東京・台東借地借家人組合1

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2006(平成18)年度 宅地建物取引主任者資格試験(借地借家法)

2007年03月31日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

【問10】 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。


(1) AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

 (2) AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

(3) AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

(4) AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。


【問 13】 自らが所有している甲土地を有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。


(1) 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で公正証書によらずに存続期間を35年とする土地の賃貸借契約を締結する場合、約定の期問 、当該契約は存続する。しかし、Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。

(2) 甲土地につき、Bが1年間の期間限定の催し物会場としての建物を建築して一時使用する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、当該契約の更新をしない特約は有効である。しかし、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。

(3) 甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。

(4) 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。


【問 14】 AはBとの間で、平成16年4月に、BがCから借りている土地上のB所有の建物について賃貸借契約(期間2年)を締結し引渡しを受け、債務不履行をすることなく占有使用を継続している。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。


(1) Bが、Cの承諾を得ることなくAに対して借地上の建物を賃貸し、それに伴い敷地であるその借地の利用を許容している場合でも、Cとの関係において、借地の無断転貸借とはならない。
(2) 借地権の期間満了に伴い、Bが建物買取請求権を適法に行使した場合、Aは、建物の賃貸借契約を建物の新たな所有者Cに対抗できる。

(3) 平成18年3月に、借地権がBの債務不履行により解除され、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが解除されることをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

(4) 平成18年3月に、借地権が存続期間の満了により終了し、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。


  
【10】 正解(2)    
【13】 正解(1)   
【14】 正解(3)

 

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30年間住んだアパート立退けない (東京・新宿区)

2007年03月29日 | 建物明渡(借家)・立退料

 新宿区に住む五十嵐さんは、このアパートに住んで30年近くになる。五十嵐さんの外に、約10世帯住んでいるが、ほとんどの居住者はこの数年間に契約したお年寄りや外国人の居住者であった。

 家主は隣に住んでいるが、老朽化を理由に明渡しを求めてきた。その交渉役として、大手住宅メーカーのNホームの社員が対応した。当初「敷金は返還します。他は引越料数万円だけです」と説明していた。いろいろなところに電話や相談にいってたどり着いたのが借地借家人組合だった。

 早速、五十嵐さんは組合に入会した。組合の説明で「借地借家法では、人が住めなくなる朽廃の状態にならなければ、老朽化だけでは明渡しを求める正当な事由にはならないこと、引き続き住み続ける権利のあることなど」が説明された。

 五十嵐さんは「確かに、老朽化はしているが住めない状態ではないので、自らが法律を学び、交渉しよう」と決意した。Nホームの社員に対して、話合いを求めたところ「貴方だけは30年も住んでいるので、他の人と違う補償をするので協力してほしい」と言われた。しかしながら、実際の対応で補償については、金の無いの一点ばりで、説得にかかってきた。

 五十嵐さん「よくよく考えてみるとこのまま話をすすめて明渡しに応じてしまえば、家主は新しいマンションで収入が増える。Nホームの社員は、話をまとめて金儲けが出来る。損をするのは私だけ、それならばがんばるしかない」と決意を固めた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 *建物賃借中に賃借人は保証金返還請求権の存在を確認できるとした事例

2007年03月27日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

  判例紹介

 建物賃貸借継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在確認を求める訴えにつき確認の利益があるとされた事例 (最高裁平成11年1月21日判決、判例タイムズ995号)

 (事案)
 賃借人は、保証金400万円を差し入れて建物を賃借していたが、途中で家主が建物を売却した。建物を買った新しい家主は、保証金差し入れのことは一切知らないので、契約が終っても返すべき保証金は全くないと争った。そこで、賃借人は、賃貸契約の継続中に新家主に対して保証金の返還請求権があることを確認してくれと提訴した。

 地裁の判決は「敷金返還請求は賃貸借契約が終了した後でなければできない」という理由で、借家人の確認請求を認めなかった。

 高裁の判決は地裁の判決は間違っているとして審理のやり直しを命じた。これに対して家主が最高裁に不服を申立て、本判決がなされた。

 (判決要旨)
 「建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡がされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであって、賃貸借終了前においても、このような条件付きの権利として存在する。本件確認の対象は、このような条件付の権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けることはない。また、本件では、新家主は、借家人の主張する敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、本件当事者間で右のような条件付の権利の存否を確認すれば、借家人の法律上の地位に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益がある。本件訴えは適法である。

 (説明)
 保証金は差し入れられていないという争いがある場合、借家人は、賃貸借契約の途中に、敷金の返還請求権があることの確認を請求できるか。敷金は、賃貸借契約に関して発生した家賃の支払などの賃借人の義務を担保するために、あらかじめ賃貸人に対して差し入れられる金銭であると定義されているので、敷金の返還請求権があることの確認は、賃貸借が終った時でなければできないかということが問題になる。
 最高裁は、敷金返還請求権は控除されるものがなければ返してもらえるという点で条件付きの権利として存在するので、条件付きの返還請求権として権利の確認を求めることは、契約中であっても許されると判断した。敷金返還請求権の有無という争いでなく、いくら返すかの金額争いは、契約が終了しないと金額が確定しないから契約中は提訴できない。

 

(1999.07.)

 (東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 *建物の使用収益開始前に借地借家法32条1項により賃料増減額請求をすることの可否 

2007年03月26日 | 家賃の減額(増額)

  判例紹介 

  建物賃貸借契約に基づく使用収益の開始前に借地借家法32条1項により賃料増減額請求をすることの可否 最高裁判所第3小法廷平成15年10月21日判決。判例時報1844号50頁)

 (事案の概要)
 X(借主)とY(貸主)は、平成3年7月9日、Yが建築する予定の建物の一部につき、賃貸借期間20年、敷金234億円、平成7年3月1日予定の引渡し時点における賃料年額18億円、以後2年を経過するごとに賃料を8%値上げする旨の賃料自動増額特約などを定めたサブリース契約を締結した。Yは、平成7年2月28日、完成した本件建物をXに引き渡したが、Xはその引渡し前である同月6日に賃料減額請求をした.その後、Xは、Yに対し、借地借家法32条1項に基づく賃料減額の訴えを提起したが、Yは、本件サブリース契約は事業契約であり賃貸借契約ではないから同法32条1項の適用はない旨主張してXの賃料減額請求を争った。

 1審判決(判例時報1660号65頁)は、本件サブリース契約の趣旨・目的等に照らし、本件サブリース契約には同法32条1項は適用されないとしてXの請求を棄却した。

 原審(判例時報1697号59頁)は、本件建物の使用関係の法的性質は賃貸借契約であり、本件サブリース契約には同法32条1項は適用され、Xは賃料減額請求ができるとしたうえで、「借地借家法32条1項は事情変更の原則に基づき賃料を増減額できることにしたものであるから、契約の成立から賃料支払までの間に相当の期間が経過したことで事情の変更があれば、第1回賃料支払前に賃料減額請求がされても同項にもとづく増減額請求として有効である」旨判示して、賃料は年16億0769万6000円に減額されたと判断した。

 判決)
 本判決は、本件サブリース契約は、YがXに対して本件建物を使用収益させXがYに対してその対価として賃料を支払うというものだから賃貸借契約であり、借地借家法が適用され、賃料自動改定特約によっても同法32条の適用は排除されないとしたうえで、「借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求権は、賃貸借契約に基づく建物の使用収益が開始された後において、賃料の額が同項所定の経済事情の変動等より、又は近傍同種の建物の賃料の額に比較して不相当となったときに、将来に向かって賃料額の増減をもとめるものと解されるから、賃貸借契約の当事者は、契約に基づく使用収益の開始前に、上記規定に基づいて当初賃料の額の増減を求めることはできない」としてXの請求を退けた。

 寸評)
 本判決は、サブリース契約が建物賃貸借契約で借地借家法の適用があり、賃料自動改定特約があっても同法32条1項の賃料減額請求ができること、賃貸借契約に基づく建物の使用収益の開始前には当初賃料の増減額請求はできないことを認めた最高裁判決であり、賃料減額請求に関し参考になる判決である。

 

(2004.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 更新前の公正証書により更新後発生の債権が強制執行できなかった事例

2007年03月23日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 更新前の賃貸借契約に関して作成された公正証書に基づいて更新後の賃貸借契約により発生した債権を請求債権とする強制執行ができないとされた事例 (東京地裁平成8年1月31日判決。判例時報1584号124頁)

 (事案の概要)
 X(借主)とY(貸主)は、1988年、建物賃貸借契約を締結し、90年の更新に際し賃貸借契約に基づく金銭債務に関する執行認諾約款を含む公正証書を作成した。92年の更新では、賃料や保証金等については合意が成立したが、契約締結方式について合意ができぬままXはYに新賃料を支払い続けた。

 Yは、92年の更新が合意更新で94年に法定更新され、Xに更新料及び保証金償却分の支払義務があるとして、90年に作成された公正証書に基づき強制執行した。Xは右強制執行が許されないとして提訴した。

 (判決の概要)
 本判決は、「公正証書の債務名義として効力の及ぶ範囲は、当該公正証書の記載に従い客観的に決すべきである。本件公正証書についていかなる請求権が特定掲記されているかを見ると、期間満了前の賃貸借関係から発生する賃料債権等は表示されているが、更新された後の債権については、わずかに「次回」の契約更新のときにおける新賃料及び保証金について触れられているにすぎず、「次回」の字義もあいまいであり、しかも、その内容は、最低でも旧家賃の10%に増額するとか、双方協議の上増額するというに留まり、特定に欠けるものであって、結局、更新された後の債権については何ら特定掲記がされていないということができる。そして、他に本件公正証書の記載から、更新前の賃貸借条項がそのまま更新後の賃貸借に適用され、かつ、これについて執行認諾約款を付すなど、将来の更新によって発生すべき賃料請求等を特定表示しているものと認められるに足りる事情も窺えないから、本件証書は、……中略……これらについては債務名義とならない」と判示して、強制執行を認めなかった。

 (寸評)
 執行認諾約款を含む(通常公正証書にはついている)公正証書は、金銭債権について判決と同様の効力をもつもので、賃貸借契約についていえば、家賃の不払などがあった場合、公正証書を使えば裁判をせずに不払家賃取立の強制執行ができることになる。

 公正証書の効力が及ぶ範囲については、公正証書の記載自体だけから判断されるべきだとされており、本判決もこの考え方を前提に更新後の賃料や保証金の追加について特定に欠けており強制執行はできないとしたもので、賃貸契約書が公正証書で作成されているケースについて参考になる判決である。

 なお、本件では、92年の更新が合意更新か法定更新かについても争点となっており、どのような事実があれば法定更新となるか判断されており、この点にていても参考になる判決である。

( 1997.03.)   

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 貸主のビルの管理・修繕の不備を理由に家賃の減額を認めた事例

2007年03月21日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 ①賃料の自動改定の特約の効力を制限した事例 ②ビルの管理・修繕の不備を理由に賃料の減額を認めた事例 ③賃貸借契約の連帯保証契約の解約を認めた事例 (東京地裁平成9年1月31日判決、判例タイムズ952号220頁以下)

 (事案)
 Y①はXから飲食店経営の目的でビルの一室を賃借していた。このビルの管理状態が悪いため、建物の使用に一部支障を来たす状況であった。Y①は、これを理由に賃料の減額請求をした。この店舗の契約には3年毎に家賃を15%増額する特約があったため、XとY①間で紛争となり、Y①は家賃の支払を一部拒絶した。

 Xはこれに対し、契約解除の通知をし、Y①に対し店舗の明渡しを求め、Y①とその連帯保証人Y②に対し、未払い金及び損害金の支払を求めた事案。

 判決はXの一部勝訴(建物の明渡し、減額賃料の支払を認容。Y②に対する請求棄却)。

 (判旨)
 ①「賃料を一定年数毎に定率で自動的に増額する条項は、相手側からそれによるのを不相当とすると特段の事情の存在に関する主張、立証のない場合を除き、一定年数経過時に約定どおり賃料を自動的に増額させる趣旨の契約であると解すべきであり、また、その反面として、相手方から、その条項による賃料の増額を不相当とする特別の事情の主張、立証があった場合には、その条項の効力は失われるものと解すべきものである」

 ②「本件店舗については、少なくても昭和63年5月以降、貸主に求められる管理、修繕の義務を尽くしたものとは認めがたく、これによる本件店舗の使用上の不都合は重大なものがあり、本件店舗は、本件賃貸借契約が想定した通常の賃貸店舗からみて、少なくともその効用の25%が失われていたものと認めるべきである。従って、本件店舗の賃料は平成元年10月内にXに到着したY①の意思表示により、同年11月分以降、約定賃料を25%減じた額……に減額されたものと認めるのが相当である」

 ③「このようなXの姿勢によるXとY①との間の本件店舗の明渡しをめぐる紛争の長期化は、Y②の予期しないところであり、……のような事情からY①の連帯保証人となったY②に対し、平成8年3月6日以降になっても、なおY①の明渡し遅滞による責を負わせるのは酷に失し、正義の観念に反する。従ってY②については、信義則上右時点で解約を認め、Y①の連帯保証人としての地位から離脱を認めるべきである

 (評論)
 ①の判旨は、定率自動改定条項の効力について、有効性を認めつつ特段の事情による効力の否定を認めるもので同種の特約の解釈について参考になる判例といえる。

 ②については、法律的に特別な意味はないが、修繕義務を尽くさない貸主に対し、減額請求で争うこともあり得るのであえて紹介した。

 ③については、貸主側の不誠実な態度が紛争の要因となっている特別の場合には、信義則による連帯保証契約の特別解約権を認めた事例である。

(1998.06.)            

(東借連常任弁護団)

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【判例紹介】 貸主の妨害で部屋が使用不能の場合貸主に損害賠償責任を認めた事例

2007年03月20日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 アパートの貸主の妨害によって借主が部屋を使用することができなくなったことにつき、貸主に損害賠償責任が認められた事例 東京地裁平成3年6月24日判決。判例時報1412号121頁)

 (事案)
 Xはアパートの一室を賃借していたが、このアパートを取得して貸主となったYは、アパートの改修工事を行う必要があるとして、電気・水道の供給を停止し、共用のトイレを破壊する等の行為をした。その結果、Xは貸室に居住し続けることができず、荷物を貸室に置いたまま、友人宅などに宿泊せざるをえなくなった。

 またXは、Yに対し電気、水道の供給の停止その他のXの貸室使用を妨害する一切の行為を禁止し電気等の供給を命ずる仮処分の申請を裁判所に行い、その決定が出されたがYはこれに一切従わなかった。そこで、XはYに対して、貸室の賃借権の確認と損害の賠償を求めて、裁判を提起した。

 (判決)
 判決は、「本件建物の改修工事を行う場合、それが、貸主としての修理義務の履行としての工事の範囲である場合は格別、本件工事のごとく、賃貸借の対象物件の現状を大きく変更し、また、工事期間中貸室の使用が事実上不可能になるようなときは、借主の意向を無視して一方的に行うことが許されるものではない。このような工事を行うことは、本件賃貸借契約の内容の変更を生じさせ、契約上の目的物を使用させるという貸主の債務の不履行を含むことになるため、賃借人の同意・承諾が不可欠である。‥‥‥(本件建物の改修工事をおこなう)必要性がある場合、借家法の適用のある本件賃貸借契約について、解約申入れを行う等の手順が必要とさせるところである」として、事実経過やYの妨害行為を認定した上で、「Yの本件妨害行為により、Xは本件貸室を退去するの止むなきに至ったのであり、しかもこの行為は、法により保護されているXの賃借権を違法に侵害するものである」と判示し、Xに貸室の賃借権が存在することを認め、Yに対してXがこうむった損害を支払うよう命じた。なお、損害として判決は、和解による訴訟の早期決着の見込みがなくなった時点後は別の賃貸物件を物色してそこへ移るべきだとして、①右時点後1か月間(別の賃借物件を物色する期間)のホテル等の宿泊等の実費②その後の家賃相当金及び別の賃貸物件の敷金・権利金・仲介手数料(いずれも裁判所が独自に認定)を認定し、これに③慰謝料20万円を加えた金額を支払うようYに命じている。

 (寸評)
 家主が土地建物の有効利用を図ろうとして借家法や賃貸借契約を無視して、強硬に実力行使をしあるいは嫌がらせをして借家の使用を妨害する事例が増えている。本判決は、その違法性を正面から認め家主に損害賠償を命じたもので、同じ境遇におかれている借家人にとって1つの大きな支えとなる者である。また、損害の算定方法についても参考になると思われる。

 

(1992.08.)    

(東借連常任弁護団)

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【判例紹介】 中途解約された場合、保証金の償却は実際の賃貸借期間に相当する額のみ

2007年03月16日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

   判例紹介

 建物賃貸借契約が中途解約された場合、保証金の償却は、約束の償却額を実際の賃貸借期間と残存期間とで按分し、実際の賃貸借期間に相当する額のみ認められるとされた事例 (東京地裁平成4年7月23日判決。判例時報1459号136頁)

 (事案)
 X(借家人)とY(家主)との間の建物賃貸借は、契約期間3年、賃料22万円、保証金220万円で、3年毎に賃料の3か月分を償却するものだった。

 XとYは、契約期間の途中で本件契約を合意解除したが、償却される保証金の範囲が問題になったXは償却の範囲は、契約期間に対する実際の賃貸借期間の割合分に限られると主張。

  Yは、①実際の賃貸借期間にかかわらず、約定の償却全額を償却するのが不動産賃貸借の実務であり、②中途解約の場合も全額を償却する旨の合意があったと主張し、保証金の返還に応じなかった。

 (判決)
 判決は、第1に、保証金の性質について、「これを限時解約金(借主が賃貸借期間の定めに違背して早期に明渡すような場合において借主に支払わせるべき制裁金)とするなどの別段の特約がない限り、いわゆる敷金と同一の性質を有するものと解するのが相当であって、貸主は、賃貸借契約が終了して目的物の返還を受けた時は、これを借主に返還する義務を負う」と判示した。

 そして、第2は、保証金の償却について、「貸主が預託を受けた保証金の一定額を償却費名下に取得ものとされている場合のいわゆる償却費相当分は、いわゆる権利金ないし建物又は附属備品等の損耗その他の価値減に対する保証としてのせいしつをゆする」と、その性質について証明した。

 続けて、第3に、償却の範囲について、「この場合において、賃貸契約の存続期間及び保証金の償却期間の定めが会って、その途中において賃貸借契約が終了したときには、貸主が、特段の合意がない限り、約定にかかる償却費を賃貸借期間と残存期間とに按分比して、残存分に相当する償却費を借主に返還すべき者と解する」旨判示した。

 そして、第4に、Yが主張した①中途解約の場合でも約定の償却費全額を取得するという不動産賃貸の実務の存在については、「右のような取扱いが不動産の賃貸契約における一般的な慣行であるということはできず」としてこれを否定し、②中途解約の場合でも約定の償却費全額を取得するという合意の存在についても否定して、第三に従って保証金を返還するようYに命じた。

 (寸評)
 中途解約の場合の保証金の償却の範囲については、本件のように借家人と家主との間で対立することが多い.本判決は、保証金及び償却費の性質を明らかにした上で、保証金の償却について実際の賃貸借期間と残存期間に按分すべきだとし借家人の主張を全面的に認めたものである。同じケースで悩む借家人にとって大いに参考になる判決と思われる。

    

(1993.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 盗難被害は賃貸人に賠償責任なしとした事例

2007年03月15日 | 借家の諸問題

 判例紹介

 ピッキング盗難の被害を賃貸人は賠償する責任はないとされた事例 (東京地裁平成14年8月26日判決、判例タイムズ1119号)

 (事案)
 X(宝石・貴金属商)は平成5年、Y(不動産賃貸業)から8階建ビルの内7階を事務所として賃料月約33万円で賃借した。

 Xは平成12年2月、右事務所に保管していた現金と宝石類、合計110万円相当を盗まれた。Xはそれを理由として同年5月、右事務所を明渡した。

 そこでXは、本件ビルやその近隣ではピッキング被害が頻発していたのであるから、Yは、右被害を告知して防犯の注意を喚起する義務及びピッキング被害に遭いにくい鍵に交換するとかの被害防止策を講ずる義務があったのにこれを怠り何らの措置も講じなかった、よって、Yには債務不履行があり、Xの右被害を賠償すべきである、と主張した。

 (判旨)
 (1)そもそも、賃貸借において、賃貸人の負うべき本来的義務は、賃貸物件を使用、収益させる義務、賃貸物件の使用収益に必要な修繕を行う義務の外、担保責任及び費用償還義務であって、Xの主張するような賃貸人所有財産を盗難等から保護することを内容とする管理義務は賃貸借契約から当然に導かれるものではなく、特約や信義則上の付随義務として認められる余地のあるものと解するのが相当である。そして、賃貸人がこのような管理義務を負う場合にどの程度の義務を負うのかは、ここの賃貸借契約の事情に応じて判断されるべきである。

 これを本件賃貸借契約についてみてみるに、
①本件全証拠を検討するも、XとYが貸室の防犯について特段の合意をしたとは認められないこと、
②本件賃貸借契約においては、「地震、火災、水害等の災害、盗難その他甲の責めに帰することのできない事由によって乙のもうむった損害に対しては、甲はその責めを負わないものとする」(第11条)とされ、盗難による損害はYの免責の対象とされていること、
③本件事務所入口の扉はダブルロックであり、一応の防犯効果が期待できたこと
 等の事情に鑑みれば、YはXに対し、既存の鍵の維持管理すること以上に盗難被害を防ぐべき義務は負っていないと解するのが相当である。

 (2)また、
①Yは、近隣で窃盗事件が多発していることを認識し、順次その賃貸ビルに機械警備を導入している最中であったこと、
②Yは本件盗難以前には、本件ビルにおける窃盗被害がピッキングの被害によるものであったか否かを知らず、特にピッキングの被害について警察からの指導、報告もなかったこと、
③XがYに対して鍵の交換を求めたことはなっかたことからすれば、
 Xの主張するような、YがXに対し、ピッキング被害防止策を講じ、あるいは窃盗被害を報告すべき義務を負っていたということはできず、Yに債務不履行責任は認められない。

 寸評)
 賃借人を盗難から保護することは賃貸人の付随的義務とすることには異論があるかもしれない。本件は、賃貸人の管理義務を考えるに当って参考になる。

(2005.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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地上げ屋が競売物件に群がる (大阪・生野区)

2007年03月13日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 昨年11月中旬、大阪市生野区小路地域の借家で薬局店を開業している塚本勤也さん等3名は、幼なじみの家主が事業に失敗し土地と建物が金融機関に差押さえられ、新所有者から契約解除通知を受けました。

  塚本さん等は、家主が事業に失敗したことをあらかじめ知っていたので、金融機関へ売却を申し入れましたが、売却価格が高額でしかも競売手続が開始されたこともあり購入することができませんでした。

 新所有者は、入れ替わり立ち替わり地上げ屋に委任し、明渡を強要し高額な家賃の値上げを押しつけてきました。

 地上げ屋は、宅建業の免許取得者であったり無免許業者であったりし、その都度塚本さん等は、大阪府へ行政指導を要請しました。

 そして、新所有者へは、今後一切明渡しや家賃値上げ交渉などで話合う意思のないこと、そして、従来通り住み続けることを通告しました。

 今年2月半ばになって、それまで1週間に1度は押し掛けてきた地上げ屋は「もうずっとおれ」と言い家賃の受取も拒否してきました。家賃は、供託をすることにしています.。

 塚本さん等3名は、「最初は地上げ屋の暴言に脅威を感じていましたが、今はみんなが団結して情報交換し、借地借家人組合の支援があるので安心だ」と語っています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地借家人組合のアドバイスで立退料が5倍へ(九州・福岡市)

2007年03月12日 | 建物明渡(借家)・立退料

  2月上旬、福岡市内の借家に住む母子世帯の藤田さよりさんから、「家主から家屋が老朽し建替えるので、敷金返還額17万円と引越料13万円合計30万円を条件に明渡すよう請求され引越すことに同意したが、立退料が納得できないので相談したい」と大借連(全大阪借地借家人組合連合会)事務所に電話がありました。

  そこで、大借連は、「条件が納得できない場合は、契約は継続しているので明渡請求は拒否できること。老朽家屋で立退きに応じなければならない場合は最終的に裁判所が判断することになる。その場合は条件も裁判所で判断される。したがって、家主へ立退きを拒否する旨伝えてはどうか」とアドバイスをしました。

  ところが、藤田さんは、家主から明渡しを強要され、やむを得ず移転先を決めており、立退料を当てにして契約をしてしまったので、立退料の適正な額を知りたいとのことでした。

 大借連は、地元に借地借家人組合がないことから福岡市内の法律事務所を紹介しまいた。

 照会先の法律事務所に相談に行った藤原さんから、「弁護士から一度明渡しに合意したのであれば難しいと言われ、どうしたらよい者か迷っている」と再度電話がありました。

  再度相談に応じた大借連は、「当初預けた敷金は全額返還されること。引越費用と諸経費の実費、引越先の新規家賃と従来家賃との差額の3年分の家賃と移転先の敷金と従前の敷金の差額、さらに協力金的な立退き料を概算し家主へ立退き条件の再考を申入れ、話合いに応じてくれない場合は家主側が誠意のない態度であり、立退きの合意は撤回する旨通知して頑張ってみては」と激励しました。

 2月23日、藤田さんから大借連へ入会申込書と次の礼状が郵送されてきました。
 (前文略)「立退きの件は、こちらが要求した金額(3年分の家賃差額、新しいアパートを借りるための費用、引越費用合わせて161万円と敷金(全額)を支払って頂けることになりました。本日入金されたとのことです。大借連のアドバイスがなければ、このような結果にはならなかったと思います。本当にありがとうございました。(中略)3月1日に引越をする予定です。」

全国借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 地主が立退料8億円支払うことで明渡の正当事由が認められた事例

2007年03月10日 | 土地明渡(借地)

 判例紹介

 地主である私立大学が、印刷材料製造販売会社に対し、立退料8億円を支払うことにより借地明渡の正当事由が認められた事例 (東京地裁昭和63年11月14日判決、判例時報1324号61頁以下)

 (事案)
 地主である私立大学は、昭和26年4月、本件土地を買い受けたが、右土地は以前から印刷材料製造販売会社の代表者が借地していた。

 本件と地売買後、右当事者間に、本件土地と、堅固建物所有目的、期間を昭和27年12月13日から30年間として賃貸借する旨の調停が成立した。

 その後、右会社代表は右会社に対し、本件借地権を譲渡し、結局本件土地の借地人が右会社になった。

 地主大学側は、昭和57年12月13日の期間満了に際し、借地人会社に対して、本件土地の使用継続についてあらかじめ異議を述べ、正当事由として、「地主大学は私立大学として学生数の増加に伴う必要校舎面積の確保のために本件敷地を利用する必要性がある。」とし、「立退料金3億円 または裁判所の決定する金員の支払を受けるのと引換」に、本件の土地の明渡しを求めた。

 これに対し、借地人会社は、長年にわたり本件土地上の建物を、本社、営業所、事務所、工場として使用してきた者であり、今尚、会社にとって重要な業務の一部のために使用し、本件建物には引続き取引先その他の関係者が多数出入りしており、会社のシンボル的な存在として本件と地上の建物を必要とすると主張した。

 (判示)
 裁判所は双方の本件建物敷地利用の必要性について、精細に検討した上でそのいずれがより必要性があるとも断定できないとし、ただ、借地人会社が本件土地を必要とする理由は専ら業務遂行上のものであって経済的対価を、地主大学が支払うことによって大学側の必要性が借地人会社の必要性を上回るとして、地主大学が借地人会社に対して8億円の立退料(本件土地の更地価格約19.5億円に借地権割合である80%を乗じた借地権価格の約5割に相当する)を支払うのと引換えに借地の明渡しをするよう判示した。

 (短評)
 本訴において、原告が本訴の申立において、「3億円または裁判所の決定する金額」を申し出たことに対し、裁判所は、原告の申し出た金額をはるかに超える立退料を定めまでして、借地明渡の正当事由を具備するものとしたが、これは立退料の金額を増額することによって正当事由を具備する方向で考慮したものであって、本来正当事由判断における金員の役割を誤ったものというべきである。また、近時、地主の方から何が何でも明渡しを求めるために、「裁判所の決定する金額」を申し出ることがあるが、これは、正当事由について借地非訟的考え方を持ち込むことであり、最高裁判所の『格段の相違のない範囲内』の考え方とも逸脱しているものといえる。      

(1990.03.)      

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 家主による脅迫的な立退要求等に損害賠償が肯定された事例

2007年03月09日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 家主による建物の仮装譲渡、通行妨害、水道、ガス、電源の一時停止、脅迫的な立退要求等が、借家人に対する不法行為に当たるとして、損害賠償責任が肯定された事例 東京地裁昭和63年11月25日判決、判例時報1307号118頁以下 確定 )

 (事案)
 借家人は、ビルの3階部分を賃借して、皮膚科、形成美容外科の診療所を開業していた医師であるが、家主は、ビルが老朽化したことを理由としてビルを建替える必要があるとして正当事由に基づく解約申入れをした。借家人がこれを拒否したところ、家主は 3階に通じる通路を廃止したような外観を作った上、通行を妨害したり、電源を切ったり、水道およびガスの供給を停止したりしたほか右翼の幹部と共謀して、右の者にビルを譲渡したように仮装したりした。
 そこで、借家人は、これらの行為により、医療業務が妨害されたとして、家主(株式会社アートネイチャーとその代表取締役)に対して不法行為責任に基づき、損害賠償の請求をした。

 (判示)
 判決は、家主の立退きを求めて行ったこれらの行為は、法律に則った手段による明渡しが困難であるため、借家人の業務を妨害すること等によって追い出しを図るためにしたものであるから、立退き工作は、社会通念上許された範囲を逸脱したものである旨判示し、金120万円の慰謝料等の支払を命じた。

 (短評)
 本件は、株式会社アートネイチャー(毛髪製品の製造および販売を主たる目的とする会社)とその代表取締役が被告となった事件である。

 世上、往々にして、家主が、賃貸建物の明渡しを図るため、裁判上の手続では、明渡を得られないことが予想されるため、裁判上の請求の代わりに、あるいは、裁判上の請求とともに、賃貸建物内における備品類を搬出したり、鍵を取替えて使用できないようにしたりして、事実上明渡しを図ることがある。

 このような家主による実力行使に基づく自力救済は、原則として法が認めるところではなく、家主がその限度を超えて行った行為は、借家人に対する不法行為に当たるものとして、損害賠償の責任を負うことになる。

 また、会社の不法行為責任が成立する場合は、会社の責任とともに、代表者個人の責任も成立することになる。

 そこで、家主が実力行使をするような場合には、借家人として、それらの実力行使に対抗するため、刑事上の告訴のような民事上の不法行為に基づく損害賠償の請求手続を適宜考える必要がある。

 本件は、そのために参考となる判決といえる。

   

 (1989.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 マンションに建替える目的で買った借家の明渡しに正当事由なしとされた事例

2007年03月08日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 不動産業者が分譲マンションに建替える目的で賃貸建物を買受けて明渡を求めたが正当事由がないとされた事例 東京地裁昭和62年7月2日判決、判例時報127号)

 (事案)
 借家人は父の代から(昭和3年より)長屋式の1、,2階を賃借し、畳屋をして暮らしていた。家主は、昭和58年10月1日、借家建物を不動産業者に売払い、不動産業者は、同年11月7日賃貸借契約の解約の申入れをした。賃料は5万1000円であった。

 業者は建物明渡請求の裁判において、建物は昭和3年頃のもので非常に老朽化が進み大幅改築の必要に迫られていることを主張して明渡しを請求し、それが認められないときの予備的な請求として改築後のマンション(地上5階、地下1階)に保証金532万8000円、賃料21万3120円で再入居させる。または、立退料3000万を支払うという条件を付けた。裁判所は、つぎのような判断をして、この明渡請求を認めなかった。

 (判決)
 「原告(不動産業者)は本件建物を買取ったのも、借家人との賃貸借契約を解約して建物を取壊し、その地上に分譲マンションを建築する目的でした営業上の行為であり、他方被告は、父の代から本件建物で畳屋を継続し生計を立てており、現在は被告の息子も被告と本件建物で畳職に従事していること、永年の間の顧客は本件建物の近隣の地域に限定されており、本件建物の近傍に代替の営業所兼居宅を得られるならともかく、遠隔の地に転居して営業を継続することは望み得ないこと、本件建物は老朽化しているとはいえ、未だ使用に耐え得ない程のものではないこと以上の事実よりすれば、本件建物の明渡を求める正当事由は存在しない、原告は予備的請求として、本件建物跡地に建設予定の1、2階部分に保証金532万8000円、賃料21万3120円、期間2年の約定で被告に賃貸の提供をし、本件建物を先履行として明渡すことを求めるが、右のような条件は、いかなる事情の変更によって、将来原告において履行が不可能になるか予測がつかず、このような実現性について担保のない事項を約束にして、被告に対して本件建物の明渡を先行させることは相当でない。原告は、更に予備的請求として、金3000万円の支払と引き換えに本件建物の明渡を求めるが、不動産業者が他人の土地を買取り、借地権や借地人を立退かせて、その土地を転売し、あるいはマンション建築等有効利用して利潤を得ようとするときは、借地権者または借家人が立退くことによって被告経済上の出費及び損失を完全補償するのでなければ、明渡を求める正当事由は備わらないものと解すべきものである。……金3000万円という金額が、右要件を満たすものであることを認めるに足りる証拠はない」

 

(1988.09.)

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【判例紹介】 再開発目的で買った借家の明渡請求に正当事由が無いとされた事例

2007年03月07日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 再開発目的で土地建物を買った不動産業者の借家人に対する明渡請求に正当事由がないとされた事例 東京地裁昭和62年6月16日判決、判例時報1269号)

 (事案)
 係争の建物は、靖国通りに面する神田神保町3丁目にある宅地約15坪の鉄筋コンクリート5階建の1階(昭和41年建築)。借家人はこれを昭和52年に賃料月12万円で賃借しラーメン店(蔵王らーめん)を経営、2年毎に更新していた。従業員16名、売上1日平均約30万円、チェーン店全体の売上の内40%を占める。

 昭和58年3月家主がこれを住友不動産(原告)に売却、同社は附近の土地約380坪を買収してビル計画を立てた。2階以上は立退いたが、この借家人のみが拒否。原告は代替店舗を紹介したり、8000万円の立退料を提供し、裁判でも同様の金額を正当事由を補強するものとして提示した。しかし、原告(住友不動産)敗訴。

 (判決)
 (1)不動産会社である原告は、本社ビル敷地を含む一区画を買収して同地上に高層の賃貸用ビルを建設する計画をたて同計画遂行の一環として本件ビル敷地を買収し、賃借人である被告に対しその明渡を求めるに至ったものであって、その明渡を求める理由ないし必要は、本件建物を自ら使用することでもなければ本件ビルが老朽化したために建替えることでももなく、もっぱら都内部における宅地の有効利用という見地からの再開発をするためであるということができ、しかも右にいう再開発は、国又は公共団体等による具体的な市街地整備計画等に基づく公共事業ではなく、その建設計画自体もいつごろビルの建設に着工することができるのか不確定な情況にあるといわざるをえない。

 (2)一方、被告(賃借人)は昭和52年以来本件建物において中華料理店を経営し、昭和60年頃では10数名の従業員を雇用して一日平均30万円前後の売上を得ていたものであって、本件建物を引続き使用する必要のあったことが認められる。

 (3)そうすると、右(2)のような賃借人(被告)との関係において、右(1)の再開発目的は、本件賃貸借の解約申入れの正当事由には到底なりえないものと解するのが相当であり、したがって原告が被告に対し代替店舗(移転先)を紹介し、かつ、相当額の立退料の支払を提示したとしても、これによって賃貸借の解約申入れの正当事由が補強され正当事由が具備されるに至るものと認めることはできないといわなければならない。

 (感想)
 札束でほっぺたをひっぱたく「地上げ」攻勢に苦しめられてきた借家人、借地人にとっては胸のすく判決。「正当事由」とは本来こうでなければならない。それが借地・借家法の理念であったはず。すぐ「立退料」にとびつく裁判官に煎じて飲ましてあげたい。

 

(1988.12)

(東借連常任弁護団)

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