鎌倉芸術館『歌舞伎巡業公演東コース 昼の部』 S席
舞踊『玉兎』
初日はひたすら丁寧にこなす感じでしたが、今回とっても味のある楽しい舞踊になっていました。ふっくらとした柔らか味はまだ足りないものの、表情が豊か。情景のひとつひとつが更にクッキリとし、また面白味が加わっておりました。総じて可愛らしい雰囲気を保ち、なんとも愛らしい作品となりました。 それにしても染五郎さん、また痩せてしまっていました。痩せやすい体質なのでしょうがあばら骨がみえるくらいなのでちょっと心配になってしまいます。
『仮名手本忠臣蔵』「祇園一力茶屋の場」
吉之助さんの前説がだいぶ流暢になっていました。内容は前回と変わりないのですが語りが流暢になるだけで随分わかりやすい感じをうけます。でもやっぱり今回出さない「祇園一力茶屋の場」前半の説明もするべきかと思う。それよりおおざっぱな短縮でもいいから芝居して見せることは出来なかったんだろうか?とも。種太郎くんがいるから力弥のお使いの場もできるし。
さて、今回初日から一番変化したのはやはり染五郎さんの平右衛門。段取りをただ追うだけで精一杯だったところからしっかり役の性根を掴んできました。ちょっとおっちょこちょいな足軽風情、家族を思う心根の優しさや忠義一途を胸に秘め仇討ちに加わるための必死さがきちんと伝わり、また押し出しも良くなっていました。芝雀さんのお軽と較べるといかにも若く、弟のような雰囲気にはなってしまうものの、兄妹の物語としての本筋が明確に出た。山崎の家族が平右衛門とお軽のやりとりのなかでしっかりと浮かんでくる。またお軽に真実を話す時の悲痛さなど、一気に感情をみせるシーンに上手さをみせるし聞かせる。
私は勘三郎さん(勘九郎時代)の兄妹愛を朴訥な雰囲気で全面に出す平右衛門が好きなのですが、それに近かった。染五郎さんの場合は余裕なさが平右衛門の必死さに繋がっているのでまだまだ芸で魅せる部分は足りないのだけど、造詣としては非常に良いと思う。また体の動かし方、形もかなり綺麗になってました。でもやはりもっとひとつひとつ、客を湧かせるくらいのノリの良さをもっと身に付けていかないといけないだろう。喉の調子は相変わらず治っておらず、時々台詞の伸びが足りずに掠れたりしてしまっていたのですが、いわゆる声の出はかなり良くなっていました。また台詞を義太夫にきちんと乗せてこれるようにもなっていました。これで喉の調子が治ったらかなり良い出来になると思う。
お軽の芝雀さん、初日よりはかなりこなれてきた。特に芝雀さんの持ち味である一途さ優しさをストレートに見せるという部分で勘平一途、親への気遣いが明確にあって、六段目のお軽が身を売ってここにいるのだという哀れさが見え隠れする。なので平右衛門とお軽の兄妹愛としての物語がストレートに伝わる。これは芝雀さんと染五郎さんの間(マ)が合ってきたせいで、お互いのキャラクター造詣が上手くハマって見えたということだと思う。芝雀さんのお軽は勘平以外の男性が入る隙間がない、いつまでも恋する勘平の妻である。大星に請け出されて嬉しがる姿にも家族の元へ帰れるという気持ちゆえというところがハッキリと。
とても可愛らしくて好きな造詣なのではあるが、でもやはり七段のお軽にはこの心根が底辺にありつつも、遊女としての華やかさ色気、人のあしらいの洗練さが欲しいと思うのです。でも芝雀さんは売られた直後のお軽に見えてしまうのですよね…。芝雀さんの不器用な部分が悪いほうに出てしまったというか。特に大星とのじゃらつきがどうも様になってないのです。丁寧に丁寧に、はわかるのですが段取りくささが抜けず…。七段のお軽は段取りが多いので大変だとは思うのですが、もう少し自然な感じを出して欲しかった。また抜け感のある台詞回しがあまり上手ではなく終始張った感じで緩急が足りない。ああ、そうかこういうとこがまだまだなんだと芝雀さんの足りない部分がよく見えてしまったお軽でした。勘平が死んだと知れた後のところが良いだけにあともう少し頑張ってという感じです。六段のお軽だったらすごく似合うと思うんですけど七段となると難しいですね。
吉右衛門さんの由良之助は相変わらずの貫禄と存在感。これだけの出番とはもったいない。
『太刀盗人』
全体的にメリハリがついてますます楽しい舞踊劇になっていました。特に歌昇さんのすっぱにとても愛嬌があって、やりすぎの一歩手前で押さえているところに上手さを見せます。マジメな高麗蔵さんとの対比もよく、非常にバランスが良い。吉之助さんの目代の亡羊とした感じがスパイスとしてかなり効いてます。表情に余裕がでてきてますますいい感じ。種太郎くんも硬さがだいぶ取れてきて生真面目な感じがうまく嵌っていました。にしてもお父さんや高麗蔵さんを見る目が完全にお勉強モード(笑)そこがまた可愛らしいですね。
舞踊『玉兎』
初日はひたすら丁寧にこなす感じでしたが、今回とっても味のある楽しい舞踊になっていました。ふっくらとした柔らか味はまだ足りないものの、表情が豊か。情景のひとつひとつが更にクッキリとし、また面白味が加わっておりました。総じて可愛らしい雰囲気を保ち、なんとも愛らしい作品となりました。 それにしても染五郎さん、また痩せてしまっていました。痩せやすい体質なのでしょうがあばら骨がみえるくらいなのでちょっと心配になってしまいます。
『仮名手本忠臣蔵』「祇園一力茶屋の場」
吉之助さんの前説がだいぶ流暢になっていました。内容は前回と変わりないのですが語りが流暢になるだけで随分わかりやすい感じをうけます。でもやっぱり今回出さない「祇園一力茶屋の場」前半の説明もするべきかと思う。それよりおおざっぱな短縮でもいいから芝居して見せることは出来なかったんだろうか?とも。種太郎くんがいるから力弥のお使いの場もできるし。
さて、今回初日から一番変化したのはやはり染五郎さんの平右衛門。段取りをただ追うだけで精一杯だったところからしっかり役の性根を掴んできました。ちょっとおっちょこちょいな足軽風情、家族を思う心根の優しさや忠義一途を胸に秘め仇討ちに加わるための必死さがきちんと伝わり、また押し出しも良くなっていました。芝雀さんのお軽と較べるといかにも若く、弟のような雰囲気にはなってしまうものの、兄妹の物語としての本筋が明確に出た。山崎の家族が平右衛門とお軽のやりとりのなかでしっかりと浮かんでくる。またお軽に真実を話す時の悲痛さなど、一気に感情をみせるシーンに上手さをみせるし聞かせる。
私は勘三郎さん(勘九郎時代)の兄妹愛を朴訥な雰囲気で全面に出す平右衛門が好きなのですが、それに近かった。染五郎さんの場合は余裕なさが平右衛門の必死さに繋がっているのでまだまだ芸で魅せる部分は足りないのだけど、造詣としては非常に良いと思う。また体の動かし方、形もかなり綺麗になってました。でもやはりもっとひとつひとつ、客を湧かせるくらいのノリの良さをもっと身に付けていかないといけないだろう。喉の調子は相変わらず治っておらず、時々台詞の伸びが足りずに掠れたりしてしまっていたのですが、いわゆる声の出はかなり良くなっていました。また台詞を義太夫にきちんと乗せてこれるようにもなっていました。これで喉の調子が治ったらかなり良い出来になると思う。
お軽の芝雀さん、初日よりはかなりこなれてきた。特に芝雀さんの持ち味である一途さ優しさをストレートに見せるという部分で勘平一途、親への気遣いが明確にあって、六段目のお軽が身を売ってここにいるのだという哀れさが見え隠れする。なので平右衛門とお軽の兄妹愛としての物語がストレートに伝わる。これは芝雀さんと染五郎さんの間(マ)が合ってきたせいで、お互いのキャラクター造詣が上手くハマって見えたということだと思う。芝雀さんのお軽は勘平以外の男性が入る隙間がない、いつまでも恋する勘平の妻である。大星に請け出されて嬉しがる姿にも家族の元へ帰れるという気持ちゆえというところがハッキリと。
とても可愛らしくて好きな造詣なのではあるが、でもやはり七段のお軽にはこの心根が底辺にありつつも、遊女としての華やかさ色気、人のあしらいの洗練さが欲しいと思うのです。でも芝雀さんは売られた直後のお軽に見えてしまうのですよね…。芝雀さんの不器用な部分が悪いほうに出てしまったというか。特に大星とのじゃらつきがどうも様になってないのです。丁寧に丁寧に、はわかるのですが段取りくささが抜けず…。七段のお軽は段取りが多いので大変だとは思うのですが、もう少し自然な感じを出して欲しかった。また抜け感のある台詞回しがあまり上手ではなく終始張った感じで緩急が足りない。ああ、そうかこういうとこがまだまだなんだと芝雀さんの足りない部分がよく見えてしまったお軽でした。勘平が死んだと知れた後のところが良いだけにあともう少し頑張ってという感じです。六段のお軽だったらすごく似合うと思うんですけど七段となると難しいですね。
吉右衛門さんの由良之助は相変わらずの貫禄と存在感。これだけの出番とはもったいない。
『太刀盗人』
全体的にメリハリがついてますます楽しい舞踊劇になっていました。特に歌昇さんのすっぱにとても愛嬌があって、やりすぎの一歩手前で押さえているところに上手さを見せます。マジメな高麗蔵さんとの対比もよく、非常にバランスが良い。吉之助さんの目代の亡羊とした感じがスパイスとしてかなり効いてます。表情に余裕がでてきてますますいい感じ。種太郎くんも硬さがだいぶ取れてきて生真面目な感じがうまく嵌っていました。にしてもお父さんや高麗蔵さんを見る目が完全にお勉強モード(笑)そこがまた可愛らしいですね。