東京・台東借地借家人組合1

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【借地借家 豆知識】 供託ができる原因とは

2012年03月19日 | 弁済供託

 供託とは、借地借家人に支払い義務のある地代・家賃を貸主が受領しない場合に、法務局に地代・家賃(賃料)を供託して債務を免れる(賃料支払義務履行)制度をいいます。

 どういう場合に供託すると有効になるのかというと、①借主が貸主に賃料を提供しても受領を拒否された場合、②貸主が賃料を受領することができない場合(貸主が行方不明になった等)、③借主に責任がなく貸主が誰か知ることができない場合(貸主側に相続が発生したが相続人が誰か確定していない等)の原因によって供託することができます。

 したがって問題が発生し、未解決のまま多分受け取らないだろうとか、貸主も督促に来ないから自分から支払に行くのが面倒だからといって勝手に供託しても、供託の要件を満たしたことになりませんので、このような供託は無効となり、債務が履行されていないことになり、賃料不払いとなってしまいます。

 また、よく問題となるのは賃料が高すぎるからといって、貸主が値下げ額に合意しないのに借主が勝手に値下げした金額を供託しても、供託は無効になります。賃料値下げについては、貸主に賃料の値下げを請求し、貸主が値下げに応じない場合には賃料減額の調停を申立、値下げが調停で確定されて始めて賃料を減額することができます。賃料値下げが確定するまでは従前の賃料を支払い続けるしかありません。

 供託書は現在OCR用紙になり、供託カードで一度登録すると2度目の供託からは5箇所の記載だけでOKとなります。法務局に持参できない方は郵送による供託も可能で、法務局指定の銀行に振込みます。

 供託は貸主が東京23区にいる場合は千代田区九段の東京法務局が管轄となります。賃料の支払場所が多摩地域ですと、府中八王子西多摩の3箇所の法務局に供託します。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地主が大阪の地上げ屋に土地を売却 (東京・大田区) 

2012年03月16日 | 弁済供託

 大田区南馬込地域に約30坪を借地しているAさんの地主は契約期間満了を2年後に控えた一昨年3月に、底地を大阪市の建設業者に売却した。

 新たな賃貸人の建設業者は想定通り代理人を介して、借地権を売却を求めてきたが、Aさんは住み慣れた居住地であり、他に移転する意思はないと拒否する。今度は例の如く土地の買取を求められたが、Aさんはいずれの請求にも毅然とした態度で丁寧に断った。

 さらに、Aさんは地代の支払いについて、前賃貸人同様に銀行口座を開設し振込みによる支払い方法を求めたが回答はなく、改めて建設業者に書面にて回答がない場合は、やむを得ず地代を供託すると通告するが、回答はなかった。

 東京法務局での供託を考えて、地代の支払い方法に関して誠意ある回答ない状況なので、前賃貸人は地方に居住のために、賃借人の居住地の銀行口座に振り込みをしていたことを説明して相談。法務局の見解は、民法の規定により債権者の現在の住所において供託せよとのことだった(註)。

 大阪法務局への供託手続きは用紙の送付に供託金の送金と手間と経費がかかるが、Aさんは頑張って手続きをしている。

 

東京借地借家人新聞より


 ここからは、東京・台東借地借家人組合。 

 弁済供託することができる法律要件(民法494条)は、
①債権者が弁済の受領を拒絶、
②債権者が受領不能(不在、住所不明、行方不明等)、
③過失なくして誰が債権者か確知することができないとき(相続があって誰が相続したか不明の場合、または、相続人は判明しているが、相続の分割割合が判らない場合等)、
以上の3つの場合である。これらに該当しない場合は無効の供託になる。

 弁済供託が出来る場合の典型は、賃借人が口頭で賃料を現実に提供したのに、賃貸人がその受領を実際に拒絶した場合である。賃料の提供は原則として、現実の提供をなすべきであるが、債権者が予め受領を拒むときは、債務者は現実の提供を必要とせず、口頭の提供(弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告すること)をするだけでもよい(民法493条)。

 底地を買った建設業者の所有権移転登記が完了していなければ、最高裁の判例では登記簿上の土地所有者(従前の地主)に賃料を提供するのが正解とされている。即ち、「所有権移転登記をしない限り賃借人に対して所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を主張することが出来ない。譲受人の移転登記がない場合には賃料請求をすることが出来ない最高裁1974(昭和49)年3月 19日判決)とされている。また、「登記簿上の所有名義人は反証のない限り当該不動産を所有するものと推定される」(最高裁1959(昭和34)年1月8日判決)。

 供託要件の②であれば勿論それを理由に弁済供託している筈である。以後、この記事に書かれていることが、当然、登記簿謄本で、建設業者の所有権移転登記が完了し、建設業者が土地所有者であることを確認していることを前提として論ずる。

 上記のAさんの場合、口座振込の依頼に対する回答がなかった場合は弁済供託すると建設業者に通告した。それに対する建設業者からの回答がなかったことを理由に賃料を弁済供託するというのは無謀である。

 口座振込依頼請求に回答しないことが賃料の受領拒否という理由にはならない。また、賃料支払の現実の提供をしていないから、Aさんの弁済供託は供託要件を満たしていないので、無効の弁済供託になる(大審院明治45年7月3日判決)。このままでは、賃料不払(債務不履行)で契約解除される恐れがあり、危険である。

 Aさんは先ず、現実に賃料の提供をしなければならない。大阪の建設業者(債権者)に賃料を現金書留で送る。そのまま受取れば、次回も同様にして提供する。建設業者(債権者)が提供賃料を送り返してきたら、それは受領拒否ということになるので、そのときは大阪法務局へ弁済供託の手続きを採ればいい。

 【地代・家賃を弁済供託する場合の供託書の記載例】はこちらを参照

 なお、賃料の提供は、現金のほか、銀行振出小切手(個人振り出しの小切手は不可)、郵便為替でも可(最高裁昭和37年9月21日判決) 。


(註)民法495条1項 「供託は債務の履行地の供託所にしなければならない」

 

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借家の明渡しの調停で明渡しを撤回させる (東京・武蔵野市)

2012年03月15日 | 建物明渡(借家)・立退料

 武蔵野市境で昭和53年より木造瓦葺平家建居宅一棟を借りているAさんは、昨年11月に家主から建物が老朽化していることと、ハトを飼っていることで近隣から苦情があるとの理由で建物明渡調停の申立てを受けた。

 調停の前に組合事務所で入念に打合せを行い、調停に臨んだ。調停では、ハトを飼っているが近隣には迷惑を掛けていないこと、建物はまだ十分に住み続けることは可能であること等を調停委員に説明しました。

 1月の調停では、Aさんの主張が全面的に認められ、賃貸借契約は今年から2年間更新すること、家主側は借主のハトの飼育を認め、飼育期間を現在飼育中のハト全羽の命が尽きるか、平成29年12月31日までのいずれか早い時期までに限るとの和解が成立し、Aさんは一安心した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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借地明渡請求事件 勝利判決 (東京・墨田区)

2012年03月14日 | 更新料(借地)判例

 土地明渡裁判の被告であるAさんは、墨田区に在住するが、葛飾借地借家人組合員の紹介で入会した。

 Aさんは借地権付き建物(木造2階建、借地面積は約13坪)を昭和59年に前賃借人より買受けた。

 平成10年頃外壁にサイディングボードを貼り付け、平成13年頃にはベランダをアルミ製に替えるなど躯体変更を伴わない補修改良工事行った。地主はこの工事が無断増改築工事に当たると主張し、平成16年頃更新料として坪15万円を要求してきた。Aさんは組合を通じて法定更新の請求をし、更新料の要求を拒否した。これに対して地主は、更新料の支払拒否は信頼関係の破壊であるとして土地明渡訴訟を提起してきた。

 東京地裁は「借地権売買契約時に賃貸借契約の契約書が現存しているかも不明であり、無断増改築禁止特約の内容の明確性に疑問がある。平成10年の外壁工事が平成19年まで問題にされなかった等総合考慮すれば、本件の各工事をもって信頼関係破壊との事由は認められない。改築禁止特約違反を理由とする賃貸借契約の解除には理由がない。また、更新料の支払拒絶は、信頼関係破壊を基礎づける事情とならない」と明確に明渡しを認めない判決を下した(東京地裁平成23年6月29日判決)。

 地主は東京地裁判決を不服として東京高裁へ控訴した。
 東京高裁は「地主の請求を棄却した原判決は正当であるので、本件控訴は理由がないから棄却する」としてAさんの全面勝利判決が確定した(東京高裁平成23年12月21日判決)。

 Aさんは弁護士費用の工面においても難儀している旨も組合は相談を受けていた。今回、弁護士の計らいで法テラスを利用した。費用は毎月分割で返済している。葛飾借地借家人組合でも、法テラス利用は初めての経験である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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現行地代の1.5倍の値上げ請求 (東京・板橋区)

2012年03月13日 | 地代の減額(増額)

 戦前から板橋区本町で120坪の借地をしていたAさんは、地主の先代とは親同士が幼馴染で仲良く暮らしていた。

 地主が親から子の代に代替わりすると様相は一変した。度重なる地代の値上げなどが当たり前のように請求された。そして更新の時期を迎えると、高額な更新料の請求がされた。この高額な更新料については支払うことが出来ないと話すと急に地主が等価交換の話をしはじめた。

 次から次へと話が変わるので、とても太刀打ちできないと考えて弁護士に代理人を依頼した。すると地主は等価交換はやめて地代の値上げを現行の1・5倍請求してきた。困って代理人の弁護士に相談すると「等価交換については依頼されたが地代の値上げ問題については依頼されていないので追加料金が発生する」と言われ困惑した。

 知り合いから組合があることがわかり、相談会に来た。地代の値上げは双方の合意が原則で、今まで一度も値下げしたことはなく、今回の値上げも大幅な値上げで承服できないとし、地主が主張する値上げの根拠を示すよう通知し、納得いくまで現行の地代を支払うことにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 マンションの管理費に含めて町内会費を徴収するという規約を定めても拘束力がない

2012年03月12日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

判例

平成19年8月7日判決言渡 東京簡易裁判所

平成18年(ハ)第20200号 管理費等請求事件

(判示事項の要旨)
 マンション管理組合が,町内会費相当額を管理組合費に含めて徴収することを規約等で定めても,その拘束力はないとされた事例


判         決

主         文

1 被告は,原告に対し,金9万7655円を支払え。

2 被告は,原告に対し,平成19年7月1日以降被告が別紙物件目録記載のマンションを所有している間,毎月末日限り,1か月金1万7750円の割合による金員及びこれに対する各該当月の翌月1日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を支払え。

3 原告のその余の請求を棄却する。

4 訴訟費用は被告の負担とする。

5 この判決は,主文第1項,第2項及び第4項に限り,仮に執行することができる。


事 実 及 び 理 由

第1 請求

 1 被告は,原告に対し,金10万1543円を支払え。

 2 被告は,原告に対し,平成19年7月1日以降被告が別紙物件目録記載のマンションを所有している間,毎月末日限り,1か月金1万7850円の割合による金員及びこれに対する各該当月の翌月1日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 本件は,原告が被告に対し,未払いの管理費等の支払いを求めて訴訟提起したところ,被告は,管理費等の滞納の始期は平成16年10月である,町内会費を管理組合費として原告が請求することはできないと主張して争った事案である。

 なお,訴訟係属中に,被告は,管理組合費を除く滞納していた管理費等を支払ったので,原告は,未払いの管理組合費として1万6500円,管理費等の遅延損害金として8万5043円並びに将来の管理費等及び遅延損害金の支払いを求めるとして,請求を減縮した。

1 争いのない事実等(証拠によって容易に認定できる事実を含む。)

 (1) 昭和50年6月21日,東京都a区bc丁目d番地e所在のAマンション(以下「本件マンション」という。)の自治会として,Aマンション親和会(以下,「親和会」という。)が設立された。親和会は,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に基づいて設立された管理組合ではなく,任意の団体であった。そして,親和会は,管理費及び補修積立金等の徴収を行わず,自治会費として月額300円及び町内会費として月額200円(その後月額100円に値下げ)の徴収を行っていた。町内会費の徴収を親和会が行うことについては,親和会設立時に,本件マンションの区分所有者全員が集まって同意した。B株式会社(以下,「B」という。)は,個々の区分所有者から依頼を受けて,管理費等を徴収し,本件マンションを管理していた。(甲16,17,22,原告代表者)

 (2) 被告は,昭和58年3月8日以降,別紙物件目録の「一棟の建物の表示」欄記載の建物の中,「専有部分の建物」欄記載のf階部分g号室(以下,「本件居室」という。)を所有している。

 (3) 昭和58年3月8日当時,被告が負担する管理費は月額5400円,補修積立金は月額1620円であった。(甲2)

 (4) 昭和59年12月,Bが,昭和58年11月から翌59年10月までの管理費等の清算報告書を各区分所有者及び居住者に報告した。この報告の際,本件マンションの管理状況を説明し,今後運営が赤字になる旨を伝え,本件マンションの管理費,補修積立金を増額することとし,本件居室については,昭和60年2月分より管理費を月額5940円に,補修積立金を月額1780円に,それぞれ増額することが提案された。この提案は,被告を含む全区分所有者等に配布され,その後の増額された管理費等の徴収について異議はなかった。(甲2,22)

 (5 ) 平成2年10月19日,親和会の議案として,親和会費及び町内会費の支払いについて,親和会費及び町内会費(以下「親和会費等」という。)の合計として,月額500円を管理費及び補修積立金と共に支払う旨が提案された。平成2年10月19日,上記提案は可決され,平成3年1月分より施行された。(甲3,4)

 (6) 平成3年12月1日,親和会は,各区分所有者に対し,管理運営をよりよく機能させるために,本件マンションの管理組合を設立する旨の総会開催の案内を送付した。(甲5)

 (7) 平成4年1月17日,上記総会が開催され,原告は,本件マンションについて,区分所有法第3条に基づき設立された。原告が設立された際,従前の管理費月額5940円及び補修積立金月額1780円はそのまま踏襲され,親和会費月額500円は管理組合費と名称が変更された。なお,管理組合費月額500円の内訳は,管理組合運営のための費用として400円,町内会費として100円とするものであった。(甲6,7,原告代表者)

 (8) 原告の管理規約第23条によれば,区分所有者は,敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため,管理費等として,管理費,修繕積立金及び管理組合費を定め,同規約第25条によれば,管理費は,管理人の人件費,共用設備の保守費,通信・消耗品費等の通常の管理に関する経費に充当するものとして定められ,同規約第27条によれば,管理組合費は,会議費,広報及び連絡業務に要する費用,役員活動費,住環境を守り,生活向上のために要する費用等の管理組合の運営に要する経費に充当するものとして定められ,同規約第57条によれば,管理費等は毎月,当月分を当月の末日までに一括して納入しなければならないこと,期日までに納入ない場合においては,原告は組合員に対し,未払い金額に対し年14パーセントの割合による遅延損害金を加算して組合員に請求できることが定められている。(甲7)

 (9) 平成8年3月初旬,原告は,本件マンションの通常総会議案書を,被告を含む各区分所有者に送付した。同議案書においては,本件居室の改定後の管理費は月額5940円(据え置き),補修積立金は月額7130円,管理組合費は月額500円(据え置き)の合計1万3570円と提案された。(甲8)

 (10) 平成8年4月3日,原告の通常総会が開催され,上記管理費等の改定が可決され,平成8年6月分より実施されることとなった。(甲9)

 (11) 平成17年2月,原告は,被告を含む本件建物の各区分所有者に対し,通常総会開催の案内を送付し,補修積立金の改定を提案し,本件居室については月額1万1410円に増額する旨を提案した。(甲10)

 (12) 平成17年3月24日,上記通常総会が開催され,管理費,管理組合費は据え置きとし,補修積立金を改定し,平成17年11月分より実施する旨が可決された。

 この結果,被告の補修積立金は,月額7130円から月額1万1410円と増額され,平成17年11月分からの被告の管理費等の支払額は,月額合計1万7850円となった。(甲11)

 (13) 平成18年2月,原告は,各区分所有者に対し,通常総会開催の案内を送付し,管理費等の長期滞納者には法的手続を行う旨の議案を提案した。(甲12)

 (14) 平成18年2月22日,原告の上記通常総会において,被告に対して管理費等を請求する訴訟を提起するとの議案は,可決承認された。(甲13)

 (15) 東京都a区bには,いわゆる町内会としてb町自治会が存在する。同会の平成18年度の事業計画としては,会員相互の親睦を図り,会員福祉の増進に努力し,関係官公署各種団体との協力推進等を行うとなっている。(甲15)

 (16) 原告は,平成19年3月20日の総会において,管理組合費を月額500円から町内会費相当分の100円を引き月額400円に減額することと決定した。なお,その実施時期は未定である。原告は町内会を脱退したわけではなく,今後の町内会費の納入方法については未定である。(原告代表者)

 (17) 平成19年4月26日,被告は原告に対し,平成16年9月分から平成19年5月分までの管理組合費を除く管理費等として51万2630円を支払った。(乙1)

2 争点

 (1) 本件訴訟提起前において,被告が管理費等の支払いをしていたのは,平成16年8月分までか,同年9月分までか。

 (原告の主張)

 被告が管理費等を管理規約の約定どおり支払ったのは,平成14年7月分までである。以後,被告は毎月遅滞し,最終的には平成16年8月分が入金された。従って,被告は平成16年9月分以降の管理費等を支払っていなかったのである。

 そして,「弁済」は抗弁事由であり,被告において立証責任がある。

 (被告の主張)

 被告が管理費等を約定どおり支払ったのは,平成14年7月分までであること(充当)を否認する。被告は平成15年以降ほぼ1か月ないし数か月遅れるも各月支払っており,特に平成16年6月分から同年9月分までの4か月分は,平成16年9月30日に支払っている。

 原告は,平成9年以降の管理費等台帳(甲24ないし30)しか提出しないのであるから,その主張は,明らかに証明不十分である。また,原告の管理規約第57条によると管理費等は当月分を当月末日払いであることから,個人別入金履歴(甲21)の「2004.9.30振込」は平成16年9月分まで支払済みであることを推認させる。

 (2) 原告が町内会費を管理組合費として請求をすることの是非。

 (原告の主張)

 管理組合費の月額500円は,管理組合を運営するための諸費用として400円及び町内会費として100円に支出されている。従って,その実態は管理費の一部であり,区分所有者は支払義務を負うものである。

 本件では,本件マンションの区分所有者が同マンションに居住しなくても,その賃借人等は以下のとおりの恩恵を受けるのであり,それらの事実及び月額100円という金額からすると,町内会への加入は不可欠であり,十分合理性がある。

  ① 町内会が主催するお祭り,レクリエーション等の行事に参加することにより地域と密着した社会生活を送ることができる。

  ② 町内会は,区役所,警察,保健所等の依頼を受け,日常生活に密着した通知等の各種印刷物を配布しており,これらの印刷物の配布を受けられないと,日常生活に支障を来すこととなる。

  ③ 本件マンションの住民は,その多くは昼間は勤務しているため,日中は留守である場合が多いし,被告のように本件マンションに居住してない人も多い。

  これらの人々から個別に町内会費を個別に徴収すると,膨大な費用がかかることからすると,原告が一括して徴収することが最善である。

 (被告の主張)

 町内会は,一定の地域に居住する者によって組織される自治組織であり,自主的な団体であり,原告の所在するbc丁目には「b町自治会」が存在する。被告は,本件マンションに居住していないのであるから,町内会の会員に明らかに該当しない。

 また,町内会費は,まさに住民が任意に支払いを委ねられているものであり,法的に支払いを強制されるべきものではない。

 そして,町内会費の未払いに関して,原告のようなマンション管理組合が,裁判をもって訴求することはできない。

第3 当裁判所の判断

1 争点(1)について

 証拠(甲14,21,24ないし30)及び弁論の全趣旨によれば,これらの書証は,建物管理会社であるBが原告の委託を受けて本件マンションの管理費等の入金管理をするために作成したものであり,その内容(支払いの充当を含む。)は信用することができる。これらの証拠によれば,被告の管理費等の入金履歴は,平成9年1月以降は管理費等台帳で,平成15年4月以降はコンピューターで,それぞれ管理されており,それによると,被告は,管理費等を平成9年1月以降,しばしば数か月分を遅れてまとめて支払っており,特に平成16年4月分から8月分については,同年9月30日に支払っていることを認めることができる。なお,被告は,原告の証明が不十分であるとか,平成16年9月分まで支払済みであることが推認できる旨の主張をするが,前記認定によれば,いずれも理由がない。

 よって,原告の主張は理由がある。

2 争点(2)について

 (1) 町内会は,自治会とも言われ,一定地域に居住する住民等を会員として,会員相互の親睦を図り,会員福祉の増進に努力し,関係官公署各種団体との協力推進等を行うことを目的として設立された任意の団体であり,会員の自発的意思による活動を通して,会員相互の交流,ゴミ等のリサイクル活動及び当該地域の活性化等に多くの成果をもたらしているところである。そして,町内会は,法律により法人格を取得する方法もあるが,多くの場合,権利能力なき社団としての実態を有している。

 このような町内会の目的・実態からすると,一定地域に居住していない者は入会する資格がないと解すべきではなく,一定地域に不動産を所有する個人等(企業を含む)であれば,その居住の有無を問わず,入会することができると解すべきである。そして,前記目的・実態からすると,町内会へ入会するかどうかは個人等の任意によるべきであり,一旦入会した個人等も,町内会の規約等において退会の制限を定める等の特段の事由がない限り,自由に退会の意思表示をすることができるものと解すべきである。

 (2) ところで,区分所有法第3条,第30条第1項によると,原告のようなマンション管理組合は,区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うために設置されるのであるから,同組合における多数決による決議は,その目的内の事項に限って,その効力を認めることができるものと解すべきである。

 しかし,町内会費の徴収は,共有財産の管理に関する事項ではなく,区分所有法第3条の目的外の事項であるから,マンション管理組合において多数決で決定したり,規約等で定めても,その拘束力はないものと解すべきである。

 本件では,原告の規約や議事録によると,管理組合費は月額500円となっており,親和会当時からの経緯によると,そのうちの100円は実質的に町内会費相当分としての徴収の趣旨であり,この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はないものと解される。

 (3) 原告は,町内会の存在によって被告は一定の恩恵を受けるのであり,町内会費が月額100円という金額からすると,町内会への加入は不可欠であり,合理性もあることから,規約等に管理組合費の定めがあることを根拠として,町内会費の請求をすることができる旨の主張をするが,前述のとおり,管理組合費のうち100円については,実質的に町内会費相当分であって,その部分に関する原告の規約等の定めは拘束力がないのであり,また,区分所有法第3条の趣旨からすると,原告自身が町内会へ入会する形を取ることも,その目的外の事項として,その入会行為自体の効力を認めることはできないものと解されることからすると,これらを根拠に,原告が被告に対し,未払いの町内会費の請求をすることはできないと解すべきである。

 その他,原告がその権利主体である旨(例えば,原告と被告との間の委託契約の成立等)の主張・立証もない。

 そうすると,町内会費を請求する権利主体ではない原告が同会費の請求をすることは認めることができないと解される。

 よって,未払いの町内会費相当分を求める原告の主張は理由がない。

 (4) 被告は,管理組合費としての月額500円の支払いを拒否しているが,町内会費相当分としての100円を除く月額400円については,会議費,広報及び連絡業務に要する費用,役員活動費等の管理組合の運営に要する経費に充当するものであって,区分所有法第30条第1項に定める事項であるから,原告の規約等にその定めがある以上,被告は,その支払義務があるものと解すべきである。

 よって,町内会費相当分を除く未払いの管理組合費の支払いを求める原告の主張は理由がある。

3 被告は,原告の管理費等の遅延損害金の請求に対して,①原告の同請求は権利濫用に該当するので,その請求は認められない,②原告は,被告が管理及び管理人の対応に不満があって支払いを拒んでいた事態を放置し,いたずらに遅延損害金の金額が重なる事態を招いたのであるから,過失相殺を適用ないし類推適用すべきである旨の主張をするが,それらの主張を認めるに足りる証拠はない。

 よって,これらの点についての被告の主張は理由がない。

4 認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被告には管理費等の滞納の事実があったこと,被告の管理費等の支払義務は今後も継続すること等が認められ,これらの事情からすると,原告は被告に対し,予め将来にわたる管理費等の支払いを求め,本件紛争の実効的な解決を図る必要があると解されるので,前記争点(2)の判断を前提にすると,将来の町内会費相当分を除く管理費等の支払いを求める限度で,原告の主張は理由がある。

5 以上によれば,原告の被告に対する本件請求は,平成16年9月分から平成19年5月分までの管理組合費(ただし,町内会費相当分を除く。)として1万3200円,管理費等(ただし,管理組合費のうち町内会費相当分を除く。)を滞納していたことによる別紙滞納一覧表記載のとおり各滞納開始日から弁済があった日の前日の平成19年4月25日までの間の遅延損害金として8万4455円,平成19年7月分(なお,原告は第4準備書面において平成19年6月分から支払いを求めると主張するが,請求の趣旨を前提とすると,同年7月分からの支払いを求めるものと解される。)から支払済みまで管理費,補修積立金及び管理組合費(ただし,町内会費相当分を除く。)として1か月1万7750円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し,その余の請求は理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法第64条ただし書き,第61条を,仮執行の宣言につき同法第259条第1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。

                   東京簡易裁判所民事第5室

                                 裁 判 官 河 野 文 孝


         (別紙省略)

 

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家賃滞納で強制退去は違法 (東京地裁)

2012年03月10日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 マンションの家賃を滞納したところ、家財を残したまま退去を強制されたとして、埼玉県所沢市の男性が約1060万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(唐木浩之裁判官)は9日、マンション管理会社(西東京市)などに220万円の支払を命じた。

 判決によると、男性は2002年8月に賃料5万6千円のマンションに入居した。04年に勤務先の人員整理で退職。07年2月分から滞納した。そのため、同年6月に管理会社から退去を迫られた。会社側は家財を廃棄。男性は3カ月間の路上生活を強いられた。

 判決は会社側の対応について「脅迫行為がなくても、負い目のある借り手に法的手続きをとらず、着の身着のままで退去を迫るのは社会的相当性を欠く」と述べ、違法と認定した。


(朝日新聞 2012年3月10日)

 

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【判例】 賃料確認裁判 名古屋簡易裁判所(平成19年3月30日判決)

2012年03月08日 | 地代の減額(増額)

判例

名古屋簡易裁判所

平成19年3月30日判決言渡し

平成18年(ハ) 第4095号 賃料確認等請求事件

(判示事項の要旨)

 賃料確認等請求で,当事者間の賃貸借契約の経緯や個別事情等を総合的に斟酌して,鑑定結果よりも値上げ幅を緩和した額とした事例

 

主          文

 

 1 原告と被告との間で,別紙一物件目録記載の土地についての賃貸借契約における賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万8000円 同年8月1日以降は月額金2万0000円であることを確認する。

 2 被告は,原告に対し,金16万0000円及びその内金である別紙二未払賃料一覧表左欄記載の各金員に対し,それぞれ対応する右欄記載の各期日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 4 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。

 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 


事 実 及 び 理 由

第1 請求

 1 原告と被告との間で,原告が被告に賃貸している別紙一物件目録記載の土地の賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万9510円,同年8月1日以降は月額金2万2024円であることを確認する。

 2 被告は,原告に対し,金21万8954円及び別紙三未払賃料損害金一覧表記載の各未払賃料に対する各起算日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

第2 事案の概要

 1 本件は,原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案である。

 2 争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨で認められる事実

 (1) 訴外亡Aは,訴外亡Bとの間で,昭和38年10月1日,別紙一物件目録記載の土地を木造建物所有の目的で,期間の定めなく,賃料月額金2200円(当初賃料はその後逐次改定,翌月分を当月30日払いの約定は,その後当月分を当月払い状態が続いたが,約定は当初のとおり )で賃貸借契約を締結し,同日,同Bに対し上記土地を引き渡した。

 (2) 訴外亡Aは昭和53年3月14日死亡し,原告は相続により上記土地所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。他方,訴外亡Bは平成15年5月23日死亡し,被告は相続により上記建物所有権を取得し,本件土地の賃借権を承継取得した。

 (3) 本件土地の賃料は,平成15年10月当時,月額金1万4000円であったが,長年低額に据え置かれ,租税等の増加や地価の上昇等近隣地代との均衡を欠き不相当となったことから,原告は被告に対し,平成15年10月16日,口頭で本件土地の賃料を平成16年1月1日から月額金4万円ないし5万円に増額 (その後月額金1万9510円に減縮) するとの意思表示をし,更に,平成18年7月29日到達の書面で本件土地の賃料を平成18年8月1日から月額金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)に増額するとの意思表示をした。

  (4) 被告は,原告との話合いでは賃料値上げ額に合意できず,平成16年1月以降,引続き従前の賃料月額金1万4000円を現実に提供し,原告は賃料内金として受領していたが,同年12月末頃,原告に賃料持参の際,領収書交付を求めたことから原告と諍いとなり,被告は同年12月分賃料から以後毎月,月額金1万4000円を弁済供託し,本件土地を賃借している。 

3 争点

 平成16年1月1日から平成18年7月31日まで及び同年8月1日以降の本件土地の適正な改定継続賃料はいくらか。


第3 争点に関する判断

1 本件土地の適正な賃料額

 (1) 改定継続賃料の算定法式としては,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法が存するところ,鑑定の結果によれば,本件土地の賃料について,差額配分法,利回り法及びスライド法の3方式を併用し,各方式による平成16年1月1日時点での試算賃料(差額配分法月額2万2449円,利回り法月額1万3272円,スライド法月額1万3994円)及び平成18年8月1日時点の試算賃料(差額配分法月額2万6016円,利回り法月額1万3839円,スライド法月額1万4240円)を比較考量し,3方式の長所短所を考慮し諸要因による調整として4:1:1の加重平均により算出すると,平成16年1月1日時点の適正な改定継続賃料は月額金1万9510円,平成18年8月1日時点の適正な改訂継続賃料は月額金2万2024円が相当と結論付けており,鑑定内容における各資料の数値の採用や計算結果も適正なものと認められ,各試算資料の数値調整としての加重平均方式も, 諸要因の調整割合の評価は別として合理的なものと認めることができる。

 (2) 被告は, 本件鑑定結果が, 賃貸人側に有利な差額配分法を過度に重視して, 差額配分法,利回り法,スライド法の3方式による各試算資料の加重平均を4:1:1で改定継続賃料を算出するのは不合理であり,仮に不合理でないとしても,本件事案の和解案として裁判所から提示された平成16年1月1日時点で月額金1万7400円,平成18年8月1日時点で月額1万9500円の金額と比較しても増加額が大きく,合理的とみなされる複数の適正地代に関する意見があればその結果等を平均調整するのが相当であり,被告が来年以降,定年退職による収入減で家族を扶養する経済環境にあることも斟酌されたいと主張するが,本件審理中の和解案との比較は,和解提示額が根拠に基づく計算結果であったとしても鑑定結果と平均調整することは相当でなく,被告の今後の経済状況の斟酌も事情として理解はできても,本件の適正改定継続賃料を算定する要因として考慮するのは相当でない。

 (3) 本件で,適正な改定継続賃料を算定するには,鑑定の結果も踏まえ,本件賃貸借契約の経緯や当事者間の個別事情も総合的に斟酌する必要があるところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の貸借は,昭和23年頃の使用貸借で始まったが,昭和38年頃,訴外亡Bが木造建物を新築した際,賃貸借契約に改められ,以後,昭和40年代後半から50年代前半の二度に亘る地価高騰期や平成初頭のインフレによる地価高騰期,その後の不況やデフレによる地価下落期等の大きな価格変動にも,期間の長短はあるものの当時1000円刻みによる賃料増加に止められ,訴外亡B生存中は比較的低額に抑えられてきたものの,被告が賃借人となった後は5ヶ月程で,直近の改定時期から1年後の大幅な増額改定要求を受けたこと,本件土地は市街地の住宅地域で最有効使用も住居等であること,本件現行賃料が,鑑定結果では,本件土地の経済的価値に基づく理論上の適正賃料とされる差額配分法による試算資料数値と大きく乖離していること等が認められ,鑑定資料の3方式による試算資料の加重平均による数値調整をするに当たっては,経済的価値に即応した性質の強い差額配分法を加重する必要性は認められるものの,現行賃料を基準要因の一つとする利回り法やスライド法による数値とも応分の均衡を保つ必要性も認められ,3方式の加重平均は2:1:1で算出した額が相当と認められることから,適正な改定継続賃料 (100円以下切捨て) は,平成16年1月1日時点は月額金1万8000円,平成18年8月1日時点は月額金2万0000円であると認めることができる。

2 以上によれば,原告の被告に対する本訴請求は,主文認容の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

名 古 屋 簡 易 裁 判 所

       裁 判 官  渡 邊  直 紀

 


       別紙一

                   物 件 目 録

        土地


            所 在  名古屋市C区DE丁目

            地 番   F番

            地 目   宅地

            地 積   104.16平方メートル


                                    

 

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【判例】 賃料の確認裁判 甲府地方裁判所(平成18年9月12日判決)

2012年03月06日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

判例

事件番号・・・・・・平成11(ワ)516等

事件名・・・・・・・・賃料等本訴請求事件、賃料減額確認反訴請求事件

裁判所・・・・・・・・甲府地方裁判所 民事部

裁判年月日・・・・平成18年9月12日


主     文

1 原告(反訴被告)と被告(反訴原告)との間の別紙物件目録記載の建物についての賃貸借契約における賃料は,平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることを確認する。

2 原告(反訴被告)の請求及び被告(反訴原告)のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告(反訴原告)の負担とし,その余を原告(反訴被告)の負担とする。

 

事実及び理由

第1 請求

1 本訴について

 (1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は,原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し,金9013万7520円及びこれに対する平成12年2月17日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 (2) 原告と被告の間の別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)についての賃貸借契約(以下「本件契約」という。)における賃料が,平成11年11月17日以降1か月当たり金3857万9690円であることを確認する。


2 反訴について

  原告と被告との間の本件契約における賃料が,平成12年3月17日以降1か月当たり金2003万0558円であることを確認する。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

 (1) 本訴事件は,本件契約の賃貸人である原告が,本件契約の賃料は,本件契約開始の日から3年を経過した時点で,改定前の賃料を7.5%増とする旨の特約があると主張して,被告に対し,同特約を理由に賃料増額の意思表示をなし,その増額後の賃料額の確認及びこれを前提とする未払賃料の支払を求めた事案である。

 (2) 反訴事件は,本件契約の賃借人である被告が,本件契約の賃料は,近隣土地・建物賃料の下落,諸物価指数の変動等の諸要因を勘案すると不相当に高額となったと主張して,原告に対し,賃料減額の意思表示をなし,その減額後の賃料額の確認を求めた事案である。

2 前提となる事実 (証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)

 (1) 当事者

 原告は,不動産の賃貸業等を目的とする株式会社であり,被告は,ショッピングセンターの企画運営等を目的とする株式会社である。

 (2) 原告は,平成5年10月25日,貸店舗として本件建物を建築し,以後,本件建物を所有している。

 (3) 本件ショッピングセンターが開店するまでの経緯

  ア 原告と被告は,昭和63年4月30日,本件建物が所在する土地上に原告が建物を建築してこれを被告に賃貸し,被告がそこでショッピングセンターを運営するとの内容の覚書をとり交わした(甲2。以下「本件覚書」という。)。

  イ 本件覚書には,次のとおりの条項が存在する。

 (ア) 賃料について

  (4条1項)
  賃料の算定は,次の算式による。

  月額賃料=坪当たり建築価格×19%×延べ床面積÷12ヶ月

 (イ) 賃料の改定について

  (5条1項,以下「本件賃料自動増額条項」という。)
  賃料は,賃貸借開始の日より3カ年を経過した時点で,その改定を行なう。改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。

  (5条2項)
  以後も3カ年を経過するごとに改定するものとし,前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ,甲乙協議して決定する。

  ウ 原告と被告は,平成元年2月18日,本件覚書をふまえ,基本協定書を取り交わした(乙1。以下「本件基本協定書」という。)。

  エ 基本協定書には,次のとおりの条項が存在する。

 (ア) 賃料について

  (10条1項)
  賃料の算定はつぎの算式による。

  月額賃料=坪当たり建築価格×19%×乙の賃借する延床面積÷12

(イ) 賃料の改定について

  (12条)
  賃料は賃貸借開始の日より満3カ年毎に改定するものとし,改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。但し,上記情勢等に異常な変動を生じたときはこの限りではない。

  オ 本件基本協定書15条によれば,建物建築工事請負契約の締結時に原告と被告の間で建物賃貸借の予約契約を締結することとされていた。

   しかしながら,原告と被告は,賃料算定の基礎となる「坪あたりの建築価格」の額を幾らにするか,建築代金にかかる消費税をどちらが負担するか,ショッピングセンターの管理運営をどちらがするかなどをめぐって意見が対立したため,予約契約を締結しなかった。

   そのため,本件建物が完成し,本件ショッピングセンターの開店に向けての準備が具体化しても,原告と被告の間の協議は難航し,合意に達しなかった。

  カ その後,被告は,建物賃貸借契約が締結されないまま,平成5年11月17日までに,原告より,本件建物のうち,1階につき2,917.49平方メートル,2階につき3,631.85平方メートル,3階につき2,931.91平方メートル,4階につき0平方メートル(それぞれ共用部分を除いた被告専有面積)の引渡しを受け,本件建物にショッピングセンター「Aショッピングモール」(以下「本件ショッピングセンター」という)を開店させた。

 (4) 本件ショッピングセンター開店後の本件契約の締結

   平成5年12月になり,賃料算定の基礎となる「坪当たりの建築価格」について原告と被告との間でようやく合意が成立し,同月29日,以下の内容で本件契約が成立した(甲3)。

   期 間(4条) 平成5年11月17日から20年間

   賃 料(5条) 初年度月額賃料 3338万4264円

   消費税相当額は,被告が負担するものとする。

  賃料の改定(8条) 賃貸借開始日から満3カ年経過毎に賃料の改訂を行うものとし,改訂後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,原告,被告及び訴外Bにおいて協議し,決定する。ただし,上記情勢等に異常な変動が生じた場合はこの限りではない。

 (5) 原告の被告に対する賃料増額の意思表示

  ア 原告は,被告に対し,平成8年10月9日ころ到達の書面により,前記本件覚書5条1項に基づき,本件賃貸借開始の日から3年を経過する日である同年11月17日以降の本件建物の賃料を,従前の賃料の7.5%を加算した3588万8084円(消費税別途)とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲4)。

  イ 原告は,被告に対し,平成11年10月13日ころ到達の書面により,本件覚書5条1項に基づき,前記平成8年11月17日から3年を経過する日である平成11年11月17日以降の賃料を,上記アにおいて増額した賃料の7.5%を加算した3857万9690円とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲5)。

 (6) 被告の原告に対する賃料減額の意思表示

  被告は,原告に対し,平成12年3月14日ころ到達の書面により,本件賃貸借契約書8条に基づき,平成12年3月17日以降の賃料を,現行の賃料である3338万4264円から40%控除した1か月2003万0558円とする旨の賃料を減額する意思表示をした。

3 争点

 (1) 本件契約には賃料自動増額特約があるか(本件覚書5条の効力)。

 (原告の主張)
  ア 本件基本協定書12条の規定は,本件覚書5条の規定を当然の前提として定められたものである。すなわち,本件覚書5条は,1項において,賃貸借開始の日から3年経過時に自動的に7.5%賃料を増額することを定めるとともに,2項において,さらに3年を経過する毎に,原告・被告間で協議の上,賃料を改定すべきことを定めたものである。そして,本件覚書においては,この協議の際の判断基準が「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ」と抽象的にしか規定されていなかったことから,これをより具体的に規定したのが本件基本協定書12条なのである。このように本件基本協定書12条と本件覚書5条は両立するものであり,また,本件覚書の効力を失わせるためには,契約書等において明文にてその旨を規定するのが実務慣行であるところ,本件契約書にはそのような記載がない。したがって,本件基本協定書の締結により,本件覚書5条の本件賃料自動増額条項の効力が撤回される理由はない。

  イ 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者(当時。以下,被告,原告とも代表者につき当時。)が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,本件敷地を新たに購入したものである。

 本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格に19%を乗じ,さらに賃借面積を乗じたものを年間賃料として算出され(甲2・乙1),また,賃貸借開始から20年間が経過するより前に被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定しなければならない。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたのであるから,本件契約には,賃料自動増額特約があったというべきである。

 (被告の主張)
  ア 賃料改定に関する本件賃料自動増額条項は,本件基本協定書作成の時点において,原告と被告間の合意事項から撤回されたものである。

 そもそも,本件賃料自動増額条項は,本件覚書締結前の昭和63年3月4日に被告がCショッピングモールにおけるD保険相互会社との間で締結した建物賃貸借予約契約書(乙3)において,同様の規定を挿入したことから,被告の提案により,本件覚書においても挿入することとした。しかしながら,上記Cショッピングモールの賃貸借予約契約書は,賃貸借開始を約1年後に予定しており,予約契約締結時から4年後の賃料の改定を規定していたのに対し,本件賃貸借は,開店まで5年前後を要することを予想しており,それからさらに賃料改定は8年後となってしまうところ,8年後の経済状況を完全に予想することは不可能であるので,本件賃料自動増額条項は,余りにも非合理的であると原告・被告間で意見が一致し,合意の上で削除されたものである。

  イ 本件契約に至る経緯に関し,被告代表者が原告代表者に対して懇願したとの原告の主張事実は否認する。すなわち,被告は,昭和62年ころ,本件土地付近に全国的な中堅業者であるE屋がショッピングセンターを出店するとの情報を得たことから,本件土地を所有するF食品工業株式会社から本件土地を購入又は賃借する方式でのショッピングセンター出店の検討を始めた。そして,その検討を行っている途中で,原告が本件土地を入手して建物を建築し,被告に賃貸するという話が出てきた。当時,被告と原告は,原告がG駅南に所有する土地に被告がショッピングセンターを出店する計画が進んでおり,非常に緊密な間柄にあった。そこで,被告はショッピングセンター経営を業とし,原告は不動産賃貸業を業としていたので,被告としては,それぞれその得意分野を分担することにしようと,本件土地を購入することを断念し,原告が建築する建物を賃借することとした。

  また,被告と原告との間において,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたとの原告の主張事実も否認する。

  なお,賃料は,通常,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,改定されるのが原則であり,それ以外の特別の合意があれば契約書にその旨が明記されるべきであるところ,本件契約では,そのような合意も契約書の記載もない。

 (2) 本件契約の平成11年11月17日時点及び平成12年3月17日時点における適正継続賃料額

 (原告の主張)
  ア 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,被告の求めに応じて,本件敷地を新たに購入したものである。本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格を基礎に算出されている(乙1)。とともに,賃貸借開始から20年間は,被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定するかしなければならないものとしている(甲3)。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていた。

 したがって,本件契約においては,いかなる情勢の変化があろうとも,少なくとも自動増額後の賃料を下回る額に賃料を減額することは許されない。

  イ 本件契約のような賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである。

  ウ そうすると,本件建物の平成11年11月17日時点の適正賃料は,月額3857万9690円とするのが相当である。そして,平成8年11月17日から平成11年11月16日までの被告の未払賃料は,月額250万3820円,その合計は9013万7520円である。

 (被告の主張)
 本件契約が締結された平成5年以降,いわゆるバブル経済の崩壊により,土地価格は継続的に下落傾向にあり,また,国内及び山梨県内の景気も低迷状態が続いている。このような状況を受けて,本件建物の近隣土地・建物の賃料は,一般的に下落傾向にある。更に,本件建物の近隣には,大型ショッピングセンター「H」が平成12年2月にオープンした。以上のような状況などを総合考慮すると,本件建物の平成12年3月17日時点における適正賃料は,大幅に下落し,月額2003万0558円とするのが相当である。

 

第3 争点に対する判断

1 賃料自動増額特約の有無(本件覚書5条の効力)について

 (1) 本件契約における賃料自動増額特約の存在については,これを認めるに足りる的確な証拠はない。

  前記認定事実によれば,確かに,本件覚書(甲2)を取り交わした時点では,原告・被告間において,本件建物に関する賃貸借契約につき賃料自動増額特約を付することが予定されていたと認めることができる。しかしながら,平成元年2月に締結した本件基本協定書(乙1)12条では,本件覚書で定められていた「改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。」との文言が削除され,「改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。」との文言に変わっており,本件契約の契約書(甲3)も上記文言をそのまま採用していることからすれば,原告と被告の間では,本件契約を締結するまでの交渉の過程において,賃料自動増額特約を付する方針は撤回されたとみるのが自然である。

 (2) この点に関し,原告は,上記基本協定書12条は,本件覚書5条2項が,2回目以降の賃料改定の際の判断基準として「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ甲乙協議して決定する。」という抽象的な表現になっていたことから,これをより明確かつ具体的な判断基準とするために規定したものであって,本件賃料自動増額条項を前提としたものであるから,本件賃料自動増額条項の効力は本件契約においても有効である旨主張し,当時の原告の代表者であるIの陳述書(甲6)にもこの主張事実に沿う旨の記載があり,また,原告の取締役である証人Jも上記被告の主張事実に沿う証言をする(同人の陳述書(甲8)を含む。)。しかしながら,原告の主張によるならば,むしろ,本件基本協定書においても本件賃料自動増額条項の文言を明記した上で,「第2回目以降の改定賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案のうえ,・・・決定する。」と文言上明らかにすべきであるところ,本件基本協定書12条及び本件契約の契約書8条の文言は「賃貸借開始日から満3か年経過毎に賃料の改定を行うものとし」となっており,原告の主張は,文言解釈として不自然であるといわなければならない。しかも,前記認定事実によれば,原告は,不動産の賃貸業等を目的とする会社であるから,経験上後々の紛争を回避するためには契約条項を明確かつ具体的に記載すべきことは十分認識し得たことをも合わせ考慮すると,上述したように本件基本協定書において何故本件賃料自動増額条項を明記しなかったのか理解し難いところである。さらに,証拠(乙8の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件基本協定書を作成するに当たり,原告に対し,本件賃料自動増額条項を削除するよう要請していた事実が認められる。したがって,これらの事実に照らせば,この点に関するIの陳述書(甲6)の記載及び証人Jの証言等は,にわかに信用することができない。

 (3) したがって,本件契約において賃料自動増額特約があったことにつき,他にこれを認めるに足りる証拠がない本件では,同事実を推認することはできず,原告の上記主張は採用できない。

2 本件契約の平成11年11月17日時点(以下「平成11年基準時」という。)及び平成12年3月17日時点(以下「平成12年基準時」という。)における適正継続賃料額について

 (1) 本件鑑定の検討

 鑑定人Kの結果(以下「本件鑑定」という。)によれば,鑑定人は,本件契約の平成11年11月17日時点の適正継続支払賃料を月額2670万円,平成12年3月17日時点の適正継続支払賃料を月額2650万円と評価していることが認められる。そこで,まず本件鑑定の内容の合理性について検討する。

  ア 一般的信用性について

  鑑定人は,裁判所が選任した両当事者に利害関係を持たない不動産鑑定士であり,現地を実査した上,近隣地域の状況,対象不動産の状況を把握し,通常継続賃料の鑑定に採用される賃料差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,本件鑑定は,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

  イ 賃料差額配分法による算定について

  まず,積算法により,正常実質賃料相当額(対象不動産の経済的価値に即応した実質賃料)を月額2076万1000円と算出し,次に,賃貸事例比較法により,正常実質賃料相当額を月額2125万2000円と算出した上で,積算賃料における利回りの把握にやや難点があること,賃貸事例比較法は,市場性を反映しており実証的であることを考慮して,両試算賃料の重視割合を積算法による試算賃料を4とするのに対し,賃貸事例比較法による試算賃料を6として最終的な正常実質賃料を月額2110万円と算出している。他方,実際実質賃料相当額の算定については,実際支払賃料3338万4264円に保証金運用益66万7685円を加算した3405万2000円と算出し,上記正常実質賃料相当額と上記実際実質賃料相当額との差額マイナス1295万2000円を,本件物件の特色,賃貸市場の実情等を勘案の上,折半法を採用して,当事者それぞれに2分の1配分し,差額配分法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2700万円,平成12年基準時は月額2690万円と算定した。

  ウ 利回り法による算定について

  本件契約時点(平成5年11月17日)における純賃料利回り(実際支払賃料に保証金運用益を加算した実際実質賃料から必要経費を控除して得られた純賃料の対象不動産の基礎価格に対する比率)を7.2%と算出し,これに基礎価格の変動幅ほど賃料変動がないことを考慮して,基礎価格下落率の半分を補正率として除した結果,平成11年基準時における継続賃料利回りを9.2%,平成12年基準時におけるそれを9.4%とした。そして,それぞれの基準時における対象不動産の基礎価格に上記継続賃料利回りを乗じたもの(純賃料)に必要経費を加算して得られた利回り法による実質賃料から前記保証金運用益を控除した結果,利回り法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2510万円,平成12年基準時は月額2480万円と算定した。

  エ スライド法による算定について

 本件契約時点から本件鑑定の平成12年基準時までの消費者物価指数,企業向けサービス価格指数(不動産賃貸),名目GDP,オフィース・共同住宅賃料指数,山梨県商業統計調査(年額商品販売額・売場面積当たり年間販売額)のそれぞれの変動率をその重視割合に従い採用し,変動指数として平成12年基準時では89.9%を算出した。また,平成11年基準時における変動指数は,上記平成12年基準時の変動指数を期間配分し,90.4%と算出した。そして,本件契約時点の賃料に上記変動指数を乗じた結果,スライド法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額3020万円,平成12年基準時は月額3000万円と算定した。

  オ 賃貸事例比較法による算定について

  賃貸事例比較法においては,本件建物の近隣地域及び同一需給圏内の類似地域に存する類似の賃貸事例を収集した上で,比準賃料を1,450円(平方メートル当たり)と算定し,これに契約面積を乗じたものから保証金運用益を控除して,賃貸事例比較法による適正な実質賃料を平成11年基準時及び平成12年基準時月額2510万円と算定した。

  カ 適正継続支払賃料の算定

  その上で,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件賃貸借契約時の賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとし,本件賃貸借契約時の賃料は,賃貸人・賃借人間の合意であるから本来重視すべきものであるが,上記契約時からそれぞれの基準時までに他の大型店舗が開業し周辺商業動向が契約時点とは異なることを考慮すると,その試算賃料の重視割合は,差額配分法及び利回り法をそれぞれ30%とするのに対し,スライド法は20%とすべきであるとした。また,賃貸事例比較法の重視割合も,賃貸事例の契約経緯や賃料改定の経緯も個々の事情があり,要因比較にもやや困難が伴うことを考慮して,20%とした。その結果,本件鑑定における適正な実質賃料として,平成11年基準時は月額2670万円,平成12年基準時は月額2650万円と算定した。

   結論

  以上の鑑定評価の手法,採用された基礎数値,評価結果について得に不合理な点は認められない。

 なお,被告は,前述した各試算賃料の重視割合の算定において,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件契約当初における賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとする本件鑑定に対し,そうであるならば,差額配分法及び利回り法においても,同様に考慮すべきである旨主張する。

 上記契約時の賃料は,差額配分法では,実際実質賃料の算定の際に考慮されるところ,確かに,上記契約時の賃料が高めであるとすればその分,正常実質賃料との差額に反映されることは否定できない。しかしながら,賃貸人に配分されるのはその差額からさらに半分に減額されたものである。また,利回り法においても,上記契約時の賃料が高めであるとしても,それは,利回りに若干反映されるにすぎない。したがって,上記契約時の賃料が高めであることは,スライド法においては算定結果に直接反映されるのに対し,差額配分法及び利回り法においては算出された賃料額に反映する割合がかなり低減されたものになる。加えて,適正な賃料算定のためには,重視割合に程度の差はあるにせよ,本件契約時の当事者が賃料額決定の要素とした事情もまた考慮すべきであることは否定できない。以上のことにかんがみると,本件鑑定が上記契約時の賃料が高めであることを差額配分法及び利回り法において考慮していないことだけをとらえて,被告主張のように本件鑑定の合理性を否定することはできないといわざるを得ない。よって,被告の上記主張を採用することはできない。

 また,被告は,本件鑑定が賃貸事例比較法による賃料を余り重視しておらず,適正でない旨主張する。しかしながら,両当事者に利害関係がなく,かつ,契約内容等に類似性がある賃貸事例は少ない上に,その要因比較に多少の困難があることは否定できないのであるから,賃貸事例比較法による賃料を被告の主張するほど重視していないとしても,必ずしも不合理なものとはいえない。したがって,この点に関する被告の主張も採用することができない。

 他方,原告は,最高裁平成14年(受)第1954号平成17年3月10日第一小法廷判決を引用し,本件契約は,原告が被告からの要望に応じ,被告が営業するショッピングセンターに適した建物を建築し,これを被告に対して長期にわたって賃貸するという形態の賃貸借契約であるから,賃料減額請求後の相当賃料額の算定に当たっては,上記最高裁判決に沿った判断が行われるべきであるのに,本件鑑定は,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を考慮していない旨主張する。しかしながら,上記判決は,本件で問題となった賃料自動増額特約の存在が認められた事案のものであり,本件と同一に論じられるものではない。むしろ,本件鑑定は,前記のとおり,賃料差額配分法,利回り法及びスライド法において,本件契約当初における賃料が高めであるという本件契約の個別性を考慮しているのであるから,上記原告の主張は採用できない。

 (2) 原告鑑定の検討

 原告提出の不動産鑑定評価書(甲7。以下「原告鑑定」という。)は,差額配分法,スライド法,利回り法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,①差額配分法,利回り法においては,建物価格の査定に当たり,本件鑑定が当初の本件建物の建築費をもとに変動率を考慮して求めているのに対し,原告鑑定では,当初の本件建物の建築費を全く考慮せず,単純に山梨県の鉄筋コンクリート造の標準建築費から本件建物の個別要因修正を行っているため,本件建物の再調達原価が本件鑑定より約8億円(この点,原告鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は1平方メートル当たり14.0万円であるから,これに本件建物の延べ床面積を乗じた結果,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は,30億7276万2000円となる。他方,本件鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は22億7668万9000円である。)も不当に高額なものになっている。また,②必要諸経費の加算においても,本件鑑定が支払賃料の2%を計上したものに原告・被告間における本件契約の共益費等請求が問題となった別件和解(東京高裁平成15年・第3881号)で定められた維持管理費を控除して求められているのに対し,原告鑑定は,単純に人件費の3倍の収入が必要としてこれを計上しており,その根拠も不明であることに加え,上記和解による維持管理費の部分が二重に計上されてしまう点でも合理性がない。

 さらに,③差額配分法における正常実質賃料相当額の算出に当たっては,まず,積算法による積算賃料の算定において,本件鑑定が期待利回りを6.7%とするのに対し,原告鑑定は,12%と算定している。しかし,原告鑑定は,期待利回りを12%とする根拠として比準賃料を4000円から5800円と試算し,この賃料水準からは総合期待利回りが15%超となることを挙げているところ,そもそもこの比準賃料は,支払賃料に保証金運用益だけでなく共益費をも加算したものであり,また,必要諸経費は全く控除されていないのであるから,期待利回りが高くなるのは当然であり,本件賃貸借の契約時から平成11年及び12年の間における社会情勢の変動,物価指数の変動等をも合わせ考慮しても,12%は高率に過ぎ,本件鑑定及び被告鑑定で採用されている利回りと2倍の開きがあることに合理性が認められず,到底採用できるものではない。なお,この点に関して,原告は,平成14年6月のL投資法人のリートの目論見書による賃貸事務所ビルの利回りを引用し,原告鑑定の上記利回りの合理性を縷々主張するが,これらは,本件で問題となっている平成11年及び平成12年から2年後の平成14年のものであることに加え,本件建物のようなショッピングセンターの利回りがこのような事務所ビルの利回りよりも当然高くなるとする根拠が何も示されていないこと等を考慮すると,原告の上記主張は採用できない。④差額配分法の比準賃料の算定においても,本件鑑定は,支払賃料に保証金運用益を加算したものを実際実質賃料としているのに対し,原告鑑定は,前述したように支払賃料及び保証金運用益に共益費をも加算して実質賃料としているため,賃料と共益費を合計すると,必要経費部分が二重に計上されてしまうこととなり合理的でない。⑤利回り法においては,本件鑑定及び被告鑑定が,基準時の本件土地・建物の基礎価格に利回りを乗じたものに必要経費を加算した上,これに保証金(敷金)運用益を控除しているのに対し,原告鑑定は,本来控除されるべき保証金運用益を全く控除しておらず,これもまた原告鑑定賃料額が高額に過ぎる要因の一つとなっている。⑥スライド法においては,採用変動率として92%を採用しているが,これは,原告の関連会社であり,かつ,原告から本件物件を賃借している訴外新日本建物のテナントに対する転貸賃料収入の変動を採用したことが主たる原因であり,上記テナントである転借人自体及びその数も変動していることをも考慮すると,上記変動率を採用することは,本件契約の継続賃料の算定に当たっては合理性を欠くと言わざるを得ない。7賃貸事例比較法においては,賃貸データの一つとして本件建物について訴外新日本建物が原告から賃借している部分における原告に対する支払賃料を採用しているものと推認されるところ,前述したとおり訴外Bが原告の関連会社であり,賃貸データとしての公平性に疑問の余地があること,しかも,上記賃貸データを他の賃貸データと比して50%もの重きを置いて算定されている点で合理性を欠くと言わざるを得ない。

 したがって,以上の点を総合考慮すると,原告鑑定は,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

(3) 被告鑑定の検討

 被告提出の不動産鑑定評価書(乙5。以下「被告鑑定」という。)は,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,①差額配分法及び利回り法においては,本件鑑定は,保証金(敷金)の運用利回りを2%としているのに対し,被告鑑定のそれは,5%としており,平成12年の公定歩合,プライムレート,定期預金平均金利等を考慮すると高率に過ぎること,②差額配分法においては,本件建物の基礎価格の算定における現価率を55%とし,本件鑑定及び原告鑑定が64%としていることに比して,低きに過ぎる感が否めない。また,その根拠として,被告鑑定は,定率法による現価率を59%と算出し,維持管理の状態等を勘案してさらに4%も控除しているが,被告鑑定における資料にはこれを裏付ける資料はなく,他方,本件鑑定は,「本件建物は,外観上比較的良好に維持管理がなされている」と評価していること,本件鑑定添付写真等を見ても維持管理の状態に上記4%も控除するほどの問題点が見受けられないこと等も合わせ考慮すると,被告鑑定の根拠の合理性に若干疑問の余地があると言わざるを得ない。また,③差額配分法における正常実質賃料を賃貸事例比較法を併用せずに,積算法のみを用いて算出しているため,市場性が反映されたものになっていない。さらに,④利回り法においては,被告鑑定は,実績利回りを本件賃貸借契約時の実績利回りである7.5%を採用しており,本件鑑定及び原告鑑定がこれを9%台としているのに比して,低きに過ぎる上,本件賃貸借契約時である平成5年から本件鑑定基準時である平成11年及び12年までの約7年もの間における地価の下落により利回りも少なからず高くなる傾向があることを反映しておらず,採用できない。なお,この点に関し,被告は,本件鑑定が上記利回りを算定するに当たって,基礎価格下落率46%の半分を補正率としているところ,何故半分としたのかの合理的な説明がない旨主張する。確かに,本件鑑定には,この点を説明する明確な記述がないが,賃料については,基礎価格の変動幅ほどの変動はないものの,地価が下落すれば多少は影響を受けることは否定できないのであるから,基礎価格下落率をそのまま補正率とすることは適正でないのであって,補正率を算出するに当たり,基礎価格下落率の半分を採用することが不合理であるとまでは言えず,被告の上記主張は採用できない。

 したがって,以上の諸点を総合考慮すれば,被告鑑定も,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

(4) 総合的検討

 以上の検討の結果によれば,本件鑑定は,その鑑定手法,採用した基礎数値,評価の過程,評価額等に格別不合理な点は見当たらず,これに対し,原告鑑定及び被告鑑定には,前記(2)及び(3)に指摘したような問題点が含まれていることを総合的に考慮すると,いずれも採用することができず,本件鑑定の結果を相当なものとして是認するべきである。

 そうすると,本件契約の適正賃料は,平成11年11月17日時点では月額2670万円,平成12年3月17日時点では月額2650万円と認めるのが相当である。

(5) なお,原告は,最高裁平成12年(受)第573号平成15年10月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁,最高裁平成14年(受)第689号平成15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁,及びこれらの差戻審における和解,並びに,最高裁平成14年(受)第852号平成15年10月23日第一小法廷判決・裁判集民事211号253頁,及びその差戻審である東京高裁平成15年(ネ)第5399号平成16年12月22日判決を引用し,賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである旨主張する。

 しかしながら,これらの判決は,いわゆるサブリースの事案であって,不動産業者である原賃借人自身の占有使用が予定されていないものである上,いずれも賃料保証特約又は賃料自動増額特約がある事案であるから,本件と同一に論じられるものではない。しかも,和解は,両当事者の互譲によるものであるから,本件の参考になり得ないと言わざるを得ない。また,上記東京高裁平成16年12月22日判決は,賃料保証特約を前提とする収支予測の下に賃貸人が多額の銀行融資を受け,賃貸借契約の対象となる建物を建築した事情を考慮し,相当賃料額を算定しているが,本件では,前述したとおり,このような賃料保証の合意はなく,しかも,本件覚書及び本件基本協定書における賃料算定方法である「坪当たり建築価格×19%×被告の賃借する延べ床面積÷12」の19%の根拠も明らかとなっていない等,本件契約当初における賃料額等と原告の本件建物建築のための銀行借入金等の返済額との関係を認めるに足りる証拠はない。したがって,この点においても本件は,上記判決と事案を異にするのであって,上記原告の主張は,採用できない。

3 結論

 以上によれば,原告の被告に対する請求(本訴請求)は,理由がないからいずれもこれを棄却し,被告の原告に対する請求(反訴請求)は,本件契約の賃料が平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることの確認を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。

    甲府地方裁判所民事部

       裁判長裁判官     新  堀     亮  一

            裁判官     岩  井     一  真

            裁判官     村  上     典  子

 

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「家賃更新料 2割上限」超過分返還命じる…京都地裁 

2012年03月01日 | 更新料(借家)

 京都市内のマンションを借りていた女性が、家主側に支払い済みの3回分の更新料計45万円の返還を求めた訴訟の判決が2012年2月29日、京都地裁であった。賃貸住宅の契約更新の際に「更新料」を請求するのは消費者契約法に反して無効と訴えていた。京都地裁は「今回の更新料は高額すぎる。上限は年間賃料の2割が相当」として、超過支払い分として計10万4400円の返還を命じた。

 判決によると、女性は2004年12月、家賃4万8000円の部屋を、1年ごとに約3か月分の更新料(15万円)を支払う内容で契約していた。09年1月に退去するまで計3回更新した。

 京都地裁は「利息制限法が定める利率の上限も年2割。15万円の更新料が請求されると家賃は実質6万円を超え、周辺の相場や、賃借人の負担を考えると、1年契約の更新料の上限は2割が相当」と判断、これを超える額を返還すべきだとした。

 原告、被告双方の代理人によると、最高裁が昨年7月に「更新料は家賃と比べて高すぎるなど、特別な事情がない限り有効」との初判断を示して以降、更新料の一部返還を認める判決は初めてという。

 

 

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【判例】未払いNHK受信料、5年の短期消滅時効が適用される(旭川地裁平成24年1月31日判決)(1)

2012年03月01日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

判例

   旭川地方裁判所
   平成24年1月31日判決言渡

   平成23年(レ)第45号,同第55号 放送受信料請求控訴,附帯控訴事件
   (原審・旭川簡易裁判所平成23年(ハ)第115号)

   口頭弁論終結の日 平成23年11月22日


判          決

主          文

1 控訴人の控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,9万3160円及びうち8万2400円に対する平成23年2月1日から,うち1万0760円に対する平成23年10月1日からそれぞれ支払済みの日が属する月の前月(支払済みの日が偶数月に属する場合)又は前々月(支払済みの日が奇数月に属する場合)の末日まで,2か月当たり2パーセントの割合による金員を支払え。

 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。

2 訴訟費用(附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じ,これを5分し,その4を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。

3 この判決は,仮に執行することができる。


事 実 及 び 理 由

第1 控訴及び附帯控訴の趣旨

 1 控訴の趣旨

 (1) 原判決を取り消す。

 (2) 被控訴人の請求を棄却する。

 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

2 附帯控訴の趣旨

 (1) 原判決を次のとおり変更する。
控訴人は,被控訴人に対し,10万9900円及びうち9万9140円に対する平成23年2月1日から,うち1万0760円に対する平成23年10月1日からそれぞれ支払済みの日が属する月の前月(支払済みの日が偶数月に属する場合)又は前々月(支払済みの日が奇数月に属する場合)の末日まで,2か月当たり2パーセントの割合による金員を支払え。

 (2) 訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用も含む。)は,第1,2審とも控訴人の負担とする。

 (3) 仮執行宣言

第2 事案の概要

 1 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,放送受信契約(以下「受信契約」という。)に基づき,原審においては,平成16年12月1日から平成22年11月30日までの放送受信料(以下「受信料」という。)合計9万9140円及びこれに対する支払督促の送達の日である平成23年1月25日が属する期(毎年4月1日から2か月ずつを各期とし,1年は第1期ないし第6期から成る。)の直後の期の初日である平成23年2月1日から,支払済みの日の属する期の直前の期の末日まで約定の2か月当たり2パーセントの割合による遅延損害金の支払を,当審においては,附帯控訴の上,請求を拡張し,原審での請求に加えて,平成22年12月1日から平成23年7月31日までの受信料合計1万0760円及びこれに対する附帯控訴状の送達の日である平成23年9月20日が属する期の直後の期の初日である平成23年10月1日から,支払済みの日の属する期の直前の期の末日まで約定の2か月当たり2パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

  原判決が,被控訴人の請求を全部認容したところ,控訴人は,原判決を不服として控訴した。これに対し,被控訴人は,当審において,上記のとおり,附帯控訴の上,請求を拡張した。

2 前提事実(証拠等を摘示した部分を除き,当事者間に争いがない。)

 (1) 被控訴人は,放送法(以下,平成22年法律第65号による改正[平成23年6月30日施行]前の放送法を「旧法」,同改正後の放送法を「新法」といい,改正の前後を区別しない場合は単に「放送法」という。)に基づいて設置された法人であり,総務大臣の認可を受けて,日本放送協会放送受信規約(同規約は,平成19年4月1日規約改正[同年10月1日施行],平成20年4月1日規約改正[同年10月1日施行],平成22年11月10日規約改正[同年12月1日施行],平成23年6月14日規約改正[同年7月1日施行]など,数次にわたり改正されているが,以下,特に断りのない限り,改正の前後を問わず「規約」という。)を定めている(甲2,4,弁論の全趣旨)。

 (2) 被控訴人と控訴人は,平成15年3月19日,カラーの放送受信契約を締結し(以下「本件受信契約」という。),平成16年12月1日現在の契約内容は次のとおりである(甲1,4,弁論の全趣旨)。

  ア 名称 カラー契約

  イ 支払区分 口座振替。ただし,口座振替の指定日において受信料額を振り替えることができなかったときは,当該請求期間以降分について,訪問集金による受信料額を訪問集金により支払う。

  ウ 支払方法 毎年4月1日から2か月ずつを1期とし,毎期末限り,支払う。

  エ 料金 口座振替の場合,月額1345円訪問集金の場合,月額1395円

  オ 延滞利息 控訴人が受信料の支払を3期分以上延滞したときは,1期当たり2パーセントの割合で計算した延滞利息を支払う。

 (3) その後,規約改正により,本件受信契約の契約内容の一部が次のとおり変更された(甲2,弁論の全趣旨)。

  ア 名称 地上契約(平成19年4月1日規約改正により,カラー契約と普通契約が統合された上,名称が「地上契約」に変更された。同年10月1日施行)

  イ 支払区分 訪問集金は廃止された。(平成20年4月1日規約改正,同年10月1日施行)

  ウ 料金 月額1345円(平成20年4月1日規約改正,同年10月1日施行)

 (4) 控訴人は,平成16年12月1日以降の受信料を支払わない(弁論の全趣旨)。

 (5) 被控訴人は,平成23年1月22日,控訴人に対し,本件受信契約に基づき,平成16年12月1日から平成22年11月30日までの受信料合計9万9140円及びその遅延損害金の支払を求めて,旭川簡易裁判所に支払督促の申立てをした。

  上記支払督促事件は控訴人の異議の申立てにより訴訟に移行し,旭川簡易裁判所は,被控訴人の請求を認容する判決をしたところ,控訴人は,原判決を不服として控訴した。これに対し,被控訴人は,当審において,附帯控訴の上,請求を拡張した。(顕著な事実)

 (6) 控訴人は,被控訴人に対し,本件受信契約に基づく受信料債権(以下「本件受信料債権」という。)について,平成23年3月29日の原審の口頭弁論期日において,民法174条2号の消滅時効(1年)を,同年5月31日の原審の口頭弁論期日において,民法173条1号及び2号の消滅時効(2年)を,同年11月22日の本件口頭弁論期日において,民法169条及び商法522条の消滅時効(5年)を援用するとの意思表示をした(顕著な事実)。

 

(旭川地裁 平成24年1月31日判決)(2)へ続く


【判例】未払いNHK受信料、5年の短期消滅時効が適用される(旭川地裁平成24年1月31日判決)(2)

2012年03月01日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

3 争点

 (1) 本件受信契約の無効

 (2) 本件受信契約の解約による終了

 (3) 消滅時効の成否

4 争点に関する各当事者の主張

 (1) 本件受信契約の無効(争点(1))

 (控訴人の主張)

  ア 民法1条2項,旧法1条[新法1条],憲法21条及び国民主権原理違反旧法32条1項(新法64条1項)は「協会(日本放送協会)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定している。同規定は,そもそも知る権利の侵害であり,憲法21条に反する上,上記規定が,放送法に基づき締結される受信契約は,私法上の契約であっても,被控訴人は放送事業の顧客である受信設備を設置した者(視聴者)に対して一切の債務を負わないという意味であれば,契約当事者間の信義則(民法1条2項)に反し,ひいては,放送法の基本理念たる放送の最大限普及,放送による表現の自由の確保,放送の民主主義への貢献(旧法1条[新法1条])に反し,憲法21条及び国民主権原理に反する。

  イ 憲法19条違反

  旧法32条1項(新法64条1項)は,受信設備を設置した者に被控訴人との契約締結を強制することを意味するから,憲法19条に違反する。

 (被控訴人の主張)

  ア 民法1条2項,旧法1条[新法1条],憲法21条及び国民主権原理違反について旧法32条(新法64条)及び規約9条は,受信契約の締結及び被控訴人の放送を受信できる受信機を廃止しない間の受信料の支払を義務付けるだけであって,受信料の支払義務は,控訴人が,被控訴人の放送を視聴したか否かにかかわらず生じるものである。被控訴人が放送する番組の視聴を強制するものではないし,一般放送事業者が放送する番組の視聴を禁止するものでもない(東京高裁平成22年6月29日判決[甲5])。 また,旧法32条1項(新法64条1項)の規定は同法1条の目的・原則を達成するための体制の一端として定められたものであって,もとより民主主義に資するものとして合理性を有している。

  したがって,控訴人の主張は失当である。

  イ 憲法19条違反について

憲法19条で保障される内心とは,特定の歴史観,世界観等の人格形成に関わる内心を指すものであって,放送法で定められた受信料の支払を回避したい,受信契約の締結を回避したい等の内心がこれに含まれないことは明らかである(前掲東京高裁平成22年6月29日判決・その上告審である最高裁第三小法廷上告棄却及び上告不受理決定[甲6]参照)。また,控訴人には,受信設備を設置しないことによって,受信契約を締結しない自由があるところ,控訴人はその自由な意思に基づいて受信契約を締結したものである。

  したがって,控訴人の主張は失当である。

 (2) 本件受信契約の解約による終了(争点(2))

 (控訴人の主張)

  ア 受信契約の内容は,被控訴人が提供する放送を受信する対価として受信料を支払うというものであり,この内容について,被控訴人と消費者(受信設備設置者)間の合意が認められる。また,受信設備を設置するか否かは消費者の自由意思に任されており,解約も一定の要件を満たすことで可能とされていることも考え合わせれば,控訴人との受信契約は,当事者双方の合意によって成立する契約であることが確認される。したがって,受信契約には,消費者契約法の適用がある。

  イ 平成20年改正前の規約9条は「放送受信契約者が受信機を廃止することにより,放送受信契約を要しないこととなったときは,放送受信章を添えて,直ちに,その旨を放送局に届け出なければならない。」と規定している。同規定は,受信契約の解約の方法を著しく制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるから,消費者契約法10条に反し無効である。

  そして,控訴人は,被控訴人に対し,平成16年2月ころ,受信契約の解約の意思表示を行ったから,本件受信契約は終了している。

 (被控訴人の主張)

 消費者契約法11条2項は,個別法が消費者契約法に優先して適用されることを規定しており,その趣旨は,民法及び商法以外の個別法の私法規定の中に,消費者契約法の規定に抵触するものがあることを前提として,個別法が当該業種の取引の特性や実情,契約当事者の利益等を踏まえた上で取引の適正化を図る点にある。

 受信契約の締結を義務付ける旧法32条(新法64条)は,放送法の構造と立法趣旨の下に定められたものであって,もとより合理性のある規定であり,かつ,旧法32条(新法64条)と同趣旨の下で定められた規約9条も,あらかじめ総務大臣の認可を受け,一般に周知される等の手続も経たものであって(旧法32条3項[新法64条3項],規約15条),旧法32条(新法64条)及び規約9条が消費者契約法11条2項にいう「民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがある」場合に当たる。したがって,旧法32条(新法64条)及び規約9条は,当事者間でこれと異なる合意をすることを禁止する強行規定と解されるものであることからすれば,そもそも,旧法32条(新法64条)及び規約9条と異なる契約を締結することができない場合であって,消費者契約法10条が適用され得る余地はないというべきである(前掲東京高裁平成22年6月29日判決参照。なお,前記諸事情を考慮すれば,旧法32条(新法64条)及び規約9条が,控訴人の主張する消費者契約法10条の「民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。)。

 (3) 消滅時効の成否(争点(3) )

 (控訴人の主張)

  ア 受信料債権の法的性質について

  受信契約の内容は,被控訴人が提供する放送を受信する対価として受信料を支払うというものであり,他のインターネットの有料動画配信契約等の私法上の契約と同様である。したがって,受信契約は私法上の契約である。

  仮に,行政法上の契約であっても,民法の時効の規定が除外されることにはならず,個別法が時効期間を定め,又は民法の時効の規定を排除するものでない限り,民法の時効の規定が適用される。現に水道契約は,行政法上の契約であるものの,短期消滅時効が適用されている(東京高裁平成13年5月22日判決・判例体系[最高裁平成15年10月10日第二小法廷上告不受理決定]参照)。

  被控訴人は,国又は地方公共団体とは別個の法人格であるから,当然に会計法30条や地方自治法236条は適用されない。また,放送法において,受信料の時効期間について何ら定めておらず,かつ,時効期間を定めていないからといって民法の時効の規定を排除する趣旨であるとは解しがたい。

  以上によれば,消滅時効期間については,一般法たる民法の適用又は準用がされるというべきである。

  イ 消滅時効期間について

  (ア) 本件受信料債権は,民法174条2号の「自己の労力の提供・・・を業とする者の・・・供給した物の代価に係る債権」に当たるから,消滅時効期間は1年である。

  (イ) 本件受信料債権は,民法173条1号の「生産者・・・が売却した・・・商品の代価に係る債権」に当たるから,消滅時効期間は2年である(電気料債権につき大審院昭和12年6月29日判決・民集16巻1014頁,前掲東京高裁平成13年5月22日判決[最高裁平成15年10月10日第二小法廷上告不受理決定]参照)。

  (ウ) 本件受信料債権は,民法173条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作・・・することを業とする者の仕事に関する債権」に当たるから,消滅時効期間は2年である。

  (エ) 本件受信料債権は,民法169条の「年又はこれより短い時期によって定めた金銭・・・の給付を目的とする債権」(以下「定期給付債権」という。)に当たるから,消滅時効期間は5年である。

  (オ) 被控訴人による放送サービスの提供は「他人のためにする製造・・・に関する行為」(商法502条2号)に当たり営業的商行為である。

   また,被控訴人は商行為をすることを業とする商人(商法4条1項)であり,仮にそうでなくとも公法人が行う商行為については,商法2条が適用される。

   したがって,本件受信料債権は,商法522条の「商行為によって生じた債権」に当たるから,消滅時効期間は5年である。

 (被控訴人の主張)

  ア 受信料債権の法的性質について

  受信料債権は,対価性のない特殊な負担金という法的性質を有するものである。

  イ 消滅時効期間について

 (ア) 民法173条,174条について

  上記のとおりの受信料債権の法的性質からとすると,受信料債権は,労働・商品等の代価を内容とする民法174条2号,同法173条1号及び2号の債権とは法的性質を異にする。また,受信料債権は,文言上も民法174条2号,同法173条1号,同法173条2号のいずれにも当たらない。

 (イ) 民法169条について

  a 民法169条の立法趣旨

  民法169条は,「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」(定期給付債権)について5年の短期消滅時効を規定する。

  その立法趣旨は,①弁済がないと直ちに債権者に支障が生ずる債権であるから速やかに弁済されるのが通常であること,②通常それほど多額でないため受領証の保存が怠られがちであって後日の弁済の証明が困難であること,③定期金は長年放置された後に突然支払の請求をされると多額になってしまうため債権者の懈怠に対して特に債務者を困窮から保護する必要があることと解されている。

  しかし,受信料債権については,①ないし③の立法趣旨はいずれも当てはまらない。

 b 受信料債権については,民法168条1項所定の基本権たる定期金債権は存在しないから,民法169条は適用されない。

 すなわち,受信機を設置した者が旧法32条1項(新法64条1項)に定める契約締結義務に基づき放送受信契約を締結した場合,当該契約は受信機設置の日から成立し,受信料債権は受信機設置の月から発生するとされるものである。このように受信料債権の発生は受信機の設置の事実に起因するものであって,受信料を定期的に給付することを目的とする基本権たる定期金債権に起因して発生するものではない。

 c 民法168条1項の適用を認めた場合の実質的な不都合性

  そもそも民法168条1項が定期金債権について第1回目の弁済期から20年間での時効消滅を認めたのは,長く続く定期金について最後の弁済期まで時効を進行させないのは,不当とされたからである。

  仮に,受信契約によって発生する基本権が民法168条1項の「定期金の債権」に該当するとした場合,当該基本権は第1回目の弁済期から20年間行使しないときに消滅することになる。

  しかしながら,被控訴人との間で受信契約を締結することが,被控訴人の放送を受信することができる受信設備を設置した者の法的義務とされ(旧法32条1項[新法64条1項]),あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ受信料を免除することはできず(旧法32条1項[新法64条2項]),被控訴人の平成23年度の収支予算,事業計画及び資金計画が承認された際には,「公平負担の観点からも,契約の締結と受信料の収納が確保」されるようにとの衆議院の附帯決議がされているとおり,受信料については,国民・視聴者の公平負担が強く求められており,20年間行使されないことにより基本権が時効消滅することを認めるのは妥当ではなく,否定されるべきである。

 d 永小作料債権および賃借料債権との相違点

  なお,例外的に,基本権につき民法168条1項の適用を否定されつつ,支分権につき民法169条が適用されると解されている債権として,永小作料債権及び賃借料債権を挙げることができる。

  しかし,これらの債権について上記のような解釈が認められるのは,仮に,基本権の消滅を認めてしまうと,永小作権については,無償の永小作権となってしまい,物権法定主義(民法175条)に反すること,賃借料債権については,無償の賃借権となってしまい,賃借料債権が発生することが契約の要素となっている賃貸借契約の概念と矛盾してしまうことといった,形式的な理由によるものである。

  受信料債権については,永小作料債権及び賃借料債権に関する議論に見られるような形式的な理由は見出し難く,このような例外的な解釈をする前提を欠いている。

 e 上記のとおり,民法169条を含む短期消滅時効制度については,その適用範囲はできるだけ狭く解すべきである。

  特に,受信契約に基づく受信料は,対価性のない特殊な負担金という性質を持つとされる,他に例のない極めて特異な法的性質を有するものであり,その受信料に関する債権も,定期給付債権の典型とされる賃借料債権や給料債権等とは全く異なる法的性質を有する債権であるから,定期給付債権とは認められないと解すべきである。受信料債権について,あえて定期給付債権に該当するとして短期消滅時効を認めるべき合理的な理由や必要性は何ら存在しないばかりか,短期消滅時効を認めることは受信料の公平負担を阻害する弊害も危惧される。

 f 以上によれば,受信料債権には,民法169条は適用されない。

 (ウ) 商法522条について

  被控訴人の放送等業務の遂行は,商法502条が定める営業的商行為には当たらない。

  また,被控訴人は,営利を目的として業務を行うものではないから,商法4条1項の商行為をすることを業とする商人には該当しない。さらに,被控訴人の放送等業務の遂行は商行為ではないから,商法2条の規定に基づいて商法が適用されることはない。

  したがって,受信料債権は,商行為によって生じた債権ではないから,商法522条が適用される余地はない。



(旭川地裁 平成24年1月31日判決)(3)へ続く


【判例】未払いNHK受信料、5年の短期消滅時効が適用される(旭川地裁平成24年1月31日判決)(3)

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第3 当裁判所の判断

 1 受信契約及び受信料債権の法的性質

 争点についての判断をする前提として,放送法の趣旨及び規定を概観した上,受信契約及び受信料債権の法的性質について検討する。

 (1) 放送法の趣旨及び規定

   旧法1条[新法1条も同じ]は,放送が国民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること,放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること,放送に携わる者の職責を明らかにすることによって,放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることの各原則に従って,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ることを法の目的として規定している。

  これを受けて放送法は,我が国の放送制度について,一般放送事業者による放送(いわゆる民放)及び被控訴人による放送という独立した二系列の事業システムを構築し,被控訴人を,「公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信できるように豊かで,かつ,良い放送番組による」国内放送を行うとともに,「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い,あわせて国際放送」等を行うことを目的とする法人として位置付け(旧法7条[新法15条],旧法8条[新法16条]),その目的のために一定の業務を行う義務を課している(旧法9条[新法20条])。また,放送番組の編集及び放送等に当たっては「豊かで,かつ,良い放送番組」の放送を行うことによって「公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように,最大の努力を払うこと」など,一般放送事業者とは異なる配慮や施策等を行うことが義務付けられている(旧法44条[新法81条])。また,その事業の運営に要する財源の確保に関し,被控訴人の番組編成や報道等において,国家からの独立性及び中立性を確保して,被控訴人の表現の自由を確保するため,国庫からの支出や予算配分による方式は相当ではないとされ,また,被控訴人の公共性から,他人の営業に関する広告の放送が禁止され,広告料収入の途を閉ざされている(旧法46条1項[新法83条1項])。そこで,被控訴人の自主財源を確保する仕組みとして,被控訴人の放送を受信できる受信設備を設置した者に対し,被控訴人の放送の視聴の有無にかかわらず,被控訴人との受信契約を義務付け(旧法32条1項[新法64条1項]),同契約に基づき,契約者は受信料の支払義務を負うこととなっており,この受信料収入が被控訴人の財源の主要部分となっている。

  また,被控訴人には,公共性を確保して適正に運営されるための仕組みのほか,契約者からの受信料の適正な設定やその使途についても国会を通じて適正に監督がされるような仕組みが備わっている。すなわち,被控訴人には,被控訴人の経営方針その他業務の運営に関する重要事項を決定する権限と責任を有する経営委員会が設置され(旧法13条[新法28条],旧法14条[新法29条]),同委員会を構成する委員12名は,両議院の同意を得て内閣総理大臣によって任命されている(旧法15条[新法30条],旧法16条[新法31条])。

  また,被控訴人の毎事業年度の収支予算,事業計画,資金計画,財務諸表及び業務報告書は,総務大臣に提出された(旧法37条1項[新法70条1項],旧法38条1項[新法72条1項],旧法40条1項[新法74条1項])上,毎事業年度の収支予算,事業計画及び資金計画については,国会の承認事項とされ(旧法37条2項[新法70条2項]),業務報告書については,国会の報告事項とされ(旧法38条2項[新法72条2項]),財務諸表については,会計検査院の検査を経て国会に提出される(旧法40条3項[新法74条3項])ことになっている。

  さらに,受信契約の条項の設定及び変更には総務大臣の認可が必要とされ(旧法32条3項[新法64条3項]),受信料の月額は,国会で収支予算が承認されることにより定められ(旧法37条4項[新法70条4項]),受信料の免除は,総務大臣の認可を受けた基準(旧法32条2項[新法64条2項])である日本放送協会受信料免除基準により行われることになっている。

 (2) 受信契約及び受信料債権の法的性質

   旧法32条1項(新法64条1項)は,「協会(日本放送協会)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定している。前述したとおり,同規定は,被控訴人の番組編成や報道等において,国家からの独立性及び中立性を確保し,被控訴人に課された公共性のある事業を遂行するため,被控訴人の放送を受信できる受信設備を設置した者に対し,被控訴人の放送の視聴の有無にかかわらず,被控訴人との受信契約の締結を義務付けるとともに,同契約に基づき,契約者は受信料の支払義務を負うこととしている(旧法32条2項[新法64条2項]参照)。これを受けて,規約は,受信契約の種別ごとに受信料月額に差異を設け,その上で実際の視聴時間と関係なく世帯単位で一律に定額の受信料を支払うべきことを義務付けている(規約5条)。

  上記の旧法32条1項(新法64条1項)の規定による受信契約の締結の義務付けは,被控訴人の独立性,中立性,公共性を確保しつつ自主財源を確保するため,放送法が定めた仕組みであること,被控訴人の放送を実際に視聴したか否か及びその視聴時間と関係なく受信料債権が発生すると定められていることからすると,受信料の法的性質は,放送の視聴と対価性のあるものとはいえず,放送法に基づき,公共放送を行う法人である被控訴人に徴収権が認められた特殊な負担金と解するのが相当である。

2 本件受信契約の無効(争点(1))

 (1) 民法1条2項,旧法1条[新法1条],憲法21条及び国民主権原理違反について

  控訴人は,旧法32条1項(新法64条1項)は,契約当事者間の信義則(民法1条2項),放送法の目的(旧法1条[新法1条]),憲法21条及び国民主権原理に反すると主張する。

  しかしながら,前記1で認定したとおり,旧法32条1項[新法64条1項]の受信契約の締結の義務付けは,被控訴人の独立性,中立性,公共性を確保しつつ自主財源を確保するため,放送法が定めた仕組みであると解されることからすると,旧法1条[新法1条]に反するものとはいえない。

  また,前記1で認定したとおり,受信契約において,放送の視聴と受信料の支払との間に直接の対価性は認められないけれども,被控訴人は,公共放送を行う法人としての目的を達成するため,一定の業務を行うことが義務付けられていること(旧法9条[新法20条]等),公共性を確保して適正に運営するための仕組みや,契約者からの受信料の適正な設定やその使途についても国会を通じて適正に監督される仕組みが備わっていることからすると,旧法32条1項(新法64条1項)は,信義則(民法1条2項)に反するとはいえない。

  さらに,旧法32条[新法64条]及び規約9条は,受信契約の締結及び被控訴人の放送を受信できる受信機を廃止しない間の受信料の支払を義務付けるだけであって,テレビ番組の視聴を強制したり制限するものではないから,控訴人の知る権利ないし表現の自由を侵害するものではなく,また,国民主権原理とは無関係である。

  したがって,控訴人の主張は理由がない。

 (2) 憲法19条違反について

  控訴人は,旧法32条1項(新法64条1項)は,受信設備を設置した者に被控訴人との契約締結を強制することを意味するから,憲法19条に違反すると主張する。

  憲法19条の「思想及び良心」とは,信仰に準ずる世界観,主義,主張等の個人の人格形成の核心をなすものを意味するものと解されるところ,旧法32条(新法64条)及び規約9条に基づき受信契約の締結及び被控訴人の放送を受信できる受信機を廃止しない間の受信料の支払が義務付けられるからといって,契約者の「思想及び良心」の自由に対する制約があるとは認められない。

  したがって,控訴人の主張は理由がない。

3 本件受信契約の解約による終了(争点(2))

  控訴人は,規約9条は受信契約の解約の方法を著しく制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるから,消費者契約法10条に反し無効であるところ,控訴人は,被控訴人に対し,平成16年2月ころ,本件受信契約の解約の意思表示をしたから,本件受信契約は終了していると主張する。

  これに対し,被控訴人は,控訴人が本件受信契約の解約の意思表示をした事実を否認しているところ,控訴人から何ら具体的な立証がない本件においては,控訴人が本件受信契約の解約の意思表示をした事実を認めることはできない。

  また,前記1及び2で認定・判断したとおり,旧法32条1項(新法64条1項)の規定は合理性を有し有効な規定であるところ,同規定によれば,被控訴人の放送を受信することができる受信設備を設置している限り,受信契約にの締結を義務付けているから,受信設備の廃止についての立証がない限り,受信契約の終了を認めることはできないところ,本件においては,控訴人から受信設備の廃止についての具体的な立証はない。

  (なお,前記1で認定したところによれば,旧法32条(新法64条)及び規約9条が,控訴人の主張する消費者契約法10条の「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たるとはいえない。)

  そうすると,その余の点については判断するまでもなく,控訴人の本件受信契約の解約による終了の主張は理由がない。

4 消滅時効の成否(争点(3))

 (1) 民法173条,174条について

 ア 控訴人は,本件受信料債権は,民法174条2号の「自己の労力の提供・・・を業とする者の・・・供給した物の代価に係る債権」に当たるから,消滅時効期間は1年であると主張する。

  しかしながら,同号の「自己の労力の提供を・・・業とする者」とは,使用者と従属関係に立たず,かつ,主として肉体的労力を提供する者を意味するものと解される(最高裁昭和36年3月28日第三小法廷判決・民集15巻3号617頁参照)ところ,被控訴人がこれに当たるとは認められない。

 したがって,控訴人の主張は採用できない。

 イ 控訴人は,本件受信料債権は,民法173条1号の「生産者・・・が売却した・・・商品の代価に係る債権」に当たるから,消滅時効期間は2年であると主張する。

  しかしながら,前記1で認定したとおり,受信料債権は対価性のない特殊な負担金としての性質を有するものであることに照らすと,生産者が売却した商品の「代価」であるとは認められない。この点は,利用の対価としての性質を有する電気料債権や水道料債権とは性質を異にするものと解される。

  したがって,控訴人の主張は採用できない。

 ウ 控訴人は,本件受信料債権は,民法173条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作・・・することを業とする者の仕事に関する債権」に当たるから,消滅時効期間は2年であると主張する。

  民法173条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作・・・することを業とする者」とは,同号の立法趣旨が手工業,家内工業的規模で注文により他人のために仕事をし,又は物を製造加工する者の代金決済が,社会の取引の実情に照らして短期に決済されるという点にあると解されることからすると,同号の物を製作することを業とする者には,近代工業的な機械設備を備えた製造業者のような者は含まれないと解するのが相当である(最高裁昭和44年10月7日第三小法廷判決・民集23巻10号1753頁参照)。

  これを本件についてみると,前記1で認定した被控訴人の事業の内容に照らし,被控訴人は「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作」することを業とする者に当たるとは認められない。

  したがって,控訴人の主張は採用できない。

 (2) 民法169条について

  ア 民法169条は,「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」(定期給付債権)について5年の短期消滅時効を規定する。

   その立法趣旨は,①弁済がないと直ちに債権者に支障が生ずる債権であるから速やかに請求され弁済されるのが通常であること,②通常それほど多額でないため受領証の保存が怠られがちであって後日の弁済の証明が困難であること,③定期金は長年放置された後に突然支払の請求をされると多額になって債務者が困窮することにあると解されている。そして,民法169条が適用されるものの具体例として,利息,賃料,小作料,扶養料,年金,給料等が挙げられる一方,単に分割払いの特約が付されているにすぎない債権は同条の適用外とされている。

  イ そこで,受信料債権について民法169条が適用されるか否かを検討する。

   受信料債権については,旧法32条(新法64条)を受けた規約5条及び6条において,契約者が受信契約に基づく受信料の支払義務を負うこと及びその月額受信料を2か月単位で支払うことが定められ,各期の弁済期の到来によって具体的な受信料債権(請求権)が発生することになっているものと認められる。そうすると,受信料債権については,前者の規約に基づき発生する受信料債権を基本権として,後者の具体的な受信料債権(請求権)が支分権として発生するという関係にあることが認められる。したがって,本件受信料債権については,定期給付債権の支分権に当たり,民法169条が適用されると解するのが相当である。

  また,民法169条の立法趣旨との関係をみると,上記立法趣旨のうち,①(迅速に行使されるのが通常)については,確かに,証拠(甲25)によれば,被控訴人において平成23年3月31日現在で受信料支払の延滞のある契約が204万件を超えている実態が認められるが,一方において,前記1で認定したとおり,被控訴人においては広告料収入の途が閉ざされており,受信料の収入によって自主的財源を確保することとしているのであって,それゆえ被控訴人は少額であっても本件訴えを提起しているのであり,受信料債権が「弁済がないと直ちに債権者に支障が生ずる債権」ではないなどと言うことはできず,上記実態は単に受信料債権の取立てが事実上困難であること等を示しているにすぎない。次に,②(受領証の保存を期待し難い)については,確かに,証拠(甲2,4)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が平成20年10月1日に訪問集金制度を廃止したことが認められるが,それ以前においては少なからず訪問集金がされ,その場合には受信料支払の証拠が領収書のみであったのであり,現在訪問集金廃止から約3年半経過したにとどまり,未だ領収書等を紛失したとしても支払の記録を容易に確認することができる状態にまで至っていない。そして,③(長年放置後の突然の請求は債務者を困窮させる)については,受信料は低額に抑えられているとはいえ,契約者の収入や所得の状況にかかわらず,受信設備の設置者との間で受信契約の締結が義務付けられる仕組みとなっており,契約者の収入や所得の状況は多様であることからすると,長年放置後の突然の請求によって債務者が困窮することもあり得る。

  以上によれば,これらの趣旨は受信料債権にも相応に当てはまるものと言える。

  ウ この点について,民法学者であるA教授は,「日本放送協会の有する放送受信料債権と民法169条の適用について」と題する意見書(甲13。以下「本件意見書」という。)において,①受信料債権については,その基本権について民法168条1項は適用されず,その結果,特段の事情のない限り支分権について同法169条は適用されないし,また,特段の事情も存在しないこと,②同条の趣旨の一つとして,長年にわたって積み重なった額を一度に請求されると債務者が困窮するおそれがある,という点には債務者保護の側面だけでなく,債権者の懈怠に対するサンクションという面があるところ,被控訴人には,サンクションを加えるまでの懈怠があるとはいえないことを主たる理由として,受信料債権には同条は適用されないと述べている。

  しかしながら,上記①についてみると,本件意見書は,基本権について民法168条1項の適用がない場合には特段の事情のない限り支分権について同法169条の適用がないとする。しかし,本件意見書は,小作料債権や賃借料債権のように支分権につき同条の適用がある場合において,特段の事情があるときには,その基本権につき同法168条1項の適用を否定する事例があることを論証するにとどまっており,かかる論証から,基本権について同項の適用がない場合には特段の事情のない限り支分権について同法169条の適用がないとするのは,いささか論理が飛躍しており,上記見解を採用することはできない。

  そして,規約に基づき発生する抽象的な受信料債権と各期の弁済期の到来によって発生する具体的な受信料債権とは基本権と支分権の関係に立っており,このような関係にある債権のうち,支分権である受信料債権に民法169条が適用されることは前述したとおりである。基本権から派生した支分権としての性質を有し,民法169条の要件に該当する債権について同条の適用を排除すべき理由はないから,基本権である受信料債権に民法168条1項が適用されるか否かにかかわりなく,支分権である受信料債権には民法169条が適用されるというべきである。

  また,上記②については,従前,被控訴人は,契約者の任意の履行に期待して,受信料の強制的な徴収を差し控えてきたという経過がうかがえるけれども,前記1で認定した被控訴人の公共放送を行う法人としての役割及び受信料債権は対価性のない特殊な負担金としての性質を有することからすると,受信料負担の公平性が強く要請されるというべきであり,被控訴人において,長期間にわたる受信料の不払に対して適正な管理を怠るということになれば,債権者の懈怠という側面があることは否定できない。

  以上によれば,本件意見書の見解を採用することはできない。

  エ そして,前記前提事実(2)によれば,本件受信料債権の弁済期は,毎年4月1日から2か月ずつを1期とし,毎期末限りであることが認められ,前記前提事実(5) 及び(6) によれば,被控訴人は,平成23年1月22日,控訴人に対し,本件受信契約に基づき,平成16年12月1日から平成22年11月30日までの受信料合計9万9140円及びその遅延損害金の支払を求めて,旭川簡易裁判所に支払督促の申立てをしたこと,控訴人が被控訴人に対し,平成23年11月22日の本件口頭弁論期日において,本件受信料債権について民法169条の消滅時効を援用するとの意思表示をしたことは裁判所に顕著である。

   そうすると,本件受信料債権のうち,平成16年12月1日から平成17年11月30日までの分は,弁済期から民法169条所定の消滅時効期間である5年の経過により消滅したものと認められる。

5 結論

  以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,被控訴人は,控訴人に対し,平成17年12月1日から平成23年7月31日までの受信料及びこれに対する遅延損害金の請求をすることができるところ,前記前提事実(2)ないし(4)によれば,受信料額は,平成17年12月1日から平成20年9月30日までは月額1395円,同年10月1日から平成23年7月31日までは月額1345円であると認められる。

  したがって,被控訴人の請求は,被控訴人が控訴人に対し,本件受信契約に基づき,受信料9万3160円及びうち8万2400円に対する平成23年2月1日から,うち1万0760円に対する平成23年10月1日からそれぞれ支払済みの日が属する月の前月(支払済みの日が偶数月に属する場合)又は前々月(支払済みの日が奇数月に属する場合)の末日まで,約定の2か月当たり2パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。

  よって,本件控訴は一部理由があり,本件附帯控訴は全部理由があるから,原判決を上記限度で認容する旨に変更し,その余の被控訴人の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項前段,64条本文を,仮執行宣言につき同法310条本文を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。

旭 川 地 方 裁 判 所 民 事 部

裁判長裁判官    田 口   治 美

裁判官         田 中   寛 明

裁判官          光   絢 子

 

 

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