欧州統合の難しさ―――今回の「Brexit」をめぐる英国の国民投票であらためて多くの人々に意識されたのは、このことだったと考えています。で、これを困難にしている最大要因は・・・民族や言語や文化の違いでも、ましてや難民問題などでもなく、ズバリ「おカネ(金融)」・・・。以下ではこのあたりについて感じるところを綴ってみたいと思います。
こちらの記事を含めて何度か書いているとおり、(まあアメリカも中国も、だけど)いまの欧州はバブル崩壊後の資産デフレすなわち不動産をはじめとする資産の価値が低下している局面にあります。そんななか、各種バブルを当てにした危険な融資等で資産勘定を目一杯膨らませた欧州の各銀行には不良債権が増加してきており、このままでは過小資本から最悪、債務超過に陥ってしまうところが出てきそう。これが連鎖的に起こったら金融恐慌は不可避で欧州経済は壊滅・・・とならないよう、昨年3月より欧州中央銀行が量的緩和策(QE:国債買い入れ)を実施して流動性を市場に供給することで資産価格の急落を防いでいるところ(QEは一応、今年9月までの予定だが、延長は必至か?)。だがQEも問題先送りの策に過ぎず、どのみち欧州各国はバブル最終清算=抜本的な不良債権処理から逃れることはできない・・・
・・・といったあたりが現時点の大まかな欧州金融事情でしょう。で、これがどうして欧州の一体化を阻むことになるのか、といえば、上記最終処理に絶対に欠かせない銀行救済のための公的資金を(おそらく)自力で賄えそうな国と賄えない国が出てきて、双方が激しく対立するから。つまり前者に対して後者が、ワタシのところの銀行を助けるためにアナタもおカネを出してちょうだいな、と虫のいいことを言い、これに対して前者が後者に、自分の銀行の手助けは自分のおカネでやりなさい、と杓子定規(?)に突っぱねる、みたいな感じ。この両者が全面的に和解し、一緒になるなんて、常識的にまずあり得ないでしょう・・・
・・・欧州には欧州安定メカニズム(ESM)という、ユーロ圏加盟各国が資金を拠出し合って作った、上記のような金融危機に対処するための共同の枠組み(融資総額5000億ユーロ)があることにはあります。でもESMにだって、すでにそんな兆候が表れている。つまりESMのおカネにすがるのは上記後者に該当する国ばかりになっているということです。たとえば、スペインがすでに自国銀行の資本強化に充てる財政資金として1000億ユーロもの融資をしてもらっているほか、今月21日には、改革が進んでいる(マジで!?)と評価されたギリシャに対して75億ユーロの貸し付けが実行された、などといった具合・・・(これら以外にESMには、同設立前の暫定組織EFSFがアイルランド、ポルトガル、ギリシャに融資した合計約2000億ユーロの債権が引き継がれている)
・・・こんな様子を見ていると、上記前者に該当する国・・・のなかでもESM最大の出資者(同割合27.1%)のドイツのイライラぶりが容易に想像できるというものです。ドイツ人にとっては、自分たちのおカネが他国の尻拭いに使われるうえ、返済されそうもないわけですからね・・・(!?)