東京・台東借地借家人組合1

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建物未登記を理由に地主が契約解除請求 (東京・荒川区)

2012年09月28日 | 土地明渡(借地)

 荒川区荒川4丁目で昭和59年にTさんの父親が29坪の借地権付きの中古住宅を購入した。その後に父親が他界し、後を追うようにその2年後に母親も他界した。

 残されたTさんら3人の兄弟は相続の名義変更もしないまま、平成14年に父親名義の家屋を地主の承諾を得て建て直し、建て替え後もも一切登記もしないまま今日に至った。

 ところが、地主は、最近になって公租公課の値上がりと近隣地代とバランスをはかるためと称して、今年の10月から現行地代月額坪544円を坪700円に値上げすると一方的に請求してきた。

 Tさんたち兄弟は長男が無職で生活が苦しく、到底地代の値上げには応じられないと回答したところ、数日後地主から、相続の名義変更も未了の上、改築後も登記せず、違法であるから契約を解除すると言ってきた。

 Tさんたちが建物の登記をしていないからと言って、地代は毎月きちんと支払っており、契約を解除するとの地主の主張は根拠がなく脅しである。Tさんは自分たちにも過失があったので至急に正常な手続きを行うが、値上げすることは今の状況から困難であり、今後も話し合いを行っていくことを申し入れた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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借地の立退料として路線価の5割を支払うから土地を明渡せ (大阪・高槻市)

2012年07月17日 | 土地明渡(借地)

 大阪府高槻市内で平成12年末に居住用として35坪の土地を借地したSさん親子は、平成24年4月下旬地主の代理人の弁護士の訪問を受け、土地の明け渡しを求められました。

 Sさん等は、5年前死別した夫名義の家屋の相続による名義変更して間もない中で、相手側の弁護士から立ち退き料を提示され、契約解除の申し出に吃驚仰天。Sさん等は、市役所の市民相談室へ出かけて相談。「条件がよければ、明渡に応じたら」と応えるのみで、要領が得られませんでした。

 Sさんの息子さんが、インターネットで大借連の存在を知り相談。大借連はSさんから事情を聴くと、地主側の弁護士からは、「立退き料と引換に明け渡しの請求が出来る」と云われ、その条件として「路線価の5割の借地権価格に借地面積を乗じた額を立退き料として支払う」というものでした。Sさん等は、一時は、弁護士だから間違いないと信じたものの、いざ立退きに応じようと思っても35坪の土地でゆとりのある居住環境が立退き料と引換に明渡さなければならないことに納得できないと訴えています。

 対応した大借連は、Sさんに落ち度がない中で、「弁護士から一方的に立退き料と引換に土地の明け渡しを求められても当然拒否できる。かつての地上げ屋と同じ手口だ』と説明し、「地主側の弁護士へ立ち退きには応じられない」と返事をすることになりました。

 さらに、Sさんが借地権割合を調べると、弁護士が提示した5割の借地権割合は、6割であったことにも不信を持ち、今後大借連へ入会し、借地権を守っていくことになりました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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清水町立退き裁判<3> (静岡・駿東郡清水町)

2012年05月15日 | 土地明渡(借地)

 2012年3月29日沼津地裁において清水町立退き裁判の判決が出ました。(強圧的態度で立退き迫る <2> (静岡・駿東郡清水町)からの続き。)

 原告地主の請求は立退料30万円で3か月後には立退けというものでしたが、判決は被告5人に対し、それぞれ立退料50万円(2名)、60万円、70万円、80万円を受取り建物を明渡せというものでした。

 原告の相続対策に伴う債務支払いの主張を鵜呑みにし、正当事由があるというためには前記金額がの給付が必要と判断するとなっています。

 一方被告側の主張のペット飼育の了解があったという事実関係などを検証することなく、金額算定の根拠も不明確な内容となっています。

 住み続ける権利を主張する被告5名全員が判決を不服として東京高裁へ控訴しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地の明渡調停 (東京・豊島区)

2012年05月14日 | 土地明渡(借地)

 東日本大震災以後に、建物老朽化と耐震性を理由に明渡請求をされる事例が増えています。

 豊島区高田で戦前から借地しているAさんは、昨年の夏頃に地主から「もう都営住宅にでも住んで、建物を撤去して借地を明渡せ」と請求されました。

 Aさんが拒否すると地主は今度は、弁護士を使って、明渡請求の調停をしてきました。申立書には「建物はすでに朽廃し、借地権は消滅している。隣接地と一体として使用する必要がある」としてきました。

 Aさんは回答書に「建物の老朽化は認めるものの修理修繕しながら現在も居住しており、借地権は消滅していないし、終の棲家として住み続けるつもりで、明渡請求には一切応じられない」と記載し、調停に臨みました。

 調停では、調停員の一人から「裁判にすると負けるかもしれないから話合いに応じたほうがよい」などの脅かしにも屈せず、不調に終わらせることが出来ました。

 Aさんは、「今後は裁判になることも覚悟しています。最後まで頑張ります」と決意を語りました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例】 土地明渡請求事件 (東京高裁平成23年12月21日判決)

2012年02月09日 | 土地明渡(借地)

判例

平成23年12月21日判決言渡

平成23年(ネ)第5187号建物収去土地明渡請求事件(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第31274号)

 

 

                    主      文

 1 本件控訴を棄却する。

 2 訴訟費用は控訴人の負担とする。

 

                    事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
  1 原判決を取り消す。

  2 被控訴人は、控訴人に対し、原判決別紙物件目録記載2の建物(木造瓦葺2階建、1階34.54㎡・2階14.87㎡)を収去して同目録記載1の土地(宅地・42.075㎡)を明け渡せ。

  3 被控訴人(賃借人)は、控訴人(賃貸人)に対し、平成22年9月12日から前項の土地の明渡済みまで1か月金2万5500円の割による金員を支払え。

第2 事案の概要
  1 本件は、控訴人が、建物所有目的で被控訴人に賃貸している控訴人所有土地につき、 被控訴人の無断増改築禁止特約違反を理由に賃貸借契約を解除したとして、被控訴人に対し、賃貸借契約の終了に基づき、地上建物の収去土地明渡しを求めた事案である。

  2 原判決は、控訴人の請求を棄却したので、控訴人が控訴をして、上記第1のとおりの判決を求めた。

 
 1 請求原因
  (1) A(賃貸人)は、B(賃借人)に対し、昭和47年9月13日、目的を普通建物所有とし、賃借人が建物を改築又は増築するときは賃貸人の承諾を要するとの特約(無断増改築禁止特約)を付して別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)を賃貸し、そのころ、引き渡した。

  (2) 原告は、昭和55年9月9日、Aから、本件土地の賃貸人たる地位を相続した。

  (3) 被告は、昭和59年7月25日、Bから、本件と地上の別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)を買い受け、現在まで所有している。

  (4) 原告(控訴人)は、被告(被控訴人)に対し、昭和59年7月25日、普通建物所有目的、賃料月額6758円との約定で本件土地を賃貸し、その頃、引き渡したが、同契約にも、無断増改築禁止特約が付されていた(以下、原告・被告間の本件と地に係る賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。

 仮に、原告と被告との間で賃貸借契約を締結した事実が認められないとしても、本件建物をBから譲り受けた際、本件土地の賃借人の地位も併せて譲り受け、その権利義務を承継した。

  (5) 被告は、平成19年2月頃、本件建物の外壁を取り替え、ベランダを新設するなどの増改築工事をした。

  (6) 原告は、被告に対し、平成19年6月9日、無断増改築禁止特約違反等の債務不履行により本件賃貸借契約を解除との意思表示をした。

  (7) 本件土地の使用損害金は、1か月当たり2万5500円(1坪当たり2000円)を下回らない。

  (8) よって、原告は、被告に対し、本件賃貸借契約締結の終了に基づき、本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求めるとともに、契約終了の後である平成22年9月12日から本件土地の明渡済みまで1か月2万5500円の割合による使用損害金の支払を求める。


 2 請求原因に対する否認
  (1) 請求原因(1)ないし同(3)は認める。

  (2) 同(4)のうち、被告(被控訴人)が、原告(控訴人)から、本件土地を賃借したことは認めるが、無断増改築禁止特約の定めがあったことは否認する。その余の契約内容については記憶していない。被告がBから賃借人の地位を譲り受け、その権利義務を承継したとの主張は争う。

  (3) 同(5)のうち、被告が外壁及びベランダの工事を実施したことは認めるが、その時期・内容は以下のとおりである。

     被告は、本件建物の外観及び使用上の便宜を改善するため、平成10年頃に外壁にサイディングボードを貼り付け、平成13年頃に既存の木製ベランダをアルミ製に替えたが、これらは躯体変更を伴わない補修改良工事であるから増改築に当たらない。

  (4) 同(6)は認め、その効果は争う。

  (5) 同(7)は争う。


 3 抗弁 (信頼関係不破壊)
   被告が平成13年ころまでに美観改善等の目的でした補修工事により本件建物の存続期間が伸張されたとはいえない上、原告は近隣に住みながら10年近く異議を述べなかったから、信頼関係破壊と認めるに足りない事情がある。なお、被告は、原告からの更新料の支払い請求を拒絶したが、そもそも更新料の支払義務がないから、信頼関係破壊を認める事情とはならない。


 4 抗弁に対する認否
   否認し争う。

   被告は、平成19年2月ころ、朽廃状態にあった本件建物に新築にも等しい増改築をしてその存続期間を著しく伸張させた。また、被告は、原告が平成16年7月ころまでに1坪当たり15万円の更新料を請求したにもかかわらず、近隣の原告所有地の他の借地人らと異なり更新料の支払を拒否した。したがって、被告と原告との信頼関係は破壊されている。


第3 当裁判所の判断

 1 請求原因(無断増改築禁止特約違反に基づく債務不履行解除)について
  (1) 請求原因(1)ないし同(3)は当事者間に争いがない。

  (2) 証拠(甲13、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因(4)の事実のうち、原告(控訴人)と被告(被控訴人)との間で昭和59年7月25日、本件土地の賃貸借契約が締結され、その頃引渡された事実が認められる。

  (3) 請求原因(4)の事実のうち、無断増改築禁止特約の存否について検討するに、同特約を定めた契約書は証拠として提出されていない。

 しかし、後記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、AはBに本件土地を賃貸する際、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を使用したこと(甲3)、A及びその相続人である原告は、本件土地以外の土地の借地人との間でも、それぞれ昭和51年と平成元年に、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を用いて土地賃貸借契約を締結していたこと(甲4の1、4の2)、原告本人は本件賃貸借契約締結時に同様の契約書を作成した旨陳述し(甲13)、被告本人は契約締結自体を認めつつ契約書を作成したか覚えていないと陳述するにとどまること(乙3)などを総合すると、原告と被告との間で、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を利用して本件賃貸借契約を締結し同特約を定めたものと認めることができる。

  (4) 請求原因(5) (無断増改築禁止特約違反の有無)について検討するに、証拠(後記のほか、甲5に1、5の2、12の11、ないし12の14、乙2、3、)及び弁論の全趣旨によれば、①本件建物は昭和22年ころに建築された木造瓦葺2階建ての建物であること(甲2の1ないし2の3)、②被告が、平成10年5月ころ、本件建物の外壁全体にサイディングボードを貼り付けたこと(乙1。以下「本件外壁工事」という。)、③被告が、平成13年ころ、本件建物玄関上側にアルミ製ベランダを取り付けたこと(以下「本件ベランダ工事」といい、本件外壁工事と併せて「本件各工事ともいう。)は認められる。原告本人は、被告が平成19年2月ころに外壁の取替え及びベランダの新設を含む増改築工事をしたとの陳述書(甲13)を提出するが、工事時期及び内容を裏付ける客観的証拠はなく、被告本人が古くなった既存の木製ベランダをアルミ製に取り替えたに過ぎないと陳述していること(乙3)などに照らし、上記認定を左右しない。

 また、無断増改築禁止特約は、借地人が目的の範囲内で借地上の所有建物を保存改良する自由を制限するものであり、具体的な根拠がないにもかかわらず、同特約を「増築又は改築」以外の大修繕等に拡大解釈することは許されないというべきである。本件各工事は、上記方法・程度に照らせば、比較的大規模な修繕改良工事とはいえるとしても直ちに増築(床面積の増加)とも改築(建替え・建直し)とも認めらず、無断増改築禁止特約違反自体を認めるに足りない。

  (5) したがって、その余について判断するまでもなく、請求原因には理由がないことになる。


 2 抗弁 (信頼関係不破壊)について
  (1) なお、念のため、仮に本件各工事が特約にいう増改築にあたるとした場合の抗弁の成否についても検討する。無断増改築がされた場合でも、借地人の土地の通常の利用上相当であり、賃貸人に著しい影響を及ぼさないなど、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人が無断増改築禁止特約に基づき解除権を行使することは許されないと解される(最高裁昭和41年4月21日判決・民集20巻4号720頁参照)。

  (2) 前記のとおり、本件各工事は、外壁にサイディングボードを貼り付け、ベランダをアルミ製化するもので、本件建物の美観のみならずその効用を維持改善するものとはいえるが、本件建物の躯体自体に変更を加えるものではなく、本件建物の耐用年数への影響の有無・程度を認めるに足りる証拠もなく、借地人の土地の通常の利用上相当の範囲を超えるものではないと認められる。これに加え、本件各工事が平成19年2月ころまで問題とされなかったことも考慮に入れると、本件各工事がされたことによっても信頼関係が破壊されたとは認められないというべきである(もっとも、本件各工事が実施されたのが、原告(控訴人)主張のとおり、平成19年2月に接近した時期であったと仮定しても、上でみた本件各工事の内容に鑑みれば、上記結論を左右しないというべきである。)。

  (3) これに対し、原告は、本件建物は本件各工事がなければ朽廃状態にあったと主張する。確かに、本件建物に隣接し、ほぼ同時期に建設された隣接については、平成10年12月当時、既に相当程度老朽化した状態にあったことがうかがえる(甲9の1・2、甲10、11)。しかし、建物の耐用年数は管理・保存の状況等によって相当程度異なり得るところであり、隣接建物についても、平成10年12月の時点で、敷地の地代が支払われていないなど、管理が相当期間おろそかにされていた状況がうかがえる(甲11)ことに加え、その老朽化の程度が顕著であることを示す甲12の1から12の10までの写真にしても、平成22年9月時点のものであり、平成10年12月から更に長期間放置された後の状況を表しているにすぎない(隣接建物敷地の賃貸借契約は、平成11年3月に合意解除され、同建物は、地主である控訴人において速やかに解体撤去するものとされている(甲11)。したがって、被告(被控訴人)らが居住し、通常の使用を続ける本件建物(乙3、弁論の全趣旨)について、本格工事を実施しなかった場合、隣接建物と同様の老朽化・朽廃状態に至っていたなどといえるものではない。

 また、原告の主張どおり、被告が原告から本件賃貸借契約の更新時期である平成16年7月ころまでに更新料の請求を受けながらその支払を拒絶したことは認められる(甲13、乙3)。しかし、本件全証拠によるも、本件賃貸借契約上の更新料支払義務を根拠づける原告と被告との間の合意又は事実たる慣習を認めるに足りず、更新料の支払拒絶は信頼関係破壊を基礎づける事情とならない。その他原告の主張は上記認定を左右するものではない。

  (4) したがって、仮に本件各工事を特約所定の増改築とみる余地があるとしても抗弁が成立し、いずれにしろ無断増改築禁止特約違反を理由とする本件賃貸借契約の解除には理由がない。


第4 結論
    よって、控訴人の請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。


                        東京高等裁判所第23民事部

                裁判長裁判官      鈴木 健太

                     裁判官      吉田  徹

                     裁判官      中村 さとみ

 

 

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【判例】 土地明渡請求事件 (東京地裁平成23年6月29日判決)

2012年02月08日 | 土地明渡(借地)

判例

平成23年6月29日判決言渡

平成22年(ワ)第31274号 建物収去土地明渡請求事件

 

                    主      文

 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

                    事実及び理由

第1 請求
 1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載2の建物(木造瓦葺2階建、1階34.54㎡・2階14.87㎡)を収去して別紙物件目録1の土地(宅地・42.075㎡)を明け渡せ。

 2 被告は、原告に対し、平成22年9月12日から第1項の建物明渡済みまで1か月金2万5500円の割による金員を支払え。


第2 当事者の主張

 1 請求原因
  (1) A(賃貸人)は、B(賃借人)に対し、昭和47年9月13日、目的を普通建物所有とし、賃借人が建物を改築又は増築するときは賃貸人の承諾を要するとの特約(無断増改築禁止特約)を付して別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)を賃貸し、そのころ、引き渡した。

  (2) 原告は、昭和55年9月9日、Aから、本件土地の賃貸人たる地位を相続した。

  (3) 被告は、昭和59年7月25日、Bから、本件と地上の別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)を買い受け、現在まで所有している。

  (4) 原告は、被告に対し、昭和59年7月25日、本件土地を賃料月額6758円で賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という。)、そのころ、引き渡した。

  (5) 無断増改築禁止特約違反
    ア 原告と被告は、本件賃貸借契約締結の際、無断増改築禁止特約を合意し、又は、AとBとの間の無断増改築禁止特約を承継した。

    イ 被告は、平成19年2月ころ、本件建物につき、外壁を取り替え、ベランダを新設するなどの増改築工事をした。

  (6) 原告は、被告に対し、平成19年6月9日、無断増改築禁止特約違反等の債務不履行により本件賃貸借契約を解除との意思表示をした。

  (7) 本件土地の使用損害金は、1か月当たり2万5500円(1坪当たり2000円)を下回らない。

  (8) よって、原告は、被告に対し、本件賃貸借契約締結の終了に基づき、本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求めるとともに、本件土地の明渡済みまで1か月2万5500円の割合による使用損害金の支払を求める。


 2 請求原因に対する否認
  (1) 請求原因(1)ないし同(3)は認める。

  (2) 同(4)は知らない。

  (3) 同(5)ア及び同イは否認し、争う。 

     被告が、無断増改築禁止特約に合意したことはない。また、被告は、本件建物の美観及び使用上の便宜を改善するため、平成10年ころに外壁にサイディングボードを貼り付け、平成13年ころに既存の木製ベランダをアルミ製に替えるなど、躯体変更を伴わない補修改良工事をしたにすぎない。

  (4) 同(6)は認め、その効果は争う。

  (5) 同(7)は争う。


 3 抗弁 (信頼関係不破壊)
   被告が平成13年ころまでに美観改善等の目的でした補修工事により本件建物の存続期間が伸張されたとはいえない上、原告は近隣に住みながら10年近く異議を述べなかったから、信頼関係破壊と認めるに足りない事情がある。なお、被告は、原告からの更新料の支払い請求を拒絶したが、そもそも更新料の支払義務がないから、信頼関係破壊を認める事情とはならない。


 4 抗弁に対する認否
   否認し、争う。

   被告は、平成19年2月ころ、朽廃状態にあった本件建物に新築にも等しい増改築をしてその存続期間を著しく伸張させた。また、被告は、原告が平成16年7月ころまでに1坪当たり15万円の更新料を請求したにもかかわらず、近隣の原告所有地の他の借地人らと異なり更新料の支払を拒絶した。したがって、被告と原告との信頼関係は破壊されている。


第3 当裁判所の判断

 1 請求原因(無断増改築禁止特約違反に基づく債務不履行解除)について

  (1) 請求原因(1)ないし同(3)は当事者間に争いがない。

  (2) 証拠(甲13、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因(4)の事実が認められる。

  (3) 請求原因(5)ア (無断増改築禁止特約の存否)について検討するに、本件賃貸借契約締結時の契約書自体は証拠として提出されていない。

     しかし、後記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、AはBに本件土地を賃貸する際、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を使用したこと(甲3)、A及びその相続人である原告は、本件土地以外の土地の借地人との間でも、それぞれ昭和51年と平成元年に、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を用いて土地賃貸借契約を締結していたこと(甲4の1、4の2)、原告本人は本件賃貸借契約締結時に同様の契約書を作成した旨陳述し(甲13)、被告本人は契約締結自体を認めつつ契約書を作成したか覚えていないと陳述するにとどまること(乙3)などを総合すると、原告と被告との間で、無断増改築禁止特約が印刷された市販の契約書を利用して本件賃貸借契約を締結し又はAとBとの間の無断増改築禁止特約を承継したことは推認され、同特約があったことは認められる。

  (4) 請求原因(5)イ (無断増改築禁止特約違反の有無)について検討するに、証拠(後記のほか、甲5に1、5の2、12の11、ないし12の14、乙2、3、)及び弁論の全趣旨によれば、①本件建物は昭和22年ころに建築された木造瓦葺2階建ての建物であること(甲2の1ないし2の3)、②被告が、平成10年5月ころ、本件建物の外壁全体にサイディングボードを貼り付けたこと(乙1。以下「本件外壁工事」という。)、③被告が、平成13年ころ、本件建物玄関上側にアルミ製ベランダを取り付けたこと(以下「本件ベランダ工事」といい、本件外壁工事と併せて「本件各工事ともいう。)は認められる。原告本人は、被告が平成19年2月ころに外壁の取替え及びベランダの新設を含む増改築工事をしたとの陳述書(甲13)を提出するが、工事時期及び内容を裏付ける客観的証拠はなく、被告本人が古くなった既存の木製ベランダをアルミ製に取り替えたに過ぎないと陳述していること(乙3)などに照らし、上記認定を左右しない。

 また、無断増改築禁止特約は、借地人が目的の範囲内で借地上の所有建物を保存改良する自由を制限するものであり、特に本件賃貸借契約上の同特約は前記のとおり市販の契約書の定型文言によるものにすぎないから、同特約を「増築又は改築」以外の大修繕等に拡大解釈することは許されないというべきである。本件各工事は、上記方法・程度に照らせば、比較的大規模な修繕改良工事とはいえるとしても、直ちに増築(床面積の増加)とも改築(建替え・建直し)とは認められず、無断増改築禁止特約違反自体を認めるに足りない。

  (5) したがって、その余について判断するまでもなく、請求原因には理由がないことになる。


 2 抗弁 (信頼関係不破壊)について
  (1) なお、念のため、仮に本件各工事が特約にいう増改築にあたるとした場合の抗弁の成否についても検討する。無断増改築がされた場合でも、借地人の土地の通常の利用上相当であり、賃貸人に著しい影響を及ぼさないなど、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人が無断増改築禁止特約に基づき解除権を行使することは許されないと解される(最高裁昭和41年4月21日判決・民集20巻4号720頁参照)。

  (2) 前記のとおり、本件各工事は、外壁にサイディングボードを貼り付け、ベランダをアルミ製化するもので、本件建物の美観のみならずその効用を維持改善するものとはいえるが、本件建物の躯体自体に変更を加えるものではなく、本件建物の耐用年数への影響の有無・程度を認めるに足りる証拠もなく、借地人の土地の通常の利用上相当の範囲を超えるものではないと認められる。これに加え、そもそも本件賃貸借契約の契約書が現存しているかも不明であり、無断増改築禁止特約の内容の明確性にも疑問があること、平成10年5月ころの本件外壁工事が平成19年2月ころまで問題とされなかったことなども総合考慮すれば、本件各工事をもって信頼関係破壊と認めるに足りない特段の事情があったというべきである。

  (3) これに対し、原告は、本件建物は本件各工事がなければ朽廃状態にあったと主張する。確かに、本件建物に隣接しほぼ同時期に建設された別人所有の建物が平成10年当時に朽廃状態にあったことは認められるが(甲9の1、9の2、10、11、12の1ないし12の10)、建物の耐用年数は建築以来の保存・管理状況等により相当異なり得るから、直ちに原告の上記主張を認めるに足りない。

 また、原告の主張どおり、被告が原告から本件賃貸借契約の更新時期である平成16年7月ころまでに更新料の請求を受けながらその支払を拒絶したことは認められる(甲13、乙3)。しかし、本件全証拠によるも、本件賃貸借契約上の更新料支払義務を根拠付ける原告と被告との間の合意又は事実たる慣習を認めるに足りず、更新料の支払拒絶は信頼関係破壊を基礎づける事情とならない。その他原告の主張は上記認定を左右するものではない。

  (4) したがって、仮に本件各工事を特約所定の増改築とみる余地があるとしても抗弁が成立し、いずれにしろ無断増改築禁止特約違反を理由とする本件賃貸借契約の解除には理由がない。


 3 よって、原告の請求は理由がないので棄却する。


         東京地方裁判所民事第39部

                 裁 判 官   押 野  純

 

           

 

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更新料と地代値上げ を拒否すると明渡請求  (東京・板橋区)

2011年12月15日 | 土地明渡(借地)

 板橋区中板橋に住むAさんは10数年前に、更新料の請求を拒否し頑張ってきた。その後は、賃料の増額請求に対しても双方の合意がない増額請求は認められないとして頑張ってきた。

 今年に入りに地主からあらためて増額請求があった。同時に、「更新料の支払いを拒否し、賃料の増額請求を認めないような借地人には、数年後の契約更新を拒絶する」と土地明渡請求をしてきた。

 Aさんは、ただちに組合と相談し、賃料の増額請求に対して賃料増減額の3つの要素①経済事情の動向(土地の価格)②公租公課の増減③近隣の相場を検討したが、そのいずれをとっても増額の請求には応じられない旨の回答を行った。

 すると地主から「7月に最高裁判決で更新料の正当性が明らかになった。貴方はその支払いに応じてないのだからその分賃料に転嫁しなければならない。そのうえで支払った賃料はその一部として受領する」という通知があった。Aさんこのような言い分を認めるわけにはいかないので反論するとともに供託も視野に入れて対応することにした。

 

東京借地借家人新聞より



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地主が更新時に土地明渡請求 (東京・豊島区)

2011年11月22日 | 土地明渡(借地)

 Aさんは、豊島区メトロ千川駅から数分にある要町で数10年にわたって土地を賃借していた。20年前に、この土地の賃貸借契約の更新と更新料をめぐって争いになり、地主から更新料支払請求の調停までおこされた。

 その時に組合に入会し、更新料の支払いを拒否し、結果は不調となった。合意更新ができず法定更新となったために、地主が地代については受領を拒否したために供託。以後、20年間供託することになった。

 平成23年10月に、更新の時期を迎え、再び地主が弁護士を立てて、更新を拒絶し土地の明渡を請求する通知書を送ってきた。

 中身は「①共同住宅を建設する自己使用の必要性②更新料の支払いに応じないばかりか低額な供託地代で信頼関係の破壊③借地人は別に建物を所有し、息子が住んでいる。④築後40年経過し、社会的経済的耐用年数はすでに経過しており老朽化している。以上の点から正当な事由がある。」としている。

 Aさんはこのような理由がとても更新拒絶の正当な事由には当たらないとして地主が法的手段をとったら、組合の顧問弁護士とともに頑張ることを決意している。

 

東京借地借家人新聞より

 

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相続した新地主が無断増改築等を理由に更新拒絶 (東京・大田区)

2011年03月25日 | 土地明渡(借地)

 大田区千鳥地区に居住のAさんは、約50坪の土地を賃借して木造2階建の共同住宅を所有している。

 土地の所有権を相続した新地主より、7か月後の契約期間満了を控えて自己使用を理由に更新拒絶を書面で通告され、Aさんは契約の更新請求を内容証明郵便にて通知した。

 今後のことを考えて組合員の紹介で入会した。さらに、地主は転貸や増改築工事を無断で行ったと契約解除を請求。Aさんは組合と相談の上、土地ではなく所有する建物の賃貸であること。工事は前地主の承諾により行ったことを書面で回答した。Aさんは、事実や経過を確認せずに無茶なことを求める地主に対して、決意新たにしている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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隣接借地人が地上げ業者から底地を買取り、借地の明渡請求 (東京・大田区)

2010年10月18日 | 土地明渡(借地)

 大田区西六郷地域に約16坪(私道分含む)を賃借中のAさんは夫の借地権を継承し、この程地上げされ80歳の老齢で地上げ屋と対決している。

 土地を買うか借地権を売るかという地上げ屋に対し「買うにもお金はないし、気に入った所なので移転する考えはないことを伝え、高齢者をいじめるなと」主張すると、警察を呼んでも問題はないよ低姿勢となったという。

 区の法律相談で組合を紹介された。相談は地上げ屋の勧めで隣接者(同一借地人)が、Aさんの底地を買取る検討をしているとのことで、今後の対応についての相談となった。

 早速、隣接者より「土地の所有者となったので、1年6か月後の契約期限満了で契約解除するので、今後の地代は受領しないから移転の準備をするように」と内容証明郵便で通告してきた。

 石山さんは、今後も契約を継続するので地代を提供し、受領拒否を確認して供託する決意である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 高額な立退き料を提供されたにもかかわらず正当事由が認められなった事例

2010年08月19日 | 土地明渡(借地)

判例紹介

 土地賃貸借期間満了に伴う建物収去土地明け渡し請求について、賃貸人の自己使用のためのビル建築計画があり、更地価格の約83パーセントに相当する立退料が提供されたにもかかわらず、正当事由が認められなかった事例 東京高裁 平成4年6月24日判決

【事案の概要】
 Y(賃借人)は、昭和23年に、本件土地上にある借地権付き建物を購入し、当時の地主から本件土地を賃借することになった。その後、賃貸人は本件土地の譲渡や相続にともない転々と変更し、X会社が昭和62年に本件土地を譲り受け、賃貸人の地位を承継した。本件賃貸借契約は昭和43年8月に約定期間20年として更新され、そして昭和63年8月に期間が満了した。

 X会社は前賃貸人の債務の保証していた。その保証債務を支払ったため、前賃貸人はX会社に本件土地を譲渡(代物弁済)した。本件土地の賃貸人となったX会社は本件賃貸借契約が期間満了となる前に、更新を拒絶する旨をYに通知した。

 X会社は他のビルを賃借していたが、同ビルの明け渡しを求められており、本件土地に自社ビルの建築を予定していた。他方、Yは昭和23年に本件土地を賃借して以来約40年、同所で靴の販売店を妻、子どもの3人で営んでおり、既に高齢であった。所有建物は木造二階建てで昭和33年ころ改築したもののかなり老朽化していた。本件土地は都心の商業地に所在し防火地域に指定されていたため建て直す際は耐火建築物にしなければならないところ、Yにはその計画はなかった(注:本件では元賃貸人との間で堅固建物の建築を認められていた事情がある。)。

 Xは、Yに賃貸借契約の更新拒絶にあたり、更地価格の83パーセントの立退料を提供した。

【判旨】
 Xが本件土地を自己使用する必要性は一応認められる。また、本件建物がかなり老朽化した木造建物であるうえ、本件土地は都心の商業地域で、防火地域内にあるから、ビル建築が適切とも思われる。しかし、Xは本件土地に賃借権があることを知りつつ本件土地を取得したこと、本件土地に自社ビルを建築することになったのは前賃貸人の債務を肩代わりしたことから偶然入手したものであるから、Xの本件土地使用の必要性はそれほど強くない。他方、Yは約40年にわたり同所に居住し、店舗を営んできており、既に高齢であることから、本件土地を使用する必要性は切実である。Xが提供する立退料ではほぼ同じ条件の借地を求め店舗を開店することは困難であるから、立退料の提供は正当事由を補完するとは認められない。

【寸評】
 正当事由の判断は「土地の使用を必要とする事情」を比較することが中心的な考慮要素であり、立退料の申出はあくまで補完要素である。借地借家法6条は、「土地の使用を必要とする事情」「従前の経過」「土地の利用状況」「財産上の給付の申出」を考慮して正当事由がなければ更新拒絶は認められないと定めているが、各考慮要素の関係が必ずしも明らかではないので改めて紹介する。 

(2010.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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地代の領収書交付を受けなかったことから地代滞納のトラブルに (大阪・中央区)

2009年07月29日 | 土地明渡(借地)

 大阪市中央区で概ね40坪の借地を月額8万円の地代で60年余年前から借地しているさんは、隣りの地主へ今年1月から3月分までの地代を現金で4月初めに持参しました。

 ところが、5月中旬になって地主から1月から3月分までの地代が未払いであることと4月分から6月分の地代の請求書が届けられました。

 さんは、請求書を見て1月から3月分の地代を現金で持参しており吃驚仰天。すぐに、地主へ地代は現金で支払ったことを持参したときの対話の模様を説明したが、受け取った覚えがないと感情むき出しにして対応するばかり。

 さんは、これまで60余年間地代を小切手で支払い、領収書の発行を受けたこともなく、今回初めて地代の減額を要請したい気持ちもあり、領収書を受け取らずに現金で支払いました。地代の減額を口頭で要請しましたが、けんもほろろの返事でその場を納められました。

 さんは、知人を通じて全大阪借地借家人組合連合会事務局へ相談。

 地主へ再度地代を支払った当時の状況を書面にして地主と話合いをすることにしましたが、地主は面談を拒否し話合いも出来ず終いになりました。

 そこで、弁護士と相談し、内容証明郵便で当時の模様を通知し、4月以降の地代を受け取るよう通知しました。地主側も代理人を通じて地代の不払いであり契約解消する旨の通知がありました。

 さんは、7月早々に地主へ4月分以降の地代を持参しましたが、受け取りを拒否され供託し頑張ることにしています。

 それにしても、60余年間地代を支払っていながら領収書の発行を受けなかったことがトラブルの原因ではないかと振り返っています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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地主が経済状況悪化で借地明け渡しの和解条件を拒否 (東京・大田区)

2009年01月15日 | 土地明渡(借地)

 大田区蒲田本町*丁目所在の宅地約9坪賃借中のAさんと宅地約12坪賃借中のBさんは、北海道旭川市に住む地主から自ら使用するからと、弁護士を介して借地権を買取りたいとの申し出による協議は整わず裁判となる。

 地主は東京に商売の拠点として事務所を開くとの願望が強く、売買代金を合意時に支払い、土地の引渡しは借地人らが死去後とし残金は相続人に支払うことで和解協議が進み、A・Bの両氏は家族らの了承を取り、裁判官の指導もあって協議が合意に至ったが、和解成立という当日になって地主は経済事情の悪化により、和解金の工面が困難と和解を拒否した。

 結局、裁判は地主の建物を収去して土地明渡せとの請求に、正当事由があるかどうかの判決となった。

 Aさんには、昨年11月原告地主の本訴請求は理由がないからこれを棄却するとの判決が下った。1月にはBさんにも同様の判決が東京地裁から出る予定だ。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 18年前の借地の無断転貸を理由に明渡請求 

2008年12月24日 | 土地明渡(借地)

(問) 借地の一部を地主の承諾を得て食品会社に倉庫として転貸した。ところが先日地主が亡くなり、相続人から18年前の倉庫の無断転貸を理由に契約解除・土地明渡請求をされた。


(答) 相談者の場合は先代の地主から承諾を得て転貸していた。だから過去に地主との間にトラブルがなかった訳である。無断転貸の主張は言掛かりに過ぎない。

 民法612条は「賃借人は賃貸人の承諾がなければ賃借物を転貸することが出来ない。賃借人がこれに反し転貸した時は契約を解除することが出来る」と定める。

 問題は契約解除権を長期間権利行使しなかった場合、解除権どうなるのか。
 最高裁は「賃貸土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は、その権利を行使することができる時から10年を経過したときは時効によって消滅する」(昭和62年10月8日判決)としている。

 また時効の起算点は転貸借契約が結ばれ、使用収益を開始した時から進行する。

 結論、難癖であろうと降り懸かる災難は取除かなければならない。相談者の場合は既に10年の時効期間を満たしている。従って地主に対して内容証明郵便で「解除権は既に時効である」と《時効の援用》をすれば、消滅時効は完成する。

 

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地代の未払いと増改築違反を理由に明渡しの調停 (東京・豊島区)

2008年11月17日 | 土地明渡(借地)

 豊島区西巣鴨に借地して50年以上になるAさんのところに、昨年末、亡くなった地主の相続人である長男から、相続人代表としての挨拶と地代の請求書が送られてきた。

 いつもどおりに指定された銀行に1年分の地代を送金しておいたところ、今年に入り、Aさんの土地を相続したという地主の長女の代理弁護士から契約書に記載されている当月払いの賃料が支払われていないのでただちに支払うよう内容証明が送付されてきた。

 不安を感じたAさんは知り合いの司法書士に相談した。まかせなさいといわれ安心していたが、今度は9月にいきなり、相手弁護士から地代の未払いと増改築違反で明渡しの調停をおこされた。

 依頼した司法書士に確認したところ何もやっておらず、仰天していろいろ探したところ借地借家人組合があることを知り相談にきた。

 地代の支払い方法はすでに数年前より1年払いとなっていること、増改築も先代の承諾を得たことなど調停の回答書を作成し、簡易裁判所の調停に出向いた。証拠の領収書も添えて提出したところ、あっさりと地主の弁護士は明渡し問題を撤回し、借地権を売買してくれという話に方向転換した。

 Aさんは「組合に相談して、本当に助かりました。売ることも買うことも出来ないので、このような強引な地主に対抗して、引き続き組合と相談して頑張ります」と話した。

 

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