東京・台東借地借家人組合1

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「景観利益は保護」最高裁初判断 (朝日)

2006年03月31日 | 住宅・不動産ニュース

 国立のマンション訴訟、住民側の敗訴が確定 最高裁判決


 
   朝日新聞2006年3月31日

  東京都国立市の「大学通り」沿いの14階建てマンション(高さ約44メートル)をめぐり、地元の住民が「景観が壊された」と建築主の「明和地所」(渋谷区)などを相手に、上層部の撤去などを求めた訴訟の上告審判決が30日、あった。最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は、「良好な景観の恩恵を受ける利益(景観利益)は法的保護に値する」とする初めての判断を示した。だが、今回の場合は「利益への違法な侵害はない」として、住民側の上告を棄却。住民側の敗訴が確定した。

  第一小法廷は都市の景観について「歴史的、文化的環境を形作り、豊かな生活を構成する場合には客観的な価値がある」と指摘。憲法の幸福追求権をベースに地域住民には「景観利益」があると認め、各地の景観被害をめぐって住民が裁判で回復を求める道を開いた。

 一方で、利益が違法に侵害されたと言うためには、「侵害行為が法令や公序良俗に反したり、権利の乱用に当たるなど、社会的に認められた行為としての相当性を欠く程度のものでなければならない」と、実際の被害救済にはやや高いハードルを設ける内容となった。

 舞台の「大学通り」については、整備された歴史的な経緯や、街路樹と建物の高さの調和などから「景観利益がある」と判断。だが市には当時、高さなどを規制する条例はなく、建物自体に法令違反もないため、「容積と高さを除けば、調和を乱すような点はない」として、景観利益の侵害はないと結論づけた。

  原告住民の石原一子さん(81)は「撤去が認められず残念だ」とする一方、景観利益という考え方が認められたことは「7年間の努力が認められた」と喜んだ。

  明和地所は「当方の主張が認められた。入居者に心配と迷惑をかけたが、今後は、安心して生活してもらえる」との談話を出した。

  この訴訟では、一審・東京地裁判決が「地権者の景観利益を侵害する」として、通りに面した棟の20メートルを超える部分(7階以上)の撤去を命じたが、二審で覆された。二審は「景観利益」も認めなかった。

 

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【判例紹介】 建物の使用貸借について借主の家族に使用借権の相続が認められた事例

2006年03月28日 | 借家の諸問題

 判例紹介

 建物の使用貸借について貸主と借主の家族の間には貸主と借主本人との間と同様な人的関係があるとして使用借権の相続が認められた事例 東京高裁平成13年4月18日判決、判例時報1754号)

(事案の概要と争点)
 、AはB夫婦の子供として育てられ、昭和26年Bが本件建物を建てた後も一時期を除いてB一家と同居していた(なおBの夫は昭和34年死亡)。AはY1と昭和45年結婚し、その頃からY1もその子Y2もA及びBと同居を始め、以後Aら一家は平成5年9月までの23年間Bと本件建物で同居して生活を共にしBの面倒を見てきた。
 Bはその後本件建物を出て娘のX1と同居するようになったが、Aら一家に本件建物の明渡しを求めることはなかった。

 、Bは平成8年に死亡、X1らが本件建物を相続した。Aは平成9年に死亡した。そこでX1らは本件建物の所有権に基いて、Aの死亡後も本件建物に居住し続けているY1Y2親子に対し、本件建物の明渡しを求めた。なお、Aからもその相続人Y1らからも、本件建物の所有者であるB又はその相続人X1らに対し家賃が支払われていたことはなかった。

 、Y 1ら親子は本件建物に居住し続けることができるか、又は、明渡さなければならないか、これが本件の争点である。

(判決要旨)
 、 建物所有者BとAとの法律関係 AはB夫婦の実子同然に育てられてきたこと、AY1Y2ら一家は23年間Bと共同生活を送りBの面倒を見てきたこと、Bが家を出て同居が終わったあともBがAら一家に本件建物の明渡しを求めたことがないこと、などに鑑みれば、Bが家を出たころ、BとAとの間で黙示的に(暗黙のうちに)本件建物の使用貸借の合意が成立したものと解することができる。

 2、 Y1らはAの権利を承継できるか 民法599条は借主の死亡を使用貸借の終了原因としている。これは使用貸借関係が貸主(B)借主(A)の特別な人的関係に基礎を置くものであることに由来する。しかし、本件のようにBとAとの間に実親子同然の関係があり、BがAの家族と長年同居してきたような場合、BとAの家族との間には、BとA本人との間と同様の特別な人的関係があるというべきであるから、このような場合に民法599条は適用されないと解するのが相当である。(註)民法599条「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」

 そうするとYらはAの借主としての地位を相続により継承し、他方、X1らは貸主としての地位を相続により承継したことになる。よって、Y1らは明渡す必要はない。

(寸評)
 妥当な判決である。ABの関係が賃貸借ならこのような問題は生じない。なぜなら、Aの賃借権は配偶者Y1と子Y2に当然相続されるからである。
 本件は、貸主と借主の相続人との人的関係を基礎に民法599条(註)の適用を否定したところに意義がある。

 (註)民法599条「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」

 仮に婚姻届をしていない内縁関係の場合でも、「借地借家法」36条には、「居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を継承する」と書かれている。

 しかし、婚姻届をしていない内縁の場合は法律的には居住権は弱い。「借地借家法」36条「但し書き」で、「相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない」と賃貸人に拒否される場合があるとされている。

 婚姻届を「した」場合と「しない」場合で、なぜ、このように差別しなければならないのか。居住権を弱める、「借地借家法」36条「ただし書き」条項は削除されるべきである。

(2001.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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更新料は坪10万円 (東京・豊島区)

2006年03月23日 | 更新料(借地)

     組合のアドバイスで地主に更新料の根拠を示せと主張

 豊島区上池袋に住む榎本さんは借地して60年になる。20年前に親が地主の言いなりになり更新料を支払った。 定年を過ぎ、年金生活の現在、今回の更新及び更新料については、どうなることなのか不安でしょうがなかった。

 地主から「更新についてのご案内」という通知をもらった。その中には「更新する意思があるのか。更新するなら坪当り10万円を支払え」と記されていた。30数坪を借りている榎本さんにとっては300数10万円を支払わなければならない。そんな矢先に城北借地借家人組合のチラシが入った。そこには西武百貨店で借地借家の無料相談を行う案内が載っていたので、さっそく相談にいった。

 榎本さんの「更新料の相場はいくらかですか。更新の期間が過ぎてしまったらどうなるのですか」という質問に対して相談員は「更新料支払うという約束がなければ支払う必要がないこと。更新時期が過ぎても正当な事由がないかぎり更新拒絶はできないことその場合、法定更新されて期間は20年になること」などを丁寧に説明された。

 目からうろこが取れた榎本さんは組合に入会し、その上で地主に「(1)更新料を支払うという法的根拠を示してください(2)坪10万円という数字の公の根拠(裁判の判例など)を示してください」という通知を出すことにした。その後、地主からの回答はない。榎本さん「回答がないというのは、多少不安であるが、組合に入会してよかった」と述べた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 敷金が返ってこないが、 取り戻す方法は

2006年03月19日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 マンションを引越したが預けた敷金が
           返ってこないが、取り戻す方法は

 (問) 7年間借りていたマンションを私の都合により引越した。預けてあった敷金24万円は、管理業者が「後日清算します」と言って返してくれない。10日後に請求書を送ってきた。

 その内容は「乙は本物件を明渡す時は本物件を原状に回復しなければならない」という契約条項を根拠に請求金額は「畳の表替え、クロスの張替え、玄関ドアーとベランダ手摺りの塗装、鍵の交換、ハウスクリーニング代の合計額から敷金24万円を差し引いた不足分36万3200円」となっていた。

 私には、請求された金額の支払義務はないと思います。敷金を取り戻す方法はないものでしょうか。


(答) 敷金は借主の家賃など債務の担保として家主に預けているもので、建物を明渡す時点で家賃の未払分など借主が家主に支払うべき債務があれば、それを敷金から差し引いた残金が返還される。勿論、債務がなければ敷金は全額返還される。

 貸家の修繕について、民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要なる修繕をする義務を負う」と規定している。借主が建物を普通の使い方で使用した結果、年月が経過して汚れたり、擦り傷等の通常損耗や自然損耗の修繕は、家主に修繕義務がある。通常損耗や自然損耗の修繕費用は家賃に含まれているというのが最高裁の判断である(最高裁2005年12月16日判決)。

 もっとも、普通の使い方ではなく、借主が誤って壁に穴をあけたとか畳に焼け焦げをつくったようなものについては借家人が弁償しなければならない。

 原状回復とは、借家人が建物を借りた後に、和室を洋室にしたとか間仕切りをしたとか棚を吊ったとかしたものを借りる前の形に戻すことで、修繕とは別のことである。

 管理業者が請求してきたものは、次の人に貸すために家主のする仕事の費用であり、それを前に借りていた人に支払わせるというのはとんでもない悪徳商法である。勿論、相談者が支払うべき債務ではないことは明らかである。従って、借主が先ずやることは、家主に内容証明郵便で敷金を全額返せという請求をすることである。

 

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高額更新料 (東京・豊島区) 

2006年03月18日 | 更新料(借家)

  家主の一方的な値上げと受領拒否に対し供託で頑張る

 豊島区南長崎で2軒長屋の店舗を借りて商売をしていた橋本さんと須永さんは昨年の年末に5年目の契約更新の時期を迎えた。2人とも、この不況の中で商売も大変で、売上も中々伸びないどころか後退している。本来ならば、賃料を下げてほしいと思いつつも、現行のままの条件で更新すると思っていた。

 その矢先の12月に、家主が持ってきた更新に際しての通知書には「(1)賃料を現行の12万円を13万円に値上げする。(2)更新に際して更新料として新賃料の2カ月分を支払うこととする。(3)契約期間は3年間とする。」というものであった。

 「賃料を値下げしてほしいと思っていたのに値上げを通知され、その上、今まで支払っていなかった更新料まで請求され、期間も5年から3年契約に変更を要求されている」こんな理不尽なことが許されるのかと思って、知人に相談したところ、組合を紹介された。

 組合で、賃料の増減、契約内容の変更には双方の合意が必要なことを説明され、この時期に一方的な値上げは認められないとして、現行どおりの賃料を持参したところ家主は受取を拒否してきた。橋本さんは隣の須永さんも同じ通知書を受け取っていたので2人で組合に入会し、合意更新が出来ないならば、法定更新で、賃料の受取を拒否したので供託して頑張ることにした。2人とも「組合に入会したことで安心して対応できる。」と語った。

 

東京借地借家人新聞より

 

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公道に接しない袋地の住民 お隣を車で通ってOK (朝日)   

2006年03月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 公道に接しない袋地の住民
   お隣を車で通ってOK   最高裁初判断

  公道に接していない袋地の所有者が隣の土地を通る権利は民法で認められているが、果たして車で通ることまで認められるのか――。こんな問題が争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は16日、「必要性などを総合的に考え、認められる場合がある」との初判断を示した。車での通行権を否定した二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 民法上、他人の土地を通ることができる範囲は「必要最小限度」とされるため、「人が通れる程度」との解釈が一般的だったが、車が普及した現代社会のニーズに応え、解釈の幅を広げた形だ。第一小法廷は「他人の土地を車で通る必要性や周囲の状況、横切られる土地の所有者が受ける不利益などを総合的に考えて判断する」との目安を示した。

  問題となったのは、千葉県船橋市で県が開発した千葉ニュータウンの事業地と、川の堤防などで囲まれた土地。墓地建設を計画する地主らが「市道に出るには、幅約2メートルで直角に曲がる通路しかなく、車での通行が困難」として、隣の県有地を車で横切る権利の確認を求めて提訴した。

朝日新聞 2006年3月17日より

 


 

最高裁判決 全文


民法の関係条文

(公道に至るための他の土地の通行権)
 
第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。 

 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第211条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第212条 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。

第213条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。

 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

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【判例】 民法210条は自動車が通行出来ることが前提 (最高裁判決全文)

2006年03月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

               最高裁の判決文


 平成18年03月16日 第一小法廷判決 平成17年(受)第1208号 通行権確認等請求及び承継参加事件

要旨: 自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容を判断するために考慮すべき事情

内容:  件名 通行権確認等請求及び承継参加事件 (最高裁判所 平成17年(受)第1208号 平成18年03月16日 第一小法廷判決 一部破棄差戻し,一部却下)  原審 東京高等裁判所 (平成15年(ネ)第6340号、平成16年(ネ)第6340号)

 

                      主    文

1 原判決のうち第1審判決別紙物件目録記載2の土地に係る通行権確認請求に関する部分を破棄し,同部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。
2 上告人らのその余の上告を却下する。
3 前項の部分に関する上告費用は,上告人らの負担とする。
         


                       理    由

 上告代理人黒須雅博,同橘高郁文の上告受理申立て理由について
 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 第1審判決別紙所有地目録記載の各土地は,約1万5200㎡に及ぶ一団の土地であり,現在,上告人らがそれぞれ所有している(ただし,同目録中,「B」,「C」,「D」,「E F(2名共有)」,「G」,「H」とあるのを「上告人X1」と,「I」,「J」,「K」,「L M・N・O(4名共有)」とあるのを「上告人X2」とそれぞれ改め,「Pの欄」及び「956-3」を削る。以下,訂正後の同目録記載の各土地のことを「本件一団の土地」という。)。

 本件一団の土地の東には▲号緑地が,西にはa川の堤防が,南には第三者の所有地である千葉県b市c983番1の土地(以下,同市c所在の土地は地番のみを表示する。)等を隔てて国道▲号線が,北には上告人X3所有の957番3の土地等に接する形で市道▲号線がそれぞれ存在する。また,▲号緑地の東には,新住宅市街地開発法に基づく都市計画事業であるいわゆる千葉ニュータウン事業(以下「本件事業」という。)により宅地開発されたdニュータウンが存在する。なお,▲号緑地は,本件事業により設置された公共施設である。

 (2) 本件一団の土地は,昭和46年ころまでは農地として利用されており,その東側に位置するいわゆる赤道(以下「本件赤道」という。)が本件一団の土地から現在のdニュータウン方面へ出入りする通路として利用されていた。本件赤道は,本件事業の施行者である被上告人が,昭和52年2月23日,本件赤道を含む公共施設の管理者の同意を得た結果,被上告人の所有となり,新たな公共施設である▲号緑地の一部となった。被上告人は,その後,おおむね本件赤道の跡に沿って,▲号緑地のほぼ中心部分に,自動車の通行が可能な幅員約4mの道路(以下「本件道路」という。)を整備した。本件一団の土地は,昭和48年ころから昭和50年ころまでの間,本件事業に係るdニュータウンの造成工事の際の残土処理場として利用され,昭和53年ころから昭和63年ころまでの間,千葉県b市に対し,野球のグラウンドとして賃貸された。本件赤道及び本件道路は,上記の各期間,残土を運搬するダンプカーや野球のグラウンドへ出入りするための自動車の通路として利用されていた。

 (3) 千葉県八千代市所在のQ寺は,本件一団の土地において,野球のグラウンドとしての使用が終了した後,墓地の建設を計画したが,住職が死亡したことなどから,その計画は実現しなかった。上告人X3は,Q寺の後を引き継ぎ,本件一団の土地において墓地の建設をするため,第1審判決別紙所有地目録(前記訂正後のもの)記載のとおり本件一団の土地のうちかなりの部分を占める土地の所有権を取得した。上告人X3は,平成11年3月3日,千葉県知事に対し,墓地,埋葬等に関する法律に基づき墓地等の経営の許可申請をし,同年10月ころから墓地の造成に取り掛かった。

 千葉県知事は,平成13年4月4日,上記許可申請について不許可処分をした。しかし,千葉地方裁判所は,平成15年11月21日,上記不許可処分を取り消す旨の判決を言い渡し,同判決はそのころ確定した。千葉県知事は,平成16年12月3日付けで上記許可申請につき許可処分をした。
 なお,上告人X3を除く上告人らは,その所有地を墓参者のための駐車場,観光果樹園及びバーベキュー場として活用する計画を有している。

 (4) 被上告人は,平成11年7月5日,建設大臣に対し,▲号緑地内の緑地に区分されていた本件道路を歩行者専用道路に変更する旨の施行計画の変更の届出をした。また,被上告人は,平成12年1月ころ,本件道路につき自動車の通行を禁止し,同年5月ころ,本件道路の東側入口に,平成14年6月ころ,本件道路の西側入口にそれぞれポールを立て,本件道路を自動車が通行することができないようにした。本件事業の施行者である被上告人は,▲号緑地内に散策のための小道を設け,市民が自由に利用することができる憩いの場として提供するとともに,本件道路を▲号緑地の維持管理用道路及び歩行者専用道路としている。

 (5) 上告人X3は,平成13年ころ,市道▲号線に通ずる道路を設置する目的で,957番3の土地を買い受けた。本件一団の土地は,上告人X3が現在本件一団の土地の中で所有する955番12,同番18及び957番3の各土地に設置した通路により北側の市道▲号線に通じているが,上記通路が直角に左折する状態となっており,狭いところで幅員が約2.2mしかないため,軽自動車であっても切り返しをしなければ出入りをすることができない状況にある。

 現在の957番3の土地は,元957番の土地の一部であったところ,昭和47年3月16日,元957番の土地が957番1ないし4の各土地に分割された(以下「本件分割」という。)ために生じたものである。957番3の土地は市道▲号線に9m以上接しており,同番2の土地も同市道に約9.41m接している。957番2の土地は,本件分割後,R株式会社に対し,鉄塔敷地として売却された。なお,957番1及び同番4の各土地も上記市道に接しているが,これらの土地は,上告人らが所有する本件一団の土地には含まれていない。

 (6) 第1審判決別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地」という。)は,957番3,955番12及び同番18の各土地並びに市道▲号線に接しており,被上告人が管理している。本件土地は,▲号緑地の北西端に位置する約20㎡の土地である。

 2 本件は,上告人らが,被上告人に対し,①民法210条1項に基づく公道に至るための他の土地の通行権(以下「210条通行権」という。)又は通行の自由権に基づき,上告人らが本件道路を自動車で通行することの妨害禁止及び本件道路上の各ポールの撤去を求め,②上告人らが本件土地について自動車による通行を前提とする210条通行権を有することの確認を求めた事案である。

 3 原審は,次のとおり判断して,上告人らの請求をいずれも棄却すべきものとした。
 (1) ▲号緑地内には散策のための小道が設けられており,市民が自由に利用することができる憩いの場として提供されていることなど同緑地の公共施設としての本来の用途にかんがみると,同緑地内にある本件道路について,上告人らが自動車の通行を前提とする210条通行権や通行の自由権を有するものとまでは認められない。

 (2)ア 1筆の土地が公道に十分に接し,かつ,公道に至る幅員も十分にあったところ,数筆の土地に分筆されて所有者が異なることとなったため,分筆後の1筆の土地のみでは,自動車による通行が困難となった場合,分筆に係る他の筆の土地所有者に対し,民法213条1項に基づく公道に至るための他の土地の通行権(以下「213条通行権」という。)を主張することができることがあるとしても,分筆に関係のない他の筆の土地所有者に対して210条通行権を主張することはできない。

 イ これを本件についてみると,元957番の土地は,市道▲号線に十分に接していたところ,本件分割がされ,957番2の土地がRに対して鉄塔敷地として売却されたため,957番3の土地のみをもってしては,自動車による通行が困難となったものである。それにもかかわらず,上告人らは,元957番の土地から分筆された957番2の土地等について213条通行権を主張するのではなく,もともと別筆であり,かつ,所有者も異なる本件土地について210条通行権を主張するものであり,失当というほかない。

4 しかしながら,原審の上記3(2)イの判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 前記事実関係によれば,上告人X3が所有する957番3の土地に隣接している955番12及び同番18の各土地は,本件分割によって生じたものではないから,本件分割によって本件一団の土地のうち955番12及び同番18の各土地以南の土地(以下「955番12の土地等」という。)の所有者が,元957番の土地から分割された957番2の土地等について213条通行権を取得したものということはできない(本件分割当時,元957番の土地所有者と955番12の土地及び同番18の各土地の所有者が同一人であったという事情もうかがわれない。)。したがって,955番12の土地等の所有者が他の土地に対して有する公道に至るための通行権は,本件分割の前後を通じて210条通行権であることに変わりはない。

 (2) 210条通行権は,その性質上,他の土地の所有者に不利益を与えることから,その通行が認められる場所及び方法は,210条通行権者のために必要にして,他の土地のために損害が最も少ないものでなければならない(民法211条1項)。

 前記事実関係によれば,955番12の土地等の現在の所有者である上告人らは,955番12の土地等から本件道路や957番3の土地等を通じて徒歩により公道に至ることができることから,本件においては,徒歩による通行を前提とする210条通行権の成否が問題となる余地はなく,本件土地について,自動車の通行を前提とする210条通行権が成立するか否かという点のみが問題となるのであり,上告人らも本件土地について上告人らが自動車の通行を前提とする210条通行権を有することの確認を求めるものである。

 ところで,現代社会においては,自動車による通行を必要とすべき状況が多く見受けられる反面,自動車による通行を認めると,一般に,他の土地から通路としてより多くの土地を割く必要がある上,自動車事故が発生する危険性が生ずることなども否定することができない。したがって,自動車による通行を前提とする210条通行権の成否及びその具体的内容は,他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,自動車による通行を前提とする210条通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。そうすると,上告人らが,本件土地につき,自動車の通行を前提とする210条通行権を有するかどうかという点等についても,上記のような判断基準をもって決せられるべきものである。

 (3) 前記事実関係によれば,①昭和47年の本件分割後,957番2の土地は,Rに売却され,その後鉄塔敷地として使用されており,そのために955番12の土地等から自動車で市道▲号線に接する957番3の土地に至るのが困難となっていることがうかがわれること,②他方,955番12の土地等の所有者は,本件分割がされたころから被上告人が本件道路を自動車によって通行することを禁じた平成12年1月までは,本件赤道や本件道路を自動車により通行することができたこと,したがって,それまでは957番2の土地を含む元957番の土地を自動車で通行する必要性がなかったこともうかがわれること,③ところが,現在,955番12の土地等を所有している上告人らは,本件一団の土地において,墓地を経営したり,墓参者のための駐車場等を経営することを計画しているというのであり,955番12の土地等から自動車で市道▲号線に出入りをする必要性があることがうかがわれること,④本件土地は,▲号緑地の北西端に位置する約20㎡の土地にすぎないことが明らかである。したがって,本件土地について,955番12の土地等の所有者である上告人らのために自動車による通行を前提とする210条通行権が認められるか否かは,これらの事情の有無及び内容も,他の事情と共に総合考慮して判断されなければならない。

 5 以上によれば,本件分割によって生じた土地に213条通行権が成立することを前提に,上記事情等を考慮することなく本件土地について自動車の通行を前提とする210条通行権の成立を否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち自動車の通行を前提とする210条通行権の確認請求に関する部分は破棄を免れない。そして,上告人らが,本件土地につき自動車による通行を前提とする210条通行権を取得したかどうかについて,更に審理を尽くさせるため,同部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。なお,上告人らは,本件道路の通行妨害禁止及び各ポールの撤去請求に関する上告については,上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないから,同部分に関する上告は却下することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


(裁判長裁判官 甲斐中辰夫、  裁判官 横尾和子、  裁判官 泉 治、  裁判官 島田仁郎、  裁判官 才口千晴)

 


 

民法の関係条文
(公道に至るための他の土地の通行権)
 
第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。 

 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第211条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第212条 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。

第213条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。

 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

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耐震偽装の影響 (朝日) 

2006年03月15日 | 住宅・不動産ニュース

    マンション発売戸数4カ月連続前年割れ
          耐震偽装影響か

  2006年03月14日   朝日新聞 より

 首都圏のマンション発売戸数が昨年11月から今年2月まで4カ月連続で前年同月を下回ったことが14日、不動産経済研究所が発表したマンション市場動向でわかった。昨年11月に発覚した耐震強度偽装事件の影響で、マンション購入を見合わせる消費者が増えるとみた業者が大量供給に慎重になったためとみられる。首都圏のマンション販売は景気回復や都心回帰の動きで99年以降、年間8万戸超の好調が続いてきたが、事件が水を差した形になった。

 首都圏4都県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の2月のマンション市場動向によると、新規発売戸数は前年同月比16.7%減の5979戸となり、2月としては98年以来8年ぶりに6000戸を下回った。昨年末のマンション業者の2月の販売計画は約7500戸だったが、2割が販売されなかったことになる。

 2月発売のマンション207件のうち、52件は発売戸数が10戸未満にとどまり、東京湾岸の超高層マンションなど大型物件の発売が翌月に延期されたり、数十戸の発売を予定した物件で数戸の発売にとどまったりした。同研究所によると、消費者の買い控えを心配する業者が販売を控えたという。売れ残りの在庫も前月より159戸増え、5782戸になった。

 首都圏のマンション発売戸数は、昨年10月までは3カ月連続で前年同月より1割前後の伸びで増えていた。しかし、昨年11月に前年同月比2.4%減に転じた。同研究所の福田秋生企画調査部長は「耐震強度偽装事件の影響がないとは言えない。今後数カ月の販売戸数の動向に注視する必要がある」と話している。首都圏マンション供給、大幅減 2月、8年ぶり5000戸台 耐震偽装の影響 。

 今年2月の首都圏の新規マンション発売戸数が前年同期比16・7%減となり、2月としては8年ぶりに5000戸台に落ち込んだことが14日、不動産経済研究所のまとめでわかった。耐震偽装問題の影響もあって客に買い控える傾向が出る一方、マンション業者が発売時期を遅らせるなどの動きもあるとみられ、偽装問題の影響が広がり始めた格好だ。

 研究所のまとめによると、2月の発売戸数は5979戸で、前年同期より約1200戸減少。地域別では東京都区部で前年同期比20・5%減、神奈川県で同23・2%減などとなった。前年同月割れは4カ月連続だが、減少幅は膨らんだ。

 首都圏では平成11年から7年連続で年間の新規マンション発売戸数が8万戸を突破していたが、2月に5000戸台に落ち込んだのは大量供給前の10年以来となった。

 研究所は調査結果について、「迷った末に購入していた客層が買い控える一方、業者が発売を遅らせたり、戸数を小分けして発売し始めた」と指摘。「各業者が発売戸数を抑えることで契約率を高止まりさせようとしており、耐震偽装問題の影響もある」としている。

 ただ、業界内には「大手の発売動向は好調。中堅以下の業者の発売が難しくなった」(大手業者)との指摘がある一方、「大手の中には土地を寝かせてマンション価格が上がるのを待つ動きがある」(中堅業者)という見方もあり、耐震偽装問題を機に業者が発売量をコントロールしている実態も浮かび上がっている。

 

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【判例紹介】 室内に多量のゴミを放置したことが契約解除の理由になるとされた事例 

2006年03月14日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 アパートの賃借人が室内に社会常識の範囲をはるかに超える著しく多量のゴミを放置したことが、賃貸借契約の解除事由になるとされた事例 東京地裁平成10年6月26日判決。判例タイムス1010号272頁)

  (事案)
 Aは共同住宅の所有者(賃貸人)。Bはその賃借人。 Aは平成元年10月、Bとの間で2年間の約定で、共同住宅の1室を賃貸し、更新を重ねていた。

 Aは平成10年2月に、室内に空き缶、空き瓶等のゴミを放置していることを理由に契約解除した。 A・B間の契約には、賃借人は居室内において、危険、不潔その他近隣の迷惑となるべき行為をしてはならない旨の特約条項があった。

 Aの契約解除事由の存否が争点となったが、Aの主張が認められた事案。

(判旨)
 「以上の事実によれば、Bは、貸室内において危険、不潔、その他近隣の迷惑となるべき行為をしたということができ、Aとの間に締結した賃貸借契約10条に違反したことが認められる。
 確かに、信頼関係を基礎とする継続的な賃貸借契約の性質上、貸室内におけるゴミ放置状態が多少不潔であるからといって、そのことが直ちに賃貸借契約の解除事由を構成するということはできない。 しかしながら、本件では、賃貸人から再三の注意を受けてきたにもかかわらず、事態を改善することなく2年以上の長期にわたって、居室内に社会常識の範囲をはるかに超える著しく多量のゴミを放置するといった非常識な行為は、衛生面で問題があるだけでなく、火災が生じるなどの危険性もあることから、Aやその家族及び近隣の住民に与える迷惑は多大なものがあるといえるのであって、このことは、賃貸借契約の解除事由を優に構成するものといわざるを得ない」

(寸評)
 これまで、同種の事案として、犬猫の餌付けなどをめぐって争われたものがある。

 契約の特約として一定の行為を禁止する条項があることが多いが、どの程度の違反行為が契約解除の事由となるかは、個々の事案に即して判断することになろうが、具体的な違反行為が信頼関係を破壊するものでなければ、契約解除の効力を認めないというのが、判例の定着した考え方である。

 本件は、契約解除を肯定した事例として参考になる。

(2000.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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借家の明渡し請求 (東京・台東区) 

2006年03月10日 | 建物明渡(借家)・立退料

       無断大修繕をこじつけに建物の明渡請求をされる  

   日本提で印刷業を営んでいる加藤さんは、木造2階建約坪を借家している。建物は古いがその都度家主の承諾を受け、小まめに修理を重ね、我家同然の気持ちで程度良く維持している。建物を自己負担で修理をしていることもあって当然家賃は2万円と平均よりは安い。

  家主が亡くなって息子が引継ぐと直に、「建物が老朽化して危険だから明渡せ」とか、「無断大規模修繕を行ったので契約を解除するので建物を明渡せ」という言い掛かり的な理由で一方的な内容証明郵便を繰返し送りつけて来た。

  明渡しの意思もないので内容証明郵便は黙殺していた。だが余りにも執拗に送りつけて来るので昨年の3月以後、内容証明郵便の受け取りを拒否した。

 それ以後、鬱陶しい建物明渡請求の内容証明郵便は来なくなった。

 

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【Q&A】 ピッキング被害 

2006年03月08日 | 借家の諸問題

   ピッキング被害を蒙ったが防止対策を
          怠った家主に賠償請求が出来るか

 (問) 家主はピッキングに遭い難い鍵に交換するなどの被害防止策を講じる義務を怠り、結果ピッキング盗難に遭ってしまった。家主に対してピッキング被害の賠償責任を問うことは出来ないだろうか。


 (答) この質問と同様のピッキング被害についての賃貸人の管理義務責任が問われた裁判例がある。東京地裁平成14年8月26日の裁判である。

 裁判の内容は賃借人(貴金属商)が借りていた事務所に賊が侵入し、保管していた現金と宝石類が盗まれた。被害に遭った賃借人は、近隣ではピッキング被害が頻発していたのであるから、当然、ピッキング被害が発生していることを告知して防犯上の注意を喚起する義務及び、ピッキング被害に遭い難い鍵に交換して被害防止策を講じる義務を怠ったとして、賃貸人に債務不履行があり、その被害の賠償責任があるとして裁判に訴えた。

 裁判所は「賃貸人の負うべき本来的義務は、賃貸物件を使用、収益させる義務、賃貸物件の使用収益に必要な修繕を行う義務の外、担保責任及び費用償還義務であって賃借人の主張するような賃借人所有財産を盗難等から保護することを内容とする管理義務は、賃貸借契約から当然に導かれるものではなく、特約や信義則上の付随義務として認められる余地のものと解するのが相当である」として、その管理義務は個々の賃貸借契約の事情に応じて判断されるべきであるとしている。

 この裁判では①防犯については特段の合意がない②契約上盗難による損害は免責の対象になっている③事務所の扉はダブルロックであり、防犯効果は期待できること等から賃貸人は既存の鍵の維持管理すること以上にピッキング被害防止対策を講じ、或は窃盗被害を報告すべき義務を負っていたということは出来ないとして、債務不履行責任を否定した。

 しかし、①契約上防犯についての合意があり②盗難被害についての免責条項がなく③賃貸人はピッキングが頻発していることを知り、警察のピッキング対策の指導を受けていたにも拘らず対策を講じず、且つ賃借人から鍵の交換を請求され対処しなかったなどの事情があるケースでは、その被害の賠償責任を問える可能性はある。

 

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住宅公社の半数、「自然損耗」修繕費がまだ入居者負担 (朝日)

2006年03月06日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

  住宅公社の半数、「自然損耗」修繕費がまだ入居者負担


    2006年03月06日          朝日新聞社 より

  賃貸住宅で普通に暮らして生じた汚れやキズ(自然損耗(そんもう))の修繕費を、誰が負担すべきか。春の引っ越しシーズンを迎え、この議論がまた蒸し返されそうだ。昨年12月、大阪府住宅供給公社の賃貸マンションをめぐる訴訟の判決で、最高裁は「修繕費は通常、賃料に含まれている」と、家主側負担の原則を確認した。しかし、朝日新聞が全国57の住宅供給公社に取材したところ、半数以上でいまだに入居者の負担が続いている実態が分かった。

  各公社が所有する賃貸住宅や、民間から借り上げたり、管理を委託されたりしているマンションなど、計約20万戸での対応を調べた。

  その結果、破損していない畳の表替えや、ふすま紙、障子紙、日焼けした壁紙などの張り替え、床のクリーニング代など典型的な自然損耗の修繕費を入居者の負担にしているのが全国で30公社に達することが分かった。

  ほかにも9公社が、公社所有の物件では公社負担なのに、管理委託を受けた民間マンションでは入居者に負担させるなど、住宅ごとで異なる判断をしていた。

  神奈川県の場合、公社所有の物件では入居者の負担はゼロだが、民間マンションでは、内壁のクリーニング代など16万~20万円程度が、入居者負担になるという。島根県は「入居者に説明し、負担を納得していただいている」という。

  一方、東京都や福岡県、大阪市など計13公社では、家主側負担が原則。京都市は、99年に負担割合を見直すまでは、民間マンションの場合で、ルームクリーニング代などを含め約7万円の負担を入居者に求めていたが、現在は公社負担になっている。

  旧建設省は98年に「賃貸住宅の自然損耗は家主側の負担が原則」とするガイドラインを作成。04年には国土交通省が裁判事例などを追加した改訂版を公表している。13公社の大半が、これらガイドラインの制定や公表が負担見直しのきっかけになったとしている。しかし、管理する民間マンションのオーナーを説得できないケースもあるという。

  埼玉県では昨年2月以降、公社所有の物件と新規に供給された民間マンション計500戸余りを家主側の負担と改めた。しかし、既存の5千戸以上の民間マンションでは、今も入居者負担の特約が残ったままだ。

  大阪府住宅供給公社は今年1月、公社内に「検討会」を設置し、修繕費負担の議論を重ねてきた。結論は3月中にまとまるが、現場では「最高裁判決を避けて通れない」との見方が強く、国のガイドラインに沿った運用に転換する公算が大きい。兵庫県や神戸市なども同様の見直しを進めている。

  一方で県営住宅や市営住宅など、自治体が主に低所得者層向けに整備する公営住宅については、家賃が元々安いうえ、収入による減額などの施策もあるため、東京都など一部を除いて、自然損耗分を入居者負担としているケースが大半だ。

 「敷金問題研究会」代表の増田尚(たかし)弁護士(大阪弁護士会)は「最高裁判決によって、小手先の契約条項や念書では、修繕費を入居者に負担させられないことがはっきりした。公共性の高い各公社は『家主の鑑(かがみ)』として、負担を早く見直すべきだ」と話している。

 

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最高裁判決(2005年12月16日) (東京・台東)

2006年03月05日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 最高裁判決で通常損耗は
      貸主の費用負担が原則であることが確認された

  国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、通常損耗の修復費用を借主に負担させる原状回復特約についての判例の動向は
 「賃貸物件の通常の使用による損耗、汚損はその家賃によってカバーされるべきで、その修繕等を賃借人の負担とすることは、賃借人に対し、目的物の善管注意義務等の法律上、社会通念上当然に発生する義務とは趣を異にする新たな義務を負担させるというべきである、特約条項が形式上あるにしても、契約の際その趣旨の説明がなされ、賃借人がこれを承諾したときでなければ、義務を負うものではないとするのが大半であり、特約の成立そのものが認められない事案が多い。」と解説されている。

 また、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」は、退去時の修復費用に関して
 「賃貸住宅の契約においては、通常損耗や経年変化などの修繕費は、家賃に含まれるとされており、貸主が負担するのが原則です」と説明され、従来からの判例動向に基づいて通常損耗の修復費用は貸主負担が原則であると解説している。

 今回の最高裁判決は、通常損耗の修復費用に関して
 「建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている」と指摘し、通常損耗の修復費用は家賃の中に含まれており、これらの費用は貸主負担が原則であることが確認された。

 この原則に反して通常損耗の修復費用を借主に負担させる原状回復特約は、家賃の二重取りであり、借主に「不当な負担」を課すものである。従って最高裁判決では、原状回復特約が認められる成立要件を厳しく制限し、「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」と判示した。最高裁は、それらの成立要件が認められない場合は通常損耗を含む原状回復義務を借主に負担させることが出来ないと判断した。

 最高裁判決は、このような厳しい成立要件の下でのみ特約の効力を承認したものであり、現実には通常損耗・自然損耗の修復費用を借主に負担させる不当な原状回復特約を排除することを意図していると見るべきである。
 この最高裁判決によって不当な原状回復特約による修復費用負担から借主が幅広く救済され、原状回復特約が賃貸市場から根絶されることを期待したい。

 

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【判例】 京都地裁(2005年12月22日)敷金返還請求事件 

2006年03月03日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介

 
  京都地裁(山下寛裁判長)は、昨年12月22日、通常損耗を賃借人が負担するとの特約は成立していないとして、借主の敷金返還請求を一部認容する判決を言い渡しました。
 なお、原審京都簡裁平成17年7月12日判決は、通常損耗を賃借人が負担する特約は公序良俗に違反し無効であると判断して、借主の請求を一部認容していました。


平成17年12月22日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(レ)第67号敷金返還請求控訴事件(原審:京都簡易裁判所平成16年(少コ)
第184号敷金返還請求事件,同年(ハ)第10763号原状回復費用反訴請求事件)
(口頭弁論終結の日・平成17年9月29日)

            判    決

京都市南区上鳥羽○○町XX番地
  控訴人(第1審被告)○○ ○(家主の名前)
  同訴訟代理人弁護士      ○○○○
京都市南区上鳥羽○○○町XX-XX
  被控訴人(第1審原告)○○○○(賃借人の名前)


            主    文

原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,被控訴人に対し,7万7426円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
(3) 控訴人の反訴請求を棄却する。
訴訟費用は,第1,2審を通じ,本訴,反訴を通じてこれを20分し,その17を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
この判決は,1(1)項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
 第1 控訴の趣旨

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
被控訴人は,控訴人に対し,29万4337円及びこれに対する平成16年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 第2 事案の概要等

1 事案の概要
 (1) 本訴は,○○○○(以下「S」という。)(←前家主の名前)との間で後記2(1)の本件物件につき賃貸借契約を締結し,それに付随する敷金契約に基づいて敷金として15万円をSに交付した被控訴人が,Sの相続人として同人の死後賃貸人たる地位を相続した控訴人に対し,同賃貸借契約の終了後,敷金返還請求として,敷金15万円から未払水道代金を控除した13万6426円及びこれに対する本件物件明渡日の翌日である平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。他方,反訴は,控訴人が,被控訴人に対し,上記賃貸借契約の終了後明け渡された本件物件には破損・損耗等があったところ,同破損等は通常の使用等に伴う損耗を超えるものであること,あるいは,被控訴人と控訴人の間には通常損耗部分に対する原状回復費用をも被控訴人が負担するとの特約があることを理由に,債務不履行に基づく損害賠償請求又は上記特約に基づく原状回復費用請求として,29万4337円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成16年12月3日から支払済みまで前同様民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 (2) 原審は,被控訴人の本訴請求につき,補修費用として①6畳和室の押入襖の破損につき7000円,②6畳和室戸襖の落書きにつき6000円,③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書きにつき9625円,④洗面台上部のミラー下の破損につき5500円を認めて,その合計2万8125円及び未払水道代金1万3574円を敷金15万円から控除し,残額10万8301円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却し,控訴人の反訴請求は全部棄却した。
これに対し,控訴人が控訴した。
2 争いがない事実
 (1) Sは,平成元年2月16日,被控訴人との間で,下記のとおり,賃貸借契約を締結し(以下「本件賃貸借契約」という。),被控訴人は,同日,Sに対し,敷金として,15万円を交付した。
  ア 賃貸人 S
  イ 賃借人 被控訴人
  ウ 目的物 京都市南区上鳥羽○○町XX番地X「エクセレント373」3階XXX号室(以下「本件物件」という。)
  エ 期間 平成元年3月1日から2年間
  オ 賃料・共益費 月額5万6000円(平成15年3月1日からは月額6万6000円)
 (2) 前項の契約に基づき,Sは,平成元年3月1日,被控訴人に対し,本件物件を引き渡した。
 (3) Sは,平成11年10月24日に死亡し,Sの長男である控訴人が本件物件を含む建物を単独相続して,本件賃貸借契約の賃貸人の地位を承継した。
 (4) 被控訴人は,平成16年6月30日,控訴人との間で,本件賃貸借契約を合意解約して,同日,控訴人に対し,本件物件を明け渡した。
 (5) 被控訴人が控訴人に対して本件物件を明け渡した際,被控訴人の控訴人に対する未払水道代金は,1万3574円であった。
 第3 当事者の主張

1 控訴人の主張
 (1) 被控訴人が,本件賃貸借契約終了後,控訴人に対し,本件物件を明け渡した際,本件物件には,破損・汚損が存在した。これらの破損・汚損の補修等には,別紙記載のとおり合計43万0763円が必要となるが,これらの破損・汚損は,日常の使用や日時の経過による劣化・損耗(以下,この意味で「通常損耗」の語を用いる。)を超えたものであって,被控訴人の債務不履行により生じた,あるいは,被控訴人が本件物件を控訴人に対し明け渡した際に原状回復のための掃除を怠った債務不履行により残存したものである。
 したがって,控訴人は,被控訴人に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として,合計43万0763円の支払を求めることができる。
 (2) 被控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,契約書(甲1),覚え書(甲1の契約書添付のもの)及び「エクセレント373」で始まる書面(甲1の契約書添付のもの。以下,これら3通の書面を合わせて「本件書面」という。)につき,説明を受けた上で,署名押印することにより,Sに対し,通常損耗に対する原状回復費用についても負担することを約した。
 そして,本件物件の破損・汚損を補修し,本件物件を原状に回復するためには,別紙のとおり合計43万0763円が必要となる。
 したがって,被控訴人は,控訴人に対し,上記特約に基づき,原状回復費用請求として,上記(1)と同様,合計43万0763円の支払を求めることができる。
 (3) よって,いずれにしても,控訴人は,被控訴人に対し,43万0763円を請求できるところ,この金額は,未払水道代金1万3574円を控除した敷金13万6426円を29万4337円超えるから,結局,被控訴人は,控訴人に対し,敷金の返還を求めることはできず,逆に,控訴人は,被控訴人に対し,29万4337円の支払を求めることができる。
2 被控訴人の主張
 (1) 控訴人の上記1(1)の主張事実は否認する。本件物件の明渡時に,本件物件は特別に汚れていなかった。
 (2) 控訴人の上記1(2)の主張事実は否認する。
 仮に,被控訴人がSに対し,通常損耗に対する原状回復費用についても負担することを約したとしても,同特約は公序良俗(民法90条)に違反する。
 また,本件賃貸借契約は,平成15年3月1日に最終の更新がなされており,消費者契約法の適用があるところ,上記特約は同法10条に反し無効である。
 (3) 控訴人の上記1(3)の主張は争う。
 第4 当裁判所の判断

1 被控訴人の債務不履行の有無等について
 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として43万0763円の支払を求めることができると主張するので,この点につき検討するに,甲2号証の1・2,5号証,乙1ないし8号証及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が本件物件を明け渡した際に,通常損耗を超える破損・汚損として,①6畳和室の押入襖の破損・汚損,②6畳和室の戸襖の落書き・汚損,③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書き,④洗面台上部のミラー下の破損があること,及び,これらの破損・汚損等は被控訴人の過失により生じたものであることが認められる。
 (2) これに対し,控訴人は,本件物件には上記認定箇所以外にも破損・汚損された箇所があり,これらは,被控訴人の故意・過失によって生じた,あるいは,被控訴人が掃除等を行わなかったことにより生じたと主張するところ,上記(1)掲記の各証拠によれば,本件物件には,上記認定箇所以外にも破損・汚損等があることが認められるが,その状況や,被控訴人及びその家族が本件物件を15年余り使用していたことを考慮すると,これらはいずれも通常損耗を超えるものとは認められず,被控訴人の債務不履行より生じたものであるとはいえない。また,前掲各証拠によれば,被控訴人は,本件物件の退去時に,一部の箇所につき掃除等を行っていないが(乙1,7,8及び弁論の全趣旨),その状況に鑑みると,同事実のみをもって被控訴人に債務不履行があったということはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用しない。
 (3) そして,甲2号証の1・2,4号証,乙2号証,4ないし6号証及び弁論の全趣旨によれぱ,上記(1)認定の破損・汚損等の原状回復費用は,上記(1)の①ないし③についてはその汚損等の状態及びクッションフロアーの性質等に照らしてその全体の取替費用とし,④は控訴人が当初パテ等による補修を是認する態度を採っていたこと等に照らして上記補修費用とするのが相当であるから,①6畳和室の押入襖の破損・汚損は7000円,②6畳和室の戸襖の落書き・汚損については8000円(見積書は,当該箇所につき,補修が必要な襖は3枚であることを前提とするが,甲5号証,乙1号証,5号証,7号証によれぱ,当該箇所につき,補修が必要な襖は2枚であると認められるから,この限度で見積書を採用する。),③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書きは3万8500円,④洗面台上部のミラー下の破損は5500円であると認められ,合計で5万9000円となる。
 (4) これに対し,被控訴人は,自らの賃貸借期間が15年余りであったことや,被控訴人が本件物件を借りる際に賃貸人であったSが被控訴人の家族に子供がいることを知っていたこと,賃貸借契約終了後は襖は当然に張り替えられるものであるとして,被控訴人が債務不履行責任を負うことは不当であると主張するが,上記(1)認定の破損・汚損等は被控訴人の過失に基づくものであるから,同主張は理由がない。
2 通常損耗に対する原状回復費用の負担者について
 (1) 控訴人は,被控訴人が控訴人との間で通常損耗に対する原状回復費用をも負担することを約したと主張するので,この点につき検討するに,甲1号証によれば,被控訴人は,本件賃貸借契約締結の際に本件書面にそれぞれ署名押印したものの,本件書面には,修復費用を被控訴人が負担することや,修復費用の基準が記載されているにすぎず,その修復費用が通常損耗についてのものか否かについては明記されていないから,被控訴人が本件書面に署名押印したことをもって,直ちに被控訴人が控訴人との間で通常損耗部分に対する原状回復費用を負担することを約したと認めることはできない。
 (2) これに対し,控訴人は,本件賃貸借契約締結の際に,被控訴人が通常損耗部分を含む原状回復費用を負担することについて説明を受けていたと主張し,これに沿う乙8号証(原審証人○○○○(←管理会社H氏)の証言を録音した録音テープ)を提出するが,被控訴人がその事実を否認しており,乙8号証(被控訴人の妻である原審証人○○○○(←妻)の証言を録音した録音テープ)によっても,原審証人○○○○(←妻)が同事実を認めていないことに照らすと,原審証人○○○○(←管理会社H氏)の証言によって控訴人の上記主張事実を認めることはできないし,ほかに同事実を認めるに足りる証拠はない。
 (3) したがって,控訴人は,被控訴人に対し,上記(1)の約定をもって,上記1(3)を超える金額の支払を求めることはできない。
3 結語
 以上の次第で,被控訴人は,控訴人に対し,未払水道代金1万3574円及び債務不履行に基づく損害賠償金5万9000円を敷金15万円から控除した金額である7万7426円の支払を求めることができるから,被控訴人の本訴請求は,控訴人に対し,7万7426円及びこれに対する本件物件明渡日の翌日である平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであり,控訴人の反訴請求は理由がないから,棄却すべきであるところ,本件控訴は一部理由があり,これと異なる原判決は相当ではないから,主文1項のとおり変更することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項,61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 ○○ ○
   裁判官 ○○○○
   裁判官 ○○○○

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(別紙)

御 見 積 書
平成16年7月15日

株式会社 杉徳
 代表取締役 ○○○○
 〒600-XXXX 京都市下京区富小路通り
 松原下る○○○○町XXX
 TEL (075) XXX-XXXX

担当
○○

    ○○ ○               様

現場名   エクセレント373  XXX号室 

種目                       

支払条件                    

合計金額 430,763- (消費税込) 

下記の通り御見積申し上げますので何卒
御用命賜ります様お願い申し上げます。

摘    要  数 量   単 価   金  額   備 考 
畳表替 6 枚 4,500 27,000  
襖張替(押入) 2 枚 3,500 7,000  
襖張替(戸襖) 3 枚 4,000 12,000  
ハウスクリーニング 1 式 30,000 30,000  
カーペット敷替(玄関) 1.5 m 4,000 6,000  
カーペット敷替(洋間) 9 m 4,000 36,000  
CF敷替くDK) 7 m 5,500 38,500  
CF敷替(洗面) 2 m 5,500 11,000  
CF敷替(トイレ) 1.5 m 5,500 8,250  
クロス貼替〈玄関)  14 m 1,100 15,400  
クロス貼替(洗面) 16 m 1,100 17,600  
クロス貼替(トイレ) 13 m 1,100 14,300  
クロス貼替(DK) 38 m 1,100 41,800  
クロス貼替(和室) 22 m 1,100 24,200  
クロス貼替(洋間) 32 m 1,100 35,200  
網戸ゴム取替修理 1 枚 5,500 5,500  
洗面台取替 1 式 70,000 70,000  
シャワーホース取付部修理 1 式 3,500 3,500  
トイレ扉建付け修理 1 式 7,000 7,000  
         
    小計 410,250  
    消費税 20,513  
    合計 430,763

京都地裁(山下寛裁判長)は、昨年12月22日、通常損耗を賃借人が負担するとの特約は成立していないとして、借主の敷金返還請求を一部認容する判決を言い渡しました。 なお、原審京都簡裁平成17年7月12日判決は、通常損耗を賃借人が負担する特約は公序良俗に違反し無効であると判断して、借主の請求を一部認容していました。

 

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