東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*借地法4条1項所定の正当事由を補完する立退料等の提供・増額の申出の時期

2018年12月04日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

借地法4条1項所定の正当事由を補完する立退料等の提供・増額の申出の時期
(最高裁平成6年10月25日判決 民集48巻7号1303頁)

 


       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


       理   由
 1 上告代理人竹田章治の上告理由第2点について
  土地所有者が借地法6条2項所定の異議を述べた場合これに同法4条1項にいう正当の事由が有るか否かは、右異議が遅滞なく述べられたことは当然の前提として、その異議が申し出られた時を基準として判断すべきであるが、右正当の事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は、土地所有者が意図的にその申出の時期を遅らせるなど信義に反するような事情がない限り、事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては、原則としてこれを考慮することができるものと解するのが相当である。けだし、右金員の提供等の申出は、異議申出時において他に正当の事由の内容を構成する事実が存在することを前提に、土地の明渡しに伴う当事者双方の利害を調整し、右事由を補完するものとして考慮されるのであって、その申出がどの時点でされたかによって、右の点の判断が大きく左右されることはなく、土地の明渡しに当たり一定の金員が現実に支払われることによって、双方の利害が調整されることに意味があるからである。このように解しないと、実務上の観点からも、種々の不合理が生ずる。すなわち、金員の提供等の申出により正当の事由が補完されるかどうか、その金額としてどの程度の額が相当であるかは、訴訟における審理を通じて客観的に明らかになるのが通常であり、当事者としても異議申出時においてこれを的確に判断するのは困難であることが少なくない。また、金員の提供の申出をするまでもなく正当事由が具備されているものと考えている土地所有者に対し、異議申出時までに一定の金員の提供等の申出を要求するのは、難きを強いることになるだけでなく、異議の申出より遅れてされた金員の提供等の申出を考慮しないこととすれば、借地契約の更新が容認される結果、土地所有者は、なお補完を要するとはいえ、他に正当の事由の内容を構成する事実がありながら、更新時から少なくとも20年間土地の明渡しを得られないこととなる。


 本件において、原審は、被上告人が原審口頭弁論においていわゆる立退料として2350万円又はこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する金額を支払う旨を申し出たことを考慮し、2500万円の立退料を支払う場合には正当事由が補完されるものと認定判断しているが、その判断は、以上と同旨の見解に立つものであり、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を非難するに帰するもので、採用できない。


 

2 その余の上告理由について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。右判断は、所論引用の当審判例に抵触するものではない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用できない。

 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官可部恒雄の補足意見(略)があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


    最高裁裁判長裁判官園部逸夫、裁判官可部恒雄、同大野正男、同千種秀夫、同尾崎行信

 

 

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