東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*建物買取請求権行使によって成立する売買と民法577条の適否と抵当権付き建物の時価

2018年11月12日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

建物買取請求権行使によって成立する売買と民法577条の適否と抵当権付き建物の時価の算定
(最高裁昭和39年2月4日判決 民集18巻2号233頁)

ア 借地法10条に基づく建物買取請求権行使によって成立する売買には民法577条の適応がある。
イ 同建物に抵当権が設定されている場合の時価の算定は、抵当権設定は考慮せず、減額しない。

 

 

       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人(転借地人)の負担とする。


       理   由
 上告(転借地人)代理人名尾良孝の論旨1について。
 抵当不動産の買主がその売主に対し滌除権を取得するには、その所有権を取得したことを以って足るのであって、右所有権取得につき登記を経ることを要件としないものと解するを相当とする。従って、被上告人(借地人・転貸人)は、原判示の如く、借地法に基づく上告人(転借地人)の買取請求の意思表示によって本件抵当建物の所有権を取得した以上、未だその取得につき登記を経て居らなくても、売主である上告人(転借地人)に対し滌除権を有するものとなすべきである。被上告人(借地人・転貸人)本件抵当建物につき滌除権を有しないとする上告人(転借地人)の主張は、独自の見解であって、正当でない。

 又、本件において、上告人(転借地人)が所論買取請求権の行使をしたのは、昭和35年6月24日の原審口頭弁論においてであって、この意思表示により、直ちに、上告人(転借地人)と被上告人(借地人・転貸人)との間に、上告人(転借地人)を売主、被上告人(借地人・賃貸人)を買主とする本件抵当建物の売買が成立し、同時に、その所有権が被上告人(借地人・転貸人)に移転したものとなすべきである(大審院昭和6年(オ)第1462号同7年1月26日判決、民集11巻169頁、同院昭和13年(オ)第1780号同14年8月24日判決、民集18巻877頁、当裁判所昭和28年(オ)第759号、同30年4月5日判決、民集9巻439頁参照)から、右口頭弁論の時において既に、実体的に、被上告人(借地人・転貸人)は、右抵当建物につき、所有権と共に滌除権をも取得し了ったものであって、これを訴訟において予備的請求原因として主張したからといって、右権利取得に何等の消長をもきたさないものである。右口頭弁論の時以後においては、何時でも、売主より民法577条但書の滌除の催告をなすことがあり得べく、また、買主において売主の代金支払請求に対し滌除を前提として同条本文の代金支払拒絶を主張することもあり得るとするに何等妨げがない。従って、予備的請求原因として、買取請求権行使の効果が主張せられる場合に、民法577条の適用は考えられないとすることも亦、独自の見解であって、失当である。

 論旨は、結局、すべて、前提において既に失当であって、採るを得ない。


 同2について。
 借地法に基づく買取請求権行使によって成立する売買の代価は、その行使当時における建物の時価により客観的に定まるものであって、所論の如くに、買主が主観的に算定して定めるものではない。又、論旨が引換給付判決として主文に売買代金額が掲記せられない限り右時価は定まらないとするは、独自の見解に過ぎない。

 従って、論旨は、すべて、前提において既に失当に帰するものであって、採るを得ない。


 同3について。
 論旨は、滌除の制度を以って、不動産の時価が抵当債権を完済し得ない場合にのみ効果を発揮するものであるとし、或は抵当債権額が不動産の時価より少い場合には、その差額についてのみ売主に留置権及び同時履行の抗弁が生ずるものであるとするけれども、いずれも独自の見解に過ぎない。論旨は、結局、これ等独自の見解を前提として、原審が借地法10条に基づく本件買取請求による売買に民法577条を適用すべきものとしたことを非難するにつきる。

 論旨は、すべて、前提において既に失当に帰するものであって、採るを得ない。


 同4について。
 原審が所論建物の時価を530,625円と算定判示したことは、所論の如くに、無意味不必要ではない。そもそも、借地法10条による買取請求の対象となる建物の時価は、その請求権行使につき特別の意思表示のない限り、その建物の上に抵当権の設定があると否とに拘りなく定まって居るものと解するを相当とするから、原審が、本件買取請求権行使当時の本件建物の時価は、所論根抵当権の負担あることを考量に入れない鑑定価格に基づき530,625円である旨認定判示したのは、正当であり、判断についての右の立場を明示する意味においても、原審が右具体的価額を判示したことに意義がある。されば、原審が本件建物の時価を具体的に判示したことを無意味不必要とし、これを前提として本件に民法577条を適用する余地がないとする論旨は、前提において既に失当である。

 更に、反対債権たる代金請求権は、当該訴訟における訴訟物とならず、従って、これが引換給付判決の主文に掲記せられて居る場合においても、その存在及び数額について既判力を生ずる余地はないのであるから、原審が判決主文においてこれとの引換給付を命じなかったことが所論代金請求権の存否につき既判力を生ぜしめない結果を招いたとして原審判断を非難する論旨も亦、前提において既に失当である。

 その他の点につき論旨は縷々主張するところがあるけれども、原審の認定判示に添わないことを仮定して原審の判断を非難するものであって、上告適法の理由とならない。

 論旨は、すべて、採るを得ない。

 よって、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。


    最高裁裁判長裁判官石坂修一、裁判官横田正俊  裁判官河村又介は退官につき署名捺印できない。 裁判長裁判官  石坂修一


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