東京・台東借地借家人組合1

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地主から「更新に際し、更新料を支払う意思はあるのか」という通告文が送られてきた。

2022年02月09日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

(問)地主から更新に際し、「更地価格の3%程度の更新料を支払う意思はあるのか」という通告文が送られてきた。

 内容は、次のような趣旨の文面だった。

「本件賃貸借契約は、本年10月31日をもって終了します。私共は、現時点では本契約の更新はしたくないと考えております。・・・更新を希望するのであれば本件土地の更地価格の3%程度の更新料を支払う意思があるかについてご回答いただきたい。なお、回答は本書面到達後2週間以内でお願いします」というものでした。

 更地価格の3%程度の更新料というと約240万円程です。借地契約書には更新料を支払う特約の記載はありません。コロナ禍で支払う余裕がありません。どうしても支払わないと借地契約は更新できないのでしょうか。


(答)結論を先に書きます。更新料を支払う約束をしていないので、更新料を支払わなくても、借地契約を解除されることなく、借地の更新はできます。

 借地契約の期間満了後、借地契約は「借地法」6条の規定に従って自動更新される。再度、地主側と借地契約書を取り交わさなくても、法律の規定によって、自動的に更新される。従前の契約がそのまま継続されるので、借地契約を結び直す必要はない。

 なお、本件借地契約は、「借地借家法」施行前に設定された借地権なので、「借地借家法」附則6条により「契約の更新に関しては、なお従前の例による」ということで、旧「借地法」が適応される。

 以下の回答文は、地主に更新料支払裁判行っても、敗訴することを理解してもらうためのものです。無駄な裁判を提訴させないための防御例文です。

 

(1)<更新料に関する回答>として、更新料支払い請求裁判の判例を資料として提示します。

一審・・・東京地裁昭和48年1月27日判決(判例時報709号53頁)

控訴審・・・東京高裁昭和51年3月24日判決(判例時報813号46頁)

上告審・・・最高裁昭和51年10月1日判決(判例時報835号63頁)

<事案> 昭和41年7月、借地期間満了前に賃対して、更新料を希望するならば、更地価格の5~10%(3.3㎡当たり2~4万円)の更新料の支払いを求めた。賃借人は3.3㎡当たり5000円なら払えると回答したが、折り合いがつかなかった。その後、弁護士のアドバイスを受けて、更新料の支払いを拒否した。

 昭和41年12月、賃貸人は賃借人に対して、①建物収去・土地明渡を求め、東京地裁に提訴した。②予備的に更新料支払の商習慣ないし事実たる慣習が存在するから、本件土地の更地価格の8%に相当する78万円余の更新料の支払を訴求した。

1、一審は、借地契約の法定更新に当たって賃貸人の請求があれば、更新料支払い義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習があることは認められない。仮に、そのようなものがあるとしても借地法11条の規定の精神に照らし、その効力を認めることができない。それらのことから賃貸人の主位的請求①と予備的請求②をいずれも棄却した。

2、控訴審も、一審と同旨を述べて、賃貸人の控訴を棄却した。

3、上告審は次のとおり判示し、賃貸人の上告を棄却した。

宅地賃貸借契約における賃貸借期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば、当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するものとは認めるに足りないとした原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、是認することができ、その過程に所論の違法はない」(最高裁第二小法廷昭和51年10月1日判決

(2)上記の事案は、契約書に更新に際して更新料を支払うという旨の約束事項が記載されていなかった。従って、法律的には更新料の支払いを請求する根拠がないない訳である。そこで賃貸人は苦肉の策として、地主本人の勝手な解釈に基づいて、更新料支払いの「慣習法」が既に広く成立しているということを根拠に更新料を支払えと主張した。勿論、裁判では全く認められず、結果は完敗であった。

(3)次の判例も上記と同趣旨の判例です。

最高裁昭和53年1月24日判決(昭和52年(オ)第1010号)>

建物所有を目的とする土地賃貸借における賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求請求に基づき当然に賃借人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない

昭和51年10月1日最高裁判決と同様に「更新料の支払合意がない借地契約」の場合は、賃貸人の一方的な更新料支払請求を一切認めていない。

(4)<東京地裁平成20年8月25日判決>

1、<事案>平成20年2月に借地契約は法定更新された(3回目の更新)。

しかし、賃貸人は旧「借地法」の規定によって「借地契約は前契約と同一条件で借地権は設定されている」にも拘らず、150万円(土地時価の5%)の更新料を請求して提訴した。借地契約書には一切更新料に関する支払特約の記載がなかった。

2、判決は<最高裁昭和51年10月1日判決>を引用して、次のように判示した。

宅地賃貸借契約における賃貸借期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば、当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するとはいえない」(最高裁第二小法廷昭和51年10月1日判決)として、賃貸人の更新料支払い請求を棄却した。

(5)以上、判例を検討した結果、次ののような結論になります。借地契約書に「更新に際して更新料を支払う旨の特約」が書かれていない場合、更新料を請求する法的根拠は存在せず、更新料の支払い義務は発生しない。これらのことは判例上既に確立した事実となっている。

(6)今回の更新料支払い請求に対する回答は以下のようになります。

 契約書に更新料支払い特約が書かれていない場合の更新の支払い請求は、法律的には無効ということが判例上明確な結論となっています。従いまして、今回の更新料の支払い請求に関しましては、最高裁の判例の結論に付き随うことにします。

 

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【Q&A】 地代値上げの文書が届いた。20日後までに回答を求められている。

2022年02月07日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 (問)<賃料の増額について>という文書が地主から送られてきた。

 次のような趣旨の文面です。「本件土地の地代は月額11万4000円(内訳は借地面積76坪で、1坪当たり1,500円)ですが、4月以降月額26万円に増額したいと考えております。貴殿におかれては、上記増額にご同意いただけるか、ご同意いただけないのであれば、いくらまでの増額であれば同意できるのか、端的にご回答いただくようお願いいたします。端的な回答がなければ、増額を拒否したものと受け取らせていただき、その後は裁判手続きに進ませていただきます。」

文書到達後、20日以内の回答を求めています。どのような回答をすればよいのでしょうか。


 

 (答)以下が地主への回答例です。

       <先般受け取った通知に対する回答>

(1)「借地借家法」11条1項に「地代等」の増額請求権の「成立要件」として、次のように規定しています。

 ①公租公課の増加により、

 ②土地価格の上昇、その他経済事情の変動により、

 ③近傍類似の土地の地代に比較して不相当となったとき

  以上の「法律要件」が満たされたときは契約の条件にかかわらず、将来に向かって地代等の増額請求ができると規定しています。 

(2)現行地代11万4000円を2022年4月以降に26万円に増額したいのであるから、当然上記の「法律要件」を充足する明確な算定資料に基づいて計算された結果による増額請求だと思います。

 「法律要件」を満たす客観的な算定資料の提示をお願いします。資料の提示を頂ければ、算定資料を検討し、増額理由に十分納得が出来れば、言うまでもなく増額には応じる所存でございます。

 地代の合意をするためにも、納得ができる算定資料に基づいた方が当事者間の合意形成は速いと思います。裁判も考えておられるならば、裁判に耐えられる客観的な資料に基づいた増額の主張は重要だと思います。

(3)「借地借家法」11条2項に次のように規定されています。

 「地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。」と規定しています。

地代額は当事者間の協議による合意で決定されることが原則です。一方的な増額請求で地代が決定される理由にはならないと条文から判読できると思います。

(4)現在、地代の改定に関しては当事者間の協議もなされず、当然地代増額の合意も成立していません。「借地借家法」11条2項の規定に従って地代の増額改定合意が成立するまでは、賃借人が「相当と認める額」を支払います。

 「相当と認める額」は賃借人が「主観的に相当と認める額」とされ、賃借人の相当額が裁判所の認定額に満たなかった場合でも、賃借人が主観的に判断する相当額の賃料を支払うことで債務不履行の責を負わない」(最高裁平成5年2月18日判決)。

 以上から勘案すると賃料の合意が成立、または裁判所の判断する適正賃料が確定するまでは、賃借人が「相当と認める額」である従前賃料11万円4000円を支払いますので、お含み置きください。

 

 

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最高裁判例 借地契約書に更新料支払い特約がない場合は、更新料の支払いを拒否できる

2022年02月04日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

宅地賃貸借契約の更新に際し、賃貸人の一方的な更新料の支払い請求に対し更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習はないとして更新料請求を認めなかった事例


       主   文


 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


       理   由


 上告代理人小林宏也、同本多藤男、同長谷川武弘の上告理由第1点について
 原審が適法に確定した事実関係によれば、被上告人の所論所為をもって、未だ本件賃貸借契約の継続を不可能又は著しく困難ならしめるものとは認めるに足りないとした原審の判断は、正当として是認できる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。


 同第2点について
 宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するものとは認めるに足りないとした原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、是認することができその過程に所論の違法はない。論旨は、畢竟、独自の見解を主張するものであって、採用できない。


 同第3点及び第4点について
 記録及び原判決事実摘示に照らし、所論の点に関する原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用できない。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


   最高裁裁判長裁判官大塚喜一郎、裁判官岡原昌男、同吉田豊、同本林譲、同栗本一夫

 

 

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