東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

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月額23,000円の家賃減額 (大阪・福島区)

2013年03月26日 | 家賃の減額(増額)

大阪市福島区で、1998年に2DKの賃貸マンションを月額家賃11万円で賃借したSさんは、日頃から家賃が高くもっと安い家賃の賃貸マンションを探しながら、家賃の値下げができないものかと考えていました。

 相談を受けた大借連は、利便性や都心などの立地条件から考えると、転宅も視野に入れて家賃の減額請求を求めて家主と交渉してはどうかと助言し、また、民商からの紹介で仲介業者に家賃の安いマンションを探してはどうかと薦めた。

 Sさんは、その後パソコンで適当な賃貸マンションを検索していたところ、自らが賃貸しているマンションの空き室の募集案内が映し出され、検索された入居条件は、なんと月額家賃が7万9000円であり、あまりにも金額差が大きいことに、吃驚仰天。

 大借連へ再度相談し、家賃の減額請求する正当な理由があることを家主へ告げ、値下げを拒否するなら減額請求の法的手続きを取る意思があることを明らかにして話し合いに応じることを申し入れました。 

 当初家主は、値下げに応じようとはしませんでした。Sさんは、「応じなければ転宅も考えている」との意向を伝えたところ、「家主は依頼先の仲介業者と相談し返事をする」と応対してきました。

 2日後家主から「居住面積が広い分だけ割高の家賃となるが月額2万3000円を値下げし、家主負担で内装の修繕を行うことにする」との回答があり、Sさんは大喜び。「やっぱり、借地借家人組合があればこそこんな大きな成果が挙げられた」と大借連へ入会しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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税金が下がっても地代値上げ? (東京・豊島区)

2013年01月18日 | 家賃の減額(増額)

 豊島区要町で借地しているAさんのところに11月地主から地代値上げと契約書変更手続きのお知らせが送られてきた。文書に地積の測量も完了し正確な登記による契約書の作成とあわせて「平成7年度から見直しもせず、また、今年度の固定資産税の変動から地代の値上げをお願いする」というものであった。

 Aさんは早速都税事務所に出向いて固定資産税の閲覧を行ったところ、昨年と今年の比較で固定資産税・都市計画税の合計が下がっていることが分かった。

 納得がいかないので、お隣の組合員と組合に相談に来た。組合では、税金が下がったのであれば値上げではなく値下げを請求すべきであるとアドバイスし、書面で通知することにしました。

 

東京借地借家人新聞より

 

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更新時に補償金の一部返還と賃料の値下げを請求 (東京・練馬区)

2012年06月13日 | 家賃の減額(増額)

 練馬区の西武池袋線の桜台で薬局を営んでいるAさんは、4年目の時に知人から借地借家人組合のことを教わり、相談に来ました。

 近隣での薬局間の競争の激化で売り上げが減少し、バブルのころに入居した賃料が少ししか下がっておらず、賃料の負担が重くのしかかってきています。

 その時は、組合のアドバイスで、賃料の値下げと保証金の返還を請求請求することにしました。その結果、1500万円納めていた保証金の内、1000万円が返還され、賃料も1万円減額されました。保証金はその後の運転資金として助かりました。

 4年間が経過しましたが、賃料は近隣の店舗賃料の相場と比較しても著しく高いので今回、あらためて組合と相談して賃料の大幅な値下げ請求を請求することにしました。

 しかしながら、家主の回答は月2万円の値下げの回答で、現行賃料の6万円の減額をめざしているAさんにとって不足で、あらためて賃料の値下げを請求し、応じない場合は調停・裁判などの法的な手続きも含め検討していることを通知することにしました。

 同時に、相手の家主の立場も考慮して、1年間は家主の回答してきた2万円の減額を認め、次の1年間はさらに2万円、そして3年目からはさらに2万円の減額請求を行い、回答を求めることにしました。

 「今後とも、組合とよく話し合って交渉をすすめて減額請求を実現していきたい」とAさんは語っていました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地の更新料は撤回、地代は固定資産税等の3倍で合意 (東京・大田区)

2011年06月22日 | 家賃の減額(増額)

 Aさんは、大田区本羽田地域で約200㎡の土地を賃借している。

 地上げした業者は例の如く、「土地を買うか借地権を売るか」の請求するが、Aさんが拒否すると今度は契約が更新されていないと、700万円の更新料と地代を現行額2倍の増額を請求してきたが、Aさんは全て拒否した。業者は組合を介しての協議中に倒産し、債権者不明で地代を供託する。

  その2年後に同業者が組合を尋ねて倒産に至らず持ち直したというので、事業内容と土地の権利等を確認して、更新料請求の撤回、地代は固定資産税等の3倍以内で合意したにも関わらず、業者は契約書作成の際に再び更新料を請求してきた。

 組合は改めて更新料請求の撤回を求め、業者に再度確認させ、この程6月1日より20年の合意契約が成立した。 地代も約束どおり固定資産税等を確認し、税金の3倍を了承させた。交渉は常に、権利を整理して毅然と対応することが求められている。

 

東京借地借家人新聞より 

 

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2回に亘り地代の減額に成功、更新料もなしで合意更新 (東京・豊島区)

2011年06月16日 | 家賃の減額(増額)

 豊島区の南池袋に住むSさんは、池袋から数分のこの場所で長い間、居住しながら1階部分で商売をしていた。今から、10年位前にあまりにも地代(坪あたり約5000円)が高く、商売していくことさえ困難と考え、入会していた民主商工会に相談したところ、借地借家人組合を紹介された。

 組合ではSさんと相談の結果、近隣の相場や同じような駅前に近い場所の相場などから現行地代の半分位の減額請求をすることにし、組合に入会したことも含め地主に通知を出した。当時、地主は組合に対抗するために税理士を代理人として交渉に臨み、最終賃料合意後の物価指数を根拠に2割の減額を提案してきた。斎藤さんは組合と相談し、不服として調停の道もあるが月額約2万円の減額で合意することにした。

 そして、今回、更新を迎えて、地主はSさんが組合に入会しているためか、更新料の請求は一切せずに、合意更新して契約書の作成を提案してきた。Sさんは、これ機会にあらためて地代減額を請求することにし、組合事務所に相談に来た。組合ではあらためて近隣などから月額3万円の減額請求をし、窓口として組合がなることを再度通知した。

 地主は、通知書に示された月額3万円の減額請求に対して、月額2万円の減額を示し、そのうえで、更新時期の1年前にさかのぼって減額をすることを提案してきた。

 Sさん「合意することにしました。組合に入会し、何回かの減額や様々な問題でお世話になって助かりました」と語った。

 

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高すぎる家賃の減額を (東京・板橋区)

2011年04月18日 | 家賃の減額(増額)

 板橋区氷川町のAさんは、6階建てのマンションの5階に、10数年前に引越してきた。以来、入居した時と同じ家賃を支払っていた。

 数年前、近所の不動産屋で自分たちが住んでいる同じマンションの入居募集の広告を見て、家賃が3万円も安い金額が提示されていてびっくりしたが、その時は、そんなものかと思っていた。

 今年、長年勤めていた会社も定年退職して、あらためてインターネットなどで自分が住んでいるマンションの家賃を調べてみたところ、3万円も安い家賃で募集していることが分かり、10数年同じ家賃で支払っていたことに怒りを覚え、管理している不動産会社に同じマンションで同じ間取りなのになんでこんなに家賃に開きがあるのか問いただすとともに家賃の減額と支払いすぎた家賃の差額を返還するよう求めた。

 管理会社は2階と5階の差で問題ないと回答してきたので、どこか相談できるところはないかと組合事務所に相談に来た。組合では「賃料の値上げ値下げは双方の合意が原則です。賃料の減額請求も賃借人が黙っていると減額をしない家主が多いです。しっかりと請求し、相手が応じない場合は調停などの法的手続きも含め検討しましょう」とアドバイスした。

 その後、管理会社に請求したところ1万円の減額を提案してきた。Aさん「組合に入会し、もっと減額できるよう頑張ると」語った

 

東京借地借家人新聞より 

 

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【Q&A】 「家賃値上げ請求」

2011年03月10日 | 家賃の減額(増額)

【問】 借家契約の更新のたびに家主から家賃の大幅な値上げを請求されて困っています。どうすればよいのでしょうか。


【答】 家賃は、家主と借家人との合意で自由に決めることができます。その額に法律上の制限はありません。家主が家賃の値上げを請求してきた場合にも、家主と借家人の間で話合いがまとまれば、家賃はそれで決定されます。

 問題は、家主からの値上げ請求に対して借家人が納得できない場合です。借地借家法は、家賃の値上げが請求できる場合として、①土地や建物に対する租税その他の負担の増加、②土地や建物の価格の上昇その他の経済事情の変動、③近隣の家賃と比較して現行の家賃が不相当に低くなったとき、の3つの場合を挙げています(32条1項。この条項は借地借家法施行前からの借家契約にも適用されます)。①から③のいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ、家主は値上げを請求することはできません。

 なお、旧借家法の場合は、②の「その他の経済事情の変動」という言葉はありませんでした。借地借家法制定の国会審議の中で、政府は、この意味について、物価や一般国民の所得、労働者の平均賃金などの変動のことで、これまでの家賃に関する裁判実務や鑑定実務で考慮されてきた要素に過ぎないから、その内容は旧借家法と全く変わらず、旧借家法の場合よりも値上げ幅が大きくなることはないと述べています。

 借家期間が2年とか3年とかの短い期間の場合には、この期間は家賃の据え置き期間と解釈されますから、家主はこの期間は値上げを請求することはできません。逆にいいますと、家主にとってはその期間が切れたときに値上げのチャンスがあるわけで、あなたの場合もそのケースです。しかし、前記のように、その場合でも①から③のいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ値上げはできません。家主の言い分にそのまま応じることはありません。

 値上げ額について家主と借家人の間で意見が一致しないときは、借家人が相当と考える額(現行家賃を下らなければよいのです)を支払っていれば十分です(32条2項本文)。

 借家人が相当と思う家賃を払おうとしても家主がその額では受取れないといって受取りを拒否した場合には、直ちに供託することが大事です(供託の前に必ず1度は家主に家賃を持参する必要があります)。供託をしておけば、家賃の不払を理由に家主から借家契約を解除されることもありません。

 交渉がまとまらなければ、家主は裁判所に申立をすることになるでしょうが、最終的に裁判で決まった家賃の額が供託した額より多い場合には、その差額に年1割の利息を付けて家主に払うことになります(32条2項但書)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【判例紹介】 賃料増額請求事件で、鑑定結果より低額の賃料を認定した事例

2011年03月03日 | 家賃の減額(増額)

判例紹介

 賃料増額請求につき、当該請求についての調停事件における鑑定書を採用せず、消費者物価スライド法を採用して鑑定結果よりも低額の賃料を認定した事例 (大阪高裁59年8月17日判決、判例タイムズ

 (事案)
 昭和45年5月に7万円で借りる。その後昭和49年1月に9万5000円に、同52年4月に12万5000円にいずれも調停により、増額された。家主は、昭和55年4月、3度目の値上げ請求の調停を起こしたが、賃借人は今度は調停を認めず、民事裁判となった。家主は、調停の中で作った鑑定書(中崎鑑定という)に基づき、16万5000円の家賃を請求し、1審の京都地裁で家主の勝訴となった。中崎鑑定は、差額配分方式の18万5000円、スライド方式の15万円の平均である16万5000円を適正賃料としていた。賃借人が控訴して本判決となった。

 (判決の要旨)
 「中崎鑑定は、差額配分方式により賃料を算定するにつき、建物敷地の更地価格を1平米あたり209万7000円と定めたが、昭和52年4月の値上げ調停での鑑定書(高力鑑定という)によれば、更地価格は1平米あたり106万7000円としている。中崎、高力両鑑定の基準時点に約3年の違いがあるとはいえ、全国市街地価格推移表によれば、昭和52年が1727、昭和55年が2059であり、本件建物敷地価格が、右3年のうち2倍近くまで上昇したことまで認められないので、両鑑定のいずれが適正か判断できない。また、本件建物は、地下1階地上2階建で、賃借人は地下と1階の1部を借りているだけなのに、中崎鑑定は、敷地の賃借料相当分を階層別の効用価値比率にしたがって各階に按分していないこともあるので、中崎鑑定を採用できない。他に本件建物の適正賃料額を算定する資料がないので、スライド方式により算定するのが相当であり、総理府統計局の消費者物価指数(京都市、家賃)によれば、15万4700円となる。」

 (短評)
 過去2回の値上げとも調停でなされたのが本件の特徴である。家主は3度目も成功すると思って調停、裁判と進めたが、以前の調停で使った鑑定書に足を引っ張られた。賃料値上裁判では、裁判所は鑑定書によって裁判するが遺憾ながら実情であるが、家主の値上げ請求の強引さが裁判所独自の判断を生んだと思われる。

(1986.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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突然の家賃値上げ (大阪・茨木市)

2011年01月25日 | 家賃の減額(増額)

 平成19年1月にAさんは、茨木市内で約100㎡の木造借家を月額家賃12万円を条件に2年契約で仲介業者を通じて借りました。

 更新後の平成22年11月になって、突然家主の代理人と称する不動産会社から、家賃20万円で賃借しているので、これまでの支払い済み家賃との差額月額8万円と遅延損害金を支払い、平成23年3月末をもって賃貸契約を解約するとの内容証明郵便で通知してきました。 

 Aさん家主側の一方的な要求であり、家賃の値上げなどを合意したこともないので、家賃の差額の請求や遅延損害金の支払いを拒否し、正当事由に当らないので引き続いて従来通り契約を存続するとの意思表示を内容証明郵便で返事を行いました。

 その後、家主側の不動産会社からは、内容証明郵便到着後1週間もたたない間に、同趣旨の催促状が送られてきました。

 そこで、Aさんは、「今後同趣旨の通知書が送られても当方の意思は変わらないので返事を出すつもりがない」と返信しました。

 Aさんは、家主の代理人と称する不動産会社が本当に委任を受けて明渡の請求をしてくるときは、裁判で争うことを決めています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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家賃20%値上げと更新料を拒否 (東京・北区)

2010年10月21日 | 家賃の減額(増額)

 北区豊島でクリーニング業を経営しているBさんは、父親の代から同所で営業を継続している。今年3月で賃貸借契約の更新を迎え、家主から更新料及び現行賃料の20%アップを要求された。

 Bさんは、賃料については不景気で経営が厳しいが話し合いで5%位なら考慮するが、更新料については賃貸借契約上約束していないこと、また更新料は法律上支払う義務がないので応じられないと請求を拒否した。

 ところがBさんの休みの日に、家主は作業所の顧客の品物保管場所の木戸の鍵を勝手に開け、室内に入り込み、壊す行為に出たため、組合の指導で即パトカーを呼び不法侵入に厳重に注意し、再度このような行為をした場合は事件として取り扱う旨を警告したところ現在家主はおとなしくなった。家賃は受領を拒否され、現在供託中である。

 

 

東京借地借家人新聞より

 

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家賃月額1万5000円値下 (東京・足立区)

2010年06月15日 | 家賃の減額(増額)

 足立区関原で9坪の建物を賃借している組合員のAさんは魚屋を営んでいる。

 3年契約で家賃は当初月額8万5000円であったが、2回目の更新時10万円になり現在に至っている。

 今回4回目の更新に際し、先行きの見えない経済状況の下、売上げ低迷で家賃負担が重く伸し掛かって来ていたので家賃の減額を要求することにした。交渉する前に組合と話し合い、値下げが拒否された場合は法定更新の選択を確認した。

 不動産業者の事務所での話し合いは和やかに進み、家主が折れて家賃8万5000円、3年契約で無事更新した。今回は稀有なケースで、値下げ交渉は家賃減額請求を調停に申立てるのも一つの手である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 1 賃料減額請求が一部認容された事例  甲府地方裁判所 (平成18年09月12日 判決)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

 判例紹介

♦事件番号・・・・ 平成11(ワ)516等
♦事件名・・・・ 賃料等本訴請求事件,賃料減額確認反訴請求事件
♦裁判所・・・・ 甲府地方裁判所 民事部
♦裁判年月日・・・・ 平成18年09月12日
♦裁判概要・・・・ 本件契約の賃貸人である原告が,賃料増額特約があると主張して,被告に対し,同特約を理由に賃料増額の意思表示をなし,その増額後の賃料額の確認及びこれを前提とする未払賃料の支払を求めたのに対し,賃借人である被告が,本件契約の賃料は,近隣土地・建物賃料の下落,諸物価指数の変動等の諸要因を勘案すると不相当に高額となったと主張して,原告に対し,賃料減額の意思表示をなし,その減額後の賃料額の確認を求めた事案で,被告の建物賃料減額請求が一部認容された事例

 

主       文

 

1 原告(反訴被告)と被告(反訴原告)との間の別紙物件目録記載の建物についての賃貸借契約における賃料は,平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることを確認する。
2 原告(反訴被告)の請求及び被告(反訴原告)のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告(反訴原告)の負担とし,その余を原告(反訴被告)の負担とする。

 

事実及び理由

 

第1 請求
 1 本訴について
 (1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は,原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し,金9013万7520円及びこれに対する平成12年2月17日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 (2) 原告と被告の間の別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)についての賃貸借契約(以下「本件契約」という。)における賃料が,平成11年11月17日以降1か月当たり金3857万9690円であることを確認する。

 2 反訴について
 原告と被告との間の本件契約における賃料が,平成12年3月17日以降1か月当たり金2003万0558円であることを確認する。

第2 事案の概要
 1 事案の要旨
 (1) 本訴事件は,本件契約の賃貸人である原告が,本件契約の賃料は,本件契約開始の日から3年を経過した時点で,改定前の賃料を7.5%増とする旨の特約があると主張して,被告に対し,同特約を理由に賃料増額の意思表示をなし,その増額後の賃料額の確認及びこれを前提とする未払賃料の支払を求めた事案である。

 (2) 反訴事件は,本件契約の賃借人である被告が,本件契約の賃料は,近隣土地・建物賃料の下落,諸物価指数の変動等の諸要因を勘案すると不相当に高額となったと主張して,原告に対し,賃料減額の意思表示をなし,その減額後の賃料額の確認を求めた事案である。

 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)
 (1) 当事者
 原告は,不動産の賃貸業等を目的とする株式会社であり,被告は,ショッピングセンターの企画運営等を目的とする株式会社である。

 (2) 原告は,平成5年10月25日,貸店舗として本件建物を建築し,以後,本件建物を所有している。

 (3) 本件ショッピングセンターが開店するまでの経緯
 ア 原告と被告は,昭和63年4月30日,本件建物が所在する土地上に原告が建物を建築してこれを被告に賃貸し,被告がそこでショッピングセンターを運営するとの内容の覚書をとり交わした(甲2。以下「本件覚書」という。)。

 イ 本件覚書には,次のとおりの条項が存在する。
 (ア) 賃料について
 (4条1項)
 賃料の算定は,次の算式による。
 月額賃料=坪当たり建築価格×19%×延べ床面積÷12ヶ月

 (イ) 賃料の改定について
 (5条1項,以下「本件賃料自動増額条項」という。)
 賃料は,賃貸借開始の日より3カ年を経過した時点で,その改定を行なう。改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。
(5条2項)

 以後も3カ年を経過するごとに改定するものとし,前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ,甲乙協議して決定する。

 ウ 原告と被告は,平成元年2月18日,本件覚書をふまえ,基本協定書を取り交わした(乙1。以下「本件基本協定書」という。)。

 エ 基本協定書には,次のとおりの条項が存在する。


 (ア) 賃料について
 (10条1項)
 賃料の算定はつぎの算式による。
 月額賃料=坪当たり建築価格×19%×乙の賃借する延床面積÷12

 (イ) 賃料の改定について
 (12条)
 賃料は賃貸借開始の日より満3カ年毎に改定するものとし,改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。但し,上記情勢等に異常な変動を生じたときはこの限りではない。

 オ 本件基本協定書15条によれば,建物建築工事請負契約の締結時に原告と被告の間で建物賃貸借の予約契約を締結することとされていた。

 しかしながら,原告と被告は,賃料算定の基礎となる「坪あたりの建築価格」の額を幾らにするか,建築代金にかかる消費税をどちらが負担するか,ショッピングセンターの管理運営をどちらがするかなどをめぐって意見が対立したため,予約契約を締結しなかった。

 そのため,本件建物が完成し,本件ショッピングセンターの開店に向けての準備が具体化しても,原告と被告の間の協議は難航し,合意に達しなかった。

 カ その後,被告は,建物賃貸借契約が締結されないまま,平成5年11月17日までに,原告より,本件建物のうち,1階につき2,917.49平方メートル,2階につき3,631.85平方メートル,3階につき2,931.91方メートル,4階につき0平方メートル(それぞれ共用部分を除いた被告専有面積)の引渡しを受け,本件建物にショッピングセンター「Aショッピングモール」(以下「本件ショッピングセンター」という)を開店させた。

 (4) 本件ショッピングセンター開店後の本件契約の締結
 平成5年12月になり,賃料算定の基礎となる「坪当たりの建築価格」について原告と被告との間でようやく合意が成立し,同月29日,以下の内容で本件契約が成立した(甲3)。

 期 間(4条)  平成5年11月17日から20年間
 賃 料(5条)  初年度月額賃料 3338万4264円
 消費税相当額は,被告が負担するものとする。

 賃料の改定(8条) 賃貸借開始日から満3カ年経過毎に賃料の改訂を行うものとし,改訂後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,原告,被告及び訴外Bにおいて協議し,決定する。ただし,上記情勢等に異常な変動が生じた場合はこの限りではない。

 (5) 原告の被告に対する賃料増額の意思表示
 ア 原告は,被告に対し,平成8年10月9日ころ到達の書面により,前記本件覚書5条1項に基づき,本件賃貸借開始の日から3年を経過する日である同年11月17日以降の本件建物の賃料を,従前の賃料の7.5%を加算した3588万8084円(消費税別途)とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲4)。

 イ 原告は,被告に対し,平成11年10月13日ころ到達の書面により,本件覚書5条1項に基づき,前記平成8年11月17日から3年を経過する日である平成11年11月17日以降の賃料を,上記アにおいて増額した賃料の7.5%を加算した3857万9690円とする旨の賃料を増額する意思表示をした(甲5)。

 (6) 被告の原告に対する賃料減額の意思表示

 被告は,原告に対し,平成12年3月14日ころ到達の書面により,本件賃貸借契約書8条に基づき,平成12年3月17日以降の賃料を,現行の賃料である3338万4264円から40%控除した1か月2003万0558円とする旨の賃料を減額する意思表示をした。

  <争点に対す原告・被告の主張>へ続く


【判例】 2 争点に対す原告(貸主)・被告(借主)の主張  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

3 争点
(1) 本件契約には賃料自動増額特約があるか
本件覚書5条の効力)。
 (原告の主張)
 ア 本件基本協定書12条の規定は,本件覚書5条の規定を当然の前提として定められたものである。すなわち,本件覚書5条は,1項において,賃貸借開始の日から3年経過時に自動的に7.5%賃料を増額することを定めるとともに,2項において,さらに3年を経過する毎に,原告・被告間で協議の上,賃料を改定すべきことを定めたものである。そして,本件覚書においては,この協議の際の判断基準が「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ」と抽象的にしか規定されていなかったことから,これをより具体的に規定したのが本件基本協定書12条なのである。このように本件基本協定書12条と本件覚書5条は両立するものであり,また,本件覚書の効力を失わせるためには,契約書等において明文にてその旨を規定するのが実務慣行であるところ,本件契約書にはそのような記載がない。したがって,本件基本協定書の締結により,本件覚書5条の本件賃料自動増額条項の効力が撤回される理由はない。

 イ 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者(当時。 以下,被告,原告とも代表者につき当時。)が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,本件敷地を新たに購入したものである。

 本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格に19%を乗じ,さらに賃借面積を乗じたものを年間賃料として算出され(甲2・乙1),また,賃貸借開始から20年間が経過するより前に被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定しなければならない。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたのであるから,本件契約には,賃料自動増額特約があったというべきである。

 (被告の主張)
 ア 賃料改定に関する本件賃料自動増額条項は,本件基本協定書作成の時点において,原告と被告間の合意事項から撤回されたものである。

 そもそも,本件賃料自動増額条項は,本件覚書締結前の昭和63年3月4日に被告がCショッピングモールにおけるD保険相互会社との間で締結した建物賃貸借予約契約書(乙3)において,同様の規定を挿入したことから,被告の提案により,本件覚書においても挿入することとした。しかしながら,上記Cショッピングモールの賃貸借予約契約書は,賃貸借開始を約1年後に予定しており,予約契約締結時から4年後の賃料の改定を規定していたのに対し,本件賃貸借は,開店まで5年前後を要することを予想しており,それからさらに賃料改定は8年後となってしまうところ,8年後の経済状況を完全に予想することは不可能であるので,本件賃料自動増額条項は,余りにも非合理的であると原告・被告間で意見が一致し,合意の上で削除されたものである。

 イ 本件契約に至る経緯に関し,被告代表者が原告代表者に対して懇願したとの原告の主張事実は否認する。すなわち,被告は,昭和62年ころ,本件土地付近に全国的な中堅業者であるE屋がショッピングセンターを出店するとの情報を得たことから,本件土地を所有するF食品工業株式会社から本件土地を購入又は賃借する方式でのショッピングセンター出店の検討を始めた。そして,その検討を行っている途中で,原告が本件土地を入手して建物を建築し,被告に賃貸するという話が出てきた。当時,被告と原告は,原告がG駅南に所有する土地に被告がショッピングセンターを出店する計画が進んでおり,非常に緊密な間柄にあった。そこで,被告はショッピングセンター経営を業とし,原告は不動産賃貸業を業としていたので,被告としては,それぞれその得意分野を分担することにしようと,本件土地を購入することを断念し,原告が建築する建物を賃借することとした。

 また,被告と原告との間において,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていたとの原告の主張事実も否認する。

 なお,賃料は,通常,長期プライムレートの加重平均変動値,公租公課,近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案の上,改定されるのが原則であり,それ以外の特別の合意があれば契約書にその旨が明記されるべきであるところ,本件契約では,そのような合意も契約書の記載もない。

(2) 本件契約の平成11年11月17日時点及び平成12年3月17日時点における適正継続賃料額

 (原告の主張)
 ア 本件建物の建設は,他のショッピングセンターが当地区に進出することを恐れた被告代表者が,原告代表者に対し,本件敷地の購入とショッピングセンターの建設を余りにも切に懇願するので,原告代表者がその懇願に抗しきれなくなり,原告において,被告の求めに応じて,本件敷地を新たに購入したものである。本件建物がこのような経緯で建設されたことから,本件建物の当初賃料は,坪当たりの建築価格を基礎に算出されている(乙1)。とともに,賃貸借開始から20年間は,被告の都合で賃貸借契約を解約する場合には,約定賃貸借期間満了までに被告が支払うべき賃料等を支払うか,原告が承認する新賃借人(ただし,同業種,同等以上の者)を選定するかしなければならないものとしている(甲3)。このように被告と原告との間では,3年分の初期賃料及び17年分の自動増額後賃料をもって,原告が本件ショッピングセンターの建設についてなした初期投資の回収を保証することが予定されていた。

 したがって,本件契約においては,いかなる情勢の変化があろうとも,少なくとも自動増額後の賃料を下回る額に賃料を減額することは許されない。

 イ 本件契約のような賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである。

 ウ そうすると,本件建物の平成11年11月17日時点の適正賃料は,月額3857万9690円とするのが相当である。そして,平成8年11月17日から平成11年11月16日までの被告の未払賃料は,月額250万3820円,その合計は9013万7520円である。

 (被告の主張)
 本件契約が締結された平成5年以降,いわゆるバブル経済の崩壊により,土地価格は継続的に下落傾向にあり,また,国内及び山梨県内の景気も低迷状態が続いている。このような状況を受けて,本件建物の近隣土地・建物の賃料は,一般的に下落傾向にある。更に,本件建物の近隣には,大型ショッピングセンター「H」が平成12年2月にオープンした。以上のような状況などを総合考慮すると,本件建物の平成12年3月17日時点における適正賃料は,大幅に下落し,月額2003万0558円とするのが相当である。

    <3裁判所の判断1 ( 賃料自動増額特約の効力について)>へ続く


【判例】 3 裁判所の判断1 ( 賃料自動増額特約の効力について)  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

第3 争点に対する判断

1 賃料自動増額特約の有無(本件覚書5条の効力)について
 (1) 本件契約における賃料自動増額特約の存在については,これを認めるに足りる的確な証拠はない。前記認定事実によれば,確かに,本件覚書(甲2)を取り交わした時点では,原告・被告間において,本件建物に関する賃貸借契約につき賃料自動増額特約を付することが予定されていたと認めることができる。しかしながら,平成元年2月に締結した本件基本協定書(乙1)12条では,本件覚書で定められていた「改定後の月額賃料は,改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする。」との文言が削除され,「改定後の月額賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料比較及び経済情勢を勘案のうえ甲乙協議し決定する。」との文言に変わっており,本件契約の契約書(甲3)も上記文言をそのまま採用していることからすれば,原告と被告の間では,本件契約を締結するまでの交渉の過程において,賃料自動増額特約を付する方針は撤回されたとみるのが自然である。

 (2) この点に関し,原告は,上記基本協定書12条は,本件覚書5条2項が,2回目以降の賃料改定の際の判断基準として「前項の率を基本として経済情勢を勘案のうえ甲乙協議して決定する。」という抽象的な表現になっていたことから,これをより明確かつ具体的な判断基準とするために規定したものであって,本件賃料自動増額条項を前提としたものであるから,本件賃料自動増額条項の効力は本件契約においても有効である旨主張し,当時の原告の代表者であるIの陳述書(甲6)にもこの主張事実に沿う旨の記載があり,また,原告の取締役である証人Jも上記被告の主張事実に沿う証言をする(同人の陳述書(甲8)を含む。)。しかしながら,原告の主張によるならば,むしろ,本件基本協定書においても本件賃料自動増額条項の文言を明記した上で,「第2回目以降の改定賃料は,長期プライムレートの加重平均変動値・公租公課・近隣の賃料状況及び経済情勢等を勘案のうえ,・・・決定する。」と文言上明らかにすべきであるところ,本件基本協定書12条及び本件契約の契約書8条の文言は「賃貸借開始日から満3か年経過毎に賃料の改定を行うものとし」となっており,原告の主張は,文言解釈として不自然であるといわなければならない。しかも,前記認定事実によれば,原告は,不動産の賃貸業等を目的とする会社であるから,経験上後々の紛争を回避するためには契約条項を明確かつ具体的に記載すべきことは十分認識し得たことをも合わせ考慮すると,上述したように本件基本協定書において何故本件賃料自動増額条項を明記しなかったのか理解し難いところである。さらに,証拠(乙8の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件基本協定書を作成するに当たり,原告に対し,本件賃料自動増額条項を削除するよう要請していた事実が認められる。したがって,これらの事実に照らせば,この点に関するIの陳述書(甲6)の記載及び証人Jの証言等は,にわかに信用することができない。

 (3) したがって,本件契約において賃料自動増額特約があったことにつき,他にこれを認めるに足りる証拠がない本件では,同事実を推認することはできず,原告の上記主張は採用できない。

   <4裁判所の判断2 (適正継続賃料額について)> へ続く 


【判例】 4 裁判所の判断2 (適正継続賃料額について)  (甲府地方裁判所)

2010年02月24日 | 家賃の減額(増額)

 2 本件契約の平成11年11月17日時点(以下「平成11年基準時」という。)及び平成12年3月17日時点(以下「平成12年基準時」という。)における適正継続賃料額について

 (1) 本件鑑定の検討
 鑑定人Kの結果(以下「本件鑑定」という。)によれば,鑑定人は,本件契約の平成11年11月17日時点の適正継続支払賃料を月額2670万円,平成12年3月17日時点の適正継続支払賃料を月額2650万円と評価していることが認められる。そこで,まず本件鑑定の内容の合理性について検討する。

 ア 一般的信用性について鑑定人は,裁判所が選任した両当事者に利害関係を持たない不動産鑑定士であり,現地を実査した上,近隣地域の状況,対象不動産の状況を把握し,通常継続賃料の鑑定に採用される賃料差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,本件鑑定は,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 イ 賃料差額配分法による算定について
 まず,積算法により,正常実質賃料相当額(対象不動産の経済的価値に即応した実質賃料)を月額2076万1000円と算出し,次に,賃貸事例比較法により,正常実質賃料相当額を月額2125万2000円と算出した上で,積算賃料における利回りの把握にやや難点があること,賃貸事例比較法は,市場性を反映しており実証的であることを考慮して,両試算賃料の重視割合を積算法による試算賃料を4とするのに対し,賃貸事例比較法による試算賃料を6として最終的な正常実質賃料を月額2110万円と算出している。他方,実際実質賃料相当額の算定については,実際支払賃料3338万4264円に保証金運用益66万7685円を加算した3405万2000円と算出し,上記正常実質賃料相当額と上記実際実質賃料相当額との差額マイナス1295万2000円を,本件物件の特色,賃貸市場の実情等を勘案の上,折半法を採用して,当事者それぞれに2分の1配分し,差額配分法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2700万円,平成12年基準時は月額2690万円と算定した。

 ウ 利回り法による算定について
 本件契約時点(平成5年11月17日)における純賃料利回り(実際支払賃料に保証金運用益を加算した実際実質賃料から必要経費を控除して得られた純賃料の対象不動産の基礎価格に対する比率)を7.2%と算出し,これに基礎価格の変動幅ほど賃料変動がないことを考慮して,基礎価格下落率の半分を補正率として除した結果,平成11年基準時における継続賃料利回りを9.2%,平成12年基準時におけるそれを9.4%とした。そして,それぞれの基準時における対象不動産の基礎価格に上記継続賃料利回りを乗じたもの(純賃料)に必要経費を加算して得られた利回り法による実質賃料から前記保証金運用益を控除した結果,利回り法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額2510万円,平成12年基準時は月額2480万円と算定した。

 エ スライド法による算定について
 本件契約時点から本件鑑定の平成12年基準時までの消費者物価指数,企業向けサービス価格指数(不動産賃貸),名目GDP,オフィース・共同住宅賃料指数,山梨県商業統計調査(年額商品販売額・売場面積当たり年間販売額)のそれぞれの変動率をその重視割合に従い採用し,変動指数として平成12年基準時では89.9%を算出した。また,平成11年基準時における変動指数は,上記平成12年基準時の変動指数を期間配分し,90.4%と算出した。そして,本件契約時点の賃料に上記変動指数を乗じた結果,スライド法による適正な実質賃料を平成11年基準時は月額3020万円,平成12年基準時は月額3000万円と算定した。

 オ 賃貸事例比較法による算定について
 賃貸事例比較法においては,本件建物の近隣地域及び同一需給圏内の類似地域に存する類似の賃貸事例を収集した上で,比準賃料を1,450円(平方メートル当たり)と算定し,これに契約面積を乗じたものから保証金運用益を控除して,賃貸事例比較法による適正な実質賃料を平成11年基準時及び平成12年基準時月額2510万円と算定した。

 カ 適正継続支払賃料の算定
 その上で,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件賃貸借契約時の賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとし,本件賃貸借契約時の賃料は,賃貸人・賃借人間の合意であるから本来重視すべきものであるが,上記契約時からそれぞれの基準時までに他の大型店舗が開業し周辺商業動向が契約時点とは異なることを考慮すると,その試算賃料の重視割合は,差額配分法及び利回り法をそれぞれ30%とするのに対し,スライド法は20%とすべきであるとした。また,賃貸事例比較法の重視割合も,賃貸事例の契約経緯や賃料改定の経緯も個々の事情があり,要因比較にもやや困難が伴うことを考慮して,20%とした。その結果,本件鑑定における適正な実質賃料として,平成11年基準時は月額2670万円,平成12年基準時は月額2650万円と算定した。

 キ 結論
 以上の鑑定評価の手法,採用された基礎数値,評価結果について得に不合理な点は認められない。
 なお,被告は,前述した各試算賃料の重視割合の算定において,スライド法による賃料が他の算定方式による賃料に比して高く試算されたのは本件契約当初における賃料が周辺相場と比べて高めであったことによると推測できるとする本件鑑定に対し,そうであるならば,差額配分法及び利回り法においても,同様に考慮すべきである旨主張する。

 上記契約時の賃料は,差額配分法では,実際実質賃料の算定の際に考慮されるところ,確かに,上記契約時の賃料が高めであるとすればその分,正常実質賃料との差額に反映されることは否定できない。しかしながら,賃貸人に配分されるのはその差額からさらに半分に減額されたものである。また,利回り法においても,上記契約時の賃料が高めであるとしても,それは,利回りに若干反映されるにすぎない。したがって,上記契約時の賃料が高めであることは,スライド法においては算定結果に直接反映されるのに対し,差額配分法及び利回り法においては算出された賃料額に反映する割合がかなり低減されたものになる。加えて,適正な賃料算定のためには,重視割合に程度の差はあるにせよ,本件契約時の当事者が賃料額決定の要素とした事情もまた考慮すべきであることは否定できない。以上のことにかんがみると,本件鑑定が上記契約時の賃料が高めであることを差額配分法及び利回り法において考慮していないことだけをとらえて,被告主張のように本件鑑定の合理性を否定することはできないといわざるを得ない。よって,被告の上記主張を採用することはできない。

 また,被告は,本件鑑定が賃貸事例比較法による賃料を余り重視しておらず,適正でない旨主張する。しかしながら,両当事者に利害関係がなく,かつ,契約内容等に類似性がある賃貸事例は少ない上に,その要因比較に多少の困難があることは否定できないのであるから,賃貸事例比較法による賃料を被告の主張するほど重視していないとしても,必ずしも不合理なものとはいえない。したがって,この点に関する被告の主張も採用することができない。他方,原告は,最高裁平成14年(受)第1954号平成17年3月10日第一小法廷判決を引用し,本件契約は,原告が被告からの要望に応じ,被告が営業するショッピングセンターに適した建物を建築し,これを被告に対して長期にわたって賃貸するという形態の賃貸借契約であるから,賃料減額請求後の相当賃料額の算定に当たっては,上記最高裁判決に沿った判断が行われるべきであるのに,本件鑑定は,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を考慮していない旨主張する。しかしながら,上記判決は,本件で問題となった賃料自動増額特約の存在が認められた事案のものであり,本件と同一に論じられるものではない。むしろ,本件鑑定は,前記のとおり,賃料差額配分法,利回り法及びスライド法において,本件契約当初における賃料が高めであるという本件契約の個別性を考慮しているのであるから,上記原告の主張は採用できない。

 (2) 原告鑑定の検討
 原告提出の不動産鑑定評価書(甲7。以下「原告鑑定」という。)は,差額配分法,スライド法,利回り法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,1差額配分法,利回り法においては,建物価格の査定に当たり,本件鑑定が当初の本件建物の建築費をもとに変動率を考慮して求めているのに対し,原告鑑定では,当初の本件建物の建築費を全く考慮せず,単純に山梨県の鉄筋コンクリート造の標準建築費から本件建物の個別要因修正を行っているため,本件建物の再調達原価が本件鑑定より約8億円(この点,原告鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は1平方メートル当たり14.0万円であるから,これに本件建物の延べ床面積を乗じた結果,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は,30億7276万2000円となる。他方,本件鑑定によれば,平成12年3月当時の本件建物の再調達原価は22億7668万9000円である。)も不当に高額なものになっている。また,2必要諸経費の加算においても,本件鑑定が支払賃料の2%を計上したものに原告・被告間における本件契約の共益費等請求が問題となった別件和解(東京高裁平成15年・第3881号)で定められた維持管理費を控除して求められているのに対し,原告鑑定は,単純に人件費の3倍の収入が必要としてこれを計上しており,その根拠も不明であることに加え,上記和解による維持管理費の部分が二重に計上されてしまう点でも合理性がない。

 さらに,3差額配分法における正常実質賃料相当額の算出に当たっては,まず,積算法による積算賃料の算定において,本件鑑定が期待利回りを6.7%とするのに対し,原告鑑定は,12%と算定している。しかし,原告鑑定は,期待利回りを12%とする根拠として比準賃料を4000円から5800円と試算し,この賃料水準からは総合期待利回りが15%超となることを挙げているところ,そもそもこの比準賃料は,支払賃料に保証金運用益だけでなく共益費をも加算したものであり,また,必要諸経費は全く控除されていないのであるから,期待利回りが高くなるのは当然であり,本件賃貸借の契約時から平成11年及び12年の間における社会情勢の変動,物価指数の変動等をも合わせ考慮しても,12%は高率に過ぎ,本件鑑定及び被告鑑定で採用されている利回りと2倍の開きがあることに合理性が認められず,到底採用できるものではない。なお,この点に関して,原告は,平成14年6月のL投資法人のリートの目論見書による賃貸事務所ビルの利回りを引用し,原告鑑定の上記利回りの合理性を縷々主張するが,これらは,本件で問題となっている平成11年及び平成12年から2年後の平成14年のものであることに加え,本件建物のようなショッピングセンターの利回りがこのような事務所ビルの利回りよりも当然高くなるとする根拠が何も示されていないこと等を考慮すると,原告の上記主張は採用できない。4差額配分法の比準賃料の算定においても,本件鑑定は,支払賃料に保証金運用益を加算したものを実際実質賃料としているのに対し,原告鑑定は,前述したように支払賃料及び保証金運用益に共益費をも加算して実質賃料としているため,賃料と共益費を合計すると,必要経費部分が二重に計上されてしまうこととなり合理的でない。5利回り法においては,本件鑑定及び被告鑑定が,基準時の本件土地・建物の基礎価格に利回りを乗じたものに必要経費を加算した上,これに保証金(敷金)運用益を控除しているのに対し,原告鑑定は,本来控除されるべき保証金運用益を全く控除しておらず,これもまた原告鑑定賃料額が高額に過ぎる要因の一つとなっている。6スライド法においては,採用変動率として92%を採用しているが,これは,原告の関連会社であり,かつ,原告から本件物件を賃借している訴外新日本建物のテナントに対する転貸賃料収入の変動を採用したことが主たる原因であり,上記テナントである転借人自体及びその数も変動していることをも考慮すると,上記変動率を採用することは,本件契約の継続賃料の算定に当たっては合理性を欠くと言わざるを得ない。7賃貸事例比較法においては,賃貸データの一つとして本件建物について訴外新日本建物が原告から賃借している部分における原告に対する支払賃料を採用しているものと推認されるところ,前述したとおり訴外Bが原告の関連会社であり,賃貸データとしての公平性に疑問の余地があること,しかも,上記賃貸データを他の賃貸データと比して50%もの重きを置いて算定されている点で合理性を欠くと言わざるを得ない。

 したがって,以上の点を総合考慮すると,原告鑑定は,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

 (3) 被告鑑定の検討
 被告提出の不動産鑑定評価書(乙5。以下「被告鑑定」という。)は,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法のすべてを評価の基礎として考慮しており,評価の手法等について特に不合理な点は認められない。

 しかしながら,1差額配分法及び利回り法においては,本件鑑定は,保証金(敷金)の運用利回りを2%としているのに対し,被告鑑定のそれは,5%としており,平成12年の公定歩合,プライムレート,定期預金平均金利等を考慮すると高率に過ぎること,2差額配分法においては,本件建物の基礎価格の算定における現価率を55%とし,本件鑑定及び原告鑑定が64%としていることに比して,低きに過ぎる感が否めない。また,その根拠として,被告鑑定は,定率法による現価率を59%と算出し,維持管理の状態等を勘案してさらに4%も控除しているが,被告鑑定における資料にはこれを裏付ける資料はなく,他方,本件鑑定は,「本件建物は,外観上比較的良好に維持管理がなされている」と評価していること,本件鑑定添付写真等を見ても維持管理の状態に上記4%も控除するほどの問題点が見受けられないこと等も合わせ考慮すると,被告鑑定の根拠の合理性に若干疑問の余地があると言わざるを得ない。また,3差額配分法における正常実質賃料を賃貸事例比較法を併用せずに,積算法のみを用いて算出しているため,市場性が反映されたものになっていない。さらに,4利回り法においては,被告鑑定は,実績利回りを本件賃貸借契約時の実績利回りである7.5%を採用しており,本件鑑定及び原告鑑定がこれを9%台としているのに比して,低きに過ぎる上,本件賃貸借契約時である平成5年から本件鑑定基準時である平成11年及び12年までの約7年もの間における地価の下落により利回りも少なからず高くなる傾向があることを反映しておらず,採用できない。なお,この点に関し,被告は,本件鑑定が上記利回りを算定するに当たって,基礎価格下落率46%の半分を補正率としているところ,何故半分としたのかの合理的な説明がない旨主張する。確かに,本件鑑定には,この点を説明する明確な記述がないが,賃料については,基礎価格の変動幅ほどの変動はないものの,地価が下落すれば多少は影響を受けることは否定できないのであるから,基礎価格下落率をそのまま補正率とすることは適正でないのであって,補正率を算出するに当たり,基礎価格下落率の半分を採用することが不合理であるとまでは言えず,被告の上記主張は採用できない。

 したがって,以上の諸点を総合考慮すれば,被告鑑定も,その合理性において,本件鑑定に劣るものといわざるを得ない。

 (4) 総合的検討
 以上の検討の結果によれば,本件鑑定は,その鑑定手法,採用した基礎数値,評価の過程,評価額等に格別不合理な点は見当たらず,これに対し,原告鑑定及び被告鑑定には,前記(2)及び(3)に指摘したような問題点が含まれていることを総合的に考慮すると,いずれも採用することができず,本件鑑定の結果を相当なものとして是認するべきである。

 そうすると,本件契約の適正賃料は,平成11年11月17日時点では月額2670万円,平成12年3月17日時点では月額2650万円と認めるのが相当である。

 (5) なお,原告は,最高裁平成12年(受)第573号平成15年10月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁,最高裁平成14年(受)第69号平成15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁,及びこれらの差戻審における和解,並びに,最高裁平成14年(受)第852号平成15年10月23日第一小法廷判決・裁判集民事211号253頁,及びその差戻審である東京高裁平成15年(ネ)第5399号平成16年12月22日判決を引用し,賃借人からの働きかけに応じて建築された建物の賃貸借契約における賃料については,賃料減額請求を認めるとしても,その減額幅は,このような特段の事情がないと仮定して算定された鑑定評価等にとらわれることなく,賃貸人の収支計算を害しない範囲にとどめるべきである旨主張する。

 しかしながら,これらの判決は,いわゆるサブリースの事案であって,不動産業者である原賃借人自身の占有使用が予定されていないものである上,いずれも賃料保証特約又は賃料自動増額特約がある事案であるから,本件と同一に論じられるものではない。しかも,和解は,両当事者の互譲によるものであるから,本件の参考になり得ないと言わざるを得ない。また,上記東京高裁平成16年12月22日判決は,賃料保証特約を前提とする収支予測の下に賃貸人が多額の銀行融資を受け,賃貸借契約の対象となる建物を建築した事情を考慮し,相当賃料額を算定しているが,本件では,前述したとおり,このような賃料保証の合意はなく,しかも,本件覚書及び本件基本協定書における賃料算定方法である「坪当たり建築価格×19%×被告の賃借する延べ床面積÷12」の19%の根拠も明らかとなっていない
等,本件契約当初における賃料額等と原告の本件建物建築のための銀行借入金等の返済額との関係を認めるに足りる証拠はない。したがって,この点においても本件は,上記判決と事案を異にするのであって,上記原告の主張は,採用できない。

 3 結論
 以上によれば,原告の被告に対する請求(本訴請求)は,理由がないからいずれもこれを棄却し,被告の原告に対する請求(反訴請求)は,本件契約の賃料が平成12年3月17日以降1か月当たり2650万円であることの確認を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。

甲府地方裁判所民事部

裁判長裁判官  新 堀  亮 一

裁判官  岩 井  一 真

裁判官  村 上  典 子

 

 

 

 

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