マネーゲームの元手にされ、目の前で急速に安くなる「円」。どんどん上がる生活必需品の価格。そのせいでゆとりをますます失う日本国民・・・。それを知ってか知らずか、さらに輸入物価を引き上げるべく追加緩和を目論む黒田日銀とそれを待ち望む安倍政権(!?)。この国はいったいどうなってしまうのか・・・。
本ブログでしつこく綴っているように、いまの日本経済にとって「アベノミクス」の意図的な「円安誘導」は害悪のほうがずっと大きいと考えています。その円安ですが、アメリカの利上げが近づき、日米金利差が広がるとの観測から、さらに進行する気配・・・。こちらの記事などでも書きましたが、実質実効為替レートで見た現在のレートは歴史的なくらいの「超円安」(4月の平均名目レート1ドル119.57円、実質実効レート同71.99円)、つまり円安のデメリットがメリットをはるかに上回る状態といえるのに、「追加緩和期待」って、これでも円安の度合いが足りないというのか・・・
何度も繰り返して恐縮ですが、上記のような苦痛を国民生活にもたらすほどの円安、どこかの新興国の通貨が不可抗力的にドル等に対して安くなっていくのとは違って、政策的に「そうしよう!」と意識して起こされたものだから、事は深刻です。逆にいうと、政策を転換すれば為替は円高に戻る可能性大なわけで、その意味ではエネルギーコストや食料品の円建て価格の高騰はアベノミクスが選択したとおりの結果といえます。もちろん多くの企業や家計にとってはダメージ以外の何ものでもないはず・・・
経済成長を図るためにはインフレが必要だ―――インフレ目標年率2%を掲げる安倍政権は、こうしたリフレーション理論に基づき、インフレを人為的に起こそうとしてきました。その手として選んだのがベースマネー積み上げを通じた「円安誘導」。円安ドル高にして原油や小麦などの輸入原材料価格の円建て価格を上昇させて物価を引き上げるというもの。
ですが・・・国民生活を豊かにするという方向から見たとき、これが間違っているような気がするわけです。たしかに為替を円安に持っていけばインフレが起こります。しかしインフレはインフレでも、こっちは程度の差こそあれ経済危機に陥っている国々が苦しむインフレと同種の「悪いインフレ」といえるもの。なぜ「悪い」インフレなのかといえば・・・通貨安になった分だけ「富」(≒日本国の純資産)が「国外」へ流出してしまうから。賃金インフレが、その賃金の増分が「国内」(の勤労者のフトコロ等)に留まり、循環する(消費等に使われて国内の誰かの所得や預貯金になる)のと大違い・・・
当たり前ですが、円安ドル高になると、原油など、ドル建てで取引される物品の輸入国に支払う「円」がかさむことになります。これを数字で表すと、1ドル80円のときに1兆円だった原油の円建て代金は同120円になれば1.5兆円と、同じ輸入量であるにもかかわらず5000億円も支払額が増加する、といった具合です。これにともなう物価上昇は生産者等のコスト回収のためであって利益の増分ではないうえ、最終的にはわたしたち消費者がそのコスト負担をさせられて苦しむことに・・・
このあたりが象徴的に反映されたデータのひとつがエンゲル係数。2014年度は24.3%と21年ぶりの高水準に達しました。こちらの記事に書いたように、アベノミクスは上述「悪いインフレ」を煽ったうえで消費税率を引き上げたわけですから、まあ当然の結果だし為政者の思惑のとおりなのでしょう。そのせいでお母さんは美容院の回数を、お父さんはゴルフの回数をそれぞれ減らす破目に・・・。その分、国民生活から豊かさやうるおいが失われ、わが国のGDPは着実に減っていくことになります・・・。