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【判例】 ①家賃保証会社の保証委託契約による「取立て・追い出し行為」が不法行為に該当するという事例

2011年10月27日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 判  例

事件番号・・・・平成21(ワ)4345

事件名・・・・・・不当利得返還等請求本訴,立替金請求反訴事件

裁判所・・・・・・名古屋地方裁判所 民事第8部

裁判年月日・・・平成23年4月27日

(判決の要旨)
 借家人が家賃支払を遅滞した場合に,保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新され,その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約における特約が消費者契約法10条により無効とされるとともに,保証会社が根拠不明の金銭を含め借家人に過分な支払をさせる行為や退去勧告を組織的に行っていたことが,社会通念上許容される限度を超えたもので,不法行為に該当するとされた事例


平 成 2 1 年 ( ワ ) 第 4 3 4 5 号 不 当 利 得 返 還 等 請 求 事 件

平 成 2 1 年 ( ワ ) 第 6 0 5 9 号 立 替 金 請 求 反 訴 事 件


判        決
主        文

1 被 告(家賃保証会社) は , 原 告(賃借人) に 対 し , 7 万 1 9 3 1 円 及 び う ち 7 万 円 に 対 す る 平 成2 0 年 1 2 月 2 7 日 か ら 支 払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 を 支 払え 。

2 被 告 は , 原 告 に 対 し , 2 5 万 3 6 7 5 円 及 び こ れ に 対 す る 平 成 2 1年 8 月 2 0 日 か ら 支 払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 を 支 払 え 。

3 原 告 の そ の 余 の 請 求 を い ず れ も 棄 却 す る 。

4 被 告 の 請 求 を 棄 却 す る 。

5 訴 訟 費 用 は , 本 訴 及 び 反 訴 を 通 じ , 3 分 の 1 を 被 告 の 負 担 と し , その 余 を 原 告 の 負 担 と す る 。

6 こ の 判 決 は , 第 1 項 及 び 第 2 項 に 限 り 仮 に 執 行 す る こ と が で き る 。た だ し , 被 告 が 3 0 万 円 の 担 保 を 供 す る と き は , 第 1 項 及 び 第 2 項 の仮 執 行 を 免 れ る こ と が で き る 。


事 実 及 び 理 由

第 1 請 求
1 本 訴
( 1 ) 被 告 は , 原 告 に 対 し , 1 0 万 5 0 2 8 円 及 び う ち 1 0 万 円 に 対 する 平 成 2 1 年 7 月 2 5 日 か ら 支 払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員を 支 払 え 。

( 2 ) 被 告 は , 原 告 に 対 し , 1 2 5 万 3 7 2 5 円 及 び こ れ に 対 す る 平 成2 1 年 8 月 2 0 日 か ら 支 払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 を 支 払え 。


2 反 訴
 原 告 は , 被 告 に 対 し , 1 6 万 0 8 6 1 円 及 び こ れ に 対 す る 平 成 2 1年 1 0 月 2 3 日 か ら 支 払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 を 支 払 え 。


第 2 事 案 の 概 要
 1 本 件 は , 借 家 人 の 債 務 の 保 証 委 託 契 約 に 関 し て , 借 家 人 で あ る 原 告が , 保 証 会 社 で あ る 被 告 に 対 し , 不 当 利 得 の 返 還 ( 本 訴 請 求 1 ) , 不法 行 為 に 基 づ く 損 害 賠 償 ( 本 訴 請 求 2 ) 及 び 債 務 不 履 行 に 基 づ く 損 害賠 償 ( 本 訴 請 求 3 ) を 求 め ,被告が , 原 告 に 対 し , 保 証 人 の 求 償 権 に基 づ く 債 務 の 履 行 ( 反 訴 請 求 ) を 求 め る な ど し た 事 案 で あ る 。

2 前 提 事 実 ( 争 い の な い 事 実 並 び に 証 拠 ( 甲 1 な い し 3 , 6 , 1 1 )及 び 弁 論 の 全 趣 旨 に よ り 容 易 に 認 定 で き る 事 実 )
( 1 ) 原 告 は , 昭 和 5 6 年 6 月 2 6 日 生 の 女 性 で あ り , 平 成 1 7 年 3 月1 8 日 生 の 子 ( A ) が い る 。

( 2 ) 被 告 は , 平 成 1 1 年 3 月 5 日 会 社 成 立 , 資 本 金 3 億 3 2 0 0 万 円の 賃 貸 住 宅 , 店 舗 及 び オ フ ィ ス 等 の 入 居 者 の 保 証 人 受 託 業 務 等 を 目的 と す る 株 式 会 社で あ り , 平 成 1 9 年 1 1 月 1 2 日 の 変 更 よ り 前 には ,信 用 保 証 ,金 銭 債 権 買 取 ,金 融 業 ,質 屋 業 等 を 目 的 と し て い た 。

( 3 ) 原 告 は , 株 式 会 社 B か ら , 平 成 1 9 年 1 1 月 7 日 , 以 下 の 約 定 等で , 名 古 屋 市 ( 以 下 略 ) 所 在 の △ △ O 階O 号 室 ( 以 下 「 本 件 建 物 」と い う 。 ) を 賃 借 し ( 甲 1 。 以 下 「 本 件 賃 貸 借 契 約 」 と い う 。 ) ,本 件 建 物 の 引 渡 し を 受 け た 。

① 期 間 平 成 1 9 年 1 1 月 7 日 か ら 平 成 2 1 年 1 1 月 6 日 ま で

② 賃 料 及 び 共 益 費 ( 以 下 「 賃 料 等 」 と い う 。 )
1 か 月 7 万 8 0 0 0 円 ( 賃 料 7 万 円 , 共 益 費 8 0 0 0 円 )支 払 期 日 毎 月 末 日 限 り 翌 月 分 を 支 払 う 。

③ 原 告 が 賃 料 等 の 一 部 で も 支 払 を 遅 延 し た 場 合 , 原 告 は 遅 延 し た金 額 と こ れ に 支 払 日 の 翌 日 か ら 支 払 を な し た 日 ま で 年 1 4 %( 1 年を 3 6 5 日 と し た 日 割 計 算 )の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 を 付 し て B に支 払 う 。

( 4 ) B , 原 告 及 び 被 告 は , 平 成 1 9 年 1 1 月 7 日 , 以 下 の 約 定 を 含 む「 住 み 替 え か ん た ん シ ス テ ム 」 の 契 約 ( 甲 3 。 以 下 , こ の 契 約 全 体を 「 本 件 住 み 替 え か ん た ん 契 約 」 と い う 。 ) を 締 結 し て , 原 告 は ,被 告 に 対 し , 本 件 賃 貸 借 契 約 に 基 づ く 原 告 の B に 対 す る 債 務 の 連 帯保 証 を 委 託 し ( 以 下 「 本 件 保 証 委 託 契 約 」 と い う 。 ) , 被 告 は , Bに 対 し , 同 日 , 本 件 賃 貸 借 契 約 に 基 づ く 原 告 の B に 対 す る 債 務 を 連帯 保 証 し た ( 以 下 「本 件 連 帯 保 証 契 約 」 と い う 。 ) 。

① 期 間 平 成 1 9 年 1 1 月 7 日 か ら 平 成 2 0 年 1 1 月 6 日 ま で

② 初 回 保 証 委 託 料 4 万 0 5 0 0 円

③ 原 告 は ,被 告 に 対 し ,本 件 保 証 委 託 契 約 締 結 後 1 年 経 過 ご と に ,1 万 円 の 更 新 保 証 委 託 料( 以 下「 経 過 更 新 料 」と い う 。)を 支 払 う 。

④ 原 告 が 賃 料 の 支 払 を 1 回 で も 滞 納 し た 場 合 , 本 件 保 証 委 託 契 約は ,B 及 び 原 告 の 承 諾 の 有 無 に か か わ ら ず 無 催 告 で 自 動 的 に 債 務 不履 行 解 除 さ れ た 上 で ,自 動 的 に 同 一 条 件 で 更 新 さ れ る( 以 下「 解 除更 新 特 約 」 と い い , こ の 更 新 を 「 解 除 更 新 」 と い う 。 ) 。

⑤ 解 除 更 新 の 場 合 , 原 告 は , 被 告 に 対 し , そ の 都 度 1 万 円 の 更 新保 証 委 託 料( 以 下「 解 除 更 新 料 」と い う 。)を 支 払 う( 以 下「 解 除更 新 料 特 約 」 と い う 。 ) 。

⑥ 被 告 は , 原 告 が 2 か 月 分 以 上 賃 料 の 支 払 を 滞 納 し た と き 又 は 原告 が 2 か 月 以 上 更 新 保 証 委 託 料 の 支 払 を 滞 納 し た 場 合 は ,B 及 び 原告 の 意 向 に か か わ ら ず ,被 告 単 独 に て 本 件 賃 貸 借 契 約 を 解 除 す る こと が で き る ( 以 下 「 単 独 解 除 特 約 」 と い う 。 ) 。

⑦ B 及 び 原 告 は , 前 記 ⑥ の 場 合 , 被 告 が B 及 び 原 告 の 意 向 に か かわ ら ず 本 件 賃 貸 借 契 約 に つ い て の 契 約 解 除 権 を 行 使 す る こ と に 異議 を 述 べ な い 。

⑧ 原 告 が 本 件 賃 貸 借 契 約 に 基 づ き 負 担 す る 債 務 の 履 行 の 全 部 又 は一 部 を 遅 滞 し た た め ,被 告 が B か ら 本 件 連 帯 保 証 契 約 に 基 づ く 債 務( 以 下「 本 件 連 帯 保 証 債 務 」と い う 。)の 履 行 を 求 め ら れ た と き は ,被 告 は 原 告 に 対 し て 民 法 所 定 の 事 前 の 通 知 を す る こ と な く ,本 件 連帯 保 証 債 務 の 履 行 ( 代 位 弁 済 ) を す る こ と が で き る 。

⑨ 被 告 が 本 件 連 帯 保 証 債 務 の 履 行 を し た と き は , 原 告 は , 被 告 に対 し ,そ の 弁 済 額 ,弁 済 に 要 し た 費 用 そ の 他 被 告 が 負 担 し た 費 用 の全 額 を 速 や か に 償 還 す る 。

⑩ 被 告 は , 本 件 賃 貸 借 契 約 が 解 除 そ の 他 の 事 情 に よ っ て 消 滅 ・ 終了 し た と き は ,B に 対 し ,被 告 の 費 用 負 担 を も っ て 速 や か に 原 告 を本 件 建 物 か ら 退 去 さ せ て 建 物 を 明 け 渡 さ せ る よ う に 努 力 す る 。

⑪ 原 告 は , 被 告 に 対 し , 被 告 が 前 記 ⑩ 等 に 基 づ き 本 件 建 物 の 明 渡し 手 続 を と る た め に 必 要 な 限 度 に お い て ,ド ア 施 錠 の 解 除 及 び 取 替並 び に 本 件 建 物 内 へ の 入 室・家 財 道 具 等 の 動 産 類 の 搬 出・保 管 を 行う こ と を 予 め 許 諾 す る 。

⑫ 契 約 期 間 満 了 1 か 月 前 ま で に , B 又 は 被 告 か ら の 書 面 に よ る 解約 の 申 出 が な い 場 合 に は ,本 件 住 み 替 え か ん た ん 契 約 は 当 然 に 1 年間 更 新 さ れ , そ れ 以 降 も 同 様 と す る 。

( 5 ) 原 告 は , B な い し 仲 介 業 者 に 対 し , 平 成 1 9 年 1 1 月 2 日 こ ろ まで に , 本 件 賃 貸 借 契 約 に つ い て 1 1 月 分 の 賃 料 5 万 6 0 0 0 円 及 び共 益 費 6 4 0 0 円 , 家 財 保 険 料 2 万 1 0 0 0 円 , 室 内 殺 菌 消 毒 ・ 消臭 セ ッ ト 代 2 万 1 0 0 0 円 , 安 心 入 居 サ ポ ー ト 代 1 万 5 7 5 0 円 ,事 務 手 数 料 3 万 1 5 0 0 円 , 本 件 保 証 委 託 契 約 の 初 回 保 証 委 託 料 4万 0 5 0 0 円 ( B な い し 仲 介 業 者 を 通 じ て , 被 告 に 支 払 わ れ た も のと 認 め ら れ る 。 ) の 合 計 1 9 万 2 1 5 0 円 を 支 払 っ た 。

( 6 ) 原 告 は ,B に 対 し ,平 成 2 1 年 6 月 こ ろ ,本 件 建 物 を 明 け 渡 し た 。

( 7 ) 原 告 は , 名 古 屋 市 O 区 社 会 福 祉 事 務 所 長 か ら , 平 成 2 1 年 5 月 20 日 , 就 労 収 入 の 喪 失 に よ り , 保 護 開 始 の 決 定 を 受 け , 同 年 6 月 1日 , 児 童 手 当 を 認 定 さ れ た 。

3 本 訴 請 求 1 に つ い て
( 1 ) 原 告
 原 告 は , 被 告 に 対 し , 以 下 の ア な い し ウ ( 「 原 告 主 張 ア 」 な ど とい う 。 以 下 同 様 。 ) の と お り 主 張 し て , 1 0 万 5 0 2 8 円 及 び う ち1 0 万 円 に 対 す る 平 成 2 1 年 7 月 2 5 日 か ら 支 払 済 み ま で 民 法 所 定の 年 5 分 の 割 合 に よ る 利 息 の 支 払 を 求 め て お り , 後 記 ( 2 ) エ 及 びオ の 被 告 の 相 殺 の 抗 弁 に 対 し て , 以 下 の エ 及 び オ の と お り 認 否 す るな ど し て 争 っ て い る 。

 ア 原 告 は , 被 告 に 対 し , 平 成 2 0 年 中 に , 以 下 の と お り 解 除 更 新料 合 計 1 0 万 円 を 支 払 っ た 。
 ① 1 月 2 2 日   1 万 円
 ② 2 月 2 9 日   1 万 円
 ③ 3 月 2 8 日   1 万 円
 ④ 5 月 2 7 日   1 万 円
 ⑤ 7 月 1 1 日   1 万 円
 ⑥ 8 月 2 6 日   1 万 円
 ⑦ 1 0 月 6 日   1 万 円
 ⑧ 1 0 月 3 0 日 1 万 円
 ⑨ 1 2 月 1 日   1 万 円
 ⑩ 1 2 月 2 6 日 1 万 円

 イ 解 除 更 新 料 は , 実 質 的 に 委 託 を 受 け た 連 帯 保 証 人 ( 被 告 ) に 対す る 損 害 賠 償 の 予 定 な い し 違 約 金 で ,解 除 更 新 に よ る 平 均 的 損 害 は存 在 し な い か ら ,そ の 全 部 が 平 均 的 損 害 の 額 を 超 え る し ,解 除 更 新特 約 は , 貸 主 ( B ) に 対 す る 賃 料 支 払 義 務 を , 連 帯 保 証 人 ( 被 告 )に 対 す る 義 務 に も す る と と も に ,解 除 更 新 料 特 約 は ,上 記 の と お り連 帯 保 証 人( 被 告 )に 対 す る 損 害 賠 償 の 予 定 等 を 定 め る も の で ,義務 を 加 重 し て い る し ,解 除 更 新 特 約 は ,賃 借 人( 原 告 )の 債 務 不 履行 に よ り 自 動 的 に 解 除 さ れ る も の と し て ,相 当 期 間 を 定 め た 催 告 及び 解 除 の 意 思 表 示 を 不 要 と し ,賃 借 人 の 解 除 か ら 免 れ る 機 会 を 喪 失さ せ て 権 利 の 制 限 を し て お り ,当 事 者 相 互 の 信 頼 関 係 を 基 礎 と す る継 続 的 契 約 に つ い て の 信 頼 関 係 破 壊 の 法 理 に も 反 し て い る し ,さ らに ,被 告 は ,原 告 に ,初 回 保 証 委 託 料( 4 万 0 5 0 0 円 ),経 過 更新 料( 1 年 ご と に 1 万 円 )及 び 求 償 の 際 の 年 1 4 .6 % の 割 合 に よる 遅 延 損 害 金 を 支 払 わ せ る の に 加 え ,解 除 更 新 料( 毎 回 1 万 円 )を支 払 わ せ る な ど ,解 除 更 新 特 約 及 び 解 除 更 新 料 特 約 は ,消 費 者 契 約法 9 条 1 号 及 び 1 0 条 に 反 す る も の で ,公 序 良 俗( 民 法 9 0 条 )にも 反 し て お り , 無 効 で あ る 。

 ウ 被 告 は , 前 記 ア の 解 除 更 新 料 ( 合 計 1 0 万 円 ) を 不 当 利 得 し てお り ,本 件 住 み 替 え か ん た ん 契 約 締 結 の 時 点 で ,解 除 更 新 特 約 及 び解 除 更 新 料 特 約 が 無 効 で あ る こ と を 認 識 し て い た か ら ,悪 意 の 受 益者 で あ っ て ,利 息 を 計 算 す る と 別 紙 更 新 保 証 委 託 料 計 算 書 記 載 の とお り と な る 。

 エ 後 記 ( 2 ) エ は , 否 認 な い し 争 う 。

 オ 後 記 ( 2 ) オ は , 争 う 。

( 2 ) 被 告

 こ れ に 対 し , 被 告 は , 以 下 の ア な い し ウ ( 「 被 告 主 張 ア 」 な ど とい う 。 以 下 同 様 。 ) の と お り 認 否 す る な ど し , エ 及 び オ の と お り 相殺 の 抗 弁 を 主 張 し て 争 っ て い る 。

 ア 原 告 主 張 ア の う ち , 原 告 か ら 被 告 に ① な い し ⑥ , ⑧ 及 び ⑩ の 合計 8 万 円 の 支 払 が あ っ た こ と ,① な い し ⑥ 及 び ⑩ の 合 計 7 万 円 の 支払 が 解 除 更 新 料 の 支 払 で あ っ た こ と は 認 め る が ,そ の 余 は 否 認 す る 。原 告 主 張 ア ⑧ の 1 万 円 の 支 払 は 経 過 更 新 料 の 支 払 で あ っ た 。

 イ 原 告 主 張 イ の う ち , 被 告 が 原 告 か ら , 初 回 保 証 委 託 料 ( 4 万 05 0 0 円 ),経 過 更 新 料( 1 年 ご と に 1 万 円 ),解 除 更 新 料( 毎 回1 万 円 )及 び 求 償 の 際 に 年 1 4 .6 % の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支払 を 受 け た こ と は 認 め る が , そ の 余 は 否 認 な い し 争 う 。

 遅 延 損 害 金 の 請 求 は , 被 告 内 部 の シ ス テ ム 変 更 等 に よ る 混 乱 によ り ,原 告 と の 間 で は 合 意 が な い の に ,誤 っ て 行 わ れ た も の で あ る 。被 告 は ,解 除 更 新 料 特 約 を ,賃 料 の 滞 納 事 故 を 繰 り 返 す 入 居 者 に 対し て 自 ら よ り 安 い 賃 料 の 物 件 へ の 転 居 を 促 す 目 的 で 導 入 し た が ,シス テ ム 上 の 問 題 な ど も 相 ま っ て 所 期 の 目 的 と は 異 な る 効 果 や 問 題が 生 じ た た め ,平 成 2 0 年 1 2 月 以 降 廃 止 し ,そ れ ま で の 約 1 年 間に 受 領 し た 解 除 更 新 料 は ,順 次 返 還 又 は 相 殺 し て 処 理 し て い る( 前記 ア で 認 め た 解 除 更 新 料( 7 万 円 )に つ い て も ,後 記 オ の と お り 相殺 す る 。 ) 。

 ウ 原 告 主 張 ウ は , 否 認 な い し 争 う 。

 エ 被 告 は , 原 告 が 支 払 を 遅 滞 し た 本 件 賃 貸 借 契 約 の 平 成 2 1 年 4月 分 な い し 6 月 分 の 賃 料 等 に つ い て ,各 月 と も 2 8 日 に 7 万 8 0 00 円 ず つ( 合 計 2 3 万 4 0 0 0 円 )を B に 支 払 い ,各 月 と も 振 込 手数 料 2 1 0 円( 合 計 6 3 0 円 )を 要 し た の で ,原 告 に 対 し ,合 計 23 万 4 6 3 0 円 の 求 償 金 債 権 を 有 し て い る 。

 オ 被 告 は , 前 記 ア で 認 め た 7 万 円 の 解 除 更 新 料 の 返 還 債 務 と 前 記エ の 求 償 金 債 権 と を 対 当 額 で 相 殺 す る 。


4 本 訴 請 求 2 に つ い て
( 1 ) 原 告
 原 告 は , 被 告 に 対 し , 以 下 の と お り 主 張 し て , 合 計 1 2 5 万 円 及び こ れ に 対 す る 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 で あ る 平 成 2 1 年 8 月 2 0 日 から 支 払 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を求 め て い る 。

 カ 被 告 は , 原 告 に 対 し , 原 告 の 無 知 及 び 窮 迫 に 乗 じ , 法 律 上 の 原因 が な い こ と を 知 り な が ら ,解 除 更 新 料 等 の 徴 収 に 根 拠 が あ る か のよ う に 装 い ,ま た ,被 告 が 正 当 に 原 告 に 退 去 を 求 め る こ と が で き るか の よ う に 装 っ て ,原 告 に 解 除 更 新 料 1 0 万 円 等 の 理 由 の な い 支 払を さ せ ,さ ら に ,毎 月 の 支 払 期 日 前 後 に ,約 5 分 間 に 1 0 回 以 上 の不 在 着 信 を 残 す な ど の 原 告 へ の 執 拗 な 請 求 や 退 去 の 勧 告 等 を 何 度も 行 っ た 。

 キ 原 告 は , 被 告 の 前 記 カ の 行 為 に よ り , 被 告 の 請 求 や 退 去 の 勧 告等 が 正 当 な も の だ と 誤 信 し て ,幼 い 子 を か か え な が ら ,罪 の 意 識 に苛 ま れ ,経 済 的 に 苦 し い 中 で ,根 拠 の な い 部 分 を 含 め 精 一 杯 の 支 払を し ,被 告 の 攻 撃 的 な 電 話 に よ る 督 促 等 に 悩 ま さ れ ,睡 眠 障 害 や うつ 病 に 陥 り ,そ の 結 果 ,生 活 保 護 を 受 け ざ る を 得 な く な る な ど ,多大 な 精 神 的 苦 痛 を 被 っ た 。

 ク 前 記 カ 及 び キ の 被 告 の 原 告 に 対 す る 不 法 行 為 に よ る 慰 謝 料 と して は 1 1 0 万 円 が 相 当 で あ り ,弁 護 士 費 用 と し て は 1 5 万 円 が 相 当で あ る 。

( 2 ) 被 告
 こ れ に 対 し ,被 告 は ,以 下 の と お り 認 否 す る な ど し て 争 っ て い る 。

 カ 原 告 主 張 カ は , 被 告 が 原 告 か ら 被 告 主 張 ア の 限 度 で 支 払 を 受 けた こ と ,被 告 が 原 告 に 求 償 金 の 請 求 を し た り ,賃 料 が 安 い 物 件 へ の転 居 を 促 し た こ と は 認 め る が ,執 拗 な も の で は な か っ た し ,保 証 会社 で あ る 被 告 と し て は ,解 除 権 の 定 め は 必 須 な も の で あ り ,本 件 住み 替 え か ん た ん 契 約 で は ,賃 貸 人 か ら 解 除 の 意 思 表 示 が さ れ ,信 頼関 係 破 壊 の 法 理 に よ り そ れ が 有 効 と 判 断 さ れ る で あ ろ う 場 合 に のみ 限 定 し て 解 除 権 を 定 め て い る も の で ,被 告 が ,単 独 解 除 特 約 に 基づ き ,本 件 賃 貸 借 契 約 の 解 除 を 主 張 し て 退 去 を 求 め た の は ,正 当 な権 利 行 使 で あ る 。

 キ 原 告 主 張 キ は , 不 知 な い し 否 認 す る 。

 ク 原 告 主 張 ク は , 争 う 。

5 本 訴 請 求 3 に つ い て
( 1 ) 原 告
 原 告 は , 被 告 に 対 し , 以 下 の と お り 主 張 し て , 合 計 3 7 2 5 円 及び こ れ に 対 す る 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 で あ る 平 成 2 1 年 8 月 2 0 日 から 支 払 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を求 め て い る 。

 ケ 原 告 は , 被 告 に 対 し , 平 成 2 1 年 4 月 こ ろ , 本 件 保 証 委 託 契 約に 関 す る 原 告 か ら 被 告 へ の 入 金 履 歴 の 開 示 を 請 求 し た と こ ろ ,本 件保 証 委 託 契 約 に は 開 示 手 数 料 の 規 定 は な い の に ,被 告 は ,開 示 手 数料 2 1 0 0 円 を 支 払 わ な け れ ば 開 示 し な い と し て 開 示 を 拒 絶 し た 。さ ら に ,原 告 は ,被 告 に 対 し ,同 年 5 月 3 0 日 到 達 の 内 容 証 明 郵 便で 入 金 履 歴 の 開 示 を 請 求 し た が ,被 告 が 同 様 の 理 由 で 開 示 を 拒 絶 した た め ,2 1 5 0 円( 5 0 円 は 過 振 込 )を 振 り 込 ん で 開 示 を 請 求 した 。

 コ 前 記 ケ の 被 告 の 拒 絶 行 為 は , 本 件 保 証 委 託 契 約 の 受 任 者 の 義 務に 反 す る も の で あ り ,原 告 は ,こ れ に よ り ,前 記 ケ の 内 容 証 明 郵 便の 代 金 1 4 7 0 円 並 び に 振 込 金 2 1 5 0 円 及 び そ の 手 数 料 1 0 5円 ( 合 計 3 7 2 5 円 ) の 損 害 を 被 っ た 。

( 2 ) 被 告
 こ れ に 対 し , 被 告 は , 以 下 の と お り 認 否 す る な ど し て , 争 っ て いる 。

 ケ 原 告 主 張 ケ は , 認 め る 。

 コ 原 告 主 張 コ は , 争 う 。

 

6 反 訴 請 求 に つ い て
( 1 ) 被 告
 被 告 は , 原 告 に 対 し , 前 記 3 ( 2 ) の 被 告 主 張 エ の と お り 主 張 して , 被 告 主 張 オ で 相 殺 後 の 残 金 1 6 万 0 8 6 1 円 及 び こ れ に 対 す る反 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 で あ る 平 成 2 1 年 1 0 月 2 3 日 か ら 支 払 済 みま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 求 め て い る 。

( 2 ) 原 告
 こ れ に 対 し , 原 告 は , 前 記 3 ( 1 ) の 原 告 主 張 エ の と お り 認 否 する な ど し て 争 っ て い る 。


【判例】 「②家賃保証会社の保証委託契約による「取立て・追い出し行為」が不法行為に該当するという事例」へ続く 


【判例】 ②家賃保証会社の保証委託契約による「取立て・追い出し行為」が不法行為に該当するという事例

2011年10月27日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

第 3 当 裁 判 所 の 判 断

1 本 訴 請 求 1 に つ い て
( 1 ) 原 告 か ら 被 告 に 原 告 主 張 ア ① な い し ⑥ , ⑧ 及 び ⑩ の 合 計 8 万 円 の支 払 が あ っ た こ と は , 当 事 者 間 に 争 い が な い が , 原 告 主 張 ア ⑦ 及 び⑨ の 支 払 に つ い て は , こ れ を 認 め る に 足 り る 証 拠 が な い 。

 ま た , 原 告 主 張 ア ① な い し ⑥ 及 び ⑩ の 合 計 7 万 円 の 支 払 が 解 除 更新 料 の 支 払 で あ っ た こ と は 争 い が な い が , 原 告 主 張 ア ⑧ の 支 払 に つい て は , 本 件 保 証 委 託 契 約 締 結 か ら 約 1 年 後 の 支 払 で あ り , そ の 時期 か ら す る と 経 過 更 新 料 の 支 払 で あ っ た 可 能 性 も あ り , 解 除 更 新 料の 支 払 で あ っ た と 認 め る に 足 り る 証 拠 は な い 。


( 2 ) 前 記 前 提 事 実 の と お り , 解 除 更 新 特 約 は , 原 告 が 賃 料 の 支 払 を 1回 で も 滞 納 し た 場 合 , 本 件 保 証 委 託 契 約 が , B 及 び 原 告 の 承 諾 の 有無 に か か わ ら ず 無 催 告 で 自 動 的 に 債 務 不 履 行 解 除 さ れ た 上 で , 自 動的 に 同 一 条 件 で 更 新 さ れ る と い う も の で あ る 。

 し か し , 前 記 前 提 事 実 及 び 証 拠 ( 甲 3 ) に よ れ ば , 本 件 保 証 委 託契 約 に つ い て は , 「 お 家 賃 の 引 き 落 と し が 間 に 合 わ な か っ た 場 合 にオ ー ナ ー 様 へ お 家 賃 を お 立 て 替 え す る サ ー ビ ス で す 。 」 と さ れ , 初回 保 証 委 託 料 が 4 万 0 5 0 0 円 と さ れ ( 前 記 前 提 事 実 の と お り , 原告 は 被 告 に こ れ を 支 払 っ て い る 。 ) , 契 約 締 結 後 1 年 経 過 ごと に ,1 万 円 の 経 過 更 新 料 を 支 払 う こ と と さ れ て い る も の で , 継 続 的 契 約で あ る 本 件 賃 貸 借 契 約 の 借 主( 原 告 )の 債 務 を 保 証 す る も の で あ る 。

 そ れ に も か か わ ら ず , 上 記 の よ う に , 原 告 が 賃 料 の 支 払 を 1 回 滞 納し た だ け で , B 及 び 原 告 の 承 諾 の 有 無 に か か わ ら ず 無 催 告 で 自 動 的に 債 務 不 履 行 解 除 さ れ る と い う の は , 原 告 ( 委 託 者 ) が 初 回 保 証 委託 料 4 万 0 5 0 0 円 を 支 払 っ て , 被 告 ( 受 託 者 ) に 対 す る 債 務 を 履行 し て い る の に , 被 告 が 自 ら 受 託 し た 保 証 債 務 を 履 行 す る 前 に , 自動 的 に 債 務 不 履行 解 除 さ れ る こ と に な る の で あ っ て , 明 ら か に 契 約の 趣 旨 に 反 す る も の で あ り ( ま た , こ の 時 点 に お い て , 被 告 と の 関係 で 「 債 務 不 履 行 」 と い う の も 虚 偽 の 論 理 で あ る 。 ) , そ の 場 合 自動 的 に 同 一 条 件 で 更 新 さ れ る と さ れ て は い る が , 原 告 は そ の 都 度 1万 円 の 解 除 更 新 料 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い と さ れ て い る も の で ある か ら , 解 除 更 新 特 約 及 び 解 除 更 新 料 特 約 は , 消 費 者 の 権 利 を 制 限し か つ 消 費 者 の 義 務 を 加 重 す る も の で あ る し , 信 義 誠 実 の 原 則 ( 民法 1 条 2 項 )に 反 し て 消 費 者 の 利 益 を 一 方 的 に 害 す る も の で あ っ て ,消 費 者 契 約 法 1 0 条 に よ り , 無 効 と い う べ き で あ る 。

( 3 ) 被 告 は , 賃 貸 住 宅 , 店 舗 及 び オ フ ィ ス 等 の 入 居 者 の 保 証 人 受 託 業務 等 を 目 的 と す る 株 式 会 社 で あ り , 上 記 目 的 が 目 的 と さ れ た 平 成 19 年 1 1 月 1 2 日 よ り 前 に お い て も , 信 用 保 証 , 金 銭 債 権 買 取 , 金融 業 , 質 屋 業 等 を 目 的 と し て い た の で あ る か ら , 少 な く と も 本 件 住み 替 え か ん た ん 契 約 締 結 の 時 点 で は , 前 記 ( 2 ) の と お り , そ れ 自体 が 明 ら か に 本 件 保 証 委 託 契 約 の 趣 旨 に 反 し て い る 解 除 更 新 特 約 及び 解 除 更 新 料 特 約 が 消 費 者 契 約 法 1 0 条 に よ り 無 効 で あ る こ と を 知っ て い た も の と 推 認 さ れ , こ れ を 覆 す に 足 り る 証 拠 は な い 。

 そ れ に も か か わ ら ず ,被 告 は ,前 記( 1 )の と お り ,原 告 か ら 解 除更 新 料 ( 合 計 7 万 円 ) の 支 払 を 受 け , こ れ を 不 当 利 得 し て い た の であ っ て , 悪 意 の 受 益 者 と 認 め ら れ る 。

( 4 ) 被 告 は , 原 告 に 対 し て 負 担 す る 解 除 更 新 料 ( 合 計 7 万 円 ) の 返 還債 務 と , 原 告 に 対 し て 有 す る 求 償 金 債 権 と を 対 当 額 で 相 殺 す る と して , 原 告 が 支 払 を 遅 滞 し た 本 件 賃 貸 借 契 約 の 平 成 2 1 年 4 月 分 な いし 6 月 分 の 賃 料 等 に つ い て , 各 月 と も 2 8 日 に 7 万 8 0 0 0 円 ず つ( 合 計 2 3 万 4 0 0 0 円 ) を B に 支 払 い , 各 月 と も 振 込 手 数 料 2 10 円 ( 合 計 6 3 0 円 ) を 要 し た の で , 被 告 は , 原 告 に 対 し , 合 計 23 万 4 6 3 0 円 の 求 償 金 債 権 を 有 し て い る 旨 主 張 し , 乙 1 号 証 及 び2 号 証 を 提 出 す る 。

 し か し ,原 告 は こ れ を 争 っ て お り ,被 告 が 原 告 に 開 示 し た「 ご 入 金明 細 書 」 ( 甲 5 ) 並 び に こ れ と 同 様 の も の と し て 被 告 が 証 拠 と し て提 出 し た 乙 1 号 証 及 び 2 号 証 は ,い ず れ も 相 互 に 異 な る 部 分 が あ り ,「 預 り 金 」 ( 甲 5 ) , 「 余 剰 金 」 ( 乙 1 ) な ど と い う 名 目 で , 不 明瞭 な 処 理 を 行 っ て い た の で あ る し ( 乙 2 号 証 で は こ れ ら の 名 目 は なく な っ て い る が , 乙 2 号 証 は 本 件 本 訴 の 提 起 か ら 1 年 以 上 経 過 し た第 5 回 弁 論 準 備 手 続 期 日 ( 平 成 2 2 年 1 0 月 2 5 日 ) に 提 出 さ れ たも の で あ り , そ れ よ り 前 の 処 理 が 杜 撰 で あ っ た こ と を 否 定 で き る もの で は な い 。 ) , こ の よ う な 状 況 に あ り な が ら , 被 告 は , 「 集 金 代 に お け る お 家 賃 お 振 込 み 明 細 書 」 と 題 す る 管 理 会 社 に 対 し 振 り 込ん だ 入 居 者 ご と の 金 額 が 記 載 さ れ た 振 込 情 報 の 一 覧 表 等 は 証 拠 と して 提 出 し な い な ど と し て い る ( 平 成 2 2 年 5 月 6 日 付 け 被 告 準 備 書面 5 ) の で あ っ て , 乙 1 号 証 及 び 2 号 証 や 甲 5 号 証 の 記 載 は 直 ち に採 用 す る こ と が で き ず , 他 に 被 告 の 上 記 主 張 を 認 め る に 足 り る 証 拠は な い 。

( 5 ) 以 上 に よ れ ば , 別 紙 ( 添 付 省 略 ) 判 決 計 算 書 記 載 の と お り の 利 息計 算 と な り , 原 告 の 本 訴 請 求 1 は , 7 万 1 9 3 1 円 及 び う ち 不 当 利得 金 7 万 円 に 対 す る 平 成 2 0 年 1 2 月 2 7 日 か ら 支 払 済 み ま で 民 法所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 利 息 の 支 払 を 求 め る 限 度 で 理 由 が あ り ,そ の 余 は 理 由 が な い 。


2 本 訴 請 求 2 に つ い て

( 1 ) 前 記 前 提 事 実 及 び 前 記 1 の 認 定 事 実 等 に 証 拠 ( 甲 5 , 1 4 な い し1 6 , 乙 1 , 2 。 た だ し , 原 告 の 陳 述 書 ( 甲 1 6 ) に つ い て は , 以下 の 認 定 に 反 す る 部 分 を 除 く 。 ) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 を 総 合 す る と ,被 告 は , 消 費 者 契 約 法 1 0 条 に よ り 無 効 で あ る こ と を 知 り な が ら ,原 告 に , 解 除 更 新 特 約 及 び 解 除 更 新 料 特 約 を 含 ん だ 本 件 住 み 替 え かん た ん 契 約 を 締 結 さ せ て , 解 除 更 新 料 合 計 7 万 円 を 支 払 わ せ , こ れに 加 え て , 原 告 に , 年 1 4 . 6 % の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 を 支 払 わせ て 自 ら こ れ を 取 得 し , さ ら に は , 前 記 1 ( 4 ) の よ う な 不 明 瞭 な処 理 を 行 い , B へ の 家 賃 等 の 振 込 手 数 料 2 1 0 円 の ほ か に , 「 振 込手 数 料 」 と し て 8 4 0 円 , 「 そ の 他 ・ 別 途 振 込 手 数 料 」 と し て 3 49 6 円 ( 甲 1 5 ) な ど と , 根 拠 の 明 ら か で な い 金 銭 も 含 め 原 告 に 過分 な 支 払 を さ せ て い た こ と , 原 告 が 何 回 か 支 払 を 遅 滞 し た 後 は , 原告 と B と の 間 の 信 頼 関 係 が 破 壊 さ れ た と 認 め ら れ る 状 況 に は 至 っ てい な い に も か か わ ら ず , 本 件 建 物 か ら 出 て 行 く よ う に 働 き か け て いた こ と , 被 告 は , 資 本 金 3 億 3 2 0 0 万 円 の 賃 貸 住 宅 , 店 舗 及 び オフ ィ ス 等 の 入 居 者 の 保 証 人 受 託 業 務 等 を 目 的 と す る 株 式 会 社 で , 本件 住 み 替 え か ん た ん 契 約 の 契 約 書 ( 甲 3 ) や 「 ご 入 金 明 細 書 」 ( 甲5 ) は 被 告 の 上 記 業 務 に つ い て の 一 連 の シ ス テ ム の 中 で 作 成 さ れ たも の で あ り , こ の よ う な 不 当 な 請 求 や 退 去 の 勧 告 を 組 織 的 に 行 っ てい た こ と が 認 め ら れ , 社 会 通 念 上 許 容 さ れ る 限 度 を 超 え た も の で ,不 法 行 為 に 該 当 す る も の と い う べ き で あ る 。

 ま た , 上 記 証 拠 等 に よ れ ば , こ れ ら の 被 告 の 行 為 に よ っ て , 原 告は , 被 告 の 請 求 す る 金 額 ( た だ し , 上 記 の と お り , 過 大 な い し 根 拠の 不 明 確 な も の を 含 む 。 ) を 支 払 え な い こ と や , 本 件 建 物 か ら の 退去 の 勧 告 に , 精 神 的 に 圧 力 を 感 じ , 心 身 の 不 調 を き た す な ど , 少 なか ら ぬ 精 神 的 苦 痛 を 被 っ た こ と が 認 め ら れ る 。

 し か し ,原 告 は ,原 告 本 人 尋 問 の 申 出 を し て お き な が ら ,そ の 後 ,心 身 の 状 況 に よ る 可 能 性 は あ る も の の , 原 告 訴 訟 代 理 人 ら か ら も 連絡 が 取 れ な い 状 態 に し て 放 置 し て い る の で あ っ て ,原 告 の 陳 述 書( 甲1 6 ) に 記 載 が あ る か ら と い っ て , 反 対 尋 問 を 経 な い ま ま 直 ち に これ を 採 用 す る こ と は で き な い の で あ り , そ の 余 の 原 告 主 張 カ 及 び キの 事 実 に つ い て は , こ れ を 認 め る に 足 り る 証 拠 は な い 。


( 2 ) 以 上 に よ れ ば , 被 告 の 前 記 ( 1 ) の 不 法 行 為 に よ り , 原 告 が 被 った 精 神 的 苦 痛 に 対 す る 慰 謝 料 と し て は , 2 0 万 円 が 相 当 で あ り , 弁護 士 費 用 と し て は , 5 万 円 が 相 当 で あ る 。

 そ う す る と , 原 告 の 本 訴 請 求 2 は , 被 告 に 対 し , 2 5 万 円 及 び これ に 対 す る 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 で あ る 平 成 2 1 年 8 月 2 0 日 か ら 支払 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 求 める 限 度 で 理 由 が あ り , そ の 余 は 理 由 が な い 。


3 本 訴 請 求 3 に つ い て

( 1 ) 原 告 が , 被 告 に 対 し , 平 成 2 1 年 4 月 こ ろ , 本 件 保 証 委 託 契 約 に関 す る 原 告 か ら 被 告 へ の 入 金 履 歴 の 開 示 を 請 求 し た こ と , 本 件 保 証委 託 契 約 に は 開 示 手 数 料 の 規 定 が な い こ と , 被 告 は , 原 告 の 上 記 開示 請 求 に 対 し , 開 示 手 数 料 2 1 0 0 円 を 支 払 わ な け れ ば 開 示 し な いと し て 拒 絶 し た こ と , 原 告 は , 被 告 に 対 し , 同 年 5 月 3 0 日 到 達 の内 容 証 明 郵 便 で 入 金 履 歴 の 開 示 を 請 求 し た こ と , 被 告 は , 上 記 内 容証 明 郵 便 に よ る 開 示 請 求 に 対 し て も , 上 記 と 同 様 の 理 由 で 開 示 を 拒絶 し た こ と , そ の 後 , 原 告 は , 被 告 に 対 し , 2 1 5 0 円 ( た だ し ,5 0 円 は 過 振 込 ) を 振 り 込 ん で 開 示 を 請 求 し た こ と は 当 事 者 間 に 争い が な い 。

( 2 ) 被 告 は , 本 件 保 証 委 託 契 約 の 受 任 者 と し て , 委 任 者 で あ る 原 告 から 請 求 が あ る と き は , 委 任 事 務 の 処 理 の 状 況 を 報 告 す る 義 務 が あ り( 民 法 6 4 5 条 ) , 本 件 保 証 委 託 契 約 は 有 償 で , 原 告 は 初 回 保 証 委託 料 4 万 0 5 0 0 円 を 被 告 に 支 払 っ て お り , 種 々 の 詳 細 な 規 定 を おい て い る 中 で , 開 示 に 関 す る 手 数 料 に つ い て は 規 定 し て い な い の であ る か ら , 原 告 の 請 求 が 濫 用 に わ た る よ う な 特 段 の 事 情 が あ る 場 合を 除 き , 被 告 は , 原 告 の 請 求 に 対 し , 手 数 料 な し に 入 金 履 歴 等 の 開示 を す る 義 務 が あ る と い う べ き で あ る 。

( 3 ) と こ ろ が , 被 告 は , 前 記 ( 1 ) の と お り , 手 数 料 2 1 0 0 円 を 要求 し て 原 告 の 請 求 を 拒 み , し か も , 原 告 が 手 数 料 を 振 り 込 ん だ 後 ,「 ご 入 金 明 細 書 」( 甲 5 )に よ り こ れ を 開 示 し た も の の ,前 記 1( 4 )の と お り , 後 に 内 容 を 乙 1 号 証 , 乙 2 号 証 と 順 次 変 更 し て い る よ うに , そ の 正 確 性 に 疑 問 の あ る 履 歴 し か 開 示 し な か っ た の で あ っ て ,こ れ は , 被 告 の 債 務 不 履 行 で あ り , そ の た め , 原 告 は , 支 出 せ ざ るを 得 な か っ た 内 容 証 明 郵 便 の 代 金 1 4 7 0 円 並 び に 振 込 金 2 1 5 0円 の う ち 被 告 が 開 示 手 数 料 と し て 要 求 し た 2 1 0 0 円 及 び そ の 振 込手数料 1 0 5 円 ( 合 計 3 6 7 5 円 ) の 損 害 を 被 っ た こ と が 認 め ら れる 。 し か し , 原 告 が 誤 っ て 振 り 込 ん だ 5 0 円 に つ い て は , 不 当 利 得と な り 得 る 可 能 性 は あ る も の の , 被 告 の 上 記 債 務 不 履 行 と 相 当 因 果関 係 の あ る 損 害 と は 認 め ら れ な い 。

( 4 ) 以 上 に よ れ ば , 原 告 の 本 訴 請 求 3 は , 被 告 に 対 し , 3 6 7 5 円 及び こ れ に 対 す る 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 で あ る 平 成 2 1 年 8 月 2 0 日 から 支 払 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を求 め る 限 度 で 理 由 が あ り , そ の 余 は 理 由 が な い 。

4 反 訴 請 求 に つ い て
 被 告 は , 原 告 が 支 払 を 遅 滞 し た 本 件 賃 貸 借 契 約 の 平 成 2 1 年 4 月 分な い し 6 月 分 の 賃 料 等 に つ い て , 原 告 に 対 し , 合 計 2 3 万 4 6 3 0 円の 求 償 金 債 権 を 有 し て い る 旨 主 張 し て , そ の 一 部 で あ る 1 6 万 0 8 61 円 及 び こ れ に 対 す る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 請 求 し て い る が , 前 記 1( 4 ) の と お り , 上 記 被 告 の 主 張 を 認 め る に 足 り る 証 拠 は な く , 被 告の 反 訴 請 求 は 理 由 が な い 。

5 よ っ て , 原 告 の 本 訴 請 求 は , 被 告 に 対 し , 本 訴 請 求 1 に つ き , 7 万1 9 3 1 円 及 び う ち 7 万 円 に 対 す る 平 成 2 0 年 1 2 月 2 7 日 か ら 支 払済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 の 支 払 , 本 訴 請 求 2 及 び 3 に つ き ,合 計 2 5 万 3 6 7 5 円 及 び こ れ に 対 す る 平 成 2 1 年 8 月 2 0 日 か ら 支払 済 み ま で 年 5 分 の 割 合 に よ る 金 員 の 支 払 を 求 め る 限 度 で 理 由 が あ り ,そ の 余 は い ず れ も 理 由 が な く , 被 告 の 反 訴 請 求 は 理 由 が な く , 主 文 のと お り 判 決 す る 。


名 古 屋 地 方 裁 判 所 民 事 第 8 部

裁 判 官 長 谷 川 恭 弘

 

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【判例】 *共有不動産を使用する内縁の夫婦の一方が死亡した場合は

2011年10月26日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判  例

平成6年(オ)第1900号 平成10年2月26日最高裁第一小法廷判決


(要旨)
 共有不動産を共同で使用する内縁の夫婦の間では、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される

(内容)
件名 不当利得返還請求事件(最高裁判所平成6年(オ)第1900号平成10年2月26日第一小法廷判決、破棄差戻)
原審 福岡高等裁判所

 

主      文

 原判決中、上告人敗訴の部分を破棄する。
 前項の部分につき、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

 


理      由

 上告代理人保田行雄の上告理由について
 1 原審の確定した事実及び記録によれば、本件の事実関係の概要は次のとおりである。

(1) 上告人と岡部勇とは、昭和34年ころから内縁関係にあって、楽器指導盤の製造販売業を共同で営み、本件不動産を居住及び右事業のために共同で占有使用していた。

(2) 勇は昭和57年に死亡し、本件不動産に関する同人の権利は、同人の子である被上告人が相続により取得した。

(3) 上告人は、勇の死亡後、本件不動産を居住及び右事業のために単独で占有使用している。

(4) 上告人と被上告人との間では、本件不動産の所有権の帰属をめぐる訴訟が係属し、被上告人は本件不動産が勇の単独所有であったと主張し、上告人は勇との共有であったと主張して争っていたところ、右訴訟において、本件不動産は上告人と勇との共有財産であったことが認定され、上告人がその2分の1の持分を有することを確認する旨の判決が確定した。

 2 本件は、被上告人が上告人に対し、上告人が本件不動産を単独で使用することによりその賃料相当額の2分の1を法律上の原因なく利得しているとして、不当利得返還を求めるものであり、原審は、上告人の持分を超える使用による利益につき不当利得の成立を認めて、被上告人の請求を一部認容した。

 3 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 共有者は、共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり、他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。しかし、共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には、右合意により単独使用を認められた共有者は、右合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間は、共有物を単独で使用することができ、右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わないものと解される。そして、内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。けだし、右のような両者の関係及び共有不動産の使用状況からすると、一方が死亡した場合に残された内縁の配偶者に共有不動産の全面的な使用権を与えて従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続させることが両者の通常の意思に合致するといえるからである。

 これを本件について見るに、内縁関係にあった上告人と勇とは、その共有する本件不動産を居住及び共同事業のために共同で使用してきたというのであるから、特段の事情のない限り、右両名の間において、その一方が死亡した後は他方が本件不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。そうすると、右特段の事情の有無について審理を尽くさず、不当利得の成立を認めた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、右部分につき、右特段の事情の有無について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すこととする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


(裁判長裁判官・ 小野幹雄  裁判官・遠藤光男  裁判官・井嶋一友  裁判官・藤井正雄  裁判官・大出峻郎)

 

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【判例】 *敷引特約が消費者契約法10条により無効では無いとされた事例 (最高裁平成23年7月12日判決)

2011年10月25日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判  例

事件番号・・・・・・・・ 平成22(受)676

事件名・・・・・・・・・・ 保証金返還請求事件

裁判所・・・・・・・・・・ 最高裁判所第三小法廷

裁判年月日・・・・・・ 平成23年7月12日

裁判種別・・・・・・・・ 判決

原審裁判所・・・・・・ 大阪高等裁判所

原審事件番号・・・・ 平成21(ネ)2154

原審裁判年月日・・ 平成21年12月15日

裁判要旨・・・・・・・・ 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとされた事例


 


主        文

1  原判決中,上告人敗訴部分を次のとおり変更する。上告人の控訴に基づき第1審判決を次のとおり変更する。

 (1) 上告人は,被上告人に対し,4万4078円及びこれに対する平成20年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (2) 被上告人のその余の請求を棄却する。

2  訴訟の総費用は,これを20分し,その1を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。

 

理        由

 上告代理人藤井正大,同堀大助の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,居住用建物を上告人から賃借し,賃貸借契約終了後これを明け渡した被上告人が,上告人に対し,同契約の締結時に差し入れた保証金のうち返還を受けていない80万8074円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。上告人は,同契約には保証金のうち一定額を控除し,これを上告人が取得する旨の特約が付されているなどと主張するのに対し,被上告人は,同特約は消費者契約法10条により無効であるなどとして,これを争っている。

 

 2  原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

 (1) 被上告人は,平成14年5月23日,Aとの間で,京都市左京区上高野西氷室町所在のマンションの一室(以下「本件建物」という。)を賃借期間同日から平成16年5月31日まで,賃料1か月17万5000円の約定で賃借する旨の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)を締結し,本件建物の引渡しを受けた。本件契約は,消費者契約法10条にいう「消費者契約」に当たる。

 (2) 被上告人とAとの間で作成された本件契約に係る契約書(以下「本件契約書」という。)には,次のような条項があった。

 ア 賃借人は,本件契約締結時に保証金として100万円(預託分40万円,敷引分60万円)を賃貸人に預託する(以下,この保証金を「本件保証金」という。)。

 イ 賃借人に賃料その他本件契約に基づく未払債務が生じた場合には,賃貸人は任意に本件保証金をもって賃借人の債務弁済に充てることができる。その場合,賃借人は遅滞なく保証金の不足額を補塡しなければならない。

 ウ 本件契約が終了して賃借人が本件建物の明渡しを完了し,かつ,本件契約に基づく賃借人の賃貸人に対する債務を完済したときは,賃貸人は本件保証金のうち預託分の40万円を賃借人に返還する(以下,本件保証金のうち敷引分60万円を控除してこれを賃貸人が取得することとなるこの約定を「本件特約」といい,本件特約により賃貸人が取得する金員を「本件敷引金」という。)。

 (3) 被上告人は,本件契約の締結に際し,本件保証金100万円をAに差し入れた。

 (4) 上告人は,平成16年4月1日,Aから本件契約における賃貸人の地位を承継し,その後,被上告人との間で,本件契約を更新するに当たり,賃料の額を1か月17万円とすることを合意した。

 (5) 本件契約は平成20年5月31日に終了し,被上告人は,同年6月2日,上告人に対し,本件建物を明け渡した。

 (6) 被上告人は,平成20年6月29日,上告人に対し,本件保証金100万円を同年7月7日までに返還するよう催告した。上告人は,同月3日,本件保証金から本件敷引金60万円を控除した上,被上告人が本件契約に基づき上告人に対して負担すべき原状回復費用等として更に20万8074円(原状回復費用17万5500円,明渡し遅延による損害金2万2666円,消費税9908円の合計)を控除し,その残額である19万1926円を被上告人に返還した。

 (7) 被上告人が本件契約に基づき上告人に対して負担すべき原状回復費用等は,合計16万3996円である。

3 原審は,次のとおり判断して,本件特約は消費者契約法10条により無効であるとして,被上告人の請求を64万4078円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとした。

 (1) 本件特約は,公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である被上告人の義務を加重したものである。

 (2) 本件契約の締結に当たり,被上告人が,建物賃貸借に関する具体的な情報(礼金,保証金,更新料等を授受するのが通常かどうか,同種の他の物件と比較して本件契約の諸条件が有利であるか否か)を得た上で,賃貸人が把握していた情報等との差が是正されたといえるかは必ずしも明らかではない。また,被上告人が本件特約について賃貸人と交渉する余地があったのか疑問が存する。そして,本件敷引金は,本件保証金の60%,月額賃料の約3.5か月分にも相当する額であり,本件契約の賃料の額や本件保証金の額に比して高額かつ高率であり,被上告人にとって大きな負担となると考えられる。これに対し,被上告人が,本件契約の締結に当たり,本件特約の法的性質等を具体的かつ明確に認識した上で,これを受け入れたとはいい難い。

 したがって,本件特約は信義則に反して被上告人の利益を一方的に害するものである。

4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 本件特約は,本件保証金のうち一定額(いわゆる敷引金)を控除し,これを賃貸借契約終了時に賃貸人が取得する旨のいわゆる敷引特約である。賃貸借契約においては,本件特約のように,賃料のほかに,賃借人が賃貸人に権利金,礼金等様々な一時金を支払う旨の特約がされることが多いが,賃貸人は,通常,賃料のほか種々の名目で授受される金員を含め,これらを総合的に考慮して契約条件を定め,また,賃借人も,賃料のほかに賃借人が支払うべき一時金の額や,その全部ないし一部が建物の明渡し後も返還されない旨の契約条件が契約書に明記されていれば,賃貸借契約の締結に当たって,当該契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上,複数の賃貸物件の契約条件を比較検討して,自らにとってより有利な物件を選択することができるものと考えられる。そうすると,賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる敷引特約を定め,賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締結に至ったのであれば,それは賃貸人,賃借人双方の経済的合理性を有する行為と評価すべきものであるから,消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,敷引金の額が賃料の額等に照らし高額に過ぎるなどの事情があれば格別,そうでない限り,これが信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものということはできない(最高裁平成21年(受)第1679号同23年3月24日第一小法廷判決・民集65巻2号登載予定参照)。

 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件契約書には,1か月の賃料の額のほかに,被上告人が本件保証金100万円を契約締結時に支払う義務を負うこと,そのうち本件敷引金60万円は本件建物の明渡し後も被上告人に返還されないことが明確に読み取れる条項が置かれていたのであるから,被上告人は,本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものというべきである。そして,本件契約における賃料は,契約当初は月額17万5000円,更新後は17万円であって,本件敷引金の額はその3.5倍程度にとどまっており,高額に過ぎるとはいい難く,本件敷引金の額が,近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比して,大幅に高額であることもうかがわれない。

 以上の事情を総合考慮すると,本件特約は,信義則に反して被上告人の利益を一方的に害するものということはできず,消費者契約法10条により無効であるということはできない。

 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由がある。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は,上告人に対し4万4078円及びこれに対する平成20年7月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,原判決中,上告人敗訴部分を主文第1項のとおり変更することとする。

 よって,裁判官岡部喜代子の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫,同寺田逸郎の各補足意見がある。

 

  裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。

 私は多数意見に与するものであるが,岡部裁判官の反対意見が存することもあり,以下のとおり補足意見を述べる。

 1 現在,建物の賃貸借契約,殊に居住用建物の賃貸借契約において,賃料以外に敷金,保証金,権利金,礼金,更新料等様々の費目による金銭の授受を行うとの定めがおかれていることがある。そのうち「敷金」は,判例法として形成されている,賃貸借契約における賃料の担保及び同契約において賃借人が負担することのある損害賠償金支払債務を担保するための預託金としての性質を有するものである限り,法律上特段の問題は生じない。また,権利金や礼金も,賃貸借契約締結に際して賃借人から賃貸人に一方的に交付されるものであり,それが契約締結の際の条件として明示されている限り,震災等地域全体の賃貸借契約に影響を及ぼすような特別の場合を除いては,法律上特段の問題は存しない。更新料は,契約期間終了時に更に契約を更新するに際して授受するものとして定められる金員であるが,それが借地借家法の定める更新規定に反するか否かの問題はあっても,それも契約締結時に明示されている限り,その趣旨は明らかである。

 問題となり得るのは,保証金である。その法律上の性質について種々議論されているが,少なくとも本件では保証金名下で差し入れられた100万円中60万円は,明渡し後も返還されないことが契約締結時に明示されているのであるから,その法的性質が如何であれ,賃借人は本件契約締結時に,本件建物明渡し後に同金額が返還されないものであることは,明確に認識できるのである。

 2 建物賃貸借において,上記のごとき費目の金銭が授受されるか否か,また如何なる費目の金銭が授受されるかは各地域における慣行に著しい差異がある。国土交通省が公表している調査資料によれば,例えば,敷金あるいは保証金名下で賃貸借契約締結時に賃貸人に差し入れられた金員のうち,明渡し時に一定額(あるいは一定割合)を差し引く旨のいわゆる敷引特約(以下,単に「敷引特約」という。なお,この差引き部分は,上記の本来の敷金としての性質を有するものではないから,「敷引特約」という用語は誤解を招く表現であるが,一般にかかる用語が用いられているところから,それに従う。)は,京都,兵庫,福岡では半数から大多数の賃貸借契約において定められているのに対し,大阪では約30パーセント,東京では約5パーセントに止まっており,また更新料については,かかる条項が設けられている契約事例が,東京や神奈川では半数以上を占めるのに対し,大阪や兵庫では,その定めがあるとの回答は零であったなど,首都圏とそれ以外の地域で著しい差異があり,また,近畿圏でも,京都,大阪,兵庫の間で顕著な差異が見られるのであって,賃貸借契約における賃料以外の金銭の授受に係る条項の解釈においては,当該地域の実情を十分に認識した上でそれを踏まえて法的判断をする必要がある(なお,このような各地域の実情は,地裁レベルでは裁判所に顕著な事実というべきものである。)。

 岡部裁判官は,その反対意見において,賃貸人は敷引特約の条項を定めるに当たっては,その敷引部分に通常損耗費が含まれるか否か,礼金や権利金の性質を有するか否か等その具体的内容を明示するべきであると主張されるが,そこで述べられる礼金や権利金についても,それに通常損耗費の補塡の趣旨が含まれているか否かをも含めて必ずしも明確な概念ではなく,また,上記のとおり賃貸借契約の締結ないし更新に伴って授受される一時金については各地域毎の慣行に著しい差異が存することからすれば,敷引特約の法的性質を一概に論じることは困難であり,いわんや賃貸人にその具体的内容を明示することを求めることは相当とは言えない。

3 現代の我が国の住宅事情は,団塊の世代が借家の確保に難渋した時代と異なり,全住宅のうちの15パーセント近く(700万戸以上)が空き家であって,建物の賃貸人としては,かっての住宅不足の時代と異なり,入居者の確保に努力を必要とする状況にある。そこで,賃貸人としては,その地域の実情を踏まえて,契約締結時に一定の権利金や礼金を取得して毎月の賃料を低廉に抑えるか,権利金や礼金を低額にして賃料を高めに設定するか,契約期間を明示して契約更新時の更新料を定めて賃料を実質補塡するか,賃貸借契約時に権利金や礼金を取得しない替わりに,保証金名下の金員の預託を受けて,そのうちの一定額は明渡し時に返還しない旨の特約(敷引特約)を定めるか等,賃貸人として相当の収入を確保しつつ賃借人を誘引するにつき,どのような費目を設定し,それにどのような金額を割り付けるかについて検討するのである。他方,賃借人も,上記のような震災等特段の事情のある場合を除き,一般に賃貸借契約の締結に際し,長期の入居を前提とするか入居後比較的早期に転出する予定か,契約締結時に一時金を差し入れても賃料の低廉な条件か,賃料は若干高くても契約締結時の一時金が少ない条件か等,賃借に当たって自らの諸状況を踏まえて,賃貸人が示す賃貸条件を総合的に検討し,賃借物件を選択することができる状態にあり,賃借人が賃借物件を選択するにつき消費者として情報の格差が存するとは言い難い状況にある。

 4 敷引特約も賃貸条件中の一項目であり,消費者契約法10条前段には一応該当するとは言える。しかし,同条後段との関係では,当該地域の賃貸借契約において定められている一般的な条項や当該契約における他の賃貸条項をも含めて総合的に検討されるべきであり,敷引特約に基づく敷引金と賃料との比較のみから単純にその有効性が決せられるべきものではない。

 なお,敷引特約に基づく敷引金の金額が賃料に比して高額であり,賃貸借契約締結時に当事者が想定していたより短期に賃貸借契約が終了したような場合には,敷引特約に定められた敷金(保証金)をその約定どおり差し引くことが信義則上問題となることがあり得るが,それは当該契約当事者間における個別事情の問題であって,敷引特約の有効性とは異なる問題である。

 5 ところで,賃貸人が賃貸借に伴う通常損耗費を賃借人の負担に求めようとする場合には,賃料として収受すべきであって,賃料以外の敷引金等に求めるのは相当でないとの見解が一部で主張されている。しかし,賃貸人が賃貸借に伴う通常損耗費部分の回収を,賃料に含ませて行うか,権利金,礼金,敷引金等の一時金をもって充てるかは,賃貸人としての賃貸営業における政策判断の問題であって,通常損耗費部分を賃貸借契約において賃貸人が取得することが定められている賃料及びその他の一時金以外に求めるのでない限り,その当不当を論じる意味はない(一審判決が引用する最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日第二小法廷判決・裁判集民事218号1239頁は,通常損耗費を賃借人が負担する旨の明確な合意が存しないにもかかわらず,賃借人に返還が予定されている敷金から通常損耗費相当額を損害金として差し引くことは許されない旨判示するもので,当初から賃借人に返還することが予定されていない敷引金を通常損耗費に充当することを否定する趣旨のものではない。)。

 6 本件では,賃貸借契約締結後,最初の更新時に賃借人である被上告人は賃料値下げを賃貸人である上告人に了解させているのであるから,被上告人が上告人に比して弱い立場にあったものとは認められない。また,本件契約においては,契約締結時に権利金や礼金の授受はなく,敷引特約は賃貸借契約締結時に明示されているのであって,被上告人はそれを十分に認識して本件契約を締結したものと窺える。そして,本件敷引特約に定める敷引金額は60万円であって,賃料の約3.5ヶ月分と一見高額かのごとくであるが,賃貸借契約が更新されても敷引金額は当初に定められた金額のままなのであるから,賃貸借期間が長期に亘るほどその敷引金額の賃料に対する比率は低下することになるところ,被上告人は本件契約の解約迄6年余本件建物に居住していたものであるから,敷引金額を居住期間の1ヶ月当たりにすると8,333円で,当初の1ヶ月の賃料(共益費込み)の4.76パーセント,更新により改定後の賃料(共益費込み)の4.90パーセントにすぎないのである。

 かかる敷引金を賃貸人が取得することをもって,消費者契約法10条に該当するとは到底認められない。

 

 裁判官寺田逸郎の補足意見は,次のとおりである。

 消費者契約法10条の適用との関係で若干の付言をする。

 1 居住用建物賃貸借契約に見られる「権利金」をはじめとする一時金(賃借人への返還が予定されないもの)の授受については,使用収益の対価を規制することを止めるとの判断で昭和61年に地代家賃統制令が廃止された後は,その趣旨に立ち入って検討し,介入すべき公的動機づけは薄れ(ただし,いわゆる「更新料」については,借地借家法が強行的に権利の存続保障をしていることとの関係で,契約更新に対する阻害要因としてどうみるかという別個の判断要素がある。),その目的が特定されている場合のゆれは残るものの,広い意味で使用収益の対価の一部をなし,賃料として組み込めないものではなくなったという意味で,賃料との本質的な差はなく,いわば賃料を補うものとしての性格をもった金銭の授受と受けとめるべきものとなったといえよう。本件で問題となっているいわゆる「敷引特約」に係る賃貸借終了時に返還されない金銭についても,そのような性格のものであると理解することができる。そうであるとすると,たとえこの部分における賃借人の負担が少なくないとしても,一般的には,これのみを切り離して取り上げ,それが相当性を欠くかどうかの内容的な検討をすることが適切であるとは思われない。多数意見は,基本的に以上のような理解に立っていると考えられる。

 2 ところで,このように解するときは,敷引特約を取り上げて消費者契約法10条の規定の適用を問題となし得るのかというところに立ち返って検討を要することにもなる。同条の規定は,法律に定められている任意規定の適用に比べて消費者の権利を制限し,その義務を加重する契約条項を対象として,その有効性を問題とするものであるところ,敷引特約によって賃借人に返還されないものとされるところが広い意味で賃料の実質を持つ金銭の支払にほかならないということであれば,少なくとも予定していた賃貸借の期間を満了した場合には,民法における賃貸借の規定の枠をはずれて賃借人に義務を課するものではないのではないかと考えられるからである。もちろん,敷引特約の下で,本件のように,契約締結時に差し入れられた金銭のうち返還されないものと約された部分がそのまま契約終了時に債務による差引きの影響を受けずに賃貸人に帰属する結果となる場合には,賃料の支払時期に関する民法614条の規定による賃借人の義務を加重するものと解し得るであろう。しかし,このような特約の意義を支払時期に係る義務の加重程度のものとしてとらえるのでは皮相的とのそしりを免れまい。

 3 そこで,検討するに,結論としては,敷引特約に係る金銭の支払義務が消費者契約法10条の適用対象に当たることを肯定してよいと考える。

 消費者契約法の立法趣旨に鑑みると,同条の規定は,契約条件の実質のみならずその形式にも着目し,それによってもたらされる問題をも対象としているのではないかと考えることができるように思われる。民法等に定める典型契約の規定は,パターン化によって契約における権利義務の関係を一般人にも理解しやすくする機能を有するものとなっているところ,ある契約条件が典型契約としてのパターンから外れた形で消費者に義務を課するものとなっているときは,一般人が通常観念する契約で頭に浮かぶパターンから外れた部分としてその合理性をただちに理解できないおそれがあるのであって,同条の規定の意義は,このように組み立てられた条項によって受けるおそれのある不利益から消費者を救済しようとするところにも広がると考えられるからである。典型契約のパターンから形式的に離れた契約条項が定められる場合には,消費者にとって理解が十分でないまま契約に至るなど契約の自由を基礎づける要素にゆがみが生じるおそれが生じやすいとみて,信義則を通して当該条項の合理性につきより立ち入って審査するという趣旨をみて取るわけである(その意味で,岡部裁判官の反対意見の示す問題意識にも共感できるところがなくはない。このような状況の中には,消費者契約法4条などが対象とする契約締結の手続上の瑕疵としてとらえることができる場合もあるかもしれないが,定型的に条項の在りよう自体の問題としてとらえることを妨げる理由もないように思われる。)。

 このような理解に立って本件をみると,本件の敷引特約は,賃料の実質を有するものの賃料としてではない形で支払義務を負わせるもので,民法の定める賃貸借の規定から形式的に離れた契約条件であるから,上記のような特約の実質的な意義を賃借人が理解していることが明らかであるなど特段の事情がない限りは,消費者契約法10条の「公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」の対象として扱って差し支えないと解することが相当であろう。

 4 そして,次の段階として,信義則との関係では,1で示したその本質的な性格に鑑み,それが高額あるいは賃料との関係で高率であるということだけで契約条件としての有効性が疑われることはないとしても,広く地域にみられる約定に基づくものであるとはいえ,いわゆる相場からみて高額あるいは高率に過ぎるなど内容面での特異な事情がうかがわれるのであれば,これを契約の自由を基礎づける要素にゆがみが生じているおそれの徴表とみて,当該契約条件を付すことが許されるかどうかにつき,他の契約条件を含めた事情を勘案し,より立ち入った検討を行う過程へと進むことが求められるということになる(相場の高止まりというような競争環境の不十分さまでも考慮に入れて契約内容の不当性を判断する役割を担うことをこの規定に期待すべきではあるまい。)。ただ,本件においては,広く見られる敷引特約の例として,敷引額が高額・高率に過ぎるなど内容的に特異な事情があると認めるべきところがないため,上記のような徴表を欠くものとみて,結局,多数意見の結論に落ち着くこととなると考えるわけである。

 

 裁判官岡部喜代子の反対意見は,次のとおりである。

 1 私は,多数意見と異なり,本件特約は消費者契約法10条により無効であると考える。その理由は,以下のとおりである。

 2 多数意見は,要するに,敷引金の総額が契約書に明記され,賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約を締結したのであれば,原則として敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものとはいえないというのである。

 しかしながら,敷引金は個々の契約ごとに様々な性質を有するものであるのに,消費者たる賃借人がその性質を認識することができないまま賃貸借契約を締結していることが問題なのであり,敷引金の総額を明確に認識していることで足りるものではないと考える。

 3 敷引金は,損耗の修繕費(通常損耗料ないし自然損耗料),空室損料,賃料の補充ないし前払,礼金等の性質を有するといわれており,その性質は個々の契約ごとに異なり得るものである。そうすると,賃借物件を賃借しようとする者は,当該敷引金がいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容が明示されてはじめて,その内容に応じた検討をする機会が与えられ,賃貸人と交渉することが可能となるというべきである。例えば,損耗の修繕費として敷引金が設定されているのであれば,かかる費用は本来賃料の中に含まれるべきものであるから(最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日第二小法廷判決・裁判集民事218号1239頁参照),賃借人は,当該敷引金が上記の性質を有するものであることが明示されてはじめて,当該敷引金の額に対応して月々の賃料がその分相場より低額なものとなっているのか否か検討し交渉することが可能となる。また,敷引金が礼金ないし権利金の性質を有するというのであれば,その旨が明示されてはじめて,賃借人は,それが礼金ないし権利金として相当か否かを検討し交渉することができる。事業者たる賃貸人は,自ら敷引金の額を決定し,賃借人にこれを提示しているのであるから,その具体的内容を示すことは可能であり,容易でもある。それに対して消費者たる賃借人は,賃貸人から明示されない限りは,その具体的内容を知ることもできないのであるから,契約書に敷引金の総額が明記されていたとしても,消費者である賃借人に敷引特約に応じるか否かを決定するために十分な情報が与えられているとはいえない。

 そもそも,消費者契約においては,消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することが前提となっており(消費者契約法1条参照),消費者契約関係にある,あるいは消費者契約関係に入ろうとする事業者が,消費者に対して金銭的負担を求めるときに,その対価ないし対応する利益の具体的内容を示すことは,消費者の契約締結の自由を実質的に保障するために不可欠である。敷引特約についても,敷引金の具体的内容を明示することは,契約締結の自由を実質的に保障するために,情報量等において優位に立つ事業者たる賃貸人の信義則上の義務であると考える(なお,消費者契約法3条1項は,契約条項を明確なものとする事業者の義務を努力義務にとどめているが,敷引特約のように,事業者が消費者に対し金銭的負担を求める場合に,かかる負担の対価等の具体的内容を明示する義務を事業者に負わせることは,同項に反するものではない。)。このように解することは,最高裁平成9年(オ)第1446号同10年9月3日第一小法廷判決・民集52巻6号1467頁が,災害により居住用の賃借家屋が滅失して賃貸借契約が終了した場合において,敷引特約を適用して敷引金の返還を不要とするには,礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存することを要求していること,前掲最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決が,通常損耗についての原状回復義務を賃借人に負わせるには,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であるとしていることから明らかなように,当審の判例の趣旨にも沿うものである。

 4 このような観点から本件特約の消費者契約法10条該当性についてみると,次のようにいうことができる。

 まず,前段該当性についてみると,賃貸借契約においては,賃借人は賃料以外の金銭的負担を負うべき義務を負っていないところ(民法601条),本件特約は,本件敷引金の具体的内容を明示しないまま,その支払義務を賃借人である被上告人に負わせているのであるから,任意規定の適用の場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するものといえる。

 そして,後段該当性についてみると,原審認定によれば,本件敷引金の額は本件契約書に明示されていたものの,これがいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容は本件契約書に何ら明示されていないのであり,また,上告人と被上告人との間では,本件契約を締結するに当たって,本件建物の付加価値を取得する対価の趣旨で礼金を授受する旨の合意がなされたとも,改装費用の一部を被上告人に負担させる趣旨で本件敷引金の合意がなされたとも認められないというのであって,かかる認定は記録に徴して十分首肯できるところである。したがって,賃貸人たる上告人は,本件敷引金の性質についてその具体的内容を明示する信義則上の義務に反しているというべきである。加えて,本件敷引金の額は,月額賃料の約3.5倍に達するのであって,これを一時に支払う被上告人の負担は決して軽いものではないのであるから,本件特約は高額な本件敷引金の支払義務を被上告人に負わせるものであって,被上告人の利益を一方的に害するものである。

 以上のとおりであるから,本件特約は消費者契約法10条により無効と解すべきである。

 なお,上告人は,建物賃貸借関係の分野では自己責任の範囲が拡大されてきている,本件特約を無効とすることにより種々の弊害が生ずるなどと述べるが,賃借人に自己責任を求めるには,賃借人が十分な情報を与えられていることが前提となるのであって,私が以上述べたところは,賃借人の自己責任と矛盾するものではなく,かつ,敷引特約を一律に無効と解するものでもないから,上告人の上記非難は当たらない。

5 本件特約が無効であるとした原審の判断は,以上と同旨をいうものとして是認することができる。論旨は理由がなく,上告を棄却すべきである。

 (裁 判 長 裁 判 官・ 田 原 睦 夫  裁 判 官・ 那 須 弘 平  裁 判 官・ 岡 部 喜 代 子 裁判官・ 大谷剛彦  裁判官 ・寺田逸郎)

 

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地上げ屋に借地契約の継続を通告 (東京・大田区)

2011年10月21日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 大田区羽田地域に居住し、約30坪を賃借しているAさんは、大正時代に地主の勧めで借地することになった。

 終戦後火災で滅失するが、大工であった地主の手で新築される。その約10年後には地代の支払いが大変ならばと2階部分の建増しを勧めてくれた。その地主もAさんの親もなくなり、世代交代して数年経過した。

 平成2年突如「俺が地主だ。土地を買うか、借地権を売るか」と喚きたてられて驚き、知人に組合を紹介された。組合員になったことを地上げ屋に伝えるがその後は何事もなく、指定された口座に地代を振込むだけでよかった。

 しかし、今年8月Aさん宅を訪れた建設会社の社員より貴方の地主から土地譲渡を勧められているので、今後どうするのか問われて組合役員同席で交渉。借地契約の継続は当然権利との主張で契約書の作成を了承したのにも関わらず、後日Aさん宅を訪れて「買うか売るか」と迫る社員に契約の継続を通告。「鍛えられて強くなった」とAさんの頼もしい一言。

 

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立退き料家賃の50カ月分で和解 (東京・足立区)

2011年10月20日 | 建物明渡(借家)・立退料

 足立区扇で三軒(現在両側解体)の一軒を賃借しているAさんは5年前突然家主から家賃の受領を拒否され供託してきた。

 昨年暮れ、隣に住む男が訪ねてきて立退料50万円を提示したが断った。その後は何もなく今年4月に内容証明郵便で家主と直接明け渡しについて交渉を申入れた。しかし返事はなく、組合に相談し、6月組合員であり組合を通しての交渉を行うことを書面で申入れた。

 早速、家主から組合事務所での交渉に応じる返事が来た。交渉を重ね、9月に家賃50ヶ月分と猶予期間6ヶ月分の家賃免除で円満解決となった。

 

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賃料増額請求請求から明渡しで合意(京都市南区)

2011年10月19日 | 建物明渡(借家)・立退料

 京都市南区のAさん、築不詳の二戸一の借家住んでいます。数年前に「自己使用」を理由に明渡し請求を受けました。家も古くなっていることもあって、条件が合えば考えても良いと話し合いましたが、家主のケチぶりに話は壊れました。

 それなら今の家賃で住み続ける覚悟を示しました。すると家主はAさんの隣の空き家になっていた家屋を取り壊し、Aさんの家屋はろくな養生もせず、1年以上放置しました。もちろんその間家屋はいっそう傷むばかりです。我慢できずにAさん「養生請求」の内容証明郵便を送りました。

 しばらく連絡もないままのある日、京都簡易裁判所から「賃料増額請求」調停申立書が送られてきました。

 組合と相談し、調停での闘いに臨んだAさんは「何より先に、建物の養生だ」と主張。すると「賃料の増額約束がなければ養生はできない、さもなくば立ち退いてもらいたい」とのこと。

 ますます住みづらさを実感していたAさんは、調停委員を介して立退料の希望額を伝えたところ、調停委員も共感してもらい、ほぼその額で和解が成立しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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地主が更新料(坪当たり15万円)を請求、年5%の利息で10年分割支払方式を提起 (東京・豊島区)

2011年10月18日 | 更新料(借地)

 豊島区西巣鴨に住むAさんは祖父の代から借地している。先日、地代を持参したところ、地主から手紙と別紙で更新料の10年分割支払いの計算式の書類を手渡された。

 手紙には「更新の時期なので更新料として坪当り15万円で約400万円を請求いたします。土地取引には慣習と地域性があり、前回お支払い頂いたように更新料が発生する習慣があります。他の借地人にも同様に更新料を頂いております。お支払方法については別紙のお支払い例を参考に10年以内にお支払いください」と記載されていた。しかも10年払いにするときには、実質年率5%で計算されていた。

 とても払えきれないと思っていたAさんは知り合いに相談したところ、この方が借地借家人組合の組合員で、ただちに組合を紹介された。

 早速、組合では、Aさんに更新料問題のパンフなどを見せながら更新料についての知識を高めるとともに組合に入会して、一緒になって頑張るように訴えたところ、「心配で不安でしたが、組合に入会して、支払う必要のない更新料は払わないで頑張りたい」と話し、入会した。

 組合ではAさんと相談し、地主に対して「借地借家人組合に入会した。契約書に特段の更新料支払いの約束がない場合は更新料は支払い義務がないという最高裁の昭和51年の判決を示し、支払わなければならない法的根拠を示してください。また、20年前のバブルの時期と変わりない金額を請求したことに関して、その算出根拠を示してください」という通知を出すことにした。

 通知を出したのちに、地主に地代をもって行ったところ、受取りを拒否してきたので、今後は、地代を供託して頑張ることにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 家賃の一部(内金)として受領する旨の回答が受領拒絶に当たるとされた事例

2011年10月17日 | 弁済供託

 判例紹介

 家賃増額請求され、従前の賃料を提供したところ、家主が賃料に一部として受領する旨回答したことが受領拒絶に当たるとされた事例 (東京高裁昭和61(1986)年1月29日判決、判例時報1183号88頁)

(事案)
 家主が借家人に対し、昭和57年4月家賃1ヶ月1万2500円に値上げした後、同年7月再度1ヶ月1万5000円に値上げ請求した。

 借家人は、同年9月上旬、同年8月分の家賃として、従前額を持参した。ところが、家主は、借家人に対し、さらに同年10月から1ヶ月2万5000円に値上げ要求する旨通告した上、「持参した家賃は、値上げされた家賃の一部として受け取る」と述べた。

 借家人は、提供した家賃の受取を拒否されたものと考え、従前の家賃額で供託した。

 家主は供託は無効であると主張して、家賃不払を理由として借家契約を解除し、建物の明け渡しを求めた。

 借家人は、家主が持参された家賃をその一部としてなら受領する旨述べたことは、、借家人が家賃の値上げを争い、従前額による家賃を相当と認めて提供したものであり、借家法7条2項の趣旨からすれば、家主は不足分があることを借家人の押し付けるような趣旨で受け取ることは許されないというべであるから、家主の申出は受領拒絶の態度を示したというべきであると反論した。

(判旨)
 「家主が、家賃の弁済の提供を受けた際、内金としての受領する旨述べたことは、特段の事情のない以上、家賃の全額の弁済として提供されるのであればその受理を拒絶する趣旨を含むものと解すべきである。したがって、家主は、借家人が債務の本旨に従った弁済の提供に対し、その受領を拒絶し、その後も受領しない意思を示したものいわなければならない。そうすると、本供託は、家主の受領拒否によりなされた適法な供託であり、これによって右家賃債務が消滅したことになるから、家主がなした家賃の催告および条件付解除の意思表示は、効力を生ずる理由がない」

(短評)
 賃料の増額請求がされた場合、賃借人が相当賃料として従前額を提供し、賃貸人がこれを賃料の内金として受領しようとする事例が多い。この場合の賃貸人の態度が受領拒絶に当たるかが問題となる。最高裁昭和50年4月8日判決は、受領拒否に当たらないとする。また従前額の供託金について、一部弁済として受領する旨留保して供託金の還付を受けることも認められている。本件判決は、右最高裁判決と相反するものであるが本件では家主の増額請求に相当無理な点があるという特殊なケースであり、われわれとしては、安易に本判決の理屈付けを利用せず、従来どおり支払った上、賃料全額であることを通告する方式を堅持していきたい。

 

(1986.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


【Q&A】 賃料を内金として受領すると言われた場合どうするか 

 

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明渡請求を拒否して35年供託中、その間非訟手続きで建替え (東京・大田区)

2011年10月14日 | 借地の諸問題

 都心から羽田の物流の要の産業道路に位置する大田区北糀谷地域で宅地約35坪を賃借している。Aさんは地主の息子が自宅を建てるとの強引な理由による明渡し請求を毅然と拒否して、35年余の歳月が経過しますが、地代の供託は今日も継続しています。

 この間、地主も借地人も世代が交代するが係争は継続されてきた。家屋の老朽化を心配するAさんは、建替えを計画し、所在不明となった地主を探し出して、承諾を申し出たが拒否された。建物新築の非訟手続きに移行するが、地主の建物朽廃によりすでに賃貸契約は終了しているとの主張で本訴となる。

 訴えによって行われた現地調査で裁判官立会いの下に、建物の 朽廃は否定されて契約の存続が認められた。建替承諾料と多少の地代の増額で承諾されての建物新築後も、地主は裁判所の意向を受け入れず地代の供託を今日も継続されています。

 Aさんは、地主の明け渡し請求を撤回させるまでがんばると家族で決意しています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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家主の明渡請求を拒否 (東京・豊島区)

2011年10月13日 | 建物明渡(借家)・立退料

 東京都豊島区の駒込で焼肉店を営むAさんは平成17年の8月に居ぬきで借りて商売を始めました。平成19年の8月、更新時期を迎えたときに店頭前で行っていた焼肉用の炭を使った火おこししに対して、家主から苦情が出され、話し合いの結果、1万円の家賃の値上げで合意しました。その後、3回目の更新を迎えた平成21年の8月にまたまた家主からの一方的に1万円の家賃の値上げ請求がありましたが、結局話合いがつかず合意更新が出来ずに法定更新となりました。

 今年の8月に内容証明郵便が送られてきました。その中身は「平成21年に行うべき賃貸借契約の更新手続きが行われておらず、また、炭を取り扱う行為は一切認めておらず貴殿との賃貸借契約は更新を拒絶しますので、期間満了までに明渡してください」と記載されていました。

 Aさんは直ちに「平成21年の前回更新時に賃料値上げで合意更新が出来ずに法定更新となったこと。その結果、借地借家法で期限の定めのない契約となって、今回貴殿が通知してきた平成23年は更新の時期でないこと。期間満了というならば当方が退去するまでが期間である」という回答書を家主に送りました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 7割の地代値上げ 適正な地代とは?

2011年10月12日 | 地代の減額(増額)

 (問) 私は、祖父の代から借地に住んでいます。先日、地主から手紙で地代を16年も据え置いたからと言って7割近くの値上げ請求が来ました。あまりに大幅な値上げで応じることができません。どう返事をしたらよいか困っています。また適正な地代とはどのくらいか教えてください。


 (答) 当然、地代は貸主・借主合意で決めるものですが、最高裁判所事務局総局が平成3年12月に出した「民事調停の適性かつ効率的な運用に関する資料」の中に「最終合意賃料が公租公課の2~3倍に収まっているときは、加減要素としては考慮しない」つまり、地代はその土地にかかる固定資産税等の公租公課の2~3倍の範囲なら適正と言えるということです。

 これで いけばあなたの今の地代は、固定資産税等の4倍近いのですから適正地代の範囲と言えません。従って、このことを地主に示して話し合うことが必要です。また、長い間値上げしなかったのは、地主が値上げの必要がなかったとも取れるので、あくまでも固定資産税などの公租公課との関係を中心に交渉することをお勧めします。

 尚、現在は毎年地価が下がっている状況の中であまりに高い地代については地代の値下げを要求することもできます。そのために地方自治体の証明する該当土地の「固定資産税額」をよく調査し、地主を説得できる資料をもって交渉にあたることが必要です。詳しくは、最寄の借地借家人組合へ相談するとよいでしょう。

 

全国借地借家人新聞より


参考記事
①「【Q&A】 固定資産税台帳を用いて借地人にも適正地代を計算することが出来るか

②「借地借家人へ固定資産課税台帳公開 (東京・台東)

③「地代の値上げ(相続税路線価から地代を計算してみた) (東京・台東区)

④「地代を値下げ(固定資産税路線価から地代を計算してみた) (東京・台東区)

 

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借地明渡(更新料支払請求)裁判に全面勝訴 (東京・葛飾区)

2011年10月11日 | 更新料(借地)

  Aさんは葛飾借地借家人組合員の紹介で組合に入会した。 事の起こりは賃料の増額要求から争いが始まった。調停へと進んだが、Aさんは弁護士に依頼し坪30円の増額を認め和解した。ホット一息つくところだが、地主は次の事件を用意していた。

 借地契約満了による更新料請求である。「更新料450万円を2週間以内に支払え、支払わなければ契約を解除する」というものであった。Aさんは組合を通じて法定更新を請求した。地主は更新料を支払わないとの意思表示に対して支払い拒否は信頼関係の破壊であるとして東京地裁に提訴してきた。

 契約書には「①協議の上更新することができる。②相場による更新料を支払わなければならない」という更新料支払い条項はあるが、具体的な支払い金額の定めがない。

 裁判所は、「この(契約書の更新料支払)条項は貸主・借主が合意により更新する場合を想定して定めたものと解するのが自然かつ合理的であり、合意更新されたか、法定更新されたかにかかわらず更新の際に更新料が支払われるとの意思を有していたものとまでは認めがたい。更新料を支払う商習慣ないし事実足る慣習が存在することを認めるに足りる証拠はない」として、更新料支払特約は法定更新の場合には適用がないと判決した東京地裁平成23年7月25日判決。同年8月11日確定)。

 今回は東部法律事務所の西田譲弁護士の尽力による勝利判決である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 借地権の譲渡

2011年10月03日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 【問】 転勤のため現在の建物と借地権を売りたいのですが、その際、どのような点に注意したらよいでしょうか。まだ地主には何も話していません。


 【答】 ご質問内容からみますと、土地を借りて建物を建築して住んでいたところ、転勤することになり、現在住んでいる建物と借地権を売ることになったようです。

 このように建物所有目的で土地を賃借した後で、借地権を第三者に売ることになった場合、地主との問題があります。最近は、借地権譲渡には、必ず地主の事前の承諾を要するとの条項が契約書に記載されている場合が多いのでご存知とは思いますが、借地権譲渡に当たっては地主の承諾が必要です。ただし、このように地主の事前承諾条項のない場合にも承諾を得なければならないと法律は定めています(民法612条)。

 建物を売買する場合は、通常は、建物とともに借地権も譲渡されますので、地主の承諾が必要になるのです。地主が借地権譲渡について承諾しない場合、借地人は借地権の譲渡の途がないのかというとそうではありません。このような場合、借地人は次のような方法をとることができます。代諾許可といわれるものです(借地借家法19条)。すなわち、借地人が借地上に存する建物を第三者に譲渡する場合、地主を相手方として、借地所在の管轄裁判所に対し、「地主の承諾に代わる許可」を求める申立てをすることができます。

 代諾許可の要件は次のとおりです。

(1) 第三者が借地権を取得しても、地主に不利となる虞れがないのにかかわらず、地主が承諾しない場合です。借地権の譲受人は特定していなければなりません。「不利となる虞がない」かどうかは、第三者の資力が十分で地代の支払いが間違いなくされることが必要です。土地・建物の使用方法が社会常識上普通になされる者であるか否かも考慮して判断されます。

(2) (1)の要件を満たした場合でも裁判所は許可するにあたて、①借地条件の変更、②借地人に財産上の給付(いわゆる名義書換料)を命じることができることになっています。財産上の給付は、鑑定委員会の意見を聴いて決定されます。その額は事情により相違がありますが、借地権価格の約10%程度と考えてください。

(3) 地主は借地人が許可の申立をした場合、自らが借地権の譲渡を受ける途も開かれています。地主からこの申立があった場合には、裁判所は地主に優先的に借地権買戻しを認めていますが、その場合の価格は、第三者に譲渡する場合から財産上の給付分を差し引いたものとなります。

 (*)裁判所の代諾許可が認められた場合、6ヶ月以内に借地権者が建物を譲渡しないとは、その効力を失う。ただしこの期間は、、その裁判において伸張し、又は短縮することができる(借地借家法51条)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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