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2006(平成18)年度 宅地建物取引主任者資格試験 (建物の転貸借) 1

2009年05月29日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

問10】 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。


1 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

2 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

3 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

4 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。


1【正解
無断転貸を理由にした解除の制限  

 賃貸人の承諾のない転貸借は、賃貸人につき契約の解除権が発生する(民法第612条2項)ものと考えられますが、転借人の保護の観点から、判例によれば「その転貸借が、建物の持主に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除権は発生しない」と、その転貸借は保護がされ、このような特段の事情があれば、解除権は発生しない(最高裁昭和41年10月21日判決)。



2【正解×
債務不履行を理由にした原賃貸借の解除には対抗できない

 賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、賃貸人が転貸借人に対して目的物の返還を請求した時に終了する(最高裁平成9年2月25日判決)。

 原賃貸借が賃貸人と賃借人の合意により解除されたとき賃貸人と賃借人とが賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、 賃貸人は転借人に対してこの合意解除の効果を主張できない(最高裁昭和62年3月24日判決)。 


3【正解
賃借権の譲渡

  賃貸人が,賃借権の譲渡について、承諾をするのは,賃借権の譲渡人だけでなく、賃借権の譲受人に対するものであってもよいとされている(最高裁昭和31年10月5日判決)。


4【正解
無断転貸を理由にした明渡し請求があったときの賃料支払拒否

「建物賃借人は、賃借建物に対する権利に基づき自己に対して明渡しを請求することができる第三者からその明渡しを求められた場合には、それ以後、賃料の支払いを拒絶することができる」(最高裁昭和50年4月25日判決

 

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2007(平成19)年度 宅地建物取引主任者資格試験 (借地借家法関係) 2

2009年05月28日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

問14】 借地借家法第38条の定期建物賃貸借(以下この問において「定期建物賃貸借」という。)と同法第40条の一時使用目的の建物の賃貸借(以下この問において「一時使用賃貸借」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。


1 定期建物賃貸借契約は書面によって契約を締結しなければ有効とはならないが、一時使用賃貸借契約は書面ではなく口頭で契約しても有効となる。

2 定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。

3 定期建物賃貸借契約は契約期間中は賃借人から中途解約を申し入れることはできないが、一時使用賃貸借契約は契約期間中はいつでも賃借人から中途解約を申し入れることができる。

4 賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。


1【正解
口頭の契約の有効性

 定期建物賃貸借契約 は、書面で契約しなければ有効とはならない。
 一時使用賃貸借契約は、口頭で契約しても有効。

 契約の更新がない定期建物賃貸借は、公正証書などの書面によって契約を締結する場合に限り、有効(借地借家法38条1項)。

 書面で契約しなかった場合は、「契約の更新がないという特約」の部分のみが無効になり、普通借家契約になる。

 ● しかし、一時使用目的の建物の賃貸借では、このような制限はなく口頭で契約しても有効。

定期建物賃貸借 契約期間は、公正証書等の書面で契約しなければ効力を有しない(借地借家法38条1項)。

一時使用目的の建物の賃貸借  借地借家法の借家の規定は適用されず、民法のみで規定。
 「契約は書面による場合に限る」等の規定はないので、口約束でも有効。


2【正解×
契約期間

❒ 定期建物賃貸借契約 は、契約期間を1年以上とすることができる。
❒ 一時使用賃貸借契約 も、契約期間を1年以上とすることができる。

 定期建物賃貸借、一時使用目的の建物の賃貸借とも、契約期間を1年以上とすることについて、当事者の合意で設定できるので、2は間違い。

❒ 定期建物賃貸借   契約期間は、1日単位でもできるので1年未満でもよい。
 また、期間の長さについて制限はない(借地借家法38条1項)。

❒ 一時使用目的の建物の賃貸借  契約期間は、民法602条の短期賃貸借(3年),604条1項の最長存続
 期間(20年)を除けば,条文上特に規定はない。(

) 一時使用目的の建物の賃貸借の存続期間は、従来の判例では5年間とされていた(最高裁 昭和43年1月25日判決)。
 ただし、一時使用目的の建物の賃貸借でも当事者の合意で期間の延長や更新をすることは可能。


3【正解×
中途解約権

❒ 定期建物賃貸借契約 は、中途解約を申し入れることができる場合がある。
❒ 一時使用賃貸借契約 は、期間の定めがあるときは中途解約できない。

 定期建物賃貸借で居住用建物で居住部分が200㎡未満の場合に、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、契約期間中でも、賃借人から中途解約を申し入れることができる(借地借家法38条5項)。

 一時使用賃貸借契約で期間の定めがある場合は、原則として、契約期間中は賃借人から中途解約を申し入れることはできない。
 ⇒ 中途解約権を留保する特約があればできる。

 一時使用の建物の賃貸借で、期間の定めがない場合は、貸主・借主とも、いつでも解約の申し入れができる(民法612条1項2号)。
 この場合、解約の申し入れより3か月が経過することによって契約は終了する。

 また,一時使用の建物の賃貸借で、期間の定めがある場合でも、貸主・借主の合意で一方または双方が中途解約権を留保したときは、特約の範囲内でいつでも中途解約の申し入れができる(民法613条)。


4【正解×
建物の売却による建物の所有権者の変更に賃借人は対抗できるか

❒ 定期建物賃貸借契約 は、賃借権を新所有者に主張できない。
❒ 一時使用賃貸借契約 も、賃借権を新所有者に主張できない。

 賃借権の登記もなく賃借人が建物の引渡しも受けていない間に建物が売却された場合、建物の賃借人は、定期建物賃貸借契約・一時使用賃貸借契約のどちらであっても、賃借権を新所有者に主張することはできないので、4は間違い。

□ 賃借権を主張できる場合
 建物の売却により建物の所有者が変わった場合、建物の賃借人は、賃借権の対抗要件を備えていれば,新所有者に対して,賃借権を主張することができる。

❒ 普通借家、定期借家等(取壊し予定の建物の賃貸借も含む)の借地借家法の適用のある賃貸借の場合は、引渡し又は賃借権の登記(借地借家法31条)があれば、賃借権を主張することができる。

❒ 一時使用の建物の賃貸借の場合は、賃借権の登記(民法605条)<引渡しは対抗要件にならない>(借地借家法40条)があれば、賃借権を主張することができる。

 
一時使用の建物の賃貸借
 一時使用の建物の賃貸借では、借地借家法の適用がない。

 以下の借地借家法の規定は適用されないことになる。
①賃借権の登記がないときに建物の引渡しをもって第三者への対抗要件とする規定(借地借家法31条)。
 ( )<一時使用の建物所有を目的とする借地権では、借地権の登記がなくても借地上の建物に登記があればよいとする対抗要件の規定は適用されることに注意。>

②賃貸借終了時の転借人の保護規定(借地借家法34条)

③造作買取請求権(借地借家法33条)

④借賃増減請求権(借地借家法32条)

⑤居住用建物での事実上の内縁の妻等の賃借権の承継(借地借家法36条)

 

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2007(平成19)年度 宅地建物取引主任者資格試験 (借地借家法関係) 1

2009年05月27日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

問13】 Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。


1 Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。

2 BがAとの間で甲土地の使用貸借契約を締結していた場合には、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。

3 BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。

4 BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。



1【正解
 甲土地を購入したCがBに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合としては、まず時効による取得がある。

 「土地賃借権の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実があり、かつ、それが賃借の意思に基づく事が客観的に表現されていれば、時効取得は可能である」(最高裁昭和43年10月8日判決、同旨、最高裁昭和62年6月5日判決)。
 その際の判断基準は、土地の占有と賃料の支払いの有無である。


2【正解
使用貸借

 使用貸借(民法593条)の借主には、もともと第三者〔新所有者や抵当権者等〕に対する対効力はなく(※1)、使用貸借の目的物である土地の上の建物が登記されていてもこのことに変わりはない。
 また、使用貸借には借地借家法は適用されない。

⇒ 建物所有を目的とした土地の賃貸借では、賃借権の登記がある場合(民法605条)や借地上の建物の登記(※2)がある場合(借地借家法10条1項)には借地権を第三者に対抗することができる。使用貸借にはこれらの規定〔土地の賃借人の保護の規定〕は適用されない。

 したがって、甲土地の購入者であるCは、使用借権者Bに対して、建物を収去して土地を明け渡すよう請求〔妨害排除請求〕することができる。

※1)使用貸借での借主は、貸主に対してのみ、その権利を主張することができるだけなので、甲土地の所有者が変わってしまった以上2場合、BはCの甲土地の返還及び明渡し請求に対して、対抗するものを有していない。

※2)建物の表示に関する登記でもよい(最高裁 昭和50年2月13日判決)


3【正解
継続使用による法定更新(自動更新)

 借地(甲土地)上の建物乙に所有権の登記があるので、Bは対抗力のある借地権を有している(借地借家法10条)。

 借地契約の存続期間が満了していても、
(1) 借地権者が契約の更新を請求し、借地権設定者が正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかった場合、

(2) 借地権者が土地の使用を継続しているときに、借地権設定者が正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかった場合、

 このどれかに該当する場合は、自動的に更新される〔法定更新〕(借地借家法5条)。

 したがって、Cの甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合に、Cが正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかったときは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できないので3は正しい記述。


4【正解×
期間の定めのない借地契約

 借地(甲土地)上の建物乙に所有権の登記があるのですから、Bは対抗力のある借地権を有している(借地借家法10条)。

 借地契約で期間を定めなかった場合、存続期間は30年になります借地借家法3条から、存続期間は30年になる。このため,土地を購入したCに正当事由があっても、解約の申入れをすることはできない。

 

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明渡し請求に退去拒否を通告 (静岡・静岡市)

2009年05月26日 | 建物明渡(借家)・立退料

 静岡市内のOさんは、昨年、退去予告期間(6ヶ月)を無視した追い出しに失敗した家主が、性懲りもなく業者を変えて「今度は6ヶ月前に予告した」と退去の請求をしてきました。

 家主から委任された建築業者Z社から「移転費用は、工事費の中で確保してあるので、補償額を申し出て」との提案がありましたが、Oさんは、「昨年の執拗な脅しまがいの追いたてで神経系統の病に冒され、完治していない」と退去を拒否。Z社は、それでも退去補償の概算を迫り、Oさんは転居の意思は無いとしつつ、一定額を示しました。

 Oさんは、「これからも此処に安心して住み続けたい。家主が法律的な手続きをとった場合受けて立つ用意がある」と決意を新たにしています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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店のシャッターを新品に交換させる (東京・荒川区)

2009年05月25日 | 修理・改修(借家)

 東京荒川区で昭和50年から店舗を借り、家電製品販売業を自営しているⅠさんは、入居時から設置されていたシャッターが今年2月頃から開閉の具合が悪くなったので家主に修繕を申し出ました。

 家主はIさんに対し「4年前の更新時に更新料を払わずに法定更新をしたからとんでもない」と修繕を拒否しました。

 Iさんは組合と相談しました。借りているものだが丁寧に使用し、耐用年数はとっくに経過し、借家人には何ら過失はありません。店内には商品が一杯で防犯上も心配なので再度修繕を申し入れても断られたので、業者に調べてもらったところ修繕では無理といわれました。

 そこで、見積書の交換代金を一時Iさんが立替え払いし、後日賃料から相殺する旨を家主に内容証明で送りました。

 その後、家主の代理人の弁護士から家主の責任で交換すると言ってきましたが、1週間以上も工事に来ないのでIさんは家主宅に行き、「一体いつ交換するんだ。もっと誠意を見せろ」と一喝すると、驚いた家主は2日後に新品と取り換えました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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「追い出し屋」に賠償命令 閉め出し違法と認定 大阪簡裁

2009年05月22日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 追い出し屋」の被害に遭ったとして借り主の男性が不動産会社に慰謝料など140万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、大阪簡裁であった。

 原告は派遣社員の男性、被告は不動産賃貸会社「木村産業」(大阪市北区)。

 家賃滞納を理由に無断でマンションの玄関ドアの鍵を2回交換され、閉め出され、居住権を侵害されたとして、大阪簡裁の篠田隆夫裁判官は鍵交換を不法行為と認定し、不動産会社に約65万円の支払いを命じた。

 判決理由で篠田隆夫裁判官は「鍵を交換して未払い賃料の支払いを促そうとした行為は、通常許される権利行使の範囲を著しく超えており、平穏に生活する権利を侵害するのは明らか」と指摘し、「マンションからの閉め出しは、不法行為に当たる」と述べた。

  判決は「法律無視の鍵交換は国民の住居の平穏や居住権を侵害する違法な行為として厳しく非難すべきだ」と批判し、不動産会社について「業務の一環として日常的に不法行為を繰り返していた」と認定した。

 また、不動産会社は「債務不履行(家賃滞納)を無視してまで居住権を認められない」と主張したが、不動産会社の主張は退けられた。

  判決によると、男性は2008年2月、賃料約4万3000円の賃貸住宅に入居。まもなく収入が減り、滞納した。同8月と10月に鍵を取り換えられ、計1か月以上閉め出された。その間、同市西成区内の簡易宿所などを転々とした。

  
  「追い出し屋」の被害は、敷金・礼金が不要な「ゼロゼロ物件」で多く、各地で訴訟に発展している。福岡簡裁は今年2月、家賃保証会社に慰謝料5万円の支払いを命じる判決を言い渡した。福岡簡裁判決は、午前0時以降も家賃の督促を続けた家賃保証会社の違法性を認定している。

  敷金・礼金なしで入居できる「ゼロゼロ物件」を巡り、強引に居室を明け渡しさせられた入居者が、賃貸住宅の入居者の滞納家賃を一時的に立て替える家賃保証会社を相手取り提訴する事例が相次いでいることから、国土交通省は家賃保証会社に一定の規制を設ける方針を固めた。

 連帯保証人が不要な物件に関与する家賃保証会社は、借主が保護される借地借家法に基づかない契約形態を取るケースが多い。

  部屋への立ち入りを認める特約を結ばせたり、消費者契約法の上限利率(延滞家賃に対し年14.6%)を超える違約金を請求する業者もある。ごく短期間の滞納で厳しい取り立てをしたり、無断で鍵を交換するなどして強引に居室の明け渡しを迫る「追い出し行為」も横行し、国土交通省によると、国民生活センターへの相談が06年度89件から08年度428件と急増している。

 国土交通省は、部屋への無断立ち入りや鍵の交換は「住居侵入罪や民法上の不法行為にあたる可能性がある」と判断。財務内容や契約件数などを考慮し、許可制▽登録制▽ガイドライン策定--のいずれかの方法で適正な家賃保証会社かどうかを選別できるようにする。

 

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滞納で鍵交換「違法」 業者に65万円賠償命令 大阪簡裁

2009年05月22日 | 建物明渡(借家)・立退料

 家賃を滞納した借り主が強引に退去を迫られる「追い出し屋」被害で、大阪市城東区の男性が玄関ドアの鍵を2回交換され、居住権を侵害されたとして、貸主側に慰謝料など140万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、大阪簡裁であった。篠田隆夫裁判官は鍵交換を不法行為と認定し、貸主側に約65万円の支払いを命じた。

  支援団体「全国追い出し屋対策会議」(代表幹事・増田尚弁護士)によると、追い出し行為の代表例とされる鍵交換について賠償責任を認めた司法判断は初めて。

  判決は「法律無視の鍵交換は国民の住居の平穏や居住権を侵害する違法な行為として厳しく非難すべきだ」と批判。「債務不履行(家賃滞納)を無視してまで居住権を認められない」とした貸主側の主張を退けた。

  原告は派遣社員の男性(37)。被告は不動産賃貸会社「木村産業」(大阪市北区)。

  判決によると、男性は昨年2月、賃料約4万3千円の賃貸住宅に入居。まもなく収入が減り、滞納した。同8月と10月に鍵を取り換えられ、計1カ月以上閉め出された。その間、同市西成区内の簡易宿所などを転々とした。判決は、貸主側について「業務の一環として日常的に不法行為を繰り返していた」と認定。「男性は不自由な生活を余儀なくされ、多大な精神的苦痛を受けた」と述べた。

  木村産業は「この件に関しては答えられない」としている。

 追い出し屋被害を巡っては、今年2月の福岡簡裁判決が、午前0時以降も家賃の督促を続けた家賃保証会社の違法性を認定している。

 

2009年5月22日 朝日新聞  

 

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【判例紹介】 更新料を支払う借地契約上の合意がない場合に更新料請求は認められない

2009年05月22日 | 更新料(借地)判例

 判例紹介

 更新料を支払う旨の借地契約上の合意がない場合に、地主からの更新料支払請求は認められないとされた事例

 【事例1・墨田区】
 東京地裁平成20年8月25日判決

 (事案の概要)
 ①AはBに昭和24年に土地を貸した。
 ②Aは死亡し、Cが相続。CとBは、昭和43年に借地契約を合意更新(1回目)。この際、更新料4万円が払われた。

 ③昭和63年に法定更新(2回目)。Bが平成5年死亡し、その子であるYが相続。地主Cが平成18年死亡、その子Xが相続。

 ④平成20年2月に法定更新(3回目)。XはYに対し最後の更新につき150万円(土地時価の5%)の更新料を請求して提訴した。

 ⑤賃貸借契約書には更新料に関する定めが一切なかった。

 (判旨)
 判決は、「宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人の賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商習慣ないし事実たる慣習が存在するとはいえない(最高裁第2小法廷昭和51年10月1日判決)」として、地主の更新料支払請求を棄却した。


 

 【事例2・豊島区】
 東京地裁平成20年8月29日判決

 (事案の概要)
 ①DはEに昭和21年に土地を貸した。

 ②DとEは昭和41年に合意更新(1回目)。

 ③さらにDとEは昭和61年に合意更新(2回目)。Dは昭和62年に死亡し子の甲相続。Eは平成16年死亡し配偶者の乙が相続。

 ④平成18年は法定更新(3回目)。甲は、更新料の合意または慣習を根拠に525万円の更新料(土地時価の7%)を請求して提訴して来た。

 ⑤昭和61年の合意更新時に作成した契約書には更新料の定めは一切なかったが、更新料と推定される220万円の支払がEからDになされている。

 (判旨)
 判決は、「次回の更新に際して更新料の支払が要件になるか否かは、貸主であるDにとっても、借主であるE側にとっても重要な事項であり、これが当事者間で合意されたのであれば、本件賃貸借契約書にその趣旨の条項が書き込まれてしかるべきところ、本件賃貸借契約書にはそのような条項が存在しない」として更新料支払の存在を否定し、慣習を根拠とした甲の請求に対しては「一定の基準に従って当然に更新料を支払う旨の慣習が存在するとまで認めることはできない」として、地主の更新料支払請求を棄却した。

 (寸評)
 【事例2・豊島区】は筆者が代理した組合員の事例である。地主は控訴したが、第1回以前に取下げ、請求棄却の1審判決が確定して解決した。

 借地契約書に更新料を支払う旨の条項がなく、更新料支払の合意が認められない場合に、借地契約が期間満了時に法定更新したときには、借地人には更新料の支払義務がなく、更新料を支払う事実たる慣習の存在は認められない(最高裁昭和51年10月1日判決)。この最高裁の判例は、【事例1・墨田区】の判決にも引用されているように、既に確定した解釈で、現在の下級審もこれに従っている事例として紹介する。


(2009.09) 

東京借地借家人新聞より 

(東借連常任弁護団)

 

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【Q&A】 普通借家契約から定期借家契約への切り替えを要求されたが

2009年05月21日 | 定期借家・定期借地契約

(問)私は、平成11年4月に住宅を借りて住んでいますが、当初から2年毎に契約書を書換えて更新してきました。今年3月に家主の代理人と称する不動産業者から、今回から契約は定期借家契約にするので、契約書の他に書面を持ってきて署名捺印を求めてきました。定期借家契約の意味がわかりませんので、どのように対応したらよいのか悩んでいます。


(答)平成11年12月15日に交付された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」によって借地借家法が「改正」され、平成12年3月から定期借家制度が施行されました。この制度は、契約で定めた契約期間が終了すると、「正当事由」がなくとも、借家契約が終了されることになります。従って、家主と借家人の双方で合意がなければ再契約はできなくなります。

 定期借家契約は、事業用借家居住用借家を問わず、当事者の合意によって結ぶことができます。
 しかし、平成12年3月1日以前に結ばれている居住用借家契約は、当事者間の合意があったとしても定期借家制度は適用しません。(※

 定期借家契約を締結する場合、賃貸借契約のほかに「定期借家制度が適用され更新の無い契約であることを説明した公正証書などの書面による説明」をして当事者間で合意しなければなりません。(※

 さらに、家主は、契約解約する場合は期間満了前の1年前から6ヶ月前の間に「賃貸借期間の終了」を借家人へ通知する義務があります。(※

 ご相談の方の事例は、居住用借家であり平成12年3月以前の賃貸借契約ですので、たとえ合意したとしても定期借家契約にはなりません。

 

全国借地借家人新聞より 

 



(※ 
(借地借家法の一部改正に伴う経過措置)
第3条 第5条(現行・借地借家法第38条)の規定の施行(平成12年3月1日)前にされた居住の用に供する建物の賃貸借の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第5条の規定による改正後の借地借家法第38条の規定は、適用しない。

(※) 
(定期建物賃貸借)
第38条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条(借家人に不利な特約は無効とする)の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項(期間1年未満の借家契約の禁止)の規定を適用しない。

2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
 
3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。(※

 

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既存の普通借家契約を法律で禁止されている定期借家契約へ切替え (京都・伏見区)

2009年05月20日 | 定期借家・定期借地契約

 京都市伏見の借家に40年前に契約して住んできた石田さんは、この度家主の不動産管理会社が変わったことから、「あらためて賃貸借契約書意を交わしたい」との申し入れがあり、石田さん宅に契約書が投函されました。

 その契約書なるものは、なんと「定期建物賃貸借契約書」でした。石田さんは40年前に契約しているので、定期借家契約への切換えは認められません。

 まして、事前に家主側の説明義務なしの違法なやり方です。石田さんは定期借家契約の押し付けに断固拒否して闘います。 

 

全国借地借家人新聞より 

 


(参考)
附 則 
(平成11年12月15日法律第153号) 抄

(施行期日)
第1条  この法律は、公布の日から施行する。ただし、第5条、次条及び附則第3条の規定は平成12年3月1日から施行する。

(借地借家法の一部改正に伴う経過措置)

第2条  第5条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新に関しては、なお従前の例による。
2  第5条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約であって同条の規定による改正前の借地借家法(以下「旧法」という。)第38条第1項の定めがあるものについての賃借権の設定又は賃借物の転貸の登記に関しては、なお従前の例による。

第3条  第5条(借地借家法第38条)の規定の施行(平成12年3月1日)前にされた居住の用に供する建物の賃貸借(旧法第38条第1項の規定による賃貸借を除く。)の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第5条の規定による改正後の借地借家法第38条の規定は、適用しない。

(検討)
第4条  国は、この法律の施行後4年を目途として、居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


 借地借家法第38条の定期建物賃貸借(定期借家契約)の規定は平成12年3月1日に施行された。

 この定期借家契約は平成12年3月1日以前に契約した居住用借家には「借地借家法の一部改正に伴う経過措置」(附則第3条)により適用されない。即ち、「経過措置附則第3条」により既存の居住用普通借家契約を解約して新たに定期借家契約へ切換えることは禁止されている。

 仮に当事者の合意で居住用普通借家契約を解約して新たに定期借家契約へ切換えたとしても、その契約は定期借家契約として認められず、普通借家契約として扱われる。

 なお、店舗・事務所・倉庫等の営業用借家は、平成12年3月1日以前に契約したものであっても、当事者の合意があれば、普通借家契約から定期借家契約への切換えは行える。

 <参考法令
 借地借家法
 (定期建物賃貸借)
第38条
 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。

2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

 参考記事
 定期借家契約とは

 既存の居住用借家契約から定期借家契約への切り換え

 既存の店舗借家契約から定期借家契約への切り換え

 

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保証会社が強圧的な取立て 家賃の支払い1日遅れても違約金 (東京・豊島区)

2009年05月19日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 豊島区内に住む斉藤さんは母子家庭である。4年前に、現在住んでいるマンションの入居時の連帯保証人に父親を立てていた。2年前の更新時に、仲介した不動産会社が今後、連帯保証人は家主が指定した保証会社でなければ受け付けないと言われ、やむを得ずA保証会社と保証委託契約を結んだ。

 その後、家賃の支払いが毎月27日迄に間に合わなくなると保証会社の担当者が押しかけ、一時間もドアを叩いたり、ベルを鳴らし続けることや携帯の電話にかけてくるなどの強圧的な取立て行為を行うようになった。

 本来、このマンションはオートロックでドアまでは入ってくることが出来ないにも関わらず、侵入してきたために、やむを得ず警察に通報するなどの対抗措置を取った。しかしながら、仲介の不動産会社と家主は、近隣に迷惑をかけたとの理由で明渡しを請求してきた。

 この保証会社は、一日でも家賃の支払いが遅れると保証契約を打ち切り、改めて更新し、違約金として1万円を支払うという特約をたてに、賃料以外に1万円を取っていた。

 その結果、昨年1年間で12万円を払わされていた。まさに、今問題になっているスマイルサービスと同様な手口で違法行為を行っていたのである。斉藤さんは弁護士との相談の中でこのような悪質な行為に法的措置も含めた対処をすることにした。

 

東京借地借家人新聞より

 

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家賃を1日でも滞納したら明渡すとの念書を盾に管理会社が明渡し請求 (大阪・松原市)

2009年05月18日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 大阪府松原市内の賃貸マンションに平成11年4月から入居している武田康夫さんは、入居まもなく病気となり月額10万5000円の家賃の支払いが滞り、昨年末で80万円を滞納していました。

 管理会社からは、家賃を支払わないのであれば、明け渡せと再三再四にわたり督促を受けていました。武田さんは、体調が回復し滞納していた家賃も3月に完納することができました。

 ところが管理会社は、武田さんへ家賃を完納したが「今後は1日でも滞納したら明け渡すこと」との念書に署名捺印を求めてきました。

 妻と高校に通う2人の息子の一家4人の住む場所がなくなるとの不安から、管理会社の言いなりに「念書」を提出し、その上に、「今後の家賃支払いは銀行から自動引落しで支払うこと」を条件に一応契約の継続が認められました。

 武田さんは、銀行で自動引落し手続きなどをしたことがなく、3月末に支払うことになっていた4月分の家賃を4月6日に支払いましたが、管理会社は「念書」を盾に明け渡しを要求してきました。

 途方に暮れた武田さんは、「全国追い出し屋対策会議」の結成総会が報道されたことが記憶にあり、大阪弁護士会へ問い合わせたところ、大借連を紹介され、大借連事務所に相談。管理会社へは「家賃は支払い済みで明け渡しに応じる必要はない」と回答したところ、管理会社からは「賃貸借契約解約申込書」が届けられ、この「申込書」への署名捺印を求められるとともに、自動振り込み契約書と銀行通帳の写しを求めてきました。

 武田さんは、大借連事務所と相談の結果、「申込書」の提出を拒否するとともに、自動振り込み契約書と銀行通帳の写しを送ることにしました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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 国交省が「追い出し屋」を法規制する方針

2009年05月16日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 賃貸住宅で連帯保証を請け負う不動産業者らが、家賃を滞納した借り主を強引に閉め出す「追い出し屋」被害が広がっている問題で、国土交通省は家賃保証業務を規制する方針を固めた。追い出し行為を行政処分できる法律の制定を軸に検討し、8月までに素案をまとめる。

 国民生活センターによると、家賃債務保証をめぐるトラブルの相談は全国で04年度の44件から、08年度には428件と急増。しかし、家賃保証業務は、宅地建物取引業法や借地借家法の対象外で、監督官庁がなかった。その結果、深夜早朝の督促や鍵交換、家財撤去など違法性の高い行為が事実上、野放し状態になっていた。

 このため、国交省は早急な対応が必要と判断。12日に開かれた社会資本整備審議会「民間賃貸住宅部会」で、(1)新法の整備(2)登録制の導入(3)ガイドラインの公表――の3通りの規制を検討することを明らかにした。

 新法の場合、家賃保証業務を許可制とし、違反業者を営業停止などにする行政処分や刑事罰の規定を入れる。

 国交省は「最も迅速な対応が可能なのは許可制」としている。早ければ7月末にも、3案それぞれの原案を盛り込んだ中間報告を作成。年末までに規制の中身を決める。

 

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ハウジングプア

2009年05月15日 | 住宅・不動産ニュース

毎日新聞 2009年5月11日 
ハウジングプア:/上 「追い出し屋」に閉め出され

 失業や病気で収入が途絶えたとたんに、安心して暮らせる場所を失う。そんな状況を呼ぶ言葉が生まれた。「ハウジングプア」。住まいをなくした人たちを追うと、さまざまな制度の不備が浮かぶ。

 ◇家賃滞納で鍵交換、荷物撤去…保証会社の不法野放し
 「あさってまでに家賃を払わなければ、18日に鍵を閉めます」。昨年11月15日、大阪市の男性(49)は契約していた家賃保証会社から電話で告げられた。10月末に大家に払う予定だった11月分の家賃・光熱費計6万円を滞納していた。

 予告された18日夜。帰宅すると玄関のドアに新しい鍵がつけられていた。「滞納した自分が悪い。でもこんなに早く閉め出されるなんて……」。1カ月ほどして戻ってみた。鍵が開いていたので中に入ると、置いていた家財道具や服、トイレットペーパーまで、すべてが消えていた。

 短期間の家賃滞納を理由に入居者を強制的に退去させる「追い出し屋」。当時の男性は、その言葉すら知らなかった。

     ◇      ◇
 男性は約20年前に統合失調症を発症し、家族と疎遠になった。障害で働けず、生活保護を受給。2年半前に携帯電話サイトで「敷金・礼金ゼロ」に引かれてこのアパートを見つけた。連帯保証人になってくれる親族はなく、不動産業者の求めで保証会社と契約した。

 月12万円の保護費から家賃や生活費を引くと、ぎりぎりの生活。1年がたつころから家賃の支払いが遅れ始めた。遅れた分も1カ月以内には払ったが、保証会社から違約金5000円を請求された。それを払うたびに翌月の支払いが遅れる繰り返しに陥ったという。

 部屋に戻れなくなった男性はカプセルホテルに身を寄せた。隣の人が寝返りを打つ音まで響く。精神的に不安定になり、薬の服用回数が増えていく。閉所恐怖症なので扉を開けて寝ていたら、財布を盗まれてしまった。

 住まいを失って気づいたことがある。以前は1人で部屋にいると気がめいるので、街を歩いたり公園で過ごすことが多かった。でもカプセルホテルでの暮らしは、どこにいても落ち着かない。「安心して外に出られたのも、帰る家があったからだったんだ」

 福祉事務所は「年内に新居を決めないと、生活保護を止める」という。そうなればカプセルホテルにもいられなくなる。大阪の弁護士や司法書士らで作る「賃貸住宅追い出し屋被害対策会議」を知って駆け込み、保証会社の行為が違法だと教えられた。

 「法律の知識もなく、業者の言われるがままになってしまった」。弁護士の協力で生活保護も続けられ、月4万2000円のアパートに入居できた。支出が減り、もう家賃を滞納することもない。今年1月、保証会社らを相手に、精神的慰謝料と撤去された荷物の賠償計140万円を求める民事裁判を大阪簡裁に起こした。保証会社側は取材に対し「係争中で、コメントは控える」としている。

新しいアパートで暮らす男性。住まいとともに心の安定も戻ってきた。

 


     ◇      ◇
 追い出し屋による被害は昨年秋に表面化した。国土交通省によると、全国の消費生活センターなどへの相談は06年度の29件から07年度には68件に急増している。鍵の無断交換や荷物の撤去を強行したり、深夜しつこく訪問する。消費者契約法の上限利率(延滞家賃に対し年14・6%)を超える違約金を請求する業者もある。

 

 本来、入居者には借地借家法で居住権が認められており、判例上、大家が家賃滞納を理由に退去を求めるには「信頼関係が破壊されるほどの滞納」が必要で、その期間は半年程度とされている。国交省も部屋への無断立ち入りや鍵の交換は「住居侵入罪や民法上の不法行為にあたる可能性がある」としている。

 

 追い出し行為を行う業者の多くは家賃保証会社や不動産管理会社だ。特に保証会社は家族関係が希薄になったこともあり、ここ数年で増加。民間賃貸契約で連帯保証人を立てられずに保証会社を利用した契約は07年度に25%を占める(日本賃貸住宅管理協会調べ)。ニーズの高まる業界だが、法的な規制はなく貸金業への規制強化で追い込まれたヤミ金融などが流れ込んでいるともみられる。

 

 さらに、公的な保証制度が機能していないことも温床となっている。財団法人「高齢者住宅財団」は01年度から高齢者や障害者への保証事業を実施しているが、07年度までの利用者数は高齢者が560人、障害者は3人どまり。大阪市の男性は「制度があることも知らなかった」という。

 

 今年2月に発足した「全国追い出し屋対策会議」は国に対し、保証会社への登録制度の導入と規制強化を要望。メンバーの徳武聡子司法書士は「急な出費で家賃を滞納せざるをえないほどの低所得者が増えているのに、国の支援策はあまりに不十分」と指摘する。

 

 ◇ハウジングプア
 働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」にちなみ、貧しさゆえに安定した住まいを持てない人々の現状を知ってもらおうと、生活困窮者らを支援するNPO「自立生活サポートセンター・もやい」代表の稲葉剛さん(39)が考えた。追い出し屋が絡む家に住む人や寮付き派遣の労働者など、家はあるが不安定▽ネットカフェやカプセルホテルなど、屋根はあるが家ではない▽路上生活--などの状態を指す。

 

 今年3月にはNPOなどが「住まいの貧困に取り組むネットワーク」を結成、あらゆる人への住居の保障を求めている。世話人でもある稲葉さんは「家は人が働き、暮らす基盤。収入が多くない人も家にかかる支出が少なければ、生活困窮に陥らずに済む」と、公的住宅の拡充などを訴える。

 



毎日新聞 2009年5月12日 
ハウジングプア:/中 「宿泊所」耐えかね路上へ

 


 ◇6畳間に2人、食費込み月10万円 NPOに救われ

 

 住まいの貧困(ハウジングプア)に陥るのは職のない男性ばかりではない。路上にはさまざまな事情で家族とのつながりを失った女性たちの姿もある。
 一昨年の秋。さいたま市出身の女性(60)は市内の交番近くのベンチで身を縮め、冷え込む夜を過ごしていた。「おばちゃん、風邪ひくなよ」。警官が優しい声をかけてくれる。路上生活を始めるのは怖かったが、ここなら襲われる心配もないだろうと思った。

 

 わが家と呼べる場所を失ったのは15年前のことだ。酒を飲んでは暴力を振るう夫から逃れるため、ボストンバッグ一つで家を出た。養護施設で育った女性に頼れる身内はない。サウナや健康ランドに寝泊まりし、所持金は半年で尽きた。

 

 事情を知った知人がアパートに同居させてくれた。パート勤めを始めたが、知人が突然病気で倒れ、月6万円の家賃が払えなくなった。知人の家族は「家を出ていけ」と言う。見かねた自治会長が福祉事務所に付き添ってくれたおかげで生活保護の受給が決まった。

 

 福祉事務所に紹介された住まいは低額料金で簡易住宅を提供する無料低額宿泊所だった。6畳一間に2人の生活。生活保護費は封筒のまま寮長に渡すように指示された。月12万円のうち、食費なども含め10万円近くを差し引かれる。食事の時間に少しでも遅れると食べさせてもらえない。寮長は高圧的で、不満を言える雰囲気ではなかった。

 

 耐えきれずに飛び出し、路上で夜を明かすしかなくなった。「知り合いにこんな姿を見られたら……」と人の目におびえながら、図書館などでただ時間をつぶす日々。親切な警官には「もう一度生活保護を受けては」とすすめられたが「またあんな所に入れられるなんて」と、気持ちは動かなかった。

 


    ◇      ◇
 「あそこに行けば大丈夫だよ」。野宿生活が2カ月目に入ったころ、路上で知り合った仲間から、さいたま市で生活困窮者をサポートしているNPO「ほっとポット」のことを教えてもらった。

 

 ほっとポットは県内20カ所の民間集合住宅を借り上げ、すぐアパートに入居できない人たちに敷金・礼金なしの安い家賃で貸し、生活支援も行っている。代表の藤田孝典さん(26)は言う。「好きで路上生活をしている人なんていません。いったん家を失うと、住所がないことも障害になり、次の住居を探すこともできないのが現実なのです」

 

 会では年間約500人から相談を受けているが、そのうち8割は住む場所を失った人や、家賃の滞納などで失う直前の人たちという。生活が困窮し、行政に保証人や敷金・礼金などの初期費用がないことを相談しても「自分で探してください」と言われ、ここにたどり着く人も多いという。

 

 ほっとポットでは支援付きアパートの紹介だけでなく、市内の不動産業者の協力を得て、一般の民間賃貸住宅探しのサポートもしている。保証人がない人の賃貸契約の際には緊急連絡先になり、入居後も生活支援を続ける。協力している不動産業者は「生活困窮者は何かあった時に連絡できる身寄りがない人が多く、大家から敬遠される。ほっとポットのようなサポートなしに部屋を見つけるのは難しいだろう」と話す。

 


    ◇     ◇
 女性はほっとポットの支援付きアパートに入居して、また生活保護を受けることができた。8畳一間の1人暮らしで、家賃は月4万5000円。風呂とトイレは共同だが「普通の暮らしができるようになっただけでも、ありがたい」。初めは黙りこんで下を向いてばかりだったが、少しずつ持ち前の笑顔が戻り、今はスタッフと冗談を飛ばし合う。

 

 昨年秋の不況以降、支援付きアパートへの入居希望者は増え、待機者もなくならない。今年になって女性はチラシ広告の折り込みのアルバイトを始めた。路上生活で痛めた腰はまだ治らないが、自立への思いは強まる。

 

 「困っている仲間たちのために、少しでも早く部屋を空けてあげたい。働けるだけ働かなきゃ」

 


 ◇全国で約1万3000人が入居
 無料低額宿泊所は路上生活者など生活が困窮している人に、無料または低額な料金で住居を貸し付ける民間宿泊所。社会福祉法が定める社会福祉事業で、厚生労働省によると、08年6月時点で全国415カ所に1万2940人が入居している。厚労省と国土交通省による「ホームレスの自立支援等に関する基本方針」では、住居が緊急に必要な人に活用するとされており、路上生活者が生活保護を受給した際、福祉事務所に紹介されることが多い。

 

 だが、入居者への人権侵害が問題視される宿泊所も現れている。今年1月には埼玉県内の宿泊所が入居者の預金通帳などから無断で利用料を天引きしていたことが分かった。藤田代表はこうした民間宿泊所について「地域社会から切り離された生活になり、社会生活に復帰したとは言い難い」と指摘。「国は路上生活者の自立支援を進めているが、再び路上に戻らないためにも、まずは安心できる住まいを確保することから始め、就労支援などのステップに進むべきだ」と提言する。

 



毎日新聞 2009年5月13日 
ハウジングプア:/下 公的住宅「空室あるのに」

 

  半数近くが空き部屋になり、布団を干しているベランダもまばら=東京都足立区の花畑団地で今年5月

 

◇建て替えへ新規入居中止 支援団体「失職者に開放を」
 東京駅から電車とバスを乗り継いで1時間足らず。約19ヘクタールの土地に80棟が建つ花畑(はなはた)団地(東京都足立区)が見えてくる。ベージュ色の壁は所々塗装がはがれ、天気のいい週末も、ベランダに洗濯物を干す部屋はまばらだ。

 

 2725戸のうち現在、約1000戸が空き部屋。所有・管理する独立行政法人・都市再生機構(UR)が約半数の棟を建て直す計画を打ち出し、98年から新規入居を中止しているからだ。対象でない棟の空き部屋は、工事で一時部屋を失う住民の仮住まいに使うという。完成後の戸数は現在の5~6割程度に減る見通しで、土地の一部は民間売却も検討されている。

 

 花畑団地ができたのは1963年だ。入居者の多くは働き盛りの親と子どもたちで、安い家賃は国の経済成長や子育てを支えてきた。当時4歳で越してきた女性(49)は「ここに来るまでは、一家4人で4畳一間、共同トイレの長屋住まい。2DKの広さに感動しました」と懐かしむ。

 

 周辺のインフラが不十分だったため、住民たちは力を合わせ、路線バス開通や保育園の設置に奔走した。バスは毎朝、背広姿のお父さんたちを詰め込み駅へと走った。それも今では通院する高齢者の姿ばかり目立つ。入居世帯の54%は世帯主が65歳以上。新規入居が途絶えたこの10年で、高齢化は一気に進んだ。保育園は取り壊される予定だ。

 

 「私たちにはこの団地を作り上げてきた思いがある。こんな寂しい場所になってしまうなんて」。同じく建設当時から暮らす女性(75)が薄暗い窓の並ぶ棟を見上げた。「もっと若い人の姿を見たい」

 


   ◇      ◇
 「ここに住み、ちゃんとした仕事に就ける環境ができると助かるのに」。今年2月、市民団体が企画した花畑団地の見学ツアーで、参加した40代男性がこぼした。男性はインターネットカフェに寝泊まりし、日雇い派遣で生活していた。

 

 ネットカフェの宿泊には1カ月当たり5万~6万円はかかるとされる。しかも住所がないため、就職活動の大きなハードルになってしまう。花畑団地には単身者向きの1DKの部屋もあり、最も安い家賃は月2万9600円だ。

 

 URが戸数削減を予定しているのは花畑団地だけではない。現在の77万戸のうち18年までに5万戸を削減し、長期的には40年間で7割程度にまで減らす計画だ。担当者は「人口減少の見通しに沿った数字。需要も減るため、現状の戸数では供給過剰になる恐れがある」と説明する。

 

 理由はそれだけではない。政府が「行政改革」の名の下で進める独立行政法人のスリム化。07年12月に閣議決定された整理合理化計画で、URに「リニューアル、規模縮小、売却などの方向性を明確にした再編を計画し、規模の適正化に努める」よう求めている。

 

 見学ツアーを企画した「住まいの貧困に取り組むネットワーク」はURに対し「空き部屋を派遣切りなどで住まいを失った若者らに開放すべきだ」と、計画の見直しを要望している。

 

 政策の貧しさがうむハウジングプア(住まいの貧困)という現実。不況や雇用不安が広がるなか、住まいのセーフティーネットに求められる役割は高まる。

 


 ◇自治体財政難…公営住宅も削減傾向
 自治体の公営住宅も財政難などで全国的に削減傾向にある。05年の219万戸から、2年間で1万戸減。応募倍率(07年度)は全国平均で8・7倍で、最も高い東京都は28・3倍に上る。URは民営化を視野に入れた見直しが進められている。

 

 戦後日本は住宅ローンによる持ち家政策に力を入れ、住宅総数に占める公的住宅の割合は7%と、イギリス(20%)やフランス(17%)に比べはるかに低い。両国には家賃補助制度もあり、全世帯の約2割が受給している。「居住福祉」(岩波新書)の著者で神戸大の早川和男名誉教授は「住まいの保障は本来、医療や教育と同様に政府が社会政策として取り組むべき課題。日本は民間に委ねすぎてきた」と指摘する。

 

 

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2008(平成20)年度 宅地建物取引主任者資格試験 (借地借家法関係) 4

2009年05月15日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

問14 借地借家法第38条の定期建物賃貸借 (以下この問において 「定期建物賃貸借」 という。) に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。


1 賃貸人は、建物を一定の期間自己の生活の本拠として使用することが困難であり、かつ、その期間経過後はその本拠として使用することになることが明らかな場合に限って、定期建物賃貸借契約を締結することができる。

2 公正証書によって定期建物賃貸借契約を締結するときは、賃貸人は、賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了することについて、あらかじめ、その旨を記載した書面を交付して説明する必要はない。

3 期間が1年以上の定期建物賃貸借契約においては、賃貸人は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に賃借人に対し期間満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、当該期間満了による終了を賃借人に対抗することができない。

4 居住の用に供する建物に係る定期建物賃貸借契約においては、転勤、療養その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、床面積の規模にかかわりなく、賃借人は同契約の有効な解約の申入れをすることができる。


1 【正解×
定期建物賃貸借締結について、賃貸人・賃借人の事情に関する要件はない。 

 公正証書等によって契約をする場合に限り〔要するに契約は書面で行うということで、公正証書でなくてもよい。口約束では駄目というこ。〕、契約の更新がない旨を定めること〔定期建物賃貸借の締結〕ができる(借地借家法38条1項)。 

期間を一年未満とする建物の賃貸借
 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、以下のように扱いが異なる。

  一時使用目的の建物の賃貸借
  借地借家法第三章借家の規定は、適用されないので民法の規定通り。

 従来型の建物の賃貸借(定期建物賃貸借ではない場合)
  普通借家契約で、期間を1年未満と定めると期間の定めのない賃貸借とみなされる(借地借家法29条1項)。

 定期建物賃貸借 
 定期建物賃貸借では、期間を一年未満とすることができる(日単位、週単位、月単位でも、期間設定可能)。期間の定めのない賃貸借とみなされることはない。


2 【正解×
契約締結前の「書面を交付しての説明」

 定期建物賃貸借契約を締結しようとするときには、賃貸人は,契約を締結する前に賃借人になろうとする者に対して、「契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了すること」について、その旨を記載した書面を交付して説明することが義務付けられている(借地借家法38条2項)。

 この「書面を交付しての説明」をしないで定期建物賃貸借契約を締結した場合は、契約の更新がないこととする定め〔定期建物賃貸借の契約〕は無効になり、普通借家契約を締結したことになります(借地借家法38条3項)。⇒ 借家契約のすべてが無効になるのではなく、「更新の定めがない」ことのみが無効になる。

▼この説明は、賃貸人がしなければならない。したがって、定期建物賃貸借の賃貸人から媒介を依頼された宅建業者が重要事項説明の一つとして説明しても、賃貸人がこの説明義務を果たしたことにはならない〔媒介の宅建業者の重要事項説明に代えることはできない〕。

参考法令
  定期建物賃貸借をしようとするときは、「建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」(借地借家法38条2項)
 
 「建物の賃貸人が前項(借地借家法38条2項)の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。」(借地借家法38条3項)


3 【正解
期間満了により賃貸借が終了する旨の通知

 定期建物賃貸借〔期間が1年以上の場合に限る〕の賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して、期間満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、期間満了による終了を賃借人に対抗することができない(借地借家法38条4項)。

定期建物賃貸借の契約期間による違い
 期間満了による賃貸借終了の通知
 期間が1年未満の場合は 、終了通知をする特別な規定はない。
 期間が1年以上の場合は 、通知をしなければ、期間満了による終了を賃借人に対抗できない。


▼賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対し、その旨の通知をした場合は、その通知の日から6か月を経過することにより、定期建物賃貸借契約は終了する(借地借家法38条4項)。

 なお、終了通知は期間満了前にしなければならない。何故ならば、38条4項本文には終了通知は「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」となっており、「但書」の「その旨の通知」が「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」を指すのは明らかである。従って、期間満了前までに終了通知をすることは、法の趣旨からも当然である。

 <参考記事
  契約期間満了後に定期借家契約の終了通知が届いた場合はどうなるのか


4 【正解×
法定中途解約権〔床面積200平方メートル未満の居住用建物の定期借家〕

 定期建物賃貸借の解約を申し入れることができるのは、「居住用建物のうち、床面積200平方メートル未満のもの」の賃借人に限られるので4は間違い。

 転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1か月を経過することによって終了する(借地借家法38条5項)。

 

東京・台東借地借家人組合

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