住宅金融公庫の融資物件
宮本さんは、引越しに際し不動産会社にマンション(台東区谷中)の敷金返還を要求したところ、「原状回復費に50万円掛るので敷金45万円を充当します。不足金5万円をお支払下さい」と驚くべき言葉が返ってきた。
困っていたところ台東借地借家人組合を紹介された。原状回復に対する組合の説明は、賃借人の故意・過失による損耗以外は原状回復義務の対象でない。従って、修復費用の負担責任がないということだ。交渉は不動産業者を相手にするのではなく、直接家主とすることにした。
数日後、組合の調査で、そのマンションは、住宅金融公庫から資金の貸付を受けて建設したものであり、登記簿謄本を調べると、融資金の返済中ということが確認出来た。
住宅金融公庫法第35条、同法施行規則10条1項で家賃及び敷金(家賃の3月分を超えない額)を受領することを除く外、賃借人から権利金、謝金等の金品の受領を禁止されている。
即ち、家賃と敷金以外の金銭の受領は原則禁止されている。従って、公庫融資を受けた家主は借入金と利息を完済するまでは、礼金・更新料等の受領及び退去時の敷金(保証金)の一定額の償却(敷引特約)も禁止されている。
組合は住宅金融公庫へ電話を入れ、公庫法違反の家主に対し厳重指導(同法46条による刑事罰適用又は融資の繰り上げ返済請求等)を申し入れた。加えて、組合は家主に対し、次のような趣旨の配達証明付内容証明郵便を送った。
①故意・過失による損耗がないので、原状回復費用負担は拒否する
②住宅金融公庫法違反の礼金30万円と
③敷金45万円の返還要求するというものである。
住宅金融公庫への電話談判の効果が現われ、後日、相談者の銀行口座に要求の礼金と敷金の合計75万円全額が振込まれた。
住宅金融公庫による融資物件の場合、住宅金融公庫法施行規則第10条においても,下記のような賃貸条件の制限が規定されている。
第10条 賃貸人は、毎月その月又は翌月分の家賃を受領すること及び家賃の三月分を超えない額の敷金を受領することを除くほか、賃借人から権利金、謝金等の金品を受領し、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。
罰則: 賃貸条件の違反について30万円以下の罰金(公庫法46条1項1号)
<追記> 平成19年4月、住宅金融公庫は廃止され、独立行政法人住宅金融支援機構へ移行した。住宅金融支援機構法附則第5条により、旧住宅金融公庫法に基づいて行われた賃貸住宅貸付けに係る賃貸条件の制限は従前通りとされている。
東京・台東借地借家人組合
無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。