東京・台東借地借家人組合1

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保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

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借地の一部を返還せよ、さもなくば地代を2倍に (京都・下京区)

2010年03月26日 | 地代の減額(増額)

 京都市下京区。昔から周辺に結構たくさんの土地を持つ地主が、ガレージにしたいからと借地の返還請求をしてきました。地主は、古くなった借地上の建物を取り壊して、その土地の一部をを返せと要求しています。

 同時に残りの借地部分の地代を倍額にする請求をしてきました。また借地の返還請求をされていない近所の借地人にも倍額の増額請求がありました。

 地代の倍額増額の請求は2年前にもあったばかりです。その時は 値上げに応じた借地人もさすがに「今回は応じられない」と団結しています。借地の一部返還請求を受けた組合員は断固拒否、値上げにも応じないと頑張っています。

 現在、地代は受け取りを拒否されています。みんなでそろって地代は供託中です。このケース、家主協会も一枚噛んでいます。

 

 

京都借地借家人組合連合会新聞より

 

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【Q&A】 両親が死亡し、「契約を解消するか、新規契約をするか」の選択を迫られている

2010年03月25日 | 契約・更新・特約

(問) 私は、父が戦前から借りている借家に住んでいます。父は、3年前に死亡し今年2月に母親も病死しました。家主からは、両親には家を貸したがあなたには貸していないので明け渡して欲しい。応じなければ新規契約をしてもよいが敷金50万円と家賃は10万円の条件になると言い、「契約を解消するか新規契約をするか」の選択をせまられています。どうしたらよいでしょうか。


 (答) 借家の賃借権は、相続されます(註1)。また、内縁関係のある事実上の夫婦については継承されることになっています(註2)。

 お問い合わせの方の場合、家賃は決められた時期にきっちりと支払っていれば賃借権は継承されることになっています。

 ご両親が死亡し、同居していたあなたが同一条件で賃借権を継承できるのですから、改めて契約書を取り交わす義務はありません。また、改めて家賃を改定する必要もありません。

 

 

大借連新聞より

 

 


 

(註1) 民法896条は「相続人は、相続の開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定している。

 相続によって遺産は包括的に承継される。遺産中の不動産・動産だけではなく、債券や債務を承継するもので、被相続人の地位の承継と解されている。勿論、借家権も財産的価値を持ち相続され、賃借人の地位も承継される。相続人が数人ある場合には、借家権は共同相続され、それらの相続人が共同賃借人となる。居住していない相続人も借家権を相続することは出来る。


(註2)  借家人が死亡した場合、同居の内縁の配偶者や事実上の養子は、相続人でないから、居住していても、借家権を受け継ぐことが出来ない。従って、居住していた借家に住むことが出来なくなる。

 しかし、死亡した借家人に相続人がいない場合は、借地借家法36条1項によって同居していた内縁の配偶者や事実上の養子が賃借権を承継できると規定し、限定的ではあるが借家権を保護している。

 しかし、相続人がいる場合は、特別の理由がない限り借家権を放棄しないから、内縁の配偶者や事実上の養子の居住権を保護する必要がある。

 そこで、判例は相続人の借家権を同居者が援用して、家主の明渡請求に対抗出来るとしている。事実上の養子の居住権を、家主の明渡請求に対して保護している(最高裁昭和42年4月26日判決)。内縁の妻(最高裁昭和42年2月21日判決)や内縁の夫(最高裁昭和37年12月25日判決)に対しても同様の理由で賃借権の承継を認め、居住権を保護している。

 このように判例と借地借家法36条1項とによって内縁の配偶者や事実上の養子の居住権は保護されている

 また、内縁の配偶者や事実上の養子に対する相続人からの明渡請求は「権利濫用」になり認められないとしている(最高裁昭和39年10月13日判決)。

 なお、借地借家法36条の保護を受けるのは、居住用借家(店舗併用住宅も含む)であって、営業用の借家(店舗、事務所、倉庫、工場)には適用されない。また、保護の適用対象は死亡した借家人と同居していたことが必要である。

 (註1)、(註2)は東京・台東借地借家人組合

借地借家法
(居住用建物の賃貸借の承継)
第36条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。
 ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対(❊賃借人の権利義務を承継しない旨)の意思を表示したときは、この限りでない。

 

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家賃保証会社に鍵を交換され、部屋から締め出された (大阪・淀川区)

2010年03月23日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 昨年12月8日、淀川区塚本地域の賃貸マンションに居住していたFさんから賃借中のマンションの部屋の鍵が取り替えられ、使用不能になっているので助けてほしいとの相談が大借連(全大阪借地借家人組合連合会)にありました。

 Fさんの訴えによると、11月分の家賃が病気のために滞納し、家賃保証会社と支払い方法について話し合っていたが、11月18日に突然ドアーの鍵が取り替えられ入居できなくなりました。

 家賃保証会社へ入居できるように再三要請したが、聴き入れられませんでした。「カプセルホテルで寝泊りをしていたが、一泊2700円の費用も負担不能となった。生活保護手当も受給しているが限度に来た。どうしたらよいのか」という内容でした。

 大借連は、12月9日、「賃貸住宅追い出し屋被害者対策会議」の掘泰夫事務局長(司法書士)と連絡し、八塚博幸司法書士が窓口となりFさんの救済対策を検討することになりました。

 同日、Fさんは、八塚司法書士と面談し、現地の賃貸マンションへ出向くと鍵が開けられ部屋のの中にあったすべての家財道具はどこかへ持ち去られていました。

 「対策会議」は、Fさんの住まいを確保するために、弁護士と司法書士がボランティアで奔走し、淀川区役所へ生活保護手当の継続と生活支援基金などの支給を受け、12月26日に新たな家へ移転させることができました。

 また、Fさんは、家賃保証会社を警察へ告訴すると共に損害賠償請求を提訴して争っています。

 

 

大借連新聞より

 

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先代の家主が亡くなった途端に店舗の明渡し請求  (東京・大田区)

2010年03月15日 | 建物明渡(借家)・立退料

 大田区中央地域所在の木造瓦葺2階建店舗兼共同住宅の内、階下東南角店舗約4・5坪を賃借して、鮮魚店を営んでいるAさんは、明渡しを求められて知人の紹介で組合に入会した。

 現家主の先代に請われて店を開き、先代は狭い店内を有効に活用するために色々と設備を施してくれる協力的な家主だった。先代家主夫妻の死去後相続人の息子は屋根を葺き替える等の補修工事を行っているのに建物の老朽化や自己使用を理由にしてきた。家主の代理人弁護士は、家賃が坪1万円と安いので立退料は家賃の1年分という提案をしてきたので拒否すると裁判になった。家主は高齢を理由にするが、Aさんは、お店はまだ5~6年はやれると至って意気軒昂。早速、組合を介して弁護士に依頼した。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

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更新料の支払い約束は無効 (東京・葛飾区)

2010年03月12日 | 更新料(借地)

 葛飾区新宿で借地をしているAさんは、地主から20年が経過したので更新料を支払って契約を更新するように請求を受けたが、組合を通じて法定更新を主張した。

 しかし、地主はAさんを自宅に呼び出し、言葉巧みに契約書に署名捺印させ、Aさんはこれに応じてしまった。契約書の特約には更新料を分割で支払う約束があり、契約書を作成してしまってからAさんは、「何とかならないか」と組合に相談に見えた。

 これは消費者契約法第10条に反する特約なので取り消し無効にすべきとの結論に達し、その旨を書面で地主に通知した。その後も地主から督促状なるものものが来るが、書面の無効通知を確信し頑張っている。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

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地主の代理弁護士が更新料と10年の借地契約を要求 (東京・豊島区)

2010年03月11日 | 契約・更新・特約

 豊島区高田に住むYさんは、昨年の9月に地主(寺院)の代理人弁護士から「来年4月に更新期間が満了を迎えるが、当方で自己使用するから更新を拒絶し明け渡すよう求める」との通知書が送られてきた。

 驚いたYさんは、組合に相談に来た。組合では、Yさんに「借地の更新を拒絶し、契約を解除するには正当な事由が必要なこと」を話し、相手の地主が寺院であることなどから自己使用で明け渡しを求めてきても「正当な事由」がないことを説明した。その上で、明渡し請求については拒絶し、建物が存在しているので、更新して引き続き賃借する旨の通知を相手に出すことにした。

 その後、代理人の弁護士から、契約を更新するなら、更新料の支払いと更新契約書案に署名捺印するよう請求してきた。その内容は、更新料支払い特約がなくとも、前回支払ったから当然支払うものであるという見解と更新契約書案もこの借地契約が旧借地法の適用を受けているにもかかわらず更新期間は10年間とするなど到底弁護士が代理人になっているとは思えない中身であった。

 組合と相談し、支払い特約のない更新料については支払わないということと10年という契約期間(✳)の法的不備を指摘した通知書を出すことにした。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

(✳)参考記事
【Q&A】 借地更新の条件は期間10年で、更新は今回限りという厳しい内容

【判例】 *更新料支払の慣習を否定し、更新料支払義務なしとした最高裁昭和51年10月1日判決 (1)

【判例】 *更新料支払の慣習を否定し、更新料支払義務なしとした最高裁昭和53年1月24日判決 (2)

【判例紹介】 かつて更新料を支払った事実があっても更新料の合意とは認められない

 

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寝たきりの91歳の高齢者に明渡請求 (東京・荒川区)

2010年03月09日 | 建物明渡(借家)・立退料

 荒川区南千住1丁目で昭和50年5月末より木造2階建住居を借りて住んでいるAさんは、長男と2人で住んでいて、他区にいる娘さんが借家契約の保証人になっている。Aさんは91歳と高齢の上寝たきりで毎日を送り、その面倒を自営業の長男がみている。

 昨年暮れに家主の代理人と称し行政書士が現われ、「今年5月末で契約が切れるし、築後31年経っているので老朽化したので立退いてもらいたい」と言ってきた。同時に保証人の娘さんにも内容証明郵便が送られてきて至急回答せよとのことだった。

 Aさんの長男は、寝たきりの年寄りがいるのでせめて後2年待ってほしいと願ったが、家主の代理人からは「引越し代と移転先の費用ぐらいは補償するから更新は認めない」と言われた。組合に入会したことを代理人に伝えたところ急に態度が穏やかになった。

 今度はこちらから内容証明郵便で「明渡しの正当事由は成立しない。家屋本体はまだまだしっかりしている。住み続けるのに十二分に可能である」と明渡しを断固拒否した。Aさんは「厳しい交渉は続くが、負けずに頑張っていく」と決意している。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 敷金等返還請求事件 名古屋簡易裁判所(平成21年06月04日判決)

2010年03月08日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介


◆事件番号・・・・  平成20(少コ)438
◆事件名・・・・  敷金等返還請求事件(通常訴訟手続に移行)
◆裁判所・・・・  名古屋簡易裁判所
◆裁判年月日・・・・  平成21年06月04日
◆判示事項・・・・  敷金は全額償却するとの約定の下に敷金が差し入れられていた建物賃貸借契約が建物入居前に賃借人により解約された場合において,敷金は,賃借人に未払家賃,修繕費等の債務がない場合,賃貸人が賃借人に対して返還する義務を負うものであって,敷金を全額償却する旨の定めは,他に合理的な理由がない限り,消費者契約法10条により無効になると解し,敷金全額を返還すべきものとした事例

 平成20年(少コ)第438号敷金等返還請求事件(通常訴訟手続に移行)

 

判         決

 主         文

 

 1 被告は,原告に対し,金34万2000円及びこれに対する平成21年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを10分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
 4 この判決は,1項及び3項に限り,仮に執行することができる。

 

事 実 及 び 理 由

 

第1 請求
 1 被告は,原告に対し,金44万7000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年 5分の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 3 仮執行宣言


第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
 原告は,被告との間で,平成20年10月5日,k市l区m町n-o所在の建物(以下「本件建物」とい。)について,原告を借主,被告を貸主とする賃貸借契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

 原告は,被告及び仲介業者に対して,本件契約に基づき,次の金員を支払った。

 1 敷金・・・・ 30万円 (※裁判所は全額返還を認めた)
 2 同年11月分家賃・・・・ 12万6000円 (※裁判所は解約予告分を除いた家賃5日分21000円の返還を認めた)
 3 仲介手数料・・・・13万2300円 (※仲介業者が全額返還)
 4 消毒料・・・・1万6275円
 5 家賃保証料・・・・2万5200円 (※仲介業者が全額返還)
 6 鍵交換代・・・・2万1000円 (※裁判所は全額返還を認めた)
 7 火災保険料・・・・ 3万円 (※仲介業者が全額返還) 

             合計 65万0775円     (※)は台東借地借家人組合 注記

 原告は,同年10月24日,仲介業者を通じて,被告に対し,本件契約を解除する旨申し入れた。

 その後,仲介業者から,前記3仲介手数料,5家賃保証料,7火災保険料の合計18万7500円の返還はあったが,残りの金員の返還はない。

 よって,原告は,被告に対し,本件契約の合意解除又は解約に基づく原状回復請求として,前記1敷金,2同年11月分家賃,6鍵交換代の合計44万7000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

2 請求原因に対する認否及び被告の主張
 (1) 敷金,平成20年11月分家賃及び鍵交換代を請求原因のとおり受け取った事実は認める。

 (2) 本件契約を合意解除した事実はない。また,本件契約を解約する場合は,約定により,書面により申し入れすることとされているが,書面による解約申し入れはなく,解約は成立していない。原告が仲介業者の従業員のEに解約を申し入れたとしても,被告は仲介業者に賃借人の募集を依頼し,本件契約は締結され,金銭の授受はなされ,仲介業務は終了しているから,被告に対して,いかなる効果も生じない。原告は,本件建物に一度も入居しておらず,被告としては,入居する意思はないものとして,同年12月末日をもって本件契約は終了したものとして扱い,同21年1月から原告とは別の入居希望者に賃貸したものである。

 (3) 敷金に関しては,約定により,全額償却するものとされている。本件建物の家賃は月額20万円から25万円が相場であるが,全額償却を前提としていること,賃貸借期間は5年で,延長は認めないという定期借家契約を条件としていることから,月額15万円で賃貸しようとしたが原告から減額の申し出があったことや,2階部分はリフォームせず,2階にある5部屋のうちの2部屋に本件契約時に置かれていた荷物を引き続き置かせてもらうという条件で,月額12万6000円にしたものである。

 敷金は60万円で全額償却するのが相場であるが,本件では敷金を30万円としていることから,これを全額償却としても,賃貸人に一方的に有利とはいえず,敷金の償却の約定が社会的相当性を逸脱しているともいえない。

 (4) 鍵交換代については,原告が費用は負担するので鍵を交換して欲しいということで,交換に要する費用として,被告は仲介業者の従業員であるEから2万1000円を受け取ったものである。

 被告が鍵交換代を負担することになっていたのであれば,そもそも原告はEに鍵代を支払う必要はなかったはずである。

3 原告の主張
 (1) 本件契約はすべて仲介業者であるFを通じて行われており,担当者はEであったことから,解約もEを通したもので,一般的に解約申し入れは仲介業者を通して行われるものであるから,本件でも解約申し入れは有効である。
 なお,解約申し入れは書面で行っている。

 (2) 敷金を全額償却する旨の契約条項は,賃借人の権利を不当に制限するものであるから無効であり,被告は敷金返還義務を負うべきである。

 被告から敷金を全額償却する代わりに家賃を低額に抑えておくという説明は受けていないし,家賃は低額ではなく,適正な額である。

 (3) 引っ越しの際に鍵の交換を行うのは常識である。原告は仲介業者から鍵交換代として求められた金額を支払ったに過ぎない。

第3 裁判所の判断
 1 原告と被告間で本件契約が締結され,その後,本件契約は終了している事実並びに敷金,平成20年11月分家賃及び鍵交換代を原告が被告に支払った事実は,当事者間に争いはない。

 2 本件契約の終了理由,被告に敷金等の返還義務があるのかという点に関して,当事者間に争いがあるので,以下,検討する。

 (1) 本件契約終了理由について
 原告は合意解除ないし原告からの解約申し入れにより,本件契約は終了した旨主張するのに対し,被告はそれらの事実をいずれも否定し,原告が入居しないので,平成20年12月末をもって本件契約が終了したものと扱った旨主張している。

 甲4,甲5及び原告の弁論によれば,同年10月24日に原告はEに解約の申し入れを行い,同月25日にEは被告にその旨伝えた事実が認められる。

 ところで,被告の弁論によれば,被告は原告の解約申し入れに納得していなかった事実が認められること,本訴が提起されているということは,原告と被告間で,現在にいたるも本件契約に関する精算が行われていないことの表れであることからすると,原告と被告間で,合意解約が成立したものと解することは困難である。

 しかしながら,原告から被告に対して,解約申し入れが行われた事実は認められることから,本件契約は解約によって終了したものと解することはできる。

 なお,この点に関して,被告は被告自身に対する解約申し入れがなかった旨主張し,さらに,本件契約条項上,書面によることとされているが,書面によっていない旨主張している。しかしながら,甲5によればEを通して,原告の解約申し入れは被告に伝えられたものと認められるし,被告自身,原告は幽霊が出る,妖気を感じたとして,本件契約に因縁をつけてきたので怒りを抑えることができなかった旨述べており,原告から解約申し入れがあったことを知っていたことを推認させる弁論を,行っている。また,被告は甲4の書面は見たことがない旨述べているが原告の弁論からすれば,原告がEに解約申し入れを行った際,原告はEから甲4の書面に署名押印するよう求められ,甲4はその場で作成されたものであると認められるから,書面による解約申し入れはなされたものと解される。Eは仲介業者としての立場で,本件契約の締結に関与しており,Eによって,原告の解約申し入れは被告自身に伝わっていることからすると,Eを通じて行われた原告の解約申し入れが無効となるいわれはない。甲2によれば,同年11月分の家賃は同年10月6日に支払済みであることが認められることから,甲1の14条の規定により,本件契約は被告に告知されたと考えられる同月25日に終了したものと解するべきである。

 (2) 敷金等の返還義務について
 甲1の契約条項7条には,保証金(敷金)30万円は全額償却する旨の記載が認められるが,敷金は一般に賃貸借契約から生ずる賃借人の債務(未払家賃や賃借人が負担する必要のある修繕費等)を担保するために賃借人から賃貸人に差し入れられたものであるから,賃借人に未払家賃,修繕費等の債務がない場合には,他に合理的な理由がない限り,賃貸人は賃借人に返還する義務を負い,これと異なる定めは消費者契約法10条により無効になると考えるべきである。被告は,敷金の全額償却の定めは賃料及び敷金を相場と比べて低額にしているためである旨主張しているが,当該事実を裏付ける証拠はないし,被告自身,賃料を低額にした理由として,契約期間を5年間として,更新できない定期借家としたことや,リフォームを一部行わないことにしたからである旨述べて,いるところであり,また,敷金を低額(相場の半額)に抑えたとしてもそれは早期に契約を締結し,空室状態をできるだけ防ぐという経営上の措置であるとも考えられるところであり,敷金の全額償却を正当化する合理的な理由は認められないから,被告は,原告に対し,敷金30万円の返還義務を負う。

 次に,同年11月分の家賃の返還義務の有無について検討するに,解約申し入れにより,本件契約は同年10月25日に終了したものと解されるところ,甲1によれば,契約条項14条に,1か月分の月額家賃を賃貸人に支払うことにより即時中途解約することができる旨定められており,本件ではこの条項に該当すると考えられるから,原告は,初日不参入により,同月26日から1か月後の同年11月25日までの賃料については返還請求することはできず,同月26日から同月30日までの5日間分のみ返還請求することができるものと考えられる。12万6000円の30日分の5日分は2万1000円となるから,被告が返還義務を負うのは2万1000円である。

 次に,鍵交換代の返還義務について検討するに,新たに賃貸借契約が締結される場合の鍵の付け替えは,賃貸人が当該物件管理上の責任を負っており,その義務の履行としてとらえるのが相当であるから,賃借人が負担した場合には,賃貸人は自らの支出を免れたことによる利得を得たことになるから,原則として,当該費用の返還義務を負うと解するべきである。鍵の交換を原告が要求して,その費用の負担を了解していたものであるか否か,原告と被告とで主張は異なっており,事実関係は明らかではないが,少なくとも,鍵は交換され,その費用を原告が負担した事実は明らかであり,原告が負担する必要がないのに鍵交換代を支出したことを裏付ける証拠はないから,原則に従い,被告が鍵交換代2万1000円の返還義務を負うと解するべきである。

 なお,訴状送達の日の翌日が同21年1月24日であることは顕著な事実である。甲1によれば,契約条項8条に敷金の返還時期は原告又は,物件管理者が退去確認後,原則として1か月以内とする旨定めているが訴状送達の日の翌日はその後であるから,遅延損害金の起算日は後者となる。敷金以外の既払金(11月分家賃の一部及び鍵交換代)についても,同日以降遅滞となる。

3 結論
 以上によれば,原告の請求は,34万2000円及びこれに対する平成21年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから,主文のとおり判決する。

 

名 古 屋 簡 易 裁 判 所

裁 判 官  佐 藤  有 司

 

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【判例】 原状回復費用等請求事件 東京簡易裁判所(平成21年4月10日判決)

2010年03月04日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介

   平成21年4月10日 判決言渡 東京簡易裁判所
   平成20年(少コ)第2812号 原状回復費用等請求事件(通常手続移行)

 

判        決

主        文

 

      1 原告らの請求を棄却する。
      2 訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事 実 及 び 理 由

 

第1 請 求
 被告らは,原告ら各自に対し,連帯して30万1751円及びこれに対する平成20年10月25日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
 (1) 原告A及び原告B(以下,「原告ら」という。)は,平成19年10月21日,被告株式会社C(以下「被告会社」という。)との間で,東京都新宿区a町bc丁目d番e号所在のEビル2階110.25平方メートル(以下,「本件建物」という。)について,原告らを賃貸人,被告会社を賃借人,被告Dを連帯保証人とし,賃料は月額44万1221円(消費税込み) ,共益費は月額10万5052円(消費税込み) ,賃料等は毎月末日限り翌月分を支払う,保証金は306万8200円との約定で,賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という 。)を締結した。

 (2) 本件賃貸借契約は,被告会社の平成20年1月11日付け賃貸借契約の解除届により,同年7月10日に終了した。

 (3) 被告会社は本件賃貸借契約に基づき,被告Dは連帯保証契約に基づき,原告ら各自に対し,連帯して,次の金員の合計336万9951円(遅延損害金を除きいずれも消費税込み)の支払義務を負っている。

 ① 賃料2か月分相当の償却費(本件賃貸借契約書10条6項)88万2441円
 ② 平成20年5月分賃料,管理費及び公共料金等の合計額59万9295円(同年3月分賃料等に対する遅延損害金を含む 。)
 ③ 同年6月分賃料,管理費及び公共料金等の合計額59万1944円(同年4月分賃料等に対する遅延損害金を含む。)
 ④ 同年7月分賃料,管理費及び公共料金の合計額20万5444円
 ⑤ 原状回復費用(本件賃貸借契約書の特約条項1項)85万8009円
 ⑥ 同年6月4日から同年7月17日までの公共料金5万1853円
 ⑦ 同年3月分から同年7月分までの賃料等に対する遅延損害金(本件賃貸借契約書11条)18万0965円

 (4) 被告らの上記債務額336万9951円に本件預り保証金306万8200円を充当すると,被告らの原告らに対する残債務は30万1751円である。

 (5) よって,原告ら各自は,被告らに対し,連帯して,30万1751円及びこれに対する平成20年10月25日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。


2 争点
 (1) 本件賃貸借契約における原状回復特約の成否
 (2) 本件賃貸借契約における保証金の償却特約の効力

3 争点についての原告ら及び被告らの意見
 (1) 原告ら
  ア 争点(1)について
  本件賃貸借契約における原状回復特約(以下「本件原状回復特約」という。)は,本件賃貸借契約書に全額借主負担と明記約定されており,また,国土交通省のガイドラインはオフィスビルには適用されないから,有効に成立している。

  イ 争点(2)について
  本件賃貸借契約における保証金の償却特約(以下「本件償却特約」という 。)は礼金の後払的性質のものであり,経済的合理性がある。

 (2) 被告ら
  ア 争点(1)について
  本件原状回復特約条項は,被告らが原状回復費用を負担すべき通常損耗の範囲を明白に定めたものとはいえない。

  イ 争点(2)について
  本件償却特約に基づく保証金の償却は,通常損耗についての原状回復費用に充当するものとしてのみ許されるものと思慮される。


第3 当裁判所の判断
 1 請求原因(1)の事実は,当事者間に争いはない。

 2 証拠及び弁論の全趣旨によれば,ア 請求原因(2)の事実,イ 被告らは原告ら各自に対し,連帯して,請求原因(3)の②,③,④,⑥の各債務及び平成20年5月分から同年7月10日までの賃料等に対する各弁済期から同日までの遅延損害金6万6053円の債務を負っていること,ウ 本件償却特約に基づく償却費に相当する金額は88万2441円 (消費税込み )であること,及び,エ 原告らが支出した本件建物の原状回復費用は85万8009円(消費税込み)であることが認められる。


3 争点(1)について
 (1) 原告らは,本件建物に被告会社の義務違反ないし故意過失による損耗は存しないことを認めたうえで,本件原状回復特約に基づいて,本件建物の通常損耗についての原状回復費用を請求するものであると主張する。本件賃貸借契約書の特約条項1項は 「借主は,本貸室を事業用の事務所として賃借する為,本契約書第20条に基づく解約明渡時における原状回復工事は,床タイルカーペット貼替,壁クロス貼替,天井クロス貼替及び室内全体クリーニング仕上げ等工事を基本にして借主負担とする 。」と定める(甲1)が,この特約条項は,被告らの原状回復義務の範囲を被告会社の義務違反ないし故意過失に基づく損耗に限定していないから,通常損耗を含めて被告らに原状回復義務を負わせたものと解せられる。 そこで, 本件賃貸借契約において,被告らが通常損耗についての原状回復義務を負う旨の特約が締結されたか否かについて検討する。


 ア 「賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」(最高裁判所第二小法廷平成17年12月16日判決)。

 イ これを本件についてみると,本件原状回復特約条項は, 「原状回復工事は,床タイルカーペット貼替,壁クロス貼替,天井クロス貼替及び室内全体クリーニング仕上げ等工事を基本にして借主負担とする。」と記載するのみであり,補修工事の具体的範囲,方法,程度等について何ら定めていないから,被告らが負担することになる通常損耗の範囲が一義的に明白であるとはいえない。また,同条項中の「・・・等工事を基本にして借主負担とする。」との文言の意味するところも必ずしも明確とはいえない。したがって,被告らが補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているとは認められない。また,被告らが補修費用を負担することになる通常損耗の範囲について,原告らが口頭で説明し,被告らがその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件賃貸借契約において,被告らが通常損耗についての原状回復義務を負う旨の特約が成立しているとはいえない。

 ウ 原告らは,本件賃貸借契約はオフィスビルについての契約であり,国土交通省のガイドラインはこれに適用されないから,本件原状回復特約は有効に成立していると主張する。しかし,オフィスビルの賃貸借契約においても,通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,原則として,賃料の支払を受けることによって行われるべきものである。賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせることは賃借人にとって二重の負担になるので,オフィスビルの賃貸借契約においても,賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるためには,原状回復義務を負うことになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,賃貸人がそのことについて口頭で説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解すべきであり,このことは居住用の建物の賃貸借契約の場合と異ならないというべきである。したがって,原告らの主張は採用しない。

 (2) 以上によれば,本件原状回復特約の成立は認められないから,本件原状回復特約の成立を前提とする通常損耗についての原状回復費用の請求は理由がない。


4 争点(2) について
 本件賃貸借契約書10条6項は,「本契約に基づく解約においては,契約終了後乙が本物件を明渡した日より6カ月経過後直ちに甲は預り保証金額内から解約時賃料の2カ月分を償却費として控除し,返還すべき保証金額からこれらの乙の債務の金額を控除することができる。」と定めている。

 被告らは,本件償却特約は通常損耗についての原状回復費用に充当するものとしてのみ許されると主張する。しかし,保証金についての償却特約は,原告ら主張のように礼金の後払的性質を有するものとしてだけではなく,設備の償却費の一部負担,建設協力費等様々な目的で定められるものであるが,本件償却特約が原状回復費用に充当するものとしてのみ締結されたことを認めるに足りる証拠はない。

 証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告らは,本件償却特約の内容を了承して,本件償却特約が付された本件賃貸借契約を締結したものと認められる。したがって,被告らには,本件賃貸借契約書の償却特約条項に基づき,原告ら各自に対し,連帯して,本件賃貸借契約解約時の賃料の2か月分に相当する88万2441円(消費税込み)の支払義務がある。


5 以上によれば,原告らは通常損耗についての原状回復費用を請求し得ないのであるから,原状回復費用を除く被告らの前記未払賃料等の債務に本件保証金を充当すると,同未払賃料等の債務は消滅し,なお保証金に残余が生じることになる。したがって,本件賃貸借契約に基づく被告らの債務に本件保証金を充当しても被告らの債務は完済されず,なお債務が残るとして残債務の支払を求める原告らの請求は理由がない。

 よって,原告らの請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。


       東 京 簡 易 裁 判 所 民 事 第 9 室

                  裁 判 官   石 堂  和 清

 

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【Q&A】 承諾しない更新後の借主の滞納家賃を連帯保証人は支払義務があるのか

2010年03月03日 | 連帯保証人

(問) 10年前にマンション入居の際、頼まれてAの連帯保証人になった。ところがAの家主から突然、3年分の滞納家賃と共益費の支払を求められた。請求に応じなければならないのか。


(答) 家主から契約更新後の保証人の継続に関する承諾の連絡などは一度もなかったという。保証契約が継続しているという自覚がない保証人に対し、家主からの滞納家賃の支払請求は寝耳に水の事である。

 判例は保証人の責任に対しては厳しいものである。最高裁は原則として契約更新後についても保証人の債務責任を認めている。即ち、「特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」(最高裁平成9年11月13日判決 判例タイムズ969号)と判示した。最高裁判決の原則から言えば、相談者は家主からの滞納家賃請求に応じなければならないことになる。

 しかし、最高裁は同判決で例外として「特段の事情」がある場合は保証債務を免れることが出来ると云っている。
 それは、どういう場合なのか。例えば、
 ①「賃貸契約に2ヶ月の賃料の支払を怠った場合に無催告解除が出来るという特約があって、更新までにそれを上回る高額の延滞賃料が発生したにも関わらず、漫然と契約を解除しないで法定更新をして、このことによって延滞額が更に高額になった場合について、このような場合についてまで連帯保証人に責任を負わせることはできない」(東京地裁平成10年12月28日判決)。

 ②貸主(原告)の広島県福山市は約13年間、連帯保証人に対して借主の滞納家賃等の明細を通知するなどの措置を全くしていなかった。「催告書を全く送付することなく、また、訴外A(借主)の賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していたものであり、原告(貸主)には内部的な事務引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず、その責任を棚上げにする一方、民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや、連帯債務における請求に絶対効が認められることなどから、被告に対する請求権が形骸的に存続していることを奇貨として、敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり、本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討するまでもなく、本件請求は権利の濫用として許されないものというべきである」( 広島地方裁判所 福山支部平成20年2月21日判決
 
①、②のような場合が「特段の事情」として挙げられる。

 相談者の場合、家主はAの滞納家賃が高額になっているにも拘らず、保証人に滞納の事実を連絡せず、又は契約を解除するなどして保証人の損害を回避すべき義務があった。それにも拘らず、契約の更新を行い、その回避義務を怠って損害を拡大した責任は重い。これらは家主が保証債務の履行を請求することが信義則に反する「特段の事情」に該当する。よって、保証人は保証債務の支払義務は無いというのが結論である。

 

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【判例】 福山市が連帯保証人へ約10年分の滞納家賃を請求(広島地裁 平成20年02月21日 判決1)

2010年03月02日 | 連帯保証人

 判例紹介

◎事件名・・・・ 建物明渡等請求事件
◎裁判所・・・・ 広島地方裁判所 福山支部
◎裁判年月日・・・・ 平成20年02月21日

◎裁判概要・・・・ 本件建物及び本件駐車場を所有して管理する原告(広島県福山市)が,賃貸借契約は賃料不払いを理由に解除されたとして,本件建物及び駐車場の賃借人の連帯保証人である被告に対し,平成9年1月分以降(約10年分)の未払賃料及び賃料相当損害金として約300万円の支払いを求めた事案。判決は福山市の請求を権利の濫用として認めなかった


  平成20年2月21日判決言渡・同日原本領収 裁判所書記官
  平成19年(ワ)第69号 建物明渡等請求事件
  口頭弁論終結日 平成19年12月20日

 

判        決

主        文

 

 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

事 実 及 び 理 由

 

第1 請求の趣旨
 1 被告は,原告に対し,293万1248円を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 3 仮執行宣言。

第2 事案の概要等
 1 事案の概要
 本件は,別紙目録記載の建物(以下,「本件建物」という。)及び駐車場(以下,本件駐車場」という。)を所有して管理する原告が,賃貸借契約は賃料不払いを理由に解除されたとして,本件建物及び駐車場の賃借人の連帯保証人である被告に対し,平成9年1月分以降(約10年分)の未払賃料及び賃料相当損害金として約300万円の支払いを求めた事案である。

 2 争いのない事実及び証拠によって認められる事実(証拠によって認定した事実については,末尾に証拠を掲載した。)

 (1) 原告は,昭和57年10月26日,訴外Aに対し,本件建物を次の約定で賃貸した。

  ア 使用目的 居住用
  イ 賃 料 1か月2万2000円
  ウ 賃借人が賃料を3月以上滞納したときは,原告は本件建物の明渡しを請求できる。
  エ 本契約は,公営住宅法,同法施行令,福山市営住宅等条例及び条例施行規則による。

 (2) 被告は,昭和57年10月26日,訴外Aが原告に対して負担する本件賃貸借契約上の債務を保証人として連帯して履行することを約した。

 (3) 上記賃料は,平成5年11月1日から2万6600円,平成10年4月1日から3万6000円,平成11年4月1日から3万5500円,平成12年4月1日から2万5300円 平成13年4月1日から3万3800円,平成14年4月1日から3万3300円,平成15年4月1日から3万2800円,平成16年4月1日から3万2400円,平成16年5月1日から3万5200円(駐車場使用料を含む。),平成17年4月1日から3万5100円(駐車場使用料を含む。),平成17年12月1日から1万9900円(駐車場使用料を含む。)に改定された(甲3,4 )。

 (4) 原告は,平成16年5月1日,訴外Aに対し,本件駐車場を使用料1ヶ月2800円,期間は訴外Aが本件建物の賃借資格を有するまでの約定で使用許可した(甲4,6)。

 (5) 訴外Aは,平成9年1月分から賃料の支払を滞納するようになったため,原告は,訴外Aに対し,平成18年10月25日到達の内容証明郵便で,未払賃料合計275万6000円を同書到達後5日以内に支払うよう,もし支払わなかったときは本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが,訴外Aはこれを支払わなかったため,本件賃貸借契約は平成18年10月31日に終了した(甲2の1及び2,3)。

 (6) 原告は,被告に対し,平成9年1月以降,訴外Aの賃料債務不履行の事実を伝えたり連帯保証債務履行の請求をすることを一切行わずに放置していたが,平成18年10月11日に至って初めて,訴外Aの未払賃料合計275万6000円を10日以内に連帯保証人として支払うよう催告し,更に,同年同月24日,翌日到達の内容証明郵便で,訴外Aの未払賃料合計275万6000円を同書到達後5日以内に連帯保証人として支払うよう催告した(甲9の1及び2,13,乙1,2)。

 (7) 訴外Aは,平成19年7月25日,強制執行により本件建物を明け渡した(弁論の全趣旨)。

3 争点及び当事者の主張
(争点)本件未払賃料等を連帯保証人である被告に請求することの当否。

(被告の主張)
 (1) 原告は,平成9年1月分から賃料の不払いがあったとして,本件請求をしているが,福山市営住宅等条例41条(2)記載によれば,家賃を3ヶ月以上滞納したときは「当該入居者に対し,当該市営住宅等の明渡しを請求することができる」と規定している。

 したがって,本件建物賃貸借契約の連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度として保証しているものであって,3ヶ月分の請求ならともかく,入居者の賃料不払いを無制限に保証しているものではない。

 (2) 本件請求は,地方自治体の公的義務に違背し,権利の濫用として無効である。

 (3) 原告は,被告に対しては平成5年12月20日まで合計8回にわたって催告したと主張する。
 したがって,被告の連帯保証債務は,原告の主張する上記最終請求日から満5年をもって時効により消滅しているものであるところ,被告は,本訴において時効の利益を援用する。

(原告の主張)
 (1) 被告の保証は3ヶ月分を限度としたものではない。
 原告が,被告に対し,途中から催告を差し控えていたことは事実であるが,公営住宅であることからできるだけ法的手続を留保していたとしても,訴外Aに対しては延滞賃料の支払いを厳しく催告し続けており,また,被告は訴外Aの義理の叔父であって意思の疎通も十分されていることなどを考えた場合には,仮に原告の被告に対する本件請求が地方自治体の管理業務として問題があるとしても,保証責任の期間が制限されるものではない。

 (2)ア 原告は,市営住宅の明渡請求訴訟の提起等,家賃滞納整理については福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱に基づいて事務処理している。

  (ア) 1ヶ月以上の滞納者に対しては,まず督促状を送付する。
  (イ) 3ヶ月以上の滞納者に対しては,「さきに督促状を送付しましたが,いまだ未納ですので表記の指定納入期限までに完納してください。もし,期限までに完納できない事情がある場合は,住宅課へご相談ください。なお,住宅・駐車場使用料の未納については連帯保証人に対しても連絡済です。」の文書を送付する。

  (ウ) 5ヶ月以上の滞納者に対しては,「あなたの滞納については再三督促しているにもかかわらず表記の指定納入期限までに完納してください。なお,連帯保証人に対しても催告書を送付しております。(予告)期限までに納入されない場合は裁判所に住宅明け渡しの訴えを行うことになります。」の文書を送付する。

  (エ) 6ヶ月以上の滞納者で家賃を支払う意思のないものに対しては,法的措置を行う旨記載した文書を送付し,警告するとともに臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行う。

  (オ) 市営住宅明け渡し等請求訴訟の訴え提起前日までの間に,滞納家賃の全額又は,3分の2以上の額を納付し,かつ当該納付すべき残額について分割納付誓約書を申し出た場合は,提訴しないことができるものとする。ただし,分割納付誓約の内容は,滞納が1年以内に整理できるものとする。

 イ 原告は,家賃滞納者に対しては,これまで上記要綱に基づいて事務処理していたが,市営住宅が住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を目的としていることから,実務的には明け渡し等請求訴訟の訴えは,滞納額とこれについて賃借人が原告の付指導に基づいて納付誓約書を差し入れるなど誠実に対応されているかどうかによって慎重に処理していた。

 ウ 連帯保証人である被告らに対して原告が催告を控えるようになったのは,訴外Aが,平成5年10月に納付誓約書を提出し,誓約書どおり分納を履行していたにもかかわらず,原告担当者が,平成5年12月20日,過って被告に催告状を出したため,訴外Aが,平成6年1月,原告担当課に来て強く抗議したため,原告は,被告ら保証人にお詫びの電話をするとともに,その後は訴外Aに賃料滞納があっても被告ら保証人に対する催告を控えるようになったものである。

 (3) 主たる債務者について時効中断の事由が生じたときは,保証債務の付随性に基づき,保証人にもその効力が及ぶところ,訴外Aは,原告に対し,
 ① 平成11年8月25日,未払賃料債務53万7700円を承認し,
 ② 平成12年8月14日,未払賃料債務59万4100円を承認し,
 ③ 平成14年8月14日,未払賃料債務132万6300円を承認し,
 ④ 平成17年9月5日,未払賃料債務253万6100円を承認し,
 それぞれ分割して完納する旨を誓約しているので,消滅時効は上記各承認により中断している。

 消滅時効完成後の承認が時効利益の放棄となり,主たる債務者がなした時効の利益の放棄は保証人に対して効力を生じないと解されるとしても,上記各承認は,時効完成後の承認ではないから,保証人である被告に効力が生じるものであり,被告の消滅時効の主張は理由がない。

     「第3 当裁判所の判断」へ続く


【判例】  当裁判所の判断 (広島地裁 平成20年02月21日 判決2)

2010年03月02日 | 連帯保証人

第3 当裁判所の判断

1 上記認定事実に加えて 証拠 甲1,5,7,8,10ないし17,証人B,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

 (1) 本件市営住宅は,公営住宅法にいう公営住宅に該当するものであるところ,公営住宅法は,国及び地方公共団体が協力して,健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し,これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し,又は転貸することにより,国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであって(法1条),この法律によって整備された公営住宅の使用関係については,管理に関する規定を設け,家賃の決定,家賃の変更,家賃の徴収猶予,修繕義務,入居者の募集方法,入居者資格,入居者の選考,入居者の保管義務,明渡し等について規定し(法第3章),また,法の委任(法47条)に基づいて制定された条例も,使用許可,使用申込,申込者の資格,使用者選考,使用手続,使用料の決定,使用料の変更,使用料の徴収,明渡し等について具体的な定めをしているところである。

 そして,福山市営住宅等条例(甲5,8)の規定によれば,市営住宅等の入居決定者は,決定のあった日から10日以内に,入居決定者と同程度以上の収入を有する者で,市長が適当と認める連帯保証人2人の連署する請書を提出することが要求されている。

 (2) 被告は,昭和57年10月26日,訴外Aが原告から本件建物を賃借するに際し,福山市営住宅等条例の上記規定に基づき,訴外Aの実父である訴外亡D(平成13年a月b日死亡)とともに訴外Aの連帯保証人となることを承諾し,市営住宅使用請書(甲1)の連帯保証人欄に署名・押印した。

 なお,被告は,訴外Aの実母の姉の配偶者であり,すなわち,訴外Aの義理の伯父の関係にあるが,訴外Aの生活状況については必ずしも十分に把握しておらず,訴外Aが平成5年に破産宣告を受けたことすら,最近まで知らずにいた状況であった。

 (3) 訴外Aは,平成3年頃から本件建物の賃料を滞納するようになった。

 (4) 原告には,市営住宅使用料(家賃)の納付の円滑化を図るため,昭和63年4月1日から施行された「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱」(甲16)が存在し,納期限までに家賃を納付しない市営住宅の入居者やその連帯保証人に対する督促や明渡請求訴訟の提起等,家賃滞納整理については,上記要綱に基づいて事務処理することとされていたものであるところ,上記要綱には以下の事項が定められていた。

 ア 家賃の滞納が発生した場合には,滞納者に対し事実の認識と納付指導のため,つぎの文書を送付する。

 (ア) 1ヶ月以上の滞納者に対しては,まず督促状(様式1)を送付する
 (イ) 3ヶ月以上の滞納者に対しては, 「さきに督促状を送付しましたが,いまだ未納ですので表記の指定納入期限までに完納してください。 もし,期限までに完納できない事情がある場合は住宅課へご相談ください。なお,住宅・駐車場使用料の未納については連帯保証人へ連絡済です。」の文書(様式2)を送付する。

 (ウ) 5ヶ月以上の滞納者に対しては,「あなたの滞納については,再三督促しているにもかかわらずいまだ完納されていません。表記の指定納入期限までに完納してください。なお,連帯保証人に対しても催告書を送付しております。(予告)期限までに納入されない場合は,裁判所に住宅明渡の訴えを行うことになります。」の文書(様式3)を送付する。

 イ 以上の規定により,督促・催告したにもかかわらず納付しない滞納者の連帯保証人に対し,つぎの文書を送付する。

 (ア) 3ヶ月を超え5ヶ月までの滞納者の連帯保証人に対しては,「さきに「住宅・駐車場使用料完納指導依頼書」を送付しましたが,いまだに完納されていません。ついては,連帯保証人であるあなたに請求しますので,入居者と相談のうえ指定納入期限までに納付してください なお,これ以上滞納が続くようであれば,入居者に対しては,裁判所に住宅明渡の訴えを行うこととなります。また連帯保証人に対しては,住宅使用料等(起訴費用・損害賠償金含む)の支払いを請求することになります。」の文書(様式4)を送付する。

 (イ) 6ヶ月を超える滞納者の連帯保証人に対しては,「あなたが連帯保証人となっている市営住宅入居者は,市の再三の督促にもかかわらず,表記のとおり滞納となっています。ついては本人と相談のうえ指定納入期限までに完納されるようご指導ください。なお,期限までに完納されない場合は,連帯保証人のあなたに請求することにもなりますのであらかじめお知らせしておきます。」の文書(様式5)を送付する。

 ウ 6ヶ月以上の滞納者で,家賃を支払う意思のないものに対して法的措置を行う旨記載した文書を送付し,警告するとともに,臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行う。

 エ 市営住宅明け渡し等請求訴訟の訴え提起前日までの間に,滞納家賃の全額又は,3分の2以上の額を納付し,かつ,当該納付すべき残額について,分割納付誓約を申し出た場合は,提訴しないことができるものとする。ただし,分割納付誓約の内容は,滞納が1年以内に整理できるものとする。

 (5) 原告は,本件建物の賃料を滞納するようになった訴外Aに対しては,平成3年1月20日から平成5年6月18日までの間,上記様式1ないし3の催告書等を11回にわたって送付するとともに,保証人である被告に対しても7回にわたって催告書を送付した。

 一方,訴外Aは,平成5年6月7日に自己破産決定を受け,その後,免責決定も受けたが,原告に対しては,平成5年10月19日,納付誓約書を提出して未払賃料を分納することを約束し,その後,同約束に従ってこれを履行していた。

 ところが,訴外Aが上記納付誓約書に記載された約束を概ね遵守して未払賃料の分納を続けていたにもかかわらず,原告担当者は,平成5年12月20日,過って被告に対して催告書を送付してしまったため,訴外Aは,平成6年1月,原告担当課に来てそのことを強く抗議し,原告担当者は,被告に対し,電話で謝罪した。

 このことがあってから,原告は,内部的な申し送りとして,訴外Aに賃料滞納があっても,上記納付誓約書に記載された約束を概ね遵守して未払賃料の分納を続けている限りは,被告ら保証人に対しては催告書の送付を控える取り扱いとすることを取り決めた。

 (6) ところが,訴外Aは,平成6年夏頃から,上記納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加した。

 原告は,訴外Aに対しては,再三にわたって催告書を送付し,臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行うなどし,更には,平成11年8月25日,平成12年8月14日及び平成17年9月5日には納付誓約書を提出させるなどしたが,被告に対しては,上記の内部的な申し送りの趣旨を後任者に正確に伝えなかったこともあってか,「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱(甲16)に反して,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していた。

 なお,この間の平成13年7月10日,訴外Aのもう1人の連帯保証人である訴外亡D(訴外Aの実父)は死亡した。

2 被告は,福山市営住宅等条例41条(2)において,家賃を3ヶ月以上滞納したときは「当該入居者に対し,当該市営住宅等の明渡しを請求することができる」と規定しているところから,本件建物賃貸借契約の連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度として保証しているものであって,入居者の賃料不払いを無制限に保証しているものではないと主張するので,まず,この点について検討する。

 公営住宅法は,国及び地方公共団体が協力して,健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し,これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し,又は転貸することにより,国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものである(法1条)ことは上記判示のとおりであるから,そもそも,公営住宅の賃貸借において,住宅に困窮する低額所得者である賃借人の賃料未払いを担保するために,賃貸借契約締結の条件として連帯保証人を付することを要求することの正当性及び合理性自体に疑問があるところであり,本来,生活保護法における住宅扶助の制度と連動させるなどの法的整備が望まれるところであるが,公営住宅の賃貸借において賃貸借契約締結の条件として連帯保証人を付することを要求すること自体が違法であるとまで解することはできず,一方,連帯保証人を付することの効用としては,公営住宅の賃借人に対し,連帯保証人に迷惑を掛けてはいけないという道義心から賃料支払義務の確実な履行を促す効果が期待でき,また,公営住宅の賃借人が賃料を滞納した場合に,公営住宅の賃借人に対して連帯保証人から納付を促してもらうことによって,賃料支払義務の履行をより強力に促すことができるという効果が期待できるのであり,上記認定にかかる「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱」(甲16)も,滞納整理に関する行政機関の内部的な規範ではあるが,以上の趣旨に添うものとして評価できる。

 以上の観点によれば,本件建物賃貸借契約における連帯保証人の保証責任の範囲として,入居者の賃料不払を無制限に保証していると解することは相当でなく,自ずから社会的相当性の認められる一定の範囲に限定されるべきものではあるが,その責任範囲についての明確な約定の存在しない本件において,福山市営住宅等条例41条(2)の規定のみを根拠として連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度とするものであると解することは必ずしも相当でなく,この点に関する被告の上記主張は直ちには採用できない。

 3 しかしながら,公営住宅の賃貸借契約における連帯保証人の意義が上記判示のとおりであって,入居者の賃料不払いを無制限に保証していると解することは相当でないことは上記判示のとおりであるから,公営住宅が住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を目的としていることから,公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合の明渡等請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれについての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,明渡等請求訴訟の提起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望があった場合等の特段の事情のない限り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人に対しても相応の措置を講ずべきものであるということができる。

 これを本件についてみるに,連帯保証人である被告に対する原告の催告状況は上記認定のとおりであって,賃借人である訴外Aが,平成6年夏頃から,納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加したにもかかわらず,被告に対しては,「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱」(甲16)に反して,平成5年12月20日に催告書を送付したのを最後に,平成18年10月11日に至るまで,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していたものであり,原告には内部的な事務引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず,その責任を棚上げにする一方,民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや,連帯債務における請求に絶対効が認められることなどから,被告に対する請求権が形骸的に存続していることを奇貨として,敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり,本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討するまでもなく,本件請求は権利の濫用として許されないものというべきである。

4 以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決する。

広島地方裁判所福山支部

 裁 判 官   杉 本 正 樹

 

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【判例】 家賃保証会社の保証委託料請求事件 東京簡易裁判所 (平成21年5月22日判決)

2010年03月01日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 判例紹介


●事件番号  平成20(少コ)3397
●事件名  (通常手続移行) 保証委託料請求事件
●裁判所  東京簡易裁判所 民事第9室
●裁判年月日  平成21年05月22日

 平成21年5月22日判決言渡 東京簡易裁判所
 平成20年(少コ)第3397号保証委託料請求事件(通常手続移行)

 

判        決

 

主        文

 

 1 被告らは原告に対し,連帯して,金25万2000円及びこれに対する平成20年7月15日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
 3 この判決は仮に執行することができる。

 

事 実 及 び 理 由

 

第1 請求の趣旨
   主文同旨

第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨
 (1) 賃貸借契約及び連帯保証契約の成立
 被告有限会社A商事(以下「被告会社」という 。)は,訴外有限会社C(以下「賃貸人」という。)との間で次のとおり賃貸借契約を締結し,下記物件の引渡しを受けた。被告Bは賃貸人に対し,本件賃貸借契約に基づく被告会社の債務を,同日書面により連帯保証した。

 (ア) 契約日・・・・平成18年7月21日
 (イ) 賃貸物件・・・・所在 東京都千代田区a町bc丁目d番e号
            Dビル一棟 156.26平方メートル
 (ウ) 賃貸期間・・・・2年間(更新により平成22年7月20日満了予定)
 (エ) 賃 料 1ヶ月・・・・金84万円(消費税込み)
  なお,原告は賃貸人に対し,本件賃貸借契約に基づく被告会社の債務を,書面により保証した(以下「保証契約」という 。)。

 (2) 保証委託契約及び連帯保証契約の成立
  原告は被告会社からの委託により,被告会社との間で次のとおり保証委託契約を締結した。被告Bは原告に対し,本件保証委託契約に基づく被告会社の債務を,同日書面により連帯保証した。

 (ア) 契約日・・・・平成18年7月21日
 (イ) 契約期間・・・・2年間(賃貸借契約が更新されたときは,更新期間分延長する)
 (ウ) 保証委託料・・・・金84万円(消費税込み)
 (エ) 再保証委託料・・・・契約期間が更新期間分延長されたときは,金84万円(消費税込み)を更新期間開始日の1週間前に支払う。ただし,10日間以上の賃料滞納がない場合は,30パーセントにあたる金25万2000円とする。

 (3) 賃貸借契約の更新及び保証委託契約期間の延長
  被告会社と賃貸人は平成20年7月21日から賃貸借契約を更新したので,これにより本件保証委託契約期間も延長され,被告会社は原告に対し,同契約4条2項により再保証委託料金25万2000円を,更新期間開始日の1週間前である7月14日までに支払う義務がある。


2 被告らの主張の要旨
 (1) 保証委託契約の解除ないし更新・延長拒否の通知
  被告会社には本件保証委託契約を解除する権利があり,被告会社が原告に対し,平成20年3月か4月頃と,同年5月ないし6月の2回にわたり,本件保証委託契約を更新ないし延長しないことを通知したことにより契約は終了しているから,再保証料の支払義務はない。

 (2) 公序良俗違反
  本件保証委託契約は,①賃貸人が原告を指定し,賃貸人と原告で契約内容を決定し,被告らには契約内容を事前に十分知らされず,説明も受けていない状態で締結を強制されたこと,②初回保証料が業界の水準に比べて約3倍近い高額であること,③更新のたびに永久に再保証料を取り続けること,④再保証料の支払を軽減,免除される手続が存在しないこと,⑤賃料不払い等があった場合に物件の鍵を一方的に変更する権限を原告に与えたり,滞納賃料の取りたて等の権限を原告に与えたり,2ヶ月の賃料不払いをした場合に賃貸人が800万円の預託金返還請求権を原告に譲渡するなどの,原告の不当な権利行使を容易に認める条項が含まれていること,などの事情を総合すれば,公序良俗違反により無効である。

 (3) 錯誤無効
  被告らは,契約締結の際に,原告と仲介会社であるE株式会社(以下「仲介会社」という。)に対し,当初契約期間の2年間賃料を滞りなく支払えば,その後の更新時には保証委託契約は更新しない旨を申し入れ,これが受諾されたものと思っていた。滞納しないで賃料を払っても更新の度に賃料の30パーセントの再保証料を払い続けると,信用が付加されるのに保証料総額は機械的に増加するという不合理なものであり,金額も多額になるという点で更新の度に再保証料を払うという合意には重要な要素に錯誤があり,無効である。

 (4) 借地借家法違反
  本件保証委託契約は賃貸借契約と一体不可分の関係にあり,賃貸借契約更新の都度,保証委託契約も更新し再保証料を支払わせる点において賃借人に不利な条件を強いたもので, 借地借家法30条自体ないしその趣旨に違反し,無効である。

3 原告の反論の要旨
 (1) 被告会社に,期間の定めのある本件保証委託契約を一方的に解除する権利があるとの主張は争う。被告会社主張のとおり,本件保証委託契約を更新ないし延長しない旨の通知があったが,それによって契約が終了することはなく,被告らの再保証委託料支払義務がなくなることはない。


  また,原告が契約締結を強制したことはなく,被告らは前記の契約条件を考慮した上で契約するかしないかを決定する自由があったのであり,最初の2年間賃料不払いがなかった場合でも,その後の更新に際して賃貸人が保証人のない契約を締結しなければならない理由はない。

 (2) 仮に,被告らが,最初の2年間賃料不払いがなければ,その後の更新時には保証委託契約は更新されず再保証料の支払義務はなくなるとの錯誤に陥っていたとしても,賃貸借契約書及び保証委託契約書には,賃貸借契約が更新されたときは,保証委託契約も更新期間分延長され,再保証料を支払う旨が明確に約定されているから,被告らに重大な過失がある。

 (3) 再保証料の支払いによって原告の賃貸人に対する保証責任を継続負担させ,本件賃貸借契約に基づく賃借人の地位を安定して享受することができるのであるから,賃借人に不利な特約として借地借家法30条ないしその趣旨に違反するとはいえない。

 4 本件の争点
  本件保証委託契約の有効性

第3 当裁判所の判断
 1 認定事実
  証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
 (1) 原告は不動産賃貸借契約に伴い,賃借人の賃料債務等を保証することを業とする株式会社であり,被告会社は中華料理店を営む資本金1000万円の有限会社,被告Bは被告会社の唯一の取締役である。

 (2) 被告Bは中国武漢市に生まれた中国人であるが,F大学卒業後1989年にG大学の研究生として来日し,1991年にH大学大学院法学研究科に入学して2年間国際法を勉強し,1993年に日本語で修士論文を提出して修士の学位を取得して卒業し,I百貨店に就職して3年間勤務した。その後,2003年3月頃,知人から中華料理店の運営を任されたことから,自分の店を持ち,事業,会社を拡大して行きたいと考えるようになり,本件ビルを賃借して中華料理店を経営することとなった(乙5,被告代表者本人 )。

 (3) 被告代表者は,仲介会社から本件賃貸借契約書(甲1)の文案を事前に示され, 目を通していた(被告代表者本人)。 同契約書(甲1) の特約条項には,「乙(賃借人)は本契約締結にあたり,甲(賃貸人)が指定する賃貸保証システムに加入するものとする」, 「本契約更新の際,賃貸保証システムも更新することとする」,「保証委託契約料,更新料は乙(賃借人)の負担とする」との記載がある。

 (4) 賃貸人と仲介会社が保証会社として原告を選定し,被告代表者が保証人を選定することは認められなかった。本件保証委託契約書(甲2)は,契約当日に被告代表者に示された(被告代表者本人 )。同契約書第4条には,前記第2の1の(2)(イ)ないし(エ)と同旨の記載がある。

 (5) 被告代表者は,原告と賃貸人間で締結された保証契約書 (甲5) の内容は,本件訴訟に至るまで知らなかった。

2 以上認定した事実を踏まえて,被告らの各主張及び原告の主張の当否について検討する。

 (1) 保証委託契約の解除又は更新・延長拒否の通知による契約終了について
  
被告会社が原告に対し,2回にわたり本件保証委託契約を更新ないし延長しないことを通知したことに争いはない。しかし,本件保証委託契約は,賃貸人と被告会社間の賃貸借契約,賃貸人と原告間の保証契約と相俟って本件賃貸保証システムを構築しているものであり,期間の定めのある本件保証委託契約のみを被告会社が一方的に解除する権利があるとの主張にはなんら根拠がないといわざるを得ず,被告の主張は認められない。

 (2) 公序良俗違反について
  本件保証委託契約が締結された経緯をみても,被告らが契約締結を強制され,諾否の自由を抑圧されて契約したことを認めるに足りる証拠はない。

  賃貸人が保証会社として原告を指定し,賃貸人と原告のみで契約内容を実質的に決定していたとしても,被告らには契約内容を検討する機会が与えられ,契約締結を拒否ないし留保することができたものと解される。また,仮に,被告ら主張のとおり,初回保証料が業界の水準に比べて約3倍近い高額であり(その根拠には疑問の余地があるが ,更新のたびに永久に再保証料を)取り続け再保証料の支払を軽減,免除される手続が存在しないなど,賃借人である被告らに一方的に不利益な条件であると判断したのであれば,契約締結を拒否ないし留保することができたものと解される。さらに,本件保証委託契約とともに本件賃貸保証システムを構築している賃貸借契約,保証契約には,賃料不払い等があった場合に物件の鍵を一方的に変更する権限を原告に与えるなどの原告の権利行使を容易に認める条項が含まれていることが認められるが,これらの条項に基づく原告の不当な権利行使が現実に行われ,これにより被告らになんらかの被害が生じたとの事実についての主張立証はない。

 以上の事情を総合すれば, 本件保証委託契約締結の経緯及びその内容には,公序良俗違反により無効とすべき程の反社会性・反倫理性があるとは認められないというべきである。

 (3) 錯誤無効について
  被告らは,契約締結の際に,原告と仲介会社に対し,当初契約期間の2年間賃料を滞りなく支払えば,その後の更新時には保証委託契約は更新しない旨を申し入れ,これが受諾されたものと思っていたとして錯誤を主張している。そして,被告代表者は中国人であるが,賃貸借契約書(甲1)及び保証委託契約書(甲2)に,賃貸借契約が更新されたときは保証委託契約も更新期間分延長され,再保証料を支払う旨の記載があるのを見落としたと述べるが,F大学卒業後にG大学の研究生として来日し,その後H大学大学院法学研究科に入学して2年間国際法を勉強し,日本語で修士論文を提出して学位を取得したという経歴からすると,むしろ一般人よりは本件のような契約条項についての理解力が優れているとみるのが相当であり,仮に被告らに契約内容についての錯誤があったとしても,被告らに重大な過失があるといわざるを得ず,錯誤無効を主張することは許されない(民法95条但書)。

  さらに,滞納なく賃料を払っても更新の度に賃料の30パーセントの再保証料を払い続けることは,信用が付加されるのに保証料総額は機械的に増加し多額になるという不合理な合意であり,重要な要素に錯誤があると主張する。しかし,最初の2年間賃料不払いがなく一定の信用が付加されたとしても,その後の更新に際して賃貸人がまったく保証人のない,無担保の契約を締結しなければならないとする合理的な理由もないというべきである。本件保証委託契約においては,2年間賃料不払いがないことによる信用付加については,再保証料を30パーセントに減額することで相当に評価されているのであり,保証料総額が機械的に増加する不合理な合意であるとの主張には理由がないというべきである。したがって,この点を理由とする錯誤無効の主張は認められない。

 (4) 借地借家法違反について
  前記のとおり,本件保証委託契約が,賃貸借契約及び保証契約とともに本件賃貸保証システムを構築している一体不可分の関係にあることは,被告らが主張するとおりである。しかし,賃貸借契約更新の都度,保証委託契約も更新し再保証料を支払わせることが,賃借人である被告会社に一方的に不利な条件を強いるものであるとする点は,当初の契約時点で被告らには諾否の自由があったこと,継続的な契約関係である賃貸借契約において契約更新後も一定の保証システムが随伴することに一定の合理性が認められること,再保証料の支払いによって原告の賃貸人に対する保証責任を継続負担させ,本件賃貸借契約に基づく賃借人の地位を安定して享受することができること,本件保証委託契約においては,2年間賃料不払いがないことによる信用付加について再保証料の30パーセント減額により相当程度評価していることなどを考慮すると,これを賃借人である被告会社に一方的に不利な条件を強いるものであるとして借地借家法30条ないしその趣旨に違反するとみることは相当でなく,被告らの主張は理由がない。


3 まとめ
 以上によれば,被告らの主張はいずれも認められず,原告の請求には理由があるので,主文のとおり判決する。

 

東京簡易裁判所民事第9室

 

裁 判 官   藤 岡  謙 三

 

東京・台東借地借家人組合

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