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「ゼロゼロ物件」トラブル (読売)

2008年11月28日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 敷金・礼金なしで入居できる「ゼロゼロ物件」などを巡り、家賃滞納者が「賃貸保証会社」から強引な取り立てを受けるトラブルが相次いでいる。

 福岡県内の弁護士や司法書士らでつくる「福岡敷金問題研究会」(代表・安河内肇司法書士)は29日、無料相談電話を開設。被害実態を調べ、悪質な行為をやめさせる仮処分申請や集団訴訟に乗り出す。

 研究会などによると、ゼロゼロ物件や連帯保証人なしで入居できる賃貸住宅は、ここ数年、全国の都市部で急増。フリーターや派遣労働者ら低所得者を中心に人気を集めている。

 しかし、家賃を滞納した際、取り立てを行う保証会社とのトラブルも増加。東京の被害対策弁護団が7月に行った「ゼロゼロ物件110番」には、1日で65件の相談が寄せられた。福岡県消費生活センターなどにも▽部屋の鍵を勝手に交換され、法外な違約金を請求された▽ドアに督促の張り紙をされた▽深夜に部屋に上がり込んで脅迫まがいの取り立てを受けた――などの訴えが相次いでいる。

 福岡市城南区の男性店員(30歳代)は今年1月、東京の保証会社に慰謝料などを求めて福岡簡裁に提訴した。訴状によると、昨年4月、この会社の連帯保証を受け家賃約5万円のアパートを借りた。アルバイト収入が不安定で家賃支払いが約1か月遅れると、夜中に社員を名乗る3人が部屋に上がり込み、母親が連帯保証人となる覚書を交わすまで6時間軟禁されたという。

 会社側は「違法行為はしていない」と全面的に争っている。

 別の大手保証会社幹部は「業界には大小合わせて約100社あるが、悪質な業者はごく一部。大半は法律にのっとって立ち退きを求め、取り立てを行っている」と話す。

 しかし、安河内代表は「保証会社には監督官庁がなく、法制度が整備されていない。国や県に早急な規制を訴えたい」としている。

2008年11月28日 読売新聞

 

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【判例】 礼金返還請求控訴事件 京都地方裁判所(平成20年9月30日判決)1

2008年11月27日 | 借家の諸問題

 判例紹介

事件番号      :平成20年(レ)第4号

事件名        :礼金返還請求控訴事件

裁判年月日     :平成20年9月30日

裁判所名      :京都地方裁判所

部           :第2民事部

結果         :控訴棄却

判示事項の要旨 控訴人は,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が消費者契約法10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(1審では請求棄却。 )。これに対し,礼金約定が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,礼金約定が消費者契約法10条に反し無効であるということはできないとした事例

 

主       文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,18万円及びこれに対する平成16年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 1 事案の要旨
 本件は,控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が消費者契約法10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する約定の礼金返還期日の翌日である平成16年11年3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原審は,礼金を返還しない旨の約定は有効であるなどとして,控訴人の請求を棄却したことから,控訴人がこれを不服として,控訴した。

2 争いのない事実等(認定に供した証拠は末尾に掲記 以下,特に断らない限り,月日は平成16年のものである )。

(1) 控訴人は,3月17日,被控訴人との間で,次の約定で賃貸借契約を締結した(甲4,乙1) (以下「本件賃貸借契約」といい,本件賃貸借契約の対象物件を以下「本件賃貸物件」という 。)。

ア 対象物件     X704号室
イ 所 在 地     京都市a区b町c番d
ウ 賃 料       月額6万1000円
エ 賃貸期間     3月20日から平成17年3月19日まで
オ 礼 金       礼金は18万円とし,本件賃貸借契約締結後は,賃借人は,賃貸人に対し,礼金の返還を求
           めることはできない (契約書7条1項 以下 「本件礼金約定」 という。)。
カ          更 新 料 1年ごとに賃料の2か月分

(2) 控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,本件賃貸借契約を仲介した株式会社長栄ホーム(以下「長栄ホーム」という )に対し,礼金18万円を交付した(甲3) (以下「本件礼金」という 。)。

(3) 長栄ホームの宅地建物取引主任者であったAは,3月20日,控訴人に対し,本件賃貸借契約について,重要事項の説明を行い,その際,本件 賃貸借契約終了時に礼金が返還されないことを説明した(甲2, 9, 乙5,7) 。

(4) 控訴人からの解約通知により,本件賃貸借契約は10月13日に終了し,控訴人は,同日,被控訴人に対し,本件賃貸物件を明け渡した。

争点とこれに関する当事者の主張
 (1) 本件礼金約定と消費者契約法10条前段

(控訴人の主張)
 本件礼金約定は,消費者契約法10条所定の民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものに該当する。

ア 礼金は,何らの根拠もなく,何の対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されている金員であるとみるほかないが,仮に,礼金を賃借権設定の対価や謝礼であると考えたとしても,賃貸人の義務である目的物を引き渡して,これを使用収益させることの対価として,賃借人に賃料以外の金員の支払を強要することになるから,本件礼金約定は,民法601条,606条,616条,598条に比して,賃借人の義務を加重するものといえる。

イ 礼金は,何らの根拠もなく,何の対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されている金員であるとみるほかないが,仮に,礼金を賃借権確保の対価と考えたとしても,賃貸人は礼金を返還することなく,賃貸借契約の義務を履行するまでに,賃貸借契約を解約することができるが,その反面,賃借人は手付け倍返しを請求できずに賃貸借契約の解約を甘受しなければならない点で,民法559条,557条に比して,賃借人の権利を制限するものといえる。

ウ 礼金を,仮に,賃料の前払と考えたとしても,賃借人が賃貸物件を社会通念上通常の使用方法により使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗については,賃料支払によって,これを回収するのが通常であって,賃貸借契約の本質に合致するものであるから,礼金という方法により,通常損耗による減価の回収をすることは,社会通念や賃貸借契約の本質に反し,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。

 また,賃借人に特別の負担を定めた特約が有効であるといえるには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であるのに,礼金と形を変えれば,容易に上記特約の有効性が肯定され,予期しない特別の負担を課されることになる。

エ 本件礼金約定によれば,本件賃貸借契約が1年の契約期間の途中で解約された場合であっても,礼金は全額返還されないこととなるが,礼金が賃料の一部前払であるとすれば,使用収益していない期間の割合に応じて返還されなければならないはずであるから,それが返還されないとする本件礼金約定は,民法601条に定める賃料支払義務を加重し,又は建物賃貸借において賃料の支払を月払とした同法614条に比して,多額の賃料支払を加重する条項である。

(被控訴人の主張)
 本件礼金は,①賃借権設定の対価②賃料の前払という複合的な性質を有するものであり,賃料の支払義務は民法に定められているから,本件礼金約定は,消費者契約法10条所定の民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものに該当しない。

ア 単に名目が「賃料」か否かという形式的な解釈をすれば, 「賃料」 (民法 601条)という名目以外の金員の支払を内容とする契約条項は,すべて消費者契約法10条前段の要件に該当することとなり,そうなれば,これまで礼金や更新料などが社会的に広く利用されてきたという実態に合致しないし,また,賃料以外の名目による金員の徴求は使用収益と対価性がないという発想そのものが契約当事者の合理的意思とかい離している。

イ 礼金が賃料の前払という性質を有するということは,月々の支払か,前払一括かという支払方法に相違があるものの,名目上の「賃料」と同じ賃貸目的物の使用収益の対価としての性質を有するということである。

 また,本件賃貸借契約締結時において,控訴人は,礼金が返還されないこと,すなわち,自らの本件賃貸物件使用の対価として,賃貸借契約締結時に一定額の経済的負担を伴うことについて,十分説明を受け,それを理解しているから,賃借人に予期しない特別な負担は存在しない。

ウ 賃借人が契約期間内に中途解約をするなどによって,賃貸借契約が終了した場合に,実際の賃貸期間に応じて礼金が精算されない点については,賃借人が礼金の支払により受けるべき利益を自ら放棄したものと評価できる。

(2) 本件礼金約定と消費者契約法10条後段

(控訴人の主張)
 本件礼金約定は,消費者契約法10条所定の民法1条2項に規定する基本原理である信義則(以下「信義則」という。 )に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

ア 礼金は,何らの根拠もなく,何の対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されている金員であるとみるほかない。礼金を返還しない旨の約定は,このように不合理なものであるとともに,また,その趣旨も不明確である。なお,礼金を返還しない旨の約定が明確であるためには,少なくとも, 記載及び説明の明確性が求められるのであって, 単に, 礼金の金額や,礼金が返還されないことを記載しているだけでは足りない。特に,本件においては,Aは,本件賃貸借契約が締結された3月17日よりも後である同月20日になって初めて,重要事項説明書を控訴人に交付している。これは,宅地建物取引業法35条1項,6項にも違反する上に,控訴人が礼金の法的性質や趣旨について,全く説明を受けていなかったことを裏付ける。

イ 情報力・交渉力の点において圧倒的優位な立場にある賃貸人は,自ら又は専門業者に委託して,定型的な契約書をあらかじめ作成しておき,その中に,賃借人の利益を一方的に害して自らの利益を図る礼金のような不当条項を組み込ませておくことで,不当に利益を得ることができる。他方,賃借人は,そのような条項も含めて契約全体を承諾して締結するか,これを拒否するかの自由しか有しておらず,交渉によって不当条項を変更させる余地はおよそ存在しない。

ウ 平成5年1月29日当時の建設省は 「内容が明確,十分かつ合理的な賃貸借契約書の雛形(モデル として, 「賃貸住宅標準契約書 」(甲14の2・3) を作成した。 同賃貸住宅標準契約書 (甲14の3) には,「( 3)賃料等」という項目において, 「その他一時金」という記入欄があるが,建設委員会議録(甲15)によれば,この記入欄は,賃貸借契約時に賃借人から交付される一時金の徴求を全面的に容認したものでなく,むしろ,賃貸住宅標準契約書の作成に関与した政府委員としては,できるだけ一時金の徴求を排除する方向付けを探ろうとしていたのであり,そのため,賃貸住宅標準契約書には「礼金」などの項目が設けられなかった。

エ 礼金は,公営住宅法20条,旧住宅金融公庫法(以下, 「旧公庫法」という。 )35条1項,同法施行規則10条1項,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律3条6号,同法施行規則13条等において禁止されており,特に,旧公庫法においては,違反した賃貸経営者には罰則が定められている(同法46条1項1号 。)

オ 本件礼金は18万円であり,これは賃料の約2.95か月分に当たるところ,本件賃貸借契約においては,1年ごとに更新料として賃料の2か月分に相当する金員の支払が必要とされている。そうすると,賃借人は,1年目については14.95か月分の賃料に相当する金員を,2年目以降については14か月分の賃料に相当する金員を,1年間に支払わなければならないこととなるから,賃料2.95か月分の礼金というのは明らかに過大である。しかも,控訴人は,わずか7か月あまりで退居したから,9.95か月分(約1.42倍)の家賃を支払わされたこととなり,この観点からも,著しく過大な負担というべきである。

カ 平成17年3月ころの首都圏,愛知,京阪神の3大都市圏における礼金等の額を調査した結果(甲18)によれば,京滋地域の礼金の平均額は賃料の2.7か月分(敷金のない物件に限れば3.3か月分になる )であり,首都圏(1.5か月)や愛知(1.1か月)の平均に比して,突出して高率である。しかも,本件では,京滋地域における礼金の平均額を上回る賃料2.95か月分の礼金が徴求されている。

キ 礼金は,本来毎月の賃料に含まれているべき自然損耗の修繕費用を二重取りするものにほかならない。

 (被控訴人の主張)
 信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえるためには,消費者保護だけでなく,契約者の選択の責任,取引の安全,私的自治などの見地から,当該条項を有効とすることによって消費者が受ける不利益と,その条項を無効とすることによって事業者が受ける不利益とを総合的に衡量した上で,消費者の受ける不利益が均衡を著しく失するほどに一方的に大きいといえることが必要であるところ,本件礼金約定により,控訴人の受ける不利益が均衡を著しく失するといえるほどに一方的に大きいということはできないから,本件礼金約定は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえない。

ア 本件礼金約定は,1賃借権設定の対価2賃料の前払という性格を有するものであり,十分な合理性を有している。そして,控訴人は,礼金の支払により,本件賃貸物件における賃借権設定という利益を得ているほか,賃貸物件の使用収益,契約期間の保護という利益を享受している。

イ 礼金の設定は,地域による差異こそあれ,長きにわたり,慣行として社会的に承認されてきたこと,借地借家に関する法改正においても,礼金等の規制について,議論の対象になっていたのに,現行の借地借家法では,礼金等に対する規制がなされていないことからすれば,立法者の意思として,礼金の合意そのものが不合理なものとして法的規制を及ぼすのではなく,その内容が民法90条に違反するような場合を除き,私的自治に委ねるべきとの判断が示されていると考えるべきである。

ウ 礼金の法的性質などについて,控訴人に対し,事前に専門的な説明がなくても,被控訴人は,契約書の記載や重要事項説明により,礼金の支払が契約時に必要となることのほか,礼金の額や,礼金は賃貸借契約終了後も還付されないことなど, 賃借人の経済的負担について明確にしているから,控訴人が本件賃貸借契約を締結するか否かの判断を可能にするのに必要十分な情報を提供している。

エ 建物賃貸借契約は一般に広く行われる契約であり,賃貸物件の広告などにおいて 「賃料」, 「敷金」(保証金), 「礼金 」,「更新料」という用語は広く用いられており,しかも,礼金は,その法的性質は別論として,敷金とは異なり,後に返還されないことは一般に広く理解されている。

 そして,今日,賃貸物件の情報はインタ-ネットや情報雑誌等により巷に溢れており,消費者は,瞬時にかつ容易に比較対照できる情報を入手することができ,その上で,賃貸物件の選択に当たり,賃料や更新料,礼金といった負担を賃貸物件の使用収益の対価として認識し,どの賃貸物件を選択するのが経済的合理性を有するか判断して,契約の申込みを行っているのであるから,賃貸人と賃借人との間に,法が介入すべき情報の格差は存在しない。

オ 京都市内においては,賃貸物件の約20%に空室があり,場所によっては30%の空室がある賃貸物件も存在する。このように,賃貸物件の市場はいわば借り手市場であり,賃借人は,空室に苦しむ賃貸人よりも,むしろ賃貸物件の選択において有利な立場にある。また,礼金が設定されていない賃貸物件(公団・市営住宅・住宅金融公庫等の融資物件)も多数あるから,賃借人は,礼金のない物件を選ぶことも可能である。

カ 被控訴人は,本件賃貸借契約において,礼金や更新料などを含めて全体の収支を計算し,その上で月額賃料額を設定している。

キ 本件礼金は,被控訴人の収入となり,税務申告をして税金を支払った上で,賃貸経営の諸経費,生活費などに既に使用されている。仮に,本件礼金約定が無効となれば,他の賃貸物件の賃貸借関係にもその影響が波及することになるが,そうなれば,被控訴人は,賃貸物件の経営において種々のリスクを負っているのに,消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降に締結したすべての賃貸借契約について,受け取った礼金を返還しなければならなくなるという不測の損害を被ることになる。


 礼金返還請求控訴事件 京都地方裁判所(平成20年9月30日判決)2 へ続く


【判例】 礼金返還請求控訴事件 京都地方裁判所(平成20年9月30日判決)2

2008年11月27日 | 借家の諸問題

第3 争点に対する判断
争点(1 )(本件礼金約定と消費者契約法10条前段)について

 被控訴人は,本件礼金は,1賃借権設定の対価2賃料の前払という複合的な性質を有するものであり,賃料の支払義務は民法に定められているから,本件礼金約定は,消費者契約法10条所定の民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものに該当しないと主張する。

 しかし,本件礼金は,少なくとも賃料の前払としての性質を有するものというべきであるところ,このことは,建物賃貸借において,毎月末を賃料の支払時期と定めている民法614条本文と比べ,賃借人の義務を加重していると考えられるから,本件礼金約定は,民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する約定であるというのが相当である。

 したがって,争点(1)に関する控訴人の主張は理由がある。

争点(2) (本件礼金約定と消費者契約法10条後段)について
(1) 控訴人は,本件礼金約定が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであると主張するので,以下,検討を加える。

(2) 控訴人は,礼金は,何らの根拠もなく,何の対価でもなく,賃借人が,一方的に支払を強要されている金員であるから ,本件礼金約定は, 不合理でその趣旨も不明確なものであると主張する。

 しかし,賃料とは,賃貸人が,賃貸物件を賃借人に使用収益させる対価として,賃借人から受領する金員であるところ,民法614条は,建物賃貸借において ,毎月末を賃料の支払時期と定めているが, これは任意規定であり,賃貸借契約成立時に賃料の一部を前払させることも可能であり,また,上記のような賃料の性質からすれば,賃料という名目で受領したか否かにかかわらず,賃貸人が賃貸物件を使用収益させる対価として受領した金員が賃料に該当する。

 そして,本件賃貸借契約のように,一般消費者に居住の場を提供することを目的とする建物賃貸業においては,賃貸物件が物理的,機能的及び経済的に消滅するまでの期間のうちの一部の期間について,賃貸物件を使用収益することを基礎として生ずる経済価値に,賃貸物件の使用収益に際して通常必要となる必要諸経費等を加算したものを賃料として回収することにより,業務が営まれるが,賃貸人は,月々に賃料という名目で受領する金員だけでなく,契約締結時に礼金や権利金等を設定する場合には,これらの金員についても賃貸物件を使用収益させることによる対価として,建物賃貸業を営むのが通常である。

 他方,建物を賃借しようとする者は,立地,間取り,設備,築年数などの賃貸物件の属性や,当該賃貸物件を一定期間使用収益するに当たり必要となる経済的負担などを比較考慮して,複数の賃貸物件の中から,自己の要望に合致する(又は要望に近い)賃貸物件を選択するのであるが,その際,礼金や権利金,更新料が設定されている物件の場合には,月々に賃料という名目で受領する金員だけでなく,礼金などの一時金も含めた総額をもって,当該賃貸物件を一定期間使用収益するに当たり必要となる経済的負担を算定するのが通常である。

 このように,礼金は,賃貸人にとっては,賃貸物件を使用収益させることによる対価として,賃借人にとっては,賃貸物件を使用収益するに当たり必要となる経済的負担として,それぞれ把握されている金員であるから,このような当事者の意思を合理的に解釈すると,礼金は,賃貸人が賃貸物件を賃借人に使用収益させる対価として,賃貸借契約締結時に賃借人から受領する金員,すなわち,賃料の一部前払としての性質を有するというべきであり,一件記録を検討しても,この判断を妨げるに足りる証拠はない。

 なお,被控訴人は,本件礼金が賃借権設定の対価であるとも主張しているが,礼金が賃借権設定の対価であるということは,借地借家法による賃借権の保護・強化や賃貸目的物の需要供給関係に基づいて,賃料に加算されるプレミアムにほかならないから,結局のところ,賃料の前払としての性質に包含されるというべきである。

 控訴人は, 本件礼金約定は, 記載及び説明の明確性に欠けると主張するが,争いのない事実等によれば,本件賃貸借契約の契約書には,礼金の額が18万円であること,賃貸借契約締結後は,礼金が返還されないことが明記されており,控訴人は自己の負担すべき金額を容易に認識し得るから,本件礼金約定を無効とすべき理由はない。

 また,控訴人は,Aは,本件賃貸借契約締結後である3月20日になって初めて,重要事項説明書を控訴人に交付していることからわかるとおり,礼金の法的性質や趣旨について,全く説明を受けていなかったと主張する。

 しかし,敷金と異なり,礼金が賃貸借契約終了時に返還されない性質の金員であることは一般的に周知されている事柄である。

 さらに,争いのない事実等によれば,本件賃貸借契約の契約書には,賃貸借契約締結後は賃借人に礼金が返還されないことが明記されており,また,3月20日の重要事項説明の際,Aは,控訴人に対し,賃貸借契約終了時に礼金が返還されないことを説明しているところ ,仮に, 控訴人の主張どおり,控訴人が礼金が返還されないことを知らずに本件賃貸借契約を締結したのであれば,控訴人は,Aないし被控訴人に対し,何らかの抗議をするのが通常であるが,一件証拠を検討しても,控訴人がこのような抗議をしたという事情は認められない。

 そうすると,本件賃貸借契約締結に当たって,控訴人に対し,本件礼金条項について説明があったというべきである。

 したがって,礼金は,何らの根拠もなく,何の対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されている金員であるという控訴人の主張は理由がない。

(3) 控訴人は,情報力・交渉力の点において圧倒的優位な立場にある賃貸人は,あらかじめ契約書に礼金条項を組み込ませておくことで,不当に利益を得ることができる一方で,賃借人は,礼金条項も含めて契約全体を承諾して締結するか,これを拒否するかの自由しか有していなかったと主張する。

 しかし,本件礼金は賃料の前払としての性質を有するものであるから,これをあらかじめ契約書に明記して,本件賃貸借契約締結時に徴求したとしても,被控訴人は不当な利益を得ることにはならない。

 また,建物を賃借しようとする者は,立地,間取り,設備,築年数などの賃貸物件の属性や,当該物件を一定期間賃借するに当たり必要となる経済的負担などを比較考慮して,複数の賃貸物件の中から,自己の要望に合致する(又は要望に近い)物件を選択するのであるが,その際,礼金や権利金,更新料が設定されている物件の場合には,月々に賃料という名目で受領する金員だけでなく,礼金などの一時金も含めた上で,経済的負担を算定するのが通常である。賃借人は,礼金などの一時金も含めた上で算定された経済的負担を負うとしても,当該賃貸物件が,複数の賃貸物件候補の中で,自己の要望に最も合致すると考え,賃貸借契約を締結するのであり,そして,控訴人にしても ,これと異なる意思を有していたことを認めるに足りる証拠はない。

 したがって,控訴人は,自由な意思に基づいて,本件礼金約定が付された本件賃貸物件を選択したというべきであり,本件礼金約定を含む本件賃貸借契約の契約内容について控訴人に交渉の余地がなかったことは特段問題とするに足りない。

(4) 控訴人は, 「賃貸住宅標準契約書 (甲14の2・3)の体裁や, 「賃貸住宅標準契約書」の作成に関与した政府委員の答弁から,本件礼金約定が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであると主張する。

 確かに,証拠(甲15)によれば 「賃貸住宅標準契約書」 (甲14の2・3)の作成に関与した政府委員は,礼金の慣行のない地域にまで礼金を広げることは好ましくないと答弁しているが,その一方で,既に礼金等の一時金を徴求する慣行のある地域においては,その地域の実情を受けて,礼金等の額を記入する欄として 「その他一時金」という記入欄を設けた旨の答弁をするなど,現行の礼金制度を容認するような答弁をしている。そうすると,「賃貸住宅標準契約書」の体裁や,政府委員の答弁から,被控訴人が本件礼金約定を設けて,礼金を徴求することが特段の非難に値するということはできない。

(5) 控訴人は,公営住宅法や旧公庫法などにより,礼金が禁止されていることをもって,本件礼金約定が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであると主張する。

 しかし,借地借家法を制定するに当たって,礼金の徴求を禁止する旨の規定が設けられなかったことは明らかであるし,また,上記のとおり, 「賃貸住宅標準契約書 」(甲14の2・3)の作成に関与した政府委員も,現行の礼金制度を容認するような答弁をしていることに鑑みれば,公営住宅法や旧公庫法などが礼金を禁止していることをもって,本件礼金約定が非難に値するとまでいうことはできない。

(6) 控訴人は,本件礼金が賃料の2.95か月分であること,控訴人は,わずか7か月あまりで退居したため,結局,7か月間で9.95か月分(約1.42倍)の家賃を支払わされたこととなることから,本件礼金が著しく過大な負担であると主張する。

 しかし,本件礼金は,賃料の前払としての性質を有するところ,控訴人が礼金として前払をしなければならない賃料の額は,18万円(賃料の2.95か月分)であり,これは,証拠(甲18)により認められる京滋地域の礼金の平均額(賃料の2.7か月分)からしても,高額ではない。

 そして,本件賃貸借契約は,期間が満了する前に解約されているが,前判示のとおり,控訴人は,敷金と異なり,礼金が賃貸借契約終了時に返還されない性質の金員であることを認識していたというべきであるから,中途解約の場合であっても, 礼金の返還を求めることができないことを承知しながら,自ら,本件賃貸借契約を中途解約したといえる。

 他方,被控訴人は,中途解約の場合であっても礼金を返還しないことを前提に月々の賃料を設定しており,このような被控訴人の期待は尊重されるべきである。

 これらの点からすると,本件礼金の額や,賃借人からの中途解約の場合であっても礼金が返還されないことをもって,本件礼金約定が非難に値するということはできない。

(7) 控訴人は,本件礼金の額(18万円,賃料の2.95か月分)は,首都圏 (賃料の1. 5か月分) や愛知 (賃料の1.1か月分) の平均に比して突出して高率であり,しかも,京滋地域における礼金の平均額(賃料の2.7か月分)を上回っていると主張する。

 しかし,礼金を少額に抑えて,その分,賃料を高額に設定することが可能であるから,首都圏や愛知においては,一般的に礼金を少額に抑えて,その分賃料が高額に設定されている可能性があるため,一概に本件礼金が他の地域と比較して,不当に高額に設定されているということはできない。また,本件礼金が,京滋地域における礼金の平均額(賃料の2.7か月分)を上回っているとしても,その程度は非常に軽微である。

 したがって,他の地域における平均礼金額との比較や,同じ京滋地域における平均礼金額との比較からしても,本件礼金が不当に高額に設定されているということはできない。

(8) 控訴人は,礼金は,本来毎月の賃料に含まれているべき自然損耗の修繕費用を二重取りするものにほかならないと主張する。

 賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の性質上当然に予定されているから,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生じる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する自然損耗に係る投下資本の回収は,通常,修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そして,自然損耗についての修繕費用を月々の賃料という名目だけで回収するか,月々の賃料という名目だけではなく,礼金という名目によっても回収するかは,地域の慣習などを踏まえて, 賃貸人の自由に委ねられている事柄である。 そして,前判示のとおり,本件礼金は,賃料の一部前払としての性質を有するというべきであるから,被控訴人は,自然損耗についての必要経費を,月々の賃料という名目で受領する金員だけではなく,賃料の前払である礼金によっても回収しているものである。

 したがって,被控訴人は,本件礼金により,本来毎月の賃料に含まれているべき自然損耗の修繕費用を二重取りしているといえないから,控訴人の上記主張は理由がない。

(9) 以上のとおり,本件礼金約定が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,本件礼金約定が消費者契約法10条に反し無効であるとの控訴人の主張は理由がない。

結論
よって,控訴人の本件請求は理由がないから,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。そこで,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。

 

           京都地方裁判所第2民事部

                   裁判長裁判官    吉 川  愼 一

                     裁判官     上 田   卓 哉

                     裁判官    森 里   紀 之

 

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地代の大幅値上げ請求、調停で頑張る (大阪・堺市)

2008年11月26日 | 地代の減額(増額)

 堺市泉北ニュータウン周辺の市街化調整区域で先祖代々から156坪の土地を借地しているSさんは、敷地内の30坪の物置小屋を改修したところ、地主から無断増改築と難癖をつけられ、承諾料と地代の値上げを請求され話合いが物別れとなりました。

 地主側は、弁護士を代理人につけて無断増改築による承諾料の請求を取下げたものの、これまで年坪当たり3800円の地代を5400円に大幅値上げを請求し調停を申立ててきました。

 その後、Sさんは、インターネットで大借連の存在を知り相談。
 同時に、税負担を調べた結果、現行地代が税負担の7.9倍にもなっており、これにはビックリ。「むしろ地代減額を調停員に伝えたい。ましてや都市計画法では調整区域のため利用制限があり、あまりにもひどい」と怒っています。

 

大借連新聞より

 

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一方的なドアーロックによる締め出しは不動産侵奪罪 (大阪)

2008年11月25日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 非正規雇用のために突然職場を追われた借家人が、収入が途絶え月末になると家賃を約束通り払いたくても払えず外出先から帰宅すると戸口のドアーの鍵が取替えられ、入居不能となるトラブルが最近増えています。

 大阪で弁護士、司法書士、大借連、いちょうの会の有志で「賃貸住宅追い出し屋被害対策会議」を結成し、10月29日「電話110番」を開設し被害者救済の活動を進めています。

 A市で賃貸マンションを借りているNさんは、事情で家賃を月末に支払うことができませんでした。帰宅してみると、ドアーがロックされておりマンションに入室できず、管理会社へ連絡すると、「契約書に家賃滞納即日退去の特約があり、入居前に重要事項説明書でも確認している」と部屋の使用ができない状態が続きました。

 一方的なドアーロックは、刑法の不動産侵奪罪に該当し犯罪行為であり、違法な自力救済で許されないと業者に抗議しドアーを開けさせました。


 (注)《不動産侵奪罪》「他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。」(刑法235条の2) 

 

大借連新聞より

 

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契約4か月後に立ち退き請求される (横浜・港北区)

2008年11月21日 | 建物明渡(借家)・立退料

 横浜市港北区高田西で平成19年11月1日、2年間の条件で借家の賃貸借契約をむすんだKさんは、入居後わずか4か月後に家主の代理人の建設会社から明渡を請求されました。

 Kさんは、インターネットで組合の存在を知り入会した。組合の支援を得て、建設会社と話し合いえお重ねて来ました。

 その間家主側からの嫌がらせもありましたが、組合側は、基本的には2年間の期間で賃貸借契約が存続しており、明渡に応ずる意思のないことを、家主へ内容証明郵便で通知したところ、家主側の態度が一変し、Kさんの要求通り合意を勝ち取りました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地人14名が団結し17年間地上げと闘う (大阪・都島区)

2008年11月20日 | 地代の減額(増額)

 大阪市都島区都島北通り2丁目の借地人Hさん等14名、O工務店に地上げされ、大幅な地代値上げを要求され、17年越しの係争中です。

 平成3年には、角地にしぼって地代の値上げで提訴してきました。

 都島借地借家人組合に入会している会員が裁判費用を分担し、他の地主の地代を調査したり、鑑定士の現地調査に立ち会うなど心を合わせて闘って来ました。その結果、多少は地代の値上げを認めたものの和解が成立しました。

 この和解によって、地主側は、Hさん以外の借地人にも和解条件に従って値上げに応ずるよう要求してきましたが、これを拒否して相当と考える金額を加えて引き続き供託しています。

 この借地人の班は、現在まで17年間団結を崩さず都島借地借家人組合の運動の核の役割をはたしている一つになっています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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「入居保証金」全額を返還させる (長野・松本市)

2008年11月19日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 松本市内に住むMさんは、家賃月6万円、敷金2カ月でアパートを2年間借り9月に明渡しました。貸主は大手の不動産業者ですが、入居時の契約書には敷金を「入居保証金」として記載し、明渡すときは「退去引金」として返金しないとなっているから、と一銭も返しませんでした。

 Mさんは消費生活センターの紹介で組合を訪れ、どうしても納得できないが、いい方法を教えてほしいと組合へ入会しました。

 組合では経過を聞いたところ、名前は「入居保証金」でも敷金であることは明らかだし、また、消費者契約法第10条にも違反しているから「入居保証金」は当然全額返還すべきものである。よって、「本書面到達後1週間以内に全額返還せよ。もし履行しないときは法的手続をとる」旨の内容証明郵便を発送することで一致しました。

 早速Mさんが相手の不動産会社宛に内容証明郵便を送ったら、電話で返事が返って来て「入居保証金は返金します」ということでMさんも喜んで報告してくれました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地非訟手続きで借地権を地主に買取らせる (東京・大田区)

2008年11月18日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 千葉県我孫子市居住のSさんが出雲の国の島根県に嫁いだ娘さんと組合事務所を訪ね、入会したのは昨年10月だった。

 子供らも独立し、夫の死去を機会に住まいを移転したので大田区の51坪の借地権譲渡を大手不動産のS社に依頼したが、地主の買取価格は想定の2分の1以下いうことで、S社は打つ手はないと借地借家人組合を紹介されたという。

 組合もよく知っている地主なので、直ちに借地権譲渡の非訟手続きの準備とともに、借地権譲受人紹介者の業者を介して改めて打診したが決裂となる。

 Sさんは、裁判等に要する経費の持ち合わせが不足のため、業者が一時負担し和解成立後の決済時に精算することで裁判を行う。地主自宅は東南に位置しており、想定どおり地主が買取を主張し、5月現地調査が行われ7月に示された、鑑定結果は4千数百万円だった。地主は直ちに高すぎると鑑定結果を拒否。

 夏休み明けの裁判で空き家で管理もせず草木が伸び放題である等と異議を述べ、3千万円を提示したが裁判所は受け入れず、鑑定とおり和解が成立し10月21日決済した。

 この地主から高額な更新料を請求されて係争中の借地人3世帯も、組合に加入し支払いを拒否して頑張っている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地代の未払いと増改築違反を理由に明渡しの調停 (東京・豊島区)

2008年11月17日 | 土地明渡(借地)

 豊島区西巣鴨に借地して50年以上になるAさんのところに、昨年末、亡くなった地主の相続人である長男から、相続人代表としての挨拶と地代の請求書が送られてきた。

 いつもどおりに指定された銀行に1年分の地代を送金しておいたところ、今年に入り、Aさんの土地を相続したという地主の長女の代理弁護士から契約書に記載されている当月払いの賃料が支払われていないのでただちに支払うよう内容証明が送付されてきた。

 不安を感じたAさんは知り合いの司法書士に相談した。まかせなさいといわれ安心していたが、今度は9月にいきなり、相手弁護士から地代の未払いと増改築違反で明渡しの調停をおこされた。

 依頼した司法書士に確認したところ何もやっておらず、仰天していろいろ探したところ借地借家人組合があることを知り相談にきた。

 地代の支払い方法はすでに数年前より1年払いとなっていること、増改築も先代の承諾を得たことなど調停の回答書を作成し、簡易裁判所の調停に出向いた。証拠の領収書も添えて提出したところ、あっさりと地主の弁護士は明渡し問題を撤回し、借地権を売買してくれという話に方向転換した。

 Aさんは「組合に相談して、本当に助かりました。売ることも買うことも出来ないので、このような強引な地主に対抗して、引き続き組合と相談して頑張ります」と話した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地上げ屋が底地の買取りを強要 (東京・荒川区)

2008年11月14日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 荒川区東日暮里*丁目で約19坪の借地をしているTさんは今年の8月に更新を迎えることになっていたが、2月頃地主から今度土地を売ったので後はその人達と話し合ってほしいと連絡が入った。

 その後、地上げ屋の社員2人が訪ねて来て、「土地を買うか借地権を売るかどちらかにしろ」と言われ地上げ屋と判明。

 Tさんは組合に入会し、買取りを断ったところ「更新料150万円、地代は現行の倍額の3万円を支払え、当社の言うことをきかなけば裁判でも何でもする。そのときには大変な費用がかかる」と脅かされた。Tさんは、今後話し合いは組合事務所以外ではしないと頑張っている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地上げ屋に組合を窓口に交渉することを通告 (東京・葛飾区)

2008年11月13日 | 地上げ・借地権(底地)売買

 葛飾区高砂で2代にわたり借地をしているYさんは、土地を買ったと称し、地主の委任状を持った不動産会社の来訪を受けた。

 買ったと称する会社は、さくら住宅(株)、来訪者はその会社の委任を受けた三和住宅(株)で、委任状の内容はさくら不動産販売(株)の所有の不動産の管理・賃貸料集金及び仲介その他一切のことに関しての行為を委任している。

 この2社は知る人ぞ知る地*げ屋。所有権譲渡に関して聞いたところ、所有権移転登記はまだされていないとのこと。名うての地*げ屋の物件ともなれば素人では太刀打ち出来ないのが現状である。相手の要求が何かと知る必要があり、まずは葛飾借地借家人組合を窓口に交渉することにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地代は税負担の3倍以内と主張し控訴審へ (兵庫・尼崎市)

2008年11月12日 | 地代の減額(増額)

 2008年8月20日、尼崎簡易裁判所は、地代減額請求事件で、借地人が減額請求の正当性の理由として、最高裁の継続賃料(地代)は「公租公課の2~3倍」が適正額との見解を示した指針に対して「相当賃料算定の一事情にとどまるものである」との判断を示し、尼崎簡裁が指定した不動産鑑定士による若干の減額を示した鑑定結果をもって適正地代であるとの判決を下しました。

 兵庫県尼崎借地借家人組合の借地人Tさんは、54.9㎡の土地を借地し、平成12年5月に合意した月額地代3万2800円(当時公租公課倍率7.9倍・平成19年度11.2倍)を、公租公課倍率が上昇したことから考えて、平成19年5月分より1万1629円が相当であると減額請求を申立てました。

 一方、地主側は毎年月額1000円値上げすることが適正額であったと主張し、4万1700円増額の反訴をしてきました。

 尼崎簡易裁判所は、月額地代2万8700円が相当額とした鑑定額通りの判決を言い渡しました。

 Tさんは、この判決に対して12.5%の減額であったが、公租公課倍率は9.8倍であり適正倍率からみて不当に高く不十分であると主張し、2008年10月7日神戸地裁尼崎支部へ控訴しました。

 Tさんは、不動産鑑定基準による算定された地代は、従前地代を基準にして算定さており従前地代が不適正であれば鑑定される地代も不適正であると主張し、あくまで最高裁の指針を反映した判決を求めています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】  自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした事例

2008年11月07日 | 借地の諸問題

 判例紹介

 自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした建築距離違反の事例 大阪地裁昭和63年9月26日判決、判例タイムズ695号)

 (事案)
 Aは甲土地、Bは乙土地をそれぞれ所持し両土地と隣接している。

 Aは両土地の境界線をイ、ロを直線で結んだ線(B地に食い込んだ線上を境界と主張)であるとして境界の確定を請求し、同時にBが民法234条で定める建築距離である境界線から50cm空けずに建物を築造しているため、本来空地であるべき土地部分を利用できなかった損害賠償としてBに対し40万円の支払を求めた。

 BはAの主張する境界線を争い(結果、Aの主張は認められず、Aには不利な境界が確定)、Bの建築物が仮に民法234条に違反しているとしても、A自身(昭和48年に建築)も同条に違反しているから、Aの請求は認められないとして争った。

 (判決)
 「信義則上、およそ法的救済を求めんとするものは自ら潔き手を持って来るべし(*)、という要請があると解すべきであるところ、AはBに対し民法234条の遵守を求め、これに従わなかったとして賠償を請求しているけれども、右認定のとおりA自身も同条に違反しているので、それは右信義則に反することになる。一般に、信義則違反の事実が認められる場合で、強行法規が適用される場合には、その強行法規の強行性の程度、内容と法の目的に照らして衡量し、後者が前者に優位するときに限り信義則の法的効果を承認することができると解すべきである。」

 (寸評)
 判決は、民法234条のうち火災の延焼防止の目的は公益的要素の強いものであるが、隣地上の築造、修繕の便宜、日照、通風の確保等の利益の保護は利益的要素に属するとして、A、B双方の建物が耐火建築物であることを考慮し、本件では民法234条はそれほど強い強行性があるといえないとしている。

 強行法規に反した相手方の行為と信義則の関係につて参考となる事例であるので照会した。

(1992.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より 

 


 

 参考法令
 民法 (境界線付近の建築の制限)
第234条  建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。

2  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

(*)クリーンハンドの原則・・・・「自ら法を尊重するものだけが法の尊重を要求することができる」という原則である。即ち、自ら法を尊重するものだけが、法の救済を受けるという原則で、自ら不法に関与した者には裁判所の救済を与えないという意味である。

 

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【Q&A】 固定資産課税台帳を用いて借地人にも適正地代を計算することが出来るか

2008年11月06日 | 地代の算出方法

 (問) 適正な地代の算出方法はあるのか。


 (答) 地代の算定方式は法定されておらず、絶対的な算定方式というものは見当たらない。地代は当事者間の協議によって定めるのが原則であり、当事者間の合意額が適正地代であるというのが借地借家法の建前である。従って特段の事情がなければ地代は原則として公租公課を下回らない合意額であれば、それが適正地代であると言える。

 裁判では適正地代の算定方法として
 ①スライド方式
 ②積算方式
 ③差額配分方式
 ④賃貸事例比較方式
 ⑤公租公課倍率方式等がある。

 だが、どれも一長一短で、万人が納得するような算定方式はないというのが現状である。裁判の実務では複数の方式によって求められた地代を総合的に検討する総合方式が定着している。

 借地人が簡単に地代の目安を算定出来るというのは前記の方式では⑤であろう。地代と公租公課(固定資産税・都市計画税)の関係を統計調査して導きだされたもので東京23区の地代と公租公課の倍率は住宅地では概ね3倍前後で、商業地ではその2倍前後とされている。

 2003年4月1日から借地人・借家人等は、都税事務所で固定資産課税台帳の①「閲覧」及び②「土地評価証明書」の交付が受けられるようになった。

 交付を受ける場合、借地・借家人等であることを確認出来るものを持参する必要がある。例えば、賃貸契約書や賃借料の領収書等である。念のため身分証明書(運転免許証・健康保険証等)も持参した方がよい。

 代理人の場合は他に委任状が必要である。電話による委任確認に備えて委任者の電話番号も控えていった方がよい。東京都内23区の場合の交付手数料は、①「固定資産税台帳の閲覧」は300円で、②「固定資産土地評価証明書」は400円である。

 閲覧・証明の申請書には、土地の場合登記簿の地番、家屋の場合は家屋番号を書くようになっているが、住居表示と納税義務者(地主・家主)の住所と氏名を書込めば検索してくれる。

  ①も②固定資産課税台帳の記載事項をプリントしただけのものであり、内容的には同一だが、②には公印が表示される。

 固定資産課税台帳に記載が法定されているのは、課税標準額である。相当税額を記載するか否かは市町村の判断に任せられているで、自治体によって対応に差異がある。

 東京都内23区の場合は、税額は記載されていないが、
固定資産税額固定資産税課税標準額×1.4%(1.4/100)で求められる(年間)。

都市計画税額都市計画税課税標準×0.3%(0.3/100))で求められる(年間)。
 尚、都内23区では2/1の減額措置(200㎡以下の場合)が採られているので、都市計画税課税標準の特例額×0.3%(0.3/100)で求められる(年間)。
 
 ①と②の合算額を2~3倍すれば地代の概算額が算定出来る。この方式は東京簡易裁判所の調停にも使用され、地代の調停は、住宅地では3.1倍前後、商業地では2.4倍前後で成立している。

 

 (参考) 最高裁判所事務総局から1991(平成3)年12月付で「民事裁判資料第198号」として「民事調停の適正かつ効率的な運用に関する執務資料」が出されている。それは「各庁の民事調停事件処理要領(案)」(裁判官・書記官用)と「民事調停事件処理要領案」(裁判官・書記官用)の2つである。

 その1つに「民事調停事件処理要領案 (裁判官・書記官用)(東京地方裁判所 管内簡易裁判所」がある。

 そこには「最終合意賃料の公租公課との倍率(地代について)」として「最終合意賃料が公租公課の2~3倍に収まっているときは、加減要素として考慮しない。」(23頁)と記載されている。

 言い換えれば、地代は固定資産税と都市計画税との合算の2~3倍の範囲内であれば適正地代と言える。

 

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