スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

プロレススタイル&本性の不変性

2013-01-05 18:45:17 | NOAH
 馬場の配慮を受けた鶴見五郎は,それを明かしたインタビューの中で,自身のプロレス人生の中で,全日本に参戦していた時代が最も楽しかったという主旨のことをいっています。それは,鶴見のプロレススタイルを,馬場が肯定的に受け止めてくれたからのようです。
 鶴見は自分のポジションというものに忠実なプロレスをする選手でした。全日本では最初はインドの狂虎上田馬之助と,後半はラッシャー・木村と組んでいましたが,どちらの場合も自分が前面には出ようとせず,パートナーの方を立てることによって試合を組み立てていきました。また,対戦相手がいい恰好をしようとするのも拒まず,きちんと技を受けました。そうすれば相手も自分の技を受けざるを得なくなるというのが鶴見の考えだったそうですが,そういった部分がプロモーターとしての馬場の眼鏡にかなったのではないかと思います。ある意味では特別の配慮を受けることができたのも,そこに理由があったといえそうです。
 ジャパンプロレスとの対抗戦時代は,馬場はジャパンプロレス勢のファイトスタイルにはあまり好感をもっていなかったように思います。しかし例外的にただひとり,解説などで馬場がよく褒めていた選手がいて,それがアニマル・浜口。浜口もパートナーというか大将である長州力を盛り立てることに徹していた選手で,鶴見に比べれば観客に対するアピールなどは多かったと思いますが,鶴田や天龍の技も正面から受けていました。もちろん馬場はそれを直接的に口に出して浜口を褒めていたわけではありませんが,浜口のファイトスタイルに好印象をもっていたのは確かだと思います。それと同じようなことが,鶴見に対しても妥当したのでしょう。
 インドの狂虎もラッシャー・木村も,基本的に馬場に対して牙を剥いていました。だから鶴見の試合を馬場が解説することはありませんでした。後にラッシャー・木村が馬場とタッグを結成するようになり,鶴見は全日本では居場所をなくしてしまい,去ることになりました。結局,馬場は鶴見に対して特段に言及することなくこの世を去りましたが,本当のところどう思っていたのか,僕には興味深いのです。

 第二部自然学②補助定理四,五,六,七から理解できるのは,複数の個物によって組織されている物体は,様ざまな仕方で動かされたとしても,必ずしもその本性が変化を受けることにはならないということです。もちろんこれは物体に一般の規則ですが,人間の身体が物体であり,かつ複数の,しかもきわめて多くの個物によって組織されているということはすでに説明した通りですから,このことは人間の身体が現実的に存在するという場合にも妥当します。
 そしてこのことは,むしろ経験的に明らかなことであるといえます。たとえば現実的に存在する人間の身体の内部で新陳代謝のような現象が生じたからといって,その人間の身体の本性は何ら変わるということはありません。成長して背丈が伸びるというようなことがあったとしても同様ですし,部分的な筋肉の収縮が生じたとしても同様です。また,髪や爪が伸びたとしてもやはり同じことだからです。
 してみると,人間の身体がきわめて多くの物体によって組織されている物体であるという点に注意するなら,人間の身体というものはきわめて多くの仕方で動かされるけれども,それによって何ら本性に変化をもたらされないということが,たとえばごく少数の物体によって構成されているような個体と比較していうならば,頻繁に生じるであろうということが帰結します。いい換えるなら,人間の身体を組織しているある部分の中に何事かが生じるということは頻繁に生じるでしょうが,しかしそれによって人間の身体を全体としてみるならば,その本性に変化をもたらすことがないような現象というのも,非常に多くあるということになります。
 このとき,人間の身体を構成するある部分の中には何事かが生じているのだとしても,それを全体としてのひとつの人間の身体としてみた場合には,その中には何事も生じてはいないと理解することは,必ずしも無理な理解ではないように僕は思うのです。なぜなら,Aの中に何かが生じるという言明は,その生じる何かによってAに変化が生じるということを含意していると理解することが可能ですが,この場合には全体としての人間の身体の本性には何も変化が生じていないということになっていて,その中に何かが起こるということを,そのものの変化として理解する限り,それには該当しないということになっているからです。

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