Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『さよなら公演 御名残四月大歌舞伎 第二部』 1等1階センター前方

2010年04月24日 | 歌舞伎
歌舞伎座『さよなら公演 御名残四月大歌舞伎 第二部』 1等1階センター前方

私の現歌舞伎座での観劇はこれが最後。今まで素敵な舞台を見せてくれてありがとう!名残を惜しみつつ、新しい歌舞伎座に期待していこうと思います。

第二部もとても面白かったです。タイプの違う役者が揃った大顔合わせの『寺子屋』がどういう方向の芝居になるか、不安と期待とでしたが、これがすこぶる面白かったです。芸達者が揃い、芝居の方向性が揃うとこうなるのかという、ちょっと独特な空気感をもった芝居でした。また『三人吉三』も役者が嵌り、これぞ歌舞伎!といった濃厚な一幕。満足、満足の第二部でした。

『寺小屋』
とにかく面白かった。気持ちがどんどん芝居に入り込んでいって、『寺子屋』という芝居の、やるせなさがストレートに伝わり胸に迫ってきました。今まで拝見してきた『寺子屋』とはだいぶ肌合いが違っていました。人物像の心情を強調する様式美の部分を見せるのではなく、物語性の部分をよりリアルにし、人物たちの心情もその流れに沿うようにかなり細やかに作り込んでいってました。その芝居の緩急のなかでの歌舞伎独特の間合いを短めにとり密な空気を途切らせない作り。

ビックリしたのは源蔵@仁左衛門さんと千代@玉三郎さんがかなりリアル志向の演劇的な芝居をしてきたこと。松王丸@幸四郎さん、戸浪@勘三郎さんもかなりリアル志向だったけどいわゆる型の部分も重視し、そのバランスでの芝居だったように思う。そういう部分で松王丸@幸四郎さん&千代@玉三郎さんの夫婦、源蔵@仁左衛門さん&戸浪@勘三郎さんの夫婦の組み合わせは「歌舞伎」としてバランスが取れていたかも。とりあえず、方向性が皆一緒だったという部分ですさまじく密な一幕だった。あそこまで、芝居としての緊張感がまったく切れないというのも珍しい。決まりの部分で一瞬、役者を観るという感じの間合いが普通はあるが、今回それがほとんどなかった。役者がその隙を与えない。

勿論、源蔵@仁左衛門さんにしろ松王丸@幸四郎さんにしろ台詞を謳いあげる場面はある、だけどそこからの芝居の持っていきかたが非常にリアル。勿論、控えているときも気持ちを持続しての受けが基本ではあると思うのが、その受けの部分の芝居がいつも以上に相手に反応しての芝居。また松王丸夫婦、源蔵夫婦の目線のやりとりがいつもより多い。また、その場ごとの相手に対するリアクションもかなり細かい。それがその場の情景をより真に迫ったものにしていたと思う。松王丸夫婦、源蔵夫婦のありようがあの場面だけのものではない、という膨らみがあった。

このところ、幸四郎さんが芯を取る歌舞伎ではこういう芝居が多く、さすが現代劇を多く手掛けてきただけある演出方法をしてくるな、と思ってはいたのですが今回のさよなら公演で演劇志向の『寺小屋』を拝見するとは思ってみなかった。またこれも次世代への歌舞伎のあり方のひとつとしての提示でもあるのだろうかと思ったりしました。座組みに物語性を大事にする仁左衛門さんが、そしてリアル志向の玉三郎さん、芝居の上手さがある勘三郎が揃ったからこそ、それが出来たんだろう。

松王丸@幸四郎さん、2006年秀山祭で演じた時はだいぶご自身の工夫を入れ込み、子の命を投げ出す父の悲哀を心情の頂点として、そこを首実検の場に凝縮した演じ方で、台詞回しもかなりリアル志向であったと思います。今回はそのご自身の工夫の部分をほぼやめ、古典的な型通りのとこで白鸚さん譲りの存在感を見せてきました。まずは松王丸としての大きさを押し出しつつ、そのなかに、自分の計略への心の奥底の動揺、小太郎への想いといった複雑な心情を、型のなかに細かく表現していきます。

単に病身を装うというだけでなく、そのなかに不安を隠しているための弱々しさと足取りの重さとしての表現。また源蔵夫婦への居丈高さは、玄蕃に対するポーズだけではなく、「小太郎を打ってくれるだろうな」という厳しい問いかけのようにも見えました。前回は自身の不安との戦いのような源蔵との見合い方でしたが、今回は相手への覚悟を探るという雰囲気がありました。そういう部分で幸四郎さん松王丸は前回に比べ小太郎を死なす覚悟が強い。なので首実検は前回は小太郎への嘆きだけだったように思いますが、今回の「でかした!」は小太郎へ、そして源蔵へと二人に対していました。一個の父として落とし込んだ松王丸ではなく、その時代の主君へそして親への恩義、忠義ゆえの苦悩を背負った運命に翻弄される松王丸としていたと思う。そこがあったため、千代へ「家で十分吼えたではないか」とたしなめるその言葉に、かえって夫婦の絆が立ち現れ、また決断が正しかったんだと自身へ言い聞かせる言葉となる。この人はどれだけ我慢してきたのだろうという哀れさがあった。時代がかった台詞廻しのなかに、心のなかの翳を纏いつつ表現していくのがやはり上手いです。朗々と謳いあげるのが得意な幸四郎さんですが、今回だいぶ抑えていましたね。

息子を死なせたその悲しさのなかで、忠義を果たせず自害した桜丸を想い、大泣きに落とす場では、桜丸不憫さとともに、きっとあの世で会うであろうから息子を頼む、その思いではなかったかと今回思い当たった。やはり、ここは「桜丸、桜丸」での泣きでしかありえない。この台詞はこのままで演じるべきだし、今回台詞を戻したのは正解だ。

千代@玉三郎さん、出のところでの愁いを秘めた佇まいがとても美しかった。小太郎がどうなったか、母としての不安を絶えず抱えた千代。覚悟しきれない、もしかしたら小太郎は打たれないで済んでいるかもという淡い期待を抱いた千代であったと思う。相手がどうでるか、小太郎はどうなっているのか、その不安と緊張感。物語がわかっていてなお、千代の不安感にこちらがハラハラしてしまった。そして小太郎が打たれたとわかった瞬間、まずは武家の女としての矜持が顔に出て、千代を精神を支える。お役にたったか、というその思い。その後、夫の顔を見てがくっとその矜持が揺れる。母として、子を死なせた哀しみがそこで襲ってきたようだった。この千代は夫と子だけが自分の世界にある人だ。夫の苦悩をただひたすら受け止め、自分の家族だけを守ってきた人、そんな風に思えた。いつも以上に思い入れが深い千代だったように思う。

源蔵@仁左衛門さん、とてもリアルな心情を押し出した源蔵でした。このところ、より演じる人物像の心情を細やかに丁寧に演じてきている仁左衛門さんですがそれをもっと今回押し進めてきた演じよう。物語の流れを重視し、従来の手順をかなり見直してきました。より自然な立ち振る舞い。菅秀才の匿い方、自身の行動、立ち位置、細かくいえば羽織の脱ぎ着のタイミング等、かなり工夫がありました。また、恋女房への戸浪に対する愛情をそこここで見せてきます。現代の観客が納得できる夫婦のありように近い造詣。情の深さ、忠義の深さがあるがゆえに、殺す子を探す非情さの裏の苦悩もリアルに浮かんでくる。「守る」ことの決意の強さは半面、とても怖いものである、という「生きる」ことの難儀がまたこの源蔵夫婦にもある。絶えず神経を研ぎ澄ませた仁左衛門さんの芝居は、源蔵のカドカドの決まりの部分でいつも以上に間をおかない。文楽人形が人より人らしく動くと思う時がある。そういう感じを連想させた。さらりと流れる部分で、もっと溜めをたっぷりとって決まってくれてもいいかなと思う部分もあったのだけど、心持のほうが先にたった芝居の緊迫感の見事さにこれで十分なんだなと思いました。

戸浪@勘三郎さん、私は今月の勘三郎さんのなかでは戸浪が一番だ。戸浪なりの情のありかたが非常に良い。心持のありようがリアルだが佇まいがふっくらしていて、出るべきところの決まり方にどこか古風さがある。芝居が流れず、すっと型に嵌るときがあるのだ。相反するようだがそこがしっくり馴染む。戸浪は芝翫さん譲りかな?芝翫さんの芸風ってそこが特徴なので、芝翫さんの稽古つけてもらったかな?と。出すぎずに女らしい細やかな気遣いや情を見せつつ、いざという時の覚悟のほどがそこにある。女房として源蔵と一蓮托生というだけの部分だけではない、戸浪なりの恩義、忠義が底にある。その一瞬の思いいれを表現できるのがやはり勘三郎さんの上手さ。

玄蕃@彦三郎さん、いかにも赤っ面の敵役といった古風さのある線の太い玄蕃。この場では敵役ではあるけどある意味、主君に忠実な家来なんだよな、というのが真面目な彦三郎さんだけに伝わってくるのが面白い。

園生の前@時蔵さん、また園生の前としての品格の高さが素晴らしい。加えて華やかさがあるなあ。うん、これは良いですよ。

菅秀才@金太郎くん、お行儀よくしっかり芝居してました。長台詞のところが声が続かず、若干声が小さくなりがちな部分もありましたが、姿勢もよく、きちんと微動だもせず座り、芝居の流れのなかでまた目線がしっかり源蔵と見る、松王夫婦を見る、母を見る、ときちんと芝居ができてました。今回、菅秀才は皆と一緒に奥に引っ込みようになっていた。皆と仲良く遊んでいたんだなと思うと、「われに代はると知るならばこの悲しみはさすまいに」の台詞が活きていい。今回の演出、ほんとにいいなあ。

しかしこの頃の時代ものの価値観がなかなか現代には判りにくくなっているのか、この芝居が苦手という人も多くなっている。だけど、「生きて行く」ことがより困難な時代ということ、どこかに属することが家(命)を守ることでもあった時代ということに思いをはせることが出来れば、また違うのではないか。彼らにとって家を守るということは自分だけではなく、家族、係累、使用人すべての命が掛かっている。要は彼らに生きる場を与えてくれるのが主君ということであり、「恩義」のために行動をするのが当たり前。また「子は一世、夫婦は二世、主従三世、他人は五世」という価値観も前提に観ると多少の理解は得られると思う。

『三人吉三』「大川端庚申塚の場」
華やかでどっしりとした大川端で、観ていてウキウキしました。わああい、楽しいぞ~、って感じです。この場だけだとドラマ性はまったくないけど、菊五郎さん、吉右衛門さん、團十郎さんの華やかな絵面とた~っぷりな台詞廻しを楽しみました。満足。

お嬢吉三@菊五郎さん、私は今の菊五郎さんの女形の姿がやたらとツボらしい。どーみても年増でいかにも怪しくて、「おとせちゃん、逃げて~~」と思わなくもないんだけど(笑)、ちょっと崩れた線がある今だからある愛嬌と色気がなんともいえない。観ていてニマニマしちゃう。女声と男声の切り替えの上手さはこの方に勝る役者はいないかなあ。七五調の台詞を朗々と謳いあげで惚れ惚れ。このくらいたっぷり演じてくれる菊五郎さんのほうが個人的には好みだ。あっさりイナセな感じもいいんだけどね。

お坊吉三@吉右衛門さん、痩せられたのもありすっきりとカッコイイ。少し陰の篭った台詞回しが色ぽくて、明るい調子のお嬢菊五郎さんとの対比も活きて、とても良いわ~。それにどっしりとした存在感が舞台を大きくみせる。立ち姿がいつも以上に綺麗だったなあ。

和尚吉三@團十郎さん、和尚の拵えが似合う。目が利くのがまたよし。台詞廻しは多少もっさりしているのだけど、きちんと兄貴分の大きさを見せる。信頼していいなって思わせる空気感があるのが和尚らしくて好き。

『藤娘』
藤十郎さん、相変わらず若いですねえ。はんなりとした色気。いつもよりはピンクオーラ(笑)が薄めだったかな。後半、さすがにお疲れかなという部分もありましたがとても華やかな踊りでした。

鳴物連中がとっても良かったです。

歌舞伎座『さよなら公演 御名残四月大歌舞伎 第一部』 1等1階センター上手寄り

2010年04月18日 | 歌舞伎
歌舞伎座『さよなら公演 御名残四月大歌舞伎 第一部』 1等1階センター上手寄り

『御名残木挽闇爭』
『曽我対面』をベースにし、歌舞伎座の立替えと三年後の再開を台詞に入れ込んだ中堅・若手のだんまり。若手役者たちが勢揃いで華やか。

舞鶴@時蔵さん、若手のなかに入ると引率の先生?な感じ(笑)。さすが貫禄、存在感ありました。

悪七兵衛景清@三津五郎さん、だんまりですと踊り上手というのがまざまざと判ります。特に引っ込みの六法が綺麗でさすが。

典侍の局@芝雀さん、楚々として可愛らしく、雀右衛門さんに似ていらっしゃいました。

工藤祐経@染五郎さん、工藤にしては少々線は細いですが立ち姿の肩から背中のラインの美しさが格別。声にハリがあり台詞廻しもよく、きちんと貫禄を出せていました。染五郎さんの工藤だけいわゆる白塗りではなく砥粉含んだ色合い。何かこだわりがあるのでしょうか?染五郎さんのだけ全体のなかで彩度が低めな色合いになってて面白かったです。工藤は確かに全体的に彩度低めではあるんだけど、普通の白塗りのイメージなんだけどなあ。う~んと、最近では富十郎さん普段の工藤の拵えと違ってたのが印象に残っているけど顔の色はどうだっけ?

曽我十郎@菊之助さん、品がありひとつひとつの形が綺麗です。特に肩のラインが以前よりかなり柔らか味を出せるようになっていたと思います。

片貝姫@七之助さんが非常に可愛らしく華やかでした。

あとは秩父庄司重忠@松緑は丁寧に、大磯の虎@孝太郎さんはきちんと格があり、朝比奈@勘太郎くんは腰の入りっぷりが見事で、鬼王新左衛門@獅童さんは大人しかったです…。

民部@團蔵さんはあがってしまったのか台詞つっかえ、若干キレ味なし。


『熊谷陣屋』
役者が揃い大舞台でした。終始緊密な空気が流れていて非常に見ごたえあり。

熊谷直実@吉右衛門さん、大きさのある骨ぽい熊谷でした。前回演じた時より「父としての顔」の部分を押さえ気味。かえって苦悩が浮き出た感じがしました。花道での引っ込みになんともいえない悲哀と無常感が流れていた。後半、頭をまるめ僧侶姿になったときの顔の拵えが、ほぼ素顔に隈を取った拵えだったように思う。汗で流れたのをそのまま、だったのかもしれませんが、そのお顔が壮絶で、観ていて胸が締め付けられました。二代目として、ご自身の熊谷に到達したな、とそう感じた舞台でもありました。

弥陀六@富十郎さん、素晴らしかったです。弥陀六という人物の輪郭がくっきりと浮かんできます。また台詞の伝え方がお見事。情景や心持ちがストレートに伝わってきます。また膝がお悪いための工夫もまったく違和感なく、また衣装も富十郎さんならではの渋い色合いで品のある美しい色あい。

相模@藤十郎さん、芯のしっかりした気持ちが強い相模でした。母としての嘆きは、ただひたすら嘆くのではなく、母として子を死なせてしまった悔しさもあったように思う。そこに武将の妻としてのやるせなさがあった。小太郎の首を抱える形が非常にリアルです。また色気があるので熊谷との若い時の恋愛模様が透けてみえてくるのが面白かったです。

相模はやっぱり雀右衛門さんのが一番好き。あとは芝翫さんの母性溢れる嘆きもかなり印象に残る。この二人だな、今のとこ。

藤の方@魁春さん、藤十郎さん相手に品格がお見事。さりげない芝居なのですが細かい部分のひとつひとつに藤の方の想いがしっかり入っていて敦盛の母としての気持ちが伝わってくる。

源義経@梅玉さん、さすが義経役者です。品格といい愁いといい、佇まいに説得力があります。また、ふとした台詞回しに柔らかさを加え、情味をみせてきます。上手いですね。

堤軍次@歌昇さん、熊谷直実の部下としての立ち居地のバランスが非常に良いです。そうそう軍次はこうじゃなくちゃ、と思わせてくれます。
             
『連獅子』
久しぶりだったので、そうだ、これが中村屋の三人連獅子だったねえ~~という感じでした。三人なので華やかです。毛振りは今日はそれほどシンクロせず、だけどそこがまた個々の個性がよく出てて、中村屋の連獅子はシンクロという固定観念から外してくれたその部分を非常に面白く感じました。息子二人のそれぞれの個性が頼もしく、しかし親がまだまだ先を行くという雰囲気で(^^)

親獅子@勘三郎さんがやっぱり息子二人とはまだまだ違う次元にいるなと思いました。以前より肩の力が抜け、流れるような踊り。そして身体全体の形のなかに想いが込められている感じがしました。ことさら表情をつけているわけではないのに伝わってきます。前シテでは個人的に先代勘三郎さんにこれほど似ていたっけ?と。それほど先代を彷彿させる表情。獅子になってからは勘三郎さんは獣性を強く出される。そこに異の空間をみせてくれて凄いんですよ。これはまだ息子二人には無いです。毛振りは前ほどの勢いはありませんが、それでもまだまだ息子と同じくらいの勢いで振ってくるのが見事。しかも軌道が本当に美しくいっさいブレません。

子獅子@七之助さん、私が拝見したこの日は集中度が凄かった。非常にキレがよく、気持ちいほどピタっと形が決まっていく。とても端正な素直な踊りで伸びやか。以前に比べ相当な成長ぶりを見せてくれました。毛振りも腰が安定し、柔らかに美しく廻して、軌道が絶えず綺麗でした。ラスト、スピードアップした時は若さを見せ付け鋭い毛振り。

子獅子@勘太郎は相変わらず身体能力の高さが踊りに直結していて、天性の上手さを感じさせます。力強いです。今回は上半身の動きが以前と違うなと感じました。ひたすら素直でまっすぐな踊りという部分からか色(個性)がついてきた。勘太郎くんならではの独特の柔らかさと大きさが個性として表現されている。ただ悪い意味ではなく、まだその色が安定してないなという部分もありました。勢い込んでの部分に少し肩の力が入っているというか。毛振りの勢いと、毛先の上がりっぷりは断然、勘太郎くんでした。ただ軌道が時々ぶれたのが珍しい。膝の怪我のせいで上半身と下半身のバランスがまだ少し上半身に偏ってしまっているのかな?とか思いましたが、どうなのかな?

間狂言は二人とももう少し落ち着いてほしいと思いました…。

しかし中村屋さんは『三人連獅子』しかやらないんでしょうかね?勘三郎さんが動けるうちに息子個々と二人連獅子をやっていただきたいのだけど。

歌舞伎座さよなら公演『御名残四月大歌舞伎 第三部』 3等B席上手

2010年04月02日 | 歌舞伎
歌舞伎座さよなら公演『御名残四月大歌舞伎 第三部』3等B席上手

現歌舞伎座の最後の初日、ということで歌舞伎座へ。

『実録先代萩』
滅多に上演されない演目だと思います。私、内容すら知りませんでした。滅多に上演されないということは…きっとそれほど面白味はない芝居なんだろうなと、あまり期待せず。『伽羅先代萩』と比べしまったら物語の完成度は低いけど普通に面白い芝居だと思う。期待値が低かったせいか、わりと楽しめました。実録とあるのでついつい、どんだけリアル?とか思っていたら全然違いました(笑)。『伽羅先代萩』と『恋女房染分手綱(「重の井の子別れ」)』を綯交ぜした書き換えものって感じです。動きは派手じゃなく台詞で芝居が進みます。「子別れ」という題材で描かれている芝居ですが「実録先代萩」はただの泣かせではなく、大人の都合に振り回される子供の純粋さに大人が感銘するという少し皮肉が入った芝居のようにも見え、個人的には黙阿弥らしさがさりげなくあるな、なんて思ったりも。

この演目、芝翫さんにとっては動きが少なく、しかも何度か手掛けているお役という事もありちょうどいい演目だったのかも。子役が重要なのでお孫さんとも共演できるし。 で、なんというか、個人的に子役を立てようとする意識がみえる芝翫さんと幸四郎さんの「ばばぶり(ほんとはじじなんだけどネ)、じじぶり」がなんだか微笑ましく(笑)ほのぼのと拝見。

浅岡@芝翫さん、まんま政岡な拵えです。このまま『伽羅先代萩』の「御殿の場」にしちゃってもいいですよ、とか思ってしまいましたが(^^;)。芝翫さんは後半、亀千代と千代松と絡むあたりから俄然、活き活きしてきました。「母」を演じる芝翫さんはやっぱり良いですよねえ。母性が強い。それと膝がお悪いせいで動きスムースではないのだけど一瞬一瞬の決まりがさすがに綺麗。着物の捌き方とか、さりげないんだけど身についてるものを感じさせました。また色々と子役をうまくリードしてて、それがまた母性の強い浅岡という雰囲気で良かったです。

片倉@幸四郎さん、完全に受けに徹してました。家老として控えめにしかしどっしりとした佇まい。そのなかに子役を立てようという「じじ」の顔が見え隠れ。歌舞伎の世界は大家族みたいなもんなんだよなあって改めて感じたり。なんだか珍しい幸四郎さんを見たって感じでした(笑)

子役は亀千代@千之助くんのほうが達者。さすが孝太郎さんの息子。顔も似てるし。千代松@宜生くんはとっても一生懸命、頑張っていました。

それにしても最近よく感じるのだけど、歌舞伎の子役の独特の台詞回しが可笑しく感じるのか、そこで笑う?という場面で笑う観客が多くて気になる。今回も健気な千代松が泣いてるとこで爆笑。ひどい、ひどすぎる。きちんと芝居を見てれば笑うシーンじゃないってわかるでしょうに…。

『助六由縁江戸桜』
配役が豪華すぎだからか?なんとなく俳優祭のようでした。芝居を観せるというより役者を観てくださいね、という感じというか。歌舞伎座さよなら公演といういわばお祭りのような御名残公演、お祭りに乗ったもん勝ちかと思います。

助六@團十郎さん、いつも通りの無邪気な雰囲気の團十郎さん助六。まったり感と大らかさのある助六。

揚巻@玉三郎さん、綺麗ですねえ、驚異的な若さ。花道の出の台詞、ちょっと張りすぎかも。全体的にいつもの緩急のある台詞廻しが出てこない感じというか、コントロールがきいてない感じ。玉三郎さんのことですから今後、調整してくるでしょう。それにしても立ち姿の美しさには惚れ惚れ、特に幕切れが素晴らしい。

白酒売新兵衛@菊五郎さん、お得意なお役ですね。年齢を得たからこその可愛らしさがあります。わりと受けに徹していたかしら。

くわんぺら門兵衛@仁左衛門さん、う~んとなぜこの役なんでしょう?だってカッコよすぎるんですもの。これじゃ女にもてるでしょう。男伊達の色気があるくわんぺら門兵衛って…。

朝顔仙平@歌六さん、なんでもこなす歌六さんですが、ちょっとまじめすぎたかも。

通人@勘三郎さん、さすがに華がありますし、くすぐりもお上手です。しかし、台詞を自分で言って自分で笑ってしまうのは全然、粋じゃないです。通人は粋じゃないとね。

白玉@福助さん、私は福助さんの傾城は無条件で好き。揚巻@玉三郎さんとの妹分という雰囲気がしっかりあって情の濃さが好きだなあ、なんて思いました。いつもよりは全体的に控えめな感じで、もう少し前にでてもいいかなとは思いました。

曽我満江@東蔵さん、キリッとした母上で素敵でした。東蔵さんは女形のほうが好きです。最近、以前より品格が出てきた感あり。

福山かつぎ寿吉@三津五郎さん、この人はやることに本当に卒がない。江戸っ子という空気を感じさせ、さすが。

御曹司の傾城は皆、とりあえず皆さん、きちんと(笑)。松也くんはさすがに年長さんだけあって台詞がよかったです。梅枝くんがやっぱりあの年齢にしては一枚上手というか着実に成長しているなと感じました。

サントリーホール『ワディム・レーピン ヴァイオリン・リサイタル』 S席2階LB

2010年04月01日 | 音楽
サントリーホール『ワディム・レーピン ヴァイオリン・リサイタル』 S席2階LB

レーピンさんのヴァイオリンの音色に惚れ惚れ。低音は深みがあって高音は優しく美しい。惚れ惚れしちゃう。ヤナーチェク『ヴァイオリン・ソナタ』の曲想が面白かったなあ。昨夜の個人的レーピンさんベスト演奏はR.シュトラウス『ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18』とバルトーク『ルーマニア民族舞曲』。でも他の曲もとっても良かった。


ワディム・レーピン(vn)
イタマール・ゴラン(pt)

演目:
ヤナーチェク『ヴァイオリン・ソナタ』
ブラームス 『ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調』
R.シュトラウス『ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18』

アンコール曲:
ショスタコーヴィチ『24の前奏曲 op.34-17』
バルトーク『ルーマニア民族舞曲』
チャイコフスキー『感傷的なワルツ』