(前回からの続き)
とまあ、本ブログのあちこちで綴っていること―――資産バブル崩壊に始まる世界金融恐慌に至る道筋―――を前回、ひとまとめに書いてみました。これを予想し(?)、先日の「伊勢志摩サミット」において「リーマン級」の危機(Lehman-scale crisis)再燃を参加各国に警告したとされる日本政府・安倍政権の対応は妥当だったと考えています。
なので、むしろ心配なのは「危機とは言えない」なんて超のんきな(?)コメントを返した英仏両国そしてアメリカなどの日本以外のサミットメンバー国のほうでしょう。この破局に陥って悲惨な目に遭いそうなのは自分たちのほうだというのに・・・
・・・じつは欧米諸国は、わが国が指摘するまでもなく、巨大リスクが迫っていることを本心では知っているはずです。よって彼らは「何でサミットの場でそんなデリカシーのないことを口にするんだ、日本は」と胸のうちでは超イラつきつつ、それでも表向きは「何か問題でも?」みたいに平静を装うしかないのでしょう。ここでもし日本の見解に同調し、そのとおり危機の瀬戸際だ、なんて認識を示したら・・・その国は通貨・株式・債券の「トリプル安」に見舞われてしまうかもしれませんからね。
で、このときとくにコワイのが、これら諸国の「虎の子」(?)である銀行群への悪影響。FSB(Financial Stability Board)等によれば、世界には「大きすぎてつぶせない(too big to fail)」ことになっている巨大銀行が30行(2015/11時点)あるとされていますが、そのうちの18行がサミット参加欧米6か国に本拠を置いています。その内訳は米8、英仏がそれぞれ4、独1、伊1(なお日本は3)。これらは文字通り、世界の金融システムに重大な影響を及ぼす銀行(global systemically important banks:g-sib)であるため、上記事態になったら絶対に破綻させずに何が何でも助ける!ということになっている(って、そこまでしなくてもいーんじゃない!?)のですが、これはつまり各行に対する巨額公的資金の青天井の投入を意味するわけで・・・
・・・繰り返しになりますが、英仏独伊そしてアメリカにもそんなおカネ、工面できるわけありません。となれば彼らにやれるのは紙幣の印刷―――具体的には、銀行に資本注入する大量のマネーを賄う国債を発行して、これを中銀(FRB,ECB,BOE)に直接引き受けさせる以外にはない(?)ということになる。こちらの記事でご紹介した次期米大統領の座に最も近い(?)ドナルド・トランプ氏の主張は、まさにこのあたりのことを示唆しているわけです(?)。
で、その結果どうなるのかといえば、ドル、ユーロ、そしてポンドのいずれの通貨も市場にあふれかえる―――通貨の価値が暴落する、すなわちインフレになる―――ことになってしまいます・・・。いっぽう、この手の紙幣増発の必要がない、バブルの清算を一足早く終えたわが国の通貨「円」の価値はこれら通貨に対して必然的に上昇する―――円独歩高になる・・・というのが、以前から本ブログで予想していることになります。