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借地更新料を減額した直後に、地代を増額請求 (東京・中野区)

2010年12月24日 | 地代の減額(増額)

 中野区弥生町に住むAさんは昨年、20年の借地契約の更新を迎えた。地主の代理人の不動産会社と更新料をめぐり交渉になった。地主の代理人は、20年前と同じ金額である坪10万円を主張し、その半分を主張するAさんと何回かの話し合いがもたれた。その結果、Aさんが主張する金額で合意が出来た。

 しかし、今年11月に、地主から直接、地代の値上げ通知が送付されてきた。「平成6年より15年間地代の値上げをしてこなかったことと固定資産税の大幅な値上げがあったことを理由に値上げをする」と言ってきた。地主の対応に不審に思い、都税事務所に相談行った。事務所では「大幅な値上げはないし、このような問題では専門的な借地組合があるからそこに相談したらどうですか」と勧められ、組合に相談に来た。

 組合では、地代の増減は双方の合意が原則であること。一方的な値上げ通告に対しては、まずその根拠を説明してもらうように勧めた。また、固定資産税の値上げを根拠にするならば、下がった時には地代の値下げもするのかなどのアドバイスを行った。Aさん「心配で寝れなかった。もっと早く組合を知っていたら更新料も支払わずに済んだのではないか」と語った。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

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家賃滞納リスト着々 ブラックリスト化懸念 (朝日)

2010年12月21日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 賃貸住宅に入る際、過去の家賃滞納状況などをデータベース(DB)で調べ、契約判断の参考にするケースが広がる。住まいを奪う「ブラックリスト」として懸念する声が高まるなか、早ければ来年にも100万人分といわれる巨大データベースが動き出す。

 「不動産業者に理由も告げられず、6件も入居を断られた。思い当たる節がない」

 生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとポット」(さいたま市)に、ビル管理会社で働く50代の男性から相談が寄せられた。代表理事の藤田孝典さんが事情を聴くと、男性は3年前に自己破産していた。藤田さんは「これが理由だ」と思った。自己破産情報は官報に載るからだ。

 2008年秋のリーマン・ショック後、同様の相談が増えた。調べると、相談者には自己破産か、家賃滞納か、服役した過去があった。藤田さんは「ブラックリストがあるとしか思えない」と言った。

 確かに自己破産や滞納歴、連帯保証人などの情報を売る業者がいる。そうした業者のうたい文句は「入居後のトラブルを未然に防ぐ」だ。

 滞納者への強引な追い出し行為が批判を浴び、政府が悪質行為に刑事罰を科す規制法の成立を目指すなか、関西のある不動産業者は「追い出しが難しくなれば、入居で絞るのは当然だ」と言った。

 これまで出回っていたDBは、個別企業が集めた情報などが主で、対象地域や情報量に限りがあった。しかし、来年にも全国的なDBが動き出そうとしている。

 入居者の連帯保証を請け負う家賃保証会社などが設立した「全国賃貸保証業協会(LICC(リック))」は昨年9月、長期滞納の抑制を狙い、加盟会社の情報をDB化して入居審査に使う方針を打ち出した。

 LICC加盟の13社は運用開始に向け、契約者の同意を得て情報を蓄積する。名前、生年月日、旧住所、電話番号、運転免許証番号・・・・・・。運用までに100万人の情報が集まるとみられている。

 滞納がなければ登録情報は退去後5年で消えるが、滞納した場合はその情報が書き加えられ、保証会社が立て替えた家賃を完済してから5年たたないと消えない。LICC側は「家賃を払った証明で、外国人や高齢者は借りやすくなる」とし、一時的に滞納した人が入居する際は「安易に拒否しない」としている。

 ただ、情報の目的外使用などを警戒する政府は、滞納DBを監視下に置く方針だ。先の臨時国会で、DB事業者の登録義務付けなどを盛り込んだ法案を成立させる予定だったが、閣僚の問責決議などをめぐって国会が空転し、継続審議になってしまった。

 日本賃貸住宅管理協会のアンケートによると、回答した318社が扱う物件での1カ月以上の家賃滞納率は、3月末現在で3.2%だった。

 DBが解雇や派遣切りなどで家賃が払えない人たちを締め出す「ブラックリスト」になることを懸念する日本弁護士連合会は9月、全面禁止を求める会長声明を出した。

 11月11日には東京都内でDB化反対の会があり、出席者は「余儀なく滞納した人たちが住まいを確保できなくなる」と懸念を表明した。

 国土交通省によると、低所得層が増えたことなどで個人による連帯保証が立ちゆかない現実を背景に、家賃保証会社はこの10年で急成長した。現在、全国に約100社あり、約1300万戸ある民間賃貸住宅の入居者の4割が契約を結んでいるとされる。

 路上生活者ら約1700人の入居時に連帯保証をしたNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の稲葉剛・代表理事は、低所得者らの入居を支援する「公的保証」の必要を訴える。

 国交省は「家賃保証は民間が担っており、適正に運用させる」として、新たな制度の創設に否定的だが、稲葉代表理事は「民間まかせだと、排除される人が出てくる。国が本気で取り組めば、できないわけがない」と言った。

2010年12月20日 asahi.com 関西 

 

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地代増額に反対したのに地主が差額地代を請求 (東京・足立区)

2010年12月21日 | 地代の減額(増額)

 現在地代の一方的な改訂を請求されたが、従前の地代を口座振込みして頑張っている足立区小台のAさんに地主から今度は地代の差額不足金を支払うよう通知してきた。

 地主は平成21年度分公租公課の大幅上昇を理由に130円の値上げを要求してきたが、土地の評価証明書を取ってみると月額1坪当り100円の税額で公租公課の2倍~3倍が適正地代といわれる中で7倍もの地代を支払っているので従前の720円で頑張っている。

 そんな中、地主は口座振込み額を受領しているにもかかわらず、今度は差額分を要求してきた。

 Aさんは、奥さんと二人で組合事務所へ相談に訪れ、これ以上の値上げを認めると年金での生活が大変厳しくなるので地主が再度差額分を請求してきた時は「地代として受領していないと見なし供託させて頂く」旨を内容証明郵便で通知することを確認した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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商業地の高額地代を減額調停へ (東京・大田区)

2010年12月20日 | 地代の減額(増額)

 JR蒲田駅周辺に宅地約35坪を賃借中のSさんは、現在払っている地代年間350万円余が知人に高すぎると指摘され、組合の春の講座相談会で入会した。具体的な行動は起こさず、秋の講座相談会で減額の相談をした。

 固定資産税等を調査すると商業地域で税金が高額なことは承知していたが、4.7倍の地代を払っていた。地主から地代を払えない場合は譲渡するように言われ、借地権を譲渡して移転した隣人もいる。

 Sさんは、組合役員と相談の上、減額を求める調停裁判を起こすことを決意し、裁判所に出向き訴状を提出することになった。

 20年前に組合を知ったのに具体的な相談をしなかったことだけでなく、今年の春に入会しているのに減額相談が秋になったことを悔やんでいる。住み慣れた地域に住み続けるためにも、調停裁判で必ず減額を認めさせて、適正地代にしたいとご夫婦で裁判に臨む決意だ。

 

東京借地借家人新聞より

 

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第2回学習交流集会で佐藤東大社研教授が講演

2010年12月18日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

住宅政策と借家法の基本的あり方

第2回学習交流集会で佐藤東大社研教授が講演
戦後の住宅政策で 存在しなかった家賃補助
高い持家率は借家政策貧困の裏返し

 定期借家制度に反対する第2回全国学習交流集会が、11月13日午後1時30分から江東区のUR大島6丁目団地3号棟集会所において開催された。集会には東借連・全借連など民間賃貸住宅の居住者団体と公団・公営・公社など公共賃貸住宅の自治会から80名が参加した。

 はじめに、東京大学社会科学研究所の佐藤岩夫教授より「住宅政策と借家法の基本的なあり方を考えるー借地借家見直し、および定期借家制度創設その後」と題して約1時間にわたって基調講演が行なわれた。

 佐藤教授は、「借家法は、人々が住居を基盤として営んでいる生活や社会的交流(コミュニティ)の継続・発展を保障する制度である」と借家法の意義を強調し、諸外国の例を表で示しながら、適切な借家規制と積極的な住宅政策を組み合わせている諸国(ドイツ・フランス)の方が、もっぱら借家規制自由化の手段に依存する諸国(イギリス・アメリカ)よりも、良質な借家ストックの形成に成功していると指摘し、日本の定期借家推進論の「借家規制を緩和・撤廃することで良質な借家供給する」との論理を批判した。

家賃補助で良質な借家供給

 また、佐藤教授は戦後日本の住宅政策の特徴として積極的な借家政策が存在しなかったことを指摘し、イギリス・アメリカに継ぐ高い持家率を占める日本は「借家政策の貧困の裏返しである」ことを強調した。また、正当事由制度など借家規制の積極的な意義をあらためて再確認するとともに、「借家に対する積極的な建設助成および住宅手当(家賃補助)なくしては良質な賃貸住宅の供給を促進できない」と力説した。

 各団体の報告では、東借連の細谷事務局長より定期借家制度が民間賃貸住宅に普及しない一方で、法律の欠陥で様々問題が起こっていることを指摘し、ゲストハウスなど貧困ビジネスに活用されている実態を報告した。また、家賃滞納履歴等借家人の個人情報のデーターベース化の危険性を訴えた。最後に集会アピールを採択した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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第2回借地借家法改悪反対全国学習交流集会

2010年12月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 11月13日午後、借地借家法改悪反対全国連絡会が主催する、「借地借家法の改悪と定期借家契約の導入拡大を許さない! 第2回全国学習交流集会」が東京都江東区内で開かれ、4団体から80名が参加して活動交流しました。

 当日、佐藤岩夫東京大学社会科学研究所教授が「住宅政策と借家法の基本的あり方を考える――借地借家法見直し、及び定期借家制度創設その後――」と題して基調講演を行ないました。

正当事由のある借家が原則

 佐藤教授は、講演の冒頭「別項」のとおり、基調報告の骨子を述べました。

 そして、第1に借家法の基本的枠組みと最近の政策動向に触れ、現行の法体系上は、あくまで正当事由のある借家(普通借家)が原則であり、一方で正当事由の機能領域を縮小ないし撤廃して「定期借家」をより一般化すべきであるという議論があると警鐘しました。

 佐藤教授は、最近の政策動向について定期借家推進論が頻繁に登場し、民間賃貸住宅市場はもとより、公営住宅供給の「適正化」を口実にして公営住宅の期限付入居制度の導入を全国各地へ広げようとしていることを指摘し、定期借家推進論側からの制度「見直し」の動きが強まっていることを具体的な事例を示して報告しました。

日本の借家政策は不存在

 さらに、佐藤教授は、定期借家推進論者への論拠を鋭い論理で批判しました。

 また、戦後の日本の住宅政策では、民間借家に対する積極的な建設助成策や家賃補助制度がなく、西欧諸国に比べて借家政策が不存在であったと指摘しました。

 最後に、佐藤教授は、住宅政策と借家法の今後をどう考えるべきかに関連して、戦後の伝統的な住宅政策や市場重視の住宅政策でもなく、借家に対する積極的な建設助成や普遍主義的な住宅手当なくして「良質な賃貸住宅等の供給の促進」は実現しないと提起し、借家規制は人々の生活を保障する福祉システムないし生活保障システムの基本的あり方の選択であることを指摘しました。

 基調講演のあと、12名の参加者からワークショップ方式による質問が出され、佐藤教授から詳しく説明がされました。

借家人ブラックリスト反対

 その後、4団体の代表から借地借家法見直し問題の活動の現状などが報告されました。

 全借連を代表して細谷紫朗事務局次長が追い出し屋規制法案をめぐり報告し、規制緩和を求める業界側の動きが強まっており、同法案が可決されると業界側は借家人のブラックリストをつくり、新たな入居差別が生まれてくることを指摘しました。

次期国会へ請願署名を

 集会は、「全国連絡会」を代表して船越康亘全借連副会長がまとめの報告を行い、その中で「借地借家法見直し改悪反対の運動は、居住者の住み続けられる権利を確保するのみならず、住宅政策を国民本位の政策へ転換させていく展望を切り開く闘いであることをこの集会で確認できた」と述べ「唯一の住宅セフティーネットである公営住宅へ定期借家契約の導入を全国的に反対運動を強めていく」ことを提案しました。

 さらに、民主党政権下で、借地借家法改悪推進派は、改悪へ着実に強められていることを具体的資料を示して情勢を報告し、来年開かれる通常国会へ請願運動を強めていくことが確認されました。

 また、この集会で10名の参加者から、決意を込めた感想文が寄せられました。

佐藤東大教授の講演骨子

○借家法は、人々が住居を基盤として営んでいる生活や社会的交流(コミュニティ)の継続・発展を保障する制度である。
○良質の借家を増やすために必要なのは、定期借家ではなく、借家建設に対する公的な資金援助や住宅手当(家賃補助)などの積極的な住宅政策(借家政策)であり、そのような積極的な住宅政策と借家規制が住宅保障の両輪をなす。
○定期借家をめぐる問題で問われているのは、人々の生活を保障する福祉システムないし生活保障システムの基本的あり方の選択である。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 本来と異なる地主への地代供託が違法な債務不履行とならなかった事例

2010年12月16日 | 弁済供託

 判例紹介

 先例性は乏しいかもしれませんが、所属事務所の高畑拓弁護士と共同受任し、2009年12月、東京高裁(平成21年12月21日判決・平成21(ネ)第4767)で逆転勝訴、2010年9月、最高裁で相手方の上告が不受理とされ、勝訴が確定した建物収去土地明渡請求事件について紹介させていただきます。
 
 【事案の概要】
 この事件は、土地の地主が1992年の段階で現在の地主(原告は法人)に移転していたにもかかわらず、借地人である依頼者らが1959年の借地契約締結当時の地主を名宛人として地代を供託し続けていたため、現在の地主(原告)から地代不払を理由として借地契約を解除され、建物収去土地明渡を請求されたというものです。
 
 1審(東京地裁)は、借地人らが「供託の継続中に本件土地の登記内容を確認するなどして、原告(現在の地主)が本件土地の所有者であると知る機会を十分有した」として供託の有効性を否定し、地主側の請求を認めました。
 
 供託といえども、地代を支払い続けていたことに変わりないことから、借地人らは1審判決を不服として東京高裁に控訴しました。
 
 控訴審から受任した我々は、借地人が供託し続けていたこと、供託が借地人らのやむをえない事情に起因するものであったこと、高齢である借地人らに地主が十分な説明をつくしていなかったことを主張しました。また、借地人らを裁判所に同行し、借地人らの生の声を裁判官に伝えるよう努めました。借地人らは約50年近く本件土地に居を構え、1階部分で食堂を営んでおり(訴訟時は休業状態)、また高齢であったことから、今さら本件土地を明け渡すわけにはいきませんでした。
 
【裁判所の判断】
 控訴審(東京高裁)は、新たに土地の所有権を得て賃貸人となった者が、土地所有権について登記を具備したときには借地人に対し賃借権を有する、すなわち賃貸人たる地位を主張できるとしても、そのことから当然に借地人らに登記を確認する義務は措定できないとしました。そして、借地人らが長年に渡り供託を継続していたこと、他方で地主が長年放置し十分な説明を尽くさなかったこと等から、「借地契約の解除を容認するほどの違法な債務不履行があるとまでいうのは困難」として解除を無効とし1審判決を取り消しました。

 その後、最高裁は地主の上告を不受理として本件は終了しました。

【寸評】
 法形式上、本来の地主と異なる地主を名宛人として供託をしても、それが地代として有効にならないことは当然のことです。したがって、地代不払という事実だけみれば控訴審でも借地契約の解除が認められる可能性がある事件でした。その意味で先例性の乏しい事件といえます。しかし借地人らが供託をせざるをえなかった事情を法律上の主張に引き直し、あきらめずに裁判所に主張した結果、東京高裁は解除を認めるほどの違法性はないとしました。
 
 単純に考えれば難しい事案でも、その事案の背景を丹念に紐解き、粘り強く主張したことが結果に結実したのだと思われます。借地人らは現在も本件土地に居住しつづけています。

 

 (2010.12)

(東借連常任弁護団・枝川充志弁護士)

東京借地借家人新聞より

 


 

(*)今回の裁判事例は、1審で敗訴後東京・台東借地借家人組合へ入会した組合員の事例です。入会後東京高裁へ控訴し、組合の2名の顧問弁護士の努力の結果、2審で逆転勝訴 したものです。(その後地主側は上告し、最高裁の不受理で、借地人の勝訴が確定しました。)

 

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貧困ビジネスへの定期借家契約の導入と保証会社の個人情報のデーターベース化で住まいの差別化を拡大

2010年12月15日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 定期借家制度は議員立法による拙速な審議(註1)により無理矢理導入されたため、現在でも民間賃貸住宅市場において新規供給物件で5%程度しか普及されておらず、様々問題が起きています。

 定期借家契約の契約期間が満了しても、6ヶ月から1年前に賃貸借契約の終了の通知をしないと期間の定めのない定期借家契約が継続するという問題が生じます(註2)。

 そのため、終了通知の必要のない1年未満の定期借家契約がゼロゼロ物件などでよく見かけられます。

 ゲストハウスなどは保証人無しで入居できる一方、定期借家契約のため期間が短く、期間満了で一方的に家賃を値上げされ、明渡しを求められるなどのトラブルが発生しています。低所得の若者がインターネットで安易にこうした契約に引っかかっています。ゲストハウスは法律の規制がなく、劣悪な居住条件の物件が出回っています。

 民間の賃貸住宅では現在4割ぐらいが家賃保証会社を使っています。不動産屋が保証会社と提携して保証契約を押し付けてくる事例が増えています。

 保証会社等の悪質な家賃の取立て行為が社会問題となる中で、法律で追い出し屋規制法が国会で審議されています。家賃保証会社13社が加入する全国賃貸保証業協会(LICC)は、今年2月から借家人の様々な個人情報をデーターベース化し、情報を提供された家主や不動産屋は過去に1回でも家賃滞納等のある借家人を住宅から排除しようとしています。

 これは借家人の人権を蹂躙する大問題であり、全借連ではデーターベースの禁止を求めて11月末に国会議員への要請を行ないました。

 

全国借地借家人新聞より
 


註1)借地借家法の所轄の委員会は法務委員会である筈なのに、実際の審議を行ったのは借地借家法とはお門違いな衆議院が建設委員会であり、参議院が国土・環境委員会で審議がされた。専門委員がいないので、法的な問題点の詳しい論議がないまま、僅か衆議院2日、参議院1日、計3日の超スピードでまともな審議も無く成立した。
 なお、定期借家契約は平成12(2000)年3月1日施行された。

註2)文面の趣旨、文章の前後の繋がり具合から、「期間の定めのない定期借家契約」は「期間の定めのない普通借家契約」の間違いと思われる。そうでないと「そのため、終了通知の必要のない1年未満の定期借家契約がゼロゼロ物件などでよく見かけられます。」の文章と齟齬を来たす。

 1年以上の契約期間がある定期借家契約の場合、契約期間が満了の1年前から6か月前までの間に賃貸人は賃貸借契約の終了の通知をしないと賃借人に契約期間内の終了を主張出来なくなる(借地借家法38条4項)。終了通知を契約期間満了前までしていない場合には、民法619条1項の規定から定期借家契約は契約期間の定めのない普通借家契約が成立する。その契約を終了させるためには借地借家法28条の正当事由が必要になる。

 定期借家契約は契約期間が満了すれば、家主に特別な理由がなくても、確定的に契約が終了し、契約の更新がない。契約を継続するためには、借地借家法38条1項~3項の規定に従って再契約しなければならない。

 ① 確定期限を定め、更新がない旨定めた書面による契約(借地借家法38条1項)
 ② 契約書とは別の説明書面を契約締結前に交付して、定期借家契約であることを賃貸人が説明する(借地借家法38条2項)
 ③ 賃貸人が38条2項の説明をしなかったときは定期借家契約は無効になる(借地借家法38条3項)

 これら①~③法的要件を1つでも欠いた場合は定期借家契約としては成立しない(最高裁平成22年7月16日判決を参照)。従って、期間の定めのない定期借家契約が継続するという問題は惹起し得ない。

 

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借家の立ち退き請求事件 (静岡)

2010年12月14日 | 建物明渡(借家)・立退料

 静岡借地借家人組合が現在関わっている「明渡請求事件」は7件ある。その中の1つが、老朽化を理由にした貸店舗の明渡請求裁判だ。

 Kさんは裁判で、「家主は退去請求を撤回し、借家人は深夜1時以降の営業を自粛する」を弁護士抜きで勝利和解したのである。この裁判で得た教訓は「正当事由のない退去請求は通用しないこと」に確信もち、粘り強く闘うことの大切さが分かったことだ。

 これで一件落着と喜んでいたところ、今年4月末家主から「裁判で次回の契約更新拒絶を主張したので、9月末で退去せよ」との文書が届いた。Kさんは直ちに「退去請求には同意できない」旨通知した。

 すると家主から9月末「建物賃貸借契約更新に係る約定書」が届けられ、署名捺印を求められた。Kさんは、約定書に応ずる義務は無いと無視することとした。

 「懲りない家主にも困ったもんだが、Kさんは決して負けないぞ」と意気軒高。

 

全国借地借家人新聞より

 

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本人訴訟で地代値上げ阻止 (大阪市・東住吉)

2010年12月13日 | 地代の減額(増額)

 2010年11月19日、大阪地裁は、地代改訂請求事件で、前回改定後1年7か月では、「改定すべき積極的な事情が認められない」ことを理由に地主側の地代値上げ請求を棄却する判決を下しました。

 大阪市東住吉区鷹合2丁目のH(借地人)さんは、戦前長屋の一角に木造2階建ての建物に住んでいます。ところが、平成18年10月地主から「無断改修を行ったことを理由に平成21年7月30日をもって契約期限が終了し契約更新を拒絶する」旨の調停を申し立てられました。

 調停の結果、平成19年3月26日、「①20年間の賃貸借を更新する。②賃料については別途訴訟ないし調停により定める。③借地人は保証金として130万円を差し入れる。」などの条件で和解が成立しました。

 近隣の同一地主の借地人(東住吉借地借家人組合の会員)6名が大阪地裁で地代の減額訴訟中であり、Hさんも減額訴訟を申立てをしたので、大阪地裁は合併して審理をすることになりました。平成20年4月1日に和解が成立しました。その結果、Hさんは、平成18年11月から遡って差額地代を支払いました。

 ところが地主は、Hさんへ和解後の平成20年5月15日付けで地代の増額請求の調停を申し立てました。しかし、調停委員から地代増額請求できる特段の理由がないと指摘され、地主は調停手続きを取り下げました。さらに、地主は平成21年早々再び地代増額の調停を申し立てましたが、調停は成立しませんでした。

 地主は、Hさんへなお地代増額の請求を行うべき平成21年11月6日大阪簡裁へ訴訟を提起しましたが、大阪簡裁は大阪地裁へ移送しました。

 その後、大阪地裁は「適正地代」を立証すべき鑑定を行いましたが、Hさん等は、鑑定結果について意見書を提出し、大阪地裁はこの意見書合理性を認め、6名の会員の地代減額請求を認めると共に、地主から請求されていたHさんの地代増額請求を棄却しました。

 Hさんは、「判決文の中で『和解成立からわずか2か月後時点の賃料を増額するというもので、著しい経済変動等の特段の事情が存しない限り、かかる短期間での賃料増額は賃借人を不安な立場に立たせることになって相当でない。』と判断してくれたことでこれまでの苦労が報いられた」と語っています。

 この地代増額阻止裁判を支援してきた上野事務局次長は、「この判決は借地借家法の本旨にかなったもので、周辺の会員が団結して本人訴訟で闘い、会員の団結の素晴らしさが裁判所を動かした成果だ」と述べています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 マンションの契約更新で保証人がいない場合、契約更新はできないのか

2010年12月10日 | 連帯保証人

 (問) マンションの契約期間が間もなく満了します。すでに家主の依頼を受けた不動産屋から契約更新の条件を提示されています。それによると、家賃は据え置きなので不満はないのですが、新しい更新契約書に連帯保証人の実印を押すことと印鑑証明を添付することを要求されました。私には、新たにお願いできる保証人がいないので、それを断りました。「それでは契約は更新できないので期間満了で賃貸借は終了します」と不動産屋に言われてしまいました。頼める保証人がいない場合は、契約の更新ができないのでしょうか。


 (答) 建物賃貸借契約の保証人の役割は、契約の内容にもよりますが、普通は契約書に「保証人は、本契約から生ずる乙(賃借人)の一切の債務につき、乙と連帯して履行の責を負うものとする」などと書かれています。賃貸借契約から生ずる一切の債務とは、家賃を支払う債務や建物を壊した場合の弁償などです。あくまで金銭的な債務で、立ち退きを保証するなどということはありません。

 頼める保証人がいなくても契約の更新は可能です。借家契約の更新には次の2種類があります。

①契約の当事者(家主と借家人)が更新の条件について合意し、更新契約書を取り交わす(合意更新)。

②更新契約書を取り交わさずに従前の契約期限をそのままやり過ごすと自動的に更新する「法定更新」(借地借家法第26条)。

 頼める保証人がいなくても、更新契約書ができなくても②の法定更新を選択すればいいわけです。法定更新後の契約条件は、従前の契約条件と同一の内容になります(借地借家法第26条1項)。ただし、2年というような契約期間はなくなり、期間の定めのない状態で続くことになります」(借地借家法第26条1項但書)。

 法定更新すると、契約条件は従前と同一ですから、もし前の契約書に「更新時に新家賃の*か月分の更新料を支払う」という特約があっても、契約期間の定めがなくなるので、その後は更新料を支払う機会が来なくなるという有利な条件が得られます。

 結果、法定更新をすると、以後更新が発生しないので、更新料支払問題は発生しません。

 

 

東京借地借家人新聞より

 


 

<参考法令>

 借地借家法

建物賃貸借契約の更新等
第26条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

 2  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

 3  建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

東京・台東借地借家人組合

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【Q&A】 毎年地代が値上がりし、近所より飛び抜けて高いので値上げを止めたい

2010年12月09日 | 地代の減額(増額)

(問) 私が借地している地主さんは、毎年1月になると地代の値上げを通告してきます。もう10年以上続いています。初めの頃は坪50円の値上げでしたが、最近は100円ずつ値上げがあります。現在、地代は坪1600円で、借地面積は45坪ですから、1か月分7万2000円です。今年も坪100円の値上げ通知が来ました。

 先日、近所で別の地主から借地している人から聴いたのですが、地代は坪750円で、その方の知っているところでは、それが相場だということでした。今まで気づかなかったのですが、うちの地代は近所で飛び抜けって高かったわけです。私としては高すぎる地代を値下げしたいぐらいですが、せめて値上げをストップしたいのですが可能でしょうか。


(答) 地代の額は地主が一方的に決めるものではなく、地主と借地人が協議して両者合意で決めるものです。地主の値上げ要求に借地人が不満でも、要求どおり払ってしまえば、合意したことになります。

 値上げ額について両者の意見が一致せず合意できないときは、借地人は地主の要求額を払うのではなく、自分で相当と思った額を支払っておけば、とりあえずそれで良いことになっています(借地借家法第11条2項)。ここでの相当額は従前の地代額と地主の値上げ要求額の範囲内で任意に決めていいのです。「近隣の相場」とか「固定資産税と都市計画税」の動向などを参考にして決めます。普通は従前の地代額を支払っておけば足ります。

 ご質問の場合は、現行額が近隣の水準と比較して飛び抜けて高すぎるので、値上げ問題というよりも値下げ問題です。値下げは借地人の方から要求します。値下げ額に地主が合意すれば、値下げが決まります。合意しない場合は調停裁判にしなければなりません。決着がつくまでは地代は現行額で支払います(借地借家法第11条3項)。

 調停でも両者の合意ができなければ値下げは決まりません。最終的には裁判で決着することになり、相当なエネルギーが必要です。値上げをストップするのは比較的に簡単です。地主の値上げ要求を断って今までどおりの地代を払っておけばいいのです。

 

 

東京借地借家人新聞より

 


 

借地借家法
地代等増減請求権
第11条  地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 2  地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

 3  地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

 

東京・台東借地借家人組合

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