Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 夜の部』 3等B席下手寄り

2017年04月15日 | 歌舞伎
歌舞伎座『四月大歌舞伎 夜の部』 3等B席下手寄り

『傾城反魂香』
通称『吃又』は上演回数の多い演目の一つですね。色んな方の組み合わせで見ていますが吉右衛門さんの又平が一番多い。またか、と思わなくもなかったですが手の内に入ったお役を絶妙に自然体で演じてみせて、今の年齢だからこその又平で拝見して良かったです。

吉右衛門さんの又平はどちらかというと絵を描き上げるまでの絶望感、悲哀、憤怒、諦めといった感情の在り様や表現の克明さで芝居としての見せ場を作っていたと思うのですが、今回は絵が抜けた後の解放感がより印象的。隠れていた又平の愛嬌が弾ける。

菊之助さんのお徳は若いのでやはり役としての膨らみはないけど、丁寧に丁寧に演じて、それが又平の気持ちのひとつひとつを拾っていくような感じになって良かった。

座組みのいつものメンバーなので纏まりも良かったです。錦之助さんの修理之助がこれまで何度も演じてきたなかで一番若々しく持ち味も出てて、いい嵌り具合でした。

『桂川連理柵「帯屋」』
歌舞伎では初めて拝見。文楽のほうが「物語」として昇華されてるなという印象。人形がファンタジィー化してくれるしね。役者がやると少々、お話的に生々しい部分が。とはいえ山城屋さんの若さ、佇まいの色気には感心してしまう。

扇雀さんのお絹がとってもよかった。個人的に大当たり。心から旦那を思う情味と哀切さと。

壱太郎くんは長吉とお半の二役。やはりお半が本役で華やかな可愛らしさと一途な強さがあってピッタリ。長吉も巧いけど、これが似合ってしまうのにはちょっと複雑な気持ちも(^^;)

吉弥さんのおとせもこのお役に吉弥さんか…という気持ちはあれど、こなしてしまうのがさすがとも思う。繁斎がうっかり後添えにするのもわかる。綺麗だもの。

染五郎さんの儀兵衛はどこぞのぼんぼんが来ましたか?な…。端敵になっておりません。無理にやらせなくても…。

『奴道成寺』
華やかに打ち出し。猿之助はほどのよい踊りぶり。どうしても三津五郎さんをふと思い出してしまう。重心の使い方など少し似てるところがあるからかも。

なぜか今月は勘三郎さん、三津五郎さん、福助さんの不在をとても感じてしまう。どうにも切り替えができていないんだなと自分でも思う。