東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 地代値上げの文書が届いた。20日後までに回答を求められている。

2022年02月07日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 (問)<賃料の増額について>という文書が地主から送られてきた。

 次のような趣旨の文面です。「本件土地の地代は月額11万4000円(内訳は借地面積76坪で、1坪当たり1,500円)ですが、4月以降月額26万円に増額したいと考えております。貴殿におかれては、上記増額にご同意いただけるか、ご同意いただけないのであれば、いくらまでの増額であれば同意できるのか、端的にご回答いただくようお願いいたします。端的な回答がなければ、増額を拒否したものと受け取らせていただき、その後は裁判手続きに進ませていただきます。」

文書到達後、20日以内の回答を求めています。どのような回答をすればよいのでしょうか。


 

 (答)以下が地主への回答例です。

       <先般受け取った通知に対する回答>

(1)「借地借家法」11条1項に「地代等」の増額請求権の「成立要件」として、次のように規定しています。

 ①公租公課の増加により、

 ②土地価格の上昇、その他経済事情の変動により、

 ③近傍類似の土地の地代に比較して不相当となったとき

  以上の「法律要件」が満たされたときは契約の条件にかかわらず、将来に向かって地代等の増額請求ができると規定しています。 

(2)現行地代11万4000円を2022年4月以降に26万円に増額したいのであるから、当然上記の「法律要件」を充足する明確な算定資料に基づいて計算された結果による増額請求だと思います。

 「法律要件」を満たす客観的な算定資料の提示をお願いします。資料の提示を頂ければ、算定資料を検討し、増額理由に十分納得が出来れば、言うまでもなく増額には応じる所存でございます。

 地代の合意をするためにも、納得ができる算定資料に基づいた方が当事者間の合意形成は速いと思います。裁判も考えておられるならば、裁判に耐えられる客観的な資料に基づいた増額の主張は重要だと思います。

(3)「借地借家法」11条2項に次のように規定されています。

 「地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。」と規定しています。

地代額は当事者間の協議による合意で決定されることが原則です。一方的な増額請求で地代が決定される理由にはならないと条文から判読できると思います。

(4)現在、地代の改定に関しては当事者間の協議もなされず、当然地代増額の合意も成立していません。「借地借家法」11条2項の規定に従って地代の増額改定合意が成立するまでは、賃借人が「相当と認める額」を支払います。

 「相当と認める額」は賃借人が「主観的に相当と認める額」とされ、賃借人の相当額が裁判所の認定額に満たなかった場合でも、賃借人が主観的に判断する相当額の賃料を支払うことで債務不履行の責を負わない」(最高裁平成5年2月18日判決)。

 以上から勘案すると賃料の合意が成立、または裁判所の判断する適正賃料が確定するまでは、賃借人が「相当と認める額」である従前賃料11万円4000円を支払いますので、お含み置きください。

 

 

東京・台東借地借家人組合

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