(前回からの続き)
前回、「アベノミクス」唯一の取り柄(?)である株の資産効果を維持させるため、そしてリスク投資失敗が発生させた大損害(巨額評価損!)を取り戻すために、黒田日銀と公的年金基金(年金積立金管理運用独立行政法人:GPIF)はいずれも、日銀の追加緩和との合わせ技で(?)日本株のいっそうの買い上げ(買い支え)に走るだろう、なんて個人的な見通しを綴りました。これは当然、両者による主要企業の株式の持ち分比率の上昇をもたらし、その結果、本邦産業界の「国有化」がますます進むことになるのでしょう。まさにこれって旧ソ連や中国といった共産主義国のスタイルで、このあたりにアベノミクスが左翼的と本ブログで以前から指摘している理由の一端があります。
さらにいうと、日銀・GPIFの上記の株買いが、マーケットの地合いをほとんど無視したものであるという点も左翼的。本来、健全な株式市場では、個々の企業の株価はマーケット原理に基づいて内外の投資家の売買が均衡する水準で決定されるべきもの。そこに両者が巨大マネーを抱えて割って入り、ETF(上場投資信託)を通じてその構成株式を買いまくるわけです、「この銘柄は買い時か、それとも手を出したらヤケドしそうだから見送りか」みたいな投資家として当然の判断を一切することなく(?)・・・。となれば、日本の現在そして今後の上場企業の株価が妥当なのかが市場参加者の誰にも分からなくなってしまいます。
同じことは、こちらの記事に書いたように、日本国債(および長期金利)についてもいえます。「異次元緩和」の開始以来、日銀が国債を爆買いしているせいでその価格は、これってマトモ?と皆が首をかしげたくなるくらいに高く(金利は低く)なってしまった・・・とりわけ「マイナス金利政策」導入以後は。社債等の他の債券の価格も、この影響で「つれ高」(利回りは低下)になり、それら本当の市場価値がどのあたりにあるのか、まったく見当がつかない・・・
こうして、いまの日本の株式・債券マーケットは、アベノミクスの過剰介入によってマヒ状態・・・合理的な価格形成機能を果たす市場メカニズムが失われた状態に陥ってしまった・・・って、これまた共産圏の市場みたいにしているわけです、安倍政権・黒田日銀は。こちらの記事で、両者のやっていることは、金融当局を通じた市場管理を強める中国と実質的に同じだ、なんて記したのはそのためです。
非効率と不条理―――市場メカニズムが排除され、政府によって管理された経済・社会を覆うのが、これです。日本もそうなっていく瀬戸際にある。そもそもの意味での「右派」(≒自由主義者)が「左派」(≒アベノミクス主義者!?)を嫌悪するのは、そのためだったはず・・・。わが国がそんな共産主義の世の中になることなく、合理的な経済判断がまかり通る国であってほしい・・・と心底、祈る思いです。