東京・台東借地借家人組合1

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老朽化理由の明渡の調停不調後、建替ええを理由にした明渡裁判へ<1> (静岡・駿東郡清水町)

2011年03月31日 | 建物明渡(借家)・立退料

 湧水量東洋一を誇る柿田川のある清水町(静岡・駿東郡)で、借家人に対し地主が退去を迫る問題が起きました。

 2010年3月地主代理人の不動産会社から、「①相続税の納付期限が迫っている。②建物が老朽化している」という理由で6月末までに借家を退去して欲しい旨の申出を受けました。4月に入り「退去しないと法的手段に訴える」などの強圧的態度で退去を迫られましたが、借家人はその場で出ていくつもりがない旨伝えました。

 9月に入り沼津簡易裁判所から調停通知が届きましたが、第1回調停で調停不調になりました。12月に沼津地方裁判所から口頭弁論の呼出状が届きました。

 2011年1月に第1回の裁判が開かれました。地主は東海地震で倒壊の危険性があると建替えの必要性を主張しました。それに対し借家人は「①「耐震診断書」を添付し耐震補強を行うことで耐震構造になるので、清水町の補助金制度を活用し耐震補強工事を実施して欲しい。②建物の老朽化は明渡の正当事由にならない。③地主は借家人が依頼しても修繕義務を怠ってきた」と反論しました。

 借家人の中には高齢で、介護を必要とするなどの年金暮らしの方々もおり、転居は事実上難しい状態です。住み続ける権利を守る為 、法テラス制度なども活用し、裁判を続けています。尚、3軒の方が組合に加入しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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建物の老朽化・耐震を理由の明渡 (神奈川・平塚市)

2011年03月30日 | 建物明渡(借家)・立退料

 平塚市で戸建1棟の借家で20数年居住して平穏に過ごしてきたTさんは家主代理人の不動産業者から、老朽化と地震が来たら家が倒れる心配があるので、3か月以内に建物を明渡すよう要求する旨の通知を受けました。

 Tさんは、いきなりの明渡通知に驚き知人に相談したところ借地借家人組合を紹介され、組合を訪れて、組合に加入の上、今後の協力要請をしました。

 組合は、Tさんと協力して不動産業者と再三折衝を重ねたが折り合いがつかず、結果として白紙撤回を申し入れました。

 最後まで頑張る決意を確認して相手側の今後の動向を見ながら対処していくことにしました。若し、法的手段になっても受けて立つ心構えで臨むことを確認しました。

 Tさんは組合の協力により、これまで相手との折衝について大変勉強になり、自信が湧き今後とも組合員として協力をしていきたい意向を確約してくれました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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老朽化を理由にした明渡請求 (大阪)

2011年03月29日 | 建物明渡(借家)・立退料

 昨年末に、賃貸マンション明渡の相談がありました。9月に突然、「老朽化にともなうご退去のお願い 契約解除の通知」なる文書が部屋のドア・ポストに投函され、「老朽化により大規模修繕または立替えを要すため、12月末日で現在の契約を解除させていただきます」という内容でした。

 相談者(女性・単身)は、オーナーでもある管理会社の担当者が頻繁に訪ねてくるが、「ドアを開けず、インターホンにも出ずに無視している」とのことです。先方からはその後、退去条件を提示し、交渉に応じて欲しい旨の文書が何度か投函されていました。

 「都心の便利な場所で、9年間住んで気に入っている」ということなので、「老朽化云々は、借地借家法28条の『明け渡しを求めるための正当事由にあたらない』ので、申入れはお断りする」という内容の文書を内容証明郵便で送達し、様子をみることになりました。

 翌年早々回答書が届き、立退料(支援金と呼んでいる)を支払う用意があること、転居先は責任をもって確保するという内容でした。

 「一度会って話合いを持った方が安心ですよ」とお勧めし、2月初め交渉に立ち会いました。その場で本人から「金額次第で立ち退くので、金額を提示して欲しい」と意思表示がありました。

 立ち退くの一言でよほど相手は安心したのか、あとは電話のやり取りで本人の希望通りの金額で合意することができました。

 改めて、「正当事由」の”威力”を教えられました。同時に、マンション住民の孤立した生活スタイル(居住者同士の交流が全くないこと)が、住いの権利を活用できなくしていることもよくわかりました。

 また、「老朽化」や「耐震性」の問題は今後多くなると予想されますが(阪神大震災前の建築物は山ほどあります)、建築物を補修しながら生かすことを進めることが建築の方向転換、そのための行政施策が必要と思いました。「スクラップ&ビルド」は、開発業者の目先の利益にしかならないものと思います。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 更新料支払裁判で、「更新料は中途解約時の違約金」(京都地裁平成22年10月29日判決)

2011年03月28日 | 更新料(借家)判例

 判例紹介

 更新料の支払いを定める条項が消費者契約法に違反して無効になるかが争われています。大阪高等裁判所平成20年1月30日判決有効であるとし、大阪高等裁判所平成21年8月27日判決無効として、最高裁判所の判断を待つ状況になっています。

 妥当な判決である京都地方裁判所平成21年9月25日判決
 同判決は更新料条項が無効であるとしました。

 「更新料は、極めて乏しい対価しかなく、単に更新の際に支払う金銭という意味が強い、趣旨不明瞭なものであって、一種の贈与的な性格を有する。本件更新料条項は、民法601条に定められた賃貸借契約における基本的債務たる賃料以外に金銭の支払い義務を課すものであって、民法の規定に比して賃借人の義務を加重するものであり、賃貸人と賃借人間の情報の質及び交渉力の格差を背景に、更新料の性格について賃借人を誤認させた状況で、賃借人に対価性の乏しい相当額の金銭の支払いをさせるという重大な不利益を与え、一方で賃貸人には何らの不利益を与えないものといえ、信義則に反する程度に、衡平を損なう形で一方的に賃借人の利益を損なうものである。」 (京都地方裁判所平成21年9月25日判決 無効

 賃借人の多くは、更新料の性格(何のために支払うものなのか)をよく認識しないまま、ただ契約締結時に更新料条項に異議を述べて騒ぎ立てても甲斐なく終わることを予感して、更新料条項の当否を不問に付して契約書に判を押しているのが通常でしょう。更新料を対価性の乏しい趣旨不明瞭な給付とした本判決は、契約締結当時の当事者の認識に重きを置いた至極妥当な判断だといえます。

警戒を要する賃借人の立場を無視する判決 京都地裁 平成22年10月29日判決 有効
もっとも、昨年、同じ京都地裁(ただし別の部)で、更新料を賃料の前払いのほか途中解約時の違約金の性格を有するものとし、更新料条項の効力を肯定した判決が言い渡されました(平成22年10月29日)。「途中解約時の違約金」というのは、従来あまり指摘がなかった観点です。

 更新料を支払う慣習はない
 このように更新料条項の効力についての裁判所の判断は分かれています。しかし更新料条項がない場合は更新支払義務がないことは確定した判例です。更新料の支払いと金額について合意ができなければ法定更新を主張することが適切です。

※消費者契約法第10条  民法 、商法 (明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

 (2011.03)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


 (*)2009年8月2010年2月の大阪高裁判決は、「更新料の契約条項は消費者の利益を一方的に害しており無効」と判断し、家主側に返還を命じた。

 これに対し、同高裁の別の裁判部は2009年10月、「更新料は、賃借権を延長する対価として入居時の礼金を補充、追加するもので必要性がある」として、更新料支払は有効として借り主側敗訴の判断を示した。

 なお、最高裁は3月4日、貸主側と借主側の主張を聞くための弁論を6月10日に開くことを決定した。・・・・・東京・台東借地借家人組合

 

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相続した新地主が無断増改築等を理由に更新拒絶 (東京・大田区)

2011年03月25日 | 土地明渡(借地)

 大田区千鳥地区に居住のAさんは、約50坪の土地を賃借して木造2階建の共同住宅を所有している。

 土地の所有権を相続した新地主より、7か月後の契約期間満了を控えて自己使用を理由に更新拒絶を書面で通告され、Aさんは契約の更新請求を内容証明郵便にて通知した。

 今後のことを考えて組合員の紹介で入会した。さらに、地主は転貸や増改築工事を無断で行ったと契約解除を請求。Aさんは組合と相談の上、土地ではなく所有する建物の賃貸であること。工事は前地主の承諾により行ったことを書面で回答した。Aさんは、事実や経過を確認せずに無茶なことを求める地主に対して、決意新たにしている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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敷金から修繕費「高すぎなければ有効」 最高裁判決 (朝日)

2011年03月24日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 賃貸住宅の敷金(保証金)を返す際、修繕費として一定額を差し引くと定めた契約条項(敷引=しきびき=特約)は消費者契約法に反するか――。この点をめぐって家主と借り手が争っていた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は24日、「不当に高額でなければ特約は有効」とする判決を言い渡した。

 敷引特約は関西を中心とした商慣習。「消費者の利益を不当に害する契約は無効」と定める消費者契約法が2001年に施行された後、地高裁段階では特約を無効とする借り手側勝訴の判断が相次いでいた。今回の判決は、特約そのものは無効ではないと認めた最高裁の初判断で、同種訴訟に影響を与えそうだ。

 争われたのは、06年8月~08年4月に京都市内のマンションの一室を借りた男性が、敷金40万円のうち特約で差し引かれた21万円の返還を家主に求めた裁判。家賃は月9万6千円だった。

 第一小法廷は、通常の使用による修繕費まで借り手に負担させる敷引特約について、「消費者の義務を重くするものだが、修繕の必要性や金額をめぐるトラブルを防ぐ意味で不合理とは言えず、借り手の利益を一方的に害するものではない」と指摘し、一般的な有効性を認めた。

 ただし、借り手側は修繕費に詳しくないことや家主側と交渉力に差があることを考慮し、「通常の修繕費、家賃額、礼金の有無などに照らして、差し引く額が高すぎる場合は無効になる」と述べ、額によっては違法となる余地は残した。

 今回の事例については、差し引く額が賃借期間に応じて18万~34万円で家賃の2倍弱から3.5倍強にあたり、礼金の支払いもなかったとして「高すぎるとは言えない」と判断した。家賃の何倍なら不当に高額になるかという基準は示さなかった。

 借り手側は「通常の使用によって生じる修繕費は家賃に含まれており、敷金から差し引けば二重の負担になる」と訴えたが、判決は「特約が成立している場合は、修繕費は家賃に含まれていないとみるべきだ」と退けた。

 08年11月の一審・京都地裁、09年6月の二審・大阪高裁も特約を有効と認め、借り手側が敗訴していた。(延与光貞)


2011年3月24日 asahi.com (朝日新聞)



最高裁判決 全文 PDF

 

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入居直後に大規模修繕 仲介業者から説明なし (東京・文京区)

2011年03月23日 | 仲介手数料・不動産業者とのトラブル

 文京区に住むAさんは、昨年の12月にこの賃貸マンションに入居した。このマンション全体は分譲マンションでAさんが借りた部屋は、個人が所有し、賃貸で貸出していた。妻が今年の3月に出産予定で、生まれてくる子供のためにも日当たりがよく静かな環境のマンションということでこの賃貸マンションを借りることにした。

 ところが今年の2月に入り「4か月の大規模修繕の工事に入り、コンクリートに穴をあける際の騒音、外壁の塗装による部屋の日照が悪くなるなどのご迷惑をおかけします」という通知が入った。そのような説明は重要事項の説明の際にも仲介業者からは聞いておらず、大規模修繕が事前に判っているならば、生まれてくる子供のために入居しないと思い組合事務所に電話した。

 組合では、そのようなことは消費者契約法の第4条の不利益事実の不告知に該当し、契約そのものを取消すことができると説明した。Aさん「仲介業者と交渉してみます。また、あわせて家賃の値下げ交渉もしてみます」と語った。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地代値上請求を拒否 (東京・足立区)

2011年03月22日 | 地代の減額(増額)

 足立区大谷田で約90坪の土地を賃借しているAさんへ昨年11月に地代値上げの通知が送られてきた。地代の額が他の賃借人と比べ公平性を欠くという理由だった。早速組合へ相談に行った。組合では、賃料の値上げ・値下げについては双方の合意が原則であること、一方的な通知に応じる必要がないことを説明した。

 そして地主に対して「一方的な値上げの請求は認めない。地代額は当事者間の協議によって決定することを原則として考えており、現行地代額で引続き支払うこと」を書面にして通知した。

 12月末にいつも通り地主の所に地代を持っていくと、現行地代額では受け取れないと拒否された。今年1月5日に東京法務局に組合役員と一緒に行って貰い供託して来た。念のため地主に対して文書で通知した。現在、地主から何ら連絡はなく今後地主の出方を待ち、対処していくことを組合と確認した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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『全国追出し屋対策会議』の設立2周年の集会、 一日も早い規制法案の成立を

2011年03月18日 | 家賃保証会社・管理会社・(追い出し屋)

 2月19日に東京の文京区で『全国追出し屋対策会議』の設立2周年の集会が開かれました。

 当日は、北海道大学大学院法学研究科教授・日本居住福祉学会理事の吉田邦彦教授が「住宅政策の貧困と居住福祉学―ハウジングプア・貧困ビジネスの現実と同法学の問題意識及び諸問題」というテーマで基調報告を行いました。「昨今の経済事情の不況による居住不安が表面化した。これに民法学は対応できているのかと考えると心許ない。しかし、『反貧困ネット』や『全国追出し屋対策会議』の運動は貴重な存在である。日本では居住問題を市場原理にまかせてしまっている。このような住まいにおける間違ったマインドコントロールを打破していくことが必要である。そのためにも公的保証制度が大事になっている」と述べました。

 昨年参議院では通過し、今現在衆議院で継続審議しとなっている「追出し屋規制法案」について全国会議の代表幹事の増田弁護士が情勢報告を行いました。国会の混乱で審議が行われていない結果、いまだに保証会社による追出し行為などの被害が後を絶たない。衆議院で速やかに審議し、一刻も早い法案成立を求めるとともに居住の安定をつくるうえで、家賃補助制度の確立など根本的な住生活の転換を求めていくことを訴えました。同時に、この法案がもっている家賃滞納者のデーターベース化については信用保証会社や携帯電話のクレジットカード利用状況の悪用などによる問題を指摘し、禁止をするよう求めていくことを訴えました。

 その後、実際に被害のあった当事者から、問答無用で部屋のカギを交換され、室内の荷物を処分された生々しい実態が報告され、参加者からは、その時の心境などが質問されました。また、東京日野市の高幡台団地でUR都市機構が住民に対して、耐震不足を理由に明渡を強要している問題を居住者が報告し、段ボール一箱分の裁判文書を送られてきたなどと報告しました。

 諸団体からは全借連の佐藤副会長、住まいの貧困ネットの稲葉代表、住まい連の坂庭代表幹事が連帯の挨拶を行いました。

 

 

全国借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 建物の滅失(火災・天災・地震)と借家権 

2011年03月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

【問】 火災の類焼によって借家が焼失してしまいましたが、借家権はなくなってしまうのでしょうか。災害の場合も同じですか。


【答】 建物が火災で焼失したり、地震で倒壊したりした場合を総称して「滅失」といいます。そして、建物が滅失すると、賃貸借契約の目的物がなくなったので、契約そのものも消滅するというのが一般的な解釈です。従って、一般的にはご質問の場合借家権はなくなるといわなければなりません。災害の場合も同様です。

 ただ、例外として「罹災都市借地借家臨時処理法」という法律があります。この法律は、もともと第2次世界大戦による戦災を対象としたものでしたが、その後、大規模な火災、地震、風水害その他の災害があった場合に、政令によって地区を定めて準用できることになっています。

 もし、災害があって、しかも政令によって法律が準用される地区とされますと、災害によって建物が滅失した時の借家人には、いろいろな優先権が与えられます。それを次に列挙します。

 (1)罹災建物の敷地又はその換地について、土地所有者や借地権者(借地人)がまだ建物を建てて使用していない場合には、政令施行の日から2年以内に、土地所有者に対して建物所有目的の借地を申出ることによって、他の者に優先して、相当な借地条件で借地権を取得できます。

 この場合、土地所有者が右の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしなければ、その3週間経った時に申出を承諾するものとみなされますし、その拒絶には、正当事由がなければなりません(2条)。

 (2)罹災建物の敷地又はその換地に借地権者がいても、同じくまだ建物所有目的で使用されていない場合には、政令施行後2年以内に、その借地権の譲渡の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な対価でその借地権の譲渡を受けることができます。

 この場合、譲渡の申出を受けた借地権者の取扱いは、(1)の土地所有者の場合と同様です。そして右の場合の借地権譲渡は、賃貸人が承諾しなくても、承諾したものとみなされます(3条、4条)。

 右の2つの場合に、借家人の取得した借地権は期間を定めない場合は10年、期間を定める場合は10年以上の契約をしなければなりません(5条)。

 (3)罹災建物の敷地又はその換地に、第三者が最初に建物を築造した場合、滅失当時の借家人はその完成前に借家の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な借家条件で借家権を取得できます(14条)。

 以上が主なものです。右の借地または借家の条件について、当事者間の協議が整わないときは裁判所に申立をすれば、裁判所が「従前の賃貸借の条件、土地又は建物の状況その他一切の事情を斟酌して」(15条)定めてくれることになっています。

 また、1つの罹災建物について、数人の借家人がいて、みんなが右の申立をした場合で、その割合について当事者の協議が整わないときも、同じく裁判所が割当をすることができることになっています(16条)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


関連
【Q&A】 大震災で借家が全壊したが救済措置があるか

【Q&A】 大災害時に借地上の建物が滅失

「地震に伴う法律問題Q&A」(近畿弁護士会連合会編)<PDF版> (絶版のため(株)商事法務HPで公開)

Q&A災害時の法律実務ハンドブック改訂版(平成23年6月発行)(関東弁護士会連合会編集) (新日本法規出版株式会社)

罹災都市借地借家臨時処理法の改正に関する意見書
日本弁護士連合会  2010年10月20日

 

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【Q&A】 「更新料支払特約」

2011年03月16日 | 更新料(借家)

【問】 契約書に「更新する場合は更新料を新家賃の1か月分支払うこと」と書いてあります。この場合、更新料を支払わなければ更新できないでしょうか。


【答】 更新料というのは、契約期間の定めがある建物賃貸借において、契約期間が満了し更新するときに、借家人から家主に支払われる金銭です。

 建物賃貸借契約は、契約期間が満了しても、当然には終了するものではなく、家主に、賃貸借契約を終了させるべき正当の事由がなければ、前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされています。つまり、家主が建物の明渡を求めるには、正当の事由が必要であり、これがない限り、契約期間満了後も、借家人は建物を今までと同様賃借していくことができるのです。

 結局契約の更新に際して、更新料というのは、法律上何らの定めもなく、更新料を請求する根拠はありません。

 ところが、実際には、借家契約の更新に際して、更新料の支払いが行われているのは、一部の悪質な家主が、借家人の弱い立場に付け込んで取り立てて来たからにほかなりません。

 更新料の性格については、賃料の前払い的なものとみる考え方や、賃料の後払いとみる考え方あるいは更新を円滑にするための安心料とみる考え方がありますが、いずれにしても納得できる理由づけとなっていません。

 ところで、最近、契約書において、あらかじめ、更新時には更新料を支払う旨の特約を付けた場合が増えてきています。このような更新料支払い約束のある場合、更新料を支払わなければ更新できないかが問題となります。

 この支払い約束の効力については、本来、契約更新に当り、家主に何らの正当の事由がないのに、更新料支払いという経済的な負担を強制することになるので、借家法6条(借地借家法30条)により借家人に不利な特約として無効というべきです。あるいは、法定更新の場合には、借家人は、何らの経済的負担なくして更新の効果を受けることができるとする借家法の趣旨からして、その支払い約束は、法定更新の場合には適用がないというべきです(最高裁昭和57年4月15日判決)。

 しかしながら、判決の中には、支払い約束した更新料の額が、家賃の1~2か月分程度であれば支払約束を有効とするものがあり、不払の場合、「更新料は賃料都は法律的には別個であるから」賃貸借契約の解除原因とならないとする判決(東京地裁昭和45年2月13日判決)と「更新料の支払い義務は賃借人としての重要な債務であるから」賃貸借契約の解除原因となるとする判決(東京地裁昭和57年10月20日判決)とがあります。

 後者の場合でも更新料不払いがあっても家主との間の信頼関係を破壊したと認められない限り契約解除は認められませんので、期間満了時には、家主との間で、故意に協議を回避するようなことをせずに誠実に協議をする必要があります。

 

東借連常任弁護団解説

あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


関連判例
①「法定更新の場合、賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には、適用の余地がない」(東京高裁昭和56年7月15日判決 東高民時報32・7民166)

②「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(最高裁昭和57年4月15日判決 昭和56年(オ)第1118号)

 

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【Q&A】 「家賃を滞納した場合」

2011年03月14日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

【問】 月末に、うっかりしていて家賃を支払うの忘れました。家主は、契約書の「1か月たりとも家賃を滞納した場合は催告なく契約を解除できる」という条項を示して明渡を迫ってきました。応じなければならないでしょうか。


【答】  借家契約は、家賃を家主に払ってその対価として借家人が借家を使用するという契約ですから、家賃の支払いは借家契約の最も重要な部分です。従って、一般的に、家賃の不払は家主が借家契約を解除して明渡を求める大きな理由となります。

 しかし、借家人の側から言いますと、長い間借家をしていれば、何かの理由で1回や2回家賃の支払いができなかったということは有り得ることです。しかも、借家をしてそこで生活し、あるいは生活のための家業をしているわけですから、1回や2回家賃の支払和なかったという理由で簡単に借家契約が解除され明渡が認められたのではたまったものでありません。

 このように、建物の賃貸借は、売買などと違い、長い期間にわたる継続的な関係の上に成り立ち、そこで生活や営業が営まれているわけですから、そうした関係の中で、家主と借家人の権利義務を見ていかなければならないのは当然です。

 従って、家賃の不払が借家契約の解除の理由になるかどうかについても、継続的な契約関係の中で家主と借家人の信頼関係が破壊されたかどうかを基準にして考えていく必要があります。

 では、どのような家賃の不払が、信頼関係を破壊し借家契約解除の理由になるのでしょうか。 

 例えば、裁判所の判決を見ると7か月分の家賃を延滞した例で、延滞の原因にやむを得ない事情があり、催告期間経過後数日で延滞した家賃を提供していることなどを考慮して解除を認めなかった判決(神戸地裁昭和30年1月26日判決)がある反面、4か月分の家賃を延滞した例で、借家人側に不信行為があった場合に解除を認めた判決(東京地裁昭和34年4月8日判決)もあるなど、単純に家賃を延滞した月数だけで形式的に解除ができるかどうかが判断されるわけではありません。

 結局、家賃の不払で借家契約が解除されるかどうかは、不払の月数だけではなく、不払をした事情やそれまでの借家関係(例えば過去に不払をしたことがあるかどうかなど)を総合的に考慮し、信頼関係の破壊といえるかどうかを判断して決定されることになります。

 あなたの場合、家賃の不払が信頼関係を破壊したとは言えませんので、家賃を持参し(または送金し)、家主が受け取りを拒否した場合は、供託すればよいわけです。

 なお、あなたの場合、家賃の不払があったときは催告なしに借家契約の解除ができるという特約(無催告特約といいます)があるようですが、このような無催告特約は、催告なしで解除しても不合理とは言えないような事情がある場合には無催告で解除権を行使することが許されるという意味の約束で、その限度でのみ効力をもつとされています(最高裁判所昭和43年11月21日判決)。この判決に照らすと、あなたの場合、家主の催告なしの解除自体有効とは言えません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「値上げ請求で家賃の受取りを拒否された場合」

2011年03月11日 | 弁済供託

【問】 家主に今までの家賃の2倍の値上げを通告され、「とても払いきれない」と言ったところ家賃を受取ってもらえず、4か月も溜まってしまいました。どうしたらよいでしょうか。


【答】 借家人が家賃をもって行っても家主が受取らないことがよくあります。あなたの場合のように、家賃値上げを要求して要求額どおりでなければ受取らないこともありますし、明渡を要求して受け取らなかったり、特別に理由も言わないで受取らないことさえあります。

 家賃を支払うことは借家人の最も基本的な義務ですから、家主の方では受取るのに借家人が支払わなければ、借家人は家賃の支払い義務を果たしたことにならず、借家契約を解除されても仕方がありません。

 反対に、借家人が家賃を払おうとするのに家主がこれを受取らなければ、借家人は家賃の支払い義務を怠ったとはいえず、家賃滞納を理由に借家契約が解除されることはありません。家賃の値上げを請求された場合でも、借家人としてはその値上げの額を争い、値上げの額が裁判で決定されるまでは、自分が相当と考える家賃(今までの額でも構いません)を支払っていればよいのですから(借地借家法第32条2項)、借家人がその家賃を支払おうとするのに家主が受取らなかった場合、借家人が責められることはありません。

 そうすると、家賃を受取らなかった場合には、そのまま放っておいても構わないものでしょうか。確かに、理屈の上では前で述べたように構わないのです。しかし、現実にはそこに種々の問題が生じ、家主に不当な口実を与えることにもなりかねません。そこで、こういう場合には家賃を供託すれば家賃を支払ったと同じように取扱うという制度があります(民法494条)。

 供託の方法は簡単です。これまで家賃を家主に持って行ったり送金していた場合(持参債務)は家主の現住所を管轄する法務局又はその出張所に供託します。また、家主が家賃を取りに来ていた場合(取立債務)は借家人の現住所を管轄する法務局又は出張所に供託します(民法484条)。

 法務局には、供託用紙が備えてありますから、それに必要事項を記載し、供託金と80円切手を添えて窓口へ提出すればよいのです。

 ところで、どんな場合でも供託をしておけば安心だというわけではありません。供託が有効であるためには、借家人が家賃を現実に提供したのに家主がこれを拒絶したという前提事実が必要です。

 よく、どうせ受取ってもらえそうもないからすぐ供託しましたということを聞きますが、このような供託は無効で何の意味もありません。この提供とは、持参債務の場合は家主に家賃を持参することであり、取立債務の場合は支払いの準備をし、その旨を家主に通知することです(民法493条)。そのうえで家主が受取らなかったり、取りに来ないかった場合に、初めて供託することになります。1度この手順を踏んでおけば、次の月からは、家主の態度が変わらない限りいちいち家主に家賃を持参したり、家主に通知したりする必要はありません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


 

借地借家法
借賃増減請求権
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

民法
第494条 
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

 

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【Q&A】 「家賃値上げ請求」

2011年03月10日 | 家賃の減額(増額)

【問】 借家契約の更新のたびに家主から家賃の大幅な値上げを請求されて困っています。どうすればよいのでしょうか。


【答】 家賃は、家主と借家人との合意で自由に決めることができます。その額に法律上の制限はありません。家主が家賃の値上げを請求してきた場合にも、家主と借家人の間で話合いがまとまれば、家賃はそれで決定されます。

 問題は、家主からの値上げ請求に対して借家人が納得できない場合です。借地借家法は、家賃の値上げが請求できる場合として、①土地や建物に対する租税その他の負担の増加、②土地や建物の価格の上昇その他の経済事情の変動、③近隣の家賃と比較して現行の家賃が不相当に低くなったとき、の3つの場合を挙げています(32条1項。この条項は借地借家法施行前からの借家契約にも適用されます)。①から③のいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ、家主は値上げを請求することはできません。

 なお、旧借家法の場合は、②の「その他の経済事情の変動」という言葉はありませんでした。借地借家法制定の国会審議の中で、政府は、この意味について、物価や一般国民の所得、労働者の平均賃金などの変動のことで、これまでの家賃に関する裁判実務や鑑定実務で考慮されてきた要素に過ぎないから、その内容は旧借家法と全く変わらず、旧借家法の場合よりも値上げ幅が大きくなることはないと述べています。

 借家期間が2年とか3年とかの短い期間の場合には、この期間は家賃の据え置き期間と解釈されますから、家主はこの期間は値上げを請求することはできません。逆にいいますと、家主にとってはその期間が切れたときに値上げのチャンスがあるわけで、あなたの場合もそのケースです。しかし、前記のように、その場合でも①から③のいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ値上げはできません。家主の言い分にそのまま応じることはありません。

 値上げ額について家主と借家人の間で意見が一致しないときは、借家人が相当と考える額(現行家賃を下らなければよいのです)を支払っていれば十分です(32条2項本文)。

 借家人が相当と思う家賃を払おうとしても家主がその額では受取れないといって受取りを拒否した場合には、直ちに供託することが大事です(供託の前に必ず1度は家主に家賃を持参する必要があります)。供託をしておけば、家賃の不払を理由に家主から借家契約を解除されることもありません。

 交渉がまとまらなければ、家主は裁判所に申立をすることになるでしょうが、最終的に裁判で決まった家賃の額が供託した額より多い場合には、その差額に年1割の利息を付けて家主に払うことになります(32条2項但書)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「契約の更新」

2011年03月09日 | 契約・更新・特約

【問】 借家の契約期間が満了したので家主が出ていってくれと突然言ってきました。どうしたらいいでしょうか。


【答】 家主の言い分は、借家契約の更新を拒絶するから借家を明渡してくれということです。家主が借家契約の更新を拒絶する場合、次の要件を満たさなければ更新拒絶はできません。

 第1に、家主は借家期間が満了する1年前から6か月前までの間に借家人に対して更新を拒絶する旨の通知をしなければなりません。借家契約でこの通知の期間を短縮するという約束をしても家主ついては無効です(借地借家法26条1項、同法30条)。

 第2に、第1で述べた更新拒絶の通知をしても、借家人が借家期間満了後も依然として借家を使用している場合は、家主は借家人に遅滞なく異議を述べなければなりません(借地借家法26条2項)。

 第3に、家主に自分の方でどうしてもその借家を使用しなければならない等の正当事由が必要です(借地借家法28条)。この正当事由については【Q&A】 「正当事由とは何か」を参照して下さい。この正当事由は、更新拒絶の通知をした時から借家期間満了の時まで存在しなければなりません。

 家主の更新拒絶がこれら3つの要件満たさない場合には、借家契約は自動的に更新され、前の契約と同じ条件で契約をしたものとみなされます(更新が確定したものとして取扱われる)。これを法定更新といいます。ただし、借家期間については例外で更新後の借家契約は期間の定めのない契約になります(借地借家法26条)。

 ご質問の場合、借家の期間満了後に家主が突然出ていってくれといてきたというこのですから第1の要件を満たしておらず、借家契約は法定更新されています。家主の要求に応じる必要はありません。

 ただ、家主が法定更新後に明渡を求めた場合には、借家契約の解約の申入れと考えられます。なぜなら家主の明渡請求には解約申入れの意味もあるというのが判例(最高裁判所昭和36年11月7日判決)で、法定更新後の借家契約は前記のとおり期間の定めのない契約になり、期間の定めがない場合には家主はいつでも解約の申入れをすることができるからです。

 では、家主から解約の申入れがされると借家契約はどうなるのでしょうか。解約の申入れが次の要件を満たすと、借家契約は解約申入れの日から6か月後に終了することになります(借地借家法27条1項)。

 第1に、解約申入れから6か月経った後も借家人が依然として借家を使用している場合は、家主は借家人に遅滞なく異議を述べなければなりません(借地借家法27条2項)。

 第2に、更新拒絶の場合と同じように、家主に正当事由がなければなりません(借地借家法28条)。この正当事由は、解約申入れのときから6か月間存在しなければなりません。

 これら2つの要件を満たさない場合、借家契約は終了せずに続いていくことになります(借地借家法27条2項)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より 

 


借地借家法
建物賃貸借契約の更新等
第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 

 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

解約による建物賃貸借の終了
第27条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。

2 前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。  


建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件
 第28条  建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 

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