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1999(平成11)年度宅建問題(借地借家法関係) 

2005年12月31日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 借地権の対抗問題
 
〔問13〕 Aは,建物所有の目的でBから1筆の土地を賃借し (借地権の登記はしていない),その土地の上にA単独所有の建物を建築していたが,Bは,その土地をCに売却し,所有権移転登記をした。この場合,借地借家法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。


  Aは,建物について自己名義の所有権保存登記をしていても,そこに住んでいなければ,Cに対して借地権を対抗することができない。

  Aは,建物についてAの配偶者名義で所有権保存登記をしていても,Cに対して借地権を対抗することができない。

  Aがその土地の上に甲及び乙の2棟の建物を所有する場合,甲建物にのみA名義の所有権保存登記があれば,乙建物が未登記であっても,Aは,Cに対して借地権を対抗することができる。

  4 Aの建物の登記上の所在の地番が,その土地の地番の表示と多少相違していても,建物の同一性が種類,構造,床面積等によって認識できる程度の軽微な相違であれば,Aは,Cに対して借地権を対抗することができる。


 借家権
 敷金関係の承継・取壊し予定の建物の賃貸借
 〔問14〕 賃貸人Aと賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

   「Aは,Bが建物に造作を付加することに同意するが,Bは,賃貸借の終了時に,Aに対してその造作の買取りを請求しない」 旨の特約は有効である。

   Bが死亡した場合で,その当時Bの相続人でない事実上の配偶者Cがこの建物で同居していたとき,Cは,当該建物の賃借権に限っては,相続人に優先してBの賃借人としての地位を承継する。

  この建物が,その敷地の売却に伴い2年後に取り壊されることが明らかな場合に,「建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する」 旨の特約をAB間の賃貸借契約に定めるときは,公正証書によってしなければならない。

   BがAに敷金を交付していた場合に,Aがこの建物をDに売却し,賃貸人としての地位をDに承継したときでも,Dの承諾がない限りAの敷金返還債務は承継されず,Bは,Aに対してのみ敷金の返還請求をすることができる。


  

 〔問13〕 正解  1〔X〕  2(0)  3(0)  4(0)

 〔問14〕 正解  1(0)  2(X)  3(X)  4(X)

 〔問13〕の解説
 1 借地権の第三者への対抗要件は登記(借地権の登記 又は 建物の保存登記・表示登記)のみであり、借地上の建物に所有権保存登記がしてあるので、借地上の建物に住んでいなければ対抗できないということはない(借地借家法10条1項)。従って、1 は誤っている。

 2 判例では、借地権の登記をしていない場合の第三者への対抗要件としての「借地上の建物の登記」(所有権保存登記・表示登記)は本人名義の登記でなければならないとされている(最高裁1966年4月27日判決)。従って、2 は正しい。

 3 判例では、借地上に複数の建物がある場合、そのうち1棟の建物に借地権者の登記があれば、他の建物に登記がなくても、その借地全体についての借地権を第三者に対抗出来るとされている(最高裁1997年7月1日判決)。従って、3 は正しい。

 4判例では、借地上の建物の登記上の所在地番の表示が実際のものと多少相違していても、建物の同一性が種類,構造,床面積等によって認識できる程度の軽微な相違であれば、借地権を第三者に対抗することができるとしている最高裁1965年3月17日判決)。従って、4 は正しい。

 

 〔問14〕の解説
 1 (造作買取請求権)  造作買取請求権(借地借家法33条)に関する規定は旧「借家法」では強行規定であったが、「借地借家法」では任意規定化され、『賃貸借の終了時に、賃貸人に対してその造作の買取の請求をしない』旨の特約は有効とされた。従って、1 は正しい。

 2 (居住用建物の賃貸借の承継) 相続人がいる場合には、その借家権は相続人が相続する。この場合、事実上の配偶者には、借家権の承継は出来ない(借地借家法36条)。従って、2 は誤っている。

 3(取壊し予定の建物の賃貸借) 「取壊し予定の建物の賃貸借」の旨の特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならないが、公正証書にする必要はない(借地借家法39条)。従って、3 は誤っている。

 4 (敷金関係の承継) 新賃貸人が前の賃貸人から敷金を受領していなくても、敷金の返還債務は新賃貸人に引き継がれる(最高裁1969年7月17日判決)。従って、4 は誤っている。

 

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2000(平成12)年度宅建問題(借地借家法関係)

2005年12月30日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

  建物譲渡特約付借地権・法定借地権
 〔問11〕 Aを賃借人,Bを賃貸人としてB所有の土地に建物譲渡特約付借地権を設定する契約 (その設定後30年を経過した日に借地上の建物の所有権がAからBに移転する旨の特約が付いているものとする。) を締結した場合に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,誤っているものはどれか。


   本件契約における建物譲渡の特約は,必ずしも公正証書によって締結する必要はない。

  2 Aの借地権は,その設定後30年を経過した日における建物譲渡とともに消滅し,本件契約がABの合意によらずに法定更新されることはない。

  建物譲渡によりAの借地権が消滅した場合で,Aがその建物に居住しているときは,Aは,直ちに,Bに対して建物を明け渡さなければならず,賃借の継続を請求することはできない。

   Cが,建物をAから賃借し,Aの借地権消滅後もそこに居住している場合で,Bに対して賃借の継続を請求したときは,一定の場合を除き,BC間に期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされる。


 借家権 転貸借・借地上の建物賃貸借
 〔問12〕 Aが,B所有の建物を賃借している場合に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。

  1 Aが,建物に自ら居住せず,Bの承諾を得て第三者に転貸し,居住させているときは,Aは,Bからその建物を買い受けた者に対し,賃借権を対抗することができない。

  Aが建物を第三者に転貸しようとする場合に,その転貸によりBに不利となるおそれがないにもかかわらず,Bが承諾を与えないときは,裁判所は,Aの申立てにより,Bの承諾に代わる許可を与えることができる。

   建物の転貸借がされている場合 (転借人C) において,AB間の賃貸借が正当の事由があり期間の満了によって終了するときは,Bは,Cにその旨通知しないと,Aに対しても,契約の終了を主張することができない。

  Bの建物がDからの借地上にあり,Bの借地権の存続期間の満了によりAが土地を明け渡すべきときは,Aが期間満了をその1年前までに知らなかった場合に限り,Aは,裁判所に対し土地の明渡しの猶予を請求することができる。


  〔問11〕 正解  1〔0〕  2(0)  3(X)  4(0)

  〔問12〕 正解  1〔X〕  2(X)  3〔X〕  4(0)
  〔問11〕の解説
 1 建物譲渡特約付借地権の設定は、公正証書もしくはその他の文書による必要はなく、口頭による契約でもよいとされている(借地借家法23条1項)。 この公正証書等の書面で締結しなくてもよいというのが、一般定期借地権事業用借地権の契約とは異なるところである。従って、1 は正しい。


 

 2 建物譲渡特約付借地権は契約期間が満了すると、借地権は借地権設定者への建物の譲渡されると共に消滅する。。このため、当事者の合意によらずに法定更新されることはない(借地借家法23条1項)。従って、2 は正しい。

 3 建物譲渡特約付借地権が消滅した場合、借地権者または建物の賃借人建物の使用を継続しているもが請求したときは、賃借の継続を請求することが出来る(借地借家法23条2項、3項、38条1項)。
 
この規定は、請求した「借地権者または建物の賃借人」を保護するためのものであり、建物の借賃は、当事者間で定まらない場合は、当事者の請求により、裁判所が定める。従って、3 は誤っている。

 4 借地権の消滅後の賃貸の継続の請求(法定借家権)は、 請求のときに、請求した「借地権者または建物の賃借人と借地権設定者との間で、一定の場合を除き期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされる(借地借家法23条2項、3項、38条1項)。従って、4 は正しい。
 〔問12〕の解説
 1 建物の賃貸借は、建物の引渡しを受けていれば、登記がなくても対抗要件になる(借地借家法第31条1項)。従って、1 は誤っている。


 

 2 借地権では、賃借人がその建物を他人に譲渡する場合に、賃借権の譲渡または転貸を拒む地主の承諾に代わって裁判所が許可をすることができる(借地借家法19条1項)という制度があるが、建物の賃貸借では貸主の承諾に代わる裁判所の許可はない。従って、2 は誤っている。

 3建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間満了によって終了するときは、建物の賃貸人は転借人にその旨を通知しなければ、その終了を転借人に対抗出来ない(借地借家法34条1項)。 しかし,賃貸人Bが賃借人Aに期間満了の主張をするのは、転貸借とは別の話であり、当該通知をCにまだしていないからといって契約の終了をAに主張できないと言うことはない。従って、3 は誤っている。

 4 借地上の建物の賃借人の保護を図るために、借地借家法では、「借地上の建物の賃借人が借地権の存続期間満了をその1年前までに知らなかった場合に限り、その建物の賃借人は、裁判所に対し、土地の明渡しの猶予を請求することができる。また、裁判所は、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内で、その土地の明渡しについて相当の期限を許与することができる。」(借地借家法35条1項)とされている。
 裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借はその期限が到来することによって終了する(借地借家法35条2項)。

 借地上の建物の賃借人の保護の規定(35条1項)は,普通借地権で借地期間が満了するときに,借地権者が建物買取請求権を行使せずに建物を収去する場合に適用される。従って、4 は正しい。 

 

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2001(平成13)年度宅建問題(借地借家法関係)

2005年12月29日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 旧・借地法の経過措置
 〔問12〕
 Aは,昭和46年(西暦1971年)8月,Bから,その所有地を,建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃借し,その後A所有の建物を同土地上に建築し,A名義の所有権保存登記をしてきた。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。


  平成13年(西暦2001年)8月の契約更新時に,AB間の合意により,更新後の存続期間を10年と定めることができる。

 2 平成13年8月の契約更新時に,AB間の合意により,今回の更新は旧借地法によるものとするが,次回以降の更新は借地借家法本則によるものとする旨定めることができる。

  Aは平成1 2年7月に再築のため建物を取り壊し,土地の上の見やすい場所に<旧建物を特定するために必要な事項,取り壊した日,建物を新たに築造する旨>を掲示した。この掲示が存続していれば,建物が未完成でも,平成13年8月時点で,Aは本件借地権を第三者に対抗できる。

  平成13年8月の契約更新後,更新期間満了前に,本件借地上のA所有建物が朽廃した場合,本件借地権は消滅しない。


  減額請求権
〔問13〕 賃貸人A(個人)と賃借人B(個人)との間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。


 1 Bが家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,Aは,その裁判が確定するまでの期間は,Aが相当と認める金額の家賃を支払うようにBに請求できる。

  Bが家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,その請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。

  家賃が,近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは,契約の条件にかかわらず,Bは,将来に向かって家賃の減額を請求することができる。

  AB間で,3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合,その特約は効力を有しない。


  〔問12〕 正解  1(X)  2(X)  3(0)  4(X)

  〔問13〕 正解  1〔0〕  2(X)  3(0)  4(0)
  〔問12〕の解説
 1 この問題での借地権は、現行の借地借家法の施行日(平成4年8月1日)よりも前に、当時の借地法に基づいて設定されているため、更新については旧法の借地法が適用される(借地借家法・附則6条)


 

 更新後の存続期間は、堅固な建物は30年、その他の建物は20年(借地法5条1項、4条3項)。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間(借地法5条2項)となる。  このため、10年という更新後の存続期間は、借地権者には不利な特約となるため、借地法11条の規定により存続期間10年と定めたとしても無効になり、更新後の存続期間の定めがなかったことになる。従って、堅固な建物所有目的の借地権の場合は30年、非堅固な建物所有目的の借地権の場合は20年と法定される。従って、1間違い

  (借地契約の更新に関する経過措置) 第6条この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による借地借家法・附則6条)

 仮に、当事者の合意があっても、旧法の借地法施行時の借地契約を更新しない旨の特約を結び、新たに借地借家法を適用させることは、借地法の更新の規定に違反する特約となり、その特約は無効になる。従って、間違い 

3 借地借家法 第10条(借地権の対抗力等)
 1 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。 

 2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

 ※「建物を特定するために必要な事項」とは,建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積・所有者などの登記での表示事項と解されている。従って、滅失した建物に登記がある場合に限られる。

  登記をしていれば,掲示を見た人は登記所〔法務局〕で,閉鎖登記簿〔建物の滅失登記をしていた場合〕または滅失した建物の従前の登記〔建物の滅失の登記をしていない場合〕を閲覧することによって建物が存在していたことを確認できるからでる。従って、正しい

  借地期間を当事者間の合意の上で有効な存続期間(堅固建物のは30年以上、非堅固建物は20年以上)をと定めた場合は、建物が朽廃しても借地権は消滅しない
 しかし、最初の存続期間、更新後の存続期間のどちらでも、当事者間で有効な存続期間の定めをしていない場合は、建物が朽廃すれば、借地権は消滅する。 

 即ち、①更新後の存続期間に定め自体がそもそもない場合或は②更新後の存続期間に定めがあっても堅固な建物所有のときは30年未満、非堅固な建物所有目的のときは20年未満の場合、このような場合は、期間の定めは無効になり、更新後の存続期間の定めのないものとして堅固な建物所有のときは30年、非堅固な建物所有目的のときは20年に法定される。従って、このような場合〔法定更新も含まれる〕は期間満了前に建物が朽廃すれば、借地権は消滅する。

 問題文では「契約更新後」と書かれているだけで、有効な存続期間を定めた場合なのか、無効な存続期間の定めた場合なのかは判然としない。従って、無効な存続期間の定めた場合であれば、建物が朽廃すれば、借地権は消滅するので間違い
  〔問13〕の解説


 

  借賃の減額請求について協議が調わず裁判になったとき,賃貸人は,その裁判で減額が確定するまでの期間は,賃貸人自身が「相当と認める額」の家賃を支払うように賃借人に対して請求することができる(借地借家法32条3項)。

 家主が「相当と認める額」に関しては、東京地裁1998年5月29日判決で「裁判が確定までの間は賃借人には『賃貸人が相当と認める額』の賃料支払義務がある」として、その賃料は「特段の事情のない限り、従前の賃料と同額であると推定することが相当である」としている。 

 この規定があるにもかかわらず,賃貸人の請求金額を支払わずに,賃借人が自分が相当と認める額〔賃貸人の請求額より少ない額〕を支払い続けた場合は,借賃不払いによる解除裁判所により認められる場合がある。従って、1正しい

  裁判で減額が確定し,既に支払いを受けた建物の借賃の額が正当とされた借賃の額を超えているときは,賃貸人は,その超過額に年1割の受領の時からの利息をつけて返還しなければならない(借地借家法32条3項但書)。

 受領の時からの超過額・利息というのは,「賃料減額請求は、請求者の意思表示が相手方に到達した日の分から、その効果が生ずる」最高裁1970年5月6日判決)ということで減額請求の意思表示をした時からのものなので「減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額」というのは間違い

 3  建物の借賃が, 土地・建物に対する租税その他の負担の増減により,土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動により,近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは, 契約の条件にかかわらず, 当事者〔賃借人・賃貸人〕は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます〔借地借家法32条1項〕。従って、正しい

  建物の借賃が不相当になったときは,契約の条件にかかわらず減額請求することができ,仮に家賃を減額しない旨の書面での特約があったとしても,減額請求権を排除することは出来ない。従ってこの減額請求権を排除する特約は無効である。従って、正しい
 
但し、当事者間に「一定の期間借賃を増額しない旨の特約がある場合は有効であり,事情が変更したとしても,原則としてその期間は賃料の増額を賃貸人は請求することができない(借地借家法32条1項但書)。 

 

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更新料支払特約 (東京・台東) 

2005年12月25日 | 契約・更新・特約

  更新料の授受は慣習に多く頼っており、地域差が非常に大きいという理由から「借地借家法」においても更新料の規定は置かれなかった。更新料については法律には何の規定もない。

 従って法律上は、賃借人が更新料支払の義務を負っている訳ではないし、また賃貸人が更新料を請求する権利を持っている訳でもない。

  最高裁は更新料に関して「賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求に基づき当然に賃借人に賃貸人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない」(最高裁1978年1月24日判決)と判断した。

  即ち、予め更新料の支払約束が無い場合は賃貸人が賃借人に対して更新料を請求することが出来ない。前記最高裁判決後、借地・借家に関して更新料支払合意が無い場合には更新料支払を認めた判例は存在しない。

  それでは、契約書に更新料支払特約がある場合、賃借人は更新料の支払義務を負うのか。
更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、
 (A)賃料の不足を補充する趣旨
 (B)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価
 (C)合意更新された期間は解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、
 以上三点である。

 更新料支払特約がある場合、契約を合意更新せずに、法定更新するとどうなるか。
 ①「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち、更新料特約が有る場合、賃借人は更新料支払の義務がある

 ②「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない

  借家の場合において、最高裁は②の立場から「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982年4月15日判決)と明快な判断をしている。

  更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。

  これは当然の結論である。借地借家法は経済的負担の無い法定更新を定めている。更新料特約は法の趣旨に反して借主に不利益な経済的負担を課している。特約が法定更新の場合にも適用されるとすれば、それは実質的に経済負担を強制する合意更新を義務付け、無償の法定更新を排除するに等しい。換言すれば法定更新制度の否定である。

 

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店舗の更新で家主嫌がらせ (東京・荒川区) 

2005年12月23日 | 建物明渡(借家)・立退料

 荒川区西尾久で家賃12万円の店舗を借りラーメン屋を営んでいる佐藤さんは、11年9月末に3年毎の更新を迎えた。だが、条件で折り合いがつかず借家契約を法定更新した。

 しかし、家主は契約書を作成していないから賃貸借は消滅したと言い張った。家主は「自分の老後に使用するから直ちに店を返せ」と言い、挙句には店のシャツターの鍵穴にパテ入れ開かない様にしたり、2階食材置場に通ずる階段入口にクサリで施錠する等、度重なる嫌がらせをして来た。

 佐藤さんは昨年7月に家主に対して賃貸借確認の訴訟を起こした。裁判中にも突然家主からの依頼で業者が店のトタン屋根を剥しに来たりの妨害行為があった。そのときは営業中であり承諾してないと業者を追い返した。 

 今年の2月末に裁判の結果が出た。当然の結論で法定更新が認められ、賃貸借関係は成立しているとの判決を得た。だが、家主はその裁判の結果が不満で抗告した。佐藤さんは裁判所で家主と徹底的に戦う決意である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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2002(平成14)年度宅建問題(借地借家法関係) 

2005年12月21日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 建物買取請求権
〔問13〕 Aが,平成4年8月,Bに土地を賃貸し,Bがその土地上に建物を所有している場合の契約終了に伴う建物買取請求権に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。

 


 1 AB間の借地契約が,公正証書により10年の事業専用の目的で締結された場合には,Bは建物買取請求権を有しない。

 

 2 建物買取請求権は,契約終了の理由を問わず,Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも,BはAに対して建物の買取りを請求することができる。

 3 BがAの承諾を得て土地をCに転貸し,建物を譲渡した場合,AB間,BC間の契約が,ともに期間満了し更新がなければ,CはAに対し直接建物買取請求権を有する。

 4 Bが適法にAに建物買取請求権を行使すると,その所有権は直ちにBからAに移転するが,BはAが代金を支払うまで,建物の引渡しを拒むことができる。 


  法定更新
 〔問14〕 建物賃貸借契約(以下,この問において「契約」という。)の終了に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。


  1 期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の1年前から6月前までの間に,更新しない旨の通知を出すのを失念したときは,賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも,契約は期間満了により終了しない。

  2 期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,期間満了後,賃貸人が使用を継続していることについて,賃貸人が異議を述べなくても,契約は期間満了により終了する。

  3 期間の定めのある契約が法定更新された場合,その後の契約は従前と同一条件となり,従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。

  4 期間の定めのない契約において,賃貸人が,解約の申入れをしたときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,解約の申入れの日から3月を経過した日に,契約は終了する。 


 〔問13〕 正解  1〔0〕   2〔X〕  3〔0〕  4〔0〕  正答率70.6%

 〔問14〕 正解  1〔0〕  2〔X〕  3〔X〕  4〔X〕  正答率66.3%


  〔問13〕の解説
 1 事業用定期借地権では,更新や再築の規定(3条~8条,18条),借地権者の建物買取請求権(13条)は適用しないとされています〔借地借家法24条1項〕従って、1は正しい

 2 判例では一貫して、債務不履行による契約解除で契約が終了したときは,借地人は建物買取請求権を否定している(最高裁1960年2月9日判決)。従って、2は間違い

 3 問題文から、この借地契約が借地借家法施行(平成4年8月)後に締結されていることに注目したい。建物買取請求権の規定は,借地権の存続間が満了した場合での転借地権者(転借人)と借地権設定者(土地の所有者)との間にも準用されており,転借人Cは土地の所有者Aに対し直接,建物買取請求をすることができる〔借地借家法13条3項〕。従って、3は正しい

 但し借地契約が借地借家法施行(平成4年8月)前に締結されている場合は、(建物買取請求権に関する経過措置)附則第9条2項 により「第13条第3項の規定は、この法律の施行前に設定された転借地権については、適用しない」ということなので注意したい。

 4 賃貸人が代金を支払うまで土地・建物の引渡しを拒むことはできるが,賃貸借契約期間終了後の土地の地代相当分は不当利得となるのでその分は返還しなければならない(最高裁1960年9月20日判決)。従って、4は正しい


 〔問14〕の解説
 1 期間の定めのある賃貸借において,賃貸人が,賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に,賃借人に対して,「更新拒絶の通知」または「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をしなかったときは,期間を除いて従前の契約と同一の条件で,契約を更新したものとみなされる。また,この法定更新後の賃貸借は期間の定めがのないものとする〔借地借家法26条1項〕。従って、1は正しい

 2 賃貸人が,賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に,賃借人に対して,正当事由のある「更新拒絶の通知」をしたとしても,期間満了後に賃借人が建物の使用を継続していた場合は,賃貸人は遅滞なく異議を述べないと法定更新されることになる〔借地借家法26条2項〕。従って、2は間違い

 3 法定更新されると,更新後の契約は,期間を除いて従前と同一の契約条件で,期間の定めのない賃貸借になる〔借地借家法26条1項〕。従って、3は間違い。 

 4 期間の定めのない建物の賃貸借では,賃貸人・賃借人ともいつでも解約の申入れをすることができるが,賃貸人から解約の申入れをする場合は,正当事由(借地借家法28条)を必要とし、解約申入れから6月を経過することによって終了する〔借地借家法27条1項〕。

 但し、賃借人からの解約申入れの場合は民法617条が適用され,解約の申入れから3月が経過することによって終了します。(民法617条1項2号)。従って、4は間違い

 

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通常損耗は借主に負担義務なし (毎日) 

2005年12月17日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

  敷金:通常の汚れ、賃借人に負担義務なし 最高裁が初判断

 賃貸住宅の賃借人は、通常の生活で生じた汚れや破損(通常損耗)の修繕費を負担する義務があるかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は16日、契約書に明記するなどしない限り、通常損耗分を賃借人が負担する義務はないとの初判断を示した。そのうえで、不明確な記述に基づき、敷金から通常損耗分を差し引いた家主の大阪府住宅供給公社に返還する義務があると認定し、返還額を特定するために審理を大阪高裁に差し戻した。

 賃借人が通常損耗分の負担を強いられるケースは多く、賃貸契約の実務に影響を与えそうだ。

 原告は大阪府の30代の男性会社員。98年に公社の住宅に入居し、敷金として約35万円を払ったが、通常損耗分などを差し引かれ、約5万円しか返還されなかった。賃貸契約には「別表」が添付され、公社側は「表の中に通常損耗分を賃借人が負担するとの記載がある」と主張したが、男性は「別表の記載は明確ではなく、通常損耗分の負担に合意したことはない」と返還を求めた。

 1、2審は「別表は契約内容の一部で、記載も明確」と訴えを退けた。これに対し、第2小法廷は「別表の文言では、賃借人が通常損耗分を負担する趣旨が明白とは言えない」と判断した。

 国土交通省のガイドラインやモデル契約書は、通常損耗の修繕費用は家主側が負担するとしているが、法的拘束力がなく、賃借人側が負担するとの契約は法的には可能になっている。【木戸哲】

 ◇判決の波及効果に期待

 原告の代理人で、敷金トラブルに取り組む「敷金問題研究会」の弁護士らは判決後に記者会見し、「通常損耗分は原則的に家主が負担すべきだとはっきり認めたもので、大きな意義がある」と最高裁の判断を評価した。「現状の一般的な契約書では、最高裁が示したハードルはとてもクリアできず、賃貸業界全体に大きな影響を与えるだろう」と、判決の波及効果に期待を込めた。

毎日新聞 2005年12月16日 

 今回の最高裁の判決文こちらから。

 

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「二重取りおかしい」賃貸住民ら歓迎 敷金返還訴訟 (朝日)

2005年12月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

   2005年12月16日       ashi.comより

 普通に暮らしていて生じた汚れや損傷の修繕費をどこまで負担しなくてはならないのか――。「賃貸暮らし」の人たちの多くが抱く疑問に司法が答えた。最高裁第二小法廷は16日、家賃以外の費用を求める場合は、契約書などで負担範囲を明確にしていない限り無効とする初めての判断を示した。「二重取り」に遭ってきた賃貸マンションの住民らからは、歓迎の声が相次いだ。

 「これまでの二重取りのような仕組みがおかしい。適切な判決だろう」。3年ほど賃貸マンションに住んでいる、滋賀県草津市の男性会社員(26)は、最高裁の判断を評価した。「普通に生活していて出る汚れは家賃に含まれるのが当たり前だと思う」

 大阪府四條畷市の女性会社員(22)は17日、3年間住んだ賃貸マンションを退去する。敷金は30万円。「壁がカビなどで汚れているため、どれほど敷金から引かれるか心配。ちょうどいいタイミングで、賃貸マンション住民にとってありがたい判決が出てくれた」と話した。

 全国に店舗がある大手旅行会社で転勤者の家賃補助業務に携わっていた社員(38)は「十数万円の修繕費を家主から請求されるケースは多く、なんとかならないかと思いつつも、慣習のように支払っていた」という。

 ただ「引っ越し間際になって、『家主ともめるくらいならええわ』とあきらめてしまう人も多いのではないか。会社としても、社員に無理な交渉を強いることができるかどうか」と話した。

 大阪府住宅供給公社の福山樹三夫・民間住宅課長は「予想していなかった判決。早急に特約を見直す必要がある」と話した。

 同公社は計約2万8200戸の賃貸住宅で、退去時の修繕費を借り主が負担する特約をつけている。福山課長は「もともと関西では、退去時に一定の金額を敷金から差し引く『敷引き』が商習慣としてあった。我々の特約は補修の実費だけをいただくもの。理解を得られてきたと考えていたのだが」と困惑していた。

 一方で、修繕費の貸主負担は、すでに一般的になりつつある。独立行政法人「都市再生機構」(旧都市基盤整備公団)は、99年から畳やふすまの自然損耗について、国の指針に沿って、機構側の負担を明確にする条項を賃貸契約書に盛り込んでいる。大阪市住宅供給公社も99年に「特約」を廃止した。

 大阪市で賃貸マンションを扱う不動産会社の担当者は「業界では、日常生活でできた損耗は貸主が負担するという考え方が定着しつつある。最高裁の判断には『いまさら』という気もする」と話す。

 同市内で賃貸マンションの仲介業をしている男性は「まだまだ『敷引き』の特約つきの契約も多い。この判決で『家主払い』の認識が加速するだろう」と話した。

     ◇

 原告側は16日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見。最高裁判決の意義を語った。

 松丸正弁護士は「今回の判決はわずか30万円の小さな成果だが、日本の住宅賃貸制度に与える影響は大きい」と評価した。

 今回と同じ通常損耗の費用を借主に負担させる原状回復特約で最高裁(2004年6月10日)まで争った兵庫県住宅供給公社は既に敗訴している。この裁判に関してはここを参照。

 

 今回の最高裁の判決文こちらから。

 

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汚れ修繕費、貸主が負担  敷金から引くには合意必要 賃貸住宅で最高裁初判断 (東京新聞)

2005年12月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 賃貸マンション明け渡しの際、通常使用に伴う損耗(汚れや傷み)の回復費用を敷金から差し引くことを定めた「特約」の適否が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は16日、通常損耗の修繕費用は「賃料に含むのが普通で、契約書や口頭での具体的な説明と明確な合意がなければ借り主に負担義務はない」と原則貸主負担とする初めての判断を示した。

 その上で、敷金返還を求めた借り主側敗訴の2審大阪高裁判決を破棄、適正な返還額を算定するため、審理を大阪高裁に差し戻した。

 通常損耗分の回復費用負担をめぐっては、国のガイドラインが貸主負担としているが、関西などでは損耗の有無にかかわらず、敷金から差し引く「敷引き」特約を入居時に結ぶケースが多く、有効性を争う敷金返還訴訟が相次いでいる。

 判決理由で、中川裁判長は「通常使用で生じた劣化、損耗の回復費用は必要経費」として賃料に含まれると認定。「敷金から差し引けば、借り主には予期しない特別の負担になる」と指摘した。

 訴訟は大阪府住宅供給公社の賃貸マンションを借りていた男性が未返還の敷金約30万円の支払いを求めて起こした。

 判決によると、男性は1998年の入居契約時に「修繕負担区分表」を示され、サインしたが、区分表は一般的な基準を示しただけだった。3年後の解約時には敷金約35万円のうち約5万円しか返還されなかった。

 中川裁判長は「契約書や入居説明会で具体的な説明があったとはいえず、特約の合意は成立していない」と判断した。

 

 東京新聞2005年12月16日より

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借り主と合意必要 賃貸住宅「敷引き」 最高裁が初判断  (産経)

2005年12月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

2005年12月16日 (金)      産経新聞より


 賃貸マンションの退去時に通常の使用で生じた汚れや傷みの回復費用を敷金から差し引かれたのは不当として、元居住者の男性が大阪府住宅供給公社に敷金約三十万円の返還を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は十六日、「通常の使用で生じる劣化についての修繕費は、賃料の中に含まれており、住人に負担させるには、契約書などでの明確な合意が必要」と初判断を示した。男性の訴えを退けた二審大阪高裁判決を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻した。

 通常損耗分の回復費用負担をめぐっては、国のガイドラインで貸主の負担としているが、関西などでは損耗の有無にかかわらず、敷金から差し引く「敷引き」特約を入居時に結ぶケースが多く、有効性を争う敷金返還訴訟が相次いでいる。男性の弁護団は「修繕費用の負担に、非常に高いハードルを示した判決。同種の訴訟は全国で多数あり、影響は大きい」としている。 

 判決理由で中川裁判長は「通常の劣化についての回復義務を住人に負わせることは、予期しない特別の負担を課すことになるから、義務が認められるには負担の範囲が契約書に明記されているか、口頭で説明し、住人がそれを明確に認識して合意されていることが必要」と述べた。その上で「契約書や入居説明会では具体的な説明はなかったといわざるを得ず、合意が成立しているとはいえない」と判断した。

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敷金差し引き、最高裁が初判断…具体的説明が条件 (読売)

2005年12月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

2005年12月16日 (金)        読売新聞より


 賃貸住宅の入居者が退去する際、貸主が自然に傷んだ内装などの補修費を敷金から差し引けるかが争われた訴訟の上告審判決が16日、最高裁第2小法廷であった。

 中川了滋裁判長は「入居者が負担する自然の損傷とはどのようなものかを、貸主が契約書に具体的に明記するか口頭で説明し、入居者がその内容を明確に認識して合意した場合に限り、差し引きは許される」との初判断を示した。

 その上で、今回は許されるケースに当たらないとして、入居者の敷金返還請求を棄却した2審・大阪高裁判決を破棄。返還額の審理のため、高裁に差し戻した。

 民法などは、自然に傷んだ部分の補修費は原則として貸主が負担すると定め、入居者との間で合意した場合に限って敷金からの差し引きが認められるが、合意の有無を巡ってトラブルが多発していた。判決は、貸主がどのような説明をし、入居者がどんな意思表示をすれば合意があったと見なせるかを最高裁が初めて示したもので、トラブルの解決に役立ちそうだ。

 この訴訟は、大阪府内にある大阪府住宅供給公社のマンションを退去した30歳代の男性会社員が、敷金約30万円の返還を公社に求めたもの。

 判決などによると、会社員は1998年に入居し、賃料3か月分に相当する敷金約35万円を公社に預けた。賃貸契約の際、公社側からは、補修費を公社と入居者のどちらが負担するかを項目別に記載した一覧表が示され、「生活することによるふすまや床の変色は入居者負担」などとする特約が結ばれた。2001年の退去時に、この特約を根拠に約30万円が敷金から差し引かれた。

 判決は、「特約の内容を明確にする説明がなかった」などとし、敷金からの差し引きは許されないと結論づけた。

 1、2審は「特約によって合意が成立しており、差し引きは正当」と判断し、請求を棄却していた。

 今回の最高裁の判決文こちらから。

 

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 原状回復特約で最高裁の判断 (朝日)

2005年12月16日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

修繕費は貸手の責任 敷金訴訟で最高裁

       2005年12月16日        朝日新聞より 

  
  賃貸マンションで普通に暮らしていて生じた床や壁の傷や汚れを借り手の責任として、修繕費やクリーニング代を敷金から差し引けるかが争われた訴訟の上告審判決が16日、あった。最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は「修繕費などは本来賃料に含まれる」として貸手負担の原則を最高裁として初めて確認。「借り手の負担範囲が契約に具体的に明記されているか、口頭の説明により借り手が明確に認識していなければ、借り手に特別の負担は課せない」との初判断を示した。差し引かれた敷金約30万円の返還を求めた借り手の請求を退けた二審・大阪高裁判決を破棄。審理を同高裁に差し戻した。

 退去時に敷金の返還をめぐってトラブルになるケースは多い。国民生活センターには毎年1万件を超える相談があり、各地で訴訟も起きている。通常の傷や汚れは家賃に含まれるという原則は国交省のガイドラインも明示しているのに、特約などで借り手に負担を求める例は依然として多く、これを厳格に解釈した判決の影響は大きい。

 第二小法廷は「通常の使用をした場合の修繕費は賃料の中に含まれている」と指摘。「これを借り手に負担させるのは予期しない負担を課すことになる」と述べた。

 今回の例で貸手は「負担区分表」として、ふすまの汚れ、床の変色など項目別に細かく借り手に負担を求める文書を契約時に渡していた。二審判決はこれを「明確な記載」としていたが、最高裁はこれでも「通常の汚れや傷も含む趣旨だとだれが見ても明白とはいえない」と判断。入居時の説明も十分とは言えず、「合意が成立したとは言えない」と結論づけた。

 原告側代理人は「これほど細かい負担表が無効とされればほとんどのケースが無効だ。借り手に負担を求められるケースはほとんどなくなるはずだ」と意義を語った。

 訴えていたのは、大阪府住宅供給公社の賃貸マンションに3年2カ月暮らした30代の男性。退去時に、修繕費として30万2547円を敷金(35万3700円)から引かれた。入居時に交わした契約書の中に、「傷や汚れについては、負担区分表に基づいて借り手が負担する」との特約があり、これを根拠とされた。

 男性は公社の特約について不当と主張。「契約時の説明が不十分で、特約に合意したつもりはない。だまし討ち的な手法であり無効だ」と訴えた。公社側は「契約自由の原則があり、特約は有効。社会一般の清潔志向に照らしても、合理的なやり方だ」などと反論していた。


   最高裁の判決文こちらから。

 

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宅建問題(瑕疵担保責任)2002・2003年 

2005年12月14日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

  瑕疵担保責任
  2002年宅地建物取引主任者資格試験問題

 〔問9〕 AがBに建物を売却し,代金受領と引換えに建物を引き渡し後に,Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが,売主の瑕疵担保責任についての特約はない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。


 1 は,この瑕疵がの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り,この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。

 2 は,この売買契約を解除できない場合でも,この瑕疵により受けた損害につき,に対し賠償請求できる。

 3 が,に対し,この瑕疵に基づき行使できる権利は,が瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。

 4 は,この瑕疵があるために,この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り,この売買契約を解除できる。


 

   瑕疵担保責任
  2003年宅地建物取引主任者資格試験問題 

 〔問10〕 Aが,BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが,建物の主要な構造部分に欠陥があった。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,瑕疵担保責任(以下この問において「担保責任」という。 )については,特約はない。


 1 が,この欠陥の存在を知って契約を締結した場合,の担保責任を追及して契約を解除することはできないが,この場合の建物の欠陥は重大な瑕疵なのでに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。

 2 が,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,の担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは,欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができない場合に限られる。

 3 が,この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合,契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ,に対して担保責任を追及することができなくなる。

 4 AB間の売買契約が,宅地建物取引業者の媒介により契約締結に至ったものである場合,に対して担保責任が追及できるのであれば,に対しても担保責任を追及することができる。


 〔問9〕   1〔×〕  2〔0〕  3〔0〕  4〔0〕

 〔問10〕  1〔×〕  2〔0〕  3〔×〕  4〔×〕

  〔問9〕解説
 1 瑕疵担保責任は無過失責任である。売主の過失は要件ではないため,売主に過失がなくても,売主は担保責任を負う。
 民法570条では「売買の目的物に隠れたる瑕疵があるとき」となっている。 この瑕疵はものの瑕疵〔物理的な瑕疵〕だけではなく,法律や行政上の制限を受ける「法律的な瑕疵」も含むものとされている(
最高裁1966年4月14日)。従って、1は間違い。

 2 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があったときは,買主は損害賠償を請求することが出来る〔民法570条〕。解除することができるのは,契約の目的を達成できないときに限られる。従って,「解除できない場合でも,賠償請求できる」という2の記述は正しい。

 3 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があり,契約の目的を達成できない時は、買主が契約時にそのことについて善意無過失であり,発見したときから1年以内であれば,損害賠償請求や解除権を行使することが出来る。
 なお、損害賠償請求については,引渡しのときから10年の消滅時効にかかるとしている(最高裁2001年11月27日)。従って、3は正しい。

 4 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があったときは,契約の目的を達成できないときに限り,解除することが出来る。4は正しい。

 

〔問10〕解説
 1 建物の欠陥が重大な瑕疵であっても,買主が悪意であれば,承知の上で売買契約を締結しているので,買主は担保責任を追及することは出来ない。 従って,解除権を行使できないことは勿論,損害賠償も請求することは出来ない。「買主が悪意のとき,解除はできないにしても,損害賠償請求はできる」としているので1は間違い。

 2 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があったときは,契約の目的を達成できないときに限り,解除することが出来る。このとき損害があれば,解除とともに買主は損害賠償も請求することが出来る民法570条,566条1項〕。 従って,2は正しい。

 3 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があったとき,買主が契約時にそのことについて善意無過失であり,発見したときから1年以内であれば,損害賠償請求や解除権を行使して担保責任を追及することが出来る。,「契約締結から1年以内に」となっているので3は間違い。

 4 担保責任は,買主と売主の間の売買契約において売主が負わなければならまい。媒介業者は売主ではないので,瑕疵ある物件を媒介したからといって民法570条の瑕疵担保責任そのものを負うことはない。従って,は間違い。

 だが,「宅建業者が瑕疵ある物件を媒介したことでどんな場合でも法的な責任がない」ということではない。場合によっては,債務不履行責任不法行為責任を負うことがある。瑕疵担保責任の裁判例では,売主の瑕疵担保責任とともに,媒介した宅建業者の債務不履行責任や不法行為責任が認められるている。    

 

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2003(平成15)年度宅建問題(借地借家法関係)

2005年12月12日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

  敷金の承継
 〔問11〕 借主Aは,B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し,敷金として賃料2ヵ月分に相当する金額をBに対して支払ったが,当該敷金についてBによる賃料債権への充当はされていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。


  1 賃貸借契約が終了した場合,建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず,Aの建物明渡しはBから敷金の返還された後に行えばよい。

  2 賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡した場合で,Cが賃貸人の地位を承継したとき,敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。

  3 賃貸借契約期間中にAがDに対して賃借権を譲渡した場合で,Bがこの賃借権譲渡を承諾したとき,敷金に関する権利義務は当然にDに承継される。

  4 賃貸借契約が終了した後,Aが建物を明け渡す前に,Bが建物をEに譲渡した場合で,BE間でEに敷金を承継させる旨を合意したとき,敷金に関する権利義務は当然にEに承継される。

   〔問11〕正答率は72.7%


 

 借地権の対抗要件、譲渡の代諾許可
〔問13〕 Aが,Bに,A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し,Bがその土地上に乙建物を新築し,所有している場合に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,誤っているものはどれか。


  1 Bが,乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は,甲地につき賃借権の登記をしていないときでも,甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し,甲地の賃借権を対抗できる。

  2 乙建物が滅失した場合でも,Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは,Bは,甲地に賃借権の登記をしていなくても,滅失のあった日から2年間は,甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し,甲地の賃借権を対抗できる。

  3 Bが,乙建物をEに譲渡しようとする湯合において,Eが甲地の賃借権を取得してもAに不利となるおそれがないにもかかわらず,Aがその賃借権の譲渡を承諾しないときは,Bは,裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる。

  4 Bが,乙建物を1年以上自己使用しておらず,かつ,他人に譲渡しようとすることもない場合,Aは,裁判所に,相当の対価の提供を条件として,自ら乙建物の譲渡及び甲地の賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる。

   〔問13〕の正答率は51.7%


  定期借家契約
 〔問14〕 平成15年10月に新規に締結しようとしている,契約期間が2年で,更新がないこととする旨を定める建物賃貸借契約(以下この問において「定期借家契約」という。 )に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。

 1 事業用ではなく居住の用に供する建物の賃貸借においては,定期借家契約とすることはできない。

  2 定期借家契約は,公正証書によってしなければ,効力を生じない。

  3 定期借家契約を締結しようとするときは,賃貸人は,あらかじめ賃借人に対し,契約の更新がなく,期間満了により賃貸借が終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

  4 定期借家契約を適法に締結した場合,賃貸人は,期間満了日1ヵ月前までに期間満了により契約が終了する旨通知すれば,その終了を賃借人に対抗できる

    〔問14〕正答率は85.9%


 正解  〔問11〕 1〔×〕  2〔0〕  3〔×〕  4〔×〕

      〔問13〕  1〔0〕  2〔0〕  3〔0〕  4〔×〕

      〔問14〕  1〔×〕  2〔×〕  3〔0〕  4〔×〕

 

東京借地借家人新聞より

 

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2004(平成16)年度の宅建問題(借地借家法関係) 

2005年12月11日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

  転借人の賃料支払義務・転借人の保護
 〔問13〕 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し,Bは,Aの承諾を得た上で,甲建物の一部をCに対し月10万円で転貸している。この場合,民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば,誤っているものはどれか。


 1 転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担する。

 2 賃貸人Aは,AB間の賃貸者契約が期間の満了によって終了するときは,転借人Cに対しその旨の通知をしなければ,賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない。

 3 AB間で賃貸借契約を合意解除しても,転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り,賃貸人Aは,転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。

 4 賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は,転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。

 〔問13〕の 正答率は54.5%

 


 

 賃料増減額請求とサブリース契約
 〔問14〕 貸主A及び借主Bの建物賃貸借契約に関する次の記述のうち,賃料増減請求権に関する借地借家法第32条の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

 


 

  1 建物が完成した時を始期とする賃貸借契約において,建物建築中に経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当になっても,建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない。

 2 AB間の建物賃貸借契約が,Bが当該建物をさらに第三者に転貸する事業を行ういわゆるサブリース契約である場合,使用収益開始後,経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても,Bから賃料減額請求を行うことはできない。

 3 Bが賃料減額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額されることになる。

 4 Aが賃料増額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,BはAの請求額を支払わなければならないが,賃料増額の裁判で正当とされた賃料額を既払額が超えるときは,Aは超過額に年1割の利息を付してBに返還しなければならない。

 〔問14〕の正答率は26.6%

 


 

  【正解】 〔問13〕 1〔0〕  2〔0〕  3〔0〕  4〔×〕       

 
  【正解】 〔問14〕  1〔0〕  2〔×〕  3〔×〕  4〔×〕

 

 〔問13〕の解説 
 1、賃貸人の承諾を得て転貸借(民法612条)がなされたとき,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う。転借人は,賃借人が払うべき賃料等の支払や明渡し義務,目的物保管義務などを負うことになる(民法613条1項)。 この結果,賃貸人は,賃借人・転借人どちらにも賃料を請求することが出来る。
 転借人は賃借人の負担する以上の義務を負わない。転借人は転貸借契約で定められた賃料の額の範囲で賃借人の支払義務を負うだけでけである。従って、転借人の義務は,賃借人<転貸人>に対して負う義務の範囲を超えることはないので,転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担すればよい。従って、1、は正しい

 2、賃貸人の承諾を得て転貸借がされている場合に,期間の定めのある賃貸借が期間の満了〔期間の定めの。ない賃貸借では解約の申入れ〕によって終了するときは,賃貸人Aは転借人Cにその旨の通知をしないと,賃貸借の終了を転借人に対抗出来ない(借地借家法34条1項)。
 賃貸人Aが転借人Cに,賃貸借が終了する旨を通知したときは,その通知がされた日から6月を経過することによって転貸借も終了する(借地借家法34条2項)。従って、2、は正しい

 3、賃貸人と賃借人とが賃貸借契約を合意解除しても,特段の事情がない限り,賃貸人は転借人に対してこの合意解除の効果を主張できない(最高裁・1987年3月24日判決)。 従って,賃貸借の合意解除による賃貸借終了によって,明け渡し請求をすることは出来ないので3、は正しい

 4、判例では,賃料の延滞を理由に賃貸借を解除するには,賃貸人Aは賃借人Bに催告するだけで足り、転借人Cに支払いの機会を与える必要はない,としている(最高裁・1997年2月25日判決)。従って、4、は間違い

 

 〔問14〕の解説

 1、建物の賃料が経済事情の変動等で不相当になったときは,一定期間は増額しない旨の特約がある場合を除いて,契約の条件に係らず,当事者は,将来に向かって賃料の額の増減を請求することができます(借地借家法・32条1項)。
 最高裁は,サブリース契約の事例で,<建物の使用収益の開始前には,賃料減額請求はできない>と判示しました(最高裁・2003年10月21日判決)。従って、1、は正解である。

 2、最高裁は,「(建物での)サブリース契約には,借地借家法32条1項の当事者からの増減額請求の規定が適用され得る。」と判示し(最高裁・2003年10月21日判決)。従って、2、は間違いである。

 3、賃料減額の裁判が確定したときは,その効力は,減額請求の意思表示が相手方に到達した時に遡って生じます(借地借家法・32条1項)。従って,「賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額される」は間違いである。

 4、貸主が賃料増額請求権を行使して協議が調わない場合,借主は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の賃料を支払えば足り,貸主の請求してきた賃料を支払う必要はない(借地借家法・32条2項)。借主は従前と同じ賃料を支払っていれば問題は起きない。従って、4、は間違いである。 

 

東京借地借家人新聞より

 

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