Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

シアターコクーン「NODA・MAP『キル』」A席2階後方下手寄り

2008年01月27日 | 演劇
シアターコクーン「NODA・MAP『キル』」A席2階後方下手寄り

NODA・MAP作品は『贋作 罪と罰』『ロープ』に続いて3作品目です。『キル』はこの3作品のなかでは一番古い作品。まだ夢の遊眠社の残り香がある作品ということですが、なるほど。まずは言葉ありきなんですね。言葉からのイマジネーションや言葉遊びを身体を使って表現し、詰め込むだけ詰めて、解き放つ。その雑然としたエネルギーと物語。そして少年性とイノセンス。物語の構成は3重の入れ子。根底にあるテーマは古くからある親子や男女の愛憎、そして人間の業としての野心、憎しみの方向性、といったもの。わかりやすいし面白いのだけどテーマの軸が固定されてなくて少しとっ散らかっている印象も受けました。それとどことなく年代的な古さも。いえ、今でも通じるものではあるのですが、それでもなんとなく「古さ」を感じます。脚本は初演当時そのままでの提示なのでしょうか。少し手直ししてもいいかなと思わなくもない。舞台(美術)の作りはかなり面白いですし見事ですね。また演出能力の素晴らしさには惚れ惚れします。

役者では個人的に印象に残ったのは結髪の勝村政信さん。動きも台詞もしっかりしてるだけじゃなく言葉の咀嚼が深い。時々素になっちゃうのがもったいない。さしずめシラノ・ド・ベジュラック。主人公のようでした。そしてバンリの野田さん、身体能力の高さと子供のイノセンスさの表現にビックリ。高田聖子はいつもの聖子さんという感じではあるのですがやはり言葉の咀嚼の部分で消化のしかたが上手い。

妻夫木聡さんは初舞台とは思えないほどよく動きしっかり台詞をこなしていました。一生懸命頑張っている、という言葉はこういう時は褒め言葉だけではないですが、でもその言葉がしっくりくる頑張り。まだ言葉を立ち上げるというところまでには至ってないのですが素直な芝居がテムジンというキャラクターに合っていました。シルクの広末涼子さんは前半がちょっと人を惹きつけるオーラが足りない感じですし、どこか言葉が前に出てこない。しかし後半は母の部分、本当に意味での愛を知った「女性」として立った時は説得力がありました。でももう少し個性があってもいいかなあ。

残念だと思ったのがイマダ・蒼い狼の小林勝也さん。もっと骨太さや深みが欲しいなあ。声も前にあまり出てこないし。あとトワの高橋惠子さんもアンサンブルに沈んでしまう。母としての大きさとか慈愛を強烈に出したほうが面白いんじゃないかなあと思う。

そういえば野田さんの台詞回しって独特。妙に耳に残る。『キル』でも「おとーさまー」とか「かえろー」とか。感情がなさそうなところの奥に感情があるって感じ。うーむ自分の言いたいことがわからないぞ。野田メソッドのひとつなんだろうな。これを消化して言えてる人は少なかったけど。

歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』2回目 1等1階前方花道寄り

2008年01月26日 | 歌舞伎
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』2回目 1等1階前方花道寄り

千穐楽を拝見。観に来て本当に良かったと思った一日。

『鶴亀千歳』
1月ももう末ですがこの演目で一気にお正月気分が。ご祝儀舞の品のある舞踊です。この日は楽ということもあるのでしょう松竹梅の歌昇さん、錦之助さん、孝太郎さんがノビノビと踊られていたように思います。それぞれの個性がよく見えつつ、お互いのバランスもよいものでした。

尉と姥に富十郎さんと芝翫さん、お互いを労わりあう可愛らしいほのぼのとした老夫婦の舞でした。お互いの長寿を祈る、そんな想いが伝わってきました。


『連獅子』
これをその場で観ることが出来て良かったと心から思いました。本当に素晴らしかったです。

幸四郎さんは「消えゆく老獅子」でした。すべてを子へと渡す、その最後、と言わんばかりの全身全霊を賭けた渾身の気迫の親獅子でした。本当に『連獅子』の親獅子としての最後の踊りだったんだと思います。命をかけて次の世代に己の魂を渡す、そんな気概がありました。前シテの狂言師右近の舞は親としての厳しさと愛情、そしてそのなかでより強い感情としてみえたのは子の未来を案じ、心配するものでした。どこかに年老いてしまった親の脆さが透けていました。そしてそれを隠さず「生き様」を見よと、おまえに託すものがあるとそう訴えかけているかのようでした。

そして後シテの親獅子ではその託すものを全身全霊をかけて渡そうとしていました。今月の幸四郎さんの毛振りは非常に美しい安定した弧を描いた今までと違って、時に毛が下のほうに落ちがちでしんどそうでした。そしてこの日も多少下がり気味ではありましたが、渾身の気迫でしっかりと廻してきました。ぎりぎりのところの気迫。そして観客誰もが「ここら辺が限界だろう」と思った瞬間、最後の力を振り絞って毛振りを加速して廻し始めました。腰をぐっと落とし「これが俺だ、見ておけ」と言わんばかり。親として「この自分の有り様」を受け取ってくれ、そんな血を吐くような想いが込められているかのようでした。そしてそれを仔獅子が受け止めてくれた、と確信した親獅子でもありました。万感の思いが最後の顔に表れていました。

そして染五郎さんはそれをしっかり受け止めていました。子として、親の想いを飲み込んでいました。仔獅子の愛らしさは残していましたが、今回、子としての甘えはいっさい見せませんでした。次から「親獅子」としての立場に立つことへの覚悟と消えゆく老獅子への敬愛がありました。 染五郎さんは前シテで幼い可愛らしさからどんどん成長していく様を今回見せました。しっかりと地についた勢いのある仔獅子を舞う狂言師左近でした。まっすぐと親獅子を見据え、付いて行くよ、と思いを洩らさず受け止めるよ、と言っているかのようでした。

そして後シテの仔獅子では親の想いを全て受け止める覚悟の毛振りでした。幸四郎さんの親獅子がどんな終わり方にしようとかならず毛振りを合わせいく、そんな染五郎さんの仔獅子でした。すべてを渡そうとする親獅子の気迫をかならずやすべて受け止める、そんな気概がありました。いつも以上に腰をすえ、ゆったりとしたペースでの毛振りにぐっと自分を押さえ廻していきます。前回20日の日に観た時は幸四郎さんが廻せない分、フォローする形で途中から勢いよく襷~菖蒲打ちの毛振りをしてきたのですが今回、いっさいその形をとろうとはしませんでした。そしていつの間か親子の毛振りの軌道がピタリと合いました。毛先の流れのラインすらも同じでした。そして幸四郎さんが毛振りを加速した時、どことなく嬉しそうでした。ラスト、幸四郎さんが終えた後に1回多く廻した時だけちょっと勢いよく鋭く染五郎さんらしい廻し方で終わらせました。それを観て、ああ、受け止め次への覚悟をしたのだな、なんて私は想ってしまったのです。なんとも言えない鋭い、しかし豊かな顔つきでした。

この親子の獅子はまさしく霊獣たる獅子の勇壮さがあるのですが、今日は特にそれを感じました。

演奏の方々も凄い気迫でした。皆が消えゆく老獅子の幸四郎さんのために集中していった感じを受けました。獅子が出る直前の牡丹の雫の音に被さる咆哮は(小鼓の傳左衛門の掛け声)は今月、仔獅子を意識したものに感じていたのですが今日は親獅子の咆哮だったかなとか。


『助六由縁江戸桜』
楽日の河東節の旦那衆は三味線が女性、唄方が男性でした。好みなのでしょうが男性の声のほうがしっくりきます。

助六の団十郎さん、20日に拝見した時にかなり調子が悪そうで、どこまでやれるかな?と少し心配しつつの観劇でした。Bestな時に比べたらやはり疲れは見えるものの、意地を見せてくださいました。どーんとした押し出しの「まっすぐな熱」みたいなものは押さえられていますがその分、ゆったりとひとつひとつ熟成した成田屋の『助六』というものを観客に提示している感じでした。団十郎さんのいたずら坊主な茶目っ気はどこか優しいです。私は十二代目の「こりゃまた、な~んのこってい!」の言い回しが大好き。おおらかな抜け感。声のハリが元に戻るといいなあ。

揚巻の福助さん、とても良かったです。揚巻としての大きさもだいぶ出てきたように思いました。前回気になった、表情の崩れもほとんどなく華やかな美貌をしっかり見せてくるものでした。福助さんの女形の魅力は人間味溢れる等身大の女性という部分があると思います。今回の揚巻も傾城としての意地、好きな男性に対する情というものがストレートにあって女の可愛らしさがありました。そういう意味では後半のほうが持ち味が生きて素敵です。

白酒売の梅玉さん、大人の可愛いらしさとでもいいのでしょうか。品のあるいかにもお坊ちゃんの、のほほんさがある。きちんとお兄さんなんだけど人が良い頼りない風情があって、ほんとに味にある十郎でした。楽日のお遊び、ではないですが通人の東蔵さんに「どこかでお会いしたような?先斗町でだったかな」とか言われて素で笑ってしまっておりました(笑)

白玉の孝太郎さん、やはり台詞に情味があって良いですね。しかし、今回、目の前で表情を拝見できたのですが、待ちの時の表情が硬いかなあと。緊張しているような感じの硬さがあって、もう少しリラックスして受ける芝居をしてほしいかなと。そこら辺、芝雀さんや福助さんの白玉はお上手なのですよね。

歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方上手寄りセンター

2008年01月20日 | 歌舞伎
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方上手寄りセンター

世代交代、というものを感じてしまった夜の部です。なにか感慨深いものがあり、個人的に胸に迫るものがありました。

『鶴亀千歳』
箏とお囃子の演奏での舞踊。箏曲ってなぜかおめでたい気分になりますね。女性がずらりと並ぶ姿もなんとなく華やいだ感じも受けます。舞踊もゆったりのんびり。いわゆる見所がある舞踊という感じはしませんが初春の雰囲気は味わえました。

松竹梅に歌昇さん、錦之助さん、孝太郎さん。それぞれ衣装が似合い息の合った踊り。歌昇さんのキレとまるみのある踊りに錦之助さんのすっきりした踊りと孝太郎さんのふんわりした踊りがうまくバランスを取っていました。

尉と姥に富十郎さんと芝翫さん。この二人が出てくるだけでなんとなくおめでたい感じがします。仲の良い老夫婦でほのぼの。それでいて「格」というものが感じられる。存在感がやはりありますね。芝翫さん、とっても可愛い。表情豊かで見ていてニコニコしてしまいます。富十郎さんは品格をしっかり感じられるのが素晴らしかったんですがちょっとお元気が無さそうで…、ひとつひとつの動きにいつもの大きさのある形がなくて…(涙)。


『連獅子』
素晴らしかったです。高麗屋の『連獅子』は物語性が豊かで、演じる時の年齢にあったそれぞれの親獅子、仔獅子を踊ってきますが、今回も今の高麗屋親子の年齢だからこそのものでした。特に今回、親子の情愛がひしひしと伝わってくるものでした。なんというか、親として子を精一杯の愛情で見守ってきたその気持ち。子として親を認め、また年老いた親を労わる、そんな気持ちが伝わってきました。

2年前の『連獅子』でもこの親子の在り方がよく伝わってくるものでしたがどちらかというとライバル心というものも前面に出てたと思います。今回はその部分より、もっと深い親子の在り様がありました。なんだろう、お互いに「親子」という絆を再確認したのかなあと。

幸四郎さん、存在感と貫禄がやはりありますね。腰の入り方、形すべてに親獅子としての貫禄というものを感じさせました。抑制した動きのなかに親の情の部分を極めて明快に演じてきました。前シテ右近では厳しさ以上に子を案じる気持ちが強いものでした。そして、前回と違ったのは親の弱さというものも垣間見せたところでしょう。それは意図せず、だったと思います。60歳を超えるとたった2年でも体力的なものは衰えてしまうのでしょうか、前回、力強さがあった足運びは重々しさのほうが強調され、後シテ親獅子での毛振りは悠然と美しく弧を描きつつも時にしんどそうでもありました。しかし、その姿はまさしく人生を戦ってきた「老獅子」でもありました。ひたすらに生きボロボロになりながらも進んできた、そんな姿をさらけ出していることに私は感動してしまいました。

染五郎さん、踊りが大きい。キビキビとキレがいいだけでなくとてものびやかに空気を掴んでおりました。伸び盛り、という言葉が浮かんでくる、その勢いの良さに惚れ惚れ。前シテ左近では子としての可愛らしさとひたむきさがあり、最初はとても無邪気な仔獅子、しかし何度も突き落とされながら、親がなぜそうするのかを理解しようとしていくかのようでした。どこか気遣うそんな様子も見えました。2年前の『連獅子』ではこの部分、まだ無邪気なままだった気がします。そして仔獅子から若獅子への変貌。時に親獅子を庇い守ろうとするそんな姿でした。後シテで親子が花道に出てきた時、染五郎さんがあたかも幸四郎さんを後からそっと労わっている、そんな風に見えました。それだけ染五郎さんが大きく見えたのです。染五郎さんの獅子は本当に素晴らしいです。手足ののびやかさ、形のよさ、毛振りの時の毛先の鋭さ、見ていてなんとも気持ちがいい。爽やかなエネルギーがそこにある。毛振りは最初は親獅子に合わせゆったりと大きく廻していきます。幸四郎さんが廻しきれなくなるのを見計らうのでどうしても1回多く廻してしまうのですが息はピッタリ合わせてきました。そしてラスト、親を超えていきます。形をどんどん変化させながら勢いよく廻していきます。超えていくから、という気概からでしょう。

毛振りを最後に合わさない、そこに、この親子の在り様がしっかり見えて、胸に迫ってきました。親子というものに焦点をあてて見ると、ほんとに深いものがある今回の『連獅子』でした。

そして今回、緊迫した静かな「間」というものが非常に効果的でした。後シテが出てくる、それを待つ時間、観客が静まり返りました。牡丹の雫を現す音とキリキリっと鼓を締める音だけ。傳左衛門さんは高い声も魅力的ですね。それにしてもこの「間」と「空間」を感じさせることができる事はそうそうないと思う。前シテでの物語性が後シテへの期待感となったのだと思います。そして、獅子の「異」をここまで際立たせて見せるのも高麗屋独特のものですね。

間狂言の松江さん、高麗蔵さんがとても品よくいい塩梅。この二人、対照的な雰囲気でそれがまた可笑し味を感じさせる。


『助六由縁江戸桜』
この演目も華やかでおめでたい感じがしてお正月にはピッタリ。物語を楽しむというよりは役者の役者ぶりや衣装、舞台美術の華やかを堪能する「鷹揚にご見物を」の言葉が似合う芝居です。

この日の河東節の旦那衆は全員女性でした。女性ばかりというのは初めて見たかも。それにしても旦那衆の素人演奏を聞かせるなんて「歌舞伎」で「助六」という芝居がなければありえないですよね。

助六の団十郎さん、相変わらずのおおどかな雰囲気と品の良い茶目っ気。花道での姿も大きくひとつひとつしっかり見せてきます。今回、いつものドーンと来る勢いはあまりなくて全体的に落ち着いた助六でした。随分と大人な感じで、可愛らしい稚気があまり見受けられなかったのが残念。それでも「こりゃまた、な~んのこってい!」は団十郎さんならではの言い回しと雰囲気で思わずニッコリしてしまいました。しかしながら大病後のせいでしょうか、全体的にキレとハリが無かったように思います。疲れが溜まっているのかな?という感じで…。一番気になったのは声。いつもの張りと伸びがありません。元々、口跡は良くない方ですが、自分の艶のある声をうまく使い独特の調子を作り上げ台詞を聞かせるようになっていたのに、それが声の調子が良くないために、リズムが崩れたり口跡が不明瞭になってしまったり…。そのためにいつものおおらかで華やかな圧倒的なオーラが半減ぎみ。まったりした雰囲気が芝居に出てしまったのはそのためかなと。

揚巻の福助さん、あでやかな衣装に負けず、姿もお顔もとっても綺麗です。歌右衛門写しの、と言われていますがその面影が確かに見えます。酔いの色っぽさも十分だし初音の悪態も小気味よく、また人の話を聞く時の性根もしっかりしているし、ひとつひとつの形が思わずため息が出るほど美しい。後半の場の白い打掛けがまたよく似合う。情もあるし、非常に良い出来。福助さんは傾城姿が本当に似合うし、たぶん今のところこういう役が一番のニンだろうと思う。初役とは思えないほど堂々とした姿。しかしながら、一瞬で人を惹きつけるオーラというか磁場がまだ足りないですね。オーラに厚みがまだ足りない感じというか。あれだけ綺麗なのに観客の目を釘付けにするだけの存在感がまだまだ。あと、時々顔を歪めてしまうクセがあるようでせっかくの美貌が時に台無しに…もったいない。あとこの日は台詞の伸びもちょっと足りなかったかな。もう少しメリハリがあるといいと思う。

白酒売の梅玉さん、凄く良いです。品のよさ、柔らかさ、愛嬌、そして兄としての大きさ。なんとバランスのいい十郎でしょう。こういう柔らかさは以前はあまり持ち合わせてなかったように思うのですが梅玉さんは、ここ数年で一皮向けましたねえ。白酒売に関しては文句なし、かなり満足です。

白玉の孝太郎さん、華やかさはないのだけど情味があって品もある。特に台詞が非常に良いです。柔らかさのなかに芯がある。孝太郎さん、着実に成長している役者さんですよねえ。

通人の東蔵さん、ほんとになんでもこなす役者さんですよね。あそこまでやってくれると痛快です。よくぞやってくださいました、という感じです。人が良さげすぎる雰囲気でしたがもっとツンと気取ったところがあるとなお通人らしいかも。

意休の左團次さん、さすがの大きさ。個人的にもっといやらしい感じが欲しいです。最近、左團次さんは人の良さが滲み出てしまって、今回も意休がちょっと可哀相な感じを受けてしまうのです。こいつ悪いやつだなと思わせて欲しいですね。実は幸四郎さんに意休をやっていただきたいのだけど…似合うと思いません?

満江の芝翫さんはもう出てくるだけで存在感が只者じゃない。ただただ納得の母君さまです。兄弟に頭を下げさせる、その貫禄。お見事。

くわんぺらの段四郎さん、朝顔仙平の歌昇さんはいかにもなキャラクターにピッタリで楽しいです。福山のかつぎの錦之助さん、華やかですね。品がよくて喧嘩早い感じはしませんが(笑)

並び傾城は名題の綺麗どころが並びました。いつもだったら配役がもっと豪華なので、今回少しばかり地味かなと思う部分もなきにしもあらずですが皆さん抜擢によく応えていたと思います。台詞が明快だし形もよく整えてきたなあと。。

新橋演舞場『雷神不動北山櫻』1等1階席前方センター

2008年01月13日 | 歌舞伎
新橋演舞場『雷神不動北山櫻』1等1階席前方センター

全体的に澤瀉屋の復活狂言のやり方を踏襲し、海老蔵の考える「わかりやすい歌舞伎」に仕立てた感じ。主演を見せるためだけの芝居とも言え、海老蔵ファンにはたまらない芝居だったでしょう。

まず面白かったところ。朱雀門の派手な立ち回り。これは本当にワクワクしました。何と言っても三階さんたちがすんごく頑張っていて拍手も一番沸いた場でした。蘭平が基本の澤瀉屋テイストな感じの立ち回りでした。澤瀉屋が多かったからなおそう感じたのかも?知らない顔も随分といたような?

そのなかで、他の方の感想を読んでもなかなか名前が出てこないので、あえて名前を出しますが京屋も頑張ってました。梯子の一番上に上ったのは京珠くんです!彼、本当に頑張っていました。あの場では主役より拍手を貰えていたと思います、京純くん、京由くんもトンボきって頑張ってました!

あと芝居の流れを中断するような舞台変換がなく、毛抜、鳴神のはしょり方もそれほど違和感なくやったのは初心者が観るにはちょうどいいテンポだったかなと。「毛抜」、「鳴神」にはある程度、ゆったりたっぷりが好きな私には物足りなかったけど…。特に鳴神はテンポを重視したため後半の立ち回りがかえって迫力というか勢いが消えてたように思えた。でもこれはあくまでも私の好みなので、今回のテンポの芝居にはちょうど良かったとは思います。

個人的にイマイチだったところ、澤瀉屋テイストではあったが演出能力が突出していた猿之助さんに比べたらかなり平坦な感じになってしまったことは否めず。海老蔵を見せるためだけの脚色なので物語を見せるには薄く、かといって五役のメリハリがほとんど無いのが…。早替わりの見せ場が見せ場になってなかったし。もう少し役を分散して役者同士のやりとりで見せたほうが「熱」が出て良かったんじゃないかと。

全体的にきちんと作ってはあったが芝居全体が一本調子でところどころ飽きた。どうにも緩急が無さすぎ。海老蔵さんがふご~っと見得を切る、しゃべる、ふご~っと見得を切る、しゃべる。合間に他の役者さんが物語の説明台詞を語るって感じの繰り返し。わかりやすいコミカルな味付けでなんとか引っ張っている部分が散見。音楽も終始、同じ調子なのも飽きた原因かも。長唄ばっかりというのはどうなんでしょ。歌舞伎十八番だから長唄だけしか使っちゃいけないのかしら?

海老蔵さんはあまり作りこんでいない早雲王子と安部清行がまんまストレートに持ち味を活かせていたような気がする。台詞回しもそれほど違和感なかったし。安部清行のちょいあほ系公家はお得意で可愛いし、早雲王子は「おいら悪いやつなのよ~」オーラをきちんと出してたし。粂寺弾正と鳴神は若手のなかじゃ一番のニンだと思うがニンだけで見せられないのが難しいところ。この二役では途端に台詞回しがあやしくなるし、台詞の意味がきちんと伝わって来ない。くだけた部分の台詞は現代調になり、おおらかな、ほのぼの笑わせるほどの間にもならず。ここら辺は団十郎さんの品の良いほんわかぶりをもう少し体得して欲しい。あと体の使い方が昔より小さくなってるというか雑になってる気が。五役するのでいっぱいいっぱいだったんでしょうか?あと花道の使い方が案外ヘタなのに驚く。大きく見せられないし、間が悪い。あれれ?もっと上手かったような気がするんだけど??

肝心のラストのイリュージョンはもうハッキリいってあんまりにしょぼくて笑ってしまった。前方の席だったせいかタネがすぐわかってしまうし。これ意味があったのかなあ…。普通に宙乗りほうが盛り上がったのでは?あの場、立ち回りでせっかく盛り上がっていた会場が少々引き気味になってしまっていた…。 まあ、やってみないことには良いも悪いもわからないですからね。これも経験ということで。

絶間姫の芝雀さんが可愛いかった。存在感と艶が出てきたんだと思う。今回の絶間姫は少々砕け気味。それがいつもよりハジケた感じにも見受けられるのだと思う。これは台詞のテンポを早くし多少コミカルな味付けにという演出に沿っているためでしょう。その部分、可愛いんだけど私にはちょっとばかりせわしない感じも受けてしまった。いつものゆったりまったりのほうが芝雀さんには似合うと思うんだけどな…。

非常に良かったのは段治郎さん。かなりの成長ぶり。かなり上手くなってる。精進してるんだなというのが一目でわかる、あと猿弥さんが相変わらず安定感抜群。市蔵さんと右之助さんがきちんと脇で締めているのはさすが。

あれ?と思ったのは笑三郎さん、春猿さん。良いとこなし。ニンに合わない役をやらされてしまったから?なのかしら?友右衛門さんと宗之助さんも冴えず。この四人は新作や復活狂言慣れをしている役者さんたちです。そしてそういう場でとても魅力的に演じてきた役者さんたちです。こういう役者さんたちをもっと魅力的に使えたら、と思います。

歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』 1等1階中央花道寄り

2008年01月05日 | 歌舞伎
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』 1等1階中央花道寄り

お正月の歌舞伎座は華やかで良いですねえ。

『猩々』
お正月の幕開けに相応しい華やかで品のある舞踊でした。私は梅玉さんの踊りも染五郎さんの踊りも大好きなのでこの二人が揃うともう大変。一人でうきゃうきゃしながら観ていました。この二人、踊りの質は違うのだけど、雰囲気はしっくり。そして猩々という異の神聖さがある品のいい、すがすがしい空気が満ちた本当に気持ちのいい舞踊だった。

梅玉さんはゆるりと品格のある踊り。独特の足捌きもゆったり空気を包みこむような落ち着いた表情をみせる。酒好きの猩々の酒を飲む仕草の堂のいった形のよさが見事なこと。杯を持つ姿が美しいのは神だから、と一瞬思わせる。梅玉さんの独特の柔らか味が猩々という生き物の存在を見せてくれているかのようでした。やっぱ梅玉さんの踊り、好き~。

染五郎さんはキレのある軽やかな踊り。姿全体の美しさには惚れ惚れ。肩、背筋のラインが本当に綺麗なのだ。足捌きはすっと空気を切るように。全体的に大きさがあり躍動感がある。特に表情を付けていないにも関わらず、非常に幼い可愛らしい雰囲気があり、まだ子供の猩々という感じを受ける。なぜなんだろう?親猩々@梅玉さんに連れられて陸に上がってきたって感じ(笑)お酒の匂いにうきうきして「ねえ、飲んでいい?」なんて親と一緒にかぷっと酒を飲んでる、そんな感じでした。酒を飲む仕草が梅玉さんほど堂にいってないせいもあるが、なんだかウキウキした雰囲気も持ち合わせているのでそう感じさせたのかも。にしても、ほんと15歳くらいに見えるんですけど…。

酒売りの松江さん、表情が最近とても良くなってきたと思う。踊りはとても丁寧でしっかりとしている。


『一條大蔵譚』
これはもう吉右衛門さんが絶品。なんだかもう凄い、凄い。これはちょっと他の役者じゃ、ここまでハマらない、と思わせる素晴らしい出来。吉右衛門さん、一時期トンネルの穴に入り込んだ(と私は感じた)ところからこのところ一気に抜け出してきた気がする。二代目吉右衛門という芸風を完全に確立してきたんじゃないか。もうね、ちょっとこれは大絶賛させていただきます。作り阿呆のなんとも可愛らしいこと。愛嬌があって、こちらがニコニコしてしまうような阿呆ぶり。ごく自然で天然な阿呆なんですよね。そして正気への切り替えの見事なこと。この切り替えも、ごく自然ながら変わり目がハッキリ判る。阿呆と鋭い正気の行ったり来たりに凄みすらあって。一條大蔵卿の人物の大きさ、ハラの深さが吉右衛門さんの体のなかに入り込んでいる。ふええ、なんか凄かった。

そして梅玉さん@吉岡鬼次郎、魁春さん@お京夫婦がこれまたいい存在感で。この夫婦の芯の強さ、鋭さが極めて明瞭。この夫婦の存在意義がよく伝わってくる。この二人だかこそ出せた「使命」のありよう。それにしてもやはり魁春さん、このところ本当に良くなってきている。松江から魁春となり、どこに自分の立ち位置を置くか、それが見つけられたのかもしれない。色はまったく違うけれど歌右衛門さんに似てきた。

吉之丞@鳴瀬、段四郎@八剣勘解由もそれぞれにハマり役。もうストンとハマっていて気持ちいいぐらい。

この揃った役者陣のなかにいると福助さんが大人しく見える。実際かなり神妙すぎてしまった感がある。とても美しいし丁寧に演じているのはわかるのだけど、常盤御前という女性の在り様がまだ薄い。声がまだ完全に戻っていないせいもあるのか台詞が少々弱かった感じ。後半、ノッテくるといいのだけど。

芝のぶちゃんはえらい可愛かった。


『けいせい浜真砂』
10分程度の短い幕です。長唄の演奏(お三味線がとっても良かったです)が最初入るので正味はもっと短いかな。でもちゃんと「観たぁ!」という気分にさせてくれる幕です。

浅黄幕が落とされ、豪華絢爛な舞台に鎮座する傾城真砂路の雀右衛門さん。なんとも妖しげな美しさと存在感。台詞はすべてプロンプ付き、それでもすっと頭に入ってこないのでしょう、随分とはしょってしまったり。でももうそこに傾城姿で立ってくださっているだけで許せちゃうんです。台詞を忘れてしまった間を埋める、鼻に掛かった声が色ぽかったり、欄干に手紙を投げ出す仕草が美しかったり、そんな雀右衛門さんを拝見することが出来ただけでもう満足です。雀右衛門さんを好きで観てきた人へのサービス幕です。

吉右衛門さんが真柴久吉でお付き合い。さすがに大きいですね。


『魚屋宗五郎』
幸四郎さん、二回目の『魚屋宗五郎』です。幸四郎世話物シリーズの第一回目がこの『魚屋宗五郎』でした。あれから3年、色んな世話物を手がけ世話物の間やアンサンブルのあり方を身に着けていらしたのでしょう、なんとも安心して観られる芝居を作り上げてきました。それにしても幸四郎さんはやはり「見せる」という芝居が上手いです。全体の空気の締まりようと場のメリハリのつけ方が独特。この空気感には好みがあるでしょうが私はかなり好きです。

宗五郎の幸四郎さん、前回に比べ肩の力が抜けてごく自然体。相変わらずずっしりとした重さはあるものの、軽妙さも持ち合わせ、自然と笑わせる部分は笑わせ、前回少々とっ散らかった印象もあった宗五郎というキャラクターをひとつに纏めてきた感じを受けました。一本気な性格で妹お蔦への想い、そして磯部主計之助への恩義、そのどちらをも深く持っている、そんな宗五郎でした。また酔いも「酒がどうしても飲みたくて」というより、「お蔦のための恨み言を直訴したい」という自分の思いを鼓舞するためにという雰囲気を持ち合わせています。今回の酔いぷりはかなりリアル。目の据わり方が怖いです(笑)あや~、ほんとこいつ酒乱だ、危ないわ、と思わせちゃう。でもそれもお蔦ゆえ、という家族思いの部分がストレートにあって、屋敷玄関先での切々した訴えが迫ってくる。

女房おはまの魁春さんがまたとても良かった。世話物をする時、どうしても硬い部分が抜けなくて一本調子なところがあった魁春さんですが、今回、芯の強さがありつつ、ふっとくだけるところはくだけてメリハリのあるおはま像を作ってきました。旦那想いでしっかり者で、でもどことなくちゃっかりしてるところもある。この女房がいるからあの家族は纏まってこれたんだろうなと思わせた。

太兵衛の錦吾さん、このところ度々この役を手がけているせいか、お蔦の父としての情感があっていい。また、「もう20年若かったら」と言うだけの手強さも持ち合わせ存在感がありました。

三吉の染五郎さん、3年前に比べ、かなり地に付いた三吉。台詞がまずかなり良くなっていました。使用人ながら家族の一員としている、その気持ちがよく入っていました。相変わらず細々した仕事は丁寧に甲斐甲斐しく。そのなかで人情味のある愛嬌が備わって、可愛らしい三吉でした。

おなぎの高麗蔵さん、楚々とした部分だけじゃなく、はしこさがあるおなぎさん。彼女が色々事情通なのがよくわかる。キャラクターがかなり前に出た。いやぁ、これは面白いおなぎ像です。

家老浦戸十左衛門の歌六さん、道理を弁えつつ、しっかり磯部家を支えている家老。

磯部主計之助の錦之助さん、すっかり持ち役。ゆったりとした品のよさ。自分の短慮をきちんと反省することができている殿様なので許せてしまいます。

『お祭り』
団十郎さん、いなせな雰囲気のなかにおおらかさがあって楽しく明るい一幕となりました。どっしりしたところがいかにも鳶頭といった風情で素敵でした。

2007年観劇総括

2008年01月01日 | 年間統括
2007年観劇総括

歌舞伎43回、舞踊2回、演劇13回、文楽2回、クラシックコンサート3回、計63回です。2007年を振り返って印象に残ったことを。役者の敬称は略。

<<1月>>
1月はもう完全に『朧の森に棲む鬼』に魂を奪われていました。自分でもビックリののめりようでした。友人の死などで精神状態が少々不安定で、「死」が色濃くでてるこの芝居にガッチリ入り込んでしまった感じでもありました。それにしても改めて染五郎って綺麗だわ、と思いました。それと染五郎のオーラって芯の部分が硬質さのある、色を弾く白なんだなと思ったりも。

歌舞伎座『寿新春歌舞伎』も充実してましたがそのなかでもダントツに気に入ったのは勘三郎の『鏡獅子』。これは本当に素晴らしかった。また『勧進帳』、幸四郎の弁慶がほんとに観る度に印象が変わるので楽しくてしょうがなかった。

新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』


<<2月>>
歌舞伎座での『仮名手本忠臣蔵』の通しがやはり楽しかった。『仮名手本忠臣蔵』はとにかく本が良い。それと役者さんたちのリキの入りようもやはりなんとなく違う気がするのよね。菊五郎の判官と勘平が本当に良かった。菊五郎は受けの芝居のほうが可愛くて色ぽい。あと四段目の幸四郎も良かった。幸四郎は他の段の由良之助はどうもよろしくないけど四段目だけはいつも良いと思う。吉右衛門は完全に由良之助役者に成長したと思う。あと目を引いたのが顔世御前の魁春。この方、主役の華は無いけれど独特の存在感が出てきたと思う。

コクーン『ひばり』も戯曲が良かった。またアヌイのジャンヌを見事に立ち上げた、松たか子も素晴らしかった。大阪まで遠征した『朧の森に棲む鬼』はもう言わずもがな。久々に妄想炸裂してたし…。

歌舞伎座『二月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『二月大歌舞伎 夜の部』
国立小劇場『二月文楽公演 第二部』
シアターコクーン『ひばり』
大阪松竹座『朧の森に棲む鬼』
大阪松竹座『朧の森に棲む鬼』


<<3月>>
歌舞伎座での通し狂言『義経千本桜』が楽しかった。通しで観ると物語が意図するものがよく見えてくるなと改めて思った。菊五郎の熱演が印象的。幸四郎は銀平&知盛の拵えがよく似合う。福助の静御前が可愛らしかった。

歌舞伎座『三月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『三月大歌舞伎 夜の部』
内幸町ホール『ミックス寄席 すずめ二人會・春の巻』
歌舞伎座『第50回 日本舞踊協会公演 第二部』


<<4月>>
『錦之助襲名披露』の月でした。がんばれ~、と心の中で応援しつつの観劇でした。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 錦之助襲名披露 夜の部』
歌舞伎座『四月大歌舞伎 錦之助襲名披露 昼の部』


<<5月>>
演舞場通いの月でした。吉右衛門の大きさと若手、中堅の成長ぶりが見えた月。芝雀の絶間姫の可愛らしさにハマる。染五郎の鳴神の少年ぽさに『鳴神』という芝居に別な意味を見出す(笑)。『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿の場」、福助のお三輪に六世歌右衛門の面影を見る。『法界坊』、襲名後の錦之助が要助でノビノビと存在感ある芝居。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『女形の夕べ 双面トークショー』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』


<<6月>>
歌舞伎座の『妹背山婦女庭訓』 「吉野川」が圧巻だった。藤十郎の定高、幸四郎の大判事、梅玉の久我之助、魁春の雛菊とそれぞれが充実。また脇も揃い、まさしく大歌舞伎であった。仁左衛門、染五郎、芝雀の『御浜御殿綱豊卿』の熱さにも圧倒させられた。役者の熱がここまでダイレクトに伝わってきたのも珍しい。染五郎の『船弁慶』は千穐楽で化けた。静御前の舞のあでやかさのなかの哀の表現に目を見張る。染五郎長男、齋くんに目じりが下がる。コクーン『三人吉三』の面白さに黙阿弥萌え再び。勘三郎、福助の熱演が目に残る。


歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
シアターコクーン『三人吉三』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
江戸川総合文化ホール『松竹大歌舞伎 東コース』


<<7月>>
歌舞伎座『十二夜』での亀治郎の麻阿の飛び道具ぶりが印象に残る7月(笑)

国立大劇場『社会人のための歌舞伎鑑賞教室『野崎村』』
歌舞伎座『七月大歌舞伎 十二夜』昼の部
鎌倉芸術館『松竹大歌舞伎 巡業東コース』昼の部


<<8月>>
国立小劇場『第13回稚魚の会・歌舞伎会合同公演 B班』での『寺子屋』が印象的。私は基本的に芝居は「芸」でみせてほしいタイプの人間なのですが、未熟ながら必死になって頑張る役者の姿に感銘を受けました。パブリックシアター『ロマンス』が小品ながら洒落た楽しい作品で観ていて気持ちのいいものでした。

歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第三部
歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第二部
世田谷パブリックシアター『ロマンス』
全生庵『すずめ二人會-夏の巻-』
国立小劇場『第13回稚魚の会・歌舞伎会合同公演 B班』


<<9月>>
パルコ劇場『シェイクスピア・ソナタ』での岩松了の脚本・演出がツボでした。岩松了の台詞は詩的でどこか哲学的でもある。読み解く難しさと面白さと。歌舞伎座では『阿古屋』の華やかさが目に残ります。玉三郎の完成された美しさ。

池袋サンシャイン劇場『犬顔家の一族 -金田真一耕助之介の事件です。ノート』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 昼の部』
渋谷パルコ劇場『シェイクスピア・ソナタ』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 昼の部』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 夜の部』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 夜の部』
国立小劇場『九月文楽公演 第二部』
世田谷パブリックシアター『ロマンス』


<<10月>>
歌舞伎座の『牡丹燈籠』が楽しかった。お露の七之助と乳母の吉之丞の幽霊コンビ、最強。仁左衛門×玉三郎コンビの独特の空気感を堪能。国立の『うぐいす塚』のばかばかしいゆるい芝居にほのぼの。

国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』
歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』
青山劇場『キャバレー』ソワレ
国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』
国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』


<<11月>>
歌舞伎座『傾城反魂香』がアンサンブルの良さで見応えがあった。吉右衛門の又平の完成度の高さと芝雀のおとくは芸格が上がったと感じさせた出来が印象的。『仮名手本忠臣蔵九段目 山科閑居』は大舞台。物語が大きくうねり、非常に密であった。『第12回梅津貴昶の会』夜の部の勘三郎・染五郎での『義太夫 芸阿呆』が素晴らしかった。本興行でかけてくれないものか。クラシックコンサートではツィメルマン&クレーメルの演奏ががサロン風でとても楽しく、ナタリー・デセイのリサイタルでは歌声にノックアウト。

歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部
サントリーホール『パリ管弦楽団』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部
サントリーホール『ツィメルマン&クレーメル リサイタル』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部
東京オペラシティ『ナタリー・デセイ リサイタル』
国立大劇場『摂州合邦辻』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部
歌舞伎座『第12回梅津貴昶の会』夜の部


<<12月>>
さらりとした観劇。師走らしい演目揃いでした。

国立大劇場『十二月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」』
歌舞伎座『十二月大歌舞伎』昼の部
国立大劇場『十二月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」』


<<総括>>
2007年も良い芝居に沢山出会えました。歌舞伎では歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』 「吉野川」がベスト1です。これは一生涯忘れない芝居のひとつになるでしょう。演劇では『朧の森に棲む鬼』です。個人的に様々な感慨込みでやはり忘れられない芝居となりそうです。