東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 20年の借地契約の途中で堅固建物へ建替えたが契約期間は30年に自動的に延長されるのか

2008年04月30日 | 借地の諸問題

 (問) 昭和63年に父名義で借地の更新をした。その3年後に父が亡くなり、私が借地権を相続した。建物が老朽化していたので、平成5年に建替承諾料290万円を支払って木造2階建てから鉄骨4階建てへ建替えた。だが、借地契約書は父名義・存続期間20年のままで、存続期間30年の契約へ書換えずにいた。 地主は20年経ったので借地の更新だと言って坪10万円の更新料を請求してきた。建替承諾を受けて堅固建物を建てたのだから契約書を取交わさなくても、存続期間30年の契約に自動的に延長されるのではないか。


 (答) 借地借家法は平成4年8月1日から施行されている。それ以前に設定された借地権については「建物の滅失後の建物築造による借地権の期間の延長に関してはなお、従前の例による。」(借地借家法附則7条)とされている。この場合には旧「借地法」が適用される。

 借地法7条は借主が残存期間を超える耐用年数のある建物を再築することに対して貸主が遅滞ない異議を述べなかった場合、借地権は建物滅失の日から、堅固な建物については30年間、その他の建物については20年間存続する。但し、残存期間がこれよりも長い時はその期間による。このように建物再築による期間延長を規定する。即ち再築による法定更新を定めている。

 ここでの「滅失」は「建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含む」(最高裁昭和38年5月21日判決)。即ち、火事による建物の焼失や地震・台風による建物の倒潰の他に借主が再築のために建物を取壊す場合も含まれる。

 借地法7条にある貸主の異議申立ては、貸主に正当事由は必要がないが、存続期間の延長を妨げるだけのものである。貸主が異議を述べても借主は建物を取り壊す必要はない。従来の存続期間が満了した時は、借地法6条による更新の規定が適用される(最高裁昭和47年2月22日判決)とされているので、借主は法定更新を主張できる。勿論、借地法4条の更新請求による法定更新も主張できる。

 なお、借地法4条、6条による法定更新の場合は朽廃による借地権の消滅が問題になるが、7条による法定更新の場合は期間の途中で朽廃があっても借地権は消滅しない点に違いがある。

  結論、相談者の場合は、平成5年に貸主が堅固建物への建替えを承諾しているから、貸主の異議申立に関しては問題にならない。従って、借地法7条の規定から借地権の存続期間延長の起算点は旧建物滅失した時からである。即ち、旧建物を解体し、取壊しが完了した日が起算点となり、存続期間30年の借地契約が法定され、借地期間の延長を主張出来る。

 参考として借地法7条の条文上は存続期間の起算点は「建物滅失の日」となっている。しかし、20年以上も時間が経過すると滅失日が確定できない場合もある。そこで「建物保存登記日」を存続期間の起算点とした例もある(東京地裁昭和48年7月25日判決)。

 また、建替承諾の許可の裁判確定の時を存続期間の起算点とした例もある(千葉地裁昭和43年7月11日判決)。

 借地借家法(7条1項)では「借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。」となっている。

参考法令 (借地法
第7条 借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年間存続ス
但シ残存期間之ヨリ長キトキハ其ノ期間ニ依ル

 

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【判例】 適正地代を争った事例 (名古屋簡裁 平成19年3月30日判決)

2008年04月28日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介


 原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案


      名 古 屋 簡 易 裁 判 所 平成19年3月30日判決言渡し


      平成18年(ハ)第4095号 賃料確認等請求事件

 


主       文

 

1 原告と被告との間で,別紙一物件目録記載の土地についての賃貸借契約における賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万8000円, 同年8月1日以降は月額金2万0000円であることを確認する。

2 被告は,原告に対し,金16万0000円及びその内金である別紙二未払賃料一覧表左欄記載の各金員に対し,それぞれ対応する右欄記載の各期日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。

5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。


事 実 及 び 理 由

第1 請求
1 原告と被告との間で,原告が被告に賃貸している別紙一物件目録記載の土地の賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万9510円,同年8月1日以降は月額金2万2024円であることを確認する。 

2 被告は,原告に対し,金21万8954円及び別紙三未払賃料損害金一覧表記載の各未払賃料に対する各起算日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は,原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案である。


2 争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨で認められる事実
(1 ) 訴外亡Aは,訴外亡Bとの間で,昭和38年10月1日,別紙一物件目録記載の土地を木造建物所有の目的で,期間の定めなく,賃料月額金2200円(当初賃料はその後逐次改定,翌月分を当月30日払いの約定は,その後当月分を当月払い状態が続いたが,約定は当初のとおり。 )で賃貸借契約を締結し,同日,同Bに対し上記土地を引き渡した。

(2 ) 訴外亡Aは昭和53年3月14日死亡し,原告は相続により上記土地所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。他方,訴外亡Bは平成15年5月23日死亡し,被告は相続により上記建物所有権を取得し,本件土地の賃借権を承継取得した。

(3 ) 本件土地の賃料は,平成15年10月当時,月額金1万4000円であったが,長年低額に据え置かれ,租税等の増加や地価の上昇等近隣地代との均衡を欠き不相当となったことから,原告は被告に対し,平成15年10月16日,口頭で本件土地の賃料を平成16年1月1日から月額金4万円ないし5万円に増額 (その後月額金1万9510円に減縮) するとの意思表示をし,更に,平成18年7月29日到達の書面で本件土地の賃料を平成18年8月1日から月額金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)に増額するとの意思表示をした。

(4 ) 被告は,原告との話合いでは賃料値上げ額に合意できず,平成16年1月以降,引続き従前の賃料月額金1万4000円を現実に提供し,原告は賃料内金として受領していたが,同年12月末頃,原告に賃料持参の際,領収書交付を求めたことから原告と諍いとなり,被告は同年12月分賃料から以後
毎月,月額金1万4000円を弁済供託し,本件土地を賃借している。


3  争点

 平成16年1月1日から平成18年7月31日まで及び同年8月1日以降の本件土地の適正な改定継続賃料はいくらか。


第3  争点に関する判断
本件土地の適正な賃料額

(1 )  改定継続賃料の算定法式としては,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法が存するところ,鑑定の結果によれば,本件土地の賃料について,差額配分法,利回り法及びスライド法の3方式を併用し,各方式による平成16年1月1日時点での試算賃料(差額配分法月額2万2449円,利回り法月額1万3272円,スライド法月額1万3994円)及び平成18年8月1日時点の試算賃料(差額配分法月額2万6016円,利回り法月額1万3839円,スライド法月額1万4240円)を比較考量し,3方式の長所短所を考慮し諸要因による調整として4:1:1の加重平均により算出すると,平成16年1月1日時点の適正な改定継続賃料は月額金1万9510円,平成18年8月1日時点の適正な改訂継続賃料は月額金2万2024円が相当と結論付けており,鑑定内容における各資料の数値の採用や計算結果も適正なものと認められ,各試算資料の数値調整としての加重平均方式も, 諸要因の調整割合の評価は別として合理的なものと認めることができる。

(2 )  被告は, 本件鑑定結果が 賃貸人側に有利な差額配分法を過度に重視して,差額配分法,利回り法,スライド法の3方式による各試算資料の加重平均を4:1:1で改定継続賃料を算出するのは不合理であり,仮に不合理でないとしても,本件事案の和解案として裁判所から提示された平成16年1月1日時点で月額金1万7400円,平成18年8月1日時点で月額1万9500円の金額と比較しても増加額が大きく,合理的とみなされる複数の適正地代に関する意見があればその結果等を平均調整するのが相当であり,被告が来年以降,定年退職による収入減で家族を扶養する経済環境にあることも斟酌されたいと主張するが,本件審理中の和解案との比較は,和解提示額が根拠に基づく計算結果であったとしても鑑定結果と平均調整することは相当でなく,被告の今後の経済状況の斟酌も事情として理解はできても,本件の適正改定継続賃料を算定する要因として考慮するのは相当でない。

(3 )  本件で,適正な改定継続賃料を算定するには,鑑定の結果も踏まえ,本件賃貸借契約の経緯や当事者間の個別事情も総合的に斟酌する必要があるところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の貸借は,昭和23年頃の使用貸借で始まったが,昭和38年頃,訴外亡Bが木造建物を新築した際,賃貸借契約に改められ,以後,昭和40年代後半から50年代前半の二度に亘る地価高騰期や平成初頭のインフレによる地価高騰期,その後の不況やデフレによる地価下落期等の大きな価格変動にも,期間の長短はあるものの当時1000円刻みによる賃料増加に止められ,訴外亡B生存中は比較的低額に抑えられてきたものの,被告が賃借人となった後は5ヶ月程で,直近の改定時期から1年後の大幅な増額改定要求を受けたこと,本件土地は市街地の住宅地域で最有効使用も住居等であること,本件現行賃料が,鑑定結果では,本件土地の経済的価値に基づく理論上の適正賃料とされる差額配分法による試算資料数値と大きく乖離していること等が認められ,鑑定資料の3方式による試算資料の加重平均による数値調整をするに当たっては,経済的価値に即応した性質の強い差額配分法を加重する必要性は認められるものの,現行賃料を基準要因の一つとする利回り法やスライド法による数値とも応分の均衡を保つ必要性も認められ,3方式の加重平均は2:1:1で算出した額が相当と認められることから ,適正な改定継続賃料 (100円以下切捨て) は,平成16年1月1日時点は月額金1万8000円,平成18年8月1日時点は月額金2万0000円であると認めることができる。

2  以上によれば,原告の被告に対する本訴請求は,主文認容の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。


                    名 古 屋 簡 易 裁 判 所

                              裁 判 官   渡 邊   直 紀

 


       別紙一
                        物 件 目 録
           土地
           名古屋市C区DE丁目所 在
           地 番 F番
           地 目 宅地
           地 積 104.16平方メートル

 


 

 

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立退料として家賃の80か月分で合意 (東京・豊島区)

2008年04月26日 | 建物明渡(借家)・立退料

       建物を買取った不動産業者から立退請求

 東京の豊島区でクリーニングを営業していたNさんは10数年前に建物の老朽化を理由に家主から明渡しを請求され、家賃の受領を拒否されたので供託していました。

 その後、道路拡幅の問題がおこり、話し合った結果、建物をセットバックし新しく20メートルとなる道路沿いに新築の家に引越することで双方の合意ができました。引越した直後にNさんは突然死し、高齢の母親だけで居住することになりました。

 数年は何もなかったのが、昨年の10月、突然建物を買取った不動産業者から、6月以降の家賃未納で契約を解除するという内容証明書が送られてきました。身に覚えのない中身で、あわてて組合に相談にきました。

 組合では、早速、反論の内容証明書を送付し、併せて家主が、家賃の受領を拒否したので供託し、対抗することにしました。

 その後、代理人と証する不動産会社と交渉し、高齢の母親を娘の家に引き取ることにし、そのための増築費用として立退き補償金をおおよそ家賃の80ヶ月分を支払うことで合意しました。

 

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例】 敷引特約は消費者契約法10条により無効(京都地方裁判所 H19.4.20判決)

2008年04月25日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介


事件番号    平成18年(レ)第79号
事件名      敷金返還請求控訴事件裁判
年月日        平成19年4月20日
裁判所名    京都地方裁判所
部          第2民事部
結果        原判決取消し,請求認容

(判示事項の要旨)
   控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が消費者契約法10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,敷金残金30万円などの返還を求めたところ,上記敷引特約は消費者契約法10条により無効であると判断された事例


 
主     文

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,30万円及びこれに対する平成16年10年2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 主文1ないし3項同旨
(2) 仮執行宣言

2 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。


第2 事案の概要等
事案の概要
 本件は,控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に敷金35万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が消費者契約法10条により全部無効である0として,被控訴人に対し,不当利得に基づき,敷金残金30万円及びこれに対する約定の敷金返還期日の翌日である平成16年10年2日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,敷引特約は有効であるとして,控訴人の請求を棄却したことから,控訴人がこれを不服として,控訴した。

当事者間に争いがない事実
( 1) 控訴人は,平成13年12月25日,被控訴人との間で,下記の約定で賃貸借契約を締結し (以下 「本件賃貸借契約」 という。),同日 , 被控訴人から,賃貸借物件の引渡しを受けた。

ア 賃貸借物件       不動産A
イ  所在地         京都府相楽郡 a 町b 番地のc
ウ 賃料           月額7万3000円
エ 賃貸期間          平成13年12月26日から平成15年12月25日まで
オ 敷金                     35万円
カ 敷金の返還時期    退去後1か月以内

(2) 控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,被控訴人との間で,敷金35万円のうち30万円については解約引き金として控訴人に返還しない旨の合意をし(以下「本件敷引特約」という。) ,被控訴人に対し,敷金35万円を交付した。

(3) 控訴人は,平成16年9月1日,被控訴人に対し,上記賃貸借物件を明け渡した。

(4) 控訴人は,被控訴人から,敷金35万円のうち5万円の返還を受けた。


第3 争点
   本件敷引特約は,消費者契約法10条により,全部無効となるか。

第4 当事者の主張
  (原告の主張)
 本件敷引特約は,次のとおり,控訴人が本来有しているはずの敷金返還請求権を特約によって制限し,義務を加重する条項であって,信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから,消費者契約法10条によって,特約全体が無効となる。

1 賃貸借契約は使用収益と賃料支払が対価関係に立つのであるから,使用収益させることにより当然に自然損耗が発生する。よって,賃料は当然に自然損耗についての修繕費用を包含するのであるから,自然損耗についての修繕費用を賃料以外の名目で回収する敷引特約は,賃料の二重取りとなる。

2 そもそも契約条項は賃貸人が決定しているのが通常であり,賃借人はそれに従うほかなく,条項の削除を申し入れても賃貸人に拒否されれば,それ以上の交渉が不可能なことは周知の事実である。このように,一般消費者たる控訴人が賃貸借契約締結時に敷引特約を削除して契約を締結することは事実上極めて困難である。

3 京滋地区において敷引特約が出回り始めたのは,ここ数年のことであり,商慣習と呼べるほど成熟・定着しているものではない。4 本件敷引特約は,被控訴人の損害の有無及び契約期間の長短に関わらず,敷金の85%を超える金額を控除して返還するものであり,控訴人にとって不当に不利である。


 (被告の主張)
 本件敷引特約は,次のとおり,消費者契約法10条に反するものではない。

1 自然損耗についての修繕費用を賃料という名目で回収するか,敷引金という名目によって回収するかは,原則として賃貸人の自由に委ねられている事柄である。そして,賃貸人が契約締結時に自然損耗の修繕費を含めた適正な賃料を設定することは,その時点で将来にわたる賃貸借の期間が不明である以上,現実的には不可能であるから,自然損耗についての修繕費用を敷引金という名目によって回収する本件敷引特約には合理性がある。

 このように,賃貸人が自然損耗についての修繕費用を賃料名目ではなく敷引金名目で回収しようと考えて賃料を設定している場合には,目的物の通常の使用に伴う自然損耗に要する修繕費用が考慮された上で賃料が算定されているとはいえないのであるから,賃料の二重取りには当たらない。


2 賃貸人が,次の入居者を獲得するためには,入居しようとする者に,前借主の生活臭を感じさせない程度にリフォーム(自然損耗の修繕)を行う必要があり,そのリフォームの程度は,賃貸借期間の長短とは直接の関係はなく,1年程度の短期間の賃貸借であっても,相当程度のリフォームは必要である。 そして,賃貸人は,賃貸借の期間がどの程度継続するか予測し難いため,リフォーム費用を含めた適正な賃料額を設定することは困難であるから,リフォーム代を賃料とは別の名目で回収することには,一定の合理性がある。


3 建物の賃貸借は,賃貸人が建物を貸し,賃借人が賃料を支払って借りるという,単純な契約関係にすぎず,賃貸人と賃借人との間に情報の格差というものは特にはない。また,代替性のある賃貸物件は多数存在するから,消費者は敷引を望まないのであれば,敷引がなされない賃貸物件を選択すればよいのであって,交渉力の格差というものも存在しない。


4  消費者契約法10条にある「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」とは任意規定を指すところ,敷引特約は少なくとも関西地方においては事実たる慣習と認められるから,民法92条により,敷引特約は任意規定と同様に扱われるべきこととなる。そして,敷引特約は,賃借人の負担すべき原状回復費用を予定し,あるいは通常の損耗に対する修理費用を賃借人の負担とする趣旨で定められているものであり,契約締結時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されている限り,賃借人の信頼や期待を裏切るものではないから,直ちに信義誠実の原則に反するものであるとは到底認められない。また,敷引特約が事実たる慣習として成立すること自体,それなりの制度としての合理性が認められる


5  本件敷引特約においては,敷引額が敷金の85%を超える金額であるが,本件敷引特約は,自然損耗についての修繕費用を賃借人の負担とする趣旨であるから,敷金と敷引額の割合を問題とするのは無意味であり,敷引額が自然損耗についての修繕費用として相当な金額であるかどうかこそが問われるべきであるところ,本件建物の間取り,専有面積及び賃貸借期間からみて,自然損耗についての修繕費用を30万円と定め,これを敷金から差し引くことは特に不当とはいえない。


第5  当裁判所の判断
1  本件敷引特約が消費者契約法10条により無効となるには,①本件敷引特約が,民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであること,及び②民法1条2項に規定する基本原理である信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることが必要である。


2  そこで,まず,前者の要件について検討するに,敷金は,賃料その他の賃借人の債務を担保する目的で賃借人から賃貸人に対して交付される金員であり,賃貸借目的物の明渡し時に,賃借人に債務不履行がなければ全額が,債務不履行があればその損害額を控除した残額が,賃借人に返還されることが予定されている。そして,賃貸借は,一方の当事者が相手方にある物を使用・収益させることを約し,相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって成立する契約であるから,目的物を使用収益させる義務と賃料支払義務が対価関係に立つものであり,賃借人に債務不履行があるような場合を除き,賃借人が賃料以外の金銭の支払を負担することは法律上予定されていない。また,本件各証拠を検討しても,関西地方において敷引特約が事実たる慣習として成立していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件敷引特約は,上記第2の2(2)のとおり,敷金の一部を返還しないとするものであるから,民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の権利を制限するものというべきである。

3  次いで,本件敷引特約が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるかについて検討するに,上記2説示のとおり,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の性質上当然に予定されているから,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生じる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する自然損耗に係る投下資本の回収は,通常,修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。したがって,自然損耗についての必要費を賃料により賃借人から回収しながら,更に敷引特約によりこれを回収することは,契約締結時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとしても,賃借人に二重の負担を課すことになる。これに対し,被控訴人は,自然損耗についての修繕費用を賃料という名目で回収するか,敷引金という名目によって回収するかは,原則として賃貸人の自由に委ねられている事柄であり,本件においては,自然損耗についての修繕費用を敷引金という名目によって回収することにつき合理的理由があると主張するところ,確かに,自然損耗についての必要費の回収をどのような方法で行うかは,投資者たる賃貸人の自由に委ねられているから,賃貸人が,賃料には自然損耗についての必要経費を算入せず,低額に抑えた上で, 自然損耗についての必要費を敷引金という名目によって回収したとしても,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するとはいえない。しかし,本件各証拠を検討しても,控訴人及び被控訴人が,本件賃貸借契約締結時に,自然損耗についての必要経費を賃料に算入しないで低額に抑え,敷引金にこれを含ませることを合意したことを認めるに足りる証拠はないから,被控訴人の同主張は理由がない。

  また,証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,敷引特約は,事実たる慣習とまではいえないものの,関西地区における不動産賃貸借において付加されることが相当数あり,賃借人が交渉によりこれを排除することは困難であって,消費者が敷引特約を望まないのであれば,敷引特約がなされない賃貸物件を選択すればよいとは当然にはいえない状況にあることが認められ,これに,上記第2の2(2)及び(4)のとおり,本件敷引特約は敷金の85%を超える金額を控除するもので,控訴人に大きな負担を強いるものであることを総合すると,本件敷引特約は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであると判断するのが相当である。これに対し,被控訴人は次の入居者を獲得するためのリフォーム代を敷引金名目で回収することは,一定の合理性を持つ旨主張するが,新規入居者獲得のための費用は,新規入居者の獲得を目指す賃貸人が負担すべき性質のものであって,敷引金名目で賃借人に転嫁させることに合理性を見いだすことはできない。また,被控訴人は,建物の賃貸借は,単純な契約関係にすぎず,賃貸人と賃借人との間に情報の格差が特にはないと主張するが,一消費者である賃借人と事業者である賃貸人との間では情報力や交渉力に格差があるのが通常であって,このことは被控訴人が事業者である本件においても同様であるから,被控訴人の同主張も理由がない。


4  以上によれば,本件敷引特約は,消費者契約法10条により,特約全体が無効であると認められるから,控訴人の本件請求は理由があり,これを棄却した原判決は相当でなく,本件控訴は理由がある。そこで,原判決を取り消して,本件請求を認容することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条2項本文,61条を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。


 京都地方裁判所第2民事部

  裁判長裁判官    山 下     寛

      裁判官     森 里     紀 之

            裁判官  衣斐  瑞穂は,転補につき,署名押印することができない。

                                       裁判長裁判官   山 下     寛

 


 

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大阪の賃貸保証会社 突然休業 (読売)

2008年04月23日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

2008年3月8日 読売新聞


 3万人契約、未払い4000万円?

 賃貸住宅の家賃の連帯保証を行う保証会社のウィル賃貸保証(大阪市港区、小谷浩一社長)が2月初旬から、契約者に説明しないまま事業を停止していることがわかった。家賃滞納者の代わりに家主に納める立て替え金の支払いが滞っており、現時点で、未払いは4000万円以上にのぼる可能性がある。契約入居者は約3万人で、今後、別の保証人をつけるための保証料負担を迫られる恐れもある。財団法人・日本賃貸住宅管理協会(東京)には入居者や家主の双方から相談が相次いでおり、同協会は同社を退会処分にする方針。

 同社は、2005年4月に設立。契約書類などによると、入居者は契約時に家賃(1か月分)24%相当の保証料、1年ごとに5000円の更新料を支払う。家賃を滞納すれば、同社が立て替え、その後、入居者に返済を求める。契約では、その際、年14・6%の利息を付けることができる。

 関係者によると、1月15日に支払い予定だった立て替え金が、家主に振り込まれておらず、同社は家主側に「新システムの移行作業でエラーが発生。復旧まで3週間かかる」との文書をファクスしたが、2月5日、会社入り口に「1か月の間休業します」と書いた紙を掲示。その後、経営陣と連絡が取れなくなった。

 同社はホームページで「審査は3分。生活保護者、無職、金融ブラック者でも審査は通ります」などと宣伝。元役員によると、他社に比べて審査基準が緩く、保証料も安いことから、大阪、神戸などで、毎月1500件前後の新規契約を結び、契約件数は常に3万件前後あった。立て替え金の支払額は毎月、計4000万~5000万円だったという。

 日本賃貸住宅管理協会には2月以降、家主や入居者から数十件の相談や苦情が寄せられているが、同社と連絡がとれない状態。同協会は「家賃を滞納している入居者に同社から督促が来る可能性があるが、実際に同社が立て替え払いしているかどうかを確認してほしい」と注意を呼び掛けている。

 読売新聞の取材に対し、2年前に同社と契約した女性は「立て替えてもらっているはずの家賃が支払われていない。このままでは部屋を明け渡さなくてはいけないかもしれない」と不安を漏らしている。

 

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賃貸保証会社 (赤旗)

2008年04月22日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

賃貸の連帯保証会社トラブル 督促10分おき 深夜訪問 過酷な家賃取り立て野放し


 アパートやマンションなどの賃貸契約の際に、入居希望者から保証料を取って連帯保証人になる企業「賃貸保証会社」によるトラブルが起きています。保証会社の利用は連帯保証人がいない高齢者や単身者を中心に広がっていますが、家賃滞納を立て替えた保証会社が、過酷な取り立てを行う事例も。業界関係者が「弱者いじめをする会社が少なくない」という保証会社の実態とは―。 
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ドアに張り紙

 ▽玄関のドアに保証会社が督促の張り紙をした▽家賃6万5千円を滞納したら、立て替えた保証会社から7万5千円を請求された▽家賃2カ月分を滞納したら2日後に払えると言っても、保証会社から出ていけと言われた。督促で10分おきに電話してくる▽保証会社が深夜に取り立てにやって来て、さらに深夜訪問の手数料を請求された―。

 これらは全国の消費生活センターに寄せられた、保証会社による強引な家賃督促や立ち退き要求の事例です。張り紙、間隔を空けない督促電話、深夜の取り立てなどは、サラ金であれば貸金業法で禁じられている行為です。

 国民生活センター情報分析課によると、保証会社の取り立てに対する相談は、10年前ごろから年間10数件ほど消費生活センターに寄せられています。同課の担当者は「相談件数はまだ少ないが、最近の事例を見ると非常に悪質だ。賃貸保証会社は比較的新しいビジネスなので、これからトラブルが増える可能性がある」と指摘します。

 保証会社の利用が広がる背景には、連帯保証人を立てられない入居者の増加があります。業界最大手の日本賃貸保証(東京・日本橋)の担当者は「入居希望者が差別なく住居を借りられるように、他社に先駆けて事業に乗り出した」と胸を張ります。

 業界団体の「賃貸保証制度協議会」(40社が加盟)によると、保証会社の利用率は年間の賃貸契約の10%から15%ほどの見込み。「まだまだ小さい業界」(井坂泰志会長)といいますが、すでに定着しつつあるビジネスです。


立ち退き代行

 保証会社は、入居者との契約の一方で、大家とも契約を結んでいます。そのため家賃滞納の際には入居者に対する督促、立ち退き手続きまで代行します。

 ある大手保証会社の入居者との契約を見ると、(1)家賃を滞納し連絡が取れない際は物件に立ち入る(2)滞納もしくは連絡が取れず、保証会社が通常の生活を営んでいないと判断し、予告から7日以上たったときは使用禁止、契約解除する―などの権限を保証会社に与えるといった入居者に不利な内容です。

 保証会社を監督する官庁や規制する法律がないため、激しい取り立てが横行しています。「弱者いじめをする保証会社も少なくない」(都内の保証会社役員)というのが実態です。

 入居者に保証会社の利用を要求する大家や不動産会社も出てきています。半年前に千葉市に移り住んだ女性(32)は、アパート探しの際に気に入った物件があったものの、不動産屋に「この物件は保証会社を入れないと貸せない」といわれ、あきらめたといいます。

 国土交通省の担当者は「保証会社による具体的なトラブルの事例は把握していない。対策等の検討は行っていない」(住宅局総合住宅整備課)と話しています。

 

しんぶん赤旗 (2008年3月4日)より

 


 

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家賃は4000円値下げし、更新料は半額の回答 (東京・立川市)

2008年04月21日 | 家賃の減額(増額)

 立川市高松町に住むCさんは、6畳1室で風呂なしで家賃は月額3万6000円払っている。

 今年の11月5日に契約期限が満了し、不動産業者から契約更新の案内が来た。更新料が家賃の1か月分の3万6000円、借家人賠償保険が1万5000円、更新手数料が1万2600円を請求された。

 アパートは古く、ガラス戸もひび割れ、雨戸もよく閉まらない状態である。近隣の家賃は1DKでも月額3万5000円ぐらいで、設備の状況から家賃の減額と更新料をなくすよう請求した。

 交渉の結果、家賃は4000円値下げして月額3万2000円に、更新料は半額にするとの回答が組合にあった。

 更新料については契約書に更新時に支払う約束はあったが、貸手市場時代の悪い慣習でなくすべきであると主張した。

 なお、ガラス戸等の修理を近日中に行なうとのことなので、回答のあった条件で今回は了承し、契約を更新した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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イラク空自 違憲判断 (4) (朝日)

2008年04月18日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

     イラク空自違憲の判断 政府の理屈の矛盾突く

       2008年04月18日 朝日新聞


 周辺でゲリラ攻撃や自爆テロが頻発しても、航空自衛隊の輸送機が離着陸するバグダッド空港は「非戦闘地域」。戦地への自衛隊派遣と憲法とのつじつま合わせのために政府がひねり出した理屈の矛盾を、名古屋高裁が突いた。空自の活動は来年7月に期限切れを迎えるが、違憲判断で派遣継続のハードルが高まった。  

 ■あいまいな「非戦闘地域」
 「政府は総合的な判断の結果、バグダッド飛行場は非戦闘地域の要件を満たしていると判断している。高裁の判断は納得できない」。町村官房長官は17日の記者会見で、あからさまに不満を示した。

 高裁判決は「バグダッドは、国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、物を破壊する行為が現に行われている。イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」と指摘。空自の活動はイラク復興支援特措法にも憲法9条にも違反するとした。

 政府はバグダッド全体が戦闘地域か非戦闘地域かの判断はしていないが、少なくとも「バグダッド空港と輸送機が飛ぶ経路は非戦闘地域」(防衛省幹部)と認定している。

 町村氏は会見で、「バグダッド飛行場には商業用の飛行機が多数出入りしている。本当に戦闘地域で、俗な言葉で言うと、危険な飛行場であれば、民間機が飛ぶはずがない」と反論した。

 高裁判決は戦闘地域であるバグダッドに多国籍軍の武装兵員を輸送することは「武力行使と一体化する」とも指摘したが、政府は「そもそも非戦闘地域だし、武力行使と一体化するものではない」(町村氏)との立場だ。

 ただ、あいまいな「非戦闘地域」という概念は、イラク派遣をめぐるこれまでの国会審議でも、たびたび大きな論争を巻き起こしてきた。

 政府はイラクへの自衛隊派遣が憲法9条に違反しない根拠として、「非戦闘地域への派遣」を挙げてきた。だが、非戦闘地域と戦闘地域の区別を聞かれた当時の小泉首相は「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、私に聞かれたってわかるわけない」。さらには「自衛隊が活動しているところは非戦闘地域だ」との答弁まで飛び出した。

 政府は「戦闘」を「国または国に準ずる者による組織的、計画的な攻撃」と定義し、自衛隊や米軍などが攻撃を受けて反撃しても、「国家かそれに近い組織」が相手でなければ、その地域は「戦闘地域」にはあたらないとした。「弾が飛び交う状態でも戦闘地域ではない」との論法も成り立ってしまう。

 今回の判決は、この矛盾点を指摘した。武装勢力の攻撃や、米軍の度重なる掃討作戦を理由にバグダッドを「戦闘地域」と断定。「バグダッドへの空輸は、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」とした。

 特措法策定にかかわった政府関係者は「『非戦闘地域』の概念は(インド洋で給油活動をする)テロ対策特措法にも盛り込まれた。だが、イラクの治安がここまで悪くなるとは予想できず、結果的にこの概念が大論争を招いた」と漏らす。

 
 ■特措法延長に障壁
 「それは判断ですか。傍論。脇の論ね」
 福田首相は17日夜、名古屋高裁の違憲判断への感想を記者団に聞かれ、こう語った。そして、空自の活動について「問題ないんだと思いますよ」と言った。

 06年7月に陸上自衛隊をサマワから撤退させた後も、日本政府はイラクでの空自活動を継続してきた。「日米同盟維持と国際貢献の観点から、当面、活動を続ける必要がある」との判断で、イラクでの空自は「日米同盟の象徴」の役割を引き受けてきた。

 それだけに政府は、違憲判断にかかわらず、「(空自の活動を)今の時点で見直す考えはない」(増田好平防衛事務次官)との立場だ。

 ただ、自衛隊のイラク派遣に反対してきた野党側は勢いづく。民主党の菅直人代表代行は17日の記者会見で「非戦闘地域の判断が、しっかりやれていなかった」と批判。そもそも「非戦闘地域を線引きできるという発想がおかしい」(幹部)との意見が民主党内では大勢だ。

 政府・与党は今年1月、インド洋での給油活動を可能にする補給支援特措法を、国会の大幅延長と衆院の3分の2再可決を使ってようやく通したばかり。イラク特措法が来年7月に期限切れとなることから、早くも「(苦労した給油継続の)二の舞いになることだけは避けたい」との声が出る。

 そんななか、政府・与党が検討を進めているのが、自衛隊の海外派遣を随時可能にする一般法(恒久法)だ。

 自民党は10日、イラク特措法と補給支援特措法、国連平和維持活動(PKO)協力法の3法を統合した形での法整備を目指すプロジェクトチーム(PT)を発足させた。座長の山崎拓・元幹事長は「今国会中に一般法の政府案を提出しないと間に合わない」と意欲を示す。

 ただ、公明党が慎重姿勢を崩しておらず、与党間協議のめどすら立っていない。そのうえ、民主党も17日の判決を受け、「まだ一般法の議論をする時期ではない」(幹部)。今回の違憲判断は今後の一般法の議論にも影を落としそうだ。

 ■緊張の離着陸、700回近い輸送
 空自によるイラクでの空輸活動は、小牧基地(愛知県)から派遣された3機のC130輸送機が担っている。クウェートを拠点に、当初はイラク南部のアリとを結んでいたが、06年7月に初めて首都バグダッド、同年9月にはイラク北部アルビルの各飛行場への輸送を開始した。04年3月の活動開始から4年。派遣が5回目となる隊員もいる。

 これまでの派遣隊員数は延べ約3千人。クウェートとイラク国内の3空港との間を週4~5日結び、輸送回数は総計694回、運んだ物資の量は約600トンに上る。15次となる派遣隊は3月10日と4月14日に派遣されたばかりだ。

 空輸活動では、米軍など多国籍軍の兵士や国連要員、武器・弾薬以外の物資を運ぶとされているが、日本政府・防衛省は詳細を明らかにしていない。差し止め訴訟の原告らによる空輸実績の開示請求でも、開示資料はいずれも日付や内容の部分が「黒塗り」の状態だった。

 日本政府は「バグダッドなどの空港は非戦闘地域」としているが、実際は「飛行場の離着陸時に地上から攻撃を受ける危険性が高い」(自衛隊関係者)とされ、隊員の精神的負担は大きい。C130がイラク国内で離着陸する時には、通常時に比べて急角度での上昇や降下をすることで低い高度にいる時間を短くしているという。

 バグダッドなどへの飛行では、C130に取り付けられたミサイル警報装置が鳴り、旋回やフレア(おとりの熱源)を出すなどの回避行動をとることもある。昨年12月、現地を視察した田母神俊雄・航空幕僚長もC130でバグダッド空港に着陸する間際、「ミサイル警報装置が鳴り、一瞬緊張した」と話した。

 これまでの飛行で、C130が実際にミサイルの追尾を受けたことは確認されていない。しかし、05年には英空軍のC130が、バグダッド空港離陸後に地上からの攻撃を受けて墜落するなどの被害が出ている。

 「空輸活動が武力行使になるのか」「インド洋の給油活動なども違憲になってしまうのではないか」。活動を続ける制服組は今回の判決にとまどう。ある自衛隊関係者は「判決に法的な効力がないなら活動にすぐに影響はないが、今後は政治で議論されるのではないか」と、判決の波及を懸念した。「活動を続ける隊員や家族がかわいそうだ」との声も漏れた。

 

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 違憲判決、原告ら「9条は生きている」 (3) (朝日)

2008年04月18日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

     違憲判決、原告ら「9条は生きている」
     2008年04月17日20時53分 朝日新聞(アサヒコム)より


          2008年4月17日名古屋高裁判決 判決全文


 「9条が生きているということを示した判決だ」――。自衛隊のイラク派遣を違憲とした17日の名古屋高裁判決を受け、4年以上にわたって訴え続けてきた原告たちや弁護団は、思い思いの言葉で喜びを表した。判決を手に、政府に対して派遣の中止や隊員の帰還などを求めていくことも確認した。

 「イラクで行われている空輸活動は、憲法9条に違反する活動を含んでいる」
 裁判長が述べた瞬間、廷内にはどよめきが広がった。原告団のうち2人が走り出し、この日に備えて用意した数本の旗から「自衛隊イラク派兵は憲法違反」「画期的判決」を選び、裁判所前で掲げた。雨が降る中、待ち受けた数十人から大きな拍手が起き、抱き合う人たちもいた。

 裁判所近くで開かれた報告集会には、原告や支援者ら約150人が集まった。原告代表で大学講師の池住義憲さん(63)は「提訴を呼びかけて4年2カ月。憲法9条を、平和憲法を持つ国の国民として誇りを持って語れる日が来た」とあいさつ。弁護団長の内河恵一弁護士は「何とか戦争のない国を、と思ってきただけに感無量だ。取り返しのつかない状況になりつつある今、引き返すことができる時だと思う」と話した。

 弁護団事務局長の川口創(はじめ)弁護士は「憲法9条に正面から向き合っており、予想を上回る歴史的で画期的な判決だ」と評価した。自衛隊海外派遣の恒久法議論が出ていることを挙げ、「この時期に違憲判決が出た意味は大きい。戦争をする国造りを止めるためにも、この判決を武器に政府に働きかけたい」と話した。原告・弁護団も国会議員や政府に訴えていくことを確認し合った。

 原告側証人として、判決を法廷で聞いた小林武・愛知大教授(憲法学)は取材に対し、「自衛隊のイラク派兵が違憲であること、平和的生存権が具体性を持つ権利であることの2点をきわめて明解に認めた歴史に残る判決だ。期待以上の内容に涙を禁じ得なかった。今まさに進行中の政策が『違憲』と断罪されたことに、政府がどう応えるか注目したい」と語った。

 

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「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断 (2) (朝日)

2008年04月18日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

    「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断
    2008年04月17日20時44分  朝日新聞(アサヒコム)より

            2008年4月17日名古屋高等裁判所判決文


 自衛隊イラク派遣の違憲確認と派遣差し止めを求めた集団訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であり、青山邦夫裁判長は、航空自衛隊が行っている現在のイラクでの活動について「憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」との判断を示した。首都バグダッドは、イラク復興支援特別措置法にいう「戦闘地域」に該当すると認定。多国籍軍の空輸は武力行使を禁じた同法と憲法に違反すると結論づけた。一方、原告が求めた派遣差し止めを却下した一審・名古屋地裁判決を支持し、控訴は棄却した。

 全国各地で起こされたイラク派遣をめぐる訴訟は、一部は最高裁決定もすでに出ているが、違憲判断が示されたのは初めて。このため、「敗訴」したものの、原告側は上告しない方針を表明している。「勝訴」した国は上告できないため、違憲判断を示した今回の高裁判決が確定する見通しだ。

 判決はまず、現在のイラク情勢について検討。「イラク国内での戦闘は、実質的には03年3月当初のイラク攻撃の延長で、多国籍軍対武装勢力の国際的な戦闘だ」と指摘した。特にバグダッドについて「まさに国際的な武力紛争の一環として行われている人を殺傷し物を破壊する行為が現に行われている地域」として、イラク特措法の「戦闘地域」に該当すると認定した。

 そのうえで、「現代戦において輸送等の補給活動も戦闘行為の重要な要素だ」と述べ、空自の活動のうち「少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸するものは、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」と判断。「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、(国際紛争の解決手段として武力行使を放棄した)憲法9条に違反する活動を含んでいる」と結論づけた。

 さらに判決は、原告側が請求の根拠として主張した「平和的生存権」についても言及。「9条に違反するような国の行為、すなわち戦争の遂行などによって個人の生命、自由が侵害される場合や、戦争への加担・協力を強制される場合には、その違憲行為の差し止め請求や損害賠償請求などの方法により裁判所に救済を求めることができる場合がある」との見解を示し、平和的生存権には具体的権利性があると判示した。

 ただ、今回のイラク派遣によって「原告らの平和的生存権が侵害されたとまでは認められない」と述べ、1人1万円の支払いを求めた損害賠償は認めなかった。また、訴えの利益を欠くなどとして、違憲確認や差し止め請求はいずれも不適法な訴えだと退けた。

 
   
 <自衛隊イラク派遣差し止め訴訟> 元郵政大臣・防衛政務次官の故・箕輪登さんが04年1月、札幌地裁へ提訴したのを最初に、名古屋のほか、仙台、宇都宮、東京、甲府、静岡、京都、大阪、岡山、熊本で各地裁に市民が集団で訴えを起こした。これまでの地裁判決は原告側がすべて敗訴。宇都宮、静岡の両訴訟は最高裁で上告が棄却されたほか、仙台、大阪の訴訟は高裁で控訴が棄却された。いずれの判決も、自衛隊イラク派遣が違憲かどうかについては判断を避け、差し止め請求も却下されてきた。

 名古屋訴訟は04年2月に最初の提訴があり、7次にわたって3千人余が原告として名を連ねた。1~5次訴訟について、名古屋地裁は06年4月、憲法判断に踏み込まないまま派遣差し止めを却下、慰謝料請求を棄却した。今回の控訴審には1122人の原告が参加した。

 

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「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断 (1)

2008年04月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 自衛隊のイラク派遣に反対する市民グループのメンバーらが国を相手取り、派遣が憲法違反であることの確認などを求めた訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であった。

 青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は、米兵の輸送などを行っている航空自衛隊の活動について「武力行使を禁じた憲法9条1項に反する」と述べ、違憲と認定した。

  判決は、現在のイラクの状況について、首都バグダッドで米軍と武装勢力との間で激しい紛争が起き、一般市民に多数の犠牲者が出ていることを指摘し、「イラク特措法が合憲であったとしても、活動地域を非戦闘地域に限定したイラク特別措置法にいう『戦闘地域』に該当する」と認定した。

 航空自衛隊の活動については、「空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸する活動は、武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」と判断し、航空自衛隊のイラクでの活動は武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法9条に違反する活動を含んでいると結論づけた。

  そのうえで、1審・名古屋地裁判決と同様、原告が求めた損害賠償の支払いなどは訴えが不適法だとして、原告側の控訴を棄却した。

 しかし、全国で起こされたイラク派遣をめぐる訴訟で、一、二審を通じて違憲判断が示されたのは初めてである。    2008年4月17日名古屋高等裁判所判決  判決文 全文

 イラク派遣差し止めをめぐっては、北海道、仙台、栃木、東京、静岡、京都、大阪、岡山、熊本で各地裁に市民が提訴したが、これまで原告敗訴の判決が出ている。

 

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現行地代の2倍値上げが拒否されると土地明渡請求 (東京・福生市)

2008年04月17日 | 土地明渡(借地)

 JR青梅線福生駅から約200メートル北西に向かった福生市福生でクリーニング取次店を営業するBさんは、昨年11月以来地主の代理人の不動産業者と協議が始まった。当初土地の売買の話があり坪当り30万で売るという話を持ち出しておきながら、地主は坪40万でないと売らないと言い出し、結局地主は気が変わったと言って売買の話は不成立になった。

 更新の話に移り、地主の条件は更新料300万円で地代を現在の倍額年30万円に値上げすると伝えてきた。Bさんは今年に入って組合と相談し、更新料と値上げについて地主側の言いなりにはならないことを打ち合わせた。

 Bさんの態度が変わると更新料250万円まで下げてきたが、Bさんはきっぱり拒否した。

 不動産業者は「地主は弁護士を立て裁判になったら200万から300万かかる。店の前に看板を立てられて商売ができなくなる」と脅してきた。

 その後、直ぐに弁護士から契約解除の脅しの内容証明郵便がきたが、組合から拒否する回答を出したところ、その後何も言ってこなくなった。

 

東京借地借家人新聞より

 

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家賃減額調停の申立をしたら (東京・台東区)

2008年04月15日 | 家賃の減額(増額)

 台東区東上野で約30㎡の店舗でスナックを営業しているYさんは平成16年の更新に際し、に家主が100万円の更新料を請求してきた。

 とても支払えないので、これを拒否すると家賃4万5000円の値上げを要求して来た。これも拒否すると家賃の受領を拒否したので、毎月13万円の家賃を供託してきた。

 この不況でお客が減って経営が苦しくなったので、平成18年4月組合と連名で毎月の家賃を10万円に値下げするよう家主に請求した。その時は家主代理人の弁護士から応じられないという回答があった。

 しかし、平成19年の2月に東京簡易裁判所に「家賃減額」の調停申立を行い、同年2月23日に裁判所から第1回目の調停期日が3月17日午前11時という通知があった。

 すると、調停の通知が届いた日に家主代理人の不動産業者から「家賃は10万円にするが、3月の家賃支払からにしてほしい」との家主の回答を連絡してきた。

 10万円への家賃減額請求が調停を1回もやらずに見事に成功した。

 

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立退料100万円と引換えに建物明渡請求の裁判を提起された (東京・国立市)

2008年04月14日 | 建物明渡(借家)・立退料

 国立市富士見台で共同住宅に居住しているAさんは、平成15年6月に家賃1か月月5万3000円、共益費1000円で入居した。

 入居2年後に突然不動産業者を通じて立退きを請求された。Aさんは立退きを拒否したが、他の入居者は退去し、8室の中で残ったのはAさん1人だけとなった。

 平成19年8月に家主の代理人の弁護士から6か月月後に解約するとの通知が送られてきた。Aさんは、病気を抱え移転するだけの経済力も体力もなく組合と相談の上明渡しを拒否したところ、2月に裁判所から建物明渡し請求の訴状が届いた。家主は正当事由の補充として100万円の立退き料を提供している。

 組合では顧問弁護士と相談し、法律扶助制度を使って弁護士を代理人に立てることにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地主が借地の明渡を通知してきた (東京・豊島区)

2008年04月11日 | 土地明渡(借地)

 豊島区駒込で借地している10数人のグループは、20年前の更新の際に更新料の問題で地代の受領を拒否された。以来、20年間にわたって供託をしてきた。グループとして毎月第3水曜日に、地代の徴収をかねて全員が集合してきた。

 この間にも、地主からの様々な嫌がらせもあった。修理修繕をしている借地人に対して、大修繕や改築に当たるなどと主張し、中止を要求するなどの行為や大声でわめくなどのいやがらせ行為など後を絶たなかった。

 その地主から、この2月に借地人10数人に内容証明の郵便が送付されてきた。びっくりした借地人は、お世話になっている組合に相談に来た。内容は「この3月で期間満了となるが、更新を拒絶する。現在供託されているお金は、使用損害金の一部として受領する。借地として使用している土地を期限までに明渡すよう通知する」と記載されていた。

 組合と相談し、借地人も現在、借地している土地には建物が存在するので契約を更新し、引き続き住み続ける意思を表明することにした。内容証明で10数人分を送付したところ、地主は内容証明書の受け取りそのものを拒否してきた。正当の事由のない更新拒絶であることを説明し、全員で権利を守ることにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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