東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 新築建物再入居の約束を家主が破った場合に損害賠償が認められた事例

2006年10月07日 | 借家の諸問題

  判例紹介

 建物の賃貸人と賃借人の間で、建物を撤去し新築建物を賃借人に賃貸するとの協定が成立したが建物撤去後賃貸人が新築建物の賃貸借契約の締結を拒否したため、賃貸人に損害賠償責任が認められた事例 静岡地裁平成8年6月17日判決、判例時報1620号122頁)

 (事案の概要)
 X(借主)はY(貸主)から本件建物を賃借してスーパーを経営していたが、市道拡幅のためS市から店舗移転の申し入れがあり、XとYは、本件建物を撤去して新たな店舗建物を建築することに合意し、新築建物に関する賃貸借契約の締結等を趣旨とした本件協定を締結した。本件建物は撤去されたが、敷金の保全等のための文書の作成をめぐってXとYが対立しY(貸主)は新築建物に関する賃貸借契約の締結等を拒否した。X(借主)は、本件協定違反に基づき、また、新築建物に関する賃貸借契約の成立を前提に右契約違反に基づき、Y(貸主)に対し損害賠償を求め提訴した。

 (判決)
 本判決は、本件協定が新築建物の賃貸借契約やその予約に該当しないと認定したうえで、「Xにおいて無償で本件建物に対する賃借権の経済的価値を放棄する理由も、Yにおいて、無償で右賃借権消滅の経済的利得を収める理由ないから、法律上、本件建物の賃貸借と本件協定に係る新築建物を目的とする賃貸借は別個のものであるとしても、経済的には本件建物に対する賃借権に相当する価値を新築建物に移行させるとするのが、X及びYの意図であったものと認めるのが相当である。そうすると、本件協定に基づき、Yは信義則に則り、Xと協力して、XとYとの間に、本件協定所定の事項に反しない規模の新築建物を目的として、本件協定所定の事項を内容として取り入れた賃貸借契約を締結するべき責務を負担した」と判示したうえで、賃貸借契約が締結されなかった場合にYが右責務不履行責任を負わないのは、
①X自らが契約締結を放棄した場合、
②本件協定所定の事項以外の契約内容についてYが合理的な提案をしたのにXが理由なくこれに応じず契約内容が確定しなかった場合、
③契約締決の過程でXに契約存続中であればその解除事由となる程度に重大な信頼関係破壊行為があった場合等に限られるとし、
本件ではこのような事実はないとしてY(貸主)に損害賠償責任を認め
X(借主)の損害の範囲は
新築建物を目的とする賃借権を取得できなかったことによる損害、すなわち、当該賃借権の価値相当額、
新築建物と同程度の建物を他に賃借するまでに通常要する期間の損失の利益とによって構成される旨判示した。

 (寸評)
 新築建物に再入居する約束で建物を明渡す例があるが、本件は、家主がこの約束を守らなかった場合に家主に損害賠償責任を認め、借家人が請求できる損害の範囲を明らかにしたもので、参考になる判例である。

(1998.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 中途解約した場合の違約金条項が公序良俗に違反し一部無効とされた事例

2006年10月06日 | 契約・更新・特約

  判例紹介

 期間の定めのある賃貸借契約において、中途解約した場合の違約金条項が賃借人に著しく不利益であるとして、公序良俗違反を理由に一部無効とされた事例 東京地裁平成8年8月22日判決、判例タイムズ933号)

 (事案)
 期間4年の賃貸借契約をした借家人が10か月後に契約を解約した。期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了までの賃料相当額を違約金として支払う」旨の特約条項があった。家主は、右特約に基づき、3年2か月分の賃料相当額である6321万円余の違約金を請求した。

 (判決要旨)
 「建物賃貸借契約において1年以上20年(注)以内の期間と定め、期間途中での賃借人からの解約を禁止、期間途中又は解除があった場合には、違約金を支払う旨の約定自体は有効である。しかし、違約金の金額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能になり経済的に弱い立場にあることが多い賃借人に著しい不利益を与えるとともに、賃借人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効と評価される部分もある。
 本件で請求されている違約金は、被告会社が本件建物の6階部分を解約したことにより、実際に6階部分を明渡した日から契約期間満了日まで3年2カ月分の賃料及び共益費相当額である。被告会社が本件建物の6階部分を解約したのは、賃料の支払を継続することが困難であったからである。原告は、契約期間内に解約された場合には、次の賃借人を確保するには相当期間を要すると主張しているが、被告会社が明渡した本件建物について、次の賃借人を確保するまでの要した期間は、実際には数カ月程度であり1年以上の期間を要したことはない。以上の事実によると、約3年2カ月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人である被告会社に著しく不利であリ、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効である。

 (説明)
 賃貸契約書では、賃借期間中の賃料は月額132万円から311万円の増額が予め定められていた。賃料が払えないから解約しているのに借家人から契約期間全部の賃料を違約金名目で取り上げることは借家人に著しく不利であり、家主はその間第三者に賃貸して賃料を得ることができる。賃料の二重取りを許す本件特約は不公正で無効と判断した。
 テナントビルの入居率が下がっている状況の中で一度入居した借家人からとことん儲けようとする特約に歯止めをかけた判決である。

(1997.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 (注)2000年法律153号により、定期借家制度の導入に併せて、借地借家法第29条に第2項が加えられた。即ち、「民法第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない」。これにより賃貸借の最長期間を20年に制限する民法604条は、建物の賃貸借には適用されないことになったので、期間が20年を超す借家契約も認められることになった。2001(平成12)年3月1日から実施されている。

 

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残存期間数か月という借地権の処分が解決した (東京・台東区)

2006年10月04日 | 地上げ・借地権(底地)売買

  Mさんは台東区浅草4丁目に約18坪の借地があり、12月末で20年の借地契約が満了する。借地上の建物は店舗兼用住宅として貸していたが、老朽化が進み修繕をするよりは新築した方が安上がりという見積りである。賃借人も見切りをつけて既に建物を退去している。 

 Mさんは来年、定年を迎えるので将来のために出来るだけ生活費として蓄えて置きたいと思っている。今更、借金までして新築する考えはないので借地の更新は諦め、地主に借地の返還を申し入れた。すると、地主は建物を借地人の自己費用で解体し、更地での返還を要求してきた。建物の解体費用を借地人が自己負担する義務があるものなのかを組合に相談してきた。

 組合は、建物買取請求権を行使すれば、「借地借家法」13条1項により解体費用を負担する必要はなくなくなるが、それよりも借地権を第3者に譲渡した方が借地人にとって利益が大きいと説明した。ただし、借地の残存期間が僅かしかないので売却は難しいかもしれないと説明した。

 取敢えず、台東借地借家人組合の組合員である(株)Rの協力を得て、「借地借家法」19条に基づいて東京地裁に借地権譲渡代諾許可の非訟手続を行った。Mさんは譲渡の実務処理を総て(株)Rに任せ、借地権譲渡の手続を進めてもらった。

 裁判所での譲渡代諾許可の非訟手続きの中で地主は借地権の買取を拒否したので、最終的に(株)Rが借地権を買取ることで決着した。Mさんは、地主への譲渡承諾料、弁護士費用、裁判所の費用等の金銭的なものは総て(株)Rが立替払いしてくれたので何の金銭的負担もなく、借地権譲渡が完了した。

 (株)Rとの間で借地権の売却代金と立替払分等を清算し、結果的にMさんはマンション購入資金の頭金を手に入れることが出来た。

 Mさんは、「インターネット で台東借地借家人組合のホームページを見ていなかったら、そして組合に入会していなかったら(株)Rを紹介してもらえず、結果的にマンション購入の頭金を手に入れることが出来なかったし、建物解体費用を自己負担していただろう」と感想を述べていた。

 

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【Q&A】 店舗契約における営業委託契約には要注意

2006年10月03日 | 契約・更新・特約

    店舗契約では借地借家法を回避する
     脱法的な営業委託契約があるので要注意

 (問) 6年前から建物所有者から厨房設備一式を居抜きで引継ぎ、テイクアウトの焼餃子屋を営業しているが、最近、期間が満了したから明渡してくれと言われている。契約は建物賃貸借ではなく、営業委託となっている。しかし、貸主は営業には全く関与していない。契約時から委託料は定額となっており、事実上は家賃である。従って、実質は建物賃貸借と思われるので、私の場合、借地借家法の適用を受けるのではないか。


 (答) 貸店舗では、契約内容によって借地借家法の保護を受けるかどうかで大きな差異がある。
①純然たる店舗賃貸借契約。使用者が場所使用の対価として賃料を支払う。これに対しては借地借家法が適用される。

経営或は営業委託契約。店舗使用者(借主)は、売上の一定割合を報酬として営業委託者(貸主)に支払う。この場合は、借地借家法の保護はなく、貸主はいつでも営業委託契約を解除し、借主に対し店舗からの立退きを請求出来る。使用契約が容易なため、借地借家法を回避するための方法として利用されている。

 今回の相談者と同様の問題で争われた裁判例で検討してみる。賃借人は契約書では経営委託契約になっているが、実質は建物賃貸借であると主張し、賃借権の確認を求めて提訴した。一審では賃借人が敗訴し、二審で逆転勝訴した。

 裁判所は「本件契約書では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗の経営は経営者の名義で、その計算と裁量により行われ、建物オーナーがその経営に関与することはなく、分配金、共益費の名義の金員は店舗経営による収益にかかわりなく定額であることからすると、本契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって経営者に本件物件を内装、器具を飲食店のために自由に使用収益して、その収益の取得することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである」(大阪高裁1997年1月17日判決

 委託か賃貸借かの分かれ目は、経営権の実質が受託者(借主)にあって委託者(貸主)は一定額の金銭を受領するに過ぎないものであるか否かということにある。相談者の場合は、判例に照らしても明らかのように、借地借家法の適用がある建物賃貸借と認められる。

  借地借家法の適用があるということになると、期間が満了したからといって当然には契約関係は終了しない。貸主に正当事由がなければ解約の申入れは出来ず、契約は自動的に法定更新される(借地借家法法26・28条)。従って相談者は営業を引続き行えることになる。

 

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【判例紹介】 借地人提供の地代を地主が内金として受領したことが受領拒絶に当たる

2006年10月02日 | 弁済供託

 判例紹介

 地主が地代値上げ請求後、借地人から従前額の地代の支払を受けるに際してこれを内金として受領する旨通知したことが、原則として賃料全額の支払に対する受領拒絶に当たるとして、弁済の提供を欠く供託が有効とされた事例 東京地裁平成5年4月20日判決、判例時報1483号59頁)

 (事実)
 地主が借地人に対して、従前額の約6倍の時代値上げ請求をしたところ、借地人はこれを不当と考え従前額の地代を銀行振込で支払った。 

 ところが、地主は借地人に対し、振込まれた従前額を増額請求した地代の一部として受け取る旨通知した。そこで借地人は、以後、地主に提供することなく、従前額の地代を供託した。

 その後、土地の相続人から借地人に対し賃料不払を理由に借地契約を解除する旨の意思表示をして、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。

 (争点)
 地主が借地人の提供する従前額の地代を内金として受領する態度をとったことが受領拒絶に当たるかどうかである。

 (判決の要旨)
 裁判所は、借地人は値上げを正当とする裁判が確定するまでは相当と認める地代の支払義務を負担するが、これは必ずしも客観的な相当な地代であることを要しないのであるから、相当と認める額の地代の支払は債務の本旨に従った弁済であって一部弁済ではない。したがって、地主が地代の内金として受領する旨意思表示をしたことは、特段の事情がない本件においては、地代全額の支払として受領拒絶するとの意思を明らかにしたものと解するのが相当として、弁済の提供を要せずして受領拒絶を理由として直ちに供託をすることができ、地代不払の債務不履行はないとした。

 (短評)
 賃貸人からの賃料増額請求に対し賃借人が相当賃料として従前額を提供したとき、賃貸人がこれを賃料の内金として受領すると主張する事例がしばしばみられる。

 この場合、賃借人としては、賃貸人から賃料の一部であると言明されながら、これを支払うことは、残りの賃料差額の支払義務を暗に認める結果になるのではないかと危惧し、他方では(一部とはいえ)賃料として受領するという以上、強いて、これを持ちかえって供託をした場合その供託が有効かどうかと思い迷うものである。

 本判決は、内金受領の意思表示は賃料全額の支払としては受領拒絶するとの意思を明らかにしたものと解したもので、賃借人にとっては、活用できる判決といえる。

 しかし、他方、裁判例の中には増額賃料については裁判で確定するから従前賃料額を持参されたい旨の催告があったにもかかわらず、現実の提供することなくした供託が無効とされた例がある名古屋地裁昭和47年4月27日判決、判例時報689号92頁)。裁判例が分かれている以上、実務的には、賃貸人が賃料内金として受領する場合には、賃借人としては支払った上、それが賃料全額であることを明確にしておくというこれまでの方針を引続き採るべきであろう。       

(1994.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


【判例紹介】 家賃の増額請求の際の内金受領が賃料の受領拒否に当たるとされた事例

 

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