Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』 3等A席前方センター

2007年01月02日 | 演劇
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼~Lord of the Lies~』1回目 3等A席前方センター

今年の初芝居は新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』です。初日ですが芝居の完成度は高かったです。「リチャード三世」と「酒呑童子」がモチーフということですが世界観は今までの劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎」らしい芝居でした。今までと違うのは「リチャード三世」がモチーフということで「悪」を主眼とした部分。ピカレスク・ロマンと謳っていますが、ロマンの部分はそれほど無いですね。観終わった後、爽快感はありません。個人的には「酒呑童子」のほうのモチーフをもう少し入れて欲しかったかな。あと、どうせならもっとドロドロとした凄惨さを出してもいいなあとか。でもそんなことしたら正月から観る新橋演舞場の芝居には向きませんし、劇団☆新感線じゃなくなりますけどね(笑)。まあ、そこは個人的趣味ということで。今回の『朧の森に棲む鬼』は劇団☆新感線ならではのエンターテイメントからは外れていません。

初日を観ての感想は面白かったですけど、まだまだやれるだろうという気持ちのほうが大きいです。特にライ@染五郎とマダレ@古田新太さん。二人ともまだまだ手探りな感じ。染五郎はかなりいい芝居はしてるんですがライというキャラにハマりきってない部分多々。古田新太さんはマダレの立ち位置をまだ探ってる感じです。このマダレという役は難しいですね。キンタ@阿部サダヲさんは美味しいキャラということもあるでしょうけどほぼ出来上がっている感じ。シキブ@高田聖子さんは個人的にひさびさに大ヒットです。色んな意味で見事な女ぷりが素敵でした。ツナ@秋山菜津子さんは安定感があり切なくてカッコイイ女。もう少し弱さを出してもいいかなとは思った。シュテン@真木よう子さんは一生懸命ですがもう少し何か欲しいところです。

それにしてもライ@染ちゃんはやっぱ美しかった。特に後半、検非違使になってから以降なんて正直涎ものでした(笑)眉なしメイクが壮絶に美しい。徹底的な悪役で、やってることは本当に「最悪なやつ」なんですけど、染ちゃんがやるとどこか切なかったり哀れだったりします。人の脆さを感じさせるというか。もっともっと深化させられるはずなので期待してます。

演出の面ではオープニグとラストの美しさ、転換の上手さは相変わらず。いのうえさんらしいとしか言えない人物たちの動かせ方はもう少し工夫があってもいいかなと思わなくもないけど、定番の安心感はある。今回の不満はオープニングの大事な説明台詞を歌にしてしまったこと。歌詞がきちんと聞き取れればいんだけど新感線の音響の使い方は歌詞を聞かせるには向いてないんだよなあ。いつもほとんど聞き取れなくて、今回もマイクが割れててほとんど聞き取れない。それと一番大事なラストのライの台詞も音とマイクのせいでまーったく聞き取れない。ここはどうにかしてほしい。個人的にラストは音響効果は必要ないと思う。それとマイクもエコーをかけずに台詞を言わせてみてほしい。水音くらいなら台詞を舞台全体に通すだけの技術は染ちゃん持ってるはず。たぶん、スモークの音が邪魔だから効果音を聞かせてるんだと思うのよね。あそこのスモークの演出はちょっと失敗かなとか?あれなんとかならないかなあ。

うー、文句ついでに染@ライに着替えさせすぎでは?確か8回着替えしてるらしいです。ここで着替え必要?なとこもいくつか。いや、着せ替え人形な染ちゃんもいいんですけどね…全部素敵だし。でも2着くらいは減らせるんじゃあ。まあ、染ふぁん的に不必要なとこで体力使わせたくないとか思ってしまって(笑)今回も相当、体力を消耗する役ですからねえ…。殺陣減らすんじゃなかったの?にしても今回、いのうえさん、染ちゃんへの芝居に対する要求のハードルが高めかな、という印象。まあ、いつものことなんだけどね。

演出に言及したので脚本にも一言。中島さん、相変わらず荒くてツッコミどころ満載ですねっ。大筋は面白いのにやっぱり書き込みが足りないよう~。特にマダレとかマダレとかマダレとかシュテンとかヤスマサとか。


『朧の森に棲む鬼~Lord of the Lies~』
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
【キャスト】
ライ:市川染五郎
キンタ:阿部サダヲ
ツナ: 秋山菜津子
シュテン:真木よう子
シブキ:高田聖子
ウラベ:粟根まこと
サダミツ:小須田康人
イチノオオキミ:田山涼成
マダレ:古田新太 

2 コメント

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Unknown (もこもこ)
2007-01-05 17:08:22
最初の鬼の歌は確かに聴いてるだけでは何を言っているんだか判らないですよね。歌詞カードを観て初めて判る。良い歌詞なんですけどね。きちんと語瑠べきですよね。私は家で繰り返しCDを聞いて、あーすごく良い歌なんだな、と納得しましたが、劇場のあの場では聞こえないから、当然消化できない。もったいないです。
ラストシーンのほうは歌詞カードもないし、未消化。次回に掛けます。感想出した方が良いですね。注文すれば、いのうえさんが何とかしてくれそう。
染ちゃんの他は、ツナとシキブがツボでした。聖子さんの見せてくれる「女」がすばらしい。ツナはりりしい素敵さかな。もう少しヤスマサをきちんと描いてくれないと、ツナの妻としての気持ちが分かりにくくないですか?
あと、おまけではオーキミの「3人だけど・・・」がツボでした。次の観劇が楽しみです。
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そうそうそう (ぃよっす)
2007-01-06 13:05:35
雪樹さんの意見にうなずく私。アハハ、いつものパターンになってるなぁ。
私、シュテンも頑張ってるじゃーん、と思ったんですけど、それは最前列だったからかな?多分、2階とか3階とかで観たら印象に残ってなかったかも?
やってること・役柄上はかなりなワルだけど、なんか切なさ/哀れさを感じてしまう染ちゃん、受取手の問題か、演じ手/演出の問題か、よく分からなくなってきました…私も感想書いておいた方がいいですね。
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