものになっている。そのため貸主が既存の借地契約を新法の適用のある契約にしたいと考えるのは当然であろう。

 新法成立時の参議院附帯決議に「既存の借地関係には更新等の規定は適用されない旨及び特約で新法を適用させることは無効である旨を、マスコミその他あらゆる方法を通じて周知徹底させること」とあるように、新法施行前に締結された既存の借地契約は新法施行後においても旧法が適用される(借地借家法附則4条但書及び6条)。

 そもそも、地主が新法に基づく借地契約に切替えることを借地人に要求する目的は、最終的には借地人の不利益になる契約内容に改悪するところに真の狙いがある。

 従って、地主がこのような不当な要求を押し付けようとしても借地人はこれに応じる必要はない。仮に借地人の無知に乗じ、或は地主の圧力に屈して借地人が意に反して嫌々従前の借地契約を形式上合意解約し、改めて新規に新法に基づく契約を締結した場合でも、合意解約に特段の合理的理由が存在せず、また借地人の真意に基づかないものであれば、旧法11条の強行規定により借地人に不利な特約として無効とされる。

 

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