日本政府による先月11日の尖閣諸島国有化以降、日中関係が冷え込んでいます。
そもそも尖閣諸島はわが国固有の領土であるから、同諸島領有権問題はいかなる国との間にも存在しない、という日本政府の立場に個人的には同意しています。それでも以下の2つの点からみて、今回の政府の国有化措置は適切とは言い難いだろうと考えています。
1点目は当然のことながら日中関係の見地から。
わが国の側からみた尖閣諸島の領有権の解釈については上のとおりです。そして竹島とは違って尖閣諸島にはわが国の実効支配が及んでいます(あやふやな感じは否めませんが・・・)。したがって、中国側が尖閣諸島周辺の領海を侵犯したり同諸島に上陸でもしない限り、現状のままで静かにしておき、わが国からはあえて「国有化」などを強行して騒ぎ立てする必要などなかったのに・・・と思います。
一方中国は、中国なりの言い分で尖閣諸島は中国の領土だと主張しつつも、これまではわが国が踏み込んだアクションを取ってこなかったので対抗措置を控えていた、という感じがします。それが一転、日本側が尖閣諸島を国有化して「尖閣諸島は日本のものだ」という姿勢を明らかにしました。そうなれば以下の点から中国としては黙っていられないはずです。
まずは中国共産党内の主導権争いとの関係です。
現在、中国は10年ぶりの国家主席交代期にあります。一応は習近平副主席がそのまま昇格する予定のようですが、最近、同氏が外国要人との会見をキャンセルするなど、去就がはっきりしないことが何度かあり、一部には同氏自身の健康問題や共産党内部の権力闘争の存在がささやかれているようです。
こうした微妙な時期に領土問題が起これば、当然ながら中国の権力者としては日本に強硬な態度を取ろうとするでしょう。少しでも日本に融和的な姿勢を示せば「外国に弱腰だ!」とみなされて非難され、最悪の場合は失脚するおそれがあるからです。あるいは軍部の台頭を招く懸念も高まります。そのため中国共産党の指導層は、少なくとも新国家主席の体制が無事発足し、同体制がある程度安定するまでは、日本に対して厳しい手を打たざるを得ないでしょう。
次に、同じように島嶼部の領有権紛争を抱える東南アジア諸国との関係です。
以前から中国は尖閣諸島に加えて南シナ海の島々も自国の領土と主張しています。もともと第二次大戦前までは、これらの島々(スプラトリー諸島など)は日本の領土で、同じく日本の占領下にあった台湾に所属していました。戦後、台湾は中国に返還(?)されたのだから、台湾所属のこれらの島々も中国のものになった、という理屈です。そのため、ベトナムやフィリピンといった紛争相手国への対抗上、中国としてはここで尖閣諸島に関して日本に対して妥協的な姿勢を見せるわけにはいかないということになるでしょう。
かくして今回のわが国の尖閣国有化は、ある意味で中国を引くに引けない状況に追い込んでしまいました。
その後の日本政府の対応ぶりを見ていると、どの程度中国の反発や対抗措置を事前に予想していたのか、そして何よりも日中間の政治・経済・文化などのさまざまな関係を損なうリスクは覚悟の上での宣言だったのか、はなはだあやしいと思わざるを得ません。まさか本当に「中国の反発がこれほど強硬とは想定外だった」というのならば、見込み違いもはなはだしいといったところでしょう。こうなってしまったからには、せめて日本政府には中国にいる邦人の身辺や財産等が危険にさらされることのないよう、万全の対応をしてもらいたいものです。
(続く)
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