「巣ごもり」に続いて、またも合理的な判断が邦銀から示されたな、と感じます。さあどうする黒田日銀、そして「アベノミクス」・・・
このほど、三菱東京UFJ銀行(MUFG)が国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー:PD)の資格を返上する方針であることが明らかになりました。PD(制度)とは、2004年10月に財務省によって創設された制度のことで、「国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が『国債市場特別参加者』として特別な資格を図ることを目的としています」(財務省HP)。PDは応札責任(すべての国債入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の応札をすること)および落札責任(短期~超長期の各ゾーンについて一定割合以上の額を落札すること)などの責任が負わされるいっぽう、買い入れ消却入札、流動性供給入札などのほか、財務省開催のPD会合に参加することができます。
さてこのPD資格、どうしてMUFGはこのタイミングで返上しようとしているのでしょうか。いろいろな憶測が流れているようですが、個人的には、同行はPDとしてもうこれ以上、価格が高過ぎる国債を大量に買わされるのは道理に合わないと判断したからだと考えています。まあ常識的な感覚でしょう。そのとおり、現在の国債価格は誰がどう見ても高過ぎ、つまりはこの先、下がるおそれがあるため、PDのままでいてこれを高値で掴まされ続けたら同行は多額の評価損を被るリスクが高いということです。
で、国債価格が異様なレベルにまで上がってしまった原因は・・・いうまでもなく日銀の「異次元緩和」(量的質的金融緩和)となります。日銀は同緩和開始の2013年春から3年以上にわたって大規模な国債購入を継続してきました。それ以前も長期金利が主要国中、最低水準だったことからも分かるように、ただでさえ高値で取引されていた日本国債の価格はこれによっていっそう上昇し、いっぽうで(長期)金利は低下を続けたわけです。
値段は高いうえに利回りは極小―――普通に考えればそんな金融商品は買われることはないはず。よってマネーは日本国債からリスク資産、つまり内外の株や外貨外債等の投資に回り、株高外貨高の資産効果がもたらされて経済繁栄!―――超ざっくりいうと、これがアベノミクスの目論見・・・でした(?)。
しかし、実際にはそうならなかった―――それでも国債は買われ続けた(利回りは下がり続けた)わけです。その理由はこちらの記事など、あちこちで綴っているとおり―――資産バブル崩壊局面を迎えた世界市場のどこを探しても、マネーのまともな運用先が日本国債以外に見当たらないからに尽きます。これでは当初の狙い通りにならない、何とかジャパンマネーをリスク投資に追いやらないと・・・。そのためには、本邦投資家が手を出せないくらいに国債価格を高値に持っていくしかない・・・
・・・かくして日銀によって導入されたのが「マイナス金利政策」ということになります・・・