東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 「契約書のない建物賃貸借」

2010年02月26日 | 契約・更新・特約

(問) 私は、昨年10月夫をなくしたので、相続人の私の名義で、供託しました。ところが、家主から契約書が届けられ、その中に、「連帯保証人」をつけること、「本契約の終了後の相続権は認めません」との特約事項が記載され、署名捺印して送り返すようにとの申し出を受けました。
 私は、約50年住んでいますが、賃貸契約書を見たこともありません。契約書に印鑑を押して家主へ届けなければなりませんか。


(答) 借家契約(借家権)は、相続することが出来ます。また、元々契約書のない契約であれば改めて契約書を作成することはありません。

 改めて契約書を結ぶと借家人に有利な契約条件よりも不利な条件が求められる事例が多くあります。

 また、契約の更新は、当事者が合意をして契約書を交わすことを「合意更新」と云います。契約書を書き換えずに契約期間が過ぎて契約を継続する場合を「法定更新」と云います。

 ご相談の方は、借家権の相続が認められていますので、改めて新規の契約書を交わす必要はありません。

 どうしても家主との信頼回復のために、新規契約を結ぼうとする場合でも、「連帯保証人」「相続権を放棄する」特約は応じないようにしましょう。

 その結果、話合いができなくなったら、これまで通り、家賃を供託していけば契約は存続します。

 

 

大借連新聞より

 

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賃貸更新料の無効支持…大阪高裁、家主側の控訴棄却 (読売)

2010年02月25日 | 更新料(借家)

 賃貸住宅の「契約更新料」は消費者契約法に反しているとして、京都市内のマンションを借りていた熊本市の女性が、家主に支払った更新料計22万8000円の返還などを求めた訴訟の控訴審判決が24日、大阪高裁であり、安原清蔵裁判長は、家主に全額返還を命じた1審・京都地裁判決を支持、家主側の控訴を棄却した。

 判決によると、女性は2003年4月、京都市西京区のマンションに入居。家賃は月3万8000円で、1年ごとに家賃2か月分の更新料を支払うとの契約に基づき、3年間に計22万8000円を支払った。

 家主側は「更新料によって家賃が低く抑えられている」と主張したが、安原裁判長は「消費者契約法に反し無効。更新料相当分を上乗せした家賃を明示し、借りるかどうかを選択させるべきだ」と述べた。

 更新料を巡っては、大阪高裁が昨年8月に「消費者契約法に照らして無効」とした一方、昨年10月に同高裁の別の裁判で「礼金を補充・追加するもので必要性が認められる」と逆の判断を示し、いずれも最高裁に上告中。高裁での判断が分かれており、最高裁での判断が注目される。

 

(2010年2月25日  読売新聞)


  大阪高裁(2010年2月24日)判決 全文

 

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賃貸住宅更新料、二審も「無効」判決 大阪高裁 (朝日)

2010年02月25日 | 更新料(借家)

 賃貸マンションの契約更新時に入居者から「更新料」を徴収する契約条項は消費者契約法に照らして無効だとして、熊本市の20代女性が家主に支払い済みの更新料など34万8千円の返還を求めた訴訟の控訴審判決が24日、大阪高裁であった。安原清蔵裁判長は、更新料を無効とした一審判決を支持し、家主に全額返還を命じた。原告側弁護団によると、更新料をめぐる高裁レベルの判断は「無効」2件、「有効」1件となった。

 判決によると、女性は2003年、京都市のマンションに月3万8千円の賃料で入居。1年ごとの契約更新時に賃料2カ月分の更新料を支払う契約を結び、退去時の補修費にあてるとされる「定額補修分担金」12万円も徴収された。06年度までの更新料3回分(計22万8千円)は支払ったが、07年度分は支払いを拒み、その後に転居した。

 高裁判決は、更新料について「趣旨不明確な部分が大きい」とし、家主が契約更新を拒む権利を放棄する対価や、賃料の補充分としての性質も認められないと指摘。消費者の利益を一方的に害する契約条項を「無効」と定めた消費者契約法に反するとして、昨年9月の一審・京都地裁判決同様の判断を示した。定額補修分担金の条項も、同法に照らして無効とした。

 

2010年2月25日 asahi.com(朝日新聞社)

 

 大阪高裁(2010年2月24日)判決 全文

 

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【Q&A】 抵当権付き借家を借りたが、今後の契約はどうなるか

2010年02月25日 | 借家の諸問題

(問) 私は、平成20年7月1日、仲介業者を通じて3階建の木造借家を敷金40万円(解約時返金なし)月額9万円の条件で借りました。

 今年2月上旬、突然大阪地裁執行官が調査用紙を持参し、「資料をコピーして返送してほしい」と言われ「何のことか意味不明」でビックリしました。

 家主へ問合せをしても行方不明で音信不通。仲介業者へ相談しても「うちも犠牲者」というばかりで要領が得られません。

 仲介業者は、契約前に「抵当権付き物件」と説明してあったと言います。益々わからず不安になりました。

 登記簿謄本を見ると、その借家は、平成17年6月末に銀行から融資を受け、抵当権が設定されていることがわかりました。

 大学受験を真近に控えた娘もおり、借家を出ることはできません。どうしたらよいでしょうか。



(答) 抵当権設定後の賃貸借契約は、家主が債務不履行でその建物が債権者から競売されてしまうと、新所有者には対抗権はありません(居住権を主張できません)。

 すなわち、Sさんの事例では、抵当権が設定されている建物を仲介業者が事前に説明していることから、仲介業者へその責任を取ってもらうことも不可能と思われます。

 裁判所のお問い合わせには応じてこれまでの事情を説明し、新所有者に契約の存続を望んでいることを付言してもらう以外にはありえません。

 まお、契約時に支払った敷金も新家主からは、返還してもらうことはできません。これまでの家主に対しては、損害賠償請求を訴えることはできますが、行方不明であるのでどうしようもありません。

 借家人が新たに借家を借りる場合は必ず抵当権が設定されているかどうかを確認し、いくら契約条件がよくても抵当権設定されいる建物は契約しないことをお勧めします。

 

 

大借連新聞より


 

参考

Q&A 抵当権設定後の建物を賃借しているが競落人から明渡請求を受けている

 

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【判例】 1 賃料減額請求が一部認容された事例  甲府地方裁判所 (平成18年09月12日 判決)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

 判例紹介

♦事件番号・・・・ 平成11(ワ)516等
♦事件名・・・・ 賃料等本訴請求事件,賃料減額確認反訴請求事件
♦裁判所・・・・ 甲府地方裁判所 民事部
♦裁判年月日・・・・ 平成18年09月12日
♦裁判概要・・・・ 本件契約の賃貸人である原告が,賃料増額特約があると主張して,被告に対し,同特約を理由に賃料増額の意思表示をなし,その増額後の賃料額の確認及びこれを前提とする未払賃料の支払を求めたのに対し,賃借人である被告が,本件契約の賃料は,近隣土地・建物賃料の下落,諸物価指数の変動等の諸要因を勘案すると不相当に高額となったと主張して,原告に対し,賃料減額の意思表示をなし,その減額後の賃料額の確認を求めた事案で,被告の建物賃料減額請求が一部認容された事例

 

主       文

 

1 原告(反訴被告)と被告(反訴原告)との間の別紙物件目録記載の建物についての賃貸借契約における賃料は,平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることを確認する。
2 原告(反訴被告)の請求及び被告(反訴原告)のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告(反訴原告)の負担とし,その余を原告(反訴被告)の負担とする。

 

事実及び理由

 

第1 請求
 1 本訴について
 (1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は,原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し,金9013万7520円及びこれに対する平成12年2月17日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 (2) 原告と被告の間の別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)についての賃貸借契約(以下「本件契約」という。)における賃料が,平成11年11月17日以降1か月当たり金3857万9690円であることを確認する。

 2 反訴について
 原告と被告との間の本件契約における賃料が,平成12年3月17日以降1か月当たり金2003万0558円であることを確認する。

第2 事案の概要
 1 事案の要旨
 (1) 本訴事件は,本件契約の賃貸人である原告が,本件契約の賃料は,本件契約開始の日から3年を経過した時点で,改定前の賃料を7.5%増とする旨の特約があると主張して,被告に対し,同特約を理由に賃料増額の意思表示をなし,その増額後の賃料額の確認及びこれを前提とする未払賃料の支払を求めた事案である。

 (2) 反訴事件は,本件契約の賃借人である被告が,本件契約の賃料は,近隣土地・建物賃料の下落,諸物価指数の変動等の諸要因を勘案すると不相当に高額となったと主張して,原告に対し,賃料減額の意思表示をなし,その減額後の賃料額の確認を求めた事案である。

 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)
 (1) 当事者
 原告は,不動産の賃貸業等を目的とする株式会社であり,被告は,ショッピングセンターの企画運営等を目的とする株式会社である。

 (2) 原告は,平成5年10月25日,貸店舗として本件建物を建築し,以後,本件建物を所有している。

 (3) 本件ショッピングセンターが開店するまでの経緯
 ア 原告と被告は,昭和63年4月30日,本件建物が所在する土地上に原告が建物を建築してこれを被告に賃貸し,被告がそこでショッピングセンターを運営するとの内容の覚書をとり交わした(甲2。以下「本件覚書」という。)。

 イ 本件覚書には,次のとおりの条項が存在する。
 (ア) 賃料について
 (4条1項)
 賃料の算定は,次の算式による。
 月額賃料=坪当たり建築価格×19%×延べ床面積÷12ヶ月

 (イ) 賃料の改定について
 (5条1項,以下「本件賃料自動増額条項」という。)
 賃料は,賃貸借開始の日より3カ年を経過した時点で,その改定を行なう。改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。
(5条2項)

 以後も3カ年を経過するごとに改定するものとし,前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ,甲乙協議して決定する。

 ウ 原告と被告は,平成元年2月18日,本件覚書をふまえ,基本協定書を取り交わした(乙1。以下「本件基本協定書」という。)。

 エ 基本協定書には,次のとおりの条項が存在する。


 (ア) 賃料について
 (10条1項)
 賃料の算定はつぎの算式による。
 月額賃料=坪当たり建築価格×19%×乙の賃借する延床面積÷12

 (イ) 賃料の改定について
 (12条)
 賃料は賃貸借開始の日より満3カ年毎に改定するものとし,改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。但し,上記情勢等に異常な変動を生じたときはこの限りではない。

 オ 本件基本協定書15条によれば,建物建築工事請負契約の締結時に原告と被告の間で建物賃貸借の予約契約を締結することとされていた。

 しかしながら,原告と被告は,賃料算定の基礎となる「坪あたりの建築価格」の額を幾らにするか,建築代金にかかる消費税をどちらが負担するか,ショッピングセンターの管理運営をどちらがするかなどをめぐって意見が対立したため,予約契約を締結しなかった。

 そのため,本件建物が完成し,本件ショッピングセンターの開店に向けての準備が具体化しても,原告と被告の間の協議は難航し,合意に達しなかった。

 カ その後,被告は,建物賃貸借契約が締結されないまま,平成5年11月17日までに,原告より,本件建物のうち,1階につき2,917.49平方メートル,2階につき3,631.85平方メートル,3階につき2,931.91方メートル,4階につき0平方メートル(それぞれ共用部分を除いた被告専有面積)の引渡しを受け,本件建物にショッピングセンター「Aショッピングモール」(以下「本件ショッピングセンター」という)を開店させた。

 (4) 本件ショッピングセンター開店後の本件契約の締結
 平成5年12月になり,賃料算定の基礎となる「坪当たりの建築価格」について原告と被告との間でようやく合意が成立し,同月29日,以下の内容で本件契約が成立した(甲3)。

 期 間(4条)  平成5年11月17日から20年間
 賃 料(5条)  初年度月額賃料 3338万4264円
 消費税相当額は,被告が負担するものとする。

 賃料の改定(8条) 賃貸借開始日から満3カ年経過毎に賃料の改訂を行うものとし,改訂後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,原告,被告及び訴外Bにおいて協議し,決定する。ただし,上記情勢等に異常な変動が生じた場合はこの限りではない。

 (5) 原告の被告に対する賃料増額の意思表示
 ア 原告は,被告に対し,平成8年10月9日ころ到達の書面により,前記本件覚書5条1項に基づき,本件賃貸借開始の日から3年を経過する日である同年11月17日以降の本件建物の賃料を,従前の賃料の7.5%を加算した3588万8084円(消費税別途)とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲4)。

 イ 原告は,被告に対し,平成11年10月13日ころ到達の書面により,本件覚書5条1項に基づき,前記平成8年11月17日から3年を経過する日である平成11年11月17日以降の賃料を,上記アにおいて増額した賃料の7.5%を加算した3857万9690円とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲5)。

 (6) 被告の原告に対する賃料減額の意思表示

 被告は,原告に対し,平成12年3月14日ころ到達の書面により,本件賃貸借契約書8条に基づき,平成12年3月17日以降の賃料を,現行の賃料である3338万4264円から40%控除した1か月2003万0558円とする旨の賃料を減額する意思表示をした。

  <争点に対す原告・被告の主張>へ続く


【判例】 2 争点に対す原告(貸主)・被告(借主)の主張  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

3 争点
(1) 本件契約には賃料自動増額特約があるか
本件覚書5条の効力)。
 (原告の主張)
 ア 本件基本協定書12条の規定は,本件覚書5条の規定を当然の前提として定められたものである。すなわち,本件覚書5条は,1項において,賃貸借開始の日から3年経過時に自動的に7.5%賃料を増額することを定めるとともに,2項において,さらに3年を経過する毎に,原告・被告間で協議の上,賃料を改定すべきことを定めたものである。そして,本件覚書においては,この協議の際の判断基準が「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ」と抽象的にしか規定されていなかったことから,これをより具体的に規定したのが本件基本協定書12条なのである。このように本件基本協定書12条と本件覚書5条は両立するものであり,また,本件覚書の効力を失わせるためには,契約書等において明文にてその旨を規定するのが実務慣行であるところ,本件契約書にはそのような記載がない。したがって,本件基本協定書の締結により,本件覚書5条の本件賃料自動増額条項の効力が撤回される理由はない。

 イ 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者(当時。 以下,被告,原告とも代表者につき当時。)が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,本件敷地を新たに購入したものである。

 本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格に19%を乗じ,さらに賃借面積を乗じたものを年間賃料として算出され(甲2・乙1),また,賃貸借開始から20年間が経過するより前に被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定しなければならない。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたのであるから,本件契約には,賃料自動増額特約があったというべきである。

 (被告の主張)
 ア 賃料改定に関する本件賃料自動増額条項は,本件基本協定書作成の時点において,原告と被告間の合意事項から撤回されたものである。

 そもそも,本件賃料自動増額条項は,本件覚書締結前の昭和63年3月4日に被告がCショッピングモールにおけるD保険相互会社との間で締結した建物賃貸借予約契約書(乙3)において,同様の規定を挿入したことから,被告の提案により,本件覚書においても挿入することとした。しかしながら,上記Cショッピングモールの賃貸借予約契約書は,賃貸借開始を約1年後に予定しており,予約契約締結時から4年後の賃料の改定を規定していたのに対し,本件賃貸借は,開店まで5年前後を要することを予想しており,それからさらに賃料改定は8年後となってしまうところ,8年後の経済状況を完全に予想することは不可能であるので,本件賃料自動増額条項は,余りにも非合理的であると原告・被告間で意見が一致し,合意の上で削除されたものである。

 イ 本件契約に至る経緯に関し,被告代表者が原告代表者に対して懇願したとの原告の主張事実は否認する。すなわち,被告は,昭和62年ころ,本件土地付近に全国的な中堅業者であるE屋がショッピングセンターを出店するとの情報を得たことから,本件土地を所有するF食品工業株式会社から本件土地を購入又は賃借する方式でのショッピングセンター出店の検討を始めた。そして,その検討を行っている途中で,原告が本件土地を入手して建物を建築し,被告に賃貸するという話が出てきた。当時,被告と原告は,原告がG駅南に所有する土地に被告がショッピングセンターを出店する計画が進んでおり,非常に緊密な間柄にあった。そこで,被告はショッピングセンター経営を業とし,原告は不動産賃貸業を業としていたので,被告としては,それぞれその得意分野を分担することにしようと,本件土地を購入することを断念し,原告が建築する建物を賃借することとした。

 また,被告と原告との間において,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたとの原告の主張事実も否認する。

 なお,賃料は,通常,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,改定されるのが原則であり,それ以外の特別の合意があれば契約書にその旨が明記されるべきであるところ,本件契約では,そのような合意も契約書の記載もない。

(2) 本件契約の平成11年11月17日時点及び平成12年3月17日時点における適正継続賃料額

 (原告の主張)
 ア 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,被告の求めに応じて,本件敷地を新たに購入したものである。本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格を基礎に算出されている(乙1)。とともに,賃貸借開始から20年間は,被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定するかしなければならないものとしている(甲3)。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていた。

 したがって,本件契約においては,いかなる情勢の変化があろうとも,少なくとも自動増額後の賃料を下回る額に賃料を減額することは許されない。

 イ 本件契約のような賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである。

 ウ そうすると,本件建物の平成11年11月17日時点の適正賃料は,月額3857万9690円とするのが相当である。そして,平成8年11月17日から平成11年11月16日までの被告の未払賃料は,月額250万3820円,その合計は9013万7520円である。

 (被告の主張)
 本件契約が締結された平成5年以降,いわゆるバブル経済の崩壊により,土地価格は継続的に下落傾向にあり,また,国内及び山梨県内の景気も低迷状態が続いている。このような状況を受けて,本件建物の近隣土地・建物の賃料は,一般的に下落傾向にある。更に,本件建物の近隣には,大型ショッピングセンター「H」が平成12年2月にオープンした。以上のような状況などを総合考慮すると,本件建物の平成12年3月17日時点における適正賃料は,大幅に下落し,月額2003万0558円とするのが相当である。

    <3裁判所の判断1 ( 賃料自動増額特約の効力について)>へ続く


【判例】 3 裁判所の判断1 ( 賃料自動増額特約の効力について)  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

第3 争点に対する判断

1 賃料自動増額特約の有無(本件覚書5条の効力)について
 (1) 本件契約における賃料自動増額特約の存在については,これを認めるに足りる的確な証拠はない。前記認定事実によれば,確かに,本件覚書(甲2)を取り交わした時点では,原告・被告間において,本件建物に関する賃貸借契約につき賃料自動増額特約を付することが予定されていたと認めることができる。しかしながら,平成元年2月に締結した本件基本協定書(乙1)12条では,本件覚書で定められていた「改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。」との文言が削除され,「改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。」との文言に変わっており,本件契約の契約書(甲3)も上記文言をそのまま採用していることからすれば,原告と被告の間では,本件契約を締結するまでの交渉の過程において,賃料自動増額特約を付する方針は撤回されたとみるのが自然である。

 (2) この点に関し,原告は,上記基本協定書12条は,本件覚書5条2項が,2回目以降の賃料改定の際の判断基準として「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ甲乙協議して決定する。」という抽象的な表現になっていたことから,これをより明確かつ具体的な判断基準とするために規定したものであって,本件賃料自動増額条項を前提としたものであるから,本件賃料自動増額条項の効力は本件契約においても有効である旨主張し,当時の原告の代表者であるIの陳述書(甲6)にもこの主張事実に沿う旨の記載があり,また,原告の取締役である証人Jも上記被告の主張事実に沿う証言をする(同人の陳述書(甲8)を含む。)。しかしながら,原告の主張によるならば,むしろ,本件基本協定書においても本件賃料自動増額条項の文言を明記した上で,「第2回目以降の改定賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案のうえ,・・・決定する。」と文言上明らかにすべきであるところ,本件基本協定書12条及び本件契約の契約書8条の文言は「賃貸借開始日から満3か年経過毎に賃料の改定を行うものとし」となっており,原告の主張は,文言解釈として不自然であるといわなければならない。しかも,前記認定事実によれば,原告は,不動産の賃貸業等を目的とする会社であるから,経験上後々の紛争を回避するためには契約条項を明確かつ具体的に記載すべきことは十分認識し得たことをも合わせ考慮すると,上述したように本件基本協定書において何故本件賃料自動増額条項を明記しなかったのか理解し難いところである。さらに,証拠(乙8の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件基本協定書を作成するに当たり,原告に対し,本件賃料自動増額条項を削除するよう要請していた事実が認められる。したがって,これらの事実に照らせば,この点に関するIの陳述書(甲6)の記載及び証人Jの証言等は,にわかに信用することができない。

 (3) したがって,本件契約において賃料自動増額特約があったことにつき,他にこれを認めるに足りる証拠がない本件では,同事実を推認することはできず,原告の上記主張は採用できない。

   <4裁判所の判断2 (適正継続賃料額について)> へ続く 


【判例】 4 裁判所の判断2 (適正継続賃料額について)  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

 2 本件契約の平成11年11月17日時点(以下「平成11年基準時」という。)及び平成12年3月17日時点(以下「平成12年基準時」という。)における適正継続賃料額について

 (1) 本件鑑定の検討
 鑑定人Kの結果(以下「本件鑑定」という。)によれば,鑑定人は,本件契約の平成11年11月17日時点の適正継続支払賃料を月額2670万円,平成12年3月17日時点の適正継続支払賃料を月額2650万円と評価していることが認められる。そこで,まず本件鑑定の内容の合理性について検討する。

 ア 一般的信用性について鑑定人は,裁判所が選任した両当事者に利害関係を持たない不動産鑑定士であり,現地を実査した上,近隣地域の状況,対象不動産の状況を把握し,通常継続賃料の鑑定に採用される賃料差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,本件鑑定は,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 イ 賃料差額配分法による算定について
 まず,積算法により,正常実質賃料相当額(対象不動産の経済的価値に即応した実質賃料)を月額2076万1000円と算出し,次に,賃貸事例比較法により,正常実質賃料相当額を月額2125万2000円と算出した上で,積算賃料における利回りの把握にやや難点があること,賃貸事例比較法は,市場性を反映しており実証的であることを考慮して,両試算賃料の重視割合を積算法による試算賃料を4とするのに対し,賃貸事例比較法による試算賃料を6として最終的な正常実質賃料を月額2110万円と算出している。他方,実際実質賃料相当額の算定については,実際支払賃料3338万4264円に保証金運用益66万7685円を加算した3405万2000円と算出し,上記正常実質賃料相当額と上記実際実質賃料相当額との差額マイナス1295万2000円を,本件物件の特色,賃貸市場の実情等を勘案の上,折半法を採用して,当事者それぞれに2分の1配分し,差額配分法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2700万円,平成12年基準時は月額2690万円と算定した。

 ウ 利回り法による算定について
 本件契約時点(平成5年11月17日)における純賃料利回り(実際支払賃料に保証金運用益を加算した実際実質賃料から必要経費を控除して得られた純賃料の対象不動産の基礎価格に対する比率)を7.2%と算出し,これに基礎価格の変動幅ほど賃料変動がないことを考慮して,基礎価格下落率の半分を補正率として除した結果,平成11年基準時における継続賃料利回りを9.2%,平成12年基準時におけるそれを9.4%とした。そして,それぞれの基準時における対象不動産の基礎価格に上記継続賃料利回りを乗じたもの(純賃料)に必要経費を加算して得られた利回り法による実質賃料から前記保証金運用益を控除した結果,利回り法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2510万円,平成12年基準時は月額2480万円と算定した。

 エ スライド法による算定について
 本件契約時点から本件鑑定の平成12年基準時までの消費者物価指数,企業向けサービス価格指数(不動産賃貸),名目GDP,オフィース・共同住宅賃料指数,山梨県商業統計調査(年額商品販売額・売場面積当たり年間販売額)のそれぞれの変動率をその重視割合に従い採用し,変動指数として平成12年基準時では89.9%を算出した。また,平成11年基準時における変動指数は,上記平成12年基準時の変動指数を期間配分し,90.4%と算出した。そして,本件契約時点の賃料に上記変動指数を乗じた結果,スライド法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額3020万円,平成12年基準時は月額3000万円と算定した。

 オ 賃貸事例比較法による算定について
 賃貸事例比較法においては,本件建物の近隣地域及び同一需給圏内の類似地域に存する類似の賃貸事例を収集した上で,比準賃料を1,450円(平方メートル当たり)と算定し,これに契約面積を乗じたものから保証金運用益を控除して,賃貸事例比較法による適正な実質賃料を平成11年基準時及び平成12年基準時月額2510万円と算定した。

 カ 適正継続支払賃料の算定
 その上で,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件賃貸借契約時の賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとし,本件賃貸借契約時の賃料は,賃貸人・賃借人間の合意であるから本来重視すべきものであるが,上記契約時からそれぞれの基準時までに他の大型店舗が開業し周辺商業動向が契約時点とは異なることを考慮すると,その試算賃料の重視割合は,差額配分法及び利回り法をそれぞれ30%とするのに対し,スライド法は20%とすべきであるとした。また,賃貸事例比較法の重視割合も,賃貸事例の契約経緯や賃料改定の経緯も個々の事情があり,要因比較にもやや困難が伴うことを考慮して,20%とした。その結果,本件鑑定における適正な実質賃料として,平成11年基準時は月額2670万円,平成12年基準時は月額2650万円と算定した。

 キ 結論
 以上の鑑定評価の手法,採用された基礎数値,評価結果について得に不合理な点は認められない。
 なお,被告は,前述した各試算賃料の重視割合の算定において,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件契約当初における賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとする本件鑑定に対し,そうであるならば,差額配分法及び利回り法においても,同様に考慮すべきである旨主張する。

 上記契約時の賃料は,差額配分法では,実際実質賃料の算定の際に考慮されるところ,確かに,上記契約時の賃料が高めであるとすればその分,正常実質賃料との差額に反映されることは否定できない。しかしながら,賃貸人に配分されるのはその差額からさらに半分に減額されたものである。また,利回り法においても,上記契約時の賃料が高めであるとしても,それは,利回りに若干反映されるにすぎない。したがって,上記契約時の賃料が高めであることは,スライド法においては算定結果に直接反映されるのに対し,差額配分法及び利回り法においては算出された賃料額に反映する割合がかなり低減されたものになる。加えて,適正な賃料算定のためには,重視割合に程度の差はあるにせよ,本件契約時の当事者が賃料額決定の要素とした事情もまた考慮すべきであることは否定できない。以上のことにかんがみると,本件鑑定が上記契約時の賃料が高めであることを差額配分法及び利回り法において考慮していないことだけをとらえて,被告主張のように本件鑑定の合理性を否定することはできないといわざるを得ない。よって,被告の上記主張を採用することはできない。

 また,被告は,本件鑑定が賃貸事例比較法による賃料を余り重視しておらず,適正でない旨主張する。しかしながら,両当事者に利害関係がなく,かつ,契約内容等に類似性がある賃貸事例は少ない上に,その要因比較に多少の困難があることは否定できないのであるから,賃貸事例比較法による賃料を被告の主張するほど重視していないとしても,必ずしも不合理なものとはいえない。したがって,この点に関する被告の主張も採用することができない。他方,原告は,最高裁平成14年(受)第1954号平成17年3月10日第一小法廷判決を引用し,本件契約は,原告が被告からの要望に応じ,被告が営業するショッピングセンターに適した建物を建築し,これを被告に対して長期にわたって賃貸するという形態の賃貸借契約であるから,賃料減額請求後の相当賃料額の算定に当たっては,上記最高裁判決に沿った判断が行われるべきであるのに,本件鑑定は,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を考慮していない旨主張する。しかしながら,上記判決は,本件で問題となった賃料自動増額特約の存在が認められた事案のものであり,本件と同一に論じられるものではない。むしろ,本件鑑定は,前記のとおり,賃料差額配分法,利回り法及びスライド法において,本件契約当初における賃料が高めであるという本件契約の個別性を考慮しているのであるから,上記原告の主張は採用できない。

 (2) 原告鑑定の検討
 原告提出の不動産鑑定評価書(甲7。以下「原告鑑定」という。)は,差額配分法,スライド法,利回り法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,1差額配分法,利回り法においては,建物価格の査定に当たり,本件鑑定が当初の本件建物の建築費をもとに変動率を考慮して求めているのに対し,原告鑑定では,当初の本件建物の建築費を全く考慮せず,単純に山梨県の鉄筋コンクリート造の標準建築費から本件建物の個別要因修正を行っているため,本件建物の再調達原価が本件鑑定より約8億円(この点,原告鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は1平方メートル当たり14.0万円であるから,これに本件建物の延べ床面積を乗じた結果,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は,30億7276万2000円となる。他方,本件鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は22億7668万9000円である。)も不当に高額なものになっている。また,2必要諸経費の加算においても,本件鑑定が支払賃料の2%を計上したものに原告・被告間における本件契約の共益費等請求が問題となった別件和解(東京高裁平成15年・第3881号)で定められた維持管理費を控除して求められているのに対し,原告鑑定は,単純に人件費の3倍の収入が必要としてこれを計上しており,その根拠も不明であることに加え,上記和解による維持管理費の部分が二重に計上されてしまう点でも合理性がない。

 さらに,3差額配分法における正常実質賃料相当額の算出に当たっては,まず,積算法による積算賃料の算定において,本件鑑定が期待利回りを6.7%とするのに対し,原告鑑定は,12%と算定している。しかし,原告鑑定は,期待利回りを12%とする根拠として比準賃料を4000円から5800円と試算し,この賃料水準からは総合期待利回りが15%超となることを挙げているところ,そもそもこの比準賃料は,支払賃料に保証金運用益だけでなく共益費をも加算したものであり,また,必要諸経費は全く控除されていないのであるから,期待利回りが高くなるのは当然であり,本件賃貸借の契約時から平成11年及び12年の間における社会情勢の変動,物価指数の変動等をも合わせ考慮しても,12%は高率に過ぎ,本件鑑定及び被告鑑定で採用されている利回りと2倍の開きがあることに合理性が認められず,到底採用できるものではない。なお,この点に関して,原告は,平成14年6月のL投資法人のリートの目論見書による賃貸事務所ビルの利回りを引用し,原告鑑定の上記利回りの合理性を縷々主張するが,これらは,本件で問題となっている平成11年及び平成12年から2年後の平成14年のものであることに加え,本件建物のようなショッピングセンターの利回りがこのような事務所ビルの利回りよりも当然高くなるとする根拠が何も示されていないこと等を考慮すると,原告の上記主張は採用できない。4差額配分法の比準賃料の算定においても,本件鑑定は,支払賃料に保証金運用益を加算したものを実際実質賃料としているのに対し,原告鑑定は,前述したように支払賃料及び保証金運用益に共益費をも加算して実質賃料としているため,賃料と共益費を合計すると,必要経費部分が二重に計上されてしまうこととなり合理的でない。5利回り法においては,本件鑑定及び被告鑑定が,基準時の本件土地・建物の基礎価格に利回りを乗じたものに必要経費を加算した上,これに保証金(敷金)運用益を控除しているのに対し,原告鑑定は,本来控除されるべき保証金運用益を全く控除しておらず,これもまた原告鑑定賃料額が高額に過ぎる要因の一つとなっている。6スライド法においては,採用変動率として92%を採用しているが,これは,原告の関連会社であり,かつ,原告から本件物件を賃借している訴外新日本建物のテナントに対する転貸賃料収入の変動を採用したことが主たる原因であり,上記テナントである転借人自体及びその数も変動していることをも考慮すると,上記変動率を採用することは,本件契約の継続賃料の算定に当たっては合理性を欠くと言わざるを得ない。7賃貸事例比較法においては,賃貸データの一つとして本件建物について訴外新日本建物が原告から賃借している部分における原告に対する支払賃料を採用しているものと推認されるところ,前述したとおり訴外Bが原告の関連会社であり,賃貸データとしての公平性に疑問の余地があること,しかも,上記賃貸データを他の賃貸データと比して50%もの重きを置いて算定されている点で合理性を欠くと言わざるを得ない。

 したがって,以上の点を総合考慮すると,原告鑑定は,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

 (3) 被告鑑定の検討
 被告提出の不動産鑑定評価書(乙5。以下「被告鑑定」という。)は,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,1差額配分法及び利回り法においては,本件鑑定は,保証金(敷金)の運用利回りを2%としているのに対し,被告鑑定のそれは,5%としており,平成12年の公定歩合,プライムレート,定期預金平均金利等を考慮すると高率に過ぎること,2差額配分法においては,本件建物の基礎価格の算定における現価率を55%とし,本件鑑定及び原告鑑定が64%としていることに比して,低きに過ぎる感が否めない。また,その根拠として,被告鑑定は,定率法による現価率を59%と算出し,維持管理の状態等を勘案してさらに4%も控除しているが,被告鑑定における資料にはこれを裏付ける資料はなく,他方,本件鑑定は,「本件建物は,外観上比較的良好に維持管理がなされている」と評価していること,本件鑑定添付写真等を見ても維持管理の状態に上記4%も控除するほどの問題点が見受けられないこと等も合わせ考慮すると,被告鑑定の根拠の合理性に若干疑問の余地があると言わざるを得ない。また,3差額配分法における正常実質賃料を賃貸事例比較法を併用せずに,積算法のみを用いて算出しているため,市場性が反映されたものになっていない。さらに,4利回り法においては,被告鑑定は,実績利回りを本件賃貸借契約時の実績利回りである7.5%を採用しており,本件鑑定及び原告鑑定がこれを9%台としているのに比して,低きに過ぎる上,本件賃貸借契約時である平成5年から本件鑑定基準時である平成11年及び12年までの約7年もの間における地価の下落により利回りも少なからず高くなる傾向があることを反映しておらず,採用できない。なお,この点に関し,被告は,本件鑑定が上記利回りを算定するに当たって,基礎価格下落率46%の半分を補正率としているところ,何故半分としたのかの合理的な説明がない旨主張する。確かに,本件鑑定には,この点を説明する明確な記述がないが,賃料については,基礎価格の変動幅ほどの変動はないものの,地価が下落すれば多少は影響を受けることは否定できないのであるから,基礎価格下落率をそのまま補正率とすることは適正でないのであって,補正率を算出するに当たり,基礎価格下落率の半分を採用することが不合理であるとまでは言えず,被告の上記主張は採用できない。

 したがって,以上の諸点を総合考慮すれば,被告鑑定も,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

 (4) 総合的検討
 以上の検討の結果によれば,本件鑑定は,その鑑定手法,採用した基礎数値,評価の過程,評価額等に格別不合理な点は見当たらず,これに対し,原告鑑定及び被告鑑定には,前記(2)及び(3)に指摘したような問題点が含まれていることを総合的に考慮すると,いずれも採用することができず,本件鑑定の結果を相当なものとして是認するべきである。

 そうすると,本件契約の適正賃料は,平成11年11月17日時点では月額2670万円,平成12年3月17日時点では月額2650万円と認めるのが相当である。

 (5) なお,原告は,最高裁平成12年(受)第573号平成15年10月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁,最高裁平成14年(受)第69号平成15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁,及びこれらの差戻審における和解,並びに,最高裁平成14年(受)第852号平成15年10月23日第一小法廷判決・裁判集民事211号253頁,及びその差戻審である東京高裁平成15年(ネ)第5399号平成16年12月22日判決を引用し,賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである旨主張する。

 しかしながら,これらの判決は,いわゆるサブリースの事案であって,不動産業者である原賃借人自身の占有使用が予定されていないものである上,いずれも賃料保証特約又は賃料自動増額特約がある事案であるから,本件と同一に論じられるものではない。しかも,和解は,両当事者の互譲によるものであるから,本件の参考になり得ないと言わざるを得ない。また,上記東京高裁平成16年12月22日判決は,賃料保証特約を前提とする収支予測の下に賃貸人が多額の銀行融資を受け,賃貸借契約の対象となる建物を建築した事情を考慮し,相当賃料額を算定しているが,本件では,前述したとおり,このような賃料保証の合意はなく,しかも,本件覚書及び本件基本協定書における賃料算定方法である「坪当たり建築価格×19%×被告の賃借する延べ床面積÷12」の19%の根拠も明らかとなっていない
等,本件契約当初における賃料額等と原告の本件建物建築のための銀行借入金等の返済額との関係を認めるに足りる証拠はない。したがって,この点においても本件は,上記判決と事案を異にするのであって,上記原告の主張は,採用できない。

 3 結論
 以上によれば,原告の被告に対する請求(本訴請求)は,理由がないからいずれもこれを棄却し,被告の原告に対する請求(反訴請求)は,本件契約の賃料が平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることの確認を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。

甲府地方裁判所民事部

裁判長裁判官  新 堀  亮 一

裁判官  岩 井  一 真

裁判官  村 上  典 子

 

 

 

 

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悪質な家賃取り立てに懲役刑 追い出し規制法案まとまる (朝日)

2010年02月23日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 悪質な家賃取り立てから借り主を守る「追い出し規制法案」を政府がまとめた。これまでは民事トラブル扱いで警察は介入しにくかったが、無断で鍵を交換したり、深夜早朝に再三、取り立てたりすることを新法は違法行為として禁止。警察の捜査対象となり、懲役刑が科される。23日に閣議決定し、来年4月の施行を目指す。

 新法では、賃貸住宅の大家や管理する不動産会社、借り主の連帯債務を請け負う家賃保証業者など、家賃を取り立てる側すべてが規制の対象になる。鍵を勝手に交換して借り主が部屋に入れないようにする▽家財道具を無断で持ち出す▽借り主が拒んだのに深夜や早朝に督促を繰り返す――といった行為は違法になり、2年以下の懲役刑が科される。

 貸金業法と同様に、「人を威迫し、私生活の平穏を害する言動」が違法とみなされ、例えば、玄関への張り紙も、単に連絡を求める内容なら問題ないが、「払わない場合は荷物を撤去する」といった借り主を威圧する言葉だと違法になる。

 賃貸住宅の契約では、親類や勤務先の企業が連帯保証人になることが以前は多かった。しかし、派遣社員が増え、核家族化も進み、連帯保証人を見つけられない入居者が急増。日本賃貸住宅管理協会の調べでは、最近の賃貸契約では4割に家賃保証業者が介在している。

 ところが、家賃保証業者に法的な規制はなく、借り主との間で取り立てを巡るトラブルが続発。国民生活センターに寄せられた家賃保証業者を巡る相談件数は、2004年度の44件から、08年度には495件と10倍以上になった。

 このため、家賃保証業者は国土交通省への登録を義務づける。無登録営業は法人が1億円以下の罰金、個人が5年以下の懲役か1千万円以下の罰金。取り立てに暴力団員を使ったり、滞納者への債権を暴力団に譲渡したりすることも禁じられる。

 法案の検討を進める中で、滞納者をデータベース(DB)化して共有する動きが表面化。日本弁護士連合会などは全面禁止を求めていた。

 これに対し政府は、実害がまだなく、過度な規制になるとして全面禁止を見送った。一方でDBの作成は借り主の同意が必須で、DBへの登録も拒否できるようにする。(歌野清一郎、室矢英樹)

 法案の検討を進める中で、滞納者をデータベース(DB)化して共有する動きが表面化。日本弁護士連合会などは全面禁止を求めていた。

 これに対し政府は、実害がまだなく、過度な規制になるとして全面禁止を見送った。一方でDBの作成は借り主の同意が必須で、DBへの登録も拒否できるようにする。

 

2010年2月23日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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底地買い不動産業者の理不尽な請求 (京都・山科区)

2010年02月22日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 京都市山科区。バブル末期にさらなる利潤追求を図り、底地を取得した建築会社が今日の地主。その後地価は下落の一途を辿り、不良債権に転落。借金をしている銀行から「早く処分を」との催促を受け続けてきました。

 最近、借地人に対して「土地を買い取ってもらえないか」との話があり、「条件さえ合えば」と話を進めたところ、借地権割合を無視した法外な値段を提示してきました。「そんな高値では・・・・」と交渉を申し入れた矢先、弁護士を通じて、現状の6倍もの賃料値上げの内容証明郵便が送られてきました。まったく問答無用の一方的な押しつけです。

 古くからの組合員であった借地人らは、「負けるもんか!」と闘う構えです。

 

 

京都借地借家人組合連合会新聞より

 

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借地立ち退き期限の直前、80代姉妹自殺か 大阪・大東 (朝日)

2010年02月20日 | 住宅・不動産ニュース

 20日午前6時50分ごろ、大阪府大東市中垣内7丁目の住宅の庭で人が焼けている、と付近の住民から110番通報があった。大阪府警四條畷署員が駆けつけたところ、2人の焼死体を発見した。同署は、この家に住んでいた80代の姉妹が焼身自殺を図ったとみて身元の確認を進めている。住宅は借地で、姉妹は22日を期限に立ち退きを求められていたという。

 同署によると、焼死体は損傷が激しく、性別などをすぐに判別するのは難しいという。同居していた親類女性(63)の説明では、姉は84歳、妹は82歳。3人暮らしだったが、親類女性は入院中で、当時は家にいなかった。署員が駆けつけた際、油のようなにおいがし、マッチ箱が見つかった。同署は姉妹が油類をかぶって火をつけた可能性があるとみている。

 府警によると、住宅は木造平屋建て。土地は近くの住人が所有し、姉妹が数十年にわたって借りていたが、ここ10年以上、土地代を滞納していたという。22日までに退去するよう土地所有者から求められていたといい、同署は、近所の人から「姉妹の1人から『もう近々、出て行かなあかん』という話を聞いた」との証言があったとしている。

 土地の所有者の家族によると、通路を造るため、道路に面している土地の一部から立ち退いてもらおうとしたら、拒否されたため、やむなく土地全体からの立ち退きを求めて裁判を起こした。立ち退かなければ22日に裁判所が強制執行することになっていたという。

 2人の遺体が見つかった庭の木には、衣服やアクセサリーが入った三つのボストンバッグがかけられ、入院中の親類女性の名前や入院先の病院などが書かれた布が添えられていた。「ご迷惑をおかけします」とも書かれていたという。女性の荷物をだれかに託すためだったと同署はみている。

 現場はJR学研都市線住道駅から東へ約1.5キロの住宅街。

 

2010年2月20日 asahi.com

 

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立ち退き求められ80代姉妹が焼身自殺? 大阪・大東の民家 (産経)

2010年02月20日 | 住宅・不動産ニュース

 20日午前6時50分ごろ、大阪府大東市中垣内の民家の庭で、近所の人から「人が燃えている」と110番があった。四條畷署員らが駆けつけたところ、成人とみられる性別不明の2遺体を発見した。遺体のそばにはマッチ箱と遺書のような内容が書かれた布があり、同署は2人が焼身自殺を図った可能性もあるとみて身元の確認を急いでいる。

 同署によると、この民家には84歳と82歳の姉妹とどちらかの娘(63)とみられる3人の女性が暮らしており、姉妹とは連絡が取れていない。また、近所の人の話として、3人は借地代を長期間滞納し、地主から今月22日ごろを期限に立ち退きを求められていたという。

 遺体が発見された庭の木の枝にはかばんが3つかけられ、そのうちの1つに、娘の名前と入院先の病院、「バッグを届けてほしい」と記された布が付けられていた。

 近所の男性は「姉妹の1人が『近々引っ越ししなければならない』と話していた。ハイツを建てる計画があったようだ。急なことで驚いている」と話した。

 

産経ニュ-ス 2010年2月20日

 

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建物を買取った不動産業者が1か月後に明渡せと強要 (京都・左京区)

2010年02月19日 | 建物明渡(借家)・立退料

 京都市左京区。2連棟の借家(うち1軒は空家。土地と建物所有者が別人の物件)を投機目的で買った不動産業者。早速借家人であるAさんに明渡を迫りました。組合と共にその業者と数回交渉を重ねてきました。町内会の役職もあって明け渡せない理由も主張しました。

 それでも出て行けというなら、1つは町内の役職の終わる来年3月末、2つは商売柄電動ミシンなどを使うため、移転先の建物を防音装置などの改造が必要なので、その資金の補償を要求しました。

 明渡時期は合意し、改造費の見積書を見た上で検討することまでは合意できました。そして後日見積書を渡したら、「社に持ち帰って検討する」と預かって帰ったまま梨の礫となりました。

 しばらくしたある日突然、見も知らぬ弁護士事務所から内容証明郵便が届きました。慌てて開封したところ、「家主の代理人になってた・・・・。本書到達後、1ヶ月以内に、本件建物を明け渡すよう請求する」という乱暴なものでした。

 Aさんは、見積額全額を要求したわけではありません。家主側が検討する材料を提供しただけで、当然話し合いが続くものと信じていただけに怒り心頭。明渡し合意を撤回し、とことん 闘い抜く構えです。

 

 

京都借地借家人組合連合会新聞より

 

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【判例】 更新料支払い請求事件 (京都地方裁判所 平成21年09月25日判決 )1事案の概要

2010年02月17日 | 更新料(借家)判例

 判例紹介

◆事件番号・・・・ 平成20(ワ)1286
◆事件名・・・・ 更新料支払い請求事件
◆裁判所・・・・ 京都地方裁判所 第3民事部
◆裁判年月日・・・・ 平成21年09月25日
◆判示事項・・・・ 原告が,被告に対し,賃貸借契約の更新に際して更新料10万6000円の支払を求めたところ,被告が,更新料条項は消費者契約法10条に反して無効であると主張した。本判決は,更新料を賃料の補充とみることは困難であって,更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価ということもできないとした上で,更新料の額や原告と被告との間の情報量の格差等の事情を考慮して,更新料条項が消費者契約法10条に反して無効であるとした事案である。


 平成21年9月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
 平成20年(ワ)第1286号 更新料支払請求事件
 口頭弁論終結日 平成21年7月9日

 

判      決

 

主      文

 

1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

 

第1 請求
 被告らは,原告に対し,連帯して10万6000円及びこれに対する平成20年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


第2 事案の概要
 原告は,被告Aに対し,賃貸マンションの1室を賃貸し,被告Bは,被告Aの債務を連帯保証したが,被告らが約定の更新料を支払わないとして,被告Aについては賃貸借契約に伴う更新料の支払合意に基づき,被告Bについては連帯保証契約に基づき,未払更新料の支払と訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の割合の遅延損害金の支払を求めた。

1 争いのない事実
 (1) 原告は, 被告Aとの間で, 平成18年3月12日, 京都市a区b町c所在のdマンションe号室( 以下 「本件建物 」という。) を下記の約定で賃貸する契約を締結し(以下,この契約を「本件賃貸借契約」という。) ,同年4月1日,同人に対し,本件賃貸借契約に基づき本件建物を引き渡した。

 賃料  月額5万3000円(毎月25日までに翌月分を支払う )。
 共益費  5000円( 水道料金含む。 毎月25日までに翌月分を支払う。)
 契約期間  平成18年4月1日から平成20年3月31日までの2年間


(2) 本件賃貸借契約証書には, 同契約が更新される場合は, 法定更新, 合意更新を問わず,被告Aは,原告に対し,2年ごとに更新料として賃料の2か月分を期間満了の2か月前までに支払わなければならない旨の記載がある。

 また,被告Bが,原告に対し,本件賃貸借契約に基づき負担する一切の債務につき,本件賃貸借契約に定めた契約期間のみならず,法定更新,合意更新を問わず,更新後も連帯して保証するとの記載がある。

(3) 本件賃貸借契約の契約期間は平成20年3月31日で満了するにもかかわらず,同年1月31日までに被告らから更新料の支払はなかった。

(4) その後, 被告Aは, 平成20年3月21日付けの 「通知書」 と題する書面により,借地借家法26条1項に基づき法定更新がなされたこと,更新料の請求には応じないことを告げ,契約期間満了日である同月31日を経過した後も本件建物を占有している。

(5) 被告らは,更新料10万6000円(賃料の2か月分)を支払わない。

(6) 本件賃貸借契約証書には, 本件賃貸借契約に関する紛争については ,京都地方裁判所を管轄裁判所とする旨の記載がある。

 2 原告(貸主)の主張へ続く


【判例】 2 原告(貸主)の主張 (京都地方裁判所 平成21年09月25日判決 )

2010年02月17日 | 更新料(借家)判例

2 争点
本件の争点は,更新料条項の有効性である。

 (1) 原告
 ア 本件賃貸借契約の締結に当たり, 同契約が更新される場合は, 法定更新,合意更新を問わず,被告Aは,原告に対し,2年ごとに更新料として賃料の2か月分を期間満了の2か月前までに支払わなければならない旨の合意をした。

 被告Bは,原告との間で,平成18年3月12日,被告Aが,原告に対し,本件賃貸借契約に基づき負担する一切の債務につき,本件賃貸借契約に定めた契約期間のみならず,法定更新,合意更新を問わず,更新後も連帯して保証するとの合意をした。

 イ 本件賃貸借契約は,自動更新(合意更新)ないし法定更新されたにもかかわらず,被告らは,更新料を支払わない。

 ウ 被告Aは,平成18年4月からC大学法科大学院に入学しており,契約前・契約後においても十分な知識・判断能力の持ち主である。

 エ 本件賃貸借契約証書3条2項では 「法定更新・合意更新を問わず, 借主は,頭書規定の期間ごとに,貸主に対し,頭書規定の更新料及び管理会社に所定の更新手続料を期間満了の2か月前までに支払わなければならない。」と規定されている。

 オ 被告Aは,更新料について重要事項として説明を受けている。また,本件賃貸借契約証書3条の条文を認識・理解していた。被告Aは,契約締結時には更新料条項について何ら異議を述べていない。

 カ 被告Aは, 更新料条項がない物件を選択しようと思えば選択できたのに,それをせずに本件賃貸借契約を選択している。

 キ 更新料は,賃料の補充,更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価といった複合的な性質を有しており,対価性を有する相当なものである。
 更新料条項は,消費者契約法10条に違反せず,被告らの更新料支払拒否は理由がない。

 ク 契約をした賃借人のほとんどは,約束した更新料の支払をしているのであり,その不払は,契約不履行であるだけでなく,賃借人間の公平も害する行為である。

 ケ また,賃貸人たる原告は,更新料条項を含む本件賃貸借契約の条項を信頼して本件建物を引き渡し,被告Aの使用収益に提供しており,約束された更新料が支払われないことにより不測の損害を被っている。

 コ よって,被告Aの法定更新を理由とする更新料支払拒否は,消費者契約法10条違反を口実とした更新料条項の不履行であり,当事者で合意した本件賃貸借契約の契約条件を契約締結後に一部不履行とするものであり,貸主である原告の信頼を裏切る契約上の信義に反する行為であって,直ちに更新料が支払われるべきである。

 サ 借地借家法26条1項,同2項の文言によれば,同条項は,更新の合意がなくとも,一定の要件の下に賃借人が使用継続した場合に契約の更新を認め,賃借人の賃借権を保護する趣旨であって,その際の更新料の支払義務の有無まで定めてはいない。よって,借地借家法26条1項,同2項から当然に法定更新の場合に更新料の支払義務がないことが導かれるとの解釈を前提にする被告らの主張は, 同条項の解釈を誤っており, 失当である。

 シ 本件賃貸借契約は, 中途解約の場合の更新料の精算条項を欠いているが,本件の更新料が更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価の性質も併せ持つことからすると,その対価性があるのであって,更新がなされた以上,その後の中途解約による精算の必要はそもそも存在しないものともいえる。 また,更新料に中途解約の場合の一部違約金としての性格が存在するにしても,民法618条,同617条1項2号等から平均的な損害額を超えているとはいえず, 消費者契約法9条違反はなく, 同10条違反もない。

 3 被告(借主)の主張へ続く