スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

大成建設杯清麗戦&異なった行方

2021-11-19 19:32:16 | 将棋
 17日に指された第3期清麗戦五番勝負第五局。
 振駒で里見香奈清麗の先手となり5筋位取り中飛車。後手の加藤桃子女流三段は左美濃に構えました。この将棋は仕掛けた先手が飛車を見切ることができなかったために後手有利に。しかしその後に後手に手順前後が出て,一瞬は先手が盛り返しました。
                                      
 ここが後手にとって問題となった局面。☖6五桂と桂馬を逃げて☗5三歩を許してから☖5四飛と回ったため,先手にチャンスが訪れました。第1図での☖6五桂は桂馬を逃げつつ攻めに働かせる手なので味がよく感じるのですが,この桂馬は取られても先手の成銀が遠ざかるだけで,むしろ歩を垂らされる方が厳しいのです。よってすぐに☖5四飛と回っておかなければなりませんでした。
                                      
 第2図で☗6六歩と突いたので先手はチャンスを逸しました。ここは☗5二歩成☖同金☗同成銀☖同飛と交換し,その瞬間は後手の飛車が浮くので,☗6六金と打って勝負するのがよかったようです。
 3勝2敗で加藤三段が清麗を奪取。清麗は初の獲得になります。

 テンパイを果たしたパイレーツは9萬を捨てました。この牌は役との関係で,アベマズに対しては安全です。この牌は4索を捨てたときにも捨てることができた牌でした。もしそのときに9萬の方を捨てていれば,それはアベマズに対して安全にみえるので,パイレーツが順位の上昇を目論んでいるということは,他のプレイヤーに気付かれることはなかったでしょう。それはパイレーツのメリットにはなるのですが,4索を手の中に残しておくと,捨てた時点でアベマズがテンパイしていない場合,その後でアベマズがテンパイすると4索で失点してしまう可能性があります。要するに4索を残しておけば,巡目が進んでいくほどにアベマズに対する危険性は高まっていきます。よって安全度に優る9萬よりも,たとえその時点ですでに危険でも,4索の方を先に捨てるというのは,このような場合では一種のセオリーあるいは定跡といえる手筋のひとつです。
 瑞原はプロですから,このセオリーに忠実に打って,この局は進んでいきました。ですがこのセオリーを無視すると,この局の進行は異なることになります。パイレーツが4索を捨てたところで9萬の方を捨てると,その巡目にサクラナイツが4索を捨てる根拠がまったくなくなります。したがってサクラナイツは別の牌を捨てるでしょう。するとアベマズは4索をチーすることができませんから,テンパイを果たすことができません。しかしチーすることができないなら山から牌を引いてくることになりますから,パイレーツが引いた8筒を引いてくるのはアベマズであることになります。アベマズは8筒を引いてくれば5筒の方を捨てます。これは8筒がこの局におけるドラという,赤牌と同じように,役ではないけれどもそれを使って得点を獲得すると,獲得することができる得点が増加する牌であることからも確実ですし,すでにパイレーツが赤5筒を捨てている分,それをチーしなかったフェニックスに対しての安全度で優るという点からも確実です。よってアベマズもテンパイすることはできず,パイレーツもテンパイすることができません。つまりこの局の行方は,実際の進行とまるで異なったものとなるのです。

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