東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 備え付けのガス給湯器が故障したが家主が修理をしないときの対処法は

2006年05月31日 | 修理・改修(借家)

  マンション備付けのガス給湯器が故障
          家主が修繕を拒否した場合の対策

 (問) 私は2DKのマンションを借りている。マンションに入居時から備え付けのガス給湯器が故障した。家主に何度も修理の依頼をしたが、黙殺された。家主に修理をさせ、その費用を支払わせる方法はないものか。


 (答) 民法606条は賃貸人の修繕義務を定めている。即ち「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要なる修繕をする義務を負う」と規定されている。賃貸物の保存のための修繕義務は家主にあることが明確に規定されている。

 家主がこの法律の規定する義務を免れるためには、予め契約で「ガス給湯器の修繕は借家人の負担とする」との特約(特約とは法律の定めに反する約定)を結ぶ必要がある。

 しかし特約が認められるには「賃貸借契約書の条項に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」(最高裁2005年12月16日判決)と特約の成立に厳しい制限加えている。特約があるからといって無条件で認められる訳ではない。相談者の場合は修繕特約がないので修繕義務は家主にある。

 ①民法615条で賃借物に修繕が必要な場合は賃借人が遅滞なく賃貸人にその旨を通知する義務があると「賃借人の通知義務」を規定している。

 ②同じく民法608条では「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」と「賃借人による費用の償還請求」が規定されている。

 従って、これらに基づいて以下、家主の費用負担で修繕をさせる方法である。

 先ず配達証明付内容証明郵便で家主に対して修繕請求をする。以下がその内容である。
 「ガス給湯器が故障し、現在使用不能です(註)。業者の修理見積では*万円ということです(なお、修理不能の場合は新品と交換になる。その場合は交換工事費込みで*万円です(註2))。本書到達後10日以内に修理して下さい。もし期日までに修理して戴けない場合は、当方が業者に依頼して修理します。立替払いした修理費用は後日請求しますのでお支払い下さい。万一お支払いがない場合は、月々の家賃と修理費用を相殺することをご承知措き下さい」という趣旨のものである。

 この通知を出しても、家主が修理を履行しない場合は、その内容の通りに実行する。修理費用が月額家賃分以上になる場合は、数回に分割して立替払いした修理費用を全額回収する。

 ここで、内容証明郵便を出す段取りを省略して、修繕費を家賃から差し引くと家賃の一部不払いとして契約解除の原因にされる恐れがあるので注意が必要だ。

 借家の修繕問題の解決法には別の方法もある。それは、家主は完全な物を貸す義務があるから、ガス給湯器の故障という不完全な度合いに応じて家賃を減額して支払う。ガス給湯器が直った時点で家賃を元に戻す方法である。しかし、これではいつ家主が修繕するか分からず、前者の方が現実的である。


 (註1) 後日、家主から言い掛かりや難癖をつけられないように故障しているガス給湯器の状態を写真撮影して置く。また部品交換など修理の状況、或いは、商品の交換工事の状況を写真に撮って置くと家主とのトラブルを回避できる。

 (註2) ①家主との代金トラブルを回避するためにも修理業者は出来る限り製造メーカーのサービス・ステーションに依頼する。

      ②見積費が発生した場合は勿論のことで修理代金と一緒に費用回収する。写真代、配達証明付内容証明郵便代金等修理修繕に関係したすべての代金は総て回収する。

      ③ガス給湯器が故障して、入浴できずに銭湯を使用した場合は、その代金を請求する。近くに銭湯がなく交通費を使って通った場合はその交通費も請求できる。

 

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【判例紹介】 抵当不動産の賃借人が転貸して得る転貸賃料に差押が認められた事例

2006年05月30日 | 譲渡・転貸借

 判例紹介

 抵当権が設定されている建物の賃借人がこの賃借建物を転貸していた場合において、賃借人(転貸人)が転借人に対して有する転貸料について、抵当権者がなした抵当権に基づく物上代位による債権差押命令の申立が認められた事例 東京高裁平成11年4月19日判決。判例時報1691号74頁)

(事案の概要)
 XはA所有の建物(以下本件建物という)に根抵当権を設定したが、その後、YがAから本件建物を賃借し、Yはさらに本件建物をBに転貸した。Xは、YがBに対して有する転貸料の支払請求権(転貸料債権)について根抵当権に基づく物上代位による債権差押命令を申立て、この申立が認められた。そこで、Yは、この債権差押命令に対して不服申立(執行抗告)をし、根抵当権に基づく物上代位は抵当不動産の賃借人が有する転貸料債権には及ばないと主張して争った。

(判決の要旨)
 本判決は、「抵当権者(本件ではXのこと)は、抵当権設定者(本件ではAのこと)が目的物を第三者(本件ではYのこと)に賃貸することによって賃料債権を取得した場合には、民法304条を準用する同法372条により、上記賃料債権について抵当権を行使することができる(最高裁判所平成元年10月27日判決)ところ、民法304条1項の「債務者」には、抵当不動産の所有者(A)及び第三取得者のほか、抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者(Y)も含まれ、したがって、抵当権設定後の賃借人(Y)が目的不動産を転貸した場合には、その転貸料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権が及ぶと解するのが相当である」とした上で、本件については、「抗告人(Y)は、本件建物に根抵当権が設定された後、本件建物の所有者であるAから賃借したものであるから、これを転貸したことにより取得する転貸料債権には、根抵当権に基づく物上代位権が及ぶというべきである」として、Yがした本件抗告を棄却した。

(説明)
 バブル経済の崩壊に伴う不動産価格の暴落により抵当不動産の換価では債権の回収が不可能になったため、債権回収のための抵当権者による抵当不動産の賃料の差押が増加している。本件判決でも摘示しているように、最高裁判所は平成元年10月27日判決で抵当権に基づく抵当不動産の賃料の差押ができることを認めた。 

 問題は、本件のように抵当不動産の賃借人がこれを転貸して得ている転貸賃料についても差押ができるかであるが、これについては非定説・肯定説・限定肯定説と学説・裁判例が区々に別れている。

 裁判例は限定肯定説を取っているが、執行実務としては、東京地裁では本件判決同様、原則として賃貸借が抵当権設定後である場合に限定して肯定し、大阪地裁では所有者と賃借人が実質的に同一と認められる場合等に限定して肯定するなど裁判所によって区々の扱いがなされているようである。いずれにせよ、賃料の差押命令が裁判所から送達されてきた場合には、借地借家人組合や弁護士など専門家に相談して対処するのが無難である。

(2000.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 貸共同住宅で隣人に嫌がらせを繰返し賃貸借の信頼関係破壊とした例

2006年05月29日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 共同住宅の一室の賃借人が共同生活上の秩序を乱し近隣の迷惑となる行為をしたとして契約解除が認められた事例 東京地裁平成10年5月12日判決判例時報1664号)

(事案の概要)
 、Yら2名(50代と40代の男女)は平成7年7月、Xから鉄筋コンクリート5階建てのマンションの506号室を賃借して入居した。

 、Yらは入居直後から隣室505号室の住人に対し、同室から発生する音がうるさいなどと執拗に抗議を続け、夜中に両室の間の壁を叩くなどし、また、505号室入口の扉を強く足で蹴飛ばしたりした。一方、505号室の住人は平成4年に入居した幼児1人のある夫婦共働きの家庭であり、Yらが入居するまでは両隣りから音がうるさいなどと苦情をいわれたことはなく、Yら入居後も従前同様、夜9時には子供を寝かせ、朝、家族全員が起きて出掛けるという生活を送り、夜中に騒音を発したことは全くなかった。しかし、505号の住人はYらから執拗な抗議を受け、夜、壁を叩くなどの嫌がらせを受けたためYらと深く対立することになり、平成8年5月退去した。505号室は以後空室のままである。

 、Yらは隣室の507号室の住人(公務員の独身女性)に対しても同じように音がうるさいなどと何回も怒鳴ったり壁を叩くなどした。この住人も恐怖感を募らせ平成7年11月に退去した。

 、Yらは平成8年1月に507号室に入居した夫婦に対しても音がうるさいなどと大声で怒鳴ったりした。右夫婦はXの取り計らいで402号室へ移転した。

 5、Xは505、507号室の入居者の募集を仲介業者に依頼したが、506号室のYらの言動が噂になって斡旋を受けられず、今もって空室のままである。

(判決要旨)
 Yらは、隣室から発生する騒音は社会生活上の受忍限度を超える程度のものではなかったのであるから、共同生活における日常生活上通常発生する騒音としてこれを受容すべきであったにもかかわらず、これら住人に対し、何回も執拗に音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続け、結局これら住人をして隣室からの退去を余儀なくさせるに至ったものであり、Yらの右各行為は、本件契約の特約において禁止されている近隣の迷惑となる行為に該当し、また、解除事由とされている共同生活上の秩序を乱す行為に該当する。そして、両隣りの部屋が長期間空室状態でXが多額の損害を被っていることなどの前記事実関係によれば、Yらの各行為は賃貸借における信頼関係を破壊する行為に当たる。

(雑感)
 実はYらは本件の訴えを起こされて北区借地借家人組合に相談に来た。しかし組合はYらの主張の正当性にいま一つ自信が持てなかったので前の事件の弁護士に依頼するようすすめた。判決の認定事実の下においては結論は当然であろう。

(1999.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 *貸ビルの譲渡で新旧家主間で合意しても借主の敷金返還を保護した事例

2006年05月26日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

判例紹介

 自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物を第三者に譲渡して所有権を移転した場合に、新旧所有者間において、従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をしたとしても、これをもって賃借人に主張できないとされた事例 最高裁平成11年3月25日判決 判例時報1674号61頁)

(事実)
 Aは本件ビルを建築したが、すぐに本件ビルをBに売却した上、本件ビルを賃借した。その後、賃借人Xは、Aから本件ビルの6階から8階を賃借し、敷金3383万1000円を差し入れた。

 Aは、その後、Bから本件ビルを買い戻しさらにCに譲渡した。
 そして、CはYに信託譲渡した。

 右A―C、C―Y間の契約に際し、本件賃貸借契約における賃貸人の地位をAに留保する旨の合意がなされた。 ところが、その後、Aに破産宣告がなされた。

 賃借人Xは、右A―C、C―Y間の契約及び本件賃貸借契約における賃貸人の地位をAに留保する旨の合意がなされたことを知らないまま、Aに対して賃料を支払ったが、この間、A以外の者がXに対して賃貸人としての権利を主張したことはなかった。

 賃借人Xは本件賃貸借契約における賃貸人の地位がYに移転したと主張したが、Yはこれを争った。 賃借人Xは本件賃借部分から退去した上、Yに対して敷金の返還を請求した。

 これに対し、Yは①、Aから敷金の交付を受けていない。②、債務は信託の対象とならないからYは本件敷金返還債務を承継しないと主張した。

(争点)
 本件ビルの信託譲渡を受けたYは賃貸人たる地位を承継し、本件敷金返還債務を負担するか。

(判決要旨)
 最高裁判所は、『自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物を第三者に譲渡して所有権を移転した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って当然に右第三者に移転し、賃借人から交付されていた敷金に関する権利義務関係も右第三者に承継されると解すべきであり、右の場合に新旧所有者間において、従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をしたとしても、これをもって直ちに前記特段の事情があるものということはできない。』と判示した。

(短評)
 本件は不動産小口商品として売り出された物を、多数の者が共同で買い受け、これを信託銀行に信託譲渡した事案であるが、その際、新旧所有者間において前記合意をしたとしてもこれをもって賃借人に主張することができないとして、賃借人の敷金返還を保護したものである
 今後とも、賃借人は、いつ、賃貸人の破産や所有権の移転によって、損害を蒙るかもしれないので、注意を要するところである。

(1999.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 最高裁平成11年3月25日判決 

 

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【判例紹介】 電気料金の不当利得返還請求を借主に認める判決

2006年05月23日 | 借家の諸問題

 判例紹介

 ビルの賃貸借契約において、賃借人から賃貸人に対し電気料金の不当利得返還請求が認められた事例 東京地裁平成14年8月26日判決、判例タイムズ1119号181頁以下)

 (事案)
 XはYから賃貸用ビルの7階を事務所として賃借していた。YがXから電気料として本来受領し得る金額よりも多額の金額を受領していたとして、Xが差額金の返還(110万4932円)を求めた。

 (判旨)
 
「本件事務所の賃借人であるXは、本件事務所内で使用した電気料の負担をすればよく、本件ビルの管理に要したあるいは要する費用、共益費については支払義務はないという条件で本件賃貸借契約を締結したと認められるのが相当である。そうだとすると、共用部分についてのX負担金等は通常管理費に含まれるものとして、これらを電気料金に含めて請求するYの主張は、その余の点を判断するまでもなく理由がないというべきである。なぜなら、これらの管理費に含まれるものは、本件賃貸借契約においてはYが負担するとの合意がされているからである」

(寸評)
不当利得返還は当然であ。共益費の名目で余分な費用を取る悪徳な賃貸人が多いのが現実であり、参考になる事例であろう。

(2003.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

              こちらの「判例紹介」で扱った判決と同一のものです。

 

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【判例紹介】 *賃貸建物通常使用の損耗で原状回復義務特約が成立しないとされた事例

2006年05月19日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介

 最高裁判例―賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例 最高裁2005年12月16日判決 裁判所時報1402号6頁、最高裁ホームページ)

 (事案の概要)
 賃貸人Yは地方住宅供給公社である。賃借人Xは平成10年2月にY住宅の1戸に入居し敷金35万3700円を差し入れた。Xは平成13年4月契約を解約して住宅を明渡したところ、Yは敷金から住宅の補修費用として通常の使用に伴う損耗についての補修費用を含む30万2547円(未返還分)を差し引き残額5万1153円のみを返還した。XはYに対し通常損耗は敷引きできないとして敷金の未返還分全部と遅延損害金の支払を求め本件訴えを提起した。Yは契約書に退去時の補修約定があり別表の補修負担区分表で通常の損耗も賃借人が補修するとの特約があるから敷引は有効であると争った。原審(大阪高裁)は、Yが主張した通常損耗の賃借人負担特約の効力を認めXの返還請求を棄却。Xが上告受理申立した。最高裁は逆転して特約の効力を否定し、大阪高裁判決を破棄し差戻した。

 (判決)
 「賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定され、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」とし、Yの契約書の通常損耗を含むとする補修特約について「通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず、したがって、本件契約書には、通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない」し、口頭での説明もないから、同特約の効力はない、とした。

 (寸評)
 最高裁は通常損耗は賃料に含ませて回収すべきものであって、敷金から差し引くことは原則としてできない旨を明示した。賃借人が負担すべき範囲を明確に限定した画期的で正当な判決であり、最高裁判決であるだけにその価値は非常に大きい。

(2006.05.)

(東借連常任弁護団)

 東京借地借家人新聞より

 

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地主が更新料の請求を断念 (東京・豊島区)

2006年05月17日 | 更新料(借地)

 豊島区要町に33.5坪の土地を借地している加藤さんは、昨年末で借地契約期間の20年が満了し、更新を迎えた。10月頃に地主の代理人である弁護士から「近隣の相場である136万円を支払うよう」請求された。

 加藤さんは、組合と相談し「更新料の法的根拠、金額の根拠」を示すよう回答した。法的根拠を示すことの出来ない弁護士は「前回、更新料を支払った。これは更新料支払いの同意と同じである」と主張した。

  これに対して、加藤さんは「前回の支払いは建替え承諾料で更新料ではない。又、前回支払っても、今回も同意したとはみなされないという裁判の判例もある」と回答した。

  相手側の弁護士は、返事が出来なくなり、この4月に「更新料の請求を断念した。新しい契約書を作成したいので検討してください」という文書を送ってきた。

 加藤さん「組合と相談したおかげで、100%満足の回答です。でも、新しい契約がどのようなものか組合と引き続き相談していきます」と語った。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 *賃料減額しない旨の特約があっても借主の減額請求権が認められた事例

2006年05月16日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介

  建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、賃料を減額しない旨の特約があっても、賃借人から借地借家法第11条の規定に基づく賃料減額請求権の行使が認められた事例 最高裁平成16年6月29日判決、判例時報1868号52頁)

(事案の概要)
 本件土地賃貸借契約は、「3年ごとに賃料の改定を行うものとし、改定後の賃料は従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ、公租公課の増減額を加除した額とするが、消費者物価指数が下降しても賃料を減額することはない」旨の特約が付されていた。

 これまで、本件土地の賃料は、本件特約に従って3年ごとに改定されてきたが、賃借人は、「その後土地の価格が4分の1程度に下落したことなどに照らして現在の賃料額は高すぎる」と主張して、賃貸人に対して賃料の減額を請求し、減額後の賃料額の確認を求めて本件訴訟を提起した。

 これに対し、原審の大阪高等裁判所は、「本件のような賃料の改定をめぐって当事者に生じがちな紛争を事前に回避するために、改定の時期、賃料額の決定方法を定めておくものであり、本件特約は、消費者物価指数という客観的な数値であって賃料に影響を与えやすい要素を決定基準とするものであるから有効である。したがって、本件特約に基づかない賃借人らの賃料減額請求の意思表示の効力を認めることはできない」として賃借人の請求を棄却した。

 そこで、賃借人は、原判決を不服として、最高裁に上告受理の申立てを行った。

(判決)
 最高裁は、上告受理の申立を受理し、「本件土地賃貸借契約においては、消費者物価指数が下降したとしても賃料を減額しない旨の特約が存する。しかし、借地借家法第11条1項の規定は、強行規定であって、本件特約によってその適用を排除することができないものである。したがって、賃貸借契約の当事者は、本件特約が存することにより借地借家法第11条1項の規定に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものでないと解すべきものである。」と判示した。

(短評)
 本件は、賃料改定特約がある場合に、特約に基づく請求ではなく(本件では「減額することはないとの定め」があるためその余地はないが)、借地借家法第11条1項の規定に基づく賃料減額請求ができるかが争われた事案であるが、特約によっても減額請求を制限することはできないとのこれまでの最高裁判例を確認したものである。

 本判決は、賃料の減額をしない特約が明らかに存する場合においても、賃借人からの賃料減額請求が認められた点において事例的な意義がある。

(2004.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 借地借家法
 (地代等増減請求権
第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 強行規定
第16条 第10条、第13条及び第14条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

 最高裁判決は、「借地借家法第11条1項の規定は、強行規定」としているが、借地借家法16条の強行規定のなかに11条は含まれていない。しかし、旧借地法では賃料増減請求権条項は強行規定と解されて、借地借家法でも強行規定と解されている。               

 

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【判例紹介】 かつて更新料を支払った事実があっても更新料の合意とは認められない

2006年05月13日 | 更新料(借地)判例

 判例紹介

 借地の更新料について支払いの慣習があるとは認められないとした事例東京地裁平成16年5月21日民事37部判決。未掲載)

 (事実)
 Xは土地の賃貸人であるところ、平成12年12月末日に契約期間が満了したため借地人Yにたいし更新料700万円を請求した。Yは更新料支払いのため交渉には応じたが、結果は合意に至らなかった。

 そこで、XはYが前回の更新時に更新料として331万2500円を支払った際にも次の更新時にも更新料を支払うとの合意がなさねたと主張。また、仮に合意がなかったとしても目黒区中央町およびその隣接地域には、土地賃貸契約の更新に際し、更新料を支払う慣習が存在すると主張した。

 判決は、更新料を支払う旨の合意については、Yがかつて更新料を支払った事実があるというだけで更新料支払の合意があったことの根拠とすることはできない、としてXの主張を認めなかった。そして、更新料の支払いの慣習があるとするXの主張も認めず、Xの請求を棄却した事案。

 (判旨)
 「証拠によれば、本件土地の存在する東京都目黒区中央町及びその隣接地においては、土地賃貸契約の更新に際に、借地人から地主に対し、更新料が支払われる事例が多数存在することが認められる。しかい、このような更新料の支払は、当事者間の合意が成立した結果である場合が多いと認められる上、その支払の趣旨は、契約を円滑に進めるための代償であったり、賃料の補充を目的とするものであったりと多様であると認められるから、たとえ本件土地近辺において、土地の借主が地主に更新料を支払うことが多数見られるからといって、それをもって同地域に更新料支払の慣習があると認めることはできない

 (寸評)
  本件は東京借地借家人組合連合会(東借連)の会員の事件。判決の結論は当然であるが、繰返し訴訟が提起される更新料の支払請求について、更新料の性格に言及して支払の慣習を否定したものであり理論的な説得力のある判決の1つとして紹介した。

(2005.04.)

(東借連常任弁護団)

 東京借地借家人新聞より

 

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敷金を取り戻す (東京・練馬区)

2006年05月11日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

              敷金でも嫌がらせ

 練馬区練馬でスナックを経営していた鈴木さんは、昨年4月に店舗を明渡した。店を借りた当初から家主の嫌がらせがあり、そんな家主なので敷金も返還されないという不安があった。案の定、敷金返還を拒否してきた。

 鈴木さんは組合に相談し、文書で敷金返還の支払督促の申立書を簡易裁判所に提出した。だが、家主は支払督促に異議の申立をし、通常裁判に移行した。

 家主の回答書は①更新料2回分、②敷金の償却分、③未払い家賃3ヶ月分、以上の合計が家賃の7ヶ月になり、それらの債務は敷金と相殺され残金はなにもないと主張してきた。

 借主の主張は「①更新料については法定更新されているので1回分は認める。②家賃の未払いは認めるが、共益費の3ヶ月分は認めない。③敷金の償却は契約書に記載されていないので認めない」というもので、この趣旨で準備書面を作成し裁判所に提出した。

 裁判所でも家主は敷金の返還を拒否したが、最終的には借主の主張通りの結果で和解は成立した。鈴木さんは「組合のお蔭で敷金を取り戻すことが出来ました」と語った。

東京借地借家人新聞より

 

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クリーニング費用を除いた残りの敷金が戻る (千葉・市川市)

2006年05月06日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

  敷金からクリーニング費用は
           差引かれたが残り全額が戻る

   都築さんは千葉県市川市で9年前からマンションを借りていた。結婚のため引越しをすることになり、昨年の11月3日に管理を委託されている業者の立会いの下で退去の手続が無事に完了した。

  ところが、管理業者から原状回復費として30万3134円の請求が突然一方的に送られて来た。都築さんは敷金を18万5000円預託しているから約12万円の追加請求である。部屋を故意・過失で汚したり、傷つけたという所が全く無いと考えていたので、この請求には驚いている。

 友人の紹介で江東借地借家人組合に加入し、管理業者と直接交渉を開始した。先ず国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を示し、「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損の復旧費用がなければ、敷金は全額返還が原則である。従って、内装費用まで負担することは認められない」と請求の誤りと不当性を正すと、管理業者は回答不能状態に陥った。全く根拠の無い請求だったことが明らかになた。

  すると、後日業者は今までの請求を全面的に撤回し、室内クリーニング費用3万円を提示して来た。都築さんは、余りにも根拠の無い業者の請求に不満ではあったが、応諾の通知をした。ところが通知を受ける前に管理業者は、既に銀行口座に室内クリーニング費用3万円を勝手に差引いた金額で振り込んでいた。

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 借主は中途解約することが出来るのか

2006年05月05日 | 契約・更新・特約

契約書には中途解約のことが
  何も書かれてはいないが解約は可能なのか

(問) まだ1年程契約期間が残っているが、経済的理由から廃業する。だが契約書には中途解約に関する条項が何も書かれていない。貸主は残存期間家賃を全額払えば中途解約に応じると答えたが、家賃を払わないと中途解約出来ないのか。


(答) 一般的な居住用借家契約書であれば、例えば国土交通省が推奨する「賃貸住宅標準契約書」では、「(借主)は甲(貸主)に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる
」と書かれている。大概の借家契約書に同趣旨のことが書き込まれている筈である。この特約期間を遵守すれば、いつでも契約期間内の中途解約は可能である。

 途解約を禁止する特約がある場合は借主の利益を一方的に害する特約として消費者契約法10条に違反し、特約は無効になる。それにより借主からの中途解約は認められる。

しかし中途解約について何も契約書に書かれていない場合はどうなるか。
 民法は、「期間の定めの無い契約」の場合、3か月の解約予告で契約は終了すると規定する(民法617条)。

 また期間の定めのある契約で解約権の留保がある場合にも3か月の予告期間で中途解約を認めている(民法618条)。

 しかし、借地借家法30条の強行規定では「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」という規定がある。貸主の場合、3か月の予告期間での中途解約は、借地借家法26条1項に抵触するので特約は無効となる。貸主の場合は借地借家法26条1項により期間の満了の1年前から6月前までの間に解約の通知をしなければならない。従って、貸主の3か月の予告期間での解約は認められない。

 期間の定めがある場合、借主の場合は借地借家法30条の強行規定に反しないので、3か月の予告期間で中途解約はできる。

 しかし、特約が無い場合、中途解約は許されない。一方の当事者は他の当事者に契約違反がない限り、一方的に借家契約を終了させることが出来ない。勿論、当事者が合意すれば中途解約は可能である。

 最近は店舗が空いた場合、次の借り手が長期間決まらないことから貸主は契約の継続を望み、合意解約には応じない。その場合、契約期間が終了するまで契約は継続し、家賃の支払義務も当然終了しない。

 以上のことから期間の定めのある借家契約は、契約期間内では借主から解約の申入れが出来ないという結論になる。 

 相談者の場合、解約が出来ないとしたら解約のために契約違反をするしかない。借主の緊急避難策は、家賃の支払を遅滞して貸主からの契約解除を待つ方法である。だが、この方法では敷金や保証金の返還でトラブルになるのは確実だ。

 相談者の場合、解約が全く出来ないのか。
 定期借家契約は原則として契約の中途解約を認めていない。しかし借地借家法38条5項では200㎡未満の居住用に限られるが、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情がある場合は解約の申入れをすることができ、解約予告から1箇月で契約は終了すると規定されている。

 これは契約後の事情変更により契約の継続が困難になった場合にまで家賃の支払義務を負わせ続けるのは借主にとって過酷過ぎるということで契約上、特約が無くても強行規定で借主の中途解約を認めている。借主の中途解約権を保障した規定に反する特約で借主に不利なものは無効とされる(借地借家法38条6項)。

 従って、相談者の場合も当事者の予測困難な事情の変化によって借家契約を継続することが著しく困難になった場合に該当するので、「事情変更の法理」により解約が認められる可能性が高い。

 

 (参考例)
 
契約書に中途解約の予告期間と解約の制裁金が書かれている場合

 契約書に中途解約する場合は、6箇月前までに書面で通知するか、或は 6箇月分の賃料(予告期間の損料)を支払うという約定に従って貸主が6箇月分の損料(564万円)を借主の保証人に請求した。
 その支払で争われた裁判では、解約は双方の合意に基づくもので、損料支払はあくまで一方的な解約権行使を補償するものなのであるから、この件では損料の支払は不要という判断をした(東京地裁1993年6月14日判決)。家賃の6箇月分の約定損料を過大と判断した結果である。

 

 民法
 (期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1 土地の賃貸借 1年
2 建物の賃貸借 3箇月
3 動産及び貸席の賃貸借 1日

 (期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

 借地借家法
第26条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

第38条
5  第1項の規定(定期借家)による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

 

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立退き合意書を無理やり作成 (東京・練馬区)

2006年05月01日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

     消費者契約法で家主に立退き合意書の取消を通知


 練馬区大泉にある5階建てのマンションに住む有田さんは、10年以上この同じマンションに住み続けてきた。訳が合って昨年離婚し、前夫が家から出て行った。前後し、前の家主がマンションを売却した。

 新家主が夜の9時頃に来訪し、家賃の支払が滞っていると文句をつけ、「夫がいない貴方に家賃が払えるか不安だ。そこで、部屋を退去するか、連帯保証人を両親にするか、今日、決めてもらいたい。」と強要した。
 会社のオーナーに相談してから返事をするから、取敢えず今日のところはお帰り願いたいと言っても聞き入れて貰えなかった。

 挙句の果てには、2月末に退去する旨の書類にサインしなさいの一点張りになり、書類にサインをしない限り帰ろうとはしない態度である。困り果てて仕方なく立退きの合意書類にサインをしてしまった。その後、心配になって、知人の紹介で組合に相談した。

 組合は、この「立退き合意書」は消費者契約法第4条3項に違反しており、合意事項は取り消すことが出きると説明した。早速、「不退去による困惑で締結した立退き合意書は、消費者契約法第4条3項の規定に違反するので取り消す」という文書を作成し、家主に郵送した。

 有田さんは「組合に相談して助かりまし女だと思って馬鹿にされ、悔しい思いもしましたが、これで安心して寝る事が出来ます」と語った。

東京借地借家人新聞より

 


 

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

 二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

 二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。

 一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

 二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 

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