東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 礼金は広義の前払い賃料であり、中途解約の場合は返還義務がある

2014年04月17日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

  一般的には、借家契約時に支払われる一時金として①礼金、権利金、敷引金等、②敷金、保証金等がある。

①は、通常は契約満了の場合、返還請求ができない金銭として扱われている。 
②は、契約終了後、賃借人に債務不履行がなければ、全額が返還される預金とされている。

 通常、礼金は戻らない金銭と説明されている。しかし、礼金が返還されることがある。その一例は、平成23年の大阪簡易裁判所の判例である。具体的に判例を検討してみたい。

 礼金は、前払賃料であり、中途解約でも返還しないとする契約内容は消費者契約法10条に反し無効である。未使用期間分の前払賃料相当分は返還義務がある<大阪簡易裁判所 平成23(2011)年3月18日判決(確定)>。

【事案の概要】
 賃借人は2009年12月24日、月額賃料3万円、礼金12万円で賃貸住宅を1年契約で入居した。しかし、僅か1か月と8日使用しただけで、2010年1月末に退去した。
 賃借人は、賃貸人である不動産会社に対し、不当利得として礼金12万円を返還すべきとして大阪簡易裁判所へ提訴した。

【裁判での争点】
 礼金条項は消費者契約法10条により無効か

【賃借人の主張】
 礼金の支払いは、民法上にない義務を賃借人に負わせるものであり、礼金条項は信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとして、消費者契約法10条により無効である。賃貸人である不動産会社は、不当利得として礼金12万円を返還すべきである。

【賃貸人の主張】
 礼金の返還は認められない。


【裁判所の判断】
 賃貸借契約締結の際に礼金は返還しない金員であると当事者間で合意したとしても、そのような合意は中途解約の場合に、「前払分賃料相当額が返還されないとする部分について消費者の利益を一方的に害するものとして一部無効である(消費者契約法10条)」と判決した。

 従って、礼金は実質的・経済的に見て建物の使用収益の対価として授受されている広義の前払賃料であるから、「予定した期間が経過する前に退去した場合は、建物未使用期間に対応する前払賃料相当額を返還すべきである」。

 その一方で、賃借人が主張した礼金条項は消費者契約法10条違反に対しては、「礼金の主たる性質は、広義の賃料の前払いであるということができるが、その他にも程度は希薄であるものの賃借権設定の対価や契約締結の謝礼という性質をも有している」と説明し、「礼金は一定の合理性を有する金銭給付であり、礼金特約を締結すること自体が民法1条2項に反して消費者の利益を一方的に害するものであるとはいえない」として有効性を認めた。

【裁判所の最終判断】は、
 1か月と8日間しか本件建物を使用せずに退去している。8日間分を1か月と換算したとしても、前払賃料として礼金12万円から控除できるのは1万円×2か月分=2万円ということになる。礼金の副次的な性質である「賃借権の設定の対価」と「契約締結の謝礼」分1万円を考慮すると、礼金から控除できるのは金額は3万円ということになり、差額9万円は賃借人へ返還すべきである。

 


 

 

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【Q&A】 家賃の不払で実質的な敷金回収を(再)

2014年03月22日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 敷金(保証金)返還が不確実と予想される場合は
    家賃の不払で実質的な敷金回収を

(問) 引越を考えているが、噂によると家主は全く敷金を返さないことで有名らしい。敷金は家賃の3箇月分を差入れている。自衛策として引越日の3箇月前に家主に文書で解約予告を行い、3箇月分の家賃を不払を実行し、退去する。未払い家賃は敷金で精算してもらうという方法で何か問題があるのか。


(答) 敷金の回収見込みが無い場合に、家賃の不払を実行して実質上敷金を回収する方策を是認する賃借人にとっては画期的な最高裁判決(2002年3月28日)がある。この判決は「判例紹介」に掲載されているので参照。
 尚、最高裁判決の全文は こちらから

   〈事実の概要〉
裁判は抵当権者(信託銀行)が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえ,取立権に基づき滞納家賃の支払等を求めた事案

①A所有の建物をBが賃借し、それをYに転貸していた。Yは家賃100万円、敷金1000万円でBと転貸借契約を結んでいた。
②Yの入居前からA所有の建物は信託銀行によって抵当権が設定されていた。
③Aの経済的破綻が心配でYはBに対して平成10年3月30日に6箇月後に退去するという契約解除を通告し、敷金の回収目的から一方的に6箇月分の家賃の支払を停止した。
④Aの借入金の返済がストップしたので信託銀行は、抵当権者の物上代位権を行使して、平成10年6月YからBへの賃料債権を差押えた。
⑤Yは家賃(600万円)を未払いのまま9月30日に建物を退去した。
⑥信託銀行は差押え家賃を支払えとYを提訴した。

裁判の争点は、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡された場合における敷金の賃料への充当は、物上代位権の行使によって妨げられるか否かがで争われた。

 Yは裁判で未払い賃料は、建物明渡時に敷金によって当然に充当され消滅するものであると主張した。

 最高裁は「賃料債権等の面からみれば,目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払い賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって相殺のように当事者の意思表示を必要とするものでないから、民法511条によって上記当然消滅の効果が妨げられないことは明らかである」とした。

 従って、「敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押えた場合においても、当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する」と賃借人は抵当権者に主張することができるとしてYの主張を容れて最高裁は信託銀行を敗訴させた。

 この最高裁の判決は、一方的な家賃の不払によって実質的に敷金を回収する方策を認めたもので評価出来る。明渡しが完了すれば、未払いの賃料債権は相殺の意思表示を待たずに預託されている敷金の限度で充当され、当然に賃料債権が清算される。これは敷金契約から発生する効果である。

 結論、相談者は敷金の範囲内であれば、家賃の不払を実行して敷金の回収を行っても何ら問題は無い。
 なお、最高裁判決は敷金の特殊性を考慮したものであって、単なる一般債権の場合には当て嵌まらない。

 

 注意として、建物賃貸借契約書には解約予告をする場合、「乙(借主)が本契約を解除しようとしたときは、甲(貸主)に対し解除予定日の*か月前に書面により解除する旨の通知を知ることによって本契約を解除することができる」と書面で行うように書かれていることが多い。

 従って、後日トラブルにならないためにも、特約されている解約予告期間前までに配達証明付き内容証明郵便で送付する。

 

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原状回復費用32万円超の請求を14万円で和解 (神奈川・藤沢市)

2012年10月19日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 Aさんは藤沢市の賃貸マンションの702号に6年間居住していました。Aさんの都合により退去したところ、転居先に家主から原状回復費用32万8000円の請求書が送られてこました。思わぬ請求に困惑していたところ、友人が神奈川県借地借家人組合連合会(電話045-322-2622)を紹介してくれました。

 Aさんは、早速、組合を訪問し、組合役員と対策を相談し、入会しました。Aさんと組合は、家主からの請求内容を検討し、経年変化と故意過失によるものを分けました。

 家主にAさんの過失による14万円の費用負担を書面で通知したところ、「了解」の回答が書面で提示されました。5日間での迅速解決となり、Aさんは喜んでいます。

 

全国借地借家人新聞より

 

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大阪市特定賃貸住宅で敷金全額返還を勝ち取る (大阪・福島区)

2012年01月23日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 平成16年大阪市福島区のAさんは、大阪市特定賃貸住宅に入居し、平成23年4月に退去しました。

 Aさんは、退去時に敷金50万円を全額返済される契約になっているにもかかわらず、管理業者からは、「家主が代わったこと」を理由にして再三督促しても返済してもらえません。賃貸契約書を詳しく見ると、「大阪市特定賃貸住宅」で契約解約時に原状回復費用を除く敷金は全額返還することが規定されていることに気付きました。

 そこで、大阪市都市整備局へ管理業者と家主へ行政指導を求めたところ、大阪市の担当窓口は、「融資をした当時の家主が代わり、融資も全額返済されているので、行政指導をする権限がなくなった」と回答し、「借地借家法で当事者で交渉して欲しい」との見解を示しました。

 11月になってインターネットで大借連を知ったAさんは、大借連事務局へ相談。大借連は、大阪市の担当窓口へ連絡し、「融資先の家主が全額返済したとしても、テナントが入居時に大阪市特定賃貸住宅で敷金を全額返還する旨の契約条項があり、テナントの合意なしに一方的に契約条件の変更を強要することは、当初大阪市の融資住宅であったことから行政責任がある」と指摘し、家主と管理業者へ改めて返還の指導を求めました。

 大阪市は、大借連の指摘から家主へ返還するよう通知し、その取り扱いの結果の報告を求めました。また、Aさんも大借連の支援を受けて、家主へ内容証明郵便で催告状を出し、返還されない場合は法的措置をとることを通知したところ、即座に敷金が全額振り込まれました。

 Aさんは、「大借連をもっと早く知っていたら、苦労しなくてもよかったのに」と語り、入会しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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敷金返還少額訴訟で和解 (神奈川・横須賀市)

2011年12月09日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 横須賀市浦賀の2階建ての借家で、20年以上住んできたDさんは、事情により転居した。その直後に家主側と、不動産業者との立会いで、敷金22万5000円から、家賃未払い金1万7500円を差し引いた20万7500円の返還を確認しました。

 その後、Dさんは家主側から敷金が返還されず困り、知り合いから組合を紹介されました。不動産業者と家主に対して、返還請求を書面にて発送し回答を求めました。

 家主側から一切拒否の回答を受け、組合はDさんと協議の上、少額訴訟の提訴に踏み切りました。10月12日午後2時より、横須賀簡易裁判所にて第1回の訴訟となり、家主側も出廷して調停委員の仲介で双方合意が成立し、35分で解決しました。

 Dさんは、「組合のお陰で助かり、これからも組合員として続けていきます。今後共宜しく」と喜んでいました

 

全国借地借家人新聞より

 

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事業用店舗、敷金より高額な礼金 (兵庫・尼崎市)

2011年08月01日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 昨年12月、Aさんは事業用店舗として賃借しました。契約内容は、家賃月額43万円、敷金150万円、礼金180万円を支払い、4月分家賃1か月分を未納のまま4月末に明渡しました。

 4月分家賃は、保証会社が家主に支払いましたが、Aさんは保証会社に家賃をし払わなければなりませんが支払うことができません。その保証会社がAさんに組合を紹介してくれたといいます。

 組合と保証会社の関係は以前に家賃が払えないから滞納しているにもかかわらず、無理な高額家賃を期日までに支払えと強引な家賃取立てに対し交渉したことがありました。

 Aさんが建物を引き渡す場合、原状回復といって、故意・過失で造作を毀損した時は造作などを借りた状態にすることであり、通常損耗まで原状回復する必要はありません。今回、家主から受け取った修繕見積書は百数十万円、Aさんの知り合いの修繕見積書は数十万円。比較すると大きな開きがあること。4か月借りたのに礼金180万円が帰ってこないことに疑問を持ち組合に相談したといいます。

 きっと、家主は礼金を返す必要はない。敷金返還も原状回復費用で相殺できると考えているのではないでしょうか。しかし、大阪簡易裁判所で礼金返還を求める新たな判決が出ました。礼金は賃料の前払いであって、未使用期間分の礼金は消費者契約法第10条に反するとして賃借人に返還を命じています。

 敷金は基本的には返ってきます。家賃の未払いや故意・過失など、債務は敷金から差し引かれて返還されます。組合は、当事者が解決に向けて話し合いを持つことにしています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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少額訴訟で敷金の90%が返還された (神奈川・大和市)

2011年06月13日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 神奈川県大和市柳橋で2階建て1棟を賃借して6年間居住し、都合により転居したYさんに1週間後に家主代理人の不動産業者から「補修工事」の請求書が届きました。

 敷金30万円を超えた内容に驚き、消費者センターに相談したところ、借地借家人組合を紹介されて組合を訪れて組合に加入しました。

 協力要請があり、Yさんと組合で不動産業者と書面による調整を再三重ねたが、何らの回答もなく9か月間空白となりました。催告書を発送にて回答を求めたところ、Yさんの要望を一切無視の回答が書面にて提示されました。

 Yさんと組合で検討した結果、家主宛に少額訴訟提訴を確認して、藤沢簡易裁判所に申立をしました。

 1週間後に不動産業者より、前回の要望通り、敷金を返還するので少額訴訟の取消しの申出がありました。

 但し、敷金27万円也を受領した後、取消しの手続きをすることを確認して、期日を設定して履行することにしました。

 Yさんは組合の対応のアドバイスで満足の結果となり、「大変心強い、今後も組合員として継続して行く」と感謝を述べていました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例】 *居住用建物の敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとされた事例

2011年05月09日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 判例紹介

事件番号  平成21(受)1679

事件名  敷金返還等請求事件

裁判所  最高裁判所第一小法廷

裁判年月日  平成23年03月24日

裁判種別  判決

結果  棄却

原審裁判所  大阪高等裁判所

原審事件番号  平成20(ネ)3256

原審裁判年月日  平成21年06月19日

裁判
1 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,敷引金の額が高額に過ぎるものである場合には,賃料が相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,消費者契約法10条により無効となる。

2 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとされた事例


 

主      文

      本件上告を棄却する。

      上告費用は上告人の負担とする。

理      由

 上告代理人長野浩三ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

 1 本件は,居住用建物を被上告人から賃借し,賃貸借契約終了後これを明け渡した上告人が,被上告人に対し,同契約の締結時に差し入れた保証金のうち返還を受けていない21万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。被上告人は,同契約には保証金のうち一定額を控除し,これを被上告人が取得する旨の特約が付されていると主張するのに対し,上告人は,同特約は消費者契約法10条により無効であるとして,これを争っている。

 2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成18年8月21日,被上告人との間で,京都市西京区桂北滝川町所在のマンションの一室(専有面積約65.5m2。以下「本件建物」という。)を,賃借期間同日から平成20年8月20日まで,賃料1か月9万6000円の約定で賃借する旨の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)を締結し,本件建物の引渡しを受けた。本件契約は,消費者契約法10条にいう「消費者契約」に当たる。

 (2) 本件契約に係る契約書(以下「本件契約書」という。)には,次のような条項がある。
 ア 上告人は,本件契約締結と同時に,保証金として40万円を被上告人に支払う(3条1項。以下,この保証金を「本件保証金」という。)。

  イ 本件保証金をもって,家賃の支払,損害賠償その他本件契約から生ずる上告人の債務を担保する(3条2項)。

  ウ 上告人が本件建物を明け渡した場合には,被上告人は,以下のとおり,契約締結から明渡しまでの経過年数に応じた額を本件保証金から控除してこれを取得し,その残額を上告人に返還するが(以下,本件保証金のうち以下の額を控除してこれを被上告人が取得する旨の特約を「本件特約」といい,本件特約により被上告人が取得する金員を「本件敷引金」という。),上告人に未納家賃,損害金等の債務がある場合には,上記残額から同債務相当額を控除した残額を返還する(3条4項)。

  経過年数1年未満   控除額18万円

             2年未満        21万円

             3年未満        24万円

             4年未満        27万円

             5年未満        30万円

             5年以上        34万円

  エ 上告人は,本件建物を被上告人に明け渡す場合には,これを本件契約開始時の原状に回復しなければならないが,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗(以下,併せて「通常損耗等」という。)については,本件敷引金により賄い,上告人は原状回復を要しない(19条1項)。

  オ 上告人は,本件契約の更新時に,更新料として9万6000円を被上告人に支払う(2条2項)。

 (3) 上告人は,平成18年8月21日,本件契約書3条1項に基づき,本件保証金40万円を被上告人に差し入れた。なお,上告人は,本件保証金のほかに一時金の支払をしていない。

 (4) 本件契約は平成20年4月30日に終了し,上告人は,同日,被上告人に対し,本件建物を明け渡した。

 (5) 被上告人は,平成20年5月13日,本件契約書3条4項に基づき,本件保証金から本件敷引金21万円を控除し,その残額である19万円を上告人に返還した。

 3 原審は,本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできないとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。

 4 所論は,建物の賃貸借においては,通常損耗等に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われるものであるのに,賃料に加えて,賃借人に通常損耗等の補修費用を負担させる本件特約は,賃借人に二重の負担を負わせる不合理な特約であって,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから,消費者契約法10条により無効であるというのである。

 5 そこで,本件特約が消費者契約法10条により無効であるか否かについて検討する。

 (1) まず,消費者契約法10条は,消費者契約の条項が,民法等の法律の公の秩序に関しない規定,すなわち任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであることを要件としている。

 本件特約は,敷金の性質を有する本件保証金のうち一定額を控除し,これを賃貸人が取得する旨のいわゆる敷引特約であるところ,居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,契約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り,通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。本件特約についても,本件契約書19条1項に照らせば,このような趣旨を含むことが明らかである。

 ところで,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであるから,賃借人は,特約のない限り,通常損耗等についての原状回復義務を負わず,その補修費用を負担する義務も負わない。そうすると,賃借人に通常損耗等の補修費用を負担させる趣旨を含む本件特約は,任意規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するものというべきである。

 (2) 次に,消費者契約法10条は,消費者契約の条項が民法1条2項に規定する基本原則,すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることを要件としている。

 賃貸借契約に敷引特約が付され,賃貸人が取得することになる金員(いわゆる敷引金)の額について契約書に明示されている場合には,賃借人は,賃料の額に加え,敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって,賃借人の負担については明確に合意されている。そして,通常損耗等の補修費用は,賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても,これに充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には,その反面において,上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって,敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。また,上記補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは,通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から,あながち不合理なものとはいえず,敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできない。

 もっとも,消費者契約である賃貸借契約においては,賃借人は,通常,自らが賃借する物件に生ずる通常損耗等の補修費用の額については十分な情報を有していない上,賃貸人との交渉によって敷引特約を排除することも困難であることからすると,敷引金の額が敷引特約の趣旨からみて高額に過ぎる場合には,賃貸人と賃借人との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差を背景に,賃借人が一方的に不利益な負担を余儀なくされたものとみるべき場合が多いといえる。

 そうすると,消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。

 (3) これを本件についてみると,本件特約は,契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金から控除するというものであって,本件敷引金の額が,契約の経過年数や本件建物の場所,専有面積等に照らし,本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。また,本件契約における賃料は月額9万6000円であって,本件敷引金の額は,上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて,上告人は,本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。

 そうすると,本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず,本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。

 6 原審の判断は,以上と同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


( 裁判長裁判官 金築誠志  裁判官 宮川光治  裁判官 櫻井龍子 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木 勇)

 

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家賃5万8000円のマンション(居住10年)で原状回復費41万円を請求される (愛媛県・松山市)

2011年04月22日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

松山市に住んでいるYさんは、家賃5万4000円、1年ごと契約更新の賃貸マンションに平成12年7月に入居。平成22年12月に退去しました。

 Yさんは、過去に同マンションを退去した人から高額な原状回復費用を請求され、支払ったと聞きました。

 退去前に「原状回復」についてインターネットで検索して、尼崎借地借家人組合を知り、メールを送ってきました。Yさんは、尼崎借地借家人組合と敷金返還、少額訴訟、原状回復、消費者契約法など数回メールのやり取りを行いました。

 Yさんが心配したとおり家主から41万円の修繕見積書が届き、自然損耗分がYさんの負担となっていました。

 家主は、交渉で修繕費を敷金と相殺する提案をしてきましたが、尼崎借地借家人組合とのメール交換で学んだ内容を家主に伝えました。

 Yさんは、2回目の交渉で進展が無ければ提訴も考えていましたが、双方修繕費14万5000円で合意しました。

 インターネットの普及で相談が解決でき、数百キロ離れたところに会員が誕生しました。「ネット」の影響の大きさを改めて痛感しています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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敷金から修繕費「高すぎなければ有効」 最高裁判決 (朝日)

2011年03月24日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 賃貸住宅の敷金(保証金)を返す際、修繕費として一定額を差し引くと定めた契約条項(敷引=しきびき=特約)は消費者契約法に反するか――。この点をめぐって家主と借り手が争っていた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は24日、「不当に高額でなければ特約は有効」とする判決を言い渡した。

 敷引特約は関西を中心とした商慣習。「消費者の利益を不当に害する契約は無効」と定める消費者契約法が2001年に施行された後、地高裁段階では特約を無効とする借り手側勝訴の判断が相次いでいた。今回の判決は、特約そのものは無効ではないと認めた最高裁の初判断で、同種訴訟に影響を与えそうだ。

 争われたのは、06年8月~08年4月に京都市内のマンションの一室を借りた男性が、敷金40万円のうち特約で差し引かれた21万円の返還を家主に求めた裁判。家賃は月9万6千円だった。

 第一小法廷は、通常の使用による修繕費まで借り手に負担させる敷引特約について、「消費者の義務を重くするものだが、修繕の必要性や金額をめぐるトラブルを防ぐ意味で不合理とは言えず、借り手の利益を一方的に害するものではない」と指摘し、一般的な有効性を認めた。

 ただし、借り手側は修繕費に詳しくないことや家主側と交渉力に差があることを考慮し、「通常の修繕費、家賃額、礼金の有無などに照らして、差し引く額が高すぎる場合は無効になる」と述べ、額によっては違法となる余地は残した。

 今回の事例については、差し引く額が賃借期間に応じて18万~34万円で家賃の2倍弱から3.5倍強にあたり、礼金の支払いもなかったとして「高すぎるとは言えない」と判断した。家賃の何倍なら不当に高額になるかという基準は示さなかった。

 借り手側は「通常の使用によって生じる修繕費は家賃に含まれており、敷金から差し引けば二重の負担になる」と訴えたが、判決は「特約が成立している場合は、修繕費は家賃に含まれていないとみるべきだ」と退けた。

 08年11月の一審・京都地裁、09年6月の二審・大阪高裁も特約を有効と認め、借り手側が敗訴していた。(延与光貞)


2011年3月24日 asahi.com (朝日新聞)



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【Q&A】 「敷金の返還」

2011年03月08日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

【問】 借家を明渡したのですが、家主は、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用が掛かるからと言って敷金を返してくれません。このような場合には敷金を返す義務は無いのでしょうか。


【答】 敷金は、借家契約に際して、借家人の賃料債務その他の債務を担保する目的で、借家契約が終了した際に借家人の債務が残っていれば、その額を差し引いた残額を、債務がなければ全額を借家人に返すという約束で、借家人から家主に支払われるお金です。

 敷金が担保とする債務とは、借家人が家主に対して負う一切の債務です。

 問題は「畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用」が借家人が負担すべき債務と言えるかどうかです。

 民法は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」(民法606条1項)として、家主に修繕義務を課しています。畳の表替えや壁の塗替え(壁紙の張替え)が修繕に当ることは明らかです。

 他方、民法は、借家人に対して「善良なる管理者としての注意義務」(これを善管注意義務といいます)をもって借家を使用するよう求めています(民法400条)。

 畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)は、普通の使い方で住んでいても一定の年月が経てば必要になる性質のものです。したがって、その必要が生じたからといって、それを借家人の落度、つまり借家人の善管注意義務違反であるということはできません。普通の使い方をしていたのであれば、その費用は家主が負担すべきものです。家主の言い分は誤りですから、敷金全額を返すよう請求できます。

 では、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)が、借家人の使用上の落度から必要になった場合はどうでしょうか。この場合は、借家人に善管注意義務違反があるということになりますから、家主はこれによって被った損害、すなわち畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用を借家人に請求することができます。借家人が返してもらえるのは敷金からその費用を差し引いた残額だけということになります。

 ところで、敷金を返さなければいけない家主の義務(敷金返還義務)と借家を明渡さなければいけない借家人の義務(目的物明渡義務)地は同時履行の関係にあります。同時履行の関係とは、互いの義務を同時に果たすべき関係のことです。ですから明渡す前に家主との間で反感されるべき敷金の金額を確定したうえで、その敷金の返還を受けるのと同時に明渡に応ずるという姿勢を取ることが必要です。

 なお、借家契約の中に、一定の事由がある場合には敷金を返さない、すなわち没収するという特約があることがあります。このような特約があっても、借家人に落度がない場合にまで敷金を返さないということは無効ですから、諦めないで下さい。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「貸ビルの保証金と家主の変更」

2011年03月02日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

【問】  貸ビルの保証金は家主が変わった場合、どうなるのでしょうか。


【答】 ビルの賃貸の場合には、借主が保証金という名称で、賃料の数10か月分にも相当する額の預託金を支払うのが通例になっているようです。敷金が賃料不払など借主の契約不履行に基づく損害賠償の担保であり、契約不履行がなければ全額返還されるものを意味するのに対し、保証金と呼ばれる預託金は、もともと担保のほか契約期間の賃貸借契約が継続されることを保証するため設けられたものです。それは借主が中途解約した場合、何割かが違約金として差し引かれ、また一定期間経過すると一定割合により償却という形で貸主のものになる取り決めをもつものがほとんどです。

 ではこれらの預託金の返還は、どのようになるのでしょうか。償却に関する実態は今触れましたが、それ以外の点では、これらの預託金も敷金と違いはないと考えられるので、特別な取り決めがない以上、貸ビルの明渡と同時に返還されるべきものです。またビルの所有者が変わった場合でも新所有者は預託金返還義務を含めて貸主の地位を引き継ぐものですから、借主は新しい貸主に対して返還を求めることができます(最高裁昭和44年7月17日判決 判例タイムズ239号153頁)。

 これら預託金の返還時期について「保証金は明渡の3か月後に返還する」などという取り決めのあることがあります。これは借主に一方的に不利で不当な条項ですが、さりとてそれは無効として明渡と同時に返還せよという法的根拠もないのです。

 貸ビル所有者が交替する場合には、保証金を旧所有者から一旦返還を受け新所有者に改めて貸渡すか、あるいは、旧所有者・新所有者とあなたとの間で、保証金を、旧所有者から新所有者に引き継ぐものとする契約を交わしておくことが重要です。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「保証金の償却と補充」

2011年03月01日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

【問】 保証金200万円を払って店舗を借りました。契約は、期間3年で保証金は年1割ずつ償却し、更新時に償却分を補充することになっています。償却分は払わなければならないのでしょうか。


【答】 一口に保証金といっても、その性質は一様ではなく、①敷金の性質をもつもの、②権利金の性質をもつもの、③更新料の性質をもつもの、④建設協力金としての性質をもつもの、⑤貸金としての性質をもつもの、⑥即時解約金としての性質をもつものなど様々です。勿論、これらの性質を幾つか併せ持つものも多くあります。

 従って、契約書にどのような性質をもつ保証金かが書いてあればそれを基準に判断することになりますが、通常は保証金とだけ書いてある契約書がほとんどです。この場合は、様々な状況を考慮して、その保証金がどの性質をもつかを判断することになります。

 あなたの場合、償却され補充される部分の保証金は、②権利金もしくは③更新料の性質をもつものと考えられます。

 まず、家主と合意の上で契約を更新する場合(合意更新の場合)には、②③のいずれの場合にも償却分を補充する義務があると考えられます。なぜなら、保証金の補充を条件として更新する途を任意に選択した以上、その約束を特別な事情(例えば、その金額が合理的・常識的な範囲を超えるときは、暴利行為として民法第90条により無効になると考えられます)がない限り、借地借家法上当然に無効とする根拠がないからです。

 次に、家主との合意によらずに借地借家法に定められた法定更新によって契約が更新された場合には、保証金の性質によって異なる取扱いがされる可能性があります。

 ②の権利金の性質をもつ保証金の場合、法定更新の場合に償却部分の保証金を実質は前払賃料であるとして、家主からの償却分の補充請求を認めた判決があります(東京高裁昭和56年9月30日判決)。

 また、契約の時に、更新時には賃料の8か月分相当の保証金を支払うという約束をしたのに借家人がこれを支払わなかった場合に、この保証金が低額賃料の補充及び営業利益の対価という性質を持ち更新後の契約の重要な要素で家主・借家人間の信頼関係を維持する基盤を形成しているという理由で借家契約の解除を認めた判決もあります(東京地裁昭和59年12月26日判決)。

 しかし、借地借家法の定めでは、家主に更新拒絶について正当事由が認められない限り、借家契約は従前と同一の条件で当然に更新されることになっており、保証金の補充・更新料の支払いなどは更新の条件になっていないことを考えると、これらの判決には問題があります。

 ③の更新料の性質をもつ保証金の場合、原則として補充義務はないとする説が有力で、これに沿う判決もあります(東京地裁昭和56年4月27日判決)。

 ただし、前記の東京地裁昭和59年12月26日判決の保証金を実質的には更新料であると考える見解もあり、注意を要します。

 なお、あなたに契約上不利な事態が生じている場合(例えば、建物が著しい老朽化や賃料不払その他契約違反などがあった場合など)には、家主の更新拒絶が認められる可能性があります。このようなときは、償却分の補充をして契約関係を安定させた方が安心です。

 また保証金の性質は、最終的には裁判所が決定することで、償却分の補充義務についても考え方が分かれています。補充を拒絶するかどうかは、種々の状況を見て慎重に決定することが重要です。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 督促手数料3000円は消費者契約法に違反

2010年11月22日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

(問) 不動産会社から2DKの賃貸マンションを借りています。建物所有者から不動産会社が一括して借り上げでサブリースしています。賃貸借契約書には家賃は月末払いで、翌月分を前払いすることが特約されています。非正規雇用で働いているため、賃金の支払いが時々遅れてしまうため、契約書に書いてある督促手数料として3000円を支払っています。たった1日遅れても3000円を請求されています。支払わなければならないのでしょうか。



(答) 不動産業者の作成する契約書には家賃の支払いが遅れた場合に法外な違約金を請求する事例がよくあります。消費者契約法第9条2号では、消費者である賃借人が支払期日までに支払い義務のある金員を支払わなかった場合の損害賠償の額及び違約金の上限を年14.6%と定め、それを超える部分を無効としています。

 僅か数日遅れても3000円を徴収する契約書の督促手数料の条項は明らかに消費者契約法に違反しています。

 不動産業者の作成する賃貸借契約書の中には、退室時の原状回復条項や契約解除条項などの中に消費者契約法第10条の消費者の利益を一方的に害する条項にあたる契約事項を賃借人に押し付けている例が、最近の「礼金・敷金ゼロ」のゼロゼロ物件などに多くなっていますので注意が必要です。

 ご相談の「督促手数料」など消費者契約法に反する条項は無効となりますので、契約書に書いてあるからと諦めることはなく、支払いを拒否すると同時に過去に支払った督促手数料の返還を請求することも可能です。

 

全国借地借家人新聞より

 


 

【関連法令】消費者契約法

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第9条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

 二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6%の割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分


(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条  民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

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店舗契約の敷金の80%を返還させる (神奈川・平塚市)

2010年11月17日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 平塚市新町でSさんは長年飲食店を経営してきたが、不況の影響により、やむを得ず閉店して退去しました。

 店舗契約時に預託していた敷金(75万円)を返還請求しましたが、家主側から無視され、困惑したSさんは消費者センターに相談して組合を紹介されました。組合に加入して協力要請があり、Sさんと協力して、家主との交渉を開始。配達証明郵便にて敷金全額返還請求を発送した結果、家主側より回答があり、書面では詳細が不明であり、直接面談の申し入れがありました。

 現地店舗にて話し合い「国土交通省のガイドライン」を参考に説明して前向きに検討を重ねた結果、家主側も納得しました。敷金返還金(60万円)で合意に至り、解決できました。

 Sさんに伝えたところ、「組合の努力で解決して頂き大変助かりました」と喜んで「これからも何かあるかもしれないので組合を継続していくのでよろしく」と確約してくれました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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