(前回からの続き)
「カブノミクス」(「アベノミクス」唯一の取り柄「株のみ」)崩壊阻止に向けた円安株高誘導策の一環である日銀の「マイナス金利」は、ほかならぬ日銀自身を傷つけることになるでしょう(?)。以下ではそのあたりについて考えることを綴ります。
日銀のバランスシートは下記のようになっています。
FY2015上半期時点:資産額366.1兆円、純資産額3.8兆円
FY2014上半期時点:資産額277.1兆円、純資産額3.5兆円
1年で89兆円も資産額が膨らんでいます。当たり前ですが、その増分のほとんど(80兆円)が国債です。資産額がこうして32%も増えたのに純資産の増加率は8.4%にとどまっています(自己資本比率は低下)。いかに日銀の国債購入が投資効率の悪いものか、ようするに高値掴みなのかがよく分かるというもの。
で、これからは前述のようにリターンがマイナスになる国債が日銀の資産勘定に増えていく、ということはこれが増えた分だけ、日銀の自己資本は減少することになるわけです。日銀にはコスト削減(付利の引き下げ等、もちろんその良し悪しは別)の余地や、他の資産がもたらす利子・配当金があるとはいえ、上記のようにその財務はとても脆弱なだけに・・・
足元では長期金利までがとうとうマイナス、つまり10年よりも短期の国債の利回りはすべてマイナスの異常事態です。それほどの高値でも国債が買われているのは、投資家に「最後は日銀が買値よりも高い価格で買ってくれるんじゃね?」みたいな思惑があるからこそ(ってコレ、モラルハザード?)。こうしたヘンな期待(?)を裏切ったら(マイナス金利をやめたら)国債価格は暴落し、彼ら本邦金融機関の損失が急増して金融システムが危うくなる、だから日銀はマイナス金利を続けざるを得ないし、損を承知で価格がますます上がる国債を買い入れるしかないけれど、そんなことを続けていたら自己資本がどんどん減って・・・最後は悪夢の債務超過!?
・・・まあさすがにそこまで逝かないよう、マイナス金利の導入に当たって日銀首脳陣は慎重にその副作用をシミュレートしたと思われますが・・・逆にそこが投機筋につけ込まれる隙となるでしょう。つまり「日銀にはこれ以上、無茶(自己資本の自傷行為)はできまい」とマーケットに見透かされ、近々激しい円買いドル売りを仕掛けられることになるのではないか・・・。そのとき黒田日銀、そして安倍政権はいったいどうする気なのか? ここで何も手を打たなければ円高株安が進み、年金マネーの運用損害額はますます拡大してカブノミクスは壊滅、安倍政権の支持率は急降下必至・・・!?
・・・で、両者は最後にヤケッパチになる・・・(!?)。つまり日銀は自ら債務超過逝きも辞さないむちゃくちゃな金融緩和を発動、ってことは「円」切り下げ覚悟のマイナス金利拡大へ、そして政府は日本にとっては「落ちてくるナイフ」である「ドル」を先述防衛線「1ドル112円」での為替介入でしこたま抱え込むことに。これこそ真の「どえらいリスク」(国家の金融システムと財政の双方を危機に陥れるもの)というものでは・・・
こうしてカブノミクスは絶望的なまでの高値掴みの末、年金基金ばかりか国富まで派手に吹き飛ばそうとしているわけです(!?)。そのツケの支払い(日銀への資本注入・外為特会の為替差損の補填、などなど)は結局、年金大幅カットとか大増税のかたちで国民に回ってくるのでしょうか・・・!?
・・・なんて憂鬱な気持ちになっていたら先月29日、財務省は1月28日から2月25日までの為替介入額がゼロであったと発表しました。であれば、個人的憶測であるカブノミクスの上述為替の防衛線死守のアクションは、ここまではなかった、ということになりますね。本稿執筆中、ずっとドル/円を注視してきましたが、やはり112円が下方抵抗ラインのような動きが見られます。政府・日銀が介入しなかったのであれば、これはすべて投機筋の演出なのか・・・? ともあれ、カブノミクスをめぐるわたしの懸念のひとつ、両者が112円という超円安局面でドルを大量に高値掴みする事態は回避された、ということで、少しだけホッとした次第です。今後も国家国民のため、どうか落ちてくるナイフを掴まないでくれよ、と祈らずにはいられません・・・