東京・台東借地借家人組合1

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賃貸住宅を借りる時の連帯保証人不要システム (読売)

2007年02月27日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

                       賃貸住宅契約の難題

   「 保証人」お金で解決    2007年2月27日読売新聞

  賃貸のマンションやアパートを借りる際、連帯保証人が不要になるサービスが広がっている。保証会社が借り手から一定額を受け取り、貸主に家賃滞納時の支払いを保証するもので、「家賃保証サービス」と呼ばれる。両親が高齢の独身者や高齢者など、連帯保証人を見つけにくい人にとって便利だ。サービスを始める保証会社も増えている。

    対象会社 事前確認を
 家賃保証の最大手、リプラス(東京)が手がけるサービス「レントゴー」は、入居者が契約時に、管理費や共益費などを含めた月額賃料の50%を保証料として支払う。2年目以降の保証料は1年ごとに1万円。

 日本賃貸保証(東京)の「JIDトリオ」は、契約時に月額賃料(管理費など含む)の30%、2年ごとの更新時にも30%を支払う。貸主が家賃の徴収を同社に委託するサービスを選んだ場合などには、契約時の保証料が月額賃料(同)の50%となる。

 信販大手のオリエントコーポレーション(東京)の「住まいるパートナー」は、クレジットカードのオリコカードへ加入する必要がある。月額賃料(管理費など含む)の1・8%程度を月々支払うほか、カードの年会費も1312円(初年度は無料)かかる。

 総合金融サービスのSBIホールディングスの子会社、SBIギャランティ(東京)も、2006年9月からサービスを始めた。月額賃料(管理費など含む)が20万円未満なら、賃料に関係ない定額制となるのが売りだ。保証料は契約時、更新時には必要なく、賃料が20万円未満の場合、1年ごとに1万円。これとは別に毎月525円かかる。一方、月額賃料(同)が20万円以上なら年間の保証料が2万円、30万円以上で3万円と賃料に比例して増える。

 リクルートの子会社、リクルートフォレントインシュア(東京)も06年12月から、信販大手のUFJニコスと共同でサービスを始めた。入居時に月額賃料(管理費など含む)の50%を払い込む。以後、2年ごとに1万円が必要になる。

 06年に新規参入した2社は現在、営業エリアが首都圏の1都3県に限られているが、今後、全国規模に拡大していく予定だ。

 一方、家賃保証サービスは、保証会社ごとに利用できる不動産会社が限られている。各社のホームページなどで利用可能な不動産会社を調べてから、部屋探しを行う必要がある。また、中小も含めた多くの会社が扱うが、入居後にトラブルが起きないよう、信頼できる会社かどうか事前に確認するよう努めたい。

 

   家賃保証サービス
 保証会社が、親族らの代わりに連帯保証人を引き受けるサービス。連帯保証人を見つけにくい高齢者や、両親が定年退職して依頼しづらい独身者らが増えており、ニーズが年々、拡大している。貸主や不動産会社にとっても、家賃滞納などのトラブルを防げるメリットがあり、家賃保証サービスを利用する人には、敷金など入居時の費用を減らす物件も出ている。

 

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明渡し調停で希望条件実る (東京・大田区)

2007年02月24日 | 建物明渡(借家)・立退料

 大田区大森南2丁目所在の木造2階建工場兼共同住宅の内、階上の居宅の一部を賃借していた増渕さんは、平成12年11月家主代理人弁護士から賃貸部分は増築した箇所で、老朽化が著しく地震などの災害で倒壊する危険がある。また、他の居住者はすでに転居し、この程工場も閉鎖されたことから経済的なことも理由に明渡しを請求された。

 増渕さんは、明渡し請求を拒否し、家賃を供託して6年余が経過した。昨年3月代理人弁護士が病死し、新たに委任された弁護士からの明渡しの督促も拒否。それから6ヵ月後の昨年10月調停裁判となった。組合役員のアドバイスを受けて調停に臨むことになった増渕さんは、当初は低額であったが、自らの提示した補償金家賃の約45ヶ月分に8月末までに明渡すとの条件が受入れられ合意した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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欠陥住宅補償の新法案 (朝日)

2007年02月22日 | 住宅・不動産ニュース

供託か保険で被害者保護 欠陥住宅補償の新法案
 2007年02月20日      asahi.comより

  耐震強度偽装事件を受けて、国土交通省が検討していた、すべての新築住宅の販売業者に対し欠陥補償の資力を確保するよう義務づける新法案の概要が固まった。欠陥住宅や耐震偽装の被害住民が、販売業者の倒産時も泣き寝入りすることなく、補修や改築に必要な金額を受け取れるようにするのが目的。3月上旬にも閣議決定され、今の通常国会に提出される見通しだ。

  この「特定住宅瑕疵(かし)担保責任の履行の確保等に関する法律案」で、新築の戸建て住宅やマンションの販売業者は、供給戸数に応じて法務局に保証金を供託することが義務づけられる。販売後10年以内に判明した欠陥は、業者が購入者に補償する責任を負うが、倒産などで責任を果たせない場合、購入者は法務局から保証金を受け取れる。

  また、業者は、供託の代わりに欠陥補償の保険に入る方法も選べる。倒産時は、国指定の「住宅瑕疵担保責任保険法人」を通じて保険金が購入者に支払われる。各住宅の保険加入時、同保険法人は、建築確認の審査とは別に欠陥の有無もチェックする。保険料は1戸当たり数万円の見込み。

  ただし、保険は、耐震偽装のように故意や重大な過失があった場合は支払い対象外。こうした事態に備えるため、法案には、業者の拠出による被害者救済基金の創設も盛り込み、被害者の救済にあてる。

 

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【判例】*(借家)更新料支払特約があっても法定更新した場合には更新料の支払義務が無い(最高裁判決)

2007年02月20日 | 更新料(借家)判例

判例紹介

 

 次に掲載する最高裁判決は東京高裁判決(昭和56(1981)年7月15日)を不服として賃貸人(上告人)が最高裁に上告したものである。判決は賃借人(被上告人)の全面勝訴。更新料支払特約があっても法定更新した場合には更新料の支払義務が無いという判断が下された。

      最高裁昭和57(1982)年4月15日判決

 言渡 昭和57年4月15日
 昭和56年(オ)第1118号

 

     判      決

 


 東京都世田谷区若林4丁目**番**号

 上告人             T実業株式会社

 代表者代表取締役          N    M

 訴訟代理人弁護士         雨 宮   真 也

                  中 村   順 子

                  川 合   善 明

                  島 田   康 男


 東京都世田谷区若林4丁目**番**号

             Sメゾネット105号室

 被上告人            A 

  
 右当事者間の東京高等裁判所昭和55年(ネ)第1066号、第1094号建物明渡請求事件について、同裁判所が昭和56年7月15日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

 

    主       文

 

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

 

 

    理        由

 

 上告人代理人雨宮真也、同中村順子、同川合善明、同島田康男の上告理由について所論の点に関する原審の認定判断は、本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではないと認めるべきであるとするものと解されるところ、本件における証拠関係及び事実関係の下においては右認定判断はこれを是認することができないではない。
 論旨は、原判決を正解しないでその不当をいうものであって、採用することはできない.。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

 

最高裁判所第一小法廷

 

          

          裁判長裁判官      山 本     享

            

          裁判官          団 藤  重 光

            

          裁判官          藤 崎  萬 理

            

          裁判官          中 村  治 朗

            

          裁判官          谷 口  正 孝

 

 昭和57年4月15日

 最高裁判所第一小法廷

             

 

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【判例紹介】 (借家) 更新料支払特約があっても法定更新された場合は更新料の支払義務がない

2007年02月19日 | 更新料(借家)判例

  判例紹介

 更新料の支払約束があっても、法定更新された場合には、支払義務がなく、支払を理由に契約解除は出来ないとした事例 東京高裁昭和56年7月15日判決

 (事実)
 借家人Aは、更新時に、新改定家賃の2か月分の更新料を支払う約定で、マンションの一室を賃貸したが2年後の更新時に、賃料改定をめぐって紛糾し、合意更新することが出来なかった。そこでAは、更新料を払わず、自己が相当と思料する賃料を提供し、法定更新を求めたところ賃貸人から増額賃料(増額未確定にも拘らず)の未払いと、約定更新料の不払を理由に契約解除し、建物の明渡し、未払賃料、約定更新料の支払を求めて来た事案。

 原審は、支払賃料の一部支払を認容した(供託無効を理由)他は、請求棄却。そこで、賃貸人から控訴、Aから一部控訴。その結果、Aの全部勝訴となった。

 なお、一審判決も、更新料の不払については、「法定更新された本件賃貸借契約そのものの解除理由となり得ない」として、Aの主張を全面的に認めている。

 (判旨)
 「建物の賃貸借契約においては、借家法第1条の2、第2条により、これらに定める要件の認められない限り、特に賃貸人のした更新拒絶ないし異議に正当事由の存しない限り、賃貸借契約は従前と同一の条件をもって当然に継続されるべきものと規定されている(法定更新)うえに、同法第6条によれば右規定に違反する特約で賃借人に不利なものは無効とされていることを考えると、法定更新の場合、賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には、適用の余地がないと解するのが相当である。そして、本件賃貸借契約において、叙上と異った解釈を採るべき特段の事情の存することは認められない。
 ところで、本件の更新が法定更新であることは、前記のとおり当事者間に争いがないから、第一審被告に更新料支払の義務があるとする第一審原告の主張は、その余の点について検討するまでもなく、その理由がないというべきである」。
 (短評)
 判旨は論旨明快である。法定更新制度の要件を正確に解釈している点で1つの参考になろう。この判決の判旨に反対する下級審判例もあり、高等裁判所の段階で、このような明快な判決が出たことの意義は、大きいと思われる。

  (*) 第一審被告=借家人A   第一審原告=家主・賃貸人

 参考法令
 借家法
第1条ノ2
 建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス

 

第2条 当事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メタル場合ニ於テ当事者カ期間満了前6月乃至1年内ニ相手方ニ対シ更新拒絶ノ通知又ハ条件ヲ変更スルニ非サレハ更新セサル旨ノ通知ヲ為ササルトキハ期間満了ノ際前賃貸借ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ為シタルモノト看做ス

 

 前項ノ通知ヲ為シタル場合ト雖モ期間満了ノ後賃借人カ建物ノ使用又ハ収益ヲ継続スル場合ニ於テ賃貸人カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキ亦前項ニ同シ

 

第6条 前7条ノ規定ニ反スル特約ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ為ササルモノト看做ス

 

東京借地借家人新聞より

 

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退去の際、家主から100万円の修理代を請求される (東京・板橋区)

2007年02月17日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

          敷金返還訴訟で納得のいく解決

 板橋区南町で倉庫を借りていた坂本さんは、昨年9月に建物を明渡した。近所の人の話では、当初から敷金は帰ってこないと言われており、案の定、敷金返還どころか原状回復費用として100万円を超える請求をしてきた。

 坂本さんは、知り合いの紹介で借地借家人組合の事務所にやってきた。組合では、原状回復費用の中には、次に入居する人のためのリフォーム代も含まれるとして、組合を窓口に話合いの場を求めることを通知した。しかし、貸主は、一度連絡をした限りで応ぜず、坂本さんは、敷金返還の訴訟の裁判をおこした。

 裁判の日は、貸主側は工務店の社長を証人として請求の正当性を主張したが、建設から20年近く経過していること、例え借主に原状回復の責任があるといっても経年劣化などから費用請求の100%の支払い義務はないことなどを主張した。裁判所は和解を提案し、坂本さんの主張に近い形で和解した。

 「組合に相談し、大変助かりました。」と坂本さんは語っていた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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民間開放推進会議が第3次答申  (東京・台東)

2007年02月16日 | 定期借家・定期借地契約

   立退料を正当事由の要件に

 06年12月25日、規制改革・民間開放推進会議が取り纏めた「第3次答申」によると、

(1)「定期借家制度の見直しについて」は、現行法では居住用建物については当事者が合意した場合でも、定期借家への切替えは禁止されている。

 そこで、検討事項として
(1)居住用建物について、当事者が合意した場合には定期借家権への切替えを認めること

(2)定期借家契約締結の際の書面による説明義務の廃止

(3)居住用定期借家契約に関して借主からの解約権(強行規定)の任意規定化

(4)賃貸人及び賃借人が合意すれば更新手続だけで契約を延長できる(正当事由制度を排除した)更新型借家契約制度の創設及びその際に契約を公正証書によらずとも締結可能にすること

 これらを平成18年度以降逐次実施としている。

 

 (2)「正当事由制度の在り方の見直しに関して」も、平成18年度以降逐次実施としている。

(1)建物の使用目的、建替えや再開発等の事情を適切に反映した客観的な要件とすること

(2)立退き料を正当事由の要件として位置づけること及びその客観的な算定基準を明確にすること

以上、法改正の議論があることを踏まえ、所管省庁は関係省庁と連携し、論点の整理、具体的な策定に資する情報提供を積極的に行うべきであると答申している。

 

 「第3次答申」は先に日経連が政府へ提出した「2006年度日本経団連規制改革要望」と同趣旨のものである。

 但し日経連の方が直接的で具体的である。例えば正当事由に関しては、原則として廃止すべきとしている。

 理由として、現状では建物賃貸借契約の「正当事由」はなかなか認められず、また、相当程度に劣化した建物であっても、裁判になれば、更新拒絶(正当事由)がみとめられるためには正当事由を補完するものとして、莫大な「立退き料」の支払を裁判所から求められるからとしている。

 仮に存続させる場合は、具体的な立退料の上限を設定すべきとしている。家賃を算定基準にし店舗等は3年、事務所等は2年、居住用は1年の家賃分を立退料として支払うとしている。

 

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【判例紹介】*地代の増額請求に対し借地法でいう借地人が「相当と認める地代」とは何か

2007年02月14日 | 地代の減額(増額)

  判例紹介

 借地法12条2項(借地借家法11条2項)にいう「相当ト認ムル地代」とは何か (最高裁平成8年7月12日判決、判例時報1579号77頁)

 (事案)
   (1) 本権借地の地代は、昭和55年8月に月額6万円に増額されて以来据え置かれてきた。

 (2)一方、本件借地にかかる公租公課(固定資産税と都市計画税の合計額)は、平成元年11月現在、月額約6万1771円であり、地代額を上回っていた。

 (3)そこで地主は、平成元年10月、地代を同年11月分より月額12万円に増額請求した。

 (4)しかし、借地人は右増額請求後も依然として月額6万円を支払い続けてきた。

 (5)地主は平成2年2月、借地人に対し1週間以内に増額賃料の支払がない場合は借地契約を解除する旨意思表示したが、借地人は催告期間内に催告通りの賃料を支払わなかった。

 (6)よって、借地契約は解除されたとして地主が建物収去土地明渡の訴えを提起した。

 (大阪高裁の判決)
 借地人が従前の地代額を支払う限り主観的に相当と認められる地代を支払ったものとして債務不履行の責任を問われることはない。これが借地法12条2項の趣旨である。よって本件は借地人が6万円の地代を支払っている以上契約の解除は無効である。

 (最高裁の判決)
 ①借地人が従前の地代額を主観的に相当と認めていないときは、従前の地代額と同額を支払っても借地法12条2項にいう相当と認める地代を支払ったことにはならないと解すべきである。

 ②では、借地人が主観的に相当と認める額の支払さえしていれば、常に債務不履行にならないのかといえばそうではない。借地人の支払額が地主の負担すべき公租公課の額を下回っていても、借地人がこのことを知らなかったときは、公租公の額を下回る額を支払ったという一事を持って債務不履行があったということはできないが、借地人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っていたときは、借地人が右の額と主観的に相当と認めていたとしても、特段の事情のない限り、債務不履行がなかったということはできない。

 ③大阪高裁は、借地人がその支払額を主観的に相当と認めていたか否かについても、また、借地人が公租公課の額を下回るという事実を知っていたか否かについても事実認定をしなかったのは法令解釈適用の誤りである。

 (若干の説明)
 地代の増額請求があった場合の借地人の対応としては、借地人が自分だけの判断でこの額でよいと思う額を支払っておけば、後で結果としてそれも上回る額で決ったとしても債務不履行の責任は問われないというのは、ご存知の通り。この判決の意義は特に②にあって、「だからといってそれが公租公課の額を下回っていて、しかもそれを知りつつ漫然と従前の額を支払っている場合には、借地人の義務を全うしていることにはならない」と警告している。

(1997.05.)  

(東借連常任弁護団) 

東京借地借家人新聞より 

 

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【判例紹介】 更新料を支払う慣習或は慣習法の存在が否定された事例

2007年02月10日 | 更新料(借地)判例

  判例紹介

 更新料を支払う旨の慣習あるいは慣習法の存否 (東京地裁平成7年12月8日判決、判例タイムズ918号)

 (事案)
 賃借人は銀座の土地を借地していた不動産会社であるが、倒産して会社更生手続が開始された。会社更生手続の中でこの不動産会社は他の会社に吸収合併されることになった。この結果、賃借権も新会社に譲渡された。そこで、地主は、新借地人である新会社に対して、賃借権譲渡の承諾料及び更新料として総額3億円を請求した。新賃借人は、更新料の支払を拒否し、譲渡承諾料について話合いをしていたが、交渉決裂となったため、地主が提訴した。

 地主は、新賃借人が、右交渉において、更新料支払約束をしたと主張、それが認められないとしても、慣習あるいは慣習法に基づいて更新料支払義務があると主張した。

 判決は、更新料の支払い合意は成立していないとした上で、慣習に基づく更新料支払請求について、次のように判決した。

 (判決要旨)
 「土地の賃貸借契約の更新に際して賃料を補充するものとしての更新料の支払がなされる事例の存することは否定し得ないところであり、東京都内、特に銀座地区においては、賃貸借契約の更新に際して、更新料が支払われる例が多くみられるが、これらの更新料の支払は、賃貸借契約の更新時における更新条件等の協議に基づいた合意の結果、支払がなされるに至ったもので、原告が主張するように、当事者間の更新料に関する合意が存しないにも関らず慣習あるいは慣習法に基づいて当然に更新料の支払がなされたという事例は散見することができない。
 したがって、東京都内、特に銀座地区においては、賃料の増額が地価の高騰に追いつかず、適正賃料額と現実の賃料額との格差が拡大する傾向にあることから、更新料の支払いが一般的に行われるとしても、右更新料の支払が、慣習あるいは慣習法に基づいてなされているという事実を認めることはできない。

 (説明)
 更新料の支払約束がない場合、慣習によって更新料支払義務を認めることはできないということは、最高裁昭和51(1976)年10月1日判決で明確にされ、その後も地裁、高裁で同様の判決が出されており、判例上確定した見解となっている。

 本判決もこの流れの中にあるものだが、昭和51年10月1日の最高裁判決から既に久しい年月が経過している。慣習とは、日々の積み重ねで作られたり消えたりするものであるから、その間に更新料支払に関する慣行が変化することもありえる。その意味で、本判決が慣習に基づく更新料支払の慣行はない、としたことは意義があるので、判決例として紹介した。

(1996.12.) 

(東借連常任弁護団) 

東京借地借家人新聞より


参照 
①(借地)法定更新の場合でもで更新料支払の慣習は認められないとした判決(東京地裁平成14年1月24日)
      
②借地の更新料支払の慣習は認められないとした判決(東京地裁平成16年5月21日)                  

 

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【判例紹介】 借地人の会社の持分と営業一切の譲渡が借地権譲渡に当たるとされた事例

2007年02月09日 | 借地権

 判例紹介

 土地賃借人である有限会社の持分及び営業一切を新たな経営者に譲渡したことが、土地賃借権の譲渡に当たるとされた事例 東京高裁平成5年12月15日判決。判例タイムズ874号210頁以下)

 (事案)
 土地3筆をAから賃借しその土地上に建物を所有する有限会社Yは、その会社の持分全部を営業一切が旧代表者から新代表者Cに譲渡された後、この土地所有権の譲渡を受けたXから建物収去土地明渡の訴えを起された。

 Xらは持分権全部譲渡は賃借権の無断譲渡であると主張し、右行為は信頼関係を破壊するとして契約解除を主張した。

 Yは、無断譲渡を否認し、Aの相続人A'から承諾をえていたから、Xらの本訴請求は権利の濫用であるとして争った。

 1審は、持分権の譲渡は法人格の変更ではないから、賃借権の譲渡にならないが、YはB個人の会社からC個人の会社になり、信頼関係が失われたと認め、Xの請求を認めていた。

 (判旨)
 「本件は、単に控訴人会社の代表者の地位がBからCに変更されたというものではなく、控訴人会社という個人的有限会社の経営者であるBが、その持分全部を含め控訴人会社の営業の一切を新たな経営者であるCに譲渡して控訴人会社から手を引いたというものであり、右譲渡の前後を通じて、控訴人会社の法人格は形式的には同一性を保持しているとはいえ、控訴人会社ごとき小規模な個人会社においては、賃借人経営者と地主との個人的な信頼関係に基づいて不動産賃貸契約が締結されるのが通常であり、経営者が経営から完全に撤退して新経営者が経営を担当し、不動産を使用するに至ることは、その実質に着目すれば、旧経営者から新経営者に対し賃借権の譲渡がなされたものというべきである

(寸評)
 以前にも紹介したが、本件判決と同旨の判例が、この種の事案の主流のように思われる。
 賃借権の譲渡という実態を、法人格の同一性という形式にかかわらず評価していくという見方が定着しつつある。いわゆる法人成りの場合の判例の傾向とは異なっているのでご紹介した。

(1995.07.)

 (東借連常任弁護団)

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 法人売買の形式による賃借権の譲渡が無断譲渡に当たるとされた事例

2007年02月08日 | 借地・借家に共通の問題

 判例紹介

 賃借権の無断譲渡禁止特約のある建物賃貸借契約をしてキャバレーを経営していた会社代表者が法人売買の形式をとることにより、この特約を回避できると誤信して売買契約したが、賃貸契約が解除された買主が損害を被ったことに重過失による職務懈怠として損害賠償責任が認められた事例東京地裁平成4年10月13日判決、判例タイムズ83号199頁以下)

 (事案)
 キャバレー等の営業を目的とするA社は、B社から本件建物を賃借してキャバレーを経営していたが、X社は、A社からこの店舗の造作設備を含む営上の一切の権利及びA社の代表者Yから全株式を買受けた。AB間の建物賃貸借契約には賃借権の無断譲渡禁止の特約があったが、Yは法人の売買にすればB社の承諾を要せずに賃借権の譲渡ができるものと考え、B社の承諾を得ずに法人の売買の形式で行ったところ、B社から契約解除を受け、X社は建物の明渡しを余儀なくされ損害を受けた。そこで、X社はYに対し商法262条の3に基づき損倍賠償請求をした事案である。X社の請求を過失相殺5割にて一部容認。

 (判旨)
 「被告は本件売買契約が実質的には賃借権の譲渡と同一視されるものであるこを充分認識していたこと、及び被告は本件売買契約が賃貸人である札幌アルトに発覚すれば無断譲渡として本件賃貸借契約を解除される危険が高いことを予想することが容易に可能であったことを推認することができる」、「そうすると、被告が法人の売買という形式をとれば札幌アルトの承諾を得ることなく建物賃貸借権が譲渡できると信じて原告に対して本件売買契約の申込をして、同様に誤信した原告との間で本件売買契約を成立させたことは、会社の代表取締役として前記忠実事務に違反した任務懈怠であるというべく、かつ、右任務懈怠は被告の重大な過失によるものと解される。したがって、被告は原告に対し、原告が被告の右任務懈怠に被った損害について商法266条の3第1項の責任を免れないものと解するのが相当である」

 (寸評)
 判決は、原告が不動産業者であることから、賃貸人の事前承諾を要することは十分認識していなければならなかったこと等を理由に原告の過失も5割と認めた。法人売買の形式による賃借権譲渡については、法人格の同一性を理由に、賃借権の譲渡に当たらないとする判例もあるが、個人的色彩の強い中小・零細企業の場合には本件判決の同旨のように判断される危険が極めて高いので、あえて紹介した。

(1994.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借地内の駐車場部分については借地法の適用がないとされた事例

2007年02月07日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

 借地の一部が駐車場として使用された場合、その駐車場部分には借地借家法の適用がないとされた事例 東京地裁平成4年9月28日判決、判例時報1467号)

  (事案)
 地主Xは借地人Yに対し昭和32年、普通建物所有目的で本件土地を賃貸し、Yはその土地上に建物を建築所有していた。
 Yは昭和55年春頃から建物の一部を取壊して本件土地全体の2分の1以上を13台の自動車が駐車できる有料の駐車場とした。これについてはXも承諾した。
 借地契約は昭和52年に法定更新されたが、更新料の分割払いが 終った56年5月19日に、XとYは改めて期間を右同日から20年とすることに合意した。

 Xの主張
 本駐車場は本件宅地とは板塀で明確に画され独立して使用に供されているのであるから、少なくとも本件駐車場については借地法の適用がなく、かつ、期間の定めのない賃貸借に変更された。したがって、解約申し入れれた日から1年経過後に本件駐車場についての賃貸借は終了したから本件駐車場部分につての明渡を求める。

  (判決要旨)
 本件駐車場は、本件建物が存在する本件宅地とは塀により明確に仕切られ本件土地全体の2分の1以上の面積を有し、13台の自動車が駐車できる有料の駐車場として独立して使用されている。
 このような場合には本件宅地に本件建物を所有する上で特に本件駐車場が必要とは認められず、本件駐車場には借地法の趣旨からして同法の適用はないといわざるを得ない。他方、賃料は特に区別することなく本件土地全体について決められてきたこと、駐車場としての使用開始後である昭和56年5月19日の更新は、本件土地全体の賃貸契約を更新する趣旨でなされたことが認められる。そうすると、本件駐車場の賃貸借期間は、本件宅地と同様に昭和56年5月19日から20年と合意されたものと認めるのが相当である。よってXの明渡請求は認められない。

  (寸評)
 借地の一部を駐車場にする例はよくある。その場合駐車場部分にも依然として借地法の適用があるのか、その部分は宅地部分とは切り離されて借地法の適用はなく民法の一般原則が適用されるのか。後者だとすれば駐車場部分には勿論法定更新はなく、期間の合意がなければ解約申入れ後1年で契約は当然終了する(民法617条)

 そのメルクマールは、駐車場用地がそれ自体建物と切り離されて独立性を有しているか、駐車場が主でたてものがその付随的設備にすぎないか等にある。

 なお、本件は地主の承諾が認められたケースであるが、無断であるとすると借地全体の解除の問題が起り得る。

(1993.12.)

 

(東借連常任弁護団)

 

東京借地借家人新聞より

  民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
 土地の賃貸借 1年
②  建物の賃貸借 3箇月
③ 動産及び貸席の賃貸借 1日
 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

 

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【判例紹介】 一方的に減額賃料を支払った借家人が賃料不払で契約解除された事例

2007年02月06日 | 家賃の減額(増額)

  判例紹介

 建物賃料の減額を請求した後に一方的に自己の主張する減額した賃料の支払を継続した賃借人に対し、賃貸人のなした賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除が有効とされた事例東京地裁平成10年5月28日判決、判例時報1663号)

 (事案)
 賃借人は平成5年4月からビルの一室を賃料月額45万円、期間2年等ノ約定で賃借した。賃借人は約2年後の平成7年5日から月額35万円に減額するよう申し入れ、実際その額で支払い始めた。

 賃貸人は、これに対し、減額の協議には応じるが協議が成立しないときは賃貸人と減額を正当とする裁判が確定するまでは賃貸人が相当と認める賃料の支払を請求することができる旨を定めた借地借家法32条3項の規定を引用した上、協議が成立するまでは賃貸人が相当賃料と認める月額45万円を支払うべき旨請求した。

 しかし、賃借人がこれを無視して依然として35万円の支払を継続したため賃貸人は平成8年6月にそれまでの請求賃料との差額合計140万円の支払を求め、これを支払わないときは契約を解除する旨の意思表示をし、建物明渡の訴えを起した。

 賃借人は借地借家法32条3項にいう相当と認める賃料とは、単に主観的に相当と認めるだけでは足りず客観的にも相当と認められる範囲内でなければならず、賃貸人の請求する45万円はこの範囲内の金額であるということはできないから解除は無効であると争った。

 (判決)
 借地借家法32条3項の規定は、賃料減額請求権の行使によって定まるべき客観的な相当賃料額と当事者の認識する主観的な賃料相当額とのギャップによって生じる賃料不払を巡る紛争を防止するため、そのような場合においては賃貸人は減額を正当とする裁判が確定すらまでは、賃借人に対し、自己が相当と認める額の賃料の支払を請求することができるものとして賃貸人の認識に暫定的優位性を認めて、賃借人に右請求額を支払うべき義務があるものとしたものであって従って賃借人が右請求賃料の支払をしないときは賃料不払の危険を免れない。そして右規定にいう「相当と認める賃料」とは、右規定の趣旨に鑑みると、社会通念上著しく合理性を欠くことのない限り賃貸人においても主観的に相当と判断した額で足りるものと解するのが相当である。本件における賃貸人の請求額は社会通念上著しく合理性を欠くものと評価することはできなず、後日なされた鑑定の結果(36万6600円)をもって賃借人のこの判断を不当とすることは当を得ない。解除は有効である。

 (寸評)
 この判決は1998年12月号に紹介された事例との逆の結論である。しかし、そこでの東借連常任弁護団の説明にあるように、組合活動の実務においてはこの判決の趣旨に則って対処するのが無難である。

(1999.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


    借地借家法
  (借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

 

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【判例紹介】 賃料減額で従前を下回る賃料を支払い続けが、契約解除が認められなかった事例

2007年02月05日 | 家賃の減額(増額)

  判例紹介

 建物賃料の減額請求をした賃借人が賃貸人の要求に反し従前の賃料を支払い続けた場合において賃貸人による賃貸借契約の解除の効力が否定された事例 東京地裁平成9年10月29日判決、判例タイムズ981号)。

  (事案)
 賃借人はビルの1階を賃料月額46万円で賃借していた。家主は平成2年7月からの賃料を月額52万円に値上げ請求した。これに対して、賃借人は月額37万8080円に値下げ請求をして対抗した。そして、賃借人は、当面の措置として従前合意賃料を下回る月額40万1710円(別途共益費・消費税)を賃料として支払った。家主は、賃料不払を理由にして賃貸借契約の解除をして建物明渡の裁判を起した。

 裁判でなされた賃料鑑定は月41万2000円であった。賃借人の値下げ請求は認められることになるが、賃借人が支払っていた賃料は、鑑定賃料額よりも1万0290円下回ったことになる。そこで賃料不払で解除されるのかどうかが問題になった。

 (判決要旨)
 「賃借人は、平成8年7月分以降、賃料として月額40万1710円を払っているが、賃料相場の下落傾向を踏まえて月額37万8080円(坪当り1万6000円)が相当賃料であると考えて賃貸人に通知し、賃貸人が争っているので、若干付加する意図で月額40万1710円(坪当り1万7000円)とし、従来の供益費と消費税を加えた41万9761円を賃料改定合意が成立するまでの一応の賃料として支払っていることが認められる。減額された相当賃料よりも支払っている賃料額は月額1万0290円少ないけれども、その相当賃料に対する割合は約2.5%であり現在においても不足額の合計額は相当額の3分の1に満たない額である。借地借家法32条3項によれば、減額請求をした賃借人は、「相当と認める額」を提供しなければならないけれども、その額が著しく不合理でなければ、相当賃料を下回るときには差額に年1割の利息を付して支払えば解除されることはない趣旨である解されている。したがって、本件では、右法案の許容する範囲内の賃料不払であるから賃貸人の解除はその効力を発生させない。」

  (説明)
 借地借家法32条3項は「減額の請求を受けた家主は、減額の裁判が確定するまでは、相当と認める額の賃料を請求できる」と定めている。本件では、右のいう「相当と認める額」として支払った賃料が、その後の裁判で決まった額よりも少なっかたとしても、なお許容する範囲にあると判断された。正当な判断であるが、「許容範囲」にあるかどうかは、後の裁判で決まる賃料額に左右されることなので、現実の対処としては、従前の賃料をとりあえず支払っておくというのが、危険を犯さないやり方であろう。

(1998.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


    参照家賃減額を請求した場合に裁判確定前の家賃額は従前と同額とした判決 

 

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【判例紹介】 小修繕は借家人が行うとの特約で家主に屋根の等の修繕義務を認めた事例

2007年02月03日 | 修理・改修(借家)

  判例紹介

 小修繕は借家人が自らの費用で行うとの特約がある場合に、家主に屋根等の修繕義務が認められた事例 東京地裁平成3年5月29日判決、判例時報1408号89頁)

 事案)
 この事件は築後約24年を経た建物(居宅)の借家人が原告となり、家主に対し屋根、壁、雨戸など14箇所の修繕を求めたものである。これに対し家主は借家人の要求する修繕は新築同様又は賃料の3年分の費用がかかり経済的に修繕不能であり、借家人の要求は権利の濫用であると争った。

 (判決要旨)
 
第1点、「特約」との関係。
 建物の部分的な小修繕は借家人が自らの費用を負担して行う旨の特約がある場合は、家主の修繕義務を負う部分と借家人が自己の費用をもって修繕すべき部分との調整が必要である。

 第2点、修繕義務の負担。
 小修繕に当たるものの修繕について家主に修繕義務はないが、建物の改造、造作、模様替え等建物の基本構造に影響すべき現状を変更する修繕部分は家主の負担すべき義務の範囲に属する。

 第3点、家主の修繕義務の程度。
 ① 築後相応の建物としての使用継続に支障が生じない程度でよい。新築同様の程度まで修繕すべき義務はない。
 ② 修繕に多額の費用を要するもののうち、現状のままでも借家人側の受ける損失が小さいものにあっては、借家人において現状を甘受すべきであり、家主に修繕義務はない。

 ③ 借家人側に原因のある部分についても家主には修繕義務はない。

 ④ 本件においては、2階屋根のセメント瓦のずれないし割れの部分、1階便所等の上のさしかけ鉄板葺屋根の部分、南側外壁のひび割れ部分、雨樋の損傷破損部分、2階和室天井板の剥離・割れの部分など6箇所について、従前と同品質又は同程度の材料と交換したりして修繕する義務が家主にある。

 ⑤ 右の家主の修繕は、少なく見積もっても賃料の数か月分を超える費用が必要だが、この程度では修理不能の域に達しているとは認められず、さらに、家主は本件建物新築以来修繕費も支出したことがないというのであるから、今回の支出がある程度の額となっても、それをもって賃料との均衡を欠くものということはできない(賃料との均衡を失するというのであれば、未だ建直しの時期が到来していない本件建物にあっては賃料の増額方法によって調整されるべきである)。

 (短評)
 小修繕は借家人が行うとの特約がある場合、それを超える修繕は家主の義務であるが(民法606条1項)、その限界は微妙な場合が多い。また、老朽化の程度によっては物理的にも修繕が不可能だったり、物理的には可能だが賃料に比してあまりにも多額の費用を要するときは経済的に修繕不能とされ、家主の修繕義務はそれだけ軽減又は免除される。事案毎に具体的に判断するほかないが、その1つの判断基準が比較的詳細に示された先例として、この判決の意義がある。

(1992.06.)

 

(東借連常任弁護団)

 

東京借地借家人新聞より

 

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