どこで金融危機が勃発してもおかしくはない昨今の世界経済情勢ですが、どうやらまずはユーロ圏・・・のイタリアが火を噴きそうになってきました・・・
EU圏第三の大国・イタリアの不良債権問題がクローズアップされています。まあコレ、以前から危険視されてはいましたが、後述するような政治的な動きもあって、「Brexit」(英国のEU離脱)決定がさらに事態を深刻化させたような感じがします。
で、その不良債権額ですが、イタリア全体では約3600億ユーロと、同国のGDPの2割近くに達していると見積もられています。そして同国銀行の全資産に占める不良債権の割合は8月時点で16%と、最悪期の日本(8%)やアメリカ(5%[って、低すぎ?])の2~3倍もの高率です。そんなこんなでユーロ圏では銀行が抱えるすべての不良債権の1/3以上をイタリアの銀行が占めているそうな・・・
で、そんな伊銀のなかでも直近でとりわけヤバイとされたのが、総資産規模で同国第3位のバンカ・モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)。この銀行、不良債権比率が伊銀中、最悪レベルの約40%と、危機的な経営状態にあります。株価も7月1日時点で0.38ユーロと、2007年高値(5月)93ユーロのわずか0.4%・・・。
といったことで同行は7月、欧州中央銀行(ECB)から、バランスシートの抜本的改善を図るべく、今後3年間で不良債権を40%減らすよう求められました。これを受けて同行、そして伊政府は同月末、米銀JPモルガン・チェースなどを引受先とする総額50億ユーロの資本増強策、および92億ユーロの不良債権の証券化という枠組みを取りまとめました。これがうまくいけば同行の不良債権率は年内に18%程度にまで下がるとみられていました・・・
・・・が、その後もモンテ・パスキの株価は下げ止まらず、現時点(9/14)で0.22ユーロと、7月初旬からさらに40%以上も下落して上場来安値を更新中! ということはマーケットはこの救済策が成立するとはみていないのでしょう。まあそうだろうな、と感じます。この銀行は2014~15年にかけて80億ユーロもの資本注入を受けたけれど、現在の株価はこのとおり。ということはこの大金、雲散霧消してしまったに等しいわけで、この後の50億ユーロの追加投入だって常識的に予測すれば無駄に終わる・・・となればその新株を買ってくれる投資家なんていないだろうし、売れ残り分を保有したところで巨大評価損を被るだけだろうから、JPモルガンらは・・・
不良債権の証券化も同じでしょう。そんな証券、怪しすぎて誰も購入しないということ。まあこれらのうち60億ユーロには伊政府の保証が付くそうですが、いっぽうでこれらの多くには政府保証に必要な投資適格を格付け会社から得られないとの予想があります。なので、この銀行がそんな都合よく92億ユーロもの不良債権の切り離しに成功するとは思えません。
こうした理由から、モンテ・パスキの上記救済スキームはうまくいくはずがない―――そんなマーケットの悲観的な見通しが上記株価には反映されているわけです(?)。